( ^ω^)クローバーのようです

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:34:04.38 ID:A0eAmYtX0



Taste of kiss is Cream puff



92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:35:00.41 ID:A0eAmYtX0

私は疲れていた。 体も心も。
何もする気が起きないのに、さっきから電話をかけ続けているのは何故でしょう。
沈黙と会話をするだけなのに。



『ピー と鳴ったら』


川 ゚ -゚)「はぁ」


川 ゚ -゚)(物凄く残酷な映画を観たい。幸福な顔を見るのは嫌)

川 ゚ -゚)(この世のどん底に落としてくれるような、音楽が欲しい)



私は疲れていた。



93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:37:19.83 ID:A0eAmYtX0
生憎なことに今夜の星は綺麗だった。
一等星が外に出なよって言ってる。
私は断ったが、この部屋には退屈と悲哀しかない。
その割合はコーヒーに対するミルク。
でもカップにほんの少しミルクを垂らすだけでコーヒーの味はがらりと変わる。



川 ゚ -゚)「最後にもう一回」

『ただいま電話に出ることg』

川 ゚ -゚)「馬鹿だな」






私は夜の町に繰り出した。



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:38:58.38 ID:A0eAmYtX0
十月の夜道はとても詩的。
黒猫の欠伸。風の笑い声。足元を照らす街灯はおぼろげ。

誰も見てやしないのに、誰も通りを歩いていないのに
私は目一杯お洒落をして町を歩いた。
夜蝶のネイル。雌豹のリップ。カツンカツンと鳴るハイヒール。冬の海のようなワンピース。




公園からか弱い鳴声一つ。








「…おーん」

川 ゚ -゚)(なんだろ? 行ってみよう)



95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:40:28.25 ID:A0eAmYtX0
( ´ω`)「おーん… おーん…」

川 ゚ -゚)「捨てられたのかい」

川 ゚ -゚)「私もさ」

川 ゚ -゚)「でもね、捨てられた者だけが持つ特権もある」



私と子犬は夜の町を歩く。 誰の干渉も受けず、世界の都合など知らずに歩く。
今、隣町で血みどろの事件が起こっても、
今、海の向こうで小さな子供が売られても、
きっと私と子犬は知らん顔で歩き続けるだろう。 



( ^ω^)「おーん」

川 ゚ -゚)「ん。どこへ行くのかって?」



「着いてからの秘密さ」



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:41:51.31 ID:A0eAmYtX0
しばらく歩いた。 
少しだけ欠けた歪な月はいつまでも私達を追いかける。
どこまでも追いかけてくる代わりにいつまでも捕まることはない。
じきに彼は嫌になって綺麗な顔を黒く染めてしまうのだ。
それでも完全に消えることは滅多になく、三日月になってそーっとそーっと
私達の夜を照らして、見つめている。



川 ゚ -゚)「もうすぐ着くよ」

( ^ω^)「おーん」



子犬は舌を出す。
幸せそうな顔。



98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:44:39.83 ID:A0eAmYtX0
アーケード街に似合わないモダンな菓子屋。
裏口の玄関に立ってベルを2回鳴らす。
菓子屋を経営している間抜けな兄弟のうち一人は、きっと誰かとシーツの中。


(´<_` )「ふぁあーい……」

(´<_` )「なんだ、クーか」

川 ゚ -゚)「君の焼いたシュークリームが食べたくなった」

(´<_` )「夜が明けたらな」

川 ゚ -゚)「今食べたい」

(´<_` )「相変わらずのわがままめ」

川 ゚ -゚)「…」

(´<_` )「…」



(不意か故意か知らないけど、彼女は寂しい顔を見せた。
 男はそれにつられたのか、承諾して店内へ駆け込む。
 僕は依然として舌を突き出しハッハッとうなっていた。)



99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:46:32.92 ID:A0eAmYtX0








夜の広場。 この暗さ、僕の最初の記憶に似ている。 

見る人もなく噴き上がる噴水。

女の香水の匂い 男の煙草の匂い

混ざり合って、犬の嗅覚を持つ僕は、苦しい。

だけど、なぜか、いい気分。

女は僕の体を撫でてくれる。 それがいい気分なんだ。

犬。 それは付き従う生き物。 だからしょうがない。 これは性

彼女は?

彼女はどうだろう。

どっちかといえば、彼女、従える側。

鉤鼻のあいつの顔を見てみなよ。 メロメロだから。



101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:48:24.92 ID:A0eAmYtX0
川 ゚ -゚)「…」

川 ゚ -゚)「おいしい」

(´<_` )「そりゃ、良かったね。おかげでこっちは、明日も早いのに、目が冴えちまった」

川 ゚ -゚)「あなたもどうぞ」

( ^ω^)「おっおっおwww」

(´<_` )「…」

(´<_` )「綺麗だね」

川 ゚ -゚)「キスしたい?」

(´<_` )「キスしたい」



102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:49:53.14 ID:A0eAmYtX0



長いキス。 あ、また後ろで噴水があがる。
なんとなくドラマチック。 
だけど私が背負っているのはドラマではなく格好悪い痴話。それと下らない秘密。


「彼氏は… どうなの」

「知らない。 あんな人」

「そうかい」

「もう一回」

「んっ」



夜のキス。 あ、また後ろで噴水があがった。
俺はこの女の人が好き。
だけど彼女が好きなのは俺じゃなくて背広が似合う… 兄貴、どこに行ったっけ。



103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:51:11.52 ID:A0eAmYtX0
川 ゚ -゚)「さよなら」

(´<_` )「もう行くの?」

川 ゚ -゚)「シンデレラは12時を過ぎたら灰になるんだ」

(´<_` )「へっ」

川 ゚ -゚)「…ありがとう。 このシュークリームで明日を生きる力をもらった」

(´<_` )「大げさだよ」

川 ゚ -゚)「大げさなんかじゃないよ」

川 ゚ -゚)「女ってそういうイキモノなんだ」

川 ゚ -゚)「お菓子屋さんのくせにそんなことも分からないんだね」

(´<_` )「へっ。言ってろよ」



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/19(金) 22:52:21.35 ID:A0eAmYtX0
悲しい別れに あついキス

辛い時には わらいばなし

疲れた時には あまいもの







簡単簡単。 この世界を生き抜くことは、とても簡単さ。







さて、夜が終わる。

犬はついて来るが、どうしたものか。

あの時のキスの味。シュークリーム。




(end)



戻るnext... Clover again