( ^ω^)ブーンがアイドルマスターを目指すようです
- 11: 第15話 :2006/11/13(月) 01:18:51.84 ID:fi6s6mNH0
ハチ公像のおかげで待ち合わせのメッカというイメージの強いここ──渋谷駅前だが、
件の像はけっこう隅にあったりする。待ち合わせの場所というよりもむしろ、この広場は
自然生成されたスクランブル交差点、といった顔のほうが強い。
人々がそれぞれの目的地をめざして駅前広場を闊歩する。一瞬一瞬人垣は動き、目的地までのルートはかわってゆく。
自分と、自分に関係ある人意外はただの障害物。それを避けるかどけるか。どちらを選ぶかは人それぞれだが、
たいていの人間は『避ける』を選択する。そのおかげでこれだけの密度の中、人間は大きな騒動をおこすことなく
目的地へとたどりつく。
そんな混雑地帯の広場の真ん中に、先ほどから一歩も動いていない集団があった。
背中に洋風の樽を背負ったニヤケ顔の男。テレビで見たような簡易更衣室を手で持ち上げている男。
ここに居座って約10分。樽の男がふいにそれを地面に置き、カバンの中からレコーダーをとりだす。
簡易着替え室の男が布を落とすと、中から派手な格好をした少女が現れ、樽に飛び乗った。
- 13: 第15話 :2006/11/13(月) 01:22:31.65 ID:fi6s6mNH0
ξ゚听)ξ『突然ですが、一曲歌わせてもらいます。曲はキラリ・ツキシマの『恋☆カナ』!』
('A`)「ワーワー」
( ^ω^)「ヒューヒュー」
ピンク系のかわいらしい衣装と180度異なる、セクシャルバイオレットな蝶の仮面をつけ、
少女──ツンは豆カラをにぎりしめ、歌いだした。
ξ゚听)ξ『恋カナ?ピンと来たら Say「恋叶え!」って
直線的な行ったり来たり だって止まらないで
いつか☆を描いて君へ届けたい』
- 14: 第15話 :2006/11/13(月) 01:24:24.34 ID:fi6s6mNH0
- 歌いはじめると広場の流れが鈍った。元々彼女はそれなりに上手かったのだが、
基礎からの表現練習やプロの先輩(クー)のアドバイスもあり、早くも一般人とは別次元の、
人を惹きつける“アイドル的な”歌唱力を発揮できていた。
ξ゚听)ξ「♪〜直線的な行ったり来たり
だって迷わないで
いつか☆に叶えて 君とふたつ星」
ちゃちぃテープレコーダーからの音が止まり、(主にブーン達の)拍手がまき起こった。
ξ゚听)ξ『ありがとうございまーす。続いては、アヤ・ヒラノの『Lost my music』・・・』
???「ちょっと・・・」
ξ゚听)ξ『はい、なんですかぁ?』
- 18 :第15話/上の訂正 :2006/11/13(月) 01:28:32.07 ID:fi6s6mNH0
営業スマイル120%で振り返ったツンが固まる。
警官「えっと、君。どこのアイドル事務所かな?責任sy」
ξ゚听)ξ「撤収!」
('A`)・( ^ω^)「「アラホラサッサー!」」
警官「ちょ、ちょっと・・・」
この日の夕刊に『ネリネの再来?白昼のシング・アンド・アウェイ』という小さな芸能記事が掲載され、
ピンボケした写真の中でツンは晴れて新聞デビューをはたすのだが、
このことは彼女も含め、誰も知ることのなかったという・・・・・・
- 20 :第15話/上の訂正 :2006/11/13(月) 01:31:18.85 ID:fi6s6mNH0
- 〔木曜日・『ニュー速プロ』事務所〕
『VIPPER’s』オーディション締め切りまで あと5日
ξ゚听)ξ「・・・・・・ってな感じで、アタシは華麗にファーストライブをやってきたのよ」
从'ー'从「あーっ、いいなぁ。わたしもやりたかったよぉ」
木曜日にレッスンはないのだが、事務所には全員が集合していた。クーは夜からのラジオの生録にむけて仮眠中、
アヤカは「家では集中できない」という理由で事務所の机で3人が帰ってくるまで宿題と格闘していたらしい。
('A`)「まさか一曲歌っただけで警官なんてね」
ξ゚听)ξ「一曲じゃさすがにスカウトも来てくれないなぁ・・・」
(´・ω・`)「ところで、もちろん素性はバラしていないだろうね」
( ^ω^)「大丈夫だお、パピヨンマスクで夜もバッチリだお」
(´・ω・`)「ならばいい。つかまらなければやったもん勝ちだ」
警察が聞いたら怒り狂いそうな発言である。
- 22: 第15話 :2006/11/13(月) 01:35:11.08 ID:fi6s6mNH0
ξ゚听)ξ「まったく・・・アイドルらしさを見せ付けるため、スカートの中身だって見せたのに・・・
体操服履いてたけど」
(´・ω・`)「どれ」
ショボンの目が怪しく光る。15年間の乙女人生、数えるのもバカらしいほどねらわれたスカート。
ショボンの殺気ツンはいちはやく反応し、左手を前につきだして牽制しながら右腕で足にはわせて
スカートをおさえる。右足を引き、横なぎにせまるショボンの左手をかわすように軽くバックステップ。
(´・ω・`)「やるなぁ・・・だが、まだ甘い」
ξ゚听)ξ「なッ・・・・・・」
左腕は伸びきらないでその軌跡を強引に手元へと返す。その腕に隠れるように、死角から右手があらわれる。
まるで不慣れな青年のボート漕ぎのように、下から深くもぐってでてきたライトアッパー・カヌーは
振り下ろされたツンの振り下ろしの外側をとおり、彼女のスカートをめくりあげた。
- 25: 第15話 :2006/11/13(月) 01:38:11.34 ID:fi6s6mNH0
ξ#゚听)ξ「なっ、何するんですか!!」
('A`)「(ブルマー・・・)」
(´・ω・`)「(ブルマか・・・・・・)」
( ^ω^)「(ブルマかお・・・・・・)」
ベジータ「(トランクス。ブルマを・・・ママを大切にしろよ・・・)」
川 ゚ -゚)「ナイスブルマ」
从'ー'从「アイドルの味方だね」
私立ツンデレ学園。都内で数少ない、女子体操着に紺色のブルマを指定している高校である。
- 26: 第15話 :2006/11/13(月) 01:40:45.19 ID:fi6s6mNH0
- 从'ー'从「おつかれさまで−す」
ξ゚听)ξ「お疲れさまでーす」
(´・ω・`)「うむ、気をつけて帰りたまえ。今夜から雨らしいし、オーディション前に風邪を
ひかないよう気をつけるように」
从'ー'从「大丈夫ですよぉ」
('A`)「そういえばブーンは・・・」
(´・ω・`)「便所の掃除をしておるよ。マーヤ君がなにやら怒ってたが・・・」
('A`)「・・・じゃあ、ボクは二人を送って戻ってきます」
(´・ω・`)「あぁ、直帰でいいよ。オーディションのことだし、残りはブーン君にやってもらう」
('A`)「・・・わかりました」
ξ゚听)ξ「・・・・・・・・・・」
从'ー'从「・・・・・・ツンちゃん・・・」
ξ゚听)ξ「ん?どうしたの?」
夏とはいえ、8時をまわるとだいぶ暗くなる。事務所の下で、アヤカは不安げに口を開いた。
- 28: 第15話 :2006/11/13(月) 01:44:11.68 ID:fi6s6mNH0
- 从'ー'从「わたし・・・いいのかなぁ。ツンちゃんのほうが歌もダンスもうまいのに、
ツンちゃんじゃなくてわたしとクーさんだけがオーディションに出るなんて・・・」
('A`)「(・・・・・・)」
ξ゚听)ξ「アヤカ・・・・・・まーだ言ってる」
ξ゚听)ξ「出られなかったのは単に運が悪かっただけよ。別にアヤカがあたしを押しのけて、
代わりに出るわけじゃないでしょ?だから気にすることないって」
从'ー'从「うん・・・」
ξ゚听)ξ「ほら、あたしは気にしてないから。明日からはオーディションに向けて練習がんばっていこう。ね?」
从'ー'从「うん・・・そうだね」
('A`)「じゃあいこうか。まずはアヤカちゃんの家から・・・」
从'ー'从「よろしくおねがいします」
ξ゚听)ξ「・・・・・・」
- 29: 第15話 :2006/11/13(月) 01:46:41.65 ID:fi6s6mNH0
〔PM09:02 ドクオの家〕
ξ#゚听)ξ「たっ・・・・・・ていっ・・・・・・あー腹たつ!」
('A`)「・・・・・・やっぱり怒ってるね・・・」
いつもの倍近い大きな声でゲームに怒鳴り散らすツン。アヤカを送った後、帰りたくないと駄々をこねて
ドクオの部屋に来ていた。引っ越して二週間ほどしかたっていないのに、すでに部屋には
ツンやブーン達の私物が積まれている。
洗面台の下に買った覚えのない歯ブラシとコップが4セットほどあったのをドクオは思い出した。
雑なプレイがたたってゲームオーバーになったのか、ひときわ大きな奇声をあげてツンがコントローラーを投げつける。
バフッと鈍い音をたて、コントローラーはクッションにぶつかってフロアに落ちた。
('A`)「つ、ツン。暴れないで・・・」
ξ#゚听)ξ「いいじゃない。暴れなきゃ気がすまないわよ」
('A`)「・・・でも・・・」
ξ゚听)ξ「・・・わかってる。イヤな感じ、今のあたし」
- 31: 第15話 :2006/11/13(月) 01:52:37.46 ID:fi6s6mNH0
ξ゚听)ξ「アヤカやクーさんは悪くない。もちろんアタシも悪くない。
でもでもうかれてるあの二人がいて、あたしが同じ舞台に立てないってのが
ものすごく腹立たしい。 勝負とかくじ引きとかじゃなくて、最初から練習の成果を試せないなんて・・・
ねぇ、事務所は住居扱いに入らないの?」
('A`)「・・・『VIP区のアイドル事務所に籍を置く』アイドルについて聞いてみたけど、やっぱりダメだって・・・
事務所の社宅もアウトみたい」
ξ゚听)ξ「なんでそんなに住所にこだわるのよ・・・・・」
('A`)「“生え抜き”アイドルだから地域宣伝の効果も高い、って考えてるんじゃないかな・・・
活動もVIP区が多いし、そっちのほうが都合いいんじゃないかな」
ξ#゚听)ξ「お米じゃないんだから・・・まったく、VIP区VIP区って・・・
審査員全員VIP村の住人なの?!」
('A`)「(・・・話しててだいぶ頭に血がのぼってきたみたいだ・・・)」
ξ#゚听)ξ「全く・・・・・・」
- 32: 第15話 :2006/11/13(月) 01:55:57.03 ID:fi6s6mNH0
なおもブツブツと文句を言い続けるツン。ところが、文句を言っている内に彼女は
言葉をとめた。
ξ゚听)ξ「学校や事務所が関係なくて、住んでいるということは・・・・・・」
ξ゚听)ξ「・・・・・・・・」
ξ゚听)ξ「・・・・・・!!」
ξ゚听)ξ「ドクオ!ちょっとVIP区の市役所について調べて。それから、大急ぎで車を出す」
('A`)「え?ど、どっちから先にやるの・・・?」
ξ#゚听)ξ「『市について調べる』『車を出す』。両方やらなきゃいけないのがアイドルプロデューサーでしょうが!」
- 34: 第15話 :2006/11/13(月) 01:58:17.42 ID:fi6s6mNH0
その数時間後、彼女は自分の意志で服を脱ぎ、小さなバスタオルをけして大きくない体にまきつけ、先客のいる風呂場に足を踏み入れた。
ξ゚听)ξ「失礼します・・・」
我慢がならなかった。いさぎよいと言われながらこのままでいることは。
それがよかった。告発の危険をかかえて舞台に立つことが。
真っ白な状態に見えた真っ黒な挑戦への光。アイドル・ツンをとりまく闇の中で自然発生した・・・否。
自然発生“させた”わずかな希望のごとき素粒子。
彼女は、選んだ。苦難の道でも、自分の舞台を目指し、自ら捏造した翼で飛び立つことを・・・・・・
【続く】
戻る/第16話