( ^ω^)ブーンは、春がくるたび戸惑うようです

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:12:07.80 ID:dJWZd+4k0
   ;;;   :::: ...        ::::: ::;;;:::.....
;;;; ,,, 、、   ,i'            :;;::.,,:  丶;;:;;:
      ヾヾ              ゞ  ```
ゞゝ;;;ヾ  :::,r'  `  `          i、;;;ヽ;;;  ヾ;;;
i;;;::::′~^        `    `        ;;; ″~  ~
ii;;::iヽ /      `               ゞ:,,,:: ヾ 〃::;:
iii;::i `           `     `          ii;;;;::: ::   
iii;;::i     `@「新生活、はじめました」      iii;;;;::: ::
iiiii;;::i      `               `      iii;;;;::: ::
iii.,ii;;:i,                          iii;;;;::: :::
iiiii゚i;;:i            `        `      iiiii;;; :::::
iiiiiii;;::i                         ||iiii;;;;::::
iiiiiii;;::::ヽ;;,,';;"'';;";;""~"`"`;.";;""'"~"`~"'';;,,,   /iiiiii;;;;o;;;
iiiiiii;;::;';;"                    `;;/i:ii iii;;;;;::::



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:13:49.58 ID:dJWZd+4k0
≪間もなく、VIP、VIP≫


≪お忘れ物に、ご注意ください、お出口、右側、だょう≫


( ^ω^)「…お?」


物思いにふける僕を、アナウンスが呼び戻した。
人もまばらな電車内では、目的地到着を告げる声につられて、人が立ち上がる。

僕も同じように、大きなショルダーバックをひっかけ立ち上がった。
腰と尻がしびれている、アナルを掘られたら、こんな感じかもしれない。

窓の外は、まだ早朝なので薄暗い。
けどそれ以前に、中の暖かさのせいで窓は曇っている。


駅に到着すると、人がぞろぞろ歩き出して、僕もおろおろ電車を降りた。
ホームの階段を下ると、あまりに広くて困惑しながら、人の波に乗って出口へ向かう。

あ、外だ。

なんて思っていると、冷たい風が入り込んできて、身をすくめる。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:15:11.17 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「うは……まだ全然寒いじゃないかお」


季節はもう春になるのだが、どうにも寒い、寒すぎる。
これが、地球温暖化によるものなのだろうか。

( ^ω^)「さて、とりあえず行くとするかお」

駅を出ると、立ち並ぶビル群。
僕は歩きながら、とりあえず見上げてみた。


(;^ω^)「うーん、やっぱ凄いなぁ……都会って感じだお」

僕が今まで住んでいた場所も、別に田舎というわけではないが、
高層の建物は存在しなかったから、物珍しい。


( ^ω^)「えーと……地図では、あ、あの看板かお」

本当は、着いたら連絡するようにと言われているのだが。
せっかく来たんだし、少し自分で歩いてみたいので、歩くのだ。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:17:38.89 ID:dJWZd+4k0
はてさて、どこへ行くのかと言うと。

それは、僕がこれから居候させてもらう、流石さんの家。
家を失くし、遠くの学校に通うことになった僕は、たった一人でやってきたのだ。


分かり辛いかな……うーん、こういう説明するのって苦手なんだよね。

えーと、つまりね、産業でいうと。


・事情があって家を失くした僕、遠い親戚の家に居候することに。

・学校……実はもうずっと行ってないんだ…。

・じゃあ近所に学校あるから、中途入学しなさーい。


というわけ。

というわけで、僕は駅のまえに広がる街並みを歩いているのだ。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:19:09.71 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「おお……すごいお、店がどこも閉まってない」

僕の故郷では、こういう繁華街の店は閉まってるのだらけだった。
とても新鮮です、凄いです、感動です。

こんな場所を一人歩く僕って、もう都会っ子でしょうか。
そんな事を考えていると、ついつい顔がにやけてしまう。


( ^ω^)(これから、お洒落な友達ができて…一緒にここを歩いたりするのかなぁ)


想像するのは、なんだかおっしゃれーな服を着て、
すてきな友達と、煌びやかな道を歩く姿。


(* ω )(それでそれで、こう、喫茶店とかも入っちゃったりして……)

(*^ω^)「……いいなぁ、それ」

よおおし、この都会で、素敵な友達をつくるぞおおおお!!
とか、なんとか妄想しながら、意気揚々と歩いていたんだけども……。


( ^ω^)「ところで、ここは何処だ」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:21:06.68 ID:dJWZd+4k0
なんだか、閉まっている店がちらほら現れてきた。

一言で言うなら、さびれている。

どうにも見慣れた感があるが、それどころじゃない。
迷ってしまった、いやまあ、本当は来た道を戻ればいいんだけど。


( ^ω^)「線路があそこだから、こっちかな」


都会にはいくつも路線がある事を、考慮にいれない判断をした結果。
それから3時間にわたって歩き回る羽目になっちゃった。


(;^ω^)「疲れたよパトラッシュ……もう電話してもいいよね」

( ^ω^)「あ、携帯の電池切れてる……」

しょうがないので、充電器を買いにコンビニへ行く。
都会のコンビ二はなんと、地下にあるのだ、とんでもないな。


( ^ω^)(うーん、都会のコンビニは、もう百貨店くらい広いかと思ったけど
       逆にやたら狭いんだなぁ、僕んちの近くの半分もないお)



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:24:00.69 ID:dJWZd+4k0
(*゚ー゚)「ありがとうございましたー」


(;^ω^)(でも、さすが都会……すごいお洒落な子が店員してるお…)

僕の近所のコンビニでは、じっちゃんばっちゃんが経営していて、
そのせいか、年配の方の集合所と化している場所すらあるというに。


( ^ω^)(……僕も、ああなりたいお)


( ^ω^)「電池ふっかーつ」


すると、携帯がメールの受信を始めた。
僕はギョッ、とした。

受信中の数字には、4/22と書かれていた。
その9割方は、とある知人によるものだと、そう確信した。

(;^ω^)(……高岡め)

そして随分待たされて、ようやく受信完了。
必要な二つのメール以外、中身は確認せずにすべて消した。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:26:06.68 ID:dJWZd+4k0
残る二つを開くと、そこには、いまどこ、的な意味合いの本文が。

(;^ω^)「うーん、心配されちゃってるお、はやく電話しなきゃ」

さっさと履歴から電話をかける。
呼び出し音、ならぬ呼び出し曲が流れるなり、すぐに誰かの声がした。


≪内藤か? やれやれ、やっと電話に出たな≫

(;^ω^)「すみませんお、ちょっと迷ったり電池切れたりしてて……」


≪まったく、何かあったのかと思ったぞ……それで、今どこにいるんだ?≫

( ^ω^)「駅のそばのエターナルフォースコンビニですお」


≪おk、実はもう近くまで来てるから、すぐに行くよ≫

( ^ω^)「わかりましたお、お願いしますお」


( ^ω^)「ふぅ……ん?」



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:28:19.98 ID:dJWZd+4k0
ちなみに僕は、道端で一人、電話を片手にぺこぺこお辞儀をしまくっていた。
ふと見れば、さっきのコンビニのお姉さんがこっちを見ていた。


(*゚ー゚)クス


……恥ずかしい。


しばらくすると、黒い車がぼくの前に停車した。
車種はBB、車に興味ないから、どうでもいいけど。


( ^ω^)「弟者さん、こんにちわですお!」

(´<_` )「ああ、よく来たね内藤君」

僕がこれからお世話になる家の、流石弟者さんだ。

促されるままに車のドアを開けば、綺麗に片付いた車内はいいにおいがする。
ふと、弟者さんを見る。ジーンズに、紺のカーディガンからは白いシャツが覗いていた。

普通だ、普通の服装なのに、なんだか品を感じる。
僕はおもわず恐れおののいた。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:30:26.14 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)(都会オーラおそるべし)

(´<_`;)「ほら突っ立ってないで、早く乗りな」

(;^ω^)「は、はい! 失礼しますお!」


(;^ω^)(あ、どうしよう、靴はたいた方がよかったかな…)


(´<_`;)「荷物じゃまだろ? うしろ置けば?」

(;^ω^)「い、いいんですか?」

(´<_` )「何が駄目なのかわからないが、構わないよ」

(;^ω^)「で、では失礼して…」

( ゚ω゚)「そおい!!」

大きな荷物をむりやり後ろへ投げ込む。
その途中、弟者さんに思いきりぶつけてしまった。
必死に謝ったら、なんだか笑って許してくれた、ええ人や、ええ人やで……。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:32:42.79 ID:dJWZd+4k0
やがて、ウィンカーをかちんかちん言わせて発車した。
どうも落ち着かなくて、ついその辺をキョロキョロ見てしまう。

( ^ω^)(あ、あのアクセサリーかっこいいなぁ……)

(´<_` )「学校は明日から?」

( ^ω^)「そうですお」

(;^ω^)(高そうだなぁ……高いんだろうなぁ…)

(´<_` )「じゃあ、ちょっと場所だけでも見に行こうか?」

( ^ω^)「あ、ぜひお願いしますお」

(´<_` )「りょーかい」


弟者さんは、僕と4つくらいしか変わらない……はずなのだが、
なんかこう……桁違いに差を感じるのは、何故なんだろう。

そして、聞いたことのない曲が流れる車内から、ふと横を見た。
景色はどんどん移り変わり、繁華街を抜け、住宅街へと進み、更に行く。
ふはは、見ろ、街並みがゴミのようだ。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:34:05.17 ID:dJWZd+4k0
(´<_` )「ほら見えた、あれだよ」

(;^ω^)「ど、どれ?」

(´<_` )「あの凱旋門みたいなやつ」

( ^ω^)「わかりましたお」


ゆるやかな振動、明るい曲に混ざる駆動音。
僕は遠くに見える建物を、食い入るように見つめていた。

(´<_` )「どう、これからあそこに通うわけだけど、感想は?」

(;^ω^)「うーん……あまり実感わきませんお」

それから、学校の近くと聞いていただけあって、
すぐに流石さん宅へと到着した。


まず驚いたのは、車が4台は置けそうな大きな車庫。
シャッターが自動で開いて、弟者さんは慣れた様子で狭い中へ駐車した。

(;^ω^)(それにしてもでかい家だお……)



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:36:30.76 ID:dJWZd+4k0
なんだか、入り口から玄関までに入り組んだ道があって、まるで要塞のようだ。
けど、プランターに花があったり、ちょっぴりファンシーな飾りがあったり、家庭的だ。


(´<_` )「行こう、ラオウの元へ……」

僕は壁面につけられた、おびただしい拳の跡を見つけて、
ドキドキしながら弟者さんの後を追い、玄関まで歩いた。

そうして要塞を抜け、たどりついた玄関口。
すると、ガチャッ、と扉は開かれて。


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`)「待っていたぞ、ホライゾン」 


現れたのは、腕を組んだラオウの如き母者さん。
なんだか凄い迫力だなぁ、目が光って見えたのは気のせいか。
何にせよ、僕はバトルボーナスをゲットしたようです。

( ^ω^)「こんにちわですお、相変わらずたくましそうで安心しました」

(´<_`;)(うーん…相変わらずぜんぜん怯まないんだなぁ)



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:38:36.37 ID:dJWZd+4k0
 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`)「ほう、やはり耐えたか」 


(;^ω^)「え?」


(´<_`;)(たいがい気当たりして倒れるのに、鈍いのか、強いのか…)

( ^ω^)「えと、これから、どうぞよろくお願いしますお」


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`)「あーはいはい、いいからとっとと入んな、もう疲れたろう」 


(;^ω^)「あ、はいですお」


そして、中に連れられ、僕の部屋へと案内されてほいほい着いていく。
靴を脱いだらちゃんと揃えて、つやつやしたフローリングの廊下をわたり、
階段をのぼって、また廊下、ながい、でかい、凄いなぁ……。

僕はなかば呆けながら、前を行く母者さんの後を追う。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:40:34.50 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)(さて、どうなるか……)

僕はあくまで居候の身、やはり、ほこりまみれの屋根裏部屋だろうか。
それでなくても、どんな部屋でも、受け入れよう、それが居候魂だから。

そもそも、しばらく野宿していた身としては、屋根さえあれば…くくく。
とか思っていたのだが、いざ辿り着いてみれば……。


(´<_` )「着いたよ」

(;^ω^)「え、あれ…屋根裏部屋は…?」

(´<_`;)「は、屋根裏?」

(;^ω^)「え、だってこんな広い、え?」

あまりの事に、思わずきょどってしまった。

白い壁とふわふわ絨毯の敷かれた床。
ベランダを隔てる大きな窓、綺麗なカーテン。
ベッドには布団がもう敷いてあって、おっきなテレビまである。

まるで高級ホテルみたいだ、こりゃ凄い。
ていうか、これ、僕の部屋?



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:42:30.65 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「こ、こんな凄い部屋に……」

(´<_` )「これから長い事すむんだから、不自由させちゃ悪いと思ってね」

(;^ω^)「そ、そんなそんな…」

(´<_` )「あれ、気に入らない?」

(*^ω^)「すっごく嬉しいですお!」

(´<_` )「そりゃよかった」

 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`)「送られてきた荷物も、もう全部運んでおいたからね」 


(*;ω;)「いやもう、何から何まで、本当にありがとうございますお」

あまりの人の暖かさに涙がちょちょぎれる。
都会の人間は、心が冷たいと聞いていたけど、ありゃ嘘だ。

(;^ω^)(ん、ってこれ、全部一人で……?)

(;^ω^)(…まさか、ね…)



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:44:06.12 ID:dJWZd+4k0
それから、僕はとりあえず荷物の整理と確認をはじめた。
二人は、用があったらインターホンで呼ぶように、と残してどっかに行った。
しかし部屋にインターホンとか、それにしても凄まじい家だな。

( ^ω^)「えーと、これは使うからこっちへ…」

そして、作業を進めること、一時間ほどだろうか。
正面のおおきな窓の外、つまりベランダで、何やら物音。

ん? と顔をあげると、女の子が窓にはりついて、じーーっとこちらを見ていた。

( ^ω^)「あ……」

从*・∀・ノ!リ「!!」

目が合うと、少女はぴょんぴょん飛び跳ねた。
どうやら喜んでいるらしい。大興奮でジャンプするたびに、
セミロングの髪の毛と、スカートがふわふわ浮き上がる、後者は色々もろ見えだ。

しばらく見ていると、いや、下な意味じゃなく。
窓越しに籠もった声が聞こえてきた。

从*>∀<ノ!リ『あけてほしいのじゃー!!』

( ^ω^)「はーい、今あけますおー」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:45:45.14 ID:dJWZd+4k0
鍵を開けると、すぐに側にやってきて、僕の手を取った。
そしてぶんぶん振り回した、この子は妹者、言うまでも無いが、弟者さんの妹さんだ。

从*・∀・ノ!リ「今日からって聞いて、ずぅっと待ってたのじゃ! 」

( ^ω^)「うん、今日からお世話になるお妹者ちゃん」

从*・∀・ノ!リ「任せるのじゃ、ないとーの世話は妹者がしてあげるのじゃー!」

両手で小さくガッツポーズをとる妹者ちゃん。
何とも微笑ましい、かわいいものだ、とりあえず撫でてあげた。
すると、えへへーって感じで、花咲くような笑顔を浮かべた。

それだけで早くも、来てよかった、と心から思った。

…思ったそばから。


「おっと、待ちな……ブーンの世話をするだと…?」


从;・∀・ノ!リ「はっ、この声は……」


どこからともなく、誰かの声が響いてくる。
妹者ちゃんは、どこか楽しそうに辺りを見回した。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:47:32.76 ID:dJWZd+4k0
そして、ガタガタッと激しい物音。
発生源はベッド、そのまま見ていると、下の隙間から手だけがニョキッと生えた。


「あ、ごめん、ちょっと引っ張ってくれる?」

从・∀・ノ!リ「マドハンドがあらわれた!」

从・∀・ノ!リ「妹者のこうげき!!」

「いたっいたいっ! ちょ、踏まないで、あ、今なんか変な音が!!」


おお、ベッドが暴れている。

あ、今頭をぶつけたっぽい音がした。

しょうがないので、生えた手を引っ張ってあげた、
すると、ズルズル引きずられて、マドハンドから人間が生えた。

(;^ω^)「で、兄者さん……そんなとこで何してるんですかお?」

( ´_ゝ`)「いやまあ何だ、驚かそうと思ったんだがね」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:49:27.80 ID:dJWZd+4k0
( ´_ゝ`)「あとこれ、はい」

(;^ω^)「え? なんですかこれ、木の板?」

( ´_ゝ`)「取れちゃった」

(;゚ω゚)「壊すなぁ!!」


こちらは、白黒ジャージ姿の兄者さん。

流石家長男にして、こう言うのも何だが、わりとイケメンお兄さんだ、
顔だけみれば、かなりモテそう……なのだが。


( ´_ゝ`)「くく、かかったなアホめ、嘘に決まってるだろう」

( ^ω^)「そんな嘘をつく必要性はあるんですかお……」

( ´_ゝ`)「いや、だってほら、折角住むんだし、サプライズを」
( ^ω^)「やめてくださいですお」

( ´_ゝ`)「んー? 久しぶりに会ったっていうのに随分じゃない?」

(;^ω^)「いえ、そんなことないですお」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:51:28.19 ID:dJWZd+4k0
(*´_ゝ`)「でも、そんなブーンちゃんがす・て・き…」

( ^ω^)「すいません、生理的嫌悪感がとまらないので、
       頬をすり寄せてこないでくださいですお」

(*´_ゝ`)「素直に気持ち悪いと言っても、 い い の よ」

変人で、何考えているのかわからない人だ、ちなみに重度のヲタクで有名。
何故か知らないが僕が大層お気に入りらしく、会う度に擦り寄ってくるこの始末。


( ^ω^)「ていうか、できれば、あまり近寄らないでほしいお」

(*´_ゝ`)「ふふ…素直になれよ、今日から俺たちは兄弟、なんだからさ」

(;^ω^)「いや、そこで何故服を脱ぐんだお」

( ´_ゝ`)「寒いから」

(;^ω^)「意味がわかりませんお……」

(*´_ゝ`)「さあ兄弟よおーーー! お前も脱げ、今こそ人肌のぬくもりをおおお!!」

( ;ω;)「いやああーーーーーーーーーー!!」


从*>∀<ノ!リ キャ



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:53:13.16 ID:dJWZd+4k0
ちなみにその後、僕は裸にひんむかれ、
よくわからない流れのまま、何故か三人で仲良くお風呂に入ることに。

流石なお風呂は、一斉に入っても余裕があるくらいの、もはや浴場、ってサイズだった。


( ´_ゝ`)「はぁ…いい湯だな、っと」カポーン


( ^ω^)「流すお、目をつよく閉じてー」

从;>∀<ノ!リ「うー……」

( ^ω^)「はい、終わり」

+从・∀・ノ!リ+「ありがとなのじゃ!」

( ^ω^)「おっお、シャンプーハットなくても大丈夫じゃないかお」

从*・∀・ノ!リ「えへん、じゃあ今度はないとーを妹者が洗ってあげるのじゃ」

(;^ω^)「え、いや僕は…」

( ´_ゝ`)「よし、俺も手伝おう」

(;^ω^)「手伝うって、ちょ、なんで羽交い絞めに!?」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:54:34.92 ID:dJWZd+4k0
( ´_ゝ`)「妹者、今だ!」

从・∀・ノ!リ「りょうかいなのじゃ!!」

(;゚ω゚)「ぶっ、い、いきなり前かお」


从・∀・ノ!リ「ごしごしごしー、どうじゃー?」


(;゚ω゚)「ぎえっ!? ちょちょちょ、なんか尻に! 尻に熱を帯びた肉質的な硬さのナニかが!!
      ナニかがめっちゃ当たってるんですけどーーー!!」

( ´_ゝ`)「ふふふ…」

(;゚ω゚)「うわぎゃーーーーーーーーー!!」


从;・∀・ノ!リ「おろ?」


( ´_ゝ`)「案ずるな、これは妹者に反応しただけだ」

(;゚ω゚)「それはそれで大問題だ!!」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:56:55.54 ID:dJWZd+4k0
从#・∀・ノ!リ「むー…無視されてるのじゃ…」

从#・∀・ノ!リ「なら、こうじゃ!!」

(; ω )「はうっ……!?」




「ちょ待っ……そこは………あああ」

「これは……おお、たくましい…」

「おろ?? なんか、ここだけ硬いのじゃ!」

「や、やめてーーーーーー!!」


………。



僕、汚されちゃった。

やって来て早々、肉体的にも、精神的にも。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:58:07.51 ID:dJWZd+4k0
今夜は枕を濡らすでしょう……。
うう、あんな小さい子相手に……。


(;´ω`)(もう、立ち直れないお……)


そう思っていた頃が、僕にもありました。
歓迎、なんて言われてご馳走を振舞われると、すっかり忘れちゃったから。

そして、就寝前。


( ^ω^)「……うん、準備おっけーだお」


鞄の中身を確認すると、壁にかけた制服を眺めて、明日を思う。
どんな所なんだろう、怖さと楽しみなのが入り混じって、とにかくドキドキする。

これじゃ緊張して眠れないかも、どうしようかな。
まあ、それで寝ないで遅刻、なんてテンプレをする訳にはいかない。
無理にでも寝よう、うん、そうしよう。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 15:59:44.87 ID:dJWZd+4k0
( ^ω^)「おやすみなさーい」


さあ、寝るぞ、目がさえてるけど、寝るぞ。

羊がいっぴきー、羊がにひきー。

そういえば、羊を数えるのって、元は英語のシープとスリープをかけた、
つまりギャグなんだよね、だから羊を数えても意味ないんだよね。

なら何を数えればいいんだろう……。

うーん……。


……。


( -ω-)「ZZZ……」


………。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:02:01.13 ID:dJWZd+4k0
< コケコッコー


早朝、僕は小鳥のさえずりで目を覚ました。
なんか違かった気がしないでもないが、まあ起きればそれでいいのだ。

少しだけ肌寒さを感じる、けど思いきって布団を跳ねのけ立ち上がる。
よーし、と背筋を伸ばして欠伸をひとつ。

いやもう、眠れないかもー、なんて考えていた自分が馬鹿みたいだ。
すっきり爽快です、よく眠れました、しゃっきりしてます。
早く学校に行きたいなぁ、そして、都会の友達を造るんだ……。


きっと、色々なお店を知ってるんだろうなぁ……。
すごいなぁ、かっこいいなぁ……。

そんな妄想をしている内に、すっかりテンション・フォルテッシモ。
綺麗でまっさらなシャツの長袖に腕を通して、片足立ちでズボンをはく。
はい、これで制服バージョンへウェイクアップ完了です。


(´<_` )「あれ、早いな」

( ^ω^)「おはようございますお!」


いそいそと洗面所へ向かうと、弟者さんが居た。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:03:33.74 ID:dJWZd+4k0
並んで歯を磨いて、ドライヤーで髪をセットする様を見て興奮したりして、
朝ごはんにパンを食べて、いってきます、と家を出た。


( ^ω^)「んー、朝日が気持ちいい」


昇ったばかりの、柔らか日差しが僕をてらして、心地よい。
まだ星の見える空は、雪解けに咲く花のように煌いて見える。

あたりに人は全然居ない、なにせ本来出る時間より一時間も早いのだから、当然といえば当然か。


( ^ω^)「さあ、それじゃ……行くとしますかお」


早く出たのは、ただ興奮してるだけじゃない。
この辺りの地理を把握し、一番ちかい裏道を見つける為でもある。


そして、希望を胸に歩き始めること……二時間弱。


(;^ω^)「まずい……完全に迷ってしまったぞ……」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:05:01.84 ID:dJWZd+4k0
いつの間にか、迷い込んだ見知らぬ住宅街。
もう、どっちに行っても同じに見える。

ていうか同じだろこれ、まあ屋根の色はちがうけど。
何だかRPGでよくある、色の順番どおりに進め的な物に見えてくる。

実際、適当に進んでいると、行き止まりだったりするから手に負えない。
誰かに電話するべきだろうか、いやしかし……。


:::(;^ω^):::「お゛お゛お゛お゛」


そんな事を考えていると、ポケットの携帯が震えだした。
常にマナーモードで、着信音なんか全然聞いてない携帯が震えだしたのだ。

慌ててディスプレイを見る、流石宅、と表示されている。
なんか、すごい、嫌な予感がしてきたんだですけども。
どうしよう、出なきゃ駄目かな、駄目だよね、でも怖いな、やだな。


(;^ω^)「……うう、もしもし」

≪ホライゾン、今どこにいるんだい?≫



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:07:12.45 ID:dJWZd+4k0
電話の主は、母者さんだった、どうやら学校から連絡がきたらしい。

とりあえず、やけにドスの利いた声に、僕はすくみあがった、
恐怖のあまり、目の前にあった表札を読み上げてしまった


(;^ω^)「は、はい、西川さんちの前…ですお…」

≪西川……? ああ、あいつか≫

(;^ω^)「知ってるんですか!?」


そんな西川さんは。

( ( ^ω^) :西川ホライゾンさん  )

どこか、僕に似ていた。


そんな彼の協力の甲斐あって、とうとう念願の学校へたどりついたぞ!



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:09:35.24 ID:dJWZd+4k0

(;^ω^)「おー……」

遠く喧騒が響く正門前で立ち止まり、棒立ちで見入ってしまう。
まず、なによりでかい、桁違いに色々でかい。

校舎へ辿り着くのに体力を使い切りそうな、巨大なグラウンド。
その奥にそびえる10階建ての四角い校舎には、大きな半円の穴が開いている。


形を表現するなら、凹←これを逆さにした感じ、つまり凱旋門だ。


意を決して正門をくぐり、ふと見上げれば監視カメラと目があった。
内心で悲鳴をあげた、ひぃい、僕なにもわるいことしてないよ、遅刻してるけど。


そうして、ビクビクしながら校舎への道を行く。
何処からか、運動をする生徒達の声がして、ちらっとグラウンドを見る。

<ぅぉぉぉぉぉぉぉ

赤い髪の女の子が、叫びながら走っていた。
うーむ、やたら速いなぁ……あ、また一人周回遅れにしたぞ。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:12:48.06 ID:dJWZd+4k0
グラウンドの反対側には、大きな森がある。
木がいっぱい生えてる、もしかしたら庭園と言うのかもしれない。


( ^ω^)「お?」

今、その木々の奥に誰かいたような…。

紫色をした、髪の長い女の子だったような、
ってまあ、そりゃあ居るか、学校内だもの。


( ^ω^)「学校……うん、学校だお…」


なんとなく、遠い目。

正直、もう通うことは無いだろうと思っていたから。
こうして騒がしい喧騒の中に居ると、感慨深いものがある。


ほらまた、背の小さな女の子が、誰かを追いかけ、包丁片手に駆けて行く。


(;^ω^)「えっ!? ちょ、今のなに! 今の何!?」



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:14:13.38 ID:dJWZd+4k0
もしかしたら、ここは怖い所なのかもしれない。
そもそも学校のくせに、あまりにでか過ぎるじゃないか。
童貞ドーム何個分なんだ、いやそもそも、童貞ドームを見てみたいぞ。


そんなこんなでいぇい、こちらスネーク、校舎内部の潜入に成功した。

(;^ω^)「けど、何処に行けばいいんだろう……」

やっぱりというか、内部もでか過ぎて、場所がさっぱりわからない。
ああ、この地に降り立ってからというもの、僕は迷ってばかりだ、迷い人だ。


仕方ないので、キョロキョロ見回し歩いていると、やがて案内板を見つけた。
ロリコンは病気です、のポスターが貼ってあるだけで、あまり意味はなかった。


(;´ω`)「うう……職員室はどこなんだお…」


( ・∀・)「あれ、わからないの?」


へにゃーっと呟いてみたら、なんだか反応が返ってきた、僕はマジでびびる。
見れば、僕と同じ制服を着た男の子が立っていた。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:16:18.32 ID:dJWZd+4k0
しかもよく見たら、すごい美形だ!びけいだ!ビケイダ!・・イダ!
たまらずスクライド的なエコーがかかる、なんか清潔感あるし、なんかアイドルみたいざますわよ。

( ・∀・)「よければ、僕が案内するけど?」

しかも優しいようです、ああっ、歯が白い、うおっ眩し。
僕はしっぽがあったらぶん回す勢いで、お願いした。

ちなみに道がてらにも、彼は見ず知らずの僕にあたたかく接してくれた。

( ・∀・)「転入生なんだー」

(;^ω^)「はいですお」

( ・∀・)「え、もしかして二年?」

(;^ω^)「そうですお」

( ・∀・)「あ、じゃあ同い年なんだ」

対する僕は、緊張してそれどころじゃなかった。

ろくに返事もできない僕は、愛想笑いもひきつっているだろう。
でも、いいんだ、全ての僕のようなろくでなしの為に、この星はグルグル回るのだから。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:18:29.51 ID:dJWZd+4k0
そんな不貞腐れた僕だけど、彼は笑顔を崩さなかった、優しそうだった。
ええ人や…しかも何かね、あれなんだよ、オーラが出てるよ、やばい。

( ^ω^)(……友達になりたいなぁ)

もしこんな格好いい人と友達になれたら、それはもう素敵な学校生活が待ってるに違いない。
そうなれば、いろいろ大変だったけど、僕の人生オーシャンは順風満帆に違いない。

(;^ω^)(よ、よし…言おう、いやでも、まずは名前から……)

(;^ω^)「ぁの」
( ・∀・)「はい、ここが職員室ね」


( ・∀・)「え?」

(;^ω^)「あ、いや……」


(;^ω^)b「ありがとうございました、ですお!」

( ・∀・)「あはは、気にしないで、困ったときはお互い様ってやつだよ」

しかし、結局なにも言えずに到着してしまった。
とりあえずやけくそでお礼を告げた、なんか爽やかに返された、なにこの差。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:21:07.50 ID:dJWZd+4k0
ほら、しかも普通ここでお礼を言うべきだろう。
だってのに先走って言っちゃったから、今何を言えばいいのかわからない。


(;゚ω゚)「はっ、え、お、お疲れ様でしたあ!!」

(;・∀・)「ええ!? う、うん……」

出てきた言葉は、バイト時代で習慣になった挨拶。

そうして、彼は去っていった。
さようなら……僕の友達になってほしかった人。

まあ気を取り直そう。
むしろ、都会のレベルの高さを垣間見たと思えばいい。

…おっと、こんな事言ってるとまた……。

从; ∀从(お前は都会を何だと思ってるんだ)

とか言われてしまう。


(;^ω^)(気をつけよう…)



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:22:44.00 ID:dJWZd+4k0
( ^ω^)「失礼しますお」

今度こそ、気をとりなおして職員室へ。
そこには灰色の机と、スーツやジャージを着た人がたくさん。
こういう部分は変わらないんだな、とホッとしつつ、自分が無視されていると気付く。

そりゃそうか、他の生徒がふつうに出入りしてるし。
とっとと誰かを捕まえて……えーと、その場合は……。

(;^ω^)「あ、あのー……」

( ><)「なんですか?」


( ^ω^)「……」

( ><)「……?」


( ^ω^)「……いえ、すいません、何でもないです」

(;><)「え?」

この人は、絶対に人選ミスだと僕の勘が言っていた、返される言葉が想像できた。

言いそうだもの、わかんないです、って、勘だけど。
ってなわけで、それっぽい人を探してみる事にした。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:24:11.75 ID:dJWZd+4k0
まあ、スネーク的に考えるならば……。


……。


まず、後ろからこっそり近づき、あんたがジェイムスだな、と問いかける。

これですぐに僕の担任の先生が見つかるはずだ、我ながらナイスな作戦。

早速2人ほど実践してみたが、え? と普通にふりかえるばかり、
それっぽいと思ったのに、おかしいなぁ、と更に僕は続ける。
4人目の後ろをほふく前進していると、突然、上からの強力な圧迫。

(;^ω^)「ごえ…」

从'ー'从「あれれ〜、なにか踏んだよ〜」

( ^ω^)「顔をあげると、まだ若そうな女性教員が居た、なんとパンツが丸見えだ」

从;'ー'从「ええ〜〜!?」

おっと間違えた、こっちだこっち。
顔をあげると、まだ若そうな女性教員が居た、なんとパンツが丸見えだ。
僕は早速、パンツに向かって話しかけた。


……なんて事になったら大変なので。
前もって聞いていた担任の名前を、入り口の近くに居た教員に訪ねてみよう。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:26:15.54 ID:dJWZd+4k0
( ^ω^)「あ、すいません、杉浦先生はいらっしゃいますかお?」

( ФωФ)「ん、それは俺だが……あ、内藤君?」


ビンゴだった、ていうか。

(;^ω^)(え、なにこの、なに、やく○の方……?)

めっちゃ顔こわい、スーツでオールバックに、両目に傷とか、
あんた教師やってちゃ怖すぎますよ、いえ、まずくはないですけど、こわいよう。
だって僕、遅刻してるんだもん、どう考えても怒られちゃう、だめぇ。

( ФωФ)「たく……やっと来たか」

(li^ω^)「も、申し訳ございませんでした!!」

( ФωФ)「そうそう、心配したよ、けどまあ迷ってるって話は聞いたから
       無事ついたみたいで良かった」

と思ったら、意外といい人っぽい。
見かけで判断しては駄目ですね、先生ごめんなさい。

そして、僕は自分の学び舎へと案内された。
どんだけ歩くねん、と思わず内心突っ込みをいれるくらい歩いた。
階段つかれるよ……ていうか、もう疲れたよ…。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:28:55.90 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)(パトラッシュ……なんか乱舞技っぽい…)

静寂につつまれる廊下を抜けると、やがて辿り着いた、一つの教室。

ドアの上に張られたプレートには、2−D、と書かれている。
当然ながら授業中らしく、教師の声だけが聞こえてくる。

あ、緊張してきた、やばい、胸ばっばく。

(;゚ω゚)(あわわわわ……)

気を抜くと、呼吸も忘れてしまう。
それくらいドキドキしていた。


(;゚ω゚)「……」


しかし、まだ入らないのだろうか、焦らされると余計に……。


(;゚ω゚)「先生、あの……」


Σ(;゚ω゚)「って居ねえ!!」



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:30:35.73 ID:dJWZd+4k0
もう限界、と隣を見る、そこに居るべき教師の姿は無かった。
代わりに廊下の奥のほうに、あの男の背中が見えた。
まさか、ほんとに案内しただけなのか。


(;゚ω゚)(え、ええーー……?)

普通あれじゃないの? こう、転入生の内藤君でーす、みんなよろしくにゃん♪
みたいな教師からの紹介があって、そこで僕が、うふんよろしくねんってするんじゃないの?

なに、普通にこのまま入っていけってこと?

そんな無茶な。

ていうか授業中じゃん。

え?

なにこれ、羞恥プレイ?


(;^ω^)ポツーン

けれど、ふと見渡せば僕一人。
ただでさえ見知らぬ、こうも居心地のわるい場所に居るのはきつい。
精神的に、なんか泣きたくなってくる。



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:33:11.06 ID:dJWZd+4k0
これはつまり、放置プレイと羞恥プレイを選べという事か。


……そ、そりゃあ…どっちが良いかって言ったら…その、見られる方がげふんげふん。

……行くしか、いくしかないのか…。

(;^ω^)「ごくり…」

息をのみ、後ろのドアに手をかける。
あ、胃がキリキリしてきた、うおお、これは死ねる。

ドアは意外にも、スムーズに開いた。
音も、ほとんどしなかったと思う。

すごい数の人の頭がずらーーっと並んでいる光景に、思わず立ち止まる。
どうやら、まだ大半は気付いていない、気付いているのは教師と、すぐ先にいる女の子。

どちらも、怪しい物を見るかのように見てくる。

教師の言葉がいきなり止まって、何事かと、他の生徒もちらほら僕を見る。

視線が痛い、いたいいたい、見ないで、みんといて。
でもそれ以上に、沈黙が耐え切れない。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:35:18.17 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「す、すいません、お……遅れました」

ぶるぶる、ぼくはわるいホライゾンじゃないよ。
ていうか悪いホライゾンって何だ、ポケモンカードか。

从;'ー'从「え、えーと……君は、誰かな〜?」

まだ若そうな教師は、困惑しながら問いかけてくる。
ええい、もうこうなればやけだ。


(;^ω^)「今日からこのクラスで一緒に勉強する事になりました、内藤ホライゾンです!」


(;^ω^)「わからないけど色々教えてやってくだださいおです!!」


かんだ。

室内が、一斉にざわめく。

ていうか。

あああああああああ、何言ってるのちょっと僕これ。
いやさ、なんでこんな教師が紹介する感じの言い方なのさ。



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:36:41.67 ID:dJWZd+4k0
あ、そっか、さっきこれをシュミレートしたから…。

いやそれにしたって、これは酷い、何これ、いやあああああああああああああ。


視線がそこら中からふりかかる。
痛い、痛いって、ほんとに。


ζ(゚‐ ゚;ζ「!!!!」

(li^ω^)(…う)


不意に、その内の一人と目があった。
何だか目を見開いて、やたらめった驚いた風に見つめてくる。
だからそんなに見ないでってば、穴があくよ、そろそろ。

(; ω )(…お呼びでない? 失礼しましたーー!
       とか言ってドア閉めたら誤魔化せるかなぁ……穴があったら入りたいお…)

从;'ー'从「ぁ、え〜とぉ〜……うん、聞いてるよ〜、それじゃあ席は…」

教師はしばらく固まった後、一つの空席を指差した。



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:39:03.92 ID:dJWZd+4k0
从;'ー'从「クーさんの隣で〜」

(;^ω^)「あ、は、はい!」

                           ,ピシ








( ^ω^)「え?」

なんだろう、今、室内の空気が変わったような。
……気のせいだろうか、なんか張り詰めた空気って表現がしっくりくるような。

とにかく、僕は針のむしろの隙間を通り抜け、指示された席へ向かう。
クーさんとか言ったか、あ、きれーな黒髪だな。

ちょっぴり邪な思いを胸に、まずはサッと座る。
もうこれ以上、立っていたくないお……。



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:41:17.55 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「あ、よ、よろしくですお……」

とりあえず、小声でクーさんとやらに挨拶。
柔らかそうな髪の毛が背中でゆれて、クーさんがちょっとだけこっちを向いた。

(;^ω^)(うわ……これまたすごい美人さん……)

川 ゚ -゚)「……」

流石都会だ、とか思って間もなく。
クーさんは無表情で僕を一瞥すると、すぐに前を向いた。

(li^ω^)(いま、いま目が、目がマジだった!!)

もしかして、なんか怒ってる……?
どどどどうしよう……いきなり嫌われた?

隣の席の人間に嫌われてたら、いろいろ困りそうだぞ。
楽しい学園生活、いきなりピンチですか。

川 ゚ -゚)「……よろしく」

かと思えば、前を向いたまま、ポツリと言った。
何ですか、今の間はなんだったんですか。

( ;ω;)(ひぃぃ……)



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:43:08.23 ID:dJWZd+4k0
なんかきれいだけど、怖そうな人だなぁ…それに冷たそうだ……。
これが噂に聞いた、心を失くした都会の人間ですか。
なるべく関わらないでおこう、僕はそう決意した。

あと、相変わらす視線が痛いので、僕は机を必死で睨みつけ、素数を刻んでいた。

(;゚ω゚)(ふ、ふふ……素数っていくつだ…ふふふふふ)

从'ー'从「あ、内藤君は〜教科書ないよね、クーさん見せてあげてくれるかな〜?」


しかし決意した側から、むりやり崩された。
ギョッ、てした、ギョッ、て。

ビクビクしながら横を見ると、クーさんがその赤い瞳で僕を見ている。
ゴーゴンよろしく、僕は石のように固まった。


(;^ω^)(う……)

川 ゚ -゚)「……」



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:44:15.35 ID:dJWZd+4k0
川 ゚ -゚)「机、寄せて」

(;^ω^)「え゛!?」

(;^ω^)「あ、机、はいですお」

川 ゚ -゚)「書くものはある?」

(;^ω^)「あああ、あります」

川 ゚ -゚)「そう」


( ^ω^)「……」


(;^ω^)(おや?)


凄い嫌がられるに違いない、そう思ったのだけど……。
なんというか、中々どうして、自然だった。

クーさんはそれだけ聞くと、またすぐに前を向いてしまった。
そして無表情、だけど、今度は怒っているようには見えなかった。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 16:46:12.36 ID:dJWZd+4k0
思い返すクーさんの表情、吸い込まれそうなその瞳は、宝石のような赤い色。
そうか、なんだか怖そうだったのは、この目のせいか。

( ^ω^)「……」

ちょっと体を傾ければ、肩が触れ合ってしまうような至近距離。
横目にちらりと移る、クーさんの横顔、緊張しきった胸が、ひときわ大きく高鳴るのを感じた。

そのとき、目下でぺらりとページが捲られた。
僕が見てない間に、進んでいるようだ。


川 ゚ -゚)「……」

(;^ω^)(……)

怖いとか、冷たそうとか思ってごめんなさい、クーさん。

僕はそっと心の中であやまった。
これじゃあ、心無い人間はよほど僕のほうだ。

こうして、海より深い反省と共に。
僕の、"新・学校生活"は、波乱の中でスタートと相成ったのでした。




                 Open your eyes for the next time――――→



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