( ^ω^)クローバーのようです
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:30:16.89 ID:A0eAmYtX0
God of exam
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:31:20.76 ID:A0eAmYtX0
かの寺山修司は閉塞感を抱えた若者に「書を捨てよ。街へ出よう」とペンを走らせたが、
物語の主人公である長岡は何故か山を登っていた。
(;´・ω・`) 「ジョルジュー!! もう帰ろうよー!!」
(;゚∀゚)「いいや。帰らないね! 山頂までもう少しだ! さっ、歩こう!」
(;´・ω・`) 「もう少しって… その保障はどこにあるんだよおお」
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:33:05.19 ID:A0eAmYtX0
- (´・ω・`) 「あいだっ」
( ゚∀゚)「あー! また転んだ! この運動神経ゼロ!」
(´・ω・`) 「うるせー偏差値直線野郎!」
(#゚∀゚)「んだとおおおおおお」
山の葉の間から、ぎんぎらの太陽が二人の体を突き刺していた。
地面はじめじめとして涼しかったが、行き交う羽虫が激しく苛立たしい。
8月中旬。世の受験生たちはここぞとばかりに勉強に励むが、
彼等浪人コンビの今日の予定はピクニック。
「ぼくなんで山のぼってるんだろう」とショボンは頭の中で繰り返していた。
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:35:32.42 ID:A0eAmYtX0
- (;´・ω・`) 「受験の神様なんて… いるわけないじゃん… はぁはぁ」
(;´・ω・`) 「もしあったとしても、そんなの、迷信… うっ。 水飲んでいい?」
( ゚∀゚)「ダメ。 とにかく今はひたすら登ろう。日が暮れる前には着きたいね!」
(;´・ω・`) 「ゲッ、そんなに時間かかるかなぁ」
( ゚∀゚)「知らん! さあ、前を向け前を!」
* * *
3日前のことだった。
俺は相変わらずパッとしない成績表を眺めながら、嘆息を漏らしていた。
勉強らしい勉強はやり尽くしたはずなのに、どうにもこうにも成績は上がらない。
予想する春。散る桜。絶望の淵。
(;゚∀゚)「はぁあぁあああ…」
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:37:23.05 ID:A0eAmYtX0
- ('A`)「…ちゅーわけよ! あはは、おもしれーよな」
( ゚∀゚)「オイ!!! 今の話し… もう一回聞かせろや」
(;'A`)(目がマジだ)
気が滅入っている奥様の心につけ込むカルト宗教のように、
その話題は耳に飛び込んできた。
情報源は毒男。嘘八百で生き抜いてきたような男。
ただのくだらないよた話として流されるはずだったその「伝説」を、
俺は拾い上げて何かの起爆剤にしようとしていたのだ。
(;゚∀゚)(よおおおおし!!!!)
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:40:59.31 ID:A0eAmYtX0
- * * *
山の中腹あたりに辿り着いた。
本当に中腹かどうかは知らないが、開けた場所がここにあるということは、ここは山の中腹なのである。
ショボンが真っ先に涌き水のほうへ走った。 俺は切り株に腰を下ろす。
涌き水のところに小汚いコップがあったり、切り株があるということは、
ここはちゃんとした山道として成り立っているということだ。
受験の神様。本当にいるかもしれない。何をお願いしようかなどとぼんやり考えていた。
葉がこすれ合うざわめき、命を燃やす蝉の声。四方から聞こえる。
空気。どんよりとした予備校の空気より、何倍も澄んでいる気がする。
(´・ω・`) 「ひゃあーー うまい! うまいよジョルジュ!」
( ゚∀゚)「よし。じゃあ行くか」
(;´・ω・`) 「ええ! もう行くの!?」
( ゚∀゚)「さっさと来ないと置いてくぞー」
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:43:28.26 ID:A0eAmYtX0
- 山道をまたしばらく歩いていると、山を下る途中の、初老のお母さんと遭遇した。
息子の高校受験のお祈りにでも来たのか?
('、`*川「あら、こんにちは」
( ゚∀゚)「こんちは」
(´・ω・`) 「こんにちはー」
('、`*川「若い人がお参りに来るなんて珍しいわねー」
( ゚∀゚)(若い人が…? 逆じゃねえの)
( ゚∀゚)「はい。今年こそは受かりたいんです」
('、`*川(受かる…? 受験のお守りを売ってるのは隣町の神社よ)
('、`*川「そうなの。もうすぐ着くから、頑張ってね」
( ゚∀゚)「ありがとうございまっす」
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:44:46.53 ID:A0eAmYtX0
- (´・ω・`) 「へえ。有名なんだね。受験の神様」
(´・ω・`) 「あんなオバンまで尋ねにいくんだね」
( ゚∀゚)「ん。 もうすぐ着くって。ピッチあげるぜ」
(;´・ω・`) 「待ってくれよぉおー… げろげろー」
こうして俺たちは山を登っていった。
小さな蛇を退治したり、はらりと落ちてきた葉っぱに妙にびくついたり、
すれ違うおじんおばんに挨拶し、木の棒を振り回しながら歌うたったり、
お茶の入った水筒をこぼしたり、やっぱり神様なんていねぇ と愚痴をこぼしたり
そして、山頂。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:46:28.08 ID:A0eAmYtX0
- (´・ω・`) 「…」
( ゚∀゚)「…」
( ゚∀゚)「寺だ」
(´・ω・`) 「うん」
きっと建物の中に受験の神様は奉られているのだろう。
一歩一歩、石畳を踏みしめながら俺たちは先へ進んだ。
横のベンチで、地域のおじんおばん達が世間話をしている。
賽銭箱をすり抜けて、畳の上にあがり、坊さんらしき人に話しかけた。
( ゚∀゚)「すいませーん」
/ ,' 3 「…ブツブツブツ」
( ゚∀゚)「あのー」
/ ,' 3 「……ブツブツ」
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:47:57.95 ID:A0eAmYtX0
/ ,' 3 「何かね?」
(´・ω・`) 「あの、ここに受験の神様が奉られてるって聞いたんですけど」
/ ,' 3 「…え?」
(´・ω・`) (ジョルジュ、このじーさん耳すげー遠いよ)
(#゚∀゚)「あのう!!! ここに!! 受験の神様が!!!!」
/ ,' 3 「ああ、おまんじゅうかい。あっちの棚にあるでよ」
まるでダメ。というか、特に奉られてそうな雰囲気はない。
相手をするだけ面倒なので、俺達はひとまず寺の外へ出た。道の淵に座って反省会。
(;゚∀゚)「あー。なんか鬱だ」
(;´・ω・`) 「疲れがどっとと押し寄せてきた気分。君に1日潰されたよ」
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:48:43.00 ID:A0eAmYtX0
- ( ゚∀゚)「ごめーんなさーい。はい。お詫びに煙草」
(´・ω・`) 「いらない」
( ゚∀゚)「…」
淀みない突き抜けた青空に、全世界の人々のやるせなさを乗せてケムリは飛んでいく。
そのまま、雲になって、黒くなって、雨を降らして、
そしてまた綺麗に、なるんだな。
(;-∀-)(あー。タールが俺の体を蝕むー… 英単語を忘れていくぅー…)
と、その時。
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:49:44.85 ID:A0eAmYtX0
- / ,' 3 「こりゃあ!」
(;´・ω・`) 「わわっ!」
(;゚∀゚)「おお押すなよ!!」
入れ歯を飛ばしてジジイが叱る。びびったショボンが肩を押す。
俺はショボンのシャツを掴んだ。二人、斜面を転げていった。
/ ,' 3 「山で煙草はー…… ありゃ、おかしいのう。消えたわい」
―――――――
――――
――
- 60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:51:52.23 ID:A0eAmYtX0
- (;´・ω・`) 「あっばばばばばばば」
(;゚∀゚)「おおいいいふざざけけけるなよ」
飛び出た枝や転がる石に衣服を傷つけられながら、俺達は下り続けた。
終着点にぼすん!と辿り着いたとき。お互い、それはもう体中が痛くて少し涙が出た。
( ;∀゚)「押すんじゃねえよ… 馬鹿」
(´・ω;`) 「シャツ引っ張るなよ… 阿呆」
地面にぺたりと尻をつけ、俺達は上を仰いだ。しかしそこに空はない。
枝と枝が交錯し、そこから僅かに漏れる太陽の光は、少しずつ黄金色に近付いているようだった。
ああ、もう夕方か。
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:54:23.88 ID:A0eAmYtX0
- 絶望の顔色を見せる俺を余所にショボンは立ち上がり、
うろちょろとしながら「どうしようどうしよう」と呟き始めた。
(´・ω・`) 「…どうしよう」
( ゚∀゚)「うざってーからとりあえず止まれよ」
(;´・ω・`) 「どうしようどうしようどうしよーーーー っと あばばば!」
転んだ。また転んだ。本番でコケないように目一杯転んでいるのか?
ドジめ。…ん? そのドジ野郎の足元には、何やら小さな小さな石の柱が。
あ、
(;゚∀゚)「見つけたぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:56:21.13 ID:A0eAmYtX0
- ( ^ω^)ニコヤカ
(´・ω・`) 「え、このコケだらけの、原型を留めていないお地蔵サンが?」
(;゚∀゚)「どけぇええーい!」
ショボンをふっとばし、俺は神様と対面した。
顔は削れ、昔剃った頭には緑の髪の毛が生えている。
何十年何百年。 左手と右手。 祈りの構え。
何十年何百年。 貴方は何を見て何を考えてきた? 教えて欲しいと俺は思った。
(´・ω・`) 「…」
( ゚∀゚)「…」
(´・ω・`) 「お祈り、しようか」
( ゚∀゚)「ああ」
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 21:58:56.64 ID:A0eAmYtX0
- しゃがみ、手を合わせ、俺は心の中で呟いた。
神様、受験の神様。どうか僕を来年ワセダ大学に合格させてください。
すると神様は問うたのだ。
あんた、大学に入って何がやりたいんだお? 何のために大学に行くんだお?
しばし考えたが、俺はどーしても答えられなかった。
神様は言った。
おk おk 今、心の奥を覗かせてもらったお。 アバンギャルドに、生きろよ。
俺は目を開いた。
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:03:18.10 ID:A0eAmYtX0
- (´・ω・`) 「よっし! これで合格間違いなしだな!」
(´・ω・`) 「今日1日散々だったけど… なんか僕、やる気出てきたぜ!」
(´・ω・`) 「なっ、ジョルジュ!」
( ゚∀゚)「あ… うん」
( ゚∀゚)「…」
( ゚∀゚)「…」
( ゚∀゚)(小説家に、なりたいなあ。 映画監督もいいな。 漫画を描いてみるのもいい
世界を旅したいな 世界の子供たちの写真を撮りたいな 色んな人を、愛してみたいぜ)
( ゚∀゚)「…」
( ゚∀゚)「うっし」
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:04:25.33 ID:A0eAmYtX0
- 「なあショボン」
「ん?」
「今夜、下宿に帰ったら何べんきょーする?」
「うーんそうだなあ。かなりやる気モリモリになってきたから
青チャートもう一周やってみようかな。あと化学のプリント冊子」
「ジョルジュは?」
「俺はなー… えーと… こないだの模試の再解きと世界史の冊子と英単語ももう一度頭に叩き込みたいし
あー、そうそう 先々月の模試の国語が全然ダメでさ。斉藤に質問しにいこうかな
あと、それと………………」
(end)
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