( ^ω^)ブーンがアイドルマスターを目指すようです

11: 28話 :2007/01/06(土) 01:58:50.49 ID:dq88XcHL0
  


 クー・マーリェ、本選辞退。この一報に企画サイドはもめた。



 普通、番組制作もまだはじまったばかりのこの時点でアイドルが一人抜けようと、さほど困ったことにはない。
100%の出来レースならともかく、新人アイドルだらけのユニットオーディション。代わりはいくらでもいる。
普通ならば。


 二年前の『VIPPER’sオーディション』は基本ステータスの高いアイドルのみを選び集めたのだが、その結果は
散々たるものであった。協調性も礼儀も知らない若きアイドルたちは、スケジュールや出番調整に労力を費やしすぎ、
能力を伸ばすどころか本来力の半分も出せず、セカンドシングル発売寸前に解散となってしまったのだ。

 主催のVIP区としてはそんな失敗を繰り返さないため、トータル芸能プロデュース会社に企画を委託。
2年間“VIP区のアイドル”として活躍できるユニット作りを目指していたた。

 そんな中、クー・ホーリェの存在は大きかった。その能力もさることながら、声優業による経験、冷静さ、協調性。
すべてにおいて年下のアイドル達をひっぱっていける力があった。
 制作側としても彼女の合格は半分決定事項として扱っていただけに、彼女が抜けるのは問題だった。



12: 28話 :2007/01/06(土) 02:00:58.40 ID:dq88XcHL0
  

 とはいえ、企画がいくらもめようとアイドル達には関係のないことである。
クーが入院した後も二人は普段の仕事やレッスン、それに加えて団体稽古にプロモ撮影。いまできる精一杯の努力を続ていた。

 そんな8月の初旬。初めての全体練習日のことである。



アイドルC「あっ、アヤカちゃんにツンちゃん。久しぶり」

从'ー'从「うん、ひさしぶり〜。Cちゃんも本選出場おめでとう」

アイドルD「しかしAはかわいそうですね・・・私たち『ラウン寺』組では唯一落ちちゃって」

ξ゚听)ξ「しょうがないコトだけど、ね・・・うん。Aの分もがんばらないと」


 『ダンスのギッコ』大ホールには本選に進むアイドル達がしだいに集まってきていた。今はまだ見当たらないが、
当然アヤカたちとは別組からの本選出場者も来るはずである。



13: 28話 :2007/01/06(土) 02:03:06.92 ID:dq88XcHL0
  

 しばらくして入り口のドアが開き、見慣れたツインテールが姿を現す。視線をさげると、そこには勝気な顔をした幼女
──じゃなくて、アイドル・カレハ。あの老紳士の姿は外で待たせてあるのだろうか、見当たらない。


⌒*(゚〜゚)*⌒「アヤカさん」

从'ー'从「あっ、カレハちゃん。おはよぉーこの前ボイスレッスンで会ってぶりだね(ぴょこぴょこ)」

⌒*(゚〜゚)*⌒「これですが・・・クーさんのお見舞いです。渡していただけないでしょうか」

从'ー'从「うん、いいよぉ。今日はちょうどこの後お見舞いに行くところだし・・・
   そうだ。カレハちゃんも一緒に来る?(ぴょこぴょこ)」

⌒*(゚〜゚)*⌒「申し訳ありませんが、本日は夕方からお父様と水瀬グループとの立食パーティに出なくてはなりませんので・・・」

从'ー'从「そっかぁ・・・残念(ぴょこぴょこ)」

ξ゚听)ξ「アヤカ、いい加減カレハちゃんの髪触るのやめたら?」

从'ー'从「えー(ぴょこぴょこ)」

⌒*(゚〜゚)*⌒「・・・私(わたくし)としても、やめていただければありがたいのですが・・・」

从'ー'从「そっかぁ、わかったよー(ぴょこぴょこ)」

ξ゚听)ξ「(アヤカ、聞きなよ・・・)」



15: 28話 :2007/01/06(土) 02:09:02.05 ID:dq88XcHL0
  

AD「はい、みなさんそろいましたか?」

アイドル達「はーい」

AD「いよいよ本選まで二週間になりました。今日から5回、合格者用の新曲の全体練習をやりますが・・・その前に発表があります」

从'ー'从「(なんだろ・・・)」


番組D「クーさんが抜けたかわり、というわけではありませんが・・・本選に出場する最後のメンバーを紹介します」



アイドル達「!!!」


 ADに呼ばれて一人のアイドルが入ってきた。動きやすいよう上下白色のジャージ姿。
ちょっと色の抜けた黒髪を肩より下にで三つ編みに結わえている。
少々うつむきながら、おおきな目が遠慮がちにアヤカ達を見ていた。




(*゚ー゚)「は、はじめまして。『うまい棒プロダクション』所属のアイドル、“しぃ”です。途中参加ですが、よろしくおねがいします」



17: 28話 :2007/01/06(土) 02:12:27.96 ID:dq88XcHL0
  

⌒*(#゚〜゚)*⌒「納得いきませんわ!」


 騒然とするアイドル達の中、口を開いたのはカレハだった。ツンもそれに続く。


ξ#゚听)ξ「・・・そうね。なんで二週間前に新しいアイドルが・・・」

⌒*(#゚〜゚)*⌒「私たちはこれまで1次予選、合宿と審査を受けてまいりました。
   それなのに彼女──しぃさんが最終審査、本選にいきなり参加資格を得るというのもおかしな話ですわ。
   そうでしょう、みなs」

从'ー'从「はじめまして、しぃちゃん。よろしくね」

アイドルB「しぃさんは今いくつなんですか?」

(*゚ー゚)「今17歳、高校二年です」

アイドルD「高校二年生ですか・・・同じですね。がんばりましょう」

ξ゚听)ξ「馴れ合うの早っ!」



18: 28話 :2007/01/06(土) 02:15:43.80 ID:dq88XcHL0
  

⌒*(#゚〜゚)*⌒「・・・・・・ディレクターの方、説明をお願いできますか?」

番組D「彼女は先日行われた『東京美少女コンテスト』のグランプリだ。住所もVIP区内だし、君達と同等の位置にはいるはずだ」

ξ゚听)ξ「で、でも・・・」

( ,,゚Д゚)「ダイゴウジ(←ツンの苗字)、コノハ。お前達の言い分もわかる。だが、7人から選ぶというのも番組的には大変なんだ」

⌒*(#゚〜゚)*⌒「そんな事情知りませんわ」

( ,,゚Д゚)「確かに本選人数をケチった番組にも問題はあるが・・・しぃの実力はお前達に負けず劣らず高い。そうでなきゃ
   いくら賞をとったところで俺が参加はさせん。
    それにコノハ。お前は一人入っただけで自分がおちると思うのか?」

⌒*(゚〜゚)*⌒「もちろん、私は負けることなどありえません。ですが、それとこれとは話が違いますわ」

从'ー'从「カレハちゃん、いいじゃない。昨日の敵は今日の友、だよ。サトシ君も言ってたし」

⌒*(゚〜゚)*⌒「サトシ君?」

从'ー'从「ポケモンの主人公」

⌒*(゚〜゚)*⌒「・・・・・・」

ξ゚听)ξ「(それって、まだ敵じゃない・・・)」


 ツンの心の中では見慣れぬ少年が「昨日って今さ!」と叫んでいた。



20: 28話 :2007/01/06(土) 02:19:28.23 ID:dq88XcHL0
  

 結局カレハもツンも折れ、しぃをあわせて8人でレッスンが始まった。
音源や基本振り、ユニットステップに関してはすでにアイドル達には配布されていたのでいきなり当面のパートを決めて
順番に回していく。
 途中参加のしぃにも資料はいきわたっていたようで、しっかり他の7人についてくる。
最初はぶつぶつ言っていたカレハも、一心不乱に踊り続ける彼女をみてダンスに集中しはじめた。
 ギッコの言ったとおり、実際彼女のスキルは高かった。





 陽炎のたつ暑い夏の二週間。蜻蛉の命のように短い準備期間。


 アヤカが。ツンが。カレハが。Bが。Cが。Dが。Eが。そして、しぃが。


 浮上のひとつの節目とも、脱落のひとつのきっかけともなりうる新人アイドルオーディション本番の朝を。
 8人8様に、同じ朝を。

 今、迎える。


         【続く】



戻る第30話