( ^ω^)は日々変わらないようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 03:24:34.54 ID:vbzLISrxO
- .
1st
('A`)が来る
ガラララッ
( ^ω^)「いらっしゃいませー」
ふ、と見つけた店。
古びた店舗に、真新しい看板が目に入り立ち寄ってみた。
【本格イタリアン ブーン】
口繋ぎに出された、トマトとお茶。正直、この組み合わせはないだろう。
('A`)「パスタで」
( ^ω^)「はいお」
何故か金属で出来たメニューから、パスタを選択した。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 03:28:16.29 ID:vbzLISrxO
- .
その他のメニューは、ピッツァと書かれたものだけ。
なるほど、日替わりなのか。なら期待できるだろう。
('A`)「ふむ」
期待に胸が膨らむと同時に、口繋ぎで出されたトマトは、何故かソイソースがかかっていた。
奇抜だな。と思った。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 03:32:38.08 ID:vbzLISrxO
- .
店の雰囲気は………、
なかなか……、
よくないな……。
壁は赤いレンガで作られていて、椅子は石で出来ている。
夏ならばひんやりとして良いが、今は冬だ。
更に座敷のようなものもあり、テーブルは洒落た木製だが、何故か畳。
('A`)「なんだ……?」
( ^ω^)「お待たせしたお」
('A`)「速いですね」
純粋にそう思った、疑問にも思った。注文から僅か3分、速すぎだろJK。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 03:37:51.00 ID:vbzLISrxO
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今俺は、驚いている。
そして、困惑している。
( ^ω^) ニコニコ
(;'A`) ………
目の前には、皿。そして店員、恐らく店長。その店長はずっと俺を見ている、それもニコヤカな顔で。
そんな見るな、ちくしょう。
(;'A`)「仕事には戻らないんですか?」
( ^ω^)「このパスタには、僕の気持ちが込められてますお。美味しく食べて頂くのを、見届けたいんですお」
(;'A`)「はぁ……」
いや、だがな。
正直…食べたくないよ。
だってよ期待してたらさ、皿に茹でられたパスタが乗ってる。
ただそれだけなんだぜ?
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 03:41:24.98 ID:vbzLISrxO
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( ^ω^)「遠慮しなくて、いいですお。さぁ、どうぞ」
(;'A`)「いや……まぁ、………はぁ」
(;^ω^)「何を渋ってるんだお、食べていいお」
(;'A`)「そう言われても………だってこれ、麺だけですよ?」
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 03:43:52.93 ID:vbzLISrxO
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( ^ω^)「…………」
あ、やべ。地雷踏んだかも。
(;'A`)「あ、あのすいません。パスタなんだから当たり前ですよね……
パスタだけに……、ソースはパスタ!」
滑るよな、そりゃ。
ちくしょう。
(;'A`)「あ、あはは。面白くなんかないですよね、いやなんか………すいません」
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 03:47:00.80 ID:vbzLISrxO
もぉ、気まずいよ。あばばばば。誰か助け船、海賊船でもいいから!
誰 か 助 け て !
( ^ω^)「……聞けお」
(;'A`)「え?」
いや、何を?まぁ助かるけどさ、いや、だから何だよ。
わけわからんよ、まぁまぁあぁぁあ、入んなきゃよかった。
こんな店………
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 03:52:02.86 ID:vbzLISrxO
( ^ω^)「麺自体は最高級の原料を使い、
本場で麺打ちだけを五年間修行した僕が作った麺。
茹でるために使われた水も、
わざわざ長野まで行って取ってきた天然水。
さらに、100g・1000円の最高級、
博多の塩を惜しみなく使い。
麺に傷をつけないために、
熱湯の中に腕を突っ込んでまでかきまわした」
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 03:55:25.04 ID:vbzLISrxO
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( ^ω^)「何より譲れないものは、僕の気持ち」
( ^ω^)「客は確かに、少ないお。
それなのに全て最高級品を使って、
自分の体まで犠牲にしているお。
何が言いたいかと言えば……」
( ^ω^)「たった、一皿。
たった一食。」
( ^ω^)「でも、
それに懸ける情熱、想い、願い………っ!」
( ^ω^)「その全ては……」
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 03:58:28.98 ID:vbzLISrxO
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( ^ω^)「君への……
想いなんだお」
('A`)「………」
だから何?
いや、わかった。最高級。
世界で一番美味い麺なのはわかった。いやでも、だから何?
俺としては、シーフードだとかナポリタンだとか、ミートソース。
そういうのを期待してたんだぜ?
なのに、何だよ。
麺って。
あぁ、はいはい。
麺だけに、
一本取られましたよ!
とでも聞きたいか、馬鹿野郎が。ぶち殺すぞ。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:03:48.81 ID:vbzLISrxO
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だいたいおかしいだろ、トマトに醤油の時点で気づけよ。
いや、まて俺。
むしろ、本格イタリアンなのに座敷があって、それが畳。って時点で突っ込めよ。
ん?その前にだな、こんなボロい店に本格イタリアン期待すんなよ。
確かに金はねぇぜ?
でもよ、こんな麺だけに金払うなら、コンビニでパスタ買うわ!ボケ。
新しいファミマのたらこスパなんか、めちゃくちゃ美味そうじゃんかよ。
てか、まだ椅子冷てぇよ、石って何だ、石って。
石の椅子買うなら、木製買えよ絶対そっちのが、
客にも財布にも優しいぜ。
あー、はいはい。
「僕のパスタにかける情熱は、石の椅子より硬いですよwww」
とか言いたいか、ボケ。
お前の情熱で、この椅子あっためとけ。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:08:32.20 ID:vbzLISrxO
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( ^ω^)「まぁ、兎に角。
頂いてくださいお」
(#'A`)「……あぁ」
仕方ない、一口だけ食べてやるよ。お前の情熱を感じてやるよ!
意外と怖いな、味気のないだろうパスタを口に含もうとするのも……
(#'A`)「頂きます」
いちいち「どうぞ」とか言うな、気が紛れる。
とうとう俺は……
ただのパスタを口に入れるんだな。
覚悟は、
できてるっ!!!!
(#'ρ`) アムッッ
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:11:08.04 ID:vbzLISrxO
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(゚A゚) ビックリスルホド…
(;A;) バスケガシタイデス…
(;A;) マチガエタ……
(#゚A゚) ユゥゥゥウウトッ
('A`) ピィヤァー
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:15:36.22 ID:vbzLISrxO
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何だこれ、やべえ。
マジでやべぇ、得体がしれない。無限の可能性じゃねぇか。
次の瞬間、俺は意識が遠のいていくのを感じた。
('A`)「広々とした……、大地が見えるぜ」
('A`)「太陽はサンサンとし、川がせせらぎ生を与える………」
('A`)「男が見える……、こいつは尊敬できるな」
('A`)「師には毎日怒鳴られ、出来損ないの麺で飢えを凌ぎ」
('A`)「手には火傷の後を毎日増やしてやがる」
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:19:00.49 ID:vbzLISrxO
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そこまで何かが見え、意識が戻る。例えるはらば、手元にグッと来る感じだ。
( ^ω^)「………」
('A`)oO(カーチャン……)
何故か男の微笑みが、母親の微笑みと重なった。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:24:09.09 ID:vbzLISrxO
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J( 'ー`)し「ドクオ、夕飯はこれを食べてね」
(・A・)「うん、わかった」
カーチャンは何時も、夜の夕飯を早くに作る。そしてちょっと厚く化粧をし、派手な格好で家を出ていく。
J( 'ー`)し「良い子にしていてね、ドクオ」
(・A・)「うん、行ってらっしゃい」
俺の家は母子家庭だった、母親も高校中退で安定した職にも就けなかったのだろう。
今になって分かるが、カーチャンはきっと娼婦をしていたのだろう。
でなければ、アパートも借りられなかったし飯も三食食えなかっただろうな。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:30:01.59 ID:vbzLISrxO
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俺が幼い時は、まだ満足に飯を食えていた。だが中校生にもなると、炒飯だけや、白米と味噌汁では満足できなかった。
J( 'ー`)し「あ…、ドクオ。カーチャン仕事行くから、これ食べといて」
('A`)「また汚れてくんのか」
そう言いながら、テーブルの上を覗くと、ただ茹でられただけのパスタ。
('A`)「こんなん食えねぇよ、外で食ってくる」
J( 'ー`)し「あはは、そうよね。ドクオも中学生だもんね。
カーチャン頑張って、もっと良いもの食べさせてあげるからね」
そんな健気なカーチャンの態度が、何故か胸に響き、
「そう思ってんなら、さっさと男捕まえて来い」
と言って俺は家を飛び出た。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:33:46.27 ID:vbzLISrxO
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その日は夜の町で、友達と夕飯を食べた。友達の奢りで食べたハンバーグは、世界で一番美味い物のように思えた。
深夜になり、「カーチャン帰って来るから」と言って家に帰る。
深夜3時のことだった。
('A`)「ただいま」
そうに言えば、カーチャンは何時も「お帰り」と言ってくれる。
だが、その日はそれがなかった。何でかな?と考えるよりも、俺は睡眠を優先した。
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:36:17.75 ID:vbzLISrxO
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翌朝、俺は学校でなく、病院にいた。
自分でも混乱してたのか、病院に行くまでの経緯は覚えていない。
ただ、冷たくなったカーチャンの手を必死に握り、涙をこらえていた。
( A )「馬鹿野郎……」
俺が病院に着いた時には、カーチャンは既に虫の息で死が近いと知らされた。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:40:48.56 ID:vbzLISrxO
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そんな、もう意識は戻らないと思っていたカーチャン。
ふ、と気がつきよく見ると、口が必死で動いているのがわかった。
('A`)「カーチャン…」
冷たくなった手をさらにギュッ、っと握る。顔を近づけ呼吸器を外し、カーチャンの声を聞きとろうとした。
J( ー )し「―――」
誰にも聞こえなかっただろう、いや、聞こえなくてよかった。こんなこと言われていたら、顔から火が出る。
俺にしか聞こえなかった、だからこそ今、目から火が出そうなんだ。
自信は無い、何故なら、死に際にそんなことを言う奴は多分いないから。
でも確かに俺には聞こえた、
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:42:01.61 ID:vbzLISrxO
「ミートソース……、買ったからね」
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:47:11.77 ID:vbzLISrxO
- .
その言葉を聞いた時、今すぐにでも死にそうなカーチャンを置いて、俺は家に走った。
先生は引きとめたけど、カーチャンがちょっと微笑んでた気がしたから別にいい。
俺は家に着くと、急な運動で悲鳴をあげる肺や体を気にせず。
リビングに駆け込んだ。
今まで我慢していた涙、目的のものを見た瞬間に、どっと溢れ出た。
顔は酷いだろう、呼吸も満足に出来ない。それでも俺はひたすらに食べた。
昨日の夜、カーチャンが作ってくれた、本当にただ茹でただけのパスタ。
でもそれには、たくさんの思いが込められていた。
家にはない塩の味が、パスタからちょっとした。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:51:25.18 ID:vbzLISrxO
- ―●―●―●―●―●―
( A )「…………」
気がつけば、皿の上にあったパスタは無くなっていた。
( ^ω^)「美味しかったかお?」
財布から千円を取り出し、テーブルの上に置いて立ち上がる。
ここで、涙を見せるわけにはいかない、グッとこらえ、喉から声を絞り出した。
( A )「ちょっと塩が強いんじゃないか?」
それだけ言うと、店を出た。
その時に「ありがとうだお」と聞こえた、俺は「ありがとう」と返してやった。
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:54:45.53 ID:vbzLISrxO
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外に出ると、自然と涙はおさまった。冷静に考えると千円じゃ足りないな……と思う。
今、自分はただのサラリーマンをやっている。息子に俺のような想いをさせるのが嫌で、必死に働いている。
('A`)「ありがとな」
その言葉を店に向かって言った。心からのありがとうだった。
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 04:58:12.66 ID:vbzLISrxO
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いつも通りの昼休み。
でもそれは、色々なことを考えられる昼休みになった。
働きすぎで、息子のこと構ってやれてないな………。
('A`)「今度、キャッチボールでもしてやるか」
何となくだけど、父親からトーチャンに変われたかな?そう思えた。
('A`)「カーチャン……」
俺は立派な父親になるよ、いつか孫を見せにいくからな。
カーチャン大切にできなくて………、本当に…ごめんな。
そんなことを思っていると、瞼の裏に残るカーチャンが
ちょっと微笑んだ気がした。
end
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