('A`)は世界に魔法を見つけるようです

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:43:28.07 ID:iherNopz0
少し休んでまた歩く。雨の時は木陰で休む。日が暮れれば
火を焚き寝袋に包まって寝る。

そうして三日歩いた後、予定より遅れていることをクーが口にすると、
「ならドクオが疲れたらブーンが背負っていくお!」とブーンらしい提案をした。
ドクオは眉間のしわを隠さなかった。

しかし意外にもクーが試してみる価値はあるなどと同調した。

三日目、それじゃあ、とドクオがブーンにおぶさると
明らかに旅の速度が上がった。

午後の日差しの強い時間を木陰で休んだ以外は歩き続け、
夜にはシーベイまでわずか二時間というところまで来ていた。

しかし夜の移動は危険である。安全策をとって腰を下ろした。
半径100メートルほどありそうな森の、少し入ったところに
火を焚いた。
大木の葉が赤く揺れた。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:44:23.09 ID:iherNopz0


焚き火の周りで食事を取る。
もう明日には目的地に着くので、材料を全て使った。
ブーンがウトウトしているのは、やはりドクオを背負った疲れがあるのだろう。

クーが食べ物をブーンの口元に持っていくとウトウトしたまま
食べるのが可笑しかった。

「今日……けっこう地震あったね」

「うむ。二度ほどは歩きにくいくらいの揺れだったな」

「やっぱりこっちに原因があるのかなあ……」

「かも知れない。シーベイについたら、市民への聞き込みも含めて
 精力的に調査しよう」

「……原因、何だと思う?」

「わからない、し、判断材料がないまま立てる仮説に意味があるとも思えないな」

クーの断つ物言いに、ドクオは話を打ち切られたと思い、
寝袋を荷物から引っ張り出した。
心の中では「言葉遣いはきっぱりしてるのに、感情表現が婉曲なんだよなあ……」
と思っている。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:46:21.64 ID:iherNopz0
おそらくもうちょっと問い詰めれば「明日は精力的に調査するのだから
早く寝たほうがよい。さらに言えば今日のペースは私も少々疲れたので寝たい」
と白状するだろう。

それが分かっているドクオは素直に寝袋に入った。

「ああ、眠いのは誰も一緒なんだ……」などとドクオが夢うつつに
抗議していると、突然なにかが覆いかぶさってきた。

感じたのは髪、香り、暴力。「僕、クーに犯される!?」と思った一瞬のちに
狼のうなり声を聞いて事情を理解した。

狼が現れたので、クーが自分を守ってくれたのだ。

「起きろブーン!狼だ!」



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:48:13.80 ID:iherNopz0
クーが大声でブーンを起こす。「んあっ!?」と間の抜けた声だが、
既に斧に手をかけ中腰で防御の姿勢をとっている。

狼の数は存外多い。十数頭はいようか。これほどの数に気づかなかったとは、
旅の疲れとは恐ろしいものだなあ……。
ドクオの眠気交じりのうつろな思考が整いかけた時、狼がブーンに襲い掛かった。

ブーンはまだ斧を振るえる体勢ではない。斧を盾にしてやり過ごす。

クーが剣をブーンのいないほうに構える。ブーンを援護したところを
背後から襲われたらドクオとクーの二人とも助からない。冷静な判断である。

しかしそれでも姉は、弟が気にかかった。
どうにも全精力を前方のみに注ぐことができないでいる。

ドクオは「焚き火を背にして!」と叫んだ。
ドクオの叫び声などめったに聞いたことのないクーは、一瞬それが
誰の声か分からなかったが、指示には従った。
合理性を直感したからだ。



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:49:13.31 ID:iherNopz0
正面から飛び込んだ狼を避ければ、狼は焚き火に突っ込む。そうなれば
避けるだけで危機は危機でなくなってゆく……。そう考えてのことだった。

作戦は功を奏し、狼は斬られ、また炎に飛び込んで戦意を喪失してゆく。
その間、ドクオは周囲を観察していた。狼だけならこの状況のままいける。
しかし狼だけでなかったら……。観察する目には強い力が宿る。

クーとブーンは武器を振るい、身をかわす。
降ってきた木の葉にすら剣を振るってしまい、クーは自分が
焦っていると確認した。
それでも傍らにブーンがいて、背後にドクオがいることを思い出せば
少し落ち着いて狼どもをにらみつけた。また飛び掛ってくる狼を
屈んでよけながら脚を斬った。



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:50:33.26 ID:iherNopz0


あらかた狼が片付いた。クーとブーンは肩で息をしている。
残る狼も、半ば戦意を喪失し、退却のタイミングをうかがっているように見える。

「そのまま退けば追いやしないのに……」ドクオはそう思ったが、
野生の生物はそのように考えてはくれないのだろうか。

いや、野生の生物こそ己の生死には敏感であるはずだと気づいたドクオは、
再び周囲に目を凝らす。
なぜなら、この野生生物は野生のルールに従っていないからだ。

クーとブーンは互いに姉弟ならでは、軽妙に声をかけ合いながら、
それでも気を抜かない。

しかしその言葉の軽さも、疲労を紛らわせるためのものだとドクオは知っていた。
俺もねえちゃん欲しかったなあ、と考えた瞬間。

急に意識が一点に集中した。

左前方40メートル。
いる。
そして、いると気づいたことに、気づかれた。



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:52:04.20 ID:iherNopz0
ボルル……

異形の獣が息をするだけで、静かに空気が揺れて伝わる。
ドクオが見たのは体長4メートルに及ぼうかという、てらてら光る狼だった。

いや、それは獣ではない。モンスターだ。
てらてら光っているのは、全身の毛が水で出来ているためだとドクオは見た。
そして、それゆえに避けて焚き火に突っ込ませる策が通用しないことにも気づいた



そうであれば、やるべきことは逃走か、先手を打つか。
ブーンとクーはまだ狼を見ている。モンスターに気づいていない。

「みんな、逃げ……」ドクオが逃走を指示する直前、モンスターが
口を大きく開いた。

「仲間になにをした!!」

モンスターから人語が発せられ、突進してくる速度を見れば、ドクオは逃走が
既に不可能だと悟った。
もう、選びうる選択肢は一つしかない。

突撃。



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:53:20.19 ID:iherNopz0
それを命じるのも指揮官の仕事である。
ドクオはモンスターから一瞬も目をそらさず、手にしていた杖を使って
敵を指し示し、叫んだ。

「あそこだ!突撃!」

そう叫びながら杖を握る手に力を込めた。

ブーンとクーが、まずはドクオを見、そして指し示した方向を見た。
そして、異形のモンスターを確認し、ブーンは姉ちゃんが
何とかしてくれると思い、クーは状況に極端な変化がない限り
全滅すると思った。

そして二人は妙な熱さを感じ、モンスターがもうもうと湯気をたてながら突進し、
小さくなり、動かなくなり、やがて自分たちのわずか数メートル手前で
消滅するのを、見た。

ドクオの持つ『ギラの杖』の先端が、熱線を放射しきった余韻で
ゆらゆらと歪んで見えた。

杖から出た熱線は、わずかばかり周囲の枝葉も焦がしていた。

ブーンはなにがなんだかわからず、モンスターの消えた地面を斧で突っついた。
クーは焦げた枝葉を見、そこから空中をたどるように視線を移してドクオを見た。
ドクオは予定していない生還に、ただただ呆然としていた。

『ギラの杖』が発動した。

もう、今夜は眠れなかった。



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:54:00.67 ID:iherNopz0


「……ギラ!」

一瞬の熱線が走り、地面を焦がした。
先ほどの威力はないものの、明らかにこれは神具の力が発現している。

「ドクオ、君は魔法使いの適性があったのか」

「すっごいお!ドクオ!これなら宿屋の調理場で重宝されるお!」

「そんなレベルではない。魔法使いだ。国家機密クラスだぞ」

「いやぁ……照れる…………ギラ!」

ボッ

「おっおっおっ!すごいおドクオ!」

はじめて触れる魔法。
その力にクーすら興奮を覚えたが、マパ茶を飲んでいるうちに
一つ疑問も浮かんだ。



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:55:13.39 ID:iherNopz0
「……先ほどのが『ギラの杖』の力であるとすれば、王の戴冠式で
 たいまつに火をともすという程度で済んだのはおかしくないだろうか」

「……え?」

「ドクオ!次はあの岩にやってくれお!」

「ブーン、少し黙りなさい。つまりだ、あれほどの威力を屋内で放てば、
 その場にいる全員が重傷をおってもおかしくない。
 ……なにか矛盾を感じるのだが……」

ドクオは生まれてはじめてのヒーロー扱いに水をさされたようで戸惑った。
しかしブーンが「ドクオは杖の天才なんだお!」と的外れな賛辞を送り、
皆で笑って話は流れて、いつしか太陽は地平線の向こうから顔を出していた。

「昼前にはシーベイに着くだろう。それから腹ごしらえをして、
 調査は……明日にしよう」

クーが温情をもって班長の仕事をこなした。



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:56:22.26 ID:iherNopz0


シーベイ。

王国の西端にある都市。海に臨む港のは美しくも
港に船がないことが、既に港が機能していないことを示していた。
中央港は廃れ、現在は古い港の北と南に新しい港がつくられた。

人口3000人ほどの都市であるが、漁業と流通に支えられ、治安も良い。
食は海に多く依存しており、他の土地では食べないような海洋生物も、
ここでは一般的な食材として扱われている。

三人は到着後すぐに宿に入ったが、興奮からなかなか寝付けず、
夜になってようやく寝息を立てた。
翌朝はスッキリと目覚めて、三人は街用の服を荷物から引っ張り出した。
久しぶりに着る街着に、みな少しばかり心が浮き立つ。

街を歩いてみると、昨日は疲れて気にならなかったことが
今日はよく目に入った。

雑貨店の店先に、細かい格子模様のバッグがひっかけてある。
革でもない、織物でもない。素材をたずねると、魚の皮だといわれた。
魚の皮の耐久性など、せいぜい食事中に破れる程度だと思っていた三人は、
驚きを隠せなかった。

また食料品店では油の種類の多さに驚かされた。
鯨油、鯖油、鮪油、鰹油……。それぞれ調理の際には
使い分けられるという。



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:57:24.55 ID:iherNopz0
「さすがに広いな」

「……これ、王都より広いよね」

「それはそうだ。王都は決して大きな都市ではない。ここシーベイや
 南の商業都市ゼッゼローネの方が規模は大きい」

「おいしそうなにおいがたくさんするお……!」

「フ……目ざといな。ちょうど頃合だ。食事にしよう」

ブーンはさっそく旅行者向けの大規模レストランに飛び込もうとするが、
クーとドクオがそれを阻止し、地元民があつまる活気あふれる食堂へ入った。

「……情報もあつめるんだから、旅行者のいるところじゃだめだよ」

「おっおっおっ!なんでもいいお!たくさん食べるお!」

「なんでもいいことはない。お前も仕事を意識しなさい」

クーが混雑した店内を奥に進み、食堂のオバチャンに声をかける。
しばらく話していると、食堂のざわめきの向こうにオバチャンの
笑い声が聞こえた。

「ねえちゃんが笑わせてるお」

「……また妙に堅苦しいこといって笑われてるだけじゃない?」

クーがこちらを手招きし、三人はがたついたテーブルについた。



99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:58:01.62 ID:iherNopz0
「旅行者向けではない地元の料理を頼んでおいた。うまいうまいと食べ、
 店の人たちには気分良くなってもらうとしよう」

「……そうすれば口も開きやすくなるってことね……」

「地元の料理ってお魚かお!?楽しみだお!」

しかしテーブルに届いた魚料理を見て、開口一番ブーンが「グロいお!」
と言ってしまった。すぐにドクオが「グ、グ……グローリア!まさに
グローリアだね!」と誤魔化したが、それはオバチャンの爆笑を誘った
だけだった。

「海の中ではね、見た目がグロいやつほど美味しいんだよ。さ、おあがり」

オバチャンの言葉にウソはなく、三人は夢中になって平らげた。
クーすらが「うまいうまい」を言うことも忘れて皿に挑みかかって
いたのが印象的だ。

「……これほどの料理だとは思っていなかったな」

「……美味しかったね……」

「おかわりもしたし、八分目でやめておくお!」

ドクオはブーンの言葉に眉間にシワを作るが、オバチャンがまた爆笑する。
オバチャンは食後のセ茶を出してくれ、そのまま近くの椅子に腰掛けた。

「あんたたちどっから来たんだい?」というオバチャンの言葉をきっかけに、
クーとドクオは情報収集を開始した。



101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 00:58:54.49 ID:iherNopz0
「王都から参りました。ところで伺いたいのですが、ここは昔から地震が
 多いのですか?」

「地震?ああ、ここらは多いんだよ。昔っからさね」

「……あの、最近になって特に多くなってるということはないですか?」

「んん、まあね。まあそういう時もあるよ。そのうち落ち着くさ」

シーベイの人間は地震にいちいち震えないのだとはオバチャンの言。

「……じゃあ、周期的に地震の多い時期が来るんですか?」

「周期的かどうかは知らないけど、まあここらの名物さ」

「……どなたかしっかりしたお年寄りに話を伺いたいのですがご紹介願えませんか


 昔の話を伺いたいので」

クーの真剣な態度に少し驚いたようなオバチャンは、厨房にむかって大声で
「じーさん!じーさん!」と声をかけた。厨房からは刀のような
包丁を持った細身の老人が、目をぎらつかせながら出てきた。



105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 01:00:18.25 ID:iherNopz0
「……なんだよ」

「この人たちが話をしたいんだってさ!」

「話?」

「ともかくこっちに来ておくれよ!包丁は置いてきておくれ!」

老人が一旦厨房に引っ込んだすきに「あれはね、うちの料理長なんだ」と
教えてくれた。もうずっとここで魚を捌いているという。

「……なんだよ」

じーさんと呼ばれた男は確かにシワの多い顔をしている。
しかし体つきはしっかりしており、港町だからか黒く日に焼けている。

口数少ない態度から、ウソを言わない雰囲気が伝わってきた。
情報収集にはうってつけの人物だ。



109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 01:00:59.47 ID:iherNopz0
「……す、すごい包丁ですね。あれ、どこで手に入れたんですか?」

ドクオは会話の取っ掛かりとして包丁を選んだ。職人かたぎに見える
老人には、こういう切り口が適当だと思ったからだ。
そして、それは当たった。

「……わかるのか?あれは、あれよ。始祖王さまがこの港にくださったのよ」

「……始祖王が!?」

「おうよ。……しらねえのか?始祖王様は趣味で鍛冶をなさったんだ」

「ふむ、聞いたことがあるな……ところでご老体、昔の地震について伺いたい。
 よろしいでしょうか」

料理長は不満げな顔を隠さなかった。
ご老体、という言葉に反発するように、老人はできるだけ
正確に答えようと思ったようだ。

「昔と今、地震に変化はありませんか?」

「……昔はこんな頻繁じゃなかったな。それに、規模も小さかった」

「それは、つい最近だけが異常に地震が大きく、多いということでしょうか」



112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 01:01:24.33 ID:iherNopz0
「……」料理長は記憶の糸をたどる。

「……そうじゃねえ。徐々に強くなってる気がする……。
 昔の地震ではめったに棚から物が落ちるなんてことはなかった。
 20年前はときどき、いまはしょっちゅうだが……」

他にも聞き込みをする必要はあるだろう。
しかし、料理長は重要な情報を教えてくれた。

地震は、50年ほど前から時と比例して強くなっている。



114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 01:01:46.02 ID:iherNopz0


食堂をでて港へ行く。
料理長が港の景色は是非見ておけといったからだ。

オバチャンが三人の食いっぷりを教えたら、急にもじもじし始めて
シーベイの見どころを教えてくれたのだ。

観光客は南北の新港で買い物をするが、景色は旧港が一番だと言った。

話にたがわず美しい。
波は大きく勢いをもって岸壁にぶつかり、
忘れたころにしぶきが優しく霧となって降ってくる。
しかし次のしぶきが来る前に、海風と日差しが濡れた肌を乾かしてしまう。

長く見ていれば体温を奪われてしまうが、景色にのめりこんで
体が冷えるのに気づかない。

遠くに見える島はきっと航海の目印として親しまれているのだろう。
荒波の真ん中に森に覆われた島があった。

「なるほど美しいな……手分けして聞きまわった限りでは、
 この50年でさまざまな変化があったようだ」

「……うん」

ドクオが美しさに同意するより前に、本題に入ってしまった。
ドクオは開いた口をそのままに、相づちをうつ。



115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 01:02:55.78 ID:iherNopz0
「まず、地震が強くなっていること。次に、この旧港が使えなくなるほど
 波が荒れるようになったこと。ほかにも海路の異常や、海鳥の移住など
 この50年で11の異常が見つかった」

「……こうやって見ると、地震よりも海の異常が目に付くね……」

ドクオが、三人で集めたメモを見ながら言う。

「海になにかあるなら、漁師さんにきいたらいいお!もぐもぐ!」

聞き込みの途中で手に入れたタコの串焼きを両手に持ってかぶりつきながら
ブーンが言う。タコは新鮮なものを強火で十数秒だけ加熱し、
甘さと歯ごたえを楽しめるシーベイ名物の一つだ。

「漁師か……一理ある。ふむ、では古い漁師を探すとしよう」

クーはすぐにこの場を離れようとして、ふと足をとめて海を見、何かつぶやく。
ドクオはクーの美しい口が「やはり美しいな」と動くのを見た。
湿度の多い風がクーの髪にまとまりを出す。風は重そうに
髪を揺らして抜けていった。

ドクオも「きれいだ」と思った。



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