( ^ω^)ブーンは天国を探すようです

110: ◆xh7i0CWaMo :2008/03/26(水) 22:35:38.64 ID:N6vzJnH10
第四話 そこが幕間だとして、それでも僕はサナトリウム文学や多層世界に憧れてしまうんだ。

【『僕と、その少女はどちらも余命一年と知らされた身だ。
 もう治療の余地は残されていない。病名を聞くと、ダバダバダ病と答えられた。

 ( ^ω^)「僕はまだやりたいことがいっぱいあるのに、どうしてこんなことに……」

 (*゚ー゚)「仕方ないのよ、所詮人は、運命に逆らう事ができないんだわ……」
 
 ( ^ω^)「運命……か」

 ふと、今までやってきたことを顧みると、涙が止まらなくなった。
 ああ、こうなることを前もって知らされていたならば、無駄に命を費やさなかったのに。
 僕は小説家になりたかったのだ。作品を……世に残したかったのだ。
 せめて、せめて本屋に本が並べられる……それだけでいい。それだけが希望だった。

 だが、もう僕の指は動かない。
 だからキーボードを叩く事もペンをもつ事も出来なくて、もう小説を書けない。

 ( ^ω^)「ねえ、こんな物語はどうだい?」

 (*゚ー゚)「なになに、聞かせて」

 だから僕は、時々頭に思い浮かんだ空想話を少女に聞かせた。
 それは自己満足に過ぎなかったけれど、しぃはいつもニコニコしながら聞いてくれた。



116: ◆xh7i0CWaMo :2008/03/26(水) 22:37:45.73 ID:N6vzJnH10
 (*゚ー゚)「どっちが先に行っちゃうんだろう……」

 ある日、しぃが自嘲気味にそんなことを口にした。
 そうか、不覚にも今まで考えた事が無かったけど、僕と少女が一緒に死ぬなんて有り得ないのだ。

 ( ^ω^)「僕は、あなたに先に行って欲しくはないな。一人は……寂しいから」

 (*゚ー゚)「私も……最期の時を、あなたと一緒に過ごしたいわ」

 ( ^ω^)「時子さん……」

 (*゚ー゚)「私、あなたと出会った時をよく覚えてないの」

 ( ^ω^)「それは僕も一緒だよ」

 (*゚ー゚)「でも、今、私はあなたを大好きになった。なってしまったの。
      人なんて脆いものよ、愛を自覚した瞬間から、孤独を無闇に恐れるようになる」
 
 ( ^ω^)「愛は……いけないこと、なのかな」

 (*゚ー゚)「そんなことはないわ。ごめんね後藤さん、こんな暗い話を聞かせちゃって」

 ( ^ω^)「いや……」

 (*゚ー゚)「そうだ後藤さん、また聞かせてよ。あなたの物語」

 そうして、日々は流星のように美しく、しかし悲哀に満ちて過ぎていった。
 やがてその日は来てしまう。来てしまうのだ。』と、ここまで書いて僕は筆を置いた。



121: ◆xh7i0CWaMo :2008/03/26(水) 22:40:58.23 ID:N6vzJnH10
( ^ω^)「ふむ……」

サナトリウム文学は素晴らしい。まぁとりあえず人が死ねば読者は感動するし。
そこに、何か恋愛めいたこととかを主人公に言わせれば完璧だ。
とりあえず映画化は間違いない。どう考えてもサクラな連中が、
「感動しました!」とかカメラに向かってのたまってくれるのだ。

僕は自分が今書いた内容を今一度見直した。
うむ、誤字はないし、表現もこれぐらいで十分だろう。
台詞ばかりなのがいささか気になるが……まぁ、昨今の頭の足りない読者を相手にするなら、
この程度の分量がちょうどいいだろう。僕は知らず知らずに時流に乗っている。

ああ、それにしても疲れたなァ。

( ^ω^)「ちょっと外を散歩でもしてくるかお」

僕は椅子から立ち上がり、書斎を出た。
妻や娘の死体を踏み越え、扉を開く。

扉の先は公園だ。紫色の向日葵がそこかしこに咲いている。
空を泳ぐ金魚を避けながら、僕はゆったりとした気分で散策を始めた。

・・・

・・



( ^ω^)「という夢を見たんだお」



126: ◆xh7i0CWaMo :2008/03/26(水) 22:43:05.28 ID:N6vzJnH10
('A`)「へー」

ドクオは弁当をぱくつきながら、僕の話を聞き流した。
聞き流したと分かるのは、ドクオとの付き合いが長いせいもあるんだろう。
なんでこんな奴と、などと思うとうんざりする部分もある。

( ^ω^)「ちゃんと聞いてたかお?」

('A`)「ん? ああ、聞いてた聞いてた」

( ^ω^)「ほんとかお?」

('A`)「本当だよ、うるせえな」

その時だった。突如として空から耳を劈く爆音が舞い降りてきた。
続く生徒達の悲鳴。僕も慌てて立ち上がって、窓の外を覗いた。
窓外……グラウンドに、異常が存在していた。

(;^ω^)「こ、これは……?」

それは紛れもなく円盤だった。グラウンド全体を覆い尽くすような、巨大な青色の円盤。

('A`)「なんてこった……円盤なんてもんが、存在するのかよ……!」

・・・

・・


( ^ω^)「という内容なんですが、どうですかお?」



129: ◆xh7i0CWaMo :2008/03/26(水) 22:45:26.64 ID:N6vzJnH10
ブーンは劇団に所属している。今、彼は次の劇の内容について構想しているところだった。
そうして彼が作り上げたのが、上記のような内容のブツだった。

(-_-)「ふむ……」

団長は難しい顔をしながら、彼が提出した台本を読み込んでいた。
が、やがて台本を机の上に放り出し、煙草に火をつけて言った。

(-_-)「つまらん」

( ゜ω゜)「え」

(-_-)「内容がありがちな上、ややこしい、大体こんなもの舞台用の代物じゃないよ。
     もっと舞台で人を魅せるような内容にしなきゃ」

その時、ブーンは自分の全てが否定されたかのような感覚に陥った。
何せ提出した台本は彼の自信作だったのだ。
それを「つまらん」の一言で、にべもなく放棄されてしまったのである。
彼が怒りに燃えるのもある種当然と言えよう。

( ゜ω゜)「お前みたいな、お前みたいなクソ団長は、死ねお!」

そしてブーンは、何故かもっていた出刃包丁で、団長の左胸を刺し貫いた。

・・・

・・


( `ハ´)「以上が、事件のあらましアル」



134: ◆xh7i0CWaMo :2008/03/26(水) 22:47:46.99 ID:N6vzJnH10
( ゚∀゚)「なるほど、つまり被告人は被害者にバカにされたことに腹を立てて、犯行に及んだと」

裁判長が重々しく頷いた。法廷で今、ブーンは裁判にかけられている。容疑は殺人罪。
当然、団長を殺した罪だ。そして彼が犯した事は誰の目にも明らかだった。

( `ハ´)「その通りだる。完全なる私怨アルね、重罰を望むアル」

(,,゚Д゚)「しかし裁判長、」

( `ハ´)「無能弁護士は黙っておくアル」

(,,゚Д゚)「アァ? なんだとこの中国猿が」

(#`ハ´)「ワタシに楯突くアルか! 沈沒於東京灣死!!」

(,,゚Д゚)「Es ist Aggression... Mullverschwendung in Senu lans!!」

( `ハ´)「的地方的香腸不好吃!!」

弁護士・検事双方の交わしている言葉がブーンにはわからなかった。
だが、裁判長は彼らの会話にいちいち頷いている。

( ^ω^)「裁判長、彼らの言葉がわかるんですかお?」

( ゚∀゚)「……Demasiado desagradable aceptar; dicho una mentira; nunca esta acalorado; no hay el」

( ^ω^)「駄目だこりゃ」

―――――――――――――――――――――――――――――
( ^ω^)「という話なんだけど、どうかな?」



139: ◆xh7i0CWaMo :2008/03/26(水) 22:52:00.67 ID:N6vzJnH10
(*゚ー゚)「面白いわね」

少女は静かに、しかしこらえきれないといった風に笑ってくれた。
それだけで僕は幸せだった。僕のつくった物語で、彼女は笑ってくれているのだ。
面白いと思ってくれているのだ。小説家志望として、それほどの幸福が他にあるだろうか。

一息ついて、僕は窓の外を眺めた。
外はもうすっかり暗くなっていて、都会の明りが海のように広がっている。

(*゚ー゚)「……綺麗」

少女がベッドから身を乗り出して、先程とは打って変わった口調で言った。
確かにその光景は、人工的でありながら幻想的だ。
眺めているとやがて眠くなってしまうのは人の性か、薬のせいか。

( ^ω^)「先に眠らせてもらうよ」

(*゚ー゚)「うん、わかったわ。お休みなさい」

ベッドに潜り、目を瞑るとすぐに僕の意識は落
                           ち
                           込
                           ん
                           でいった。

そうして僕はまた、真っ暗闇に立っていた。



143: ◆xh7i0CWaMo :2008/03/26(水) 22:54:49.50 ID:N6vzJnH10
川 ゚ -゚)「どうかしましたか、どうかしましたか」

そこには件の植物人間と生首少年が不思議そうに僕を見ていた。

( ^ω^)「どうかしたかお?」

川 ゚ -゚)「いえ、何やら意識此処にあらずというような顔をしていらっしゃったので」

どうやら歩いている間に眠ってしまったようだ。
気がつくとそこには僕たち三人しかおらず、鉛筆削りとか掃除機は跡形もなく消えていた。
ああ、現実だなあと、僕はしみじみとそう感じた。

( ・∀・)「ああ、貧血になってきた。さっさと行きましょう行きましょう。
      このままだと死んでしまいます。死ぬ前に天国に行きましょう」

生首が断面から血液を垂れ流しながら言った。
ああ、僕もいい加減疲れてきた。はやく天国に辿り着きたいものだ。

頭の中で天使と忍者を戦わせながら、僕はまた歩き始めた。

・・・

・・

・】

以上、全て幕間なのである。

第四話 終



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