('A`)ドクオの大学生活のようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 13:27:00.68 ID:sSyyY0/E0
(;'A`)「……」
ああ、どうしてこんなことになってしまったのだろう。
中央に設えられたテーブルの前にひとり腰かけ、
サークルの趣旨とはおよそかけ離れた、広い、清潔そうな室内を見渡しながら頭を抱えた。
こんなはずじゃなかった。
俺の大学生活は、もっとオレンジでビリジアンに始まるはずだったのだ。
この日のために服も揃えた。髪形も変えた。
妄想という名のシミュレーションを500回くらい繰り返した。
それなのに、どうして出だしから躓いてしまったのか?
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 13:31:08.12 ID:sSyyY0/E0
何を間違った?
何が間違っていた?
そもそも、なんで俺はここにいる?
冷静になって考えてみる。
大体、こんなところにいる義務も必要性もないはずだ。
こんな怪しげなサークルの部室に、一体全体どうして俺は足を運んだんだ?
(;'A`)「やっぱり帰ろう! ダッシュで!」
心の中のBボタンを押して、立ちあがった。
同時に、自分がここにいる理由を思い出してしまった。
_
( ゚∀゚)「来ないと、うんこ食わすから」
そうだった。うんこ食べさせられるんだった。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 13:34:28.66 ID:sSyyY0/E0
あの目が本気でうんこ食わせそうな色を帯びていたことを思い出す。
いじめ百戦錬磨の俺とはいえ、さすがにうんこは食べたくない。
(;'A`)「はぁ……うんこはハードル高いよ……」
再び椅子に腰をおろした俺は、再び頭を抱え、これまでを振り返ることにした。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 13:35:17.01 ID:sSyyY0/E0
-
高校までは筋がね入りのいじめられっ子だった。
自腹でパシリなんて当たり前。
教科書なんて日常茶飯事に行方をくらましていたし、
罰ゲームでクラスのマドンナから保健の教師、学年一の曙まで、
およそ両手の指じゃ足らない数の女に告白させられたこともある。
ちん毛をライターであぶられたこともあったっけ。
思わず、思い出し笑いをしてしまう。
うんこ食べさせられることに比べりゃ、なんと微笑ましいいじめだったことだろうか。
まあ、そんなわけで俺は、暗黒色のいじめらデイズから脱却するため、
故郷から遠く離れた田舎の私立大学に、親に高い金払わせて入学することにした。
知り合いはおろか、成績の悪いいじめっ子さえも来ないような名も知れぬFランク大学に、だ。
大学デビューという名の変身を果たして。
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 13:38:32.11 ID:sSyyY0/E0
-
髪型は黒のアシンメトリー。
唇と鼻、耳には無数のピアス。首には黒のチョーク。
黒のコーデュロイジャケットに、インナーは胸元まで開襟した純白のシャツ。
パンツはシックなダメージ加工を施されたデニム。
親父のハゲ散らかした頭よりテッカテカなブーツをはいて、
全身にシルバーアクセを散りばめれば決まりだ。
(;'A`)「ポ、ポケモンゲットだぜ!」
マスターボールの捕獲率よりも完璧だった。
社会現象にまでなったコミック「NANA」の男どもを参考にしたファッション。
彼らのようにガリガリな俺がそれらを身にまとえば、姿はまさにロックンロール。
学園祭のステージでセンズリしたって違和感はないだろう。
これから華の大学生活が始まる。
それは天地神明に約束されたことだった。
その予定だった。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 13:42:12.71 ID:sSyyY0/E0
-
入学式を終え、学部のガイダンスを受けた後、
サークルひしめく新入生勧誘会場へと足を運んだ。
雑踏の中、道がモーゼの十戒のように開けた。
みな、俺のあまりの完璧さに恐れおののきつつも、彼らの瞳には羨望の色が見てとれた。
ような気がした。
割れた海の道を確固たる足取りで進む俺の狙いは、もちろん軽音楽サークルだ。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 13:43:17.82 ID:sSyyY0/E0
それらしきサークルのブース前でジョジョ立ちしていた。
やがて、あまりの俺のロックさに驚きつつも、
あまりロックとは言えない先輩方がギターを持たせてくれた。
しかし俺はタンバリンとトライアングルとカスタネットしか楽器は弾けなかったので、
迷った挙句、最もロックな行動に出た。
(*'A`)「ロックンロ―――――――――――ル!!」
叫び、ギターのネックを両手でつかみ、そのボディで軽音楽部のブースをたたき壊した。
出入り禁止になった。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 13:46:55.10 ID:sSyyY0/E0
-
('A`)「なーに、音楽サークルなら他にもあるさ」
そうだ、サークルなんて星の数ほどはないが100くらいはある。
その中に俺の目に適うロックなサークルは、多分2つくらいはあるだろう。
そう思い、翌日もロックに新入生勧誘会場へと足を運んだ。
入場を拒否されてしまった。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 13:50:51.88 ID:sSyyY0/E0
-
それから一ヶ月が経った。
当然サークルには入れず、なぜか学部の誰からも話しかけられない俺は、
混雑しているというのに俺の周り半径2メートルだけ円を発動したかのように
ガラガラな学食内で、一人ロンリーにプリンを食べながら、
頭を抱え、ロックンロールに自問自答していた。
(;'A`)「ジーザス……なぜなぜWHY……なぜなぜWHY……」
俺の大学デビューは完璧だったはずだ。
それなのに、所属するサークルはおろか、友達の一人も出来てはいない。
訳が分からない。世の中いったいどうなっているのだ。
こんなロックな人間が、いったいなぜロンリーにプリンを食べなければならない?
怒りにまかせ二つ目のプリンをぷっちんしようとした、その時だった。
_
( ゚∀゚)「やあ。君がドクオ君だね」
俺の円の範囲内に、一人の男が珍入してきた。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 13:55:40.94 ID:sSyyY0/E0
- _
( ゚∀゚)「お噂はかねがね耳にしているよ。
まだ入るサークルが決まっていないんだってね」
(;'A`)「はぁ……」
不躾にも俺の隣に鎮座した男の横顔を、まじまじしげしげと眺めてみる。
きりりとした太い眉。
ハーフのように整った堀の深い顔立ち。
無作為に跳ねたショートの髪が、
黒のロンTにデニムというシンプルなファッションにとてもよく調和していた。
さらには座っていてもわかるほどの高身長に、バランスのとれた体格。
(#'A`)「こいつはイケメンの味がするぜぇっ!」
_
(*゚∀゚)「あひん!」
俺はロックに、男の頬をペロリと舐めた。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 13:59:52.77 ID:sSyyY0/E0
- _
(*゚∀゚)「はひん! あふん! はわわわあああ!
ぎんもちいいいいいいいいいっっっっい!!」
男は床に転げ落ちて悶絶した。
息を荒らげ、放送禁止用語を連発しそうな勢いで奇声を発し続けた。
俺を取り囲む円の半径が、2メートルから5メートルまで拡張された。
_
(*゚∀゚)「ひっ、ひっ、ふー……いや、噂に違わぬ男だよ、君は」
紅に染まった頬で立ち上がり、肩で息をしながら俺を見下ろした男。
俺のプリンを手に取り一口で平らげると、親指を突き出し、言った。
_
( ゚∀゚)「だからこそ、僕は言おう。君をわがサークルに迎い入れたい、と。
将来、部長としての地位を約束して、だ」
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:02:58.21 ID:sSyyY0/E0
-
('A`)「……ほう」
俺が腕を組み顎を四十五度にうつむければ、
食堂の安っぽい椅子だって高級ソファのように見えるだろうから不思議だ。
俺が手に取れば、食堂の水だってドンペリニヨンに早変わりだぜべイビー。
そして俺はこのようにロックに平静を装ってはいたが、内心はうはうはウィンブルドンだった。
無理もない。ようやく俺の素晴らしさを見抜く目の持ち主がここに現れたのだ。
それも、まるでメンズノンノのモデルのように優雅な笑みを浮かべるハーフのようなイケメン
さらには将来の部長職まで約束してきた。
俺の大学生活もようやくしかるべき世界へのレールに乗り出したらしい。
そう思っていた。しかし。
('A`)「……詳しく聞こうか。君のサークルの趣旨は?」
_
( ゚∀゚)「童貞を貫くサークルだ」
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:05:51.50 ID:sSyyY0/E0
(;'A`)「は、はい? 今なんて……」
予想だにしない答えに思わず素の自分を出してしまった。
慌てて取り繕いつつも、肩からずるりと垂れ落ちたコーデュロイジャケットの皺は戻らない。
_
( ゚∀゚)「簡単に言えば、童貞を守る鍛錬をしつつ、すでに童貞・処女を失った馬鹿どもが
これ以上ちんちんかもかもに走らないよう目を光らせようという趣旨のサークルだ」
(;'A`)「えっと……」
あまりのことに声すらでない。
俺はロックンロールのペルソナを張り付けるで精いっぱいだった。
しかし。
_
( ゚∀゚)「君、童貞だろ? かく言う私も童貞でね! あっはっは!」
そして、周囲から寄せられる冷たい目。
バシバシと俺の肩を叩く男の手により、俺の最後の砦、ロックンロールの仮面ははがれおちた。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:10:21.73 ID:sSyyY0/E0
なぜ。どうしてこいつには、俺が童貞だとわかったのだろう?
俺の仮面は完璧だった。誰がどう見てもさくらんぼなんてついていない、
百戦錬磨のロックンローラーを装っていたはずなのに、どうして、なぜ?
周囲から嘲笑の声が聞こえてきた。
がっくりとうなだれる。
もういい。オレンジデイズな大学生活捨ててやる。
もともと、恥の多い生涯を歩んできましたのだ。
俺の人生は白濁色なのだ。
最後の最後、ここで期待に浮かれる学生たちの前で股間をさらけ出し、
華々しく伝説的にズリセン100連発を達成し、
血の色をした精液を今日の食堂のランチであるイカフライ定食にタルタルしつつ、壮絶にオナニ死にしてやる。
そう思い立ち上がった、その瞬間だった。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:16:44.03 ID:sSyyY0/E0
- _
( ゚∀゚)「若者よ。死に急ぐな。まだ道はある」
そう言って、男は紙を俺に手渡した。
うつろな視線で確かめると、どうやらそれは地図らしい。
_
( ゚∀゚)「明日の夕刻五時に、その場所へ来い。絶対にだ」
俺の肩をポンと叩くと、男は悠々と雑踏の中へ消えていった。
_
( ゚∀゚)「来ないと、うんこ食わすから」
そう、捨て台詞を残して。
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:17:55.37 ID:sSyyY0/E0
-
(;'A`)「う〜ん……もううんこは食べられないよ〜……」
(;^ω^)「ブヒッ! 大丈夫ですかお! ブヒッ!」
(;'A`)「あ……寝てたの……かぁ!?」
(;^ω^)「ブヒッ!」
目覚めるとそこは地図に書かれていた部室の中で、俺の隣には力士が座っていた。
力士は、思わず発した俺の奇声に驚いて鳴き声を上げた。
いや、力士ではない。この表現は力士に対して甚だ失礼だ。
改めてまじまじと見るに、どうやら彼は学生のようで、全身だらしない脂肪で覆われていた。
春先だと言うのに胸元と脇の下に汗染みを作り、ブヒブヒと鼻息を漏らしている。
そして手と首元には長いバスタオルを装備。
こいつはまごうことなき百貫デブだ。
間違いない。
彼は力士ではなく、豚だ。
新ジャンル、豚人(とんじん)だ。
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:22:11.33 ID:sSyyY0/E0
(;'A`)「えっと……貴方は?」
(;^ω^)「新入生でブヒ。それと、この人も」
そう言って、豚人は俺の足元、テーブルの下を指さした。
俺は再び驚きおののき、思わず椅子から転げ落ちた。
( ´∀`)「……」
テーブルの下には、銃を持った軍人がいた。
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:25:58.57 ID:sSyyY0/E0
俺はどうやらパレスチナに迷い込んでしまったらしい。
そんなわけはない。
(;'A`)「あ、あんた、な、何してんだ!」
( ´∀`)「……」
俺は情けなく床に尻をつきつつも、腰が抜けたことを悟られぬよう虚勢をもって声を荒らげた。
すると軍人は、ぬらりとテーブルの下からはい出してくる。
(;^ω^)「ブヒッ、軍事マニアのモナー君だそうだブヒ。
それと僕は、ブヒ、ブーンって言うおブヒ」
( ´∀`)「……」
しきりに汗をぬぐうブヒーン君に紹介され、迷彩服に身を包んだモナー君が敬礼をする。
俺は不覚にもつられて、「あ、ドクオであります」と敬礼を返してしまった。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:29:06.17 ID:sSyyY0/E0
-
(;'A`)「……で、いつからテーブルの下に?」
それからしばらくの沈黙の後、腰が元に戻った俺は、立ち上がりつつ軍人を問いただす。
(;^ω^)「三時間前からだそうでブヒ」
(;'A`)「え……そんな前から……うそだろ?」
代返してくだすった豚の言葉を受け、豚が言葉を発したことより何より、時計を確認して驚いた。
俺がこの部室に来て、まだ一時間弱しか経っていない。ということは。
(;'A`)「あんた……ずっと俺の足元に……いたの?」
( ´∀`)「……」
モナー君はニヤリと笑った。
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:33:29.14 ID:sSyyY0/E0
- _
( ゚∀゚)「よーう! みんないるね! 関心関心!」
気まずい沈黙が漂う中、荒々しく扉を開け颯爽と現れたのが、
俺をこんな未国籍地帯に呼び出しやがった件のイケメン、
今日もショートの無造作ヘアーに黒のロンTがよく映える、名前はまだ知らないさんである。
名前はまだ知らないさんは、立ち尽くす豚人と軍人とロックに挫折した俺の前で仁王立し、
俺たちの顔を順番に眺め、満足げにうなずき、笑った。
_
( ゚∀゚)「すでに交流は深まっているようだな。
お前らはこれから四年間付き合うことになるんだから、そのつもりでな」
どうやら名前はまだ知らないさんの中で、俺がこのサークルに入部することは確定事項らしい。
冗談じゃない。
なぜにオレンジ色の予定だった学生生活を、豚人と軍人とともに過ごさねばならぬのだ。
俺は腸を煮え繰り返しつつ、控えめにおずおずと手を挙げた。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:36:58.09 ID:sSyyY0/E0
(;'A`)「あの……ちょっといいですか……?」
_
( ゚∀゚)「なんだ? 俺の名前か? ジョルジュ長岡っていうんだ!
日本人とグレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国人のハーフで、
今は三回生だ! 好きなものはプリンとAVだ!」
(;'A`)「いえ、違います」
_
( ゚∀゚)「じゃあ何さ? 俺の性癖ならもう少し後で言うけど?」
そんなこと聞いてどうすると、般若の表情を心の中でだけ作った紳士な俺。
そうだ、ロックンロールの次は紳士を目指そうと心に決めつつ、やっぱり控えめに尋ねる。
(;'A`)「いえ、あの、どうして俺たちはここに……」
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:42:12.15 ID:sSyyY0/E0
- _
( ゚∀゚)「うん、いい質問だな。ちょっとそこに座れ」
(;'A`)「はあ……」
椅子があると言うのに床に座らせるジョルジュ某氏。
疑問と不満に満たされた俺の横で、
豚人は体操座りしようとして脂肪が邪魔なためひっくり返り、
軍人は命令されたことがよほど嬉しいらしく、銃を担ぐように抱え喜々として正座した。
そして某長岡氏は腕を組み、俺たちを見下ろした。
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:46:18.38 ID:sSyyY0/E0
- _
( ゚∀゚)「ここに集まっていただいた面々は、どう見ても童貞で、
今後一切童貞を捨てられなさそうな、可能性が限りなく0の男たちである。
そして、無論、俺も、である」
開口一番にとんでもないことを言いやがった。
俺の頭は怒りに煮えくりかえりつつも、横の二人を眺めて妙に納得した。
そして、あんたが童貞捨てられないわけがないだろうと、再び憤慨した。
_
( ゚∀゚)「ならば、我々は互いに精進し、
『いっそのこと一生童貞でいいんじゃね?』を合言葉に、
まだ見ぬ崇高な仙人の玉座を目指すべく、己の純潔を固辞し続けていこうというサークルだ」
イケメンはベラベラと得意げに、実に情けないことをまくし立てる。
_
( ゚∀゚)「あ、ちなみに部員は俺だけね。
いやー、去年は素質のありそうな奴がいなくてさー。
その点今年は豊作だな! 自信持っていいぞ、お前ら。あっはっは!」
冗談じゃない。
そんな自信など、スコッティにくるんでどぶに捨ててやる。
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:50:08.02 ID:sSyyY0/E0
それからも長々と訓戒を垂れる長岡氏の言葉をうつろな眼差しをもって拝聴しつつ、
ようやく彼の話に区切りを見つけて、俺は問いかける。
(;'A`)「あの……二つばかり質問をば……」
_
( ゚∀゚)「おう、なんだ?」
(;'A`)「長岡さんは……」
_
( ゚∀゚)「マスターと呼べ」
(;'A`)「はい?」
_
( ゚∀゚)「俺のことはオナニーマスターと呼べ。じゃなきゃうんこ食わす」
本当に食べさせられそうだったので、俺は素直に従った。
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:53:45.48 ID:sSyyY0/E0
(;'A`)「あの、オナニーマスターは昨日、
『すでに童貞・処女を失った馬鹿どもがこれ以上ちんちんかもかもに走らないよう目を光らせ』るって
おっしゃいましたよね?」
_
(*゚∀゚)「いやー、マスターだなんて照れるな……後輩っていいもんですね!」
(;'A`)「いえ、話を聞いてください」
ダメだこの人、なんて思いつつ、
紳士に生きると決めた俺は粘り強くネゴシエーションを続ける。
(;'A`)「あの、ご自分が純潔を貫くのは個人の自由ですが、
それを他人に強制するだなんて……それはさすがにどうかと……」
_
( ゚∀゚)「いや、だって俺たちだけ童貞って、超ムカつくじゃん?」
二の句を告げなかった。
非常に論理的かつ客観的な完璧なる答えだ。
俺は不覚にも、豚人と軍人とともに頷いてしまった。
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 14:56:49.13 ID:sSyyY0/E0
-
(;'A`)「えっと、それじゃもう一つ……」
思った以上の論理性と客観性を備えた、
容姿の素晴らしさに知性の後光を背負った某ジョルジュ長岡氏のご尊顔を拝顔しつつ、
俺は質問を投げかけさせて頂いた。
(;'A`)「マスターは、どう見てもモテモテパラダイスな顔なんですが……」
_
( ゚∀゚)「……」
_
( ;∀;)「……」
すると、長岡氏は突然大粒の涙を流し始めた。
( ´∀`)「……!」
同時に、脱兎のごとく飛び上がった軍人が見るも鮮やかな対術で俺を床に組み伏せた。
そして無言のまま、銃口を俺の眉間へと押し付けた。
- 76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 15:00:26.09 ID:sSyyY0/E0
部屋には、すすり泣く長岡氏の嗚咽だけが響く。
俺は銃を突き付ける軍人と見つめ合いつつ、
隣の豚に人語で甚だ失礼ではあるが、問いを投げかけた。
(;'A`)「えっと……ブヒーンさん? この軍人さん、どうしたの?」
(;^ω^)「上官を泣かしたものは……まあ、見ての通りだブヒ」
(;'A`)「ああ……なるほどね……ありがとね……ははは……」
恐るべし軍事マニア。
どうやら俺を射殺するつもりらしい。
そして、恐るべき豚人。
彼には人語だけでなく、軍人の言葉までもわかるらしい。
伊達にブヒブヒ言ってないってことか。
- 78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 15:07:23.29 ID:sSyyY0/E0
- _
( ;∀;)「……いや、いいんだ三等兵。銃を仕舞ってくれ」
( ´∀`)「……」
上官の言葉に立ちあがった軍人(三等兵)は、
うんこを食った人間を見るような侮蔑のまなざしを俺に送りつつ、再び正座した。
俺は軍人をにらみ返す。
失礼な、俺はうんこなんて食ったことない。
犬がションベンした後の電柱をなめさせられたことはあるが。
_
( ;∀;)「確かに……女の子と付き合えるところまではいけるんだよ……」
軍人とにらめっこしている間に、どこからかどぶろくとコップを取り出した長岡氏は、
いつのまにか酒をあおりながら、俺たちの前に正座していた。
- 80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 15:09:54.23 ID:sSyyY0/E0
- _
( ;∀;)「これでもね、五回くらいはね、女の子とベッドインもしたんだよ?
だけどね……だけどね……ふえーん……」
(#'A`)「だーかーら! その続きが聞きたいんですってば!」
人生初めての酒を飲みつつ、
俺は壊れかけのラジカセのように同じところで泣いてはまた話が戻る長岡氏に憤っていた。
その横では、酒に弱い豚が本日のランチである豚カツをブヒゲーブヒゲーと吐いていた。
共食いした罰だと俺は思った。
そして軍人は、酒をひと舐めしただけで卒倒した。
人間真面目すぎるのも考えものだなと、紳士な俺はまたひとつ人生について学習しつつも、
酔いの勢いに任せて長岡氏の頭をこずく。
(#'A`)「だけど? そこまで行っといて、なんで未だ童貞なんですか!」
- 83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 15:16:01.69 ID:sSyyY0/E0
- _
( ;∀;)「……」
そして本日何度目かの沈黙へと落ちた長岡氏は、
放課後、校舎裏に呼び出した男子生徒に告白する女子高生のごとき潤んだ上目づかいで俺を見て、
しかし、「やっぱり言えない」と泣き崩れた。
(#'A`)「あーも! てめぇ! 電子レンジでチンして、東京湾に沈するぞ!」
酔いと怒りにまかせ大きくなった俺の度胸は、
いじめられっ子の手をしてイケメンの胸倉を掴ませる勢いを得ていた。
そして俺は、長岡氏の胸元に違和感を覚える。
(;'A`)「え……なに……このゴワゴワした感触」
_
( ;∀;)「……ああああああああああああああああああああああああああ!」
そして、奇声を発した長岡氏は、おもむろに黒のロンTとデニムを脱ぎ出した。
その声に軍人は飛び起き、豚人は顔をあげ、俺は絶句した。
- 89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 15:21:09.83 ID:sSyyY0/E0
- _
( ;∀;)「さあ、見ろ!
俺が童貞を捨てられない理由を!
その目でハッキリとな!」
自暴自棄になった長岡氏。
下着一丁となった彼の姿を見て、俺たちはことのすべてを納得した。
ブラジャーに、女性物のパンティ。
しかも高級そうな純白の、上下対になった白物。
日本人とイギリス人のハーフである、見目もさわやかな類まれなイケメンは、
それを黒のロンT、そしてデニムの下に装着していたのだ。
- 94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 15:26:02.27 ID:sSyyY0/E0
- _
( ;∀;)「俺は女の下着でなきゃどうしてもダメなんだ! それもシルクの!」
(;'A`)「シ、シルクの!?」
_
( ;∀;)「ああ……そうなんだ……
だって……たまんねぇんだもん……この締め付けられる感覚がよぉ……
なのによぉ……あいつらだって同じもんつけてんのによぉ……
俺のこと変態って叫んで飛び出してよぉ……次の日から連絡とれなくなるんだよぉ……」
それはそうだろう。
女性物の下着を身につける男に比べれば、まだ軍人と豚人の方が正常に見える。
おいおいと泣き崩れる長岡氏。
( ´∀`)「……」
そして、俺の中で変態二番手の地位に格上げされた軍人は立ち上がり、
長岡氏の肩に優しく手を置いた。
- 98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 15:30:09.40 ID:sSyyY0/E0
- _
( ;∀;)「モナー三等兵……」
( ´∀`)「……」
見つめ合う二人。
変態同士、どうやら通づるものがあるらしい。
一方で、俺の横で笑いをこらえていた豚人はというと、
限界を迎えたのか、全速で部室外へと転がっていった。
なんだかよくわからない甘美で耽美な沈黙が流れる。
そして、その声は聞こえた。
( ´∀`)「…………プッw」
- 105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 15:39:57.43 ID:sSyyY0/E0
軍人が、笑った。
上官を泣かせた俺を射殺しようとした彼が、上官のブラにパンティ姿を見て笑ったのだ。
俺は臨界を迎えた。腹をかかえて笑い転げた。
こんなに思いっきり笑ったのはいつ振りだろうか。
すべての仮面をかなぐり捨てて笑うことが、こんなにも楽しいことだなんて思いもしなかった。
(*'∀`)「ぎゃはははははははははおろろろろろろろろろろ〜」
俺は笑い続けた。笑いゲロをしながら笑い続けた。
軍人も笑いつづけた。部室内で銃を乱射しながら笑い続けた。
長岡氏は下着姿のまま、不貞寝した。
そして、いつの間にやら帰ってきた豚人、彼が買ってきたかつ丼を食べ、
「共食いは最高か?」と豚人に笑いかけたのを最後に、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。
うっすらと覚えているのは、寝ぼけ眼の内に、長岡氏から何か話しかけられたことくらいだった。
翌日、大学の事務局ヘ、まごうことなき俺の拇印付き入部届けが提出されたことを知ったのは、
数日後、軍人と豚人が学部棟へと俺を迎えに来た時だった。
- 110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 15:55:48.75 ID:sSyyY0/E0
はい、右をご覧ください。
(;^ω^)「ブヒブヒ! 暑いブヒ! とんかつ食いたいブヒ!」
右手に見えますのが、世にも珍しい人語と軍人語を理解する豚でございます。
では、続いて左下をご覧ください。
( ´∀`)「……」
左下、五月晴れのキャンパスの上でほふく前進しているのが、
はるか60数年前に解体された日本軍軍人の生き残りでございます。
そして、その中心に見えますのが。
('A`)「……」
そうです。
華のキャンパスライフを全力でどぶに投げ捨てたわたくし、ドクオでございます。
- 111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 16:04:20.03 ID:sSyyY0/E0
以前、学部にて、今わたくしの両脇に存在します二匹の変態に声を掛けられて以来、
わたくしは落ちるところまで落ちようと決心した所存でございます。
暑苦しいロックンロールな服など、とうの昔にプライドとともにどぶに投げ捨て、
現在はしまむらで購入いたしました\1,500のTシャツに身を包みつつ、
変態二匹を引き連れ、わが聖域たる部室へと、周囲の冷たい視線を浴びつつ歩を進めておる次第です。
_
( ゚∀゚)「よう! 愛すべき後輩諸君! 今日も早速会議を始める!」
そして、部室の中心に鎮座され、女性物の通販雑誌を卑猥な目的ではなく、
あくまで購入を目的としまして手にし、下着欄をまじまじと眺めておられるのが、
変態の頂点におわします偉大なるわが先達、ジョルジュ長岡氏であります。
- 113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 16:09:47.60 ID:sSyyY0/E0
- _
( ゚∀゚)「みんな、席についたか?」
(;^ω^)「ブヒブヒ! クーラーつけて欲しいブヒ!」
( ´∀`)「……」
('A`)「ついていますよ、マスター」
長岡氏を正面に、わたくしが右側、豚人が左側、
そして軍人が机の下に潜り込み、今日も定例の会議が始まりました。
本日の会議はいつもと雰囲気が異なっております。
なぜなら、本日はこれまでの総決算、
およそ一ヶ月かけて練りに練ってまいりました計画を実行に移す最終確認の会議なのです。
- 117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 16:23:14.13 ID:sSyyY0/E0
全員の集合を確認した長岡氏は、
今やすっかり彼の副官としての地位をローマの堅城のように確立いたしましたわたくしを見て頷き、
卓上にキャンパス内の地図を広げつつ、叫びなさいます。
_
(# ゚∀゚)「さて、諸君! 今回の我らの目標はここだ!」
そして彼が御指で示しなさったのが、
キャンパスの中央に絢爛と架かる一基の橋、俗称「卑猥橋」でございます。
あまりにも巨大で壮健な目標を前に、豚人そしてわたくし紳士一同はゴクリと生唾を飲み込みます。
ちなみに軍人は机の下にいるため、ファイバースコープで地図を確認しております。
いかなる場合も、そうやすやすと身をさらけ出すわけにはいかないようです。変態とは困ったものです。
この卑猥橋とは、卑猥な名にはにつかない景観の良さからキャンパスの名物となっているモのです。
しかし、深夜になるとそのロマンティックが止まらない雰囲気のために、
不埒で無恥で無知なオスとメスどもが、寄り添いながらキスを、挙句の果てには、
健全なる本小説ではとても描ききれないような情事にふけることで高名な、
我々これまで童貞これからも童貞にはとても許しがたい場所なのです。
- 119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 16:29:08.61 ID:sSyyY0/E0
- _
(# ゚∀゚)「諸君! この健全なるキャンパスの上で
卑猥な情事にふけるバカものどもを粛正するために、
我々はいったい何をなせばいい!?」
高らかにのたまう長岡御大将のお声に
恐縮ながら答えを返そうとしたわたくしに先んじて、
机の下からめったに聞くことのできない声が響いてまいりました。
( ´∀`)「殺せ! 殺せ! 殺せ!」
いえ、殺してはダメです。
これだから変態は困りものです。
- 124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 16:35:23.41 ID:sSyyY0/E0
- _
( ゚∀゚)「いや……殺すのはさすがに……ねぇ?」
そう言って口ごもる長岡氏は、さすがただの変態とは一味違います。
良識と大義名分を有する変態の中の変態、言ってみれば変態天皇といったところでしょうか。
今日も黒のロンTの下には、誰にも知られないようシルクのブラジャーが装着なされております。
('A`)「僭越ながら、わたくしめから提案が」
_
( ゚∀゚)「よし、聞こう!」
といっても、計画はあらかじめ決まっております。
言ってみればこのやりとりは、戦に向かう前の壮行式、そして訓示に過ぎないのであります。
しかしそれこそが成員の士気を、さらに言えば作戦の成否を左右するのでおろそかには出来ません。
わたくしは凛とした通る声にて、こう述べました。
('A`)「卑猥橋を爆破いたします!」
- 130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 16:43:36.42 ID:sSyyY0/E0
- _
(# ゚∀゚)「その通り! ブーン!」
(;^ω^)「はいでブヒ!」
_
(# ゚∀゚)「先陣は貴様で行く! 華々しく散る覚悟はあるか!?」
透きとおる純白のブラのようなお声で、変態天皇は醜い豚めに声を掛けられます。
しかし、一方で豚と言えば。
(;^ω^)「え!? 僕死ぬのかブヒ!」
_
(# ゚∀゚)「可能性の問題である!
大体32%くらいの確率でお前は死ぬ! だから大丈夫!」
(;^ω^)「ちょwwwwwwww意外に可能性高いブヒwwww」
まったく、こんなところで躊躇するとは、
これだから温室でぬくぬくと堆肥を貪っていた豚はいけません。
- 136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 16:54:12.78 ID:sSyyY0/E0
続けて、天皇は彼に忠誠を誓いつつ、
ブラ姿を笑った軍人にお声を掛けられます。
_
(# ゚∀゚)「モナー! あれの用意は出来ておるか!」
( ´∀`)「……」
お声を受けて机の下からニュっと伸び出した手が、部室の壁際を指差します。
そこにあったのは、数個のダイナマイト。
ご丁寧にも時限装置付きです。
こんなものを用意するとは、常軌を逸したマニア、つまり変態はたいしたもんです。
_
( ゚∀゚)「よろしい! では、作戦の決行は午前0:00ちょうど!
集合は現地にて! みな、センズリと睡眠をかかすなよ!」
('A`)「了解いたしました!」
(;^ω^)「勘弁してくれブヒwwww」
何か聞こえた気がしましたが、豚語など人類にはわかりません。
かくして、我々は自宅へと帰り、来るべき時に備え英気と精気を養うこととなりました。
- 139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 17:01:44.12 ID:sSyyY0/E0
時は来たりて、午前0:00。
大学生にとってはまだまだ宵の口を過ぎたばかりの頃合いでございます。
我々は卑猥橋の最寄りに本陣を構え、作戦の決行に至ります。
キャンパスは田舎にあり、あたりは五月ながらシンと冷え、深々と闇に覆われております。
この闇に乗じて、人が来たれば払いをしつつ、モナーがダイナマイトを設置する手はずです。
しかし、物事そうはやすやすとうまくは行きません。
いますいます、卑猥橋上、情事に走らんとするカップルが3組。
お互い、何か確約でも交わしているのか、
それぞれ橋の入り口、真ん中、出口にうまいことひと組ずつ。
しかし、そこは我々偉大なるこれまで童貞これからも童貞。
前もって対策は立てております。
('A`)「……ブーン、出番だ。準備はいいか?」
- 141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 17:08:17.35 ID:sSyyY0/E0
(;^ω^)「……ブヒ!」
わたくしが声をかけた先には、五月のまだまだ冷える深夜だと言うのに、
まわし一丁にマゲを結った、すでに汗まみれの関取の姿。
彼こそが先陣を切る偉大なる一番槍、豚人ことブーンであります。
_
(# ゚∀゚)「ブーン、貴様は橋の上でしこを踏め。ついでにシコシコもしていい。
そうすれば、奴らの注意は貴様に向き、ロマンティックな雰囲気は削がれ、
奴らは卑猥橋から去っていくだろう」
(;^ω^)「……相手の男が殴りかかってきたら?」
_
(# ゚∀゚)「……頑張れ!」
(;^ω^)「ぶひ〜」
- 143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 17:11:13.35 ID:sSyyY0/E0
- _
(# ゚∀゚) 「そして、ブーンがボコボコになったそのすきに、
モナー、わかってるな?」
( ´∀`)ゝ「……」
軍人がピッと敬礼した。こういうときだけ変態も頼りになります。
長岡氏は最後にわたくしへと振り向くと、コクリと頷き、叫んだ。
_
(# ゚∀゚)「よし!戦じゃぁ! ホラ貝を鳴らせぇええええええ!!」
(#'A`)<ぷおぉぉおぉぉっぉぉおうふぉぉいぉぉおおぉほええぉぉ〜
わたくしはホラ貝を吹くのはフェイクで、口でホラ貝っぽい声を出しました。
かくして、戦の幕は切って落とされたのです。
- 145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 17:18:42.17 ID:sSyyY0/E0
(;^ω^)「ぶひこい! ぶひこい! 拙者、関取でごわす!」
わたくしは鼻くそをほじりながら、
豚の蛮勇とその隙に乗じて卑猥橋の下に回り込んだモナーを眺めます。
一番槍であるブーンは、しこを踏みつつ入口のカップルに近づきます。
そしてこともあろうか、なんとカップルの男の前に突進していったのです。
おそらく、死ぬと言われてやけを起こしたのでしょう。これだから豚は困ります。
しかし、これは誤算だったのですが、
カップルの男はブーンに突進され、抱きつかれ、なんと失神したのです。
原因は、豚の体臭、特に脇の下から発せられる猛毒のような臭いを直に嗅いでしまったためのようです。
- 148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 17:25:18.67 ID:sSyyY0/E0
やがて、豚が卑猥橋を渡り終える頃には、3組のカップルの男どもは全員地に伏しておりました。
その彼女たちは、これぞチャンスといわんばかりに、伏した男どもを抱き起こしています。
そんな彼女たちを前に、
わたくしはいたたまれなくなり、気がつけば本陣から駆け出していました。
彼女たちは愛すべき男の体を抱き、しくしくと声を挙げて泣いております。
わたくしは胸が締め付けられました。
わたくしたちは一体、こんな悲しみを産んで何をしようとしているのでしょうか?
わたくしは、橋の入り口で男を抱きひざまずいている女の前に立ちました。
彼女は無言で、潤んだ瞳でわたくしを見上げます。
わたくしは、「大丈夫だよ」と彼女に笑いかけ、
そして、股間のチャックを開け、ポケットモンスターを彼女の前に放ち、言いました。
('A`)「舐めろ」
- 158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 17:36:59.80 ID:sSyyY0/E0
彼女は悲鳴を上げると、男を置き去りにして逃げていきました。
同様の手法で、わたくしは見事、
三人の男を残して彼女たちを卑猥橋から退散させました。
やがてダイナマイトを設置し終えたモナーと合流し、
橋の下、爆発に巻き込まれない川べりにて、
彼ら三人を頭だけ地面から出す形にして生き埋めにいたしました。
その隣に罪状を書き記した立札と証拠のダイナマイトを添えておけば、これで一丁上がり。
さらし首および生け贄は見事完成の日の目を見たのであります。
- 159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 17:40:29.24 ID:sSyyY0/E0
本陣へと馳せ参じたわたくしとモナーは、天皇に作戦の成功を上奏いたしました。
_
( ゚∀゚)「よくやった! 間もなく爆発の時間だ!
ともに酒を交わしつつ、偉大なる作戦の成功を見守ろう!」
天皇からの御言葉はわたくしとモナーの心の真底まで響き渡り、
我々は感銘の涙を留めておくことが叶わないのでありました。
その後、酒を汲みかわし、皐月の満月の下、
我々は高らかに乾杯の音頭と、爆発までのカウントダウンをしました。
そして、心の奥底までを震わす爆発音とともに、我々は杯に口をつけました。
その味たるや、今生のものとは思えぬほどの絶品。
かくして卑猥橋は、その上でへばっていた豚とともに、地球上から姿を消すにいたったのでした。
以上が、我々の行ったもっとも偉大な、崇高たる作戦の一部始終なのでありました。
- 166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 17:52:00.64 ID:sSyyY0/E0
さて、以上のようなことを述べれば、いささか誤解を受けそうなのではありますが、
我々のサークルの主眼は己の純潔を守ることにあるのであって、
キャンパス内にはびこる淫乱子女たちを粛正することは甚だ副次的な行いなのであります。
我々の常日頃から行っている鍛錬の一部を紹介いたしましょう。
まず、部室に入った暁には、互いに股間を見せ合い、互いの純潔を確認し合います。
続けて、部歌としてGOING STEADYの童貞ソー・ヤングを唱和いたします。
その後、部費で購入したジャンルを問わない卑猥雑誌を前に、寸止めシェイキングを15セット。
誤ってハイドロポンプを繰り出すものなら、三日三晩股間に貞操帯をつけられる羽目になります。
そうやって日々股間を鍛え、遅濡になることで、
女性器では絶頂に達せられない強靭な肉体を作っているのです。
- 170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 18:02:31.55 ID:sSyyY0/E0
そんな鍛錬の日々もすでに三ヶ月近くが経過し、我々の大学には夏休みが訪れました。
しかし、我々に安寧の日々など訪れません。部長であらせられるジョルジュ長岡氏はおっしゃりました。
_
( ゚∀゚)「明日から合宿に行くぞ」
相も変わらず女性用の通販雑誌を広げ、
購入用の下着にしるしをつけながら、彼は軽やかにおっしゃいました。
(;^ω^)「ブヒッ! そんなの聞いてないお!」
豚が猛反対をいたしました。彼はTシャツ一枚着るだけで暑いらしく、
今日も冷房の利いた部屋でふんどし一丁、だらしなく寝転ぶ姿はまさに豚です。
卑猥橋爆破作戦にて焼き豚になりそこない、全治一日のかすり傷だけですみやがった彼は、
大学に原付で来るだけでも息を切らす、まして合宿のため遠方に赴くなど到底考えられないのでしょう。
一方でかつての軍人はと言いますと、今日も部室の外で盆栽の手入れに精を出しております。
あ、ここでかつてのとつけましたのは、彼がすでに軍人ではなくなったからです。
- 175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 18:08:33.56 ID:sSyyY0/E0
( ´∀`)「……」
かつての軍人モナー君が帰ってまいりました。
ある日唐突に軍服を脱いだ彼は、
今度は書生風の和服に身を包み、なぜか「今日の盆栽」という本を愛読し始めました。
それ以来、糞暑い中、今日も盆栽の手入れにいそしんでいます。
まったくもって変態の思考は訳が分かりません。
_
( ゚∀゚)「車は俺が出すから。明日の8時にここに集合な」
('A`)「了解しました」
( ´∀`)b「……」
(;^ω^)「ブヒー……似るなり焼くなり好きにしてくれお……」
豚の豚語を聞き、合宿中の食事は豚肉のすき焼きにしようと、わたくしは決心いたしました。
- 177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 18:14:44.07 ID:sSyyY0/E0
しかし、結論から言うと、
それから一週間の合宿中、わたくしが豚肉を食することは叶いませんでした。
なぜなら、わたくしたちの合宿先はお寺だったからです。
(´・ω・`)「やあ、よく参られました」
_
( ゚∀゚)「お世話になります、スケベビッチ・アナルスキー先輩。
いえ、今は諸煩和尚でしたか」
(´・ω・`)「ははは。どう呼んでくれたって構わないよ。彼らは、君の後輩かい?」
_
( ゚∀゚)「はい。自慢の後輩です」
(´・ω・`)「どれどれ……うむ。いい目をしておる。
まるで鯰が腐ったような色だ」
わたくしの目を覗き込みそう言ってくだすった諸煩和尚。
さすがは長岡氏の先輩だと、感銘を受けた次第であります。
- 182: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 18:21:41.25 ID:sSyyY0/E0
その後、しばしの雑談を交わしわかったことなのですが、
諸煩和尚はかつての我々のサークルの部長なのだそうでした。
日系ロシア人で、旧名はスケベビッチ・アナルスキー。
日本名の諸煩とは、諸々の煩悩を引き受け、
欲望のままに生きるという意味の、とても含蓄のある名前です。
そして、彼が現在和尚を務めるこのお寺は、「煩悩寺」という名の、
本能寺が倒壊して五百年後くらいに建てられたらしい由緒正しいかもしれないお寺なのだそうです。
(´・ω・`)「さあ、では修業を始めようか」
(;^ω^)「ご、ご飯はちゃんと出るんですかお!? あと、修業ってなんですかお?」
さすがは豚です。ご飯の心配が先です。
わたくしはあきれを通り越してむしろ感心さえしてしまいました。
- 186: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 18:29:34.72 ID:sSyyY0/E0
(´・ω・`)「はっはっは! ご飯はちゃんと出るよ!
三食毎日マクドナルドでちゃーんと買ってくるからね!」
(*^ω^)「ブヒブヒ! そいつは最高だお!」
さすがは豚です。
三食毎日マクドナルドなど、考えただけで吐き気がします。
そして、和尚から発せられた修行の内容に、わたくしは再び吐き気を覚えました。
(´・ω・`)「君たち四人にはこの一週間、四人で合計1000発のズリセンを扱いてもらう」
- 191: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 18:34:25.01 ID:sSyyY0/E0
(;'A`)「せ、千発だと……!?」
_
(;゚∀゚)「一人頭……一週間で250発……
一日およそ34、5発くらい……か? こりゃ……枯れるな……」
(;^ω^)「そんな……夏バテで痩せたのに……
これ以上痩せたら生きていけないブヒ……」
豚の戯言も耳に入りません。
一日およそ35発前後。無理です。枯渇します。
しかしその時、滅多に聞けない声が響きました。
( ´∀`)「盆栽は、手入れをしてやれば枯れない。
俺たちの精子だって、手入れをしてやれば枯れない」
- 195: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 18:43:19.03 ID:sSyyY0/E0
- _
(*゚∀゚)「……そうだな!
ちんこを手入れさえすれば、絶対に枯れないよな!」
(;'A`)「ちっ……いいこと言うじゃねぇか! 盆栽!」
(;^ω^)「ブヒー! ブヒー!」
( ´∀`)b「……」
かくして、俺たちの修業は始まった。
しかし、それは予想をはるかに上回る困難さだった。
- 198: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 18:45:35.81 ID:sSyyY0/E0
(;'A`)「そんな……春画で抜けだなんて無理ですよ!」
(´゚ω゚`)「やかましい! 春画を、自分の想像力で彩るのだ!
ほら! 心頭を滅却すれば、タコに侵される女も触手プレイされる幼女に見える!」
(;'A`)「無理ですよ! だいたいなんですか! この「ヤマラノオロチ」って!」
(´゚ω゚`)「ばっかもーん! 言葉を出すくらいなら精子を出せ!
カ―――――――――――――――――ツ! オ!」
(;^ω^)「ブヒィ! なんで僕が叩かれるんだお!」
かくして、地獄の一週間は過ぎ去った。
わたくしたちは、ついに1000発を抜き終えた。
そのうち500発はモナーの功績だった。
そして今、わたくしたちの前には、1000個のスコッティのカスがうず高く積まれていた。
- 209: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 18:57:06.19 ID:sSyyY0/E0
最終日の未明。
我々は1000の使用済みスコッティを抱え、庭へと出ました。
そして火をつけ、燃えゆく数多の煩悩の象徴たる煙を眺めました。
(´・ω・`)「これで君たちは、煩悩の向こう側へと解脱した。
どうだい? もうセンズリなんてこきたくないだろう?」
(ヽ゚A゚)「はい……色々ともう無理です……」
_
(ヽ゚∀゚)「ああ……なんかいろいろと、もうどうでもいいよな……」
(ヽ゚ω゚)「ブヒ……」
流れゆく煙。
あまたの果たされなかった想いは煙に乗って空へと上がり、やがて世界に朝が来る。
( ´∀`)「……ほら、みんな、見てごらん。
僕たちの今日は、こんなにも明るいんだよ」
- 214: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 19:01:18.31 ID:sSyyY0/E0
(;'A`)「ああ……本当だ」
_
(;゚∀゚)「まあ、確かに綺麗ではあるが……」
(;^ω^)「普通の朝日じゃないかブヒ……」
昇りゆく朝日は、豚の言う通り特に何の変哲もない普通の朝日だった。
どうやらモナーは、出し過ぎてキャラを見失ってしまったようだ。
500発も出せば無理もない。
( ´∀`)「さあ、みんな! あの太陽まで、競争しよう!」
そして、モナーは駆けだした。
煙の向こうに消えていく彼の背中を、わたくしたち残りの四人はずっと見守っていた。
- 231: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 20:06:14.82 ID:sSyyY0/E0
件の合宿を終え、およそ一ヶ月半が経過した。
わたくしめの煩悩も、厳しい鍛錬の日々を越えることで完全に滅却したかに思われた。
しかし、そんなことはなかった。
むしろわたくしめの煩悩は、滅却すると見せかけて我が奥底で密かに沈積していたのだ。
それは、新学期が始まって二日目のこと。
ξ゚听)ξ「……」
(;'A`)「……」
キャンパスで、とある女性とすれ違った。
その瞬間、わたしの全身に電撃が走り、奥底でたまっていた煩悩がパチンと弾けた。
- 234: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 20:09:02.32 ID:sSyyY0/E0
寝ても覚めても、講義を受けているときも、
用を足している最中すら、彼女のことが頭から離れなかった。
だというのに、股間のポケモンの経験値を上げている際には、
彼女のことを考えようとすればするほど、彼女の記憶が固く閉ざされるようになってしまったのだ。
まるで彼女を汚してはならないと、本能が警告しているかのように。
そして、そんなはずはない、
荒業をくぐり抜け解脱したわたくしに限って、
落ちるところまで落ちようと誓ったわたくしに限って、
こんな思いが芽生えるはずはないと自分に自分で言い聞かせ、
ついに一週間後、わたくしは自分の想いに向きあわざるを得なくなった。
('A`)「……恋」
そうだ。わたくしは、名も知らぬ彼女に広島東洋カープしてしまったのだ。
- 239: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 20:22:38.97 ID:sSyyY0/E0
しかし、わたくしに一体何が出来るというのだろう?
卑猥橋を陥落させ、その罪を偶然そこにいた男どもになすりつけ退学に処し、
常人なら一年以上かけて発射する量のカルピスをわずか一週間で絞り出し、
そうやって、わたくしはもはやダースベイダーも真っ青なほどに暗黒面へと落ちてしまっている。
一方で、彼女はどうだろう。
夏の太陽に向け広がった常緑樹の葉のように艶やかに照る亜麻色の髪。
唇は晩秋の夕暮れのように濃く赤く、すっきりとした頬は長岡氏が身につけたブラよりも白い純白。
彼女を構成するすべてから眩い光が発し、世界を照らし続けているかに思える。
なにより彼女とは一度キャンパスですれ違っただけ。
会話も交わしたこともなければ、名さえも知らない。
わたくしと彼女は陰と陽、対局の存在。
結ばれることはおろか、我々の道は交錯することさえもないだろう。
何度も自分に言いきかす。
しかし、だからと言って、この恋心が消えるわけがなかった。
それはむしろ膨らんでいく一方で、彼女に対するわたくしの中の広島東洋カープは、
偉大なる前田様が2500本安打を達成、緒方は完全復活、コルビー・ルイスは最多勝を取る勢いだった。
- 242: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 20:32:11.26 ID:sSyyY0/E0
- _
( ゚∀゚)「ドクオ、どうした? 悩みごとか?」
(;'A`)「えっ、い、いえ、そんなことは……」
(;^ω^)「ブヒヒン! 残暑が厳しいブヒ! ついでにドクオがおかしいブヒ!」
わたくしはその日、部室でボーっと考えていた。
ちなみに、わたくしの中のカープは日本シリーズを制覇していた。
全裸で部室に寝転ぶ脂肪の塊を一瞥する余裕すらなく、わたくしはジョルジュ氏に弁解する。
ちなみにモナーは、あの朝日に向けて駆け出して以来、未だここには戻らない。
- 243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 20:33:44.86 ID:sSyyY0/E0
- _
( ゚∀゚)「ふーん……まあ、いいけどよ」
ジョルジュ氏は女性用の通販雑誌に付箋を張ると、パタンとそれを閉じ、立ち上がった。
そして扉に手をかけ、思い出したように一瞬立ち止まり、言った。
_
( ゚∀゚)「でも、本当になんかあったら相談しろよ。俺たち、仲間なんだからよ」
仲間。そうだ。
わたくしたちは、あまたの苦難と苦行をくぐり抜けた仲間。
しかしだからこそ、言えないことだってある。
(#'A`)「くそっ!」
やるせない想いを吐き出すがごとく、
わたくしは床の脂肪の塊に向け、蹴りを一発お見舞いした。
- 248: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 20:40:38.53 ID:sSyyY0/E0
ああ、麗しの貴方。
わたくしの心は、もはやカープ優勝パレードが終わり、
ブラウン監督の続投が決まってしまっています。
夏は過ぎましたが、真夏はロマンティック、
あなたもロマンティック、世界中ロマンティック、日焼けだって気にしません。
晩秋の空の下、貴方は今、どこで何をしていますか?
この空の続く場所にいますか? 消える飛行機雲を僕たちは見送りましたか?
わたくしの全身は、あなたによってとかちつくされてしまっております。
食べたいならお勧め天然です。どうか、あなたのハナマル笑顔がぷっぷっぷーっ!
(;'A`)「……俺は何を書いているんだ?」
そんな恥ずかしい詩まで綴ってしまうとは、実に恐ろしきは恋心。
すでにノートは五冊分たまってしまっていた。
ああ、アンインストールしたい。
- 255: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 20:48:28.29 ID:sSyyY0/E0
悶々とした日々は無情にも過ぎ去り、早くも冬の足音が訪れ始めていた。
一つの季節の流れで得たことと言えば、
彼女がツンという名前で、豚と同じ学部に所属しているというだけだった。
そして、当の豚はというと。
(;^ω^)「ツン? なにそれ? 美味しいのかブヒ?」
(;'A`)「……もういい。お前はこれでも食ってろ」
(;^ω^)「ブヒヒヒ! 豚まんだブヒ!」
冬だというのに未だTシャツ一枚で汗をかき、
共食いに精をだす豚人などに、人類の高尚な恋心など理解できるはずはなかった。
結局接点などどこにも見つけられず、肌寒い外気の中で、
たまに目の前を通り過ぎる彼女を見つめては微笑むだけの日々は続いた。。
そんな中、凪ばかりのわたしの心の瀬戸内海に、強い風が一つ吹いた。
- 261: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 20:56:09.11 ID:sSyyY0/E0
( ・∀・)「君、ドクオ君だよね?」
(;'A`)「え? ああ……そうですけど」
クリスマスも押し迫った十二月の半ば、
マフラーを深めに巻いて今日も彼女の姿を探していたわたくしに、ある三人組が語りかけてきた。
(,,゚Д゚)「よう、話すのは初めてだっけっかな? 同じ学部なんだけどな」
(*゚ー゚)「私はしぃ、この柄の悪いのがギコ」
( ・∀・)「そして俺がモララーだ。どう? ちょっと学食行かない?」
(;'A`)「はあ……い、いいですけど」
しかし、わたくしが彼らを知らないはずがなかった。
彼ら三人は学部でも特に目立つグループの、その中でも中心の三人組みだったから当たり前だ。
そんな、わたくしとは正反対のキャンパスライフを送っている彼らが、
なぜにわたくしに話しかけてくるのか。
嫌な予感はしたが、寒さも手伝ってかなぜか断る気が起きず、彼らにふらふらと付いていった。
- 265: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 21:01:26.06 ID:sSyyY0/E0
学食について席を陣取り、ランチを頼んで
「今日は寒いね」だの「クリスマスがもうすぐだね」だの、他愛のない会話を交わした。
やがてそれも尽きたところで、
しぃさんがわたくしの顔を覗き込むように身を乗り出し、とんでもないことを口走った。
(*゚ー゚)「ドクオ君、恋してるでしょ?」
(;'A`)「は、はぁ!?」
思わず素っ頓狂な声を上げたわたくしをみて、
三人は「図星だ」「やっぱりな」などと言い、大きく笑った。
そして、予想もしない提案をしてきた。
( ・∀・)「もしよかったら、俺たちが力になろうか?」
(;'A`)「は、はい!?」
もはや訳が分からなかった。
- 271: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 21:08:38.24 ID:sSyyY0/E0
(,,゚Д゚)「いやな、なんかさ、お前のこと放っておけなくってさ」
(;'A`)「はあ……いや……」
――放っておいてくださいよ。
なんて、心からの心配げな表情を受けべてくれる三人を前に、言えるはずもなかった。
誰にも相談できず、
わたくしの中のカープはドラフト会議でなんとその年ナンバーワンの左腕を獲得し、
来年に向け早くもキャンプに入っていたのだ。
そんな中、恋愛なんて百戦錬磨の彼らから協力を申し出られて、果たして断れるものがいるだろうか。
精神的に参っている状態でそんな甘い言葉を投げかけられれば、付いていかないものはいないのだろう?
それから、わたくしはぽつりぽつりと、彼女への思いを打ち明けた。
恐るべきことに、彼女の正体も三人にはわかっていたようで、話はすんなり伝わった。
( ・∀・)「そんじゃ、告白しかねぇな」
(,,゚Д゚)「クリスマスもすぐだし、イブの夜に決定だな」
- 275: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 21:16:27.56 ID:sSyyY0/E0
(;'A`)「え!? い、いや、だって彼女と話したことだってないのに……
だいたい、彼女は俺の名前さえ知りませんし……」
(*゚ー゚)「大丈夫! そんなの関係ないって!」
可愛らしい、愛玩動物を彷彿とさせるしぃさんが、わたくしの顔をマジマジと見て言った。
(*゚ー゚)「ツンさんには彼氏はいないはずだよ。
それにね、女の子はね、クリスマスイブなんて素敵な日に、
素敵な男の人から告白されれば、コロっと落ちちゃうもんなんだって!」
(;'A`)「いや……でも、俺って全然素敵じゃない……」
(*゚ー゚)「そんなことないよ!」
わたくしの言葉を遮って叫ぶと、彼女はドンと食堂のテーブルを鳴らした。
(*゚ー゚)「ドクオ君は十分素敵だよ! 影もあるし、元の顔もいい!
あとはちょっと髪型を整えて、服を変えれば絶対に完璧だよ!」
- 279: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 21:20:08.11 ID:sSyyY0/E0
面と向かって、しかもこんなかわいらしい女性に、素敵だと言われたことはなかった。
「そんなことはない」と否定しつつ、しかし気持ちは徐々に高揚していく。
(*゚ー゚)「大丈夫! 私が服を選んであげるから!」
( ・∀・)「髪は、俺が言ってる美容院に行きゃ完璧だ」
(,,゚Д゚)「車は俺が出すぜ。どうせ今から暇だろ?
イブまで時間はないし、早速服でも見に行こうぜ」
( ・∀・)「金がなかったら俺が貸すし、な?」
(;'A`)「は、はぁ……」
こうして俺は、表面上はつれないそぶりを見せながらも、
心の中では意気揚々、ホイホイと彼らについていった。
( ´∀`)「……」
去り際、なぜか懐かしい気配に後ろ髪をひかれつつ。
- 282: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 21:28:00.62 ID:sSyyY0/E0
それからイブまでの日々を、俺は彼ら三人とともに過ごした。
ファッションの云々、恋愛の極意、付き合ってからの行動など、実にいろいろなことを教えてもらった。
そして、彼らが内心で俺の恋で遊んでいることも、とっくに気が付いていた。
それでも、それでも、彼女に、ツンさんに告白できるのであれば、
この気持ちにけりをつけられるのであれば、そんなこと、どうでもよかった。
しかし、一つだけどうにも腑に落ちないことがあった。
(;'A`)「このファッション……なんか入学式の俺みたいなんだけど……」
- 283: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 21:28:52.65 ID:sSyyY0/E0
髪型は黒のアシンメトリー。
唇と鼻、耳には無数のピアス。首には黒のチョーク。
黒のコーデュロイジャケットに、インナーは胸元まで開襟した純白のシャツ。
パンツはシックなダメージ加工を施されたデニム。
どう見ても、昔のロックンロールな俺だった。
しかし、彼らは言う。
( ・∀・)「悪いけど、あれと一緒にしないでくれる?」
(,,゚Д゚)「格が違ぇーんだよ。あれよりはるかにおしゃれだよ」
(*゚ー゚)「そうそう! 全く違うよ! 全然違うよ!」
口々にそう言われれば、どこかに違和感を覚えつつも、
やっぱり彼らの言う通りなのかなと思ってしまう。
そうやって、日々は過ぎた。
そして遂に、イブはやってきた。
- 285: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 21:34:34.26 ID:sSyyY0/E0
ξ゚听)ξ「……」
夕闇にけぶるキャンパスの中で、
彼女は人通りもまばらなとある学部棟の裏で、肩を縮めて立っていた。
( ・∀・)「おお! ホントにいるよ!」
(,,゚Д゚)「さすがはしぃだな。手配は完璧ってやつ?」
(*゚ー゚)「あったりまえじゃない! ささ、あとはドクオ君、あなたの仕事だよ!」
彼女から死角になる位置で、三人とともにあの服装に花束を持ち、俺は震えていた。
寒さからではない。むしろ身体は火照って暑い位だった。
( ・∀・)「頑張れ。絶対にうまくいく」
(,,゚Д゚)「そんときはなんか奢ってくれや」
(*゚ー゚)「さ! ドクオ君! がんばって!」
(;'A`)「え、あ! ちょっと……あわわ!」
そして躊躇していた俺は、三人に背中を押され、彼女の前へ躍り出た。
- 290: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 21:44:45.53 ID:sSyyY0/E0
ξ゚听)ξ「……あんたね。あたし呼び出したの」
(;'A`)「え……あ……ええっと……」
初めて彼女に声を掛けられた。
それは辛辣な口調だったけれども、胸が震えることにかわりはなかった。
彼女は胸の震えるわたくしとは対照的に、
体が寒いのだろう、一つぶるっと震えて、憮然として言った。
ξ゚听)ξ「友達の友達の……しぃって名前だったかな、
その子がここに来てって言ってたってこと、伝え聞いた。
なんかおかしいなって思ったら、そういうことね。だいたい予想はつくわ」
(;'A`)「は、はぁ……」
- 296: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 21:49:22.85 ID:sSyyY0/E0
そのまなざしは、汚らわしいものを見るそれだった。
まるでうんこ食った男を見るような。
だけど、彼女に見つめてもらえるなら、
どんな汚らわしいものに見られようとも、わたくしは構いなどしなかった。
わたくしはうんこなんて食ってない。
だけど、わたくしはサークルのみんなに相談せず、
お世話になったサークルの趣旨を裏切り、挙句の果ては見ず知らずだった三人の手配でここにいる。
大体、俺は犬がションベンしたあとの電柱を舐めているのだ。
結局、汚らわしいものには変わりない。
ξ゚听)ξ「だけど、あえて聞いてあげる。あたしをここに呼び出した理由は」
そして、汚らわしかろうと、裏では誰かに楽しまれていようと、誰かを裏切ろうと、
この想いを伝えられれば、わたくしはそれでよかった。
そして、彼女は思ったとおり、優しい心の持ち主の、可憐な女性だった。
だって、こんな俺の言葉を聞いてくれるというのだから。
- 297: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 21:49:58.59 ID:sSyyY0/E0
もちろん、緊張はした。これまで何度も罰ゲームで告白してきたが、
初めての、誰かの力を得てるとはいえ、自発的な告白。
足が震え、体が震え、世界が震えた。今すぐにでも逃げ出したかった。
けれど、逃げなかった。そうしなければ、先に進めないまま、
一生いじめられっ子のまま、ここで足踏みを続けるような気がしたから。
だから、わたくしは花束を差し出し、言った。
(;'A`)「す、すきです! ここここれ、受け取ってください!」
- 305: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 21:57:53.98 ID:sSyyY0/E0
頭を下げたまま、わたくしはずっとその姿勢を続けた。
けれども、差し出した花束が受け取られる気配は、一向にない。
ξ゚听)ξ「……それ、本気?」
(;'A`)「えっ?」
そして、思いもよらぬ返事に、わたくしは顔を上げた。
彼女は憮然とした表情のまま、何も言わない。
同じ質問は二度としない性分なのだろう。
これまでのわたくしなら、いじめられっ子のわたくしだったら、沈黙に耐えきれず、
「ごめんなさい、罰ゲームでした」と言って、彼女に殴られたことだろう。
だけど違う。この告白は本気だ。
本気だから間が開いて、本気だから、言葉が少しずつしか出てこなかった。
- 307: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 21:58:48.79 ID:sSyyY0/E0
(;'A`)「一度……秋にあなたとすれ違って……
それからなぜか……あなたのことばかりしか考えられませんでした……
それからどんどん気持ちが膨らんで……カープは優勝しちゃうし……」
ξ゚听)ξ「……カープは優勝してないでしょ」
(;'A`)「えっ?」
驚いて顔を上げた。それは、彼女が口をはさんだからではない。
彼女の口調が、少しばかり柔らかくなっていたからだ。
ξ゚听)ξ「カープは今年も五位よ」
(;'A`)「えっと……いや、ものの例えです」
ξ゚听)ξ「どういう意味?」
(;'A`)「あ、あの……カープは鯉……つまり、あなたへの恋心……」
言ってて死にたくなった。
- 312: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 22:04:21.90 ID:sSyyY0/E0
顔が真っ赤に染まる。全身が恥ずかしさに火照くりかえっていく。
それから、彼女は笑った。大声で笑った。
ξ゚ー゚)ξ「あはは! あんた、面白い人ね! 名前はなんて言うの?」
(;'A`)「えっと……ドクオです」
ξ゚ー゚)ξ「ドクオ……ドクオね!」
わたくしの名を繰り返し口にすると、彼女は笑いを消し、真顔でわたくしの顔を見た。
彼女の切れ長の、けれど大きな瞳の中に、震えるかつての姿のわたくしが映って見えた。
ξ゚听)ξ「……この告白、本気なんだよね?」
(;'A`)「あ、当たり前です!」
ξ゚听)ξ「……そう。わかった」
そして、彼女は深々と頭を垂れて、すがすがしいほどにハッキリと言ってくれた。
ξ゚听)ξ「……ごめんなさい!」
- 320: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 22:09:55.33 ID:sSyyY0/E0
彼女はそのまましばらく頭を垂れ続けた。
わたくしが頭を上げてくださいと言うまで、ずっとずっと下げ続けていた。
('A`)「わかっていました。絶対に無理だってことは。
だけど、ちゃんと受け止めてくれて、俺は満足しています」
不思議なほどに、滑らかに言えた。
悲しさは当然あったが、それを上書きするほどのすがすがしさがあったから。
ξ゚听)ξ「本気には……本気で返すのが礼儀だから」
そして、彼女は思った通りの女性だった。
悔いはなかった。
ホントに悔いなんてなかった。
だけど、だけど。
- 326: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 22:15:43.01 ID:sSyyY0/E0
( ・∀・)「うひゃひゃひゃwwww 腹よじれるwwwwww」
(,,゚Д゚)「こいつ、ホントに告白しやがったぜwwwwwバカじゃねぇwwwwwww」
(*゚ー゚)「これだからモテない不細工は面白いわよねぇwwwwwwww」
彼らはやってきた。
腹を抱えながら、嫌らしい笑いで顔をゆがめながら。
彼らはツンさんの前に来ると、わたくしの存在など初めからなかったかのように、彼女に問いかける。
( ・∀・)「どうだった? キモかったっしょwwwww」
(,,゚Д゚)「ありえねぇよなwwww こんな勘違い野郎からの告白wwwwww」
(*゚ー゚)「あははははwww モテる女も辛いですねぇ、ツンさんwwwww」
その時、初めて涙がこぼれ落ちた。
ああ、わたくしはこんなもんなんだなと。
こうやって笑われながら生きていくんだなと。
結局、わたくしはいじめられっ子のままなんだなと。
裏切り者のわたくしの前に、仲間なんて現れてくれないんだなと。
- 335: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 22:21:26.24 ID:sSyyY0/E0
ξ゚听)ξ「あんたたち……最低ね」
ツンさんは言ってくれた。だけど涙は止まらなかった。
うつむけた顔を上げられなかった。
ツンさんの言葉はとても嬉しい。
だけど今、わたくしが欲しいのはそれではない。
わ慰めてくれる仲間が欲しかった。
明日からも馬鹿をやれる仲間が欲しかった。
だけど彼らを裏切ったのは、ほかならぬわたくしなのだ。
そして、彼女の言葉は火に油を注ぐようなものなのだ。
余計に事態をややこしくする言葉だったのだ。
いじめられっ子のわたくしにはよくわかる。
( ・∀・)「うわ……この女、ちょっと調子のってね?」
(*゚ー゚)「ちょっと可愛いからって、舐めてるよね〜。姦しちゃえば?」
(,,゚Д゚)「お、いいねwwww ちょうど暗くなってきたしwwwwwww
イブにキャンパスにいる物好きなんていねぇしなwwwwwwwwwww」
ほら、ね。
- 343: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 22:28:14.08 ID:sSyyY0/E0
不意に殴り飛ばされた。
そして、顔だけを無理やり上げられ、地面に組み伏せられた。
(,,゚Д゚)「好きな女が侵されてるところ、特等席で見てな」
何も出来ないわたくしは、せめても抵抗に、眼を閉じようとした。
けれど、無情にも目を無理やり見開かせられる。
(*゚ー゚)「遠慮すんじゃないよ、バーカ!」
ツンさんの抗う声も、何もかもが、降り始めた雪の静けさに溶けていった。
わたくしには何も出来ない。目をそらすことさえも出来ない。
けれど、そらすことを許されなかった視線の向こうに、わたくしは信じられないものを見た。
(;^ω^)「ブヒ! ブヒ!」
それは卑猥橋の時に見た、紛れもないあの力士の姿だった。
- 357: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 22:32:50.57 ID:sSyyY0/E0
(#^ω^)「お前ら……ブヒー! ブヒー! 絶対に許さないブヒ!」
力士は、冬だというのにまわし一丁で、全身に汗をかいていた。
興奮に出た鼻息は、白く染まっていた。
そして、力士とは思えない猛スピードで接近してきた。
(;・∀・)「な、なによこのデブ!」
(;^ω^)「デブじゃないブヒ!」
彼は男を抱きあげると、その顔を脇で挟み、吠えた。
(;^ω^)「僕は豚人だブヒ――――――――!」
- 372: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 22:38:15.13 ID:sSyyY0/E0
( ・∀・)「あ……死んだお爺ちゃんが手を振ってるよ……」
男は異臭を直に嗅いだため、三途の川へとたどり着いたようだ。
そのまま渡り切ってしまえばいいのにと思った。
(;,,゚Д゚)「な、なんだこいつ……く、来るな!」
わたくしを組み伏せた手を放し、男は逃げ出そうと試みる。
しかし、力士は不敵に笑い、言った。
(;^ω^)「ブヒー! ブヒー! お前の相手は僕じゃないブヒ!」
そして、力士は男の後ろを指差す。
わたくしと男は、同時に振り返った。
( ´∀`)「……貴様の不要な枝を切り取ってやる」
そこには、巨大なハサミを手にした植木職人がいた。
- 387: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 22:45:14.97 ID:sSyyY0/E0
それからの惨劇は見るに堪えなかったので、ここに書き記すのは控えておく。
ただ一つわたくしの口から言えることは、男二人が二度とレイプを出来ない体になったということだけだ。
そして、最後に残ったしぃ。
彼女の相手をしてくれたのは、彼だった。
_
( ゚∀゚)「よくもまあ、俺のかわいい後輩をはめてくれたな」
(;*゚ー゚)「な、なによ! 女に手を上げようっていうの? 最低ね!」
_
( ゚∀゚)「バーカ。お前には言葉だけで十分だ」
雪の中、静かに現れた、下着にブラとパンティのあの男。
端正な顔立ちの中の凛々しい瞳でしぃの胸元を睨みつけ、彼は言った。
_
( ゚∀゚)「お前、Aカップもないだろ。学校中に言いふらしとくわ」
(*;ー;)「いやああああああああああああああああああああああああああ!」
しぃはドラッグを決めた。社会的に死んだ。スイーツ(笑)
- 401: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 22:52:48.15 ID:sSyyY0/E0
すべてが終わった。
俺はブーンに抱き起こされ、彼の体臭にやられないよう、必死で口で息をしていた。
地面にへたり込んでいたツンさんは、ジョルジュ氏が差し伸べた手をとり、立ち上がっていた。
そして、ゆっくりとわたくしのもとへ近づいてきた。
わたくしはいたたまれなくなり、けれどこれだけは言わねばと、
死へといざなう匂いの中、言葉を紡いだ。
('A`)「すいませんでした……俺のせいで……こんな……」
ξ゚ー゚)ξ「……いいわよ。知らなかったんでしょ?
気にしないで。それに……」
そう言うと彼女は、冬の力士を、あたりの植木を狩り始めた元盆栽職人を、
ファッショナブルな冬着の下に女性物の下着を身につけたイケメンを見て、言った。
ξ゚ー゚)ξ「素敵な友達が、あなたにはいっぱいいるのね。
そんなあなたと知り合いになれて、あたしはうれしい。それに……」
- 409: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 22:56:24.59 ID:sSyyY0/E0
それに。そこまで言いかけたところで、ジョルジュ氏が言った。
_
( ゚∀゚)「水臭いんだよ馬鹿たれ!
モナーが情報収集してなかったら、今頃大変なことになってたぞ?」
(;'A`)「それ……どういうことですか?」
(;^ω^)「ドクオが学食にあいつらと入ったとき、
モナーが心配になって潜入捜査してくれてたんだお」
(;'A`)「そう……だったのか」
モナーを見た。彼は植木のカットに納得がいかないらしく、首をひねっていた。
- 421: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 23:03:03.93 ID:sSyyY0/E0
可笑しかった。そして嬉しかった。
初めて彼らと会った時のように、心の底からの笑いが出た。
冬空に溶けていく笑い声の中で、彼らは言ってくれる。
_
( ゚∀゚)「お前が本気で恋したんなら、俺らが応援しないわけないだろ?」
(;^ω^)「そうだブヒ! とんかつさえ奢ってくれるなら、ドクオはずっと僕の親友だお!」
( ´∀`)「オープン・ユア・マインド」
降り落ちる雪がわたくしの頬で溶けるように、彼らの言葉が胸にしみわたっていく。
わたくしは嬉しさのあまり、叫んでいた!
(;A;)「俺だって……俺だってみんなに恋人が出来たって、全力で応援するし、ずっと親友だ!」
ξ゚听)ξ「なら問題ないわね!」
そしてツンさんは、俺を抱きかかえる力士の前に立つと、言った。
- 422: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 23:03:26.14 ID:sSyyY0/E0
ξ*゚听)ξ「ブ、ブーンさん! ずっと前から好きでした! 付き合ってきださい!」
- 459: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 23:11:16.27 ID:sSyyY0/E0
(;'A`)「は?」
(;^ω^)「は?」
_
(;゚∀゚)「は?」
( ´∀`)「WHAT?」
全員の目が点になった。
ツンさんは顔を赤らめると、もじもじとしながら言った。
ξ*゚听)ξ「あ、あたし、実はとってもデブ専で……
熊のプーさんみたいな彼氏が欲しくて……ブーンさんが好みどストライクで……」
_
(;゚∀゚)「あ、いや、でもさ……あのー……ちょっと鼻で息してみて?」
ξ゚听)ξ「はい? ずっと鼻で息してますけど」
なんと言うことだ。彼女も筋金入りの変態だったのだ。
そして、恋は盲目、いや、盲鼻だった。ブーンの体臭が届かないほどに。
(;A;)「GO! GO! HEAVEN!」
そしてわたくしは豚人の腕の中、鼻で深く息を吸い込み、三途の川へと向かうことにした。
- 480: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 23:20:05.71 ID:sSyyY0/E0
こうしてわたくしは一週間以上生死の境をさまよい、
気がつけば病院のベッドの上で年を越していた。
見舞いの品にはカステイラと林檎、そしてなぜか鼻栓が置かれてあった。
病院の静まり返った雰囲気と、年明けの勤務に疲れ果てた看護婦を生で見られることは
傷心のわたくしにはこれ以上ない癒しであり、
これから毎年病院で年を越そうなどと、血迷った考えを巡らしたこともあった。
そう。彼が来るまでは。
(;'A`)「この臭い……奴だ!」
病院の正常なる空気に慣れ親しんでいたわたくしには、
奴の来訪が、おそらくは奴が病院のエントランスをくぐったであろう時から察知できた。
見舞い品の鼻栓の意味をようやく知り、わたくしは両鼻にそれを詰め込み、奴を待った。
- 488: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 23:24:30.04 ID:sSyyY0/E0
(;^ω^)「ブヒ……ドクオ……あけましてブヒめとうだおめ」
(;'A`)「よ、よう!」
わたくしは平静を装い、彼を迎い入れた。
彼はおずおずと見舞いの品をわたくしによこす。
(;^ω^)「これ……かつ丼……」
(;'A`)「あ、ありがとな……」
同胞を見舞いの品として奉げるとは、なんとみあげた根性の持ち主であろうか。
豚人の神経などまったくもって理解できそうにない。
そして、そんな豚人を好きだという嗅覚障害女性の神経も、同じく理解など出来はしない。
- 492: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 23:28:30.27 ID:sSyyY0/E0
それからしばらく、豚人はサークルの二人の話をしたようだが、
わたくしの耳にはまったく内容は入ってこなかった。
なぜなら、わたくしが彼から聞くべき話題など一つしかなかったからである。
やがて、話題が切れ、
豚人が一人前に沈黙などしやがったので、わたくしはその話題を口にした。
('A`)「ツンさんとは……付き合うのか?」
(;^ω^)「……ブヒ」
('A`)「……そうか」
「ブヒ」の一言ですべてを察せるとは、どうやらわたくしは日本語と豚語のバイリンガルのようである。
- 503: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 23:36:23.01 ID:sSyyY0/E0
('A`)「なら……もうお前はサークルには居れない。
それは……わかるよな?」
(;^ω^)「……ブヒ」
さっきから豚人はブヒとしか言わない。
どうやらただの豚に退化しまったようである。
('A`)「俺が言うのもなんだが……
あのサークルは、彼女持ちがいていいところじゃない」
(;^ω^)「……ブヒ」
('A`)「それに……俺とお前は、サークル以外でも……もう会わない方がいい」
(;^ω^)「ブ、ブヒッ!? な、なんでだブヒ?」
豚が豚にあるまじき返答をした。
わたくしは嘲り笑いながら、愚かな迷える将来の食料に解説してやった。
- 504: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 23:37:11.07 ID:sSyyY0/E0
('A`)「だって……俺はこれまでも童貞で……これからも童貞で……
ただひたすらに……仙人の座を狙って行くからさ……だから……」
(;^ω^)「ブヒ……」
そのあとが、告げなかった。
ここで告げてしまえば、わたくしは大切仲間を失ってしまうことになる。
例え豚だとしても、ブーンはわたくしの大切な仲間、
そして将来の食糧危機に備えた非常食なのだ。
わたくしは、大切な人語を話せる家畜を失うのが惜しくて、何も言えなくなってしまった。
- 513: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 23:42:03.26 ID:sSyyY0/E0
('A`)「だから……だから……」
視界が潤んできた。
別れたくない。
ブーンは可愛いわたくしの豚なのだ。
たとえ別れることが彼の幸せだとしても、それはどうしても出来ない。
だいたい、将来トンカツになりわたくしの胃に納められる予定の家畜が
幸福追求権を行使しようなど、甚だおかしいことなのだ。
だから、わたくしは何も言えない。
(;^ω^)「ドクオ……これを見て欲しいお……」
(;'A`)「え?」
そして、一人前に沈黙を破った豚は、おもむろに立ち上がると、全裸になった。
わたくしは絶句した。
- 522: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 23:49:09.77 ID:sSyyY0/E0
(;'A`)「な、なんと言うことだ……」
わたくしは我が目を疑った。
なぜなら、ブーンの股間にはゼニガメが装備されていなかったからだ。
いや、違う。彼の股間にはゼニガメが確かにいる。
ただそれが、両太ももの、そして波打つ腹の脂肪に覆われて、取り出せなくなっているのだ。
(;^ω^)「実は僕……ゼニガメを取り出せないんだお……」
(;'A`)「え……でも……お前……普通にみずてっぽう出してたじゃん……」
(;^ω^)「だってそれは……脂肪の間に指を突っ込んで……ゼニガメの頭を撫でてやればいいから……」
(;'A`)「じゃ、じゃあ、ションベンとかどうしてんだよ!?」
(;^ω^)「実は……おむつ使ってるんだお……」
衝撃の告白。豚はおむつを使っていた。
豚はゼニガメを脂肪という名の城壁から取り出すことが出来ない。
しかし彼女はデブ専。痩せれば彼女にふられる。
ということはつまり。
(;^ω^)「僕は……ツンさんとはちんちんかもかも出来ないんだお……」
- 535: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 23:56:25.65 ID:sSyyY0/E0
('∀`)「フヒ……フヒヒヒwwwwwwwww」
(;^ω^)「ブヒ……ブヒヒヒwwwwwwwwww」
そうか。そうだったんだ。
わたくしとブーンはこれからもやっていける。
家畜とご主人という形で、たとえサークルは別々になっても、仲間としてやっていけるのだ。
わたくしは心から笑う。心から笑える。これからも、きっと。
(;^ω^)「彼女が出来た以上、サークルには居れないブヒ……
だけど僕は、いつまでもドクオの仲間だブヒ!」
('∀`)「ああ! 俺らは一生童貞仲間だ!」
(;^ω^)「そうだお! 僕たち四人は、離れ離れになってもいつまでも仲間だブヒン!
だから、一人でもサークル頑張ってくれブヒ! 僕も出来るだけサポートするブヒ!」
('∀`)「ああ! 任せとけって!」
('A`)「え? ちょっと待って?」
- 546: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 00:00:37.63 ID:AvXa9ZrZ0
(;'A`)「ど、どういうことですか! ジョルジュさん!」
_
( ゚∀゚)「……まあ、そういうことさ」
めでたく退院したその日に、わたくしは部室を訪れた。
荒々しく扉を開ければ、そこには冬でも爽やかなイケメンが女性用通販雑誌を広げていた。
彼はパタンとそれを閉じると、淋しげに笑って、言った。
_
( ゚∀゚)「俺は、ロシアに行く。諸煩和尚の知り合いにブラジャー職人がいてな。
彼に師事して、俺は俺による、俺のためのブラジャーを作りたいんだ」
- 557: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 00:06:07.56 ID:AvXa9ZrZ0
(;'A`)「そんなの……勝手過ぎますよ……
あなたが俺をサークルに引き込んでおいて……卒業も待たず消えちゃうなんて……」
_
( ゚∀゚)「……すまん」
わたくしは、力なく床へと言葉を落とした。
だから、「すまん」と小さく呟いた長岡氏の表情を見ることは出来なかった。
(;'A`)「じゃあ、モナーは……あいつはどうして……いなくなるんですか?」
_
( ゚∀゚)「ああ、あいつはさ、合宿からしばらく行方をくらましてただろ?
あいつ、あの期間中、森に迷い込んで、伝説の植木職人に助けられたそうなんだ。
それが縁であいつは、世界一の植木職人を目指すため、退学して森にこもるそうだ」
神妙に語る長岡氏であったが、モナーの話など、実は心底どうでもよかった。
- 565: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 00:12:58.85 ID:AvXa9ZrZ0
- _
( ゚∀゚)「俺はさ……この日のために、お前を勧誘したんだ」
(;'A`)「え?」
思いもよらぬ言葉に、顔を上げた。
ジョルジュ氏は笑って俺の肩に手をやると、こう言ってくれた。
_
( ゚∀゚)「お前なら、お前ほどの童貞なら、たとえ俺がいなくても、立派に部長としてやっていける。
あの日、ロックンロールと叫んで軽音楽部のブースをたたき割ったお前を見て、俺は確信したんだ」
('A`)「ジョルジュさん……」
_
( ゚∀゚)「俺もモナーも、豚も、みんな心は繋がっている。
どこにいても、どんなときも、だ。だから、許してくれ」
(;A;)「ジョルジュさん……」
_
( ゚∀゚)「さあ! だから歌おう! 高らかに! 俺たちの歌を!」
(;A;)「……はい!」
そして俺たちは、童貞ソーヤングを歌うのはフェイクで、
たかしのシコシコ動画流星群を歌い、笑って別れた。
- 571: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 00:19:34.24 ID:AvXa9ZrZ0
それからの話を、少しだけ。
ロシアへ行く予定だったジョルジュさんは、
ロシアに渡ろうとしてなぜかジンバブエに行ってしまい、今旅費をためている最中なのだそうだ。
モナーとは連絡は取れていないが、先日部室のコンセントを修理していたら盗聴器を発見した。
それを鑑みるに、モナーにはわたくしの生活のすべてが筒抜けだったようだ。
あいつらしいとほほ笑みながら、わたくしは盗聴器をハンマーでたたき壊した。
豚は相変わらず豚のブーさんとして、ツンさんと清い交際を続けている。
というか、続けざるを得ないのだろう。
けれど、この前あったとき、豚のくせに実に幸せそうな顔をしていたので、
別れ際、わたくしは彼の後頭部めがけて思い切り石を投げつけてやった。
そして、春はやってきた。
- 578: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 00:28:51.91 ID:AvXa9ZrZ0
そして、春はやってきた。
( ´_ゝ`)「お、エロ画像ゲット。これは上モノだ」
(´<_` )「さすがは兄者。ネットの海を渡る大海賊王だな」
わたくしが目を付けたのは、まず、この二人。
全身からほとばしる童貞オーラが、
常に携えたPCにより増幅され、それはもう大変なことになっている。
\(^o^)/「チンチンシュッシュッ!」
次はこの男、人生オワタ。もう名前からして終わっている。
(・∀ ・)「僕と君とはともだチンコ!」
そして極めつけはこの男、斎藤またんき。
いかにも平成の子ども、名前も申し分ない変態ぶりだ。
使っているネタはいささか古いが、これは目をつぶろう。
- 582: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 00:31:51.86 ID:AvXa9ZrZ0
('A`)「ふむ……なかなか見どころのありそうな奴らだな」
高ぶる感情を胸に秘めつつ、それからわたくしは、彼らの肩をポンと叩く。
そして、こう言うのだ。
('∀`)「君、童貞だろ? かく言う俺も童貞でね。あっはっは!」
こうやって、幾多の時が流れても、
今日も春の空の下、童貞の鎖は未来へとつながっていく。
糸冬
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製作・著作 毎日新聞
- 610: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 00:45:23.37 ID:AvXa9ZrZ0
- 読んでくれてありがとうございました。
みなさんの支援のおかげで書きあげることが出来ました。
本当にありがとうございました。
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