(´・ω・`)の恨み代理店のようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:01:19.34 ID:scydI44y0

コンビニで屯している5人の若者。
夜中ということから考えたら彼らは「不良」と呼ばれる者だろうか。
その中の一人が立ち上がり、携帯をとりだし店の裏に回る。
そこは人から見えない、つまりは死角となっている。

裏に回った男は携帯を不思議そうに眺めていた。
着信画面には「ショボン」という字がでている。
少しして、仲間のもとに戻ろうとすると、突如声をかけられる。

(´・ω・`)「やあ、ミルナ君だよね?」

眉の下がった男、ショボン。

( ゚д゚ )「だったらどうした?」

ショボンが声をかけると男は不機嫌そうに、質問を質問で返す。
このことにショボンは苛立つ。

(´・ω・`)「違うかどうかを訊いているんだ、間違えてたら大変だからね。
      急いでるんから早くしろ」

(#゚д゚ )「お前何様だよ?」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:03:22.65 ID:scydI44y0

男は怒鳴り声をショボンにぶつける。
それに対しショボンは皮肉と怒りを交えて答えた。

(´・ω・`)「ショボン様だ馬鹿野郎、もういい殺す。たぶん合ってるだろうしね」

ショボンは依頼内容を思い出す。

『(-@∀@)「焼死、消し炭野郎を本当の炭にしてくれ」』

(´・ω・`)「・・・焼死、ね」

呟いたと同時にショボンの鳩尾に男のブローが入る。
しかしせき込み倒れたのはショボンではなく、殴った本人だった。

(´・ω・`)「いつもなら遊ぶんだけどね、今日はお遊び無し」

(;゚д゚ )「・・・っ・・・なんだよ・・これ」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:05:17.90 ID:scydI44y0

男はうずくまりながらもショボンを見上げた。
ショボンは少し微笑み、ナイフを取り出し訪ねる。

(´・ω・`)「もう一度訊く、君はミルナか?答えたら助けてやる」

男は答えようとしない。
ショボンに対しての恐怖と怒りが頭を巡るだけだった。

(´・ω・`)「助けてやるって言ってるんだ。もう訊かない、10秒以内に答えないようd」

ショボンの言葉は途中で中断する。
男が喋り始めたからである。

(;゚д゚ )「・・ミルナ・・だ。だからお願い・・・助けて」

男はショボンに助けを求めた。
ショボンは男に手を差し伸べる。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:07:33.72 ID:scydI44y0

ミルナが手を借りて立ち上がった後も、ショボンは手を離そうとしない。

( ゚д゚ )「離せよ」

(´・ω・`)「あ?今なんて?」

(;゚д゚ )「・・・離して下さい」

ショボンはまた微笑む。
しかし、出てきた言葉は表情からは予想もできない言葉。

(´・ω・`)「はい、死んでね」

(;゚д゚ )「え?」

ミルナを掴んでいた手が突然発火する。
その火は、油でできた道を進むかのように、あっという間にミルナの全身に行き渡る。
ミルナの表面、つまりは肌。それはすぐになくなった。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:09:15.69 ID:scydI44y0

(´・ω・`)「あーあ、酷い臭い。吐いちゃいそう」

ショボンは何がおかしいのか笑い始める。
ミルナは崩れ落ちながらも声にならない叫びをあげている。

( д )「・・・ぁ・・・う」

(*´・ω・`)「ほら、助けて下さい、って言えたら助けてやるよ」

( д )「・・・・」

(*´・ω・`)「もうお終い?こんな誰かもわからない固まりが君の最後?」

ミルナの動きは完全に止まる。
すでに火も消えていた。

(´・ω・`)「・・・・あれ、なんか忘れて・・・」

(;´・ω・`)「ああやばい!遊ぶのに夢中になってた」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:11:28.84 ID:scydI44y0

(;´・ω・`)「急いで帰らなきゃ・・・とその前に」



「こっちみんな」


ショボンはそう言うと透けるように消えていく。
服装は相変わらずのバーテンダー。

ショボンが完全に消えたのと同時に、ミルナが遅いのを不審に思った者がやってくる。
次の瞬間にはとても大きな叫び声が暗がりに吸い込まれていった。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:13:39.33 ID:scydI44y0
<第3話 記憶にない恨み>

(;´・ω・`)「ただいま!・・・ああ」

勢いよく扉を開けてバーに入ってくるのはショボン。
下がった眉毛が特徴的で、その顔は哀愁すら漂わせる。

(;-@∀@)「ああ、有り難うございましたショボンさん。でも僕はお役に立てませんでした」

(;´・ω・`)「しょうがないよ、ってもうやめて」

普段は至って冷静、落ち着いた物腰で人と接するショボンが慌てふためく。
その間にも、今回の依頼者アサピーは少しずつ消えていく。

(;´・ω・`)「ああ、アサピー君、次は頑張って」

ショボンはアサピーに言葉をかける。

(;-@∀@)「はい・・・ショボンさんも頑張って下さい」

そう言って男はすっと消えていく。
おそらくアサピーの最後の言葉はショボンに届かなかっただろう。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:16:15.37 ID:scydI44y0

(;´・ω・`)「やめて。お願いだから」

ショボンの視線の先には、黒く長い髪をした女性。
女性は腰あたりまである髪をふわりと舞わせながらショボンに向き直る。

川 ゚ -゚)「おお、垂れ眉、いらっしゃい」

(;´・ω・`)「ここ僕の店なんだけど」

彼女は「そうだったな」、と笑うと手に持っていたカクテルグラスを落とす。

川 ゚ -゚)「やべ」

その表情と言葉からはまるで焦りを感じない。
つまり全然焦っていない。

(;´・ω・`)「うわあああ」

ショボンが懸命にダイビングキャッチを試みるも、グラスはきれいな音を立てて砕け散る。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:18:24.90 ID:scydI44y0

川 ゚ -゚)「あーあ、タイミングがな・・・」

(;´・ω・`)「自分でやっといてタイミングとか言うな!」

床には今割ったモノだけでなく、他のグラスやビン、ボトル、酒などが散乱していた。

(;´・ω・`)「どうやったらこんなに割れるのさ」

川 ゚ -゚)「地震があってな、そりゃもう大変だった」

(;´・ω・`)「地震とか・・言い訳にするのには苦しすぎるだろ・・・」

ショボンは半ば諦めたかのようにため息をつく。
そんな男に女性はさらに追い打ちをかける。

川 ゚ -゚)「あ」

ガシャン、グラスがまた一つ音を立て形を崩す。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:21:02.77 ID:scydI44y0

川 ゚ -゚)「グラスが私の手から逃げる・・・」

(;´・ω・`)「グラスに・・・グラスに何の罪があるっていうんだ!」

川 ゚ -゚)「良いじゃないか、減るモノじゃないし」

(;´・ω・`)「減ってるんだよ!クーがここに来てからすごい勢いで!!」

川 ゚ -゚)「そりゃ大変だな。HAHAHA」

もう嫌だ、そう言ってショボンはカウンターに突っ伏す。
ショボンをこの場においてここまで悩ませたのは彼女、クーが初めてかもしれない。

おかしな雰囲気が漂う空間に、一つの声が混じる。

(´・ω・`)「・・・まだ思い出せないの?」

さっきまでのショボンとは違い、今度はいつも通りの調子で訪ねる。

川 ゚ -゚)「・・・ああ」



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:23:52.50 ID:scydI44y0

クーがこのこの店に来たのは3日前。

ショボンはいつも通りに代理を終えて、一息ついていた。
まだ死者の情報が送られてきていない、今日はこのまま誰も来ないかもしれない。

(´・ω・`)「久しぶりに天国でも行って来るかな・・・」

ショボンはポツリと一人呟く。
洗い終えたグラスを棚にしまい、バーを出ようとする。

そんな時、カランカランと扉が開く。
ショボンは音の鳴る方にゆっくりと振り向く。
入ってきた人物の姿を見てショボンは驚き戸惑う。

川 ゚ -゚)「・・・?なんだここ?」

本来ここに入ってくるのは死んだ人か神様なのである。
神様は何の連絡もなく、気まぐれによって訪れるが、死者は違う。
あらかじめ、その者の情報がショボンのもとに送られてくることになっている。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:26:24.16 ID:scydI44y0

(;´・ω・`)「(どうなってんだ?何も送られてきてないぞ・・)」

ショボンはまさかと思い女性に声をかける。

(´・ω・`)「・・・君、神様?」

川;゚ -゚)「・・・病院行って来れば?」

(;´・ω・`)「(初対面なのにッ!)」

ショボンは何度か深呼吸をしたあと、女性をカウンターの椅子に座らせる。
何を聞いて良いのか悩んでいると、女性が口を開く。

川 ゚ -゚)「えっと・・垂れ眉、今の状況を説明してくれ」

(;´・ω・`)「・・・まず、僕はショボン。この店の持ち主。今の状況はとても説明が難しい」

川 ゚ -゚)「構わない、教えてくれ」

ショボンは説明する。
この店のことや、天国、他にも必要なことを。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:27:30.72 ID:scydI44y0

川 ゚ -゚)「そうなるとおかしな事になるな」

一通り説明を終えると女性が眉を寄せて言う。

川 ゚ -゚)「その話の通りにいくと私は死んでいるじゃないか」




沈黙。



(´・ω・`)「・・・・え?」



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:30:15.41 ID:scydI44y0

川 ゚ -゚)「え、ってお前・・・。それじゃ私が死んでるみたいじゃないか」

女性は、微笑みながらショボンに言葉をかける。
ここでようやくショボンは一つの可能に気づいた。

目の前にいる女性が「記憶喪失」であることに。

(´・ω・`)「君、名前は?」

川 ゚ -゚)「クーだ」

ショボンはクーに質問をし始める。

(´・ω・`)「年齢教えてもらえる?」

川 ゚ -゚)「ナンパか。私は21歳だ。言っておくがお前は趣味じゃない」

クーはショボンをじっと見て答える。
ショボンはメモを取りながら次の質問に移る。
ナンパがどうこうはスルーした。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:32:55.06 ID:scydI44y0
(´・ω・`)「君の好きなモノ教えてもらえる?」

川 ゚ -゚)「・・・・あれ?」

クーは肩肘をカウンターにつき、髪をクルクルと弄り始める。
ショボンはそれをじっと見る、少し経つとクーは涙ぐみながら顔を上げる。

川;゚ -゚)「なあ、高校も、大学も行ってたことはわかる。
     だけど中身が何もない!空っぽだ!!どういうことだ!?」

ショボンはクーに水を出し、まずは落ち着こう、と声をかける。
クーはこくりと頷き水を飲む。

(´・ω・`)「これは僕の推測だけど、君はおそらく記憶喪失だと思う」

川;゚ -゚)「記憶喪失・・?私が?」

おそらくね、ショボンがそう言うとクーは、「うー」と小さく唸る。
そして、ゆっくりと今おかれている状況を説明する。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:35:22.77 ID:scydI44y0

(´・ω・`)「言いにくいけど、君は死んだ、殺された。たぶん死ぬ時に記憶が飛んだんだと思う」

川;゚ -゚)「死んだ・・・、殺された・・?」

ショボンは次に何と言っていいか分からなかった。
ここに来たのなら恨みを晴らす権利を持っている。
しかし、肝心の相手が分からない。

ならば選択肢は一つしかない、最終的にそう考えたショボンはクーに言う。

(´・ω・`)「・・・天国に 川 ゚ -゚)「それはごめんだ」

(´・ω・`)「・・・・」

クーはショボンの提案を即断る。
ショボンは、何故?、といった目でクーを見る。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:38:54.63 ID:scydI44y0

川 ゚ -゚)「君の言うことが本当なら私は殺されたのだろう?
     私は自分を殺した相手をのうのうと生かしておくほど優しくないんだ」

(´・ω・`)「そう・・、それでこれからどうする気なの?」

川 ゚ -゚)「決まってるじゃないか。ここで過ごす」

ショボンは最初、この言葉を全く理解できていなかった。
ここで過ごす、このフレーズが頭の中を何周かした後にようやく、
クーが言った言葉を理解する。

(;´・ω・`)「無理だって!無理無理。絶対無理」

川 ゚ -゚)「なんで?」

そう訊かれるとショボンはうまく答えられない。
決して駄目な訳じゃない、寧ろここにいるしか恨みを晴らす方法は無い。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:40:29.29 ID:scydI44y0

そして現在に至る。

ショボンは店の掃除を終えて、首をポキポキとならしてため息をつく。
ため息をつくと何かが逃げる、とクーがショボンに言っている。

ショボンは「そうだね」と、ため息を出させた本人に力無く言う。

記憶が戻ったらきっとショボンのもとにクーの情報が送られてくるのだろう。
その原理や理屈は分からない、だがきっとそうに違いない、そうであって欲しいとショボンは願う。

クーは床に腰を下ろしストレッチのようなモノをしている。


それから10分もするとショボンは二度ほど手を叩き、クーにストレッチをやめるように言う。
クーは何が起こるか理解したようで、立ち上がるとカウンターの向こうに移動する。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:41:22.59 ID:scydI44y0

川 ゚ -゚)「・・・なんで人を殺すんだろうな」

クーは誰に言ったわけでなく、ただ呟いた。
それにショボンも、独り言のように呟く。

(´・ω・`)「不都合があると殺すのかな」

それを訊いたクーは眉間にしわを寄せ小さく唸る。
ショボンは特に気にせず襟を直す。

一人から少しにぎやかになった、恨み代理店。
しかしやることは変わらない。


カランカラン、来客を告げる音が響く。
扉の前に立つお客さんは少し戸惑っている。

ショボンが椅子に座って、と促すと、お客さんは棒になっていた脚を動かす。

さて、この客は生かすか殺すか。
店内では物騒な話を実に穏やかにはなしている。


「あなたはどちらにしますか?」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/03(水) 22:42:01.24 ID:scydI44y0

<第3話 記憶にない恨み> END



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