( ^ω^)は日々変わらないようです

52: ◆lirqr6DwLQ :2008/03/27(木) 05:10:08.08 ID:vbzLISrxO

2小節目

( ・∀・)と語る



54: ◆lirqr6DwLQ :2008/03/27(木) 05:13:19.39 ID:vbzLISrxO
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( ・∀・)「ふう……」

体に刺さる風が心なしか気持ち良い。たまには夜の散歩も良いものだ。

( ・∀・)「そろそろ帰るかな」

夜も深まって来た、明日は別に用事は無い。だがそれでも、帰って寝たい。

( ・∀・)「ニート生活の欠点なのだよ、ははは」

そんな時だった、目についたのは古ぼけた店、真新しい看板。

【本格バー ブーン】



55: ◆lirqr6DwLQ :2008/03/27(木) 05:16:04.04 ID:vbzLISrxO
( ・∀・)「…………」

怪しい。そうに思う。

古ぼけた木造建築に、気合いだけは入った看板。
そりゃ怪しい、でもなんだろうかな……。
何とも言えないトキメキがある、お邪魔しよう。と思った。

( ・∀・)「ふむ、バーなのに引き戸か…なかなかやるね」

ガラララッ

( ・∀・)「たのもー」

( ^ω^)「看板はやらんお」



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 05:20:52.12 ID:vbzLISrxO
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( ・∀・)「いらないよ」

( ^ω^)「いらっしゃいだお」

会話は噛み合わない、それでも苛立ちはなかった。

( ・∀・)「ここはバーなのかい?」

如何にも違うだろう、テーブルは良い。だが、椅子が石………いや、これもなかなか良い。
ひんやり感とやらだよ。

座敷もある、壁はレンガ、テーブルは木製、なのに畳。

( ・∀・)「なかなか良い店じゃないか」

お品書きには、パスタとピッツァの単語が二つ。

いつの間にか、バーなのか?と言う疑問は消えていた。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 05:24:30.82 ID:vbzLISrxO
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( ^ω^)「ご注文は」

( ・∀・)「ジンをロックで、それとナッツを」

( ^ω^)「わかったお」

しばらくすると、ジンとナッツを僕の目の前に置き、彼もドンと椅子に座る。

一気とは言わないが、それなりの勢いで酒を煽り、その後ナッツを咀嚼する。

( ・∀・)「ふむ、なかなかだね」

( ^ω^)「ありがとうだお」



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 05:26:42.18 ID:vbzLISrxO
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( ・∀・)「ところで、君の名前はブーンで良いのかい?」

( ^ω^)「お?そうだお。よく分かったおね?」

( ・∀・)「なに、看板にブーンとあったからね」

「そうかお」と言い、
「そうさ」と返すと沈黙が僕達を包んだ。

でも何だろうかな、不思議と不快感の無い沈黙だ。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 05:30:14.32 ID:vbzLISrxO
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しばらくすると、いつの間にかグラスは空になっていた。

「よいしょ」とブーンは立ち上がると、グラスを片手に店の奥へと引っ込んだ。

すぐにブーンは、グラスを二つ持ち戻ってくる。

「ジンのロック、お待たせしました」

「遅いよ」

そして「はははっ」と声を重ねて笑った。

( ・∀・)「うん、美味いよ。久しぶりに良い酒だ」

( ^ω^)「ありがとうだお」

そう言うとブーンも、茶色い液体を少し口に含む。

( ・∀・)「飲んでいいのかい?」

( ^ω^)「どうせ客なんか来ないお」



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 05:33:46.29 ID:vbzLISrxO
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( ・∀・)「はは、何でこんなところでバーを?」

( ^ω^)「バーだけじゃないお、朝は定食屋、昼はイタリアン、夜は居酒屋、深夜はバーだお」

( ・∀・)「これまた多才なことで、それなりに売り上げはあるのかい?」

( ^ω^)「おー…、店をやっていけるくらいは」

( ・∀・)「そうかそうか、だがくだらなくないか?」

( ・∀・)「毎日を忙しく過ごし、『ありがとう』と言って行く客は少ない」

( ・∀・)「そして、稼ぎは店をやっていける程度。裕福な生活はできない」



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 05:38:30.94 ID:vbzLISrxO
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( ・∀・)「どうだい?」

( ^ω^)「んー…」

( ^ω^)「別にいいお、僕は好きでやってるから」

( ・∀・)「例えば何を?」

「んー」と再びブーンは考える。
「おかわりを持ってくるお」そうに言うと空になったグラスは持って行かず、奥に引っ込み。

両手を使い、ウィスキーとジン、それと氷を持ってきてグラスに注ぐ。

( ・∀・)「ありがとう」

( ^ω^)「大丈夫だお、で何の話しだったかお?」

( ^ω^)「んー、そうだ思い出したお」

( ・∀・)「そうか、では続きを頼むよ。これも注文だ」



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 05:42:19.44 ID:vbzLISrxO
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( ^ω^)「500円になりまーすwww」

そんな軽いノリをスルー、ブーンはコホンと咳払いをして話しを始める。

( ^ω^)「例えば、朝太陽より早く起きて仕込みをする時とか…」

( ・∀・)「ある意味、体に悪いね」

( ^ω^)「朝、定食を食べに来る学生や社会人を相手にする、一番忙しい時間」

( ・∀・)「一人じゃかなりキツイね」

(;^ω^)「いちいち横槍入れるんじゃないお」

( ・∀・)「はははっ、いいんだ。続けたまえ」



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 05:46:00.29 ID:vbzLISrxO
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( ^ω^)「後は、たまに来る常連さんとの会話」

( ^ω^)「それと、1日の売上を数える時だお」

( ・∀・)「はっはっ、実に自己満足じゃないか。結構なことだ」

( ^ω^)「あぁ、それと大事なことを忘れてたお、それは―――」

僕はフッと笑った。
なかなかやるじゃないか、この店も悪くないな。
何故なら、
「君みたいな客と話すことも楽しみだお」
だなんて言われたらね。



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 05:49:22.90 ID:vbzLISrxO
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決して良い店ではない、だが何処か気に入ったよ。

( ・∀・)「なぁブーン」

( ・∀・)「ニートの生きる意味とは何だと思う?」

( ^ω^)「ニートかお?」

( ・∀・)「あぁ、そうだ。家族の脛をかじり、何もせず引き込もり、親孝行すらしない」

( ・∀・)「そんな彼等に、意味はあるのかね?」

( ^ω^)「あると思うお」

( ・∀・)「ほう、それは何故?」



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 05:52:54.91 ID:vbzLISrxO
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( ^ω^)「きっと、彼等には楽しみも、彼等自身が生きようとする望みもある。
だから意味はあるお」

( ・∀・)「そうかい?
パソコンに依存し、社会の波に乗れず引き込もりで停滞している彼等に、意味はあるのかい?」

( ^ω^)「お、彼等には社会の波に乗れる可能性があるお。パソコンを通した仕事につける可能性もあるお。
ネットと言う楽しみもあるお、だからいいんじゃないかお?」

( ・∀・)「自ら社会に出ず、家族を嫌い、無駄金を使い、堕落して行くだけだと言うにか?」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 05:57:14.06 ID:vbzLISrxO
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( ^ω^)「ならば聞くお、君の楽しみと生きる意味は?」

( ・∀・)「そうに来るか、そうだねぇ………」

( ・∀・)「僕の楽しみは、平凡に暮らすこと。生きる意味は………」

( ・∀・)「楽しみとやらを、しっかりと体感することかな」

( ^ω^)「ほら、彼等も変わらないお」

( ^ω^)「僕の楽しみは、毎日の仕事。
僕の生きる意味は、毎日の仕事で客を喜ばすこと」

( ・∀・)「…………なんだ、ニートも社会人も」

( ・∀・)「何も変わらないじゃないか」



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 06:00:40.85 ID:vbzLISrxO
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( ^ω^)「多分…だお」

( ・∀・)「そうだね……」

( ・∀・)「生きて欲しいと願うから、彼等の家族は彼等を追い出さない」

( ・∀・)「活きて欲しいと願うから、彼等の家族は彼等を見守る」

( ・∀・)「つまりだね…」

( ・∀・)「生きることが、活きることが彼等の生きる意味か」

( ^ω^)「おっおっwwww
なかなかに難しいお」

( ・∀・)「ははは、こういう話しもたまには良いじゃないか」



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 06:03:33.26 ID:vbzLISrxO

チラリ、と時計を見る。
時間は二時を迎えていた。

( ^ω^)「悪いけど、もう閉店の時間だお」

( ・∀・)「そうか、それじゃ帰るよ」

( ・∀・)「明日は10時に来ればいいかい?」

( ^ω^)「お?なんでだお?」

僕は引き戸の前に立つ。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 06:05:57.25 ID:vbzLISrxO
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( ・∀・)「生憎、今日の僕は財布がなくてね」

( ・∀・)「ツケにしといてくれ、その分は明日から働いて返すよ」

(;^ω^)「お?」

( ・∀・)「ふ、昼間の忙しい時間、ウェイターくらい必要だろ?」

(;^ω^)「別に平気だお…今日の分は奢るお」

( ・∀・)「いや、それだけじゃないんだよ」
引き戸を引く。

ガラララッ



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 06:08:03.00 ID:vbzLISrxO
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ブーンに背を向けたまま話す。

( ・∀・)「僕も、君みたいな店長と話すのが好きでね」

( ^ω^)「…………」

( ・∀・)「それに」



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 06:13:35.61 ID:vbzLISrxO
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( ・∀・)「活きてみたくなったんだよ」

そして僕は言う。

( ・∀・)「僕はモララー、君の親友。そして副店長として」

( ・∀・)「君とこの店を切り盛りしていく男だ」

そうに言い、手を差し出す。ブーンはニヤリと笑い、手を握る。

そして彼は言う。

( ^ω^)「僕はブーン、君の親友。そして店長として」

( ^ω^)「君の将来を見届ける男だ」

( ・∀・)「君の未来に幸あらんことを」

( ^ω^)「君の将来に闇がはこびらんことを」

グッ、と力をこめた。
何故かとても嬉しかった。



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/27(木) 06:19:10.42 ID:vbzLISrxO
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「それじゃ明日10時に」

それだけを言い、店を出た。さっきより風が体に染みる。

誰に言うでもなく、店に「ありがとう」と頭を下げた。

( ・∀・)「これもまた、一興」

希望がある、一歩踏み出せば未来がある。
なかなか良いじゃないか。

( ・∀・)「ニート生活の、唯一の良いところだね」

何か大きなものが、自分の中に芽生えた。

元からある好奇心が土になり、
【バー ブーン】が種になり、
今さっきもらった勇気が水となって、

未来。という大輪の華が、自分の胸の中で芽生えた気がした。




end



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