( ^ω^)ブーンは、春がくるたび戸惑うようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:02:29.66 ID:dJWZd+4k0
初恋は、実らない。


悔しいけれど、その例にもれず、僕の初恋も失恋に終わった。

と言っても。ふられたとか、はっきりどうこうなった訳ではなく、
何だろう……うーん、自然消滅? になるのだろうか。


まだ、僕がこーんなに小さい頃のこと。


僕には、幼馴染になる"はず"だった女の子が居た。


「ま、まってお!」

「はやくきなさいブーン!」


その子はいつも強気で、目がつりあがってて、活発で元気な子だった。
反面、僕はその……控えめというか、身体が弱く、彼女についていけなかった。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:03:33.21 ID:dJWZd+4k0
「うう……いたいよ…」

ξ# )ξ「あーもう、ちょっところんだくらいでなかないでよ!」


名前は……ツン、と呼んでいたことだけは覚えている。

なめらかで、ボリュームのある金色の髪と、くるくる回ったツインテールがチャームポイント。
僕はそんなツンが大好きだった、なぜかよく怒っていたけど、それでも大好きだった。
どんなに酷い事をしても、泣いてる僕を絶対に放っておいたりはしなかったから。


「だって……ひっく……」


「しょうがないわね、ほら……いたいのいたいのー…」



「ぶつりてきにとんでいけ!!」

「ぎゃーーーー!!!」


「どう? あしとあたま、どっちがいたい?」

「すごく……あたま、です……」



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:04:31.11 ID:dJWZd+4k0
……そんなツンの世話の甲斐あってか、僕は今ではずっと逞しくなりました、合掌。


うん、まあそれはともかくとして、ツンと僕は当然のように一緒に居たんだ。
家も隣だったし、園でも隣に居た、家に居たって隣に居た。
黄ばんだアルバムも、どれほど同じ時間を過ごしてきたかを教えている。


日差しを反射するゴムプール、水しぶきがキラキラしていた。

紅葉が萌える草原で、枯れ木にとまった赤とんぼに指をさしている。

銀世界の中でも、あったかそうな服を着て、傘をさして寄り添っていた。



いつもいつも一緒だった、ずっとずっと一緒だと思っていた。

けれど、そんな信じて疑わなかった日々は。

"お引越し"の言葉の意味を知ると同時に、もろくはかなく、崩れ去った。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:06:18.07 ID:dJWZd+4k0
「いやだ、いやだお!!」


季節は春。


桜がピンクに染まって、ざざざ、と揺れる。

おあつらえ向きの別れの日だった。


はっきりと、全てを覚えているわけじゃない。
ただ、漠然と自分がどういう行動をしたか、だけは覚えている。


そんな子供の頃のお別れは、なかなか鮮明で、そして辛いものだった。
もしかしたら、本当は子供なりに、わかっていたのかもしれない。

これは一生のお別れになるのだと。

大人と違って、子供は連絡したり、会いに行ったりなんて出来ないから。
わかっていたのかもしれない、だから僕はあんなに必死だったんだろうなぁ。


どう必死だったかと言うと、思い出すとちょっと恥ずかしいのだが、
要はほら、あれだ、伝えられなかった想いをこう…。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:08:41.74 ID:dJWZd+4k0
「ほんとに、もうあえないのかお……?」

ξ )ξ「……そうよ、ずっととおくにいくんだから」


「どうしても行っちゃうのかお、どうしてだお」

「ごめんね、ブーンちゃん…」


「……ツンちゃん」

ξ )ξ「……なによ」


「ぼくはツンちゃんがすきだお、だいすきだお!!」

ξ )ξ「……え」


それで、とにかく同じことを言いまくってた気がする。
そしたらツンちゃんが、もう会えないもん、みたいな事を言った気がする。

そして。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:10:26.42 ID:dJWZd+4k0
そして。


ξ;凵G)ξ「ブーン、ラブユーフォーエヴァー!!」


って、言ったかどうかは知らないけど。
とにかく、両思いになったような気がする。


いやごめん、やっぱうそ、正直このへんよく覚えてない。
何せ子供のころの思い出だ、美化脚色されていてもおかしくない。

うん、まあ、とにかく、二人で泣きながらバイバイしたんだよ。


それで確か……その時に、何かを約束したと思う。

多分、もう泣かない、とかそんなの。


だけど、その翌日。


変わらぬ景色が教えてくれたのは、一つだけここに足りない物。
いつもの場所、と決めていた公園で、僕はいつまでも泣いていた。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:11:20.64 ID:dJWZd+4k0
それからも、季節が巡って近づくたびに、いくつも別れがあった。
花は桜、嫌いじゃないけど、あんまり綺麗で泣きたくなる。


あの頃に戻りたい、と願っているかもわからぬまま、
何時までも開かないつぼみのように、春に迷う。


僕の心は。






     春がくるたび戸惑うようです。



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