( ^ω^)は日々変わらないようです
- 3: ◆lirqr6DwLQ :2008/03/29(土) 18:45:56.15 ID:jFZ32NfsO
-
第4楽曲
( ^ω^)の昔話
最初からいきたいと思います。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 18:50:19.77 ID:jFZ32NfsO
- ・
日々喧騒の中うるさい町は、深淵の闇が覆う深夜の訪れと共に、だいぶ大人しくなっている。
( ・∀・)「ふぅ、お疲れ様ですな」
( ^ω^)「今日も疲れたお」
カラカラ。とグラスの中の氷が渇いた音をたて、閉店後の静かな店内に響き渡る。
( ・∀・)「やっぱり、慣れないね……」
( ^ω^)「ん……、仕事がかお?」
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 18:53:30.89 ID:jFZ32NfsO
- ・
( -∀-)「そうだよ。如何せん」
( ・∀・)「定食屋、レストラン、居酒屋、バー」
( -∀-)「一様に同じ接客だと、雰囲気が変わるからね」
( ^ω^)「そうかお?ブーンはあんまり気づかわないお」
( ・∀・)oO(いつでもヘタレだからねぇ……)
( ^ω^)「お、何か言ったかお?」
(;・∀・)「ん?何のことかな?ハハハハハ」
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 18:57:33.05 ID:jFZ32NfsO
- .
カラカラ。と渇いた音が二つ、再び静まりかえった店内に響き渡った。
モララーのグラスは空になっている、今日もお疲れさま。
( ^ω^)「ん、今日もお疲れさまだお」
モララーのグラスを片手に立ち上がる、モララーの仕事は、グラスを空にした時点で何時もなら終わりだ。
( ・∀・)「あ……ちょっと待ちな」
( ^ω^)「なんだお?」
( ・∀・)「ふふふ、おかわりを頼もうか。マスター」
ニコリ、と笑みをみせる。
―――まったく、仕方ないか。この男には勝てる気がしないお。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:01:33.24 ID:jFZ32NfsO
- .
ドン!とテーブルの上に、モララー愛飲のジンを置く。もちろん、僕のウィスキーを。
( ^ω^)「ちゃんと明日も働けお、ただじゃないんだから」
( ・∀・)「知ってるよ、ちゃんと働いてるだろう?親父」
やっぱり、人を小馬鹿にしたような言い方なんだよな。
それでも、悪い気はしない。むしろ何処か清々しい。
それがモララーの不思議。
( ^ω^)「で、何の話しだお?疲れてるんだから、他愛もない話しだった
( ・∀・)「減給だお!」
(;^ω^)「………」
( ・∀・)「心を読むな。かい?」
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:05:52.55 ID:jFZ32NfsO
- .
( ・∀・)「まぁいいさ、悪いね。まぁ本題なんだが………」
( ・∀・)「この店の目的ってなんなのさ」
( ^ω^)「お?どゆことだお?」
( -∀-)「んー………」
( ・∀・)「つまりだ、
定食屋、レストラン、居酒屋、バー
たくさんの種類をひとつの店で経営してるけど……」
( ・∀・)「何故、基本は全てイタリアンなんだい?」
ははは、やっぱり敵わないお。そこまで気付くだなんて予想外だお。
( ^ω^)「ふぅ、ナッツ。いるかお?」
( ・∀・)「ありがたく頂こうじゃないか」
長くなるぞ?と言う意味をこめて、ナッツをすすめてみた。ちゃんとモララーは理解してくれたみたいだ。
流石だな。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:10:46.15 ID:jFZ32NfsO
- .
ポリポリ…
( ・∀・)「さて、時間はたっぷりあるんだ。聞かせてもらおうか」
ナッツを空中に投げては、口でキャッチしているモララー。
そんな行動の中でも、何時も腑抜けた目は鋭く光っている。
マジなんだろう。
( ^ω^)「いいお、その返し……」
目を伏せる、なるべく表情を見られないように。
「ちゃんと働けかい?」
はははっ、やっぱり敵わない。
この男なら……、全て受け入れてくれるだろう。
今まで誰にも話していない話。決意を決めた。
キッ。っと表情を固める、目に力を込める。
そして「そうだお」
真っ直ぐに彼を見つめ、話すことを決めた。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:14:01.75 ID:jFZ32NfsO
- .
( ^ω^)「もう………15年も昔のことかお」
( ^ω^)「僕は、自分の店を持ちたくて、15歳にして調理学校に行くことを決めたお」
頭の中で、色褪せ、忘れかけていた過去。
それは思い出すと、鮮明に頭の中で色を帯びて行った。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:19:03.46 ID:jFZ32NfsO
- .
―――15年前
思わず涙が出た、自分の家は裕福ではない。
だから自分は、小さな頃からお金を貯めた。
欲しい物も買わずに、ただ夢を実現させるために。
それなのに、なんで………
(メ`ω´)「ダメだダメだ!ちゃんとした高校に行きなさい!」
父はそうに言って、何時も怒鳴り、何かを投げつけてくる。
( ;ω;)「バッカヤロー!自分の金で行くんだから、いいじゃないかおっ!」
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:23:40.42 ID:jFZ32NfsO
- .
僕は自分の店を持ちたい、そう小さな頃から思っていた。
昔、家出した時に行った、大人な感じのイタリアンレストラン。
僕はずっと泣いていて、店長さんは困惑しただろう。
それでも、店長さんは僕に冷たい水と、とても美味しいパスタを御馳走してくれた。
その時から、僕も店を持ちたいと思っていた。
(メ`ω´)「何度言ったらわかるんだ、馬鹿野郎っ!」
そう言うと、父は僕に手をあげる。
パシィーン。
平手打ちの、心地よい音が耳に響く。それと同時に、頭の中の何かが急激に冷えていった。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:28:01.84 ID:jFZ32NfsO
- .
(# ω )「お……」
(;`ω´)「す、すまん。ブーン……」
「手をあげるつもりは……」
などと言っている。
殴っといて言う言葉か?それ
今まで恐ろしく、言うことのできなかった言葉。
それは、自然と口から飛び出してしまった。
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:33:21.72 ID:jFZ32NfsO
- .
(# ω )「こんな家………」
「もう嫌だおっ!!!」
そうに叫び、通帳だけを片手に家を飛び出した。
晩秋の風が、薄着な僕に突き刺さる。
涙は鼻水と共に溢れ、鼻を塞ぎ、顔をひやり。と痛く刺激した。
それでも駆けた、ただひたらすに家から離れたかった。
(# ω )「ハァハァ…」
気がつけば、目の前にはよく見る家がある。
迷惑だろうか?
そんな事も考えたが、僕は結局インターホンを軽く押す。
ピンポーン
と聞こえた音は、僕に少し安息をもたらした。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:36:38.04 ID:jFZ32NfsO
- .
ガラララッ
引き戸が開き、よく見る親友が顔を出す。
(=゚ω゚)ノ「誰だょぅ?」
( ^ω^)「僕だお…」
(=゚ω゚)ノ「ブーンかょぅ、どうしたんだょぅ?」
( ^ω^)「ん……」
多分、この時の僕の顔はひどかったのだろう。
(=゚ω゚)ノ「まぁ…いいょぅ。とりあえず上がるょぅ」
ちょっと気難しい彼が、心良く家にあげてくれた。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:41:47.10 ID:jFZ32NfsO
- .
いょぅの部屋は、何か雰囲気がある。
壁は何故かレンガ造りで、床は木。所謂、屋根裏部屋らしい。
(=゚ω゚)ノ「さて、いったいどうしたんだょぅ?」
( ^ω^)「それは……」
少し、気がひけた。
家出をした。などと言えば、心配して帰されるのではないか……と。
まぁ、悩んでいても仕方ないだろう。
( ^ω^)「実は……」
今までのこと、それを全て話した。いょぅは首を突っ込むでもなく、静かに頷いて聞いてくれた。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:45:13.90 ID:jFZ32NfsO
- .
(=゚ω゚)ノ「なるほど……」
( ´ω`)「ほんとすまんこ、突然来ちゃって…」
(=゚ω゚)ノ「ははっ!まぁいいょぅ。今日はゆっくりしていくょぅ」
心から嬉しかった、家という居場所に絶望し、居場所なんかないんじゃないか?
と思っていた僕には、
「ゆっくりしてけ」
そう言ってくれたのが、とても嬉しかった。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:49:46.45 ID:jFZ32NfsO
- .
それから僕達は、夢を語りあった。いょぅは、既に進路を調理学校と決めている。
(=゚ω゚)ノ「俺はバーをしたいんだょぅ!だからと言ったら……あれだけど」
(=゚ω゚)ノ「とりあえず調理学校に行きたいんだょぅ」
( ^ω^)「適当だおwwwバカすwwww」
(=゚ω゚)ノ「ブーンは何で調理学校に行きたいんだょぅ?」
( ^ω^)「僕はイタリアンを習いたいんだお!わるいかお?」
(=゚ω゚)ノ「ブーンに真面目な理由があって俺涙目wwww」
楽しい時間だった、あっと言う間に夜は明けていった。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:54:39.61 ID:jFZ32NfsO
- ・
朝が来た、眠りを欲する目に、朝日が痛く染みる。
でもそれは、清涼な風と共に、気持ちが良かった。
( ^ω^)「ありがとうだお!幾分落ち着いたお」
(=゚ω゚)ノ「そうかょぅ、まぁいいょぅ」
( ^ω^)「おっおっ、今日は久しぶりに学校休むかおwww」
お互いに、ハハハッ。と声を出して笑う。
ほんとに、落ち着いた。
家に帰って父に謝ろうと思う、勝手に飛び出してごめん、と。
( ^ω^)「じゃ、おやすみなさいだお!」
(=゚ω゚)ノシ「いょぅ、おやすみだょぅwww」
( ^ω^)ノシ「ばいぶー」
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 19:58:08.15 ID:jFZ32NfsO
- .
まぁ、あの時はあんなことを思ったけど、流石に家を目の前にすると気まずかった。
(;^ω^)oO(1、3、5………)
頭の中で素数を数え、空気を吸い込み落ち着きを取り戻そうと試みる。
( ^ω^)「ふぅ……」
ガラララッ
引き戸を引く、靴を脱ぐ、リビングへ向かう、父と対面。
( ^ω^)「トーチャン…」
( `ω´)「ブーン…」
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 20:02:23.01 ID:jFZ32NfsO
- .
( ^ω^)「ごめ
( `ω´)「すまない、ブーン」
え?いやいやいや、ないでしょ。泣きながら謝られるってどうよ?
むしろ、父が謝るってことが奇跡。まさに奇跡。
( ^ω^)「べつに
( `ω´)「調理学校……行ってもいいぞ」
また話しを遮られた、いやでも落ち着け。
ちゃんと言い直そう……
って、えぇぇっ!!??
今まで否定してたんじゃないの?あれ違ったっけ?
(;^ω^)「と、トーチャン?何か悪いもの食べたかお……?」
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 20:09:14.11 ID:jFZ32NfsO
- .
( `ω´)「気づいたんだ、息子が独り立ちしようとしてるのに…
少し嫉妬してることにな…」
( `ω´)「俺は夢から逃げていた、逃げずにいても結局は……
叶うことはなかっただろうな」
( `ω´)「だからかも知れないが、お前が夢を叶えようと必死なのが……
気にくわなかったんだろう。
済まないブーン」
目から汁が漏れた、自分のことなんか何も知らない。
そう思っていた父、でもそれは間違いで、一番に考えていてくれたのだろう。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/29(土) 20:13:19.42 ID:jFZ32NfsO
- .
( `ω´)「ブーン、やりたいことをやれ。
俺はお前が夢を叶えるのを、見守ってやるから」
( `ω´)「俺のことは心配するなっ!
お前の、お前のやりたい事を存分にやれっ!!」
馬鹿野郎、心配なんかしてねぇよ、馬鹿野郎が。
頭の中では否定した、けれど心の中ではとても嬉しかった。
それを示すように、朝日をキラキラと反射させながら、
人生で一番美しい涙が、フローリングの床に形を残さず散った。
- 9: ◆lirqr6DwLQ :2008/03/30(日) 03:04:27.06 ID:tIY7UUDWO
- .
気がつけば、
進路、受験、合格。
そんな言葉で学校は埋めつくされていた。
( ^ω^)「僕達には関係ないお」
(=゚ω゚)ノ「そうだょぅ」
しかし僕達は、既に調理学校イタリアンコースへの入学が決まっていて、余裕がある。
( ^ω^)「放課後に、ゲーセン行くかお?」
(=゚ω゚)ノ「金ないからパスするょぅ」
こんなやり取りもバッチ来い!な受験生生活だった。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 03:08:40.50 ID:tIY7UUDWO
- .
父が調理学校への入学を、許可してくれた。その事実は確かで、
「海外に行くお」
と言う事実も受けとめてくれた。
とても嬉しいことだった。
(=゚ω゚)ノ「卒業したら……しばらく日本ともお別れだょぅ」
( ^ω^)「そうだおね、一人前になって帰ってきたいお」
僕達の進む調理学校は、海外にある。海外まで行く理由?
それはそこに、本物があるからさ。
今まで居心地の悪かった家も、しばらくは海外だ。という事を認識すると、不思議と居心地が良かった。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 03:13:56.09 ID:tIY7UUDWO
- .
春が近づき、とうとう日本から離れるのか。
と、冷静に考えた。考えれば考えるほど、家庭に愛着が沸いた。
あれほど嫌っていた家庭にだ、なんと言う不思議。
それはいょぅも同じようで、巣立ちの時までお互いに昔話等に華が咲いた。
しかし、時とは無情なもので瞬く間に時間は過ぎていく。
既に桜の花は、蕾にまで膨れあがる時期になった。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 03:19:14.50 ID:tIY7UUDWO
- .
( ^ω^)「トーチャン、そろそろ行くお」
ついに巣立ちの時、平日と言うこともあり、それほど人のいない空港。
その中で、僕は父と向かいあっている。
( `ω´)「あぁ、しっかりやれよ」
声が少し震えているのは気のせいだろうか、きっと気のせいだ、あの父親が泣くことなどありえない。
( ^ω^)「トーチャンも、しっかりやるお」
( `ω´)「あぁ、早く行け」
トーチャンは、くるり。と背を向けて早口に言う。
柄じゃないな、そうにおもう。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 03:22:16.81 ID:tIY7UUDWO
- .
小刻みに揺れ、とても小さく見える背中。
ちょっと前まで、とても大きく威厳さを漂わせていた背中。
あぁ、しばらくはこの背中も見えないのか。そう思うと同時、自分も成長したな。と思いニヤリ、と笑みがこぼれた。
( ^ω^)oO(美味しいもん食わせてやるから、待ってろお)
それだけを心で呟き、僕も僕の道を歩き始めた。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 03:24:33.48 ID:tIY7UUDWO
- .
空の旅は至って不快だった、父との別れや初めての飛行機。
全てが不快だったが、僕の目標の地であり第二の故郷になるイタリアの地を踏むと、そんな不快感は吹き飛んだ。
(=゚ω゚)ノ「やってきましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
( ^ω^)「イタリア」
温度差?時差?
そんなの関係ねぇ!
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 03:28:15.78 ID:tIY7UUDWO
- .
(;=゚ω゚)ノ「まぁ、早速寮にでも行くりょぅ」
( ^ω^)「そうするかお」
語尾が変なのには突っ込まない、それが俺流。
よいしょ、と荷物を持ち上げちょっと遠い寮を、バスの力を借りて目指す。
( ^ω^)「車のが気持ちいいお」
(=゚ω゚)ノ「空より大地っ!」
( ^ω^)「テンションたけぇお」
(=゚ω゚)ノ「おーのー」
バカだ、こいつはバカだ、生粋の馬鹿野郎だ。イタリアに来て、テンション上がるのはわかるけどさ……
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 03:33:16.78 ID:tIY7UUDWO
- .
実際に寮に着くと、テンションは一気に上がった。
寮の外装、それが「ここはイタリアだよー」と言っていたから。
( ^ω^)「とうとう…来たんだおね」
(=゚ω゚)ノ「そうだょぅ、憧れの地…」
( ^ω^)(=゚ω゚)ノ「イタリアにっ!」
不思議と、心配していた寂しさはなかった。
これなら、ホームシックにもならない。そんな風に思えた。
( ^ω^)oO(トーチャン、僕も頑張るお!)
決意新たに、僕はぐっ、と握り拳を作った。
それを見たいょぅも拳を握り、こちらに突き出す。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 03:37:30.07 ID:tIY7UUDWO
- .
ゴツッ
鈍い音、鈍い衝撃。
相棒はここにいる、そしてライバルも。
そう思わせるには、拳をぶつけ合わせるだけで充分だと感じた。
( ^ω^)「僕らの楽しい日々が始まるお」
(=゚ω゚)ノ「多分、日々変わらない生活になるょぅ」
「それでもいいお」
この言葉は、いょぅに響いただろう。
でも、
「お前がいるから」
とは聞こえなかったはずだ。だが、それでいい。
この時から、僕達の日々変わらない生活は始まった。
大きな期待を胸に抱いて。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 03:43:31.39 ID:tIY7UUDWO
- .
期待はするもんじゃない。
何処の誰だ?そんな言葉を言ったのは、その通りじゃねぇか。
( ´ω`)「おぉ……」
(=´ω`)ノ「いょーぅ」
本格的に、授業と言うか修行が始まって2週間が経った。
まだ2週間、たかが2週間、されど2週間。
2週間あれば、成熟しきっていない体を疲労させるには十分だ。
( ´ω`)「キツイお…」
(=´ω`)ノ「疲れたょぅ…」
朝は学校で、机にかじりつき。昼から夜まで、修行と言いお店にお世話になる。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 03:47:33.84 ID:tIY7UUDWO
- .
それだけで、身体的にも厳しい。それなのに慣れないイタリア語で、日本語のない空間は精神的にもダメージを与えた。
( ´ω`)「もっとイタリア語の勉強…すればよかったお…」
(=´ω`)ノ「まったくだょぅ…」
疲労からか、口数はお互いに減っている。
恋しい日本語も、いょぅのものではあまり嬉しくなかった。
ヤッパキツイワネー
日本語が微かに聞こえた、遂に幻聴まで聞こえるか、末だなぁ……
( ´ω`)「まったくだお…」
ヤッパリ、チョットシッパイシタカナー
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 03:54:21.46 ID:tIY7UUDWO
- .
いや、聞こえた。
確かに聞こえた。
右隣の部屋から、確かに聞こえた日本語。
( ゚ω゚) ニホンゴッ
(=・ω・)ノ イーョゥッ
二人して、バッ!っと上体を上げる。
( ゚ω゚) ニホンゴ!オンナオンナ
(=・ω・)ノ ウッホウッホアーッ
きょとん、とした目でお互いを見る。いょぅにも聞こえたらしい、幻聴じゃない。
嬉しさのあまり、我を忘れて思考し、行動していた。
コンコン
と言う音、それで意識がしっかりと戻る。
いつの間にか隣の部屋の扉を、ノックしていた。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 03:57:19.05 ID:tIY7UUDWO
- .
キィ、と扉が軋む音がした。
つまりは、開く音が。
「どちら様ー?」
開いた扉から見えた、二人の女。
ξ゚听)ξ
(*゚ー゚)
それは、見慣れた日本人らしい顔だった。
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 04:12:20.92 ID:tIY7UUDWO
- .
(*゚ー゚)「私達?私達はラウンジからよ」
ξ゚听)ξ「で、あなた達は何処から?」
( ^ω^)「僕達はVIPからだお」
とても驚いた、このような場所に日本人がいること。
そして彼女らが結構可愛いことに。
(=゚ω゚)ノ「結構気が合うょぅ」
彼女達……、
巻いた金髪が煌めく、キツそうなξ゚听)ξこの子がツン。
ショートの黒髪で優しそうな笑みをしているのが(*゚ー゚)この子しぃ。
二人共、ラウンジからはるばるイタリアまで、僕達と同じ理由でやって来ていた。
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 04:18:35.35 ID:tIY7UUDWO
- .
( ^ω^)「それじゃ、君達も店を持つために来てるのかお?」
(*゚ー゚)「そうよ、私は家が定食屋をやってるからちょっと興味あってね……
ほら、魚とか野菜とかで」
ξ゚听)ξ「それで私は、居酒屋をしたいから……
お酒とかおつまみの勉強がてらに」
(*゚ー゚)「まぁただ、イタリアンに興味が有るだけなんだけどね…」
店を持つ、だなんてバカげた夢。同年代でそんな夢があるのは、僕かいょぅくらいだと思っていた。
だからこそ、自然と口からこんな言葉が滴る。
( ^ω^)「おー、何か嬉しいお」
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 04:21:47.54 ID:tIY7UUDWO
- .
(=゚ω゚)ノ「同年代に、自分と同じ思いの子がいてかょぅ?」
流石だな、と思う。
僕の考えていることを見事に言い当てた。
( ^ω^)「そうだおー」
(*゚ー゚)「ふふふ、私達も何か嬉しいな」
ξ゚ー゚)ξ「そうだねっ」
はははっ、と一様に笑い声が重なった。
そして、それをきっかけに再び笑いが起きた。
イタリアに来てから2週間、久しぶりに心から笑った気がした。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 04:25:38.62 ID:tIY7UUDWO
- .
それからの日々は早い気がした、ただ慣れた。と言うのもあったかも知れない。
けど、そんなものより、身近に日本人の女の子がいる。
と言うことが嬉しかった。
( ^ω^)「おはすー」
( ^ω^)「おやすみだお」
昨日のことを思い出せば、この二言と修行の内容しか思い出せないくらい。
日々充実していた。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 04:28:47.09 ID:tIY7UUDWO
- .
( ^ω^)「お、そう言えば……」
(*゚ー゚)「ん、何?」
ξ゚听)ξ「くだらないこと言ったら、ぶち殺す」
((;=゚ω゚))ノ イーョゥ
(;^ω^)「先生が言ってたお、しっかり頑張れば店くらい持てるって」
ξ゚听)ξ「だから何?」
(;^ω^)「いや、みんなどんな店が持ちたいのかなー……って」
(*゚ー゚)「うん、くだらなくないね」
ξ゚听)ξ「そうね…」
良かったー、ちょっと失敗してたら。今頃アボーン
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 04:34:00.26 ID:tIY7UUDWO
- .
ξ゚听)ξ「うーん……」
(*゚ー゚)「あ、私ね、畳とかそういう、なんだろう……
"和"みたいな店、欲しいなぁ」
(=゚ω゚)ノ「それなら俺は、何か壁がレンガでできた店!
これに限るょぅ」
ξ゚听)ξ「なるほどね、だったら私は木をベースにした、
落ち着きのある店かな」
(;^ω^)「おっおっ」
皆、理想を語る。どれも良い感じだな、そうに感じられる。それなのに僕は……
「で、ブーンは?」
三つの声が重なって僕を突き刺す、いいの?僕だけ変な理想で……
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 04:37:59.09 ID:tIY7UUDWO
- .
(;^ω^)「僕は……そのー………」
じっ、と見てくる視線。あうあう、気まずいじゃないか。
(;^ω^)「石を使った店が………」
思い切って言ってみた。
シーン
何とも気まずい沈黙…、不味い。なんとも気まずいぞ……
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 04:43:19.77 ID:tIY7UUDWO
- .
(;^ω^)「僕が料理にかける意志は、石よりも固いです……」
(;^ω^)「ははは、なんちゃって……」
(=゚ω゚)ξ゚―゚)ξ(*゚‐゚)
(;^ω^)
(=゚ω゚)ξ゚ー゚)ξ(*゚ー゚)
(;^ω^) あうあう
気まずいなぁ…などと思っていると、次の瞬間には
どっ、っと笑いが巻きおこった。
(*;ω;)ノ「ははははっ、つまんねぇーょぅ」
(*;ー;)「ほんとほんと、すごく滑ってるよー」
ξ*;;)ξ「空気嫁wwww」
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 04:48:57.95 ID:tIY7UUDWO
- .
皆腹を抱えて笑っている、ちょっと自分の理想を小馬鹿にされたみたいで………
ちょっと悔しかった。
それでいて、何故かスッキリするのは何故だろう?
きっとあれだ、こうやって笑い合えること、それが嬉しいんだろう。
(*^ω^)「おっおっ」
自分も何の違和感もなく、何処か楽しくなり自然と腹を抱えて笑っていた。
このままずっと、平和な日々が変わらないで続いて欲しい。そう期待した。
期待は裏切るものだと、僕はまた気付かないで………
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 18:36:06.88 ID:tIY7UUDWO
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変わらない日々、それは何と素晴らしいことだろう。
イタリアに来てから、早二年。
イタリア語に慣れ、学校の授業など苦にならず、修行も順調。
寮に帰ってくれば、三人の仲間の声が聞こえる。
( ^ω^)「今日も頑張るお」
まさに順風満帆、今なら何でも出来る。
そんな気分になっている、今日この頃。
父さん、僕は元気です。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 18:41:42.01 ID:tIY7UUDWO
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学校はいつも午前中で終わる、これも日常。
もちろん、この後の修行もまた、変わらない日常。
まさに運命の歯車が、完璧に噛み合っている証拠なのだろう。
しかし、歯車とは脆い物。何らかの異物が挟まるだけで、音をたて崩れ行く。
(=゚ω゚)ノ「ブーン、今日は早く帰ってくるょぅ」
( ^ω^)「なんでだお?」
(=゚ω゚)ノ「――――!」
なるほど、なるほど。
そうかもう一年経ったのか。早いなー、うんでも悪くない。
( ^ω^)「わかったお!ちゃんと準備して待ってろお」
急ぎ駆け足で教室を出ようとする、しかしあることを思い出し、いょぅに叫んだ。
( ^ω^)「僕の大好物は、からあげだおっ!」
これだけで、いょぅには伝わるだろう。相棒だからな。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 18:44:43.95 ID:tIY7UUDWO
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( ゚ω゚) フアチャァァーッ!
父さん。
熱湯ってさ、頑張れば火傷しなくなるらしいよ。
( ゚ω゚) フアチチチチッ
でもさ、バカげてるよ。
∩゚∀゚)')「傷がつくから手を使うんだよっ」
とかって言う師匠、世界中探してもいないよ。
でもね、本当に熱湯に手を突っ込んでパスタを混ぜる人。
ここにいるんだよ。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 18:48:44.43 ID:tIY7UUDWO
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今日も僕は、修行と言う名の拷問をされている。
熱湯に手を突っ込み、パスタを混ぜる。流石にキツイよ。
いや、それでも僕は、夢のため。皆に負けられない。
そんな気持ちから、また熱湯に手を突っ込みます。
( ゚ω゚) ワーーッット
( ゚ω゚) フゥフゥフゥ
何と言うラスボス、まさに糞ゲー。ほんとにコンボイの謎。
( ゚ω゚) シショウ,モウダメダオ
∩゚∀゚)')「あー、じゃ休憩行っていいよ!」
( ゚ω゚) アリガトウゴザイマスオ
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 18:53:49.48 ID:tIY7UUDWO
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休憩、その言葉がどれ程に僕の心を癒すだろう。
ほんの30分程度とは言え、僕にはとても大事な時間だ。
( ^ω^)「よっこらセックス」
店の裏にある、店員が休憩するためのベンチ。
それに缶コーヒー片手に腰を下ろし、悲鳴をあげる足を休ませた。
( ^ω^)「ふぅ………」
( ^ω^)「……お?」
ぼーっと、夜空を眺めていた。そして、異変に気付いた。
何故だろうか?
寮の方向の空が赤い、とても綺麗な朱色をしている。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 18:58:30.16 ID:tIY7UUDWO
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( ^ω^)「綺麗だおー」
とても綺麗だった、しいて言うなら、真夏の夜空を彩る花火の色をしている。
急に、日本の夜空を思い出した。
そして何故か、いょぅやツン、しぃの笑顔も頭に浮かぶ。
それが何故か、楽しくなって気づけば笑っていた。
( ^ω^)「おっおっ」
今日が楽しみだな、17歳の誕生日を大切な仲間達が祝ってくれる。
ツンあたりが作るであろう、大好きなからあげが僕を待っている。
そうに思うだけで、笑みがこぼれ疲れが吹っ飛んだ。
あぁ、素晴らしきかな。
変わらない日々。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 19:04:05.97 ID:tIY7UUDWO
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( ^ω^)「休憩もらいましたー」
挨拶をし、店内に戻る。
あぁ、そうだ。
いつ帰らせてもらおうか、早めに言わなくちゃな……
( ^ω^)「あの、しし
∩゚∀゚)')「ブーン、もうあがっていいよ!」
( ^ω^)「きょう…て、え?
∩゚∀゚)')「今日はブーンの誕生日だよ!
早く帰れよ!むしろ邪魔だから帰れよ!」
師匠の顔がほのかに赤い、珍しく僕を気付かてくれてるのだろう。
珍しい、今日はどんな風の吹き回しだろう。
しかしそれでも、好意は嬉しかった。その気持ちに、素直になれない僕が恨めしい。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 19:07:40.04 ID:tIY7UUDWO
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(*^ω^)「あ、ありがとうございますおっ!」
きっと顔はにやけている、だって嬉しいんだもん。
(*^ω^)「お疲れ様ですおっ!」
挨拶をし店を飛び出した、多分今日の僕は、世界で一番早く動ける人間だろうな。
(*^ω^)「ブーーン」
寮へと続く道程、夜空がほんのりと赤い方向に向かって、僕は走った。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 19:13:43.14 ID:tIY7UUDWO
- パチパチ、パチパチ
といった音が僕を包む。
周りは暗く、ちょっとだけ赤い火が目の前にある。
状況にあわず、とても綺麗に見えた。
赤い火が、涙でキラキラと光る。
パチパチと鳴る音が、僕を祝福してるように思えた。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 19:17:04.77 ID:tIY7UUDWO
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パチパチと言う音が拍手なら、目の前で光る火は蝋燭。
だったら…
―――――燃え尽きた寮はバースデーケーキかな。
はははっ、神様もなかなかのプレゼントを用意してくれたなぁ。
あぁーあ、こんなことになるなら、修行なんか行かなきゃ良かった。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 19:21:45.32 ID:tIY7UUDWO
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( ;ω;)「……お」
ただ泣くだけだった、燃え尽きた寮を目の前に、ただ僕は泣くだけだった。
多分それは、気が動転していたからだ。
冷静に考えれば、寮が燃えているだけで皆は無事かも知れない。
( つω;)「おー……」
一筋の光が見えた気分だった、皆死んでしまった。
そうに思っていた僕からしたら、冷静に考えれば普通は生きてる。
そうに思えば差し込む、一筋の光が。
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 19:25:14.36 ID:tIY7UUDWO
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そう思えば、迷うことはなかった。
病院なり警察署なり、そこまで走れば良いこと。
そう考えれば、自然と疲労しきっている足は動いた。
( `ω´)「おぉぉぉ」
一筋の光を目指し、ただ走った。先ずは病院だろうか?
うん、そうだな。
火傷してるかも知れないし、みんな………
待ってろおっ!
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 19:29:23.20 ID:tIY7UUDWO
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( ω )「嘘…だお」
病院に着いた、いつもなら消毒臭い病院も、今日は不快な臭いがしていた。
「ツン、ツン!」
と叫びながら病院の中を走った、途中職員に止められるまで……
恥ずかしさは気にせず走った。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 19:33:30.56 ID:tIY7UUDWO
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そして、案内されたのがここだ。
地下にある、薄暗い部屋。
今まで来たことは無い部屋で、いょぅやしぃの姿は、この部屋では見かけられなかった。
ただ、体中に白い布を掛けられた"何か"が数多くあり、全てが異臭を発していた。
( ω )「ツン……?」
目の前に横たわり、白い布が掛けられたそれ。
それは、ロールした金髪がはみ出していて、一目で彼女だと分かった。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 19:38:40.76 ID:tIY7UUDWO
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ハラリ、と顔にかかった布を取った。
ξ-:::
顔の右半分が、酷い火傷で誰の物かわからなかった。
しかし、左半分でわかる。
綺麗に整った眉、切れ長の目、綺麗な金髪。
全てが彼女の物だと、私はツンだと、誇示しているように思えた。
( ^ω^)「………」
不思議と涙は出なかった、人間らしさを失ったか?
とも思った、けれど多分本当は、ただ現実を受け入れられないだけなのだろう。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 19:42:06.87 ID:tIY7UUDWO
- .
( ^ω^)「おやすみだお」
初めて見た、彼女の寝顔。
こんな場で、こんな状況で、それでも僕は可愛いなと思った。
とても愛しく感じた、きっとこんな気持ちになることは……
以後ないだろうな、と思った。それほどまでに、とても愛しく思った。
( ^ω^)「おやすみ……ツン」
もう一度そうに言って、まだ綺麗な彼女の左頬にキスをした。
恐らく、
人生最初で最後の、キスを………
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 19:47:57.46 ID:tIY7UUDWO
- .
そのキスをすると同時、何とも言えぬ不快臭が再び鼻をツン。と襲った。
(;^ω^)「あ……」
ちょっと目眩がした、体中の節々から痛みがする。
筋肉に力が入らない、立っていることが辛くなり、そのまま倒れこんだ。
「大丈夫かっ!?」
と誰かの声が聞こえた、それでも僕の体は重力に吸い寄せられていった。
いょぅの声じゃなかったな、それだけが残念に思えた。
そして視界は、
――――黒に染まった。
- 29: ◆lirqr6DwLQ :2008/03/30(日) 19:50:21.62 ID:tIY7UUDWO
- はーい、
第4楽曲 四部
修了です。
説明が行き届いてないとこもあると思うので、とりあえずの質問とかありますか?
- 31: ◆lirqr6DwLQ :2008/03/30(日) 20:01:19.63 ID:tIY7UUDWO
- じゃそろそろ
第4楽曲 最終部
行きますね。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 20:08:03.61 ID:tIY7UUDWO
- .
カラカラカラカラ
そして渇いた音がする、一通り語り終わったブーンが、喉の乾きを癒すための行動で鳴った音だ。
( ^ω^)「そんな感じだお………」
( -∀-)「へぇー」
( ^ω^)「ちょっと説明が変なのは、昔話だからだお」
( ・∀・)「そこら変は脳内補足さ」
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 20:12:29.60 ID:tIY7UUDWO
- .
( ^ω^)「おっおっ」
( ・∀・)「それにしても……
そんな過去がねぇ…」
( ^ω^)「意外かお?」
「うん、まぁね」とモララーは呟き、コホンと咳払いをする。
( ・∀・)「それで、続きは?」
( ^ω^)「やっぱり話さなきゃダメかお?」
( ・∀・)「そうだね、とりあえず、いょぅとしぃはどうなったんだい?」
と言って、モララーはナッツに手を伸ばした。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 20:19:02.53 ID:tIY7UUDWO
- .
しかし、その手がナッツを摘まむことはできない。
( ・∀・)「あはは、もう空だよ。早いね」
( ^ω^)「結構話したお、まぁもうちょっと付き合えお」
( ・∀・)「うん、続けたまえ」
( ^ω^)「いょぅはその後、焼身死体として発見されたお」
( ^ω^)「しぃは行方不明になって、今でも行方不明だお」
早口にブーンは語る、目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
( ・∀・)「ふぅん……」
カラカラ
きっとかける言葉がないのだろう、モララーはグラスを回しながらブーンの言葉を受け止めた。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 20:25:48.48 ID:tIY7UUDWO
- .
( ^ω^)「僕はその後、学校をやめて単身イタリアで修行をしたお」
( ^ω^)「それは、叶えられなかったみんなの夢を叶えためだお」
カッ、っと目頭が熱くなる。何時からか胸の奥深くに封印した何か、それは一度封を解くと一気に流れ出る。
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 20:32:47.07 ID:tIY7UUDWO
- .
( ;ω;)「バーをしながら、レンガの壁を見ると思うんだお…」
( ;ω;)「これが、いょぅが目指した夢だって」
( ;ω;)「定食屋をしながら、座敷に座って朝ご飯を食べてる人を見ると見えるんだお…」
( ;ω;)「しぃが笑いながら、接客をしてる姿が」
ずっと胸に溜めていた思い、それが口からこぼれ、
頭の片隅にあった彼等の夢、それを思うと目から涙が溢れた。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 20:40:00.15 ID:tIY7UUDWO
.
( ;ω;)「居酒屋をしながら木のテーブルを見ると感じるんだお」
( ;ω;)「ツンが木に囲まれた店で、お客さんと笑いながら仕事をしてる空気を」
遥か彼方の過去、そこに散っていった無数の思い出や存在。
それは、思い出した瞬間に脳内でギュッ。っと凝縮し、瞼の裏で涙腺を刺激する。
( ;ω;)「だから僕は………」
( ;ω;)「みんなが夢みた店、その理想1つ1つを」
( ;ω;)「この店に詰めこんでるんだお」
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 20:46:18.77 ID:tIY7UUDWO
- .
( ・∀・)「………」
延々と泣く声、そしてこの店に込められた気持ち。
それをモララーは感じているのだろう、恐らくは副店長として。
僕は幾分落ち着いた、涙を拭い震える喉から声を絞る。
( ^ω^)「あの仲間がいた、平和な日常」
( ^ω^)「その中で、何かが散ったお…」
( ^ω^)「それは仲間の命で夢で……」
( ^ω^)「それで考えたんだお、唯一生き残った僕は、何ができるんだろお?って」
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 20:49:39.03 ID:tIY7UUDWO
- .
( ^ω^)「でも、僕はバカだからなかなか答えが出なかったお」
( ^ω^)「答えが出たのはつい最近だお」
( ^ω^)「みんなの理想を詰めこんで、みんなの夢を背負ったこの店」
( ^ω^)「ここで、みんなの夢を叶えるため、ただそれだけのためだって」
( ^ω^)「この想いは……」
( ^ω^)「日々変わらないお」
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 20:54:29.30 ID:tIY7UUDWO
- .
( ^ω^)「ははは、ちょっと臭くなったお」
我ながらそう思った、三十のオッサンがこんなことを語って…
まったくバカバカしい。
( ・∀・)「ははは、そうでもないさ」
( ・∀・)「良い夢だと思うよ、まぁ――」
そうに言い、モララーは席から立ち上がる。
どうやら、帰るようだ。
( ・∀・)「僕がこの店で、働き続ける理由にもなるからね」
ガララララッ
そしてモララーは、
「また明日、おやすみ」
そうに言って店から出ていく、手をひらひらと振って。
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 20:58:48.26 ID:tIY7UUDWO
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( ^ω^)「また明日……」
ふぅ、やっぱりモララーがいなくなると……
静かだな、そう思いながら一抹の寂しさを持ってレンガ作りの壁に触れた。
( ^ω^)「はははっ、あいつはいょぅに似てるお」
きっといょぅは、これレンガの壁から僕を見守ってくれてるだろう。
しぃは、座敷にちょこんと座って見守ってくれてるだろう。
ツンは、木製のテーブルに腰をかけ、フンッ。と鼻で笑ってくれているだろう。
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/30(日) 21:03:10.48 ID:tIY7UUDWO
- .
ガタッ、っと音をたて椅子をしまった。
それそろ僕も寝よう、明日だキツイ。
( ^ω^)「……おやすみだお」
誰に言うでもない、しいて言えば店に言った。
そのとき、
木製のテーブルから、レンガの壁から、座敷の方から。
昔よく聞いた声で、
「おやすみ」と懐かしい声が聞こえた気がした。
僕の、新しい日々。
お前達の夢を叶えるため、店を切り盛りする毎日。それが僕の店を切り盛りする理由。
例え昔を思い出しても、新しい店員が入っても僕の理由は……
―――日々変わらないよ
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