('A`)理想桃源郷のようです

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 02:38:19.48 ID:UpTKW9GcO
 1  シャングリラ

声が聞こえる。

「――!」

優しい声だ。

「――ろ!」

まさか、この声。……俺に向けられてる?

(;'A`)「はっ!」

本能的に、体に力が入ると分かった。呼吸も出来る。
嬉しいあまり、ガバッと上体を起こすと、額に何か固いものがぶつかった。

(;'A`)「あぎゃくぁwせdrftgyふじこlp;@」

奇声を発しながら、もんどり打って転がった。
そして俺は、久しぶりにその声を聞いた。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 02:41:03.27 ID:UpTKW9GcO
  _,、_
川 ゚ -゚)「お遊戯はそこまでにしてくれないか?」

(;'A`)「……だ、だだ誰!?」

初めて彼女の存在に気がついた。
一目見て美しいと思い、二度見して頬の黒子が気になった。
まったく、惜しい顔をしている。

川 ゚ -゚)「おじゃるず……ではない。私はクー。この桃源郷の最高権力者といったところか」

('A`)「桃源郷? びっくりするほど鍾乳洞なんですけど」

辺りを見回せば、石筍が雨後のように散らばり、天井から灰色の鍾乳石が吊り下がった、
至って普通の洞穴であった。こんな猫の額が桃源郷と言うなら、あっちは天国じゃないか。

川 ゚ -゚)「それは、ここが単なる入り口だからだ。看板に従え。そうすれば郷が見える」

立て札がぴょんぴょん飛び跳ね、自分を誘っている。
まさか、俺を地獄に連れていくつもりじゃないかと考えて、大事なことを思い出した。

(;'A`)「……本当か? ……というか! そもそも、俺は何で生きてるんだ?」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 02:44:34.54 ID:UpTKW9GcO
 
川 ゚ -゚)「……別に良いだろう、そんな事?」

しかし、女ははぐらかすような態度をとった。
気に喰わない、うざい。ジョルジュが俺に言った言葉が、まるっきり当てはまる。

(;'A`)「良くない良くない! 俺が生きてるのか死んでるのか、はっきりしてくれよ!」

女はため息をつく。そのやり方がまたまた腹立たしい。
わざわざ眉をしかめて、眉間に中指を置いて雑念深そうにため息をつく。

川 ゚ -゚)「細かい事にこだわりおって……まぁ良い、話そう。落ち着いて、黙って聞くがよい」

('A`)「……ん」

川 ゚ -゚)「まず、ドクオ。お前は生きている。海の底から、海流によってここまで流されてきた」

川 ゚ -゚)「水を多く飲んではいたが、この洞穴に流れ着いていたのを私が運良く見つけ、蘇生処置を施した。感謝しろ」

それに対しては、何の文句も無かった。
最後の時、死にたくないという意識が確かにあった。
だったら女は、命の恩人だ。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 02:47:14.95 ID:UpTKW9GcO
 
('A`)「って、ちょっと待てよ……」

そこで、彼女の言葉が引っかかる。

川 ゚ -゚)「おい、黙って聞け。そこで、お前がこの桃源郷で暮らすにあたって……」

('A`)「水難事故の蘇生処置……そもそも、心配蘇生法と言ったら……」

目の前の女が、いくら惜しいとは言え、かなりの美人には違いなかった。
股間に血が集まるのを感じる。

(*'A`)「……ンマウス・ッツー・マウスお行った訳ですか!」

川 ゚ -゚)「……全く、これだから童貞は助けたくないんだ」

(*'A`)「え? ごめんなさい、ファーストキス奪っちゃいましたか?」

川 ゚ -゚)「いいか、人工呼吸とキスは似て非なる……キスというのはな、」

ファーストキスを奪われた立場のくせに、見当違いの事を言いながら小躍りしていると、
女の顔がずいと近付いてきた。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 02:50:20.56 ID:UpTKW9GcO
 
唇に、信じられないくらいの柔らかさ。ちゅ、と甘い実はじけて、果汁が唇を潤した。

('A`)「」

川 ゚ -゚)「……こういうものだ。人工呼吸とは全く違う。それで、何だったか……」

女の話はほとんど耳に入らなかった。
一人になれたら、すぐにオナニーしようとばかり考えていた。

川 ゚ -゚)「……だから、気をつけろ。分かったら、あの看板にでも付いていけ。どこかに出る」

('A`)「あ、はい。ありがとうございますー」

桃源郷はこちら、と書かれたいかにもな道標は、待ちかねていたらしく、いっぺん宙返りをしてみせた。
そして、ものすごいスピードでピョンピョン跳ねて鍾乳洞を進んでいく。

(;'A`)「わ、ひゃっ! 待ってー!」



川 ゚ -゚)「……あいつ、本当に話を聞いてただろうか」



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