('A`)理想桃源郷のようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 02:26:54.27 ID:UpTKW9GcO
プロローグ

俺の名前はドクオ。
人間の温もりを知らずに生きる、今時珍しいホモ・サピエンス亜種。

マジョリティが正義になる人の世で、珍種は淘汰され、なかったことにされる。
俺も、掲げられた正義に疑問を浮かべ、自分なりの正義の旗を立てたものの、それが折られるのは早かった。

生意気にも社会に反抗した俺が、そこから立ち直ることはなかった。
ずっと、地底を見ながら生きていた。
時折、地上から石を落とされたり、雨を通されたりしたが、生きるには十分な環境だった。
 _
( ゚∀゚)「二度とツラ見せんじゃねーぞ、カス。……お、今日も結構入ってるな」

( #)A(#)「は……い」

地上人に媚び諂い、金を貢ぎ、彼らのためのサンドバッグであろうとも、生きていれば価値がある。
そう思っていた。

( #)A(#)「もう……限界だよ……」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 02:28:09.20 ID:UpTKW9GcO
 
( #)A(#)「ここを生き残って、何になるんだ……」

小、中、高と黙り続けてきた。
学校が変われば、何か変わると思っていた。少しは賛同が得られると勘違いしていた。

( #)A(#)「死のう……せめて遺書を書いて、解怨してから……」

ゆるゆると立ち上がって、制服についた泥と草を払う。
足を引きずり、抑えながら、駐輪場まで歩くと、誰にも関与されずに、早退した。

(#)A`)「……ただいま」

家に帰っても、この時間ではまず親はいない。それでも、呟いてみる。
もはや帰らない、世話になった屋根への感謝の気持ちだったかもしれない。

('A`)「あなたがこれを読んでいるとゆうことは、私はもうこの世にいないのでしょう(笑」

適当に遺言書を走り書き、俺を追い込んだ奴らの名前を書き並べた。
それをリビングテーブルに置いて、お湯を沸かしてカップ麺を啜った。
最後の晩餐は、鶏ガラ醤油味だった。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 02:30:05.32 ID:UpTKW9GcO
 
('A`)「ごっそさん」

スープまでしっかり飲み干し、ゲップをして、時計を見た。

('A`)「もう、頃合いかな……綺麗な月が出てる」

痛む膝を庇いながら立ち上がって、窓から外を眺めた。

死ぬならば、かねてよりやりたい方法があった。
そしてそれは、人通りが極端に少ない時間でなければ出来ない。

('A`)「ららー、自転車にのってー♪ ケツみたいな月が映るー海岸へとー♪」

我ながら下らない歌だ。
こんな事ばかりしているから、マイノリティに押し込まれるんだ。
さっさと死のう、そうしよう。

ガシャガシャ自転車を漕ぎ、夜の県道を走る。
車に轢かれて痛い思いをして死ぬのだけは御免なので、安全運転で。

やがて、道は海岸線の道路に出る。風は穏やか、漣が立っているだけだ。
ブレーキを5回締めて、アイシテルのサインを送ると共に、自転車を止める。

('A`)「……」

たからのはま。この砂浜には、そんな名前が付いているらしい。
要らん知識だが、冥土の土産に持っていこう。誰かが喜ぶかも知れない。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 02:32:03.87 ID:UpTKW9GcO
 
(#'A`)「……うお……りゃっ!」

自転車を砂浜に投げ捨て、手を払う。

('A`)「よし、行こう。ブイまで行けば、まず戻ってこれんだろ」

これでも、多少泳ぎの心得はある。
それに、あの辺りでは横流しの海流があるらしく、海難事故がよく起こっている。

制服を脱ぎ捨てて、パンツ一丁に。ついでに、愚息をちょろりと。
どうせ死ぬからってやりすぎかも知れないが、これからは迷惑をかけないから許せ。

('A`)「よし、いざ冥界へ! GO!」

元気よく水に飛び込むと、まずその冷たさに驚いた。
凍っているみたいに冷たい。これはヤバい、死ぬ。あ、そのつもりだったか。

:('A`):「うー、さみ……こんな事なら空飛んで死ねば良かった」

ぶつくさ言いながら、海流に逆らって泳いでいく。
しばらくすると浜へ続く海流もなくなり、軽く進んでいく。

('A`)「……深く潜るか。その方が発見が遅れるだろ」

俺はそんな思い付きで、体勢を変えて水底へ向かっていった。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 02:34:03.07 ID:UpTKW9GcO
 
(;'A`)「……ぼぼぼ……ぼこぼこぼこ」

足を無茶苦茶にばたつかせて潜っていったものだから、すぐに息苦しさを感じた。
しかし、ここで戻っては何の意味もない。ここで死ななければ。

(;'∀`)「ぼぼぼぼぼぼーぼぼぼぼぼぼーぼっぼごっ」

景気付けに、歌を口ずさんでみると、しょっぱいどころの話じゃないくらい
しょっぱい海水がぐいぐい体中に染みていった。

(;゚A`)「……ぼ」

慌てて水を掻き、水面を目指す。
しかし、おかしい。そんなに深くない所にいるはずなのに、全然水面に届かない。
ごちゃごちゃ考えているうちに、手足が硬直する。視界に闇が広がっていく。

(;゚A`)「がっ……」

最後の空気を吐きだした。
さっき思い浮かんだ、人間は水の中でも呼吸が出来るかも説の証明は出来そうにない。

人間は、地上でしか生きられない。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 02:36:09.87 ID:UpTKW9GcO
 




  ('A`)  理想桃源郷のようです





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