( ^ω^)ブーンは、春がくるたび戸惑うようです

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 17:28:59.25 ID:dJWZd+4k0

   ;;;   :::: ...        ::::: ::;;;:::.....
;;;; ,,, 、、   ,i'            :;;::.,,:  丶;;:;;:
      ヾヾ              ゞ  ```
ゞゝ;;;ヾ  :::,r'  `  `          i、;;;ヽ;;;  ヾ;;;
i;;;::::′~^        `    `        ;;; ″~  ~
ii;;::iヽ /      `               ゞ:,,,:: ヾ 〃::;:
iii;::i `           `     `          ii;;;;::: ::   
iii;;::i    `A「手作り弁当、はじめました」   iii;;;;::: ::
iiiii;;::i      `               `      iii;;;;::: ::
iii.,ii;;:i,                          iii;;;;::: :::
iiiii゚i;;:i            `        `      iiiii;;; :::::
iiiiiii;;::i                         ||iiii;;;;::::
iiiiiii;;::::ヽ;;,,';;"'';;";;""~"`"`;.";;""'"~"`~"'';;,,,   /iiiiii;;;;o;;;
iiiiiii;;::;';;"                    `;;/i:ii iii;;;;;::::



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 17:30:12.44 ID:dJWZd+4k0
あの波乱に始まった新生活も、早いもので数日が過ぎました。
初日こそ、たくさん話しかけられて、質問攻めに困惑しましたが、今は落ち着いてきました。


それから、早速だけど友達ができました。


<キーンコーン カーンコーン


( ゚∀゚)「よっしゃ行くぜ内藤、遅れんなよ!」

(;^ω^)「が、がんばるお」


同じクラスのジョルジュ長岡、ちなみに、君をつけると嫌がるぞ。

出会いは、初日の購買、ご飯を求める長蛇の列をまえに途方にくれていると、
「何やってんだー、あ、買えないのか、よし待ってな」って感じで、助けてくれた。

  _
( ゚∀゚)「おいおい、水くせーな、一緒に食おうぜ」


更にはそんな発言もあって、それ以来、昼はジョルジュと一緒にとるようになった。
まだ右も左もわからない僕には、本当にありがたく、そして惜しみない愛を贈りたいと思う。



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 17:32:11.36 ID:dJWZd+4k0
ザワ・・・ザワ・・・

( ゚∀゚)「速攻で来たからすいてたなー」

(;^ω^)「…どこがだお」


まだ、お昼になってから5分も経っていないと言うに、
食堂である大広間は、既に人でごったがえしている。

そんな中、ジョルジュはご飯を乗せたトレーを手に、
席取っておくからゆっくり並んでなー、と言い残して人ごみに消えた。


(;^ω^)(ていうか、一緒に来たのになんであんなに早いんだ……)

軽く悪態をつく、けど、そんな自分がちょっぴり微笑ましい。
だってほら、なんかこれ、すごく友達って感じですよ、うひょー。

それに、ジョルジュは容姿的にも、実に都会の若者って感じで僕によし。

いずれはゲームセンターに一緒に行く事が、最近の僕の夢である。


というわけで、ラーメンにしました、ちなみに塩です。
トレーを持って、こぼさないようバランスを取り、席へ向かいます。



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 17:34:10.98 ID:dJWZd+4k0
えーと、うーんと探していると、ジョルジュを発見。
その4人用のテーブルには、相向かいにもう一人、見知った顔があった。


(´・ω・`) 「やあ」

ショボン君、別のクラスの人なんだけど、ジョルジュとは旧友で、
以前からお昼は二人で食べていたらしく、その流れで、一緒に過ごすようになったのだ。

こうして、三人でとりとめの無い事を話しながら、笑いあう。
ああ、なんという青春グラフティ、僕は頬が緩むのを止められない。


( ^ω^)「ふ……ふふ、ふ」

( ゚∀゚)(きめえwwwwww)

(´・ω・`) (いつ見ても変な子だねぇ)


('A`)「よおお前ら」

しかし、そこで同じクラスの男の子が、何故か当然のように4つめの席へ座った。
僕らは会話を中断、え? って顔で彼を見るが、彼は気にしないようだ。



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 17:38:07.64 ID:dJWZd+4k0
('A`)「…」

(;^ω^)「…」


はっきり言って、僕は彼が苦手である。
しかも何故か僕を見ている、どうしよう、とオロオロするばかり。


( ゚∀゚)「なんだよ、まーだ内藤にうだうだ言うつもりか?」

ジョルジュが微妙に嫌そうな表情で、牽制してくれた。

そう、あれは初日での事。

分かりやすく言うなら、僕がクーさんと席を隣り合わせ、
なおかつ、密着状態で授業を受けているのが気に触ったらしく、

色々と、嫌がらせのような物を受けたのだ。
実に都会らしからぬ奴だ、都会とはもっと崇高なる人間が集うべきだというに。


('A`)「ふ……もう、そんなつもりは無いさ」
  _
( ゚∀゚)「じゃあ何か用か?」

('∀`)「ああ、仲直りの記しにいろいろ教えてやろうと思ってな」



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 17:40:07.01 ID:dJWZd+4k0
そう言って、僕に中くらいのノートを手渡してきた。
よくわからないままに、中身を見てみる。
そこには、学校内の様々な女の子についてが、写真つきで書かれてあった。

  _
(;゚∀゚)「どれどれ……って、うわあ…」

(;´・ω・`) 「うわぁ……」

(;^ω^)「何これ……黒歴史ノート?」

僕らは揃ってドン引きした、これは素で気持ちわるい。
ああ、あれかぁ…この人、なんか女子にやたら詳しい博士なんだ…。


(゚A゚)「違う! 俺の超・情報収集能力をフルに使って作り上げた、学校内女子データベースだ!」
  _
(;゚∀゚)「あいたた……」
(;´・ω・`) 「うわあ……」

(;^ω^)「はぁ……」

でもこれ、きっと五年後くらいに見たら死ねるんだろうなぁ…。



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 17:42:39.53 ID:dJWZd+4k0
('A`)「ふふ、さあ好きに見るがいい」

  _
( ゚∀゚)「あ、向こうの席開いたぜ」

(´・ω・`) 「うん、行こうか」


(;'A`)「まあ待て! 待つんだ! おい内藤君!」

( ^ω^)「はいお?」

(;'A`)「クラスの中で、なんか馴染めない、とか思ってないか!?」

(;^ω^)「え…」

(;'A`)「俺はその原因を知っているぞ!」

実はそうなのだ、どうもあのクラスの人は皆ピリピリしていて、
いまだに僕は馴染めてない、だからジョルジュは唯一の友達だったりする。

  _
(;゚∀゚)「なんだなんだ、何かあんのか?」

('A`)「ああ、ある……ノートの第90項目を見てくれ」

(;^ω^)「項目ありすぎだろ……えーと…あれ?」



92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 17:46:11.33 ID:dJWZd+4k0
あったのは、やっぱり無表情なクーさんの写真。
そして彼女についてが色々書かれていた。
どうにも、人としてよくない、とは思いつつも、気にはなる。

(;^ω^)(……ちょっとだけ)


本名スナオ・クール……歳、BWHは……えーと…。

……え、そんなに?

けっこう着痩せするタイプなのか……どきどき。

あとは…。

『スナオ三姉妹が長女、才色兼備の完璧超人(候補生)』
『校内美人ランキングでも5指に入るが(以下略』

なんか、そんな事が書かれている。
下の説明はともかく、上の方はどうやって調べたんだろう…。


('∀`)「どうだ、わかるか?」

( ^ω^)「うん…(君が関わってはいけない人だってことは)わかったお」



93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 17:47:34.26 ID:dJWZd+4k0
  _
( ゚∀゚)「それで…お前がきもいのと、内藤に、何の関係があるんだ?」

(;'A`)「いや、そこじゃなくて」

(;^ω^)「はっ……もしかして、僕もきもいって事ですかお……?」

そうか、そうだったのか……。
だからたまに、クラスの人から怖い目で見られていたのか……。

やっぱり、あの初日の挨拶がまずかったのだろうか、
でもあれからは大人しくしてるのになぁ。

 _
(#゚∀゚)「てめぇ……」

(;'A`)「え、ちょ、ちが」


(´・ω・`) 「いやいや、内藤君は全然きもくないよ、大丈夫」

(*;ω;)「ショボン君……」


(;'A`)「違う! そうじゃない、クーさんの事だ!」

(;^ω^)「え、クーさん?」



95 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [猿猿] 投稿日: 2008/10/05(日) 18:02:17.17 ID:dJWZd+4k0
('A`)「ああ、お前…なんか、クーさんと仲いいじゃん?」

あまりに突拍子のないことに、僕は言葉をも失った。
それくらい意外で、ハハッワロスな事だった。

そりゃあ、確かに席は隣だけど。
相変わらずいつも無表情だし、ろくに会話もしていない。

それで一体、どこが仲良しだというのだろう。

  _
( ゚∀゚)「…あー、まあ確かにな」

(;^ω^)ノシ「え゛? いやいやいや、それはないお」

まあ、とりあえずこの流れから察するに、言いたい事はおよそ理解できた。
要するに、ぽっと出の僕が彼女と仲良くするなんて、許されざるよ、って事なんだろう。

確かにクーさん、相当な美人さんだし、そうなのかもそれない。
それは納得できよう、だがしかし、僕が仲良くしている?

それは誤解だ、勘違いだ。

確かに、隣に生きる者として、がんばって話しかけてはいるが、
いつも一言で切り捨てられたりと、ほとんど相手にされてないのが現状なんだから。



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:04:16.07 ID:dJWZd+4k0
('A`)「何を言ってるんだ」

(゚A゚)「こないだなんて、クーさん笑ってたんだぞ!?」


(;^ω^)(凄い顔だなぁ……)

笑ってた、か…そういえば、あったな、一度だけ。
あれは、そう、僕がとある質問をした時だ。


………。


川 ゚ -゚)「……」

( ^ω^)「……」


( ^ω^)(あ…)


( ^ω^)「クーさん」

川 ゚ -゚)「……?」

( ^ω^)「……そうやってずーっと黙ってると」



97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:06:13.94 ID:dJWZd+4k0
川 ゚ -゚)「……?」


(;^ω^)「いきなり話そうとしたとき、声が掠れて変な声にならないかお?」

これは僕だけかもしれないが、
長いこと喋らないでいると、うまく声が出ないのだ。

なので、以前から綾波系のキャラという物に、疑問を持っていた僕。
ちょうどクーさんがそれっぽいので、聞いてみたんだ。


川;゚ -゚)「……」

そしたら、凛とした表情がすこし崩れて、
ちょっぴり驚いたように僕を見た。


川 ゚ -゚)「……」


川;゚ -゚)「……なる」


ですよねー。



98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:08:22.81 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「あ、やっぱりかお…」

初対面から、ちょっと気になってたのだけど、
クーさんって、何故かいつも返事をするまでに微妙な間があった。

だから、もしかして…声が掠れないように、整えているとか、
そういう事なのかなー、と思ったのだ。


( ^ω^)(僕もそう……流川に憧れた頃がありました、だからわかります…)

川  - )「……っふ」

と、一人納得して満足していたのだが…その時。
クーさんが突然、ふきだすのを堪えるように笑ったのだ。


(;^ω^)「ありゃ?」

川 ゚ -゚)「っはは、いや…すまない」

川 ゚ー゚)「さすがに、それを突っ込まれたのは初めてだよ」

( ^ω^)「そうかおwww」

(;^ω^)(あれ、えと……笑うとこだったのかな、ツボがよくわからんね)



99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:10:33.57 ID:dJWZd+4k0
そうそう、この一件から、僕は気兼ねなく話しかけるようになったんだった。

……と言っても、クーさんの反応はすぐに元通りだったけど、
でも、間が開く理由は明確で、それが少し微笑ましかった。


………。


(;^ω^)「いや、でも誰だって笑う時くらいあるでしょうに」

(#'A`)「あまい!!」
 _
(;゚∀゚)「あー…うん」

人間として、当然のことだと言いたかったのだが……。
ていうか、何気にジョルジュまで否定したよ。

(;'A`)「さっき彼女の欄に、完璧超人(候補生)と書いてあったろ」

完璧超人、この単語は僕も知っている。
ようはなんでも出来るすごい人だ。

(;^ω^)「はぁ……それで?」

('A`)「実は彼女には、なれない理由、唯一にして絶対の欠点がある……それは……」



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:12:10.98 ID:dJWZd+4k0
彼は、言葉をためた。

しかし、誰も相槌をうたなかった。


(゚A゚)「……愛想が無いことだ! 絶望的なまでに!!」


(゚A゚)「そんな彼女が笑うなど、ありえない!!!」

('A`)「まあ、だがそれがいい、って奴も居るが…まあやっぱり話しかけても、
   愛想笑いすら返さない子の相手をするのは、多大な労力がかかる」

(#'A`)「それゆえに……皆お近づきになりたいのになれない、ジレンマを抱えていたのだ…それを!!」



(´・ω・`) 「ねえ、さっきの席まだ開いてる?」
  _
( ゚∀゚)「あー、駄目だな座られてら」

(´・ω・`) 「じゃ、どっか開いてるとこ探しにいこうか」

( ^ω^)「うん」


(;'A`)「ってあれ!? ちょ、おーい!」



101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:14:20.17 ID:dJWZd+4k0
こうして、僕らは何か叫んでる変な人をおいて、
混みあう人ごみにもまれていった。

さようなら、名も知らぬクラスメイト。
せめて警察には捕まらないよう、祈っているよ。


( ^ω^)「僕は思うんだお、彼は一人でこの都会の品格を下げていると
       そして、それは決して、過言ではないと」

(´・ω・`) (うーん、この価値観はやはり興味深いな、一度もっとじっくり聞いてみたい……)

  _
(;゚∀゚)「ん? っていうか内藤、それ、持ってきちまったのか!?」

(;^ω^)「え、あ…しまったお…」

それは先ほどの、クラスメイトが持っていたノート。
どうしよう、こんなの持ってたら、それこそ色々危ない気がする。
  _
( ゚∀゚)「捨てちまえ」

(´・ω・`) 「燃やしたほうがいい」

まあ、この世から完全に消滅させるのが、確実に世のため人のためだ。
それは分かる、のだが……。



102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:16:19.85 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「こんだけ手が込んでるのを見ると……ちょっとかわいそうかな…なんて」

(´・ω・`) 「甘いねぇ」

(;^ω^)「いや、でもほら…一応、なんか教えてくれようとしたみたいだし…」
  _
( ゚∀゚)「じゃあ、どうするんだ?」

(;^ω^)「うーん……あとでこっそり返しておくお」


人目につくと、あまりよろしくない、あくまでこっそりと…ね。

ああ、それにしてもこの二人は、流石に都会の品格をもっているなぁ。
だってこのノートって、普通に考えたら好奇心をそそる、なのに二人は全然興味を示さないもの。
  _
( ゚∀゚)「はっ、数値やデータなんざ関係ないね、俺には俺の目があるからよ」

(´・ω・`) 「人間、多少みえない秘密があるほうが楽しいじゃない」


(;^ω^)「おお…かっこいいお…」



103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:18:14.09 ID:dJWZd+4k0
  _
( ゚∀゚)(そう、全ては見た目……大小じゃないのさ、美乳であれば……ジーク、おっぱい)

(´・ω・`) (そう、表面上に見える秘密はいらない……僕が欲しいのはもっと奥深くさ…ふふ)


二人はそろって笑った、なんだろう、笑顔の裏に、ピンクと黒の影が見える。


そして、なんだかんだでお昼は終わった。
教室に戻ると、こっそりとノートは返しに行った。


(;^ω^)「……」

('A`)「あ……」


机に仕舞おうとした時、ちょうど背後に彼が来た。
なんか気まずい空気がながれて、僕はあさっての方を向いた。

その際、視野のなかに視線を感じた。


ζ(゚、゚*ζ「……」



105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:20:22.49 ID:dJWZd+4k0
ζ(、゚; ζ「!」


また、あの子だ。

ここ数日、あの子によく見られている気がする。
そして、こうして僕と目が合うとそらすのも、何度目だろう。

髪は、ふわふわしたウェーブのかかった金色。
とても小柄だけど、背筋がいつもピンと伸びていて、それを感じさせない。
物腰も穏やかながら、表情も豊かで、よく笑っているのを見かける。

なんというか、クーさんの真逆、って印象を受けた。

それに……あの子とも、髪の色はおなじだけど、まるで正反対。


最初は、ちょっとだけ、もしやと思った。

なんとなくだけど…ツンと…似てる気がして、
だから、こうして何度も目が合うんじゃないだろうか、と。

だけど見れば見るほど、違うとわかっていく。


('A`)「おや、内藤君? デレ譲にも興味がおありかね?」

(;^ω^)「え?」



108 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [さるしつこす] 投稿日: 2008/10/05(日) 18:34:50.51 ID:dJWZd+4k0
('∀`)「ははははっ、うん、わかるよ、あの子はね、いわゆる新参ホイホイだからね!」

笑いながら、意味のわからない事を言わないでほしい。
そろそろ怖いよ…うう、一人でこの人の相手はしたくないなぁ…。

(;^ω^)「あ、ああ、デレ…って言うのかお」

('∀`)「そう、あの子こそ、現存する完璧超人が片割れ、デレ譲さ」

('∀`)「容姿、頭脳、運動神経、愛想、その全てをフル装備、テニス部レギュラーで教師からの人望も厚い」

('A`)「更に性格まで良しと来て、誰にでも優しく、勘違いして玉砕する者数知れず……」


 _
(;゚∀゚)(ん、まーたやってらぁ……内藤もよく付き合うねぇ)


(;^ω^)「へ、へえ……凄いんだお」

('A`)「だから、君が気にする理由はわかる、いや、みんなそうだとも!」

('∀`)「いやあ、ちょっとだけ君を理解できた気がするよ!」

(;^ω^)「はあ…もういいかな」

(;'A`)「けど…残念だったね…」



109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:37:22.53 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「あ、駄目ですか…」

('A`)「デレ譲には…彼氏が居るのさ、それも、とびっきりのがね」


( ^ω^)「……お」


あれ……何故だろう、僕は今。

彼氏が居るという言葉を聞いて、なおさら、違うと、心から思った。

その時点で、あの人はツンではないと確信して、
僕は今……間違いなく、ほっとした。


('A`)「男の名前は、モララー……もう一人の完璧超人だ」

(;^ω^)「…ええ!!?」


あの、ちょっと、むしろそっちにびっくりした件。

いやさ…実はこっそり調べたんだよ、
あの時、迷っていた僕を助けてくれた人を。

そして、モララー君、って人だということがわかったんだ。



111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:39:55.91 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「そ、そんな……!!」

('A`)「ショックかい……ああ、わかる、わかるぞ…!」

聞いたことがある、彼女ができた男の子というのは、
そっちと遊ぶのに夢中になって、友達とは遊ばなくなるのだと。

(; ω )「そんな………」


つまり……モララー君と友達になると言う、僕の夢は……。


(;´ω`)「そっか………彼女、居るんだぁ…」

 _
(;゚∀゚)(え、あれ、今彼女って言った? あれ?)


('A`)「ああ、よおしわかった! 今日から俺たちは親友だ!」

( ´ω`)「あ、遠慮します」

(;'∀`)「俺はドク、あるぇー!?」



113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:42:09.32 ID:dJWZd+4k0
( ´ω`)「あ、もう授業始まるお」

(;'A`)「いやせめて名前は、あ、ちょ」


<オーイ


まあ、そんな事でしょげていても仕方ない。
ていうか、僕にはジョルジュやショボン君と言う友達がいる。

( ^ω^)(何も問題ないお)

川 ゚ -゚)「……」

しょげてる顔を上げると、クーさんが僕を見ていた。
見つめ返すと、ぷい、と前を向いてしまった。

…よくわからない。

あ、そういえば明日は、学校に通い始めてから最初の休日です。

思えば転入初日から、モウヤダイベント満載だったけど、ようやく一区切り。
そう思えば、自然と気分も高揚してくるというものだ。



115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:44:52.05 ID:dJWZd+4k0
窓の外はあいにくの曇り空。

どうやら、風はそれなりに吹いているようで、木々が揺れる。

そんなに寒くはないが、長袖じゃないと肌寒そうだ。
明日はどうなんだろうなぁ……。


川 ゚ -゚)「……?」

ちなみに、外を見渡す窓は、クーさんの左隣にある、
つまり僕はあたかも、彼女を見つめているような状況だ。

そんな視線に気付いたクーさんが、小さく首をかしげる。
何だかおかしくて、おもわず僕は、笑みをこぼしていた。






ζ( 、 *ζ「………」



116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:47:26.44 ID:dJWZd+4k0
………。


<アッー!!


(;^ω^)「ちょ、も、もっと静かにいいい!!」

( ´_ゝ`)「なんだってー!? きこえないー!」


細かな振動と、ときおり跳ねるような振動が、僕の尻を刺激する。
そして風の音に混ざって、遠くから聞こえるようなお互いの声と、排気音。

僕は今、兄者さんが運転するバイクの、後部座席に乗っている。

せっかくの休日なので、遊びに連れて行ってくれると言うので、ほいほい来たのだった。

しかしこのバイク、明らかにおかしい、ソファーの奥に何か硬いものがあるんだ。
それも、ちょうど座る真ん中に、なんだか棒のような感触がする。

んで、それがこう、揺れるたびにグイっと尻に食い込んでくる。

段差があったらもう大変。

ふわっと飛んでずぶりと着地。

ズボンをおしあげ、パンツをめり込ませ、菊をめざして棒がめりこむ。



118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 18:50:06.11 ID:dJWZd+4k0
( ;ω;)「いやああああああああああああああああああ」

( ´_ゝ`)「聞こえるぞ、歓喜の声が、ははは風になるのは気持ちいいだろう!!」

( ;ω;)「ぢになるうううううううううううううううう」


一歩でも間違えたら、事故がおきる。


衝突事故ならぬ侵入事故。

サナギを破り蝶が舞うが如く。

進入禁止のルールを破り、不運と踊っちまうことになる。


そんな恐怖とスリルに、強制的に身を任されるがまま数時間、
ようやく辿り着いたのは、なんだか不思議な街でした。

(;^ω^)「……こ、ここって」

駅の前、サトームセンの隣の看板には大きなアニメ絵の女の子。
そう、ここはヲタクの聖地デカエバラの電気街、ちなみに正式名称は、秘湯混浴刑事エバラだ。

ちなみに、意味がわからない場合は、"秘湯混浴刑事エバラ"でぐぐると幸せになれる、らしい。



122 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [な、なぜまださるが・・] 投稿日: 2008/10/05(日) 19:02:43.41 ID:dJWZd+4k0
(((*´_ゝ`´_ゝ`*)))「テンションあがってきた」

(;゚ω゚)「ひぃ!?」

兄者さんの姿は、あまりのテンションアップに、ぶれて見えた。


まずは腹ごしらえだ、と向かったのは、
細道を抜けた先にある、行列のできた小さなラーメン屋。

なんでも、何処か遠くの場所にある店の支店らしい。

細面でスープもまろやか、チャーシューはとろけるようで、やたらおいしかった。
並んでるときは、なんか臭いなぁと思ったけど、それも忘れてしまうくらいだ。


その後は、テレビの前にたむろする集団を抜け、
予約表だらけの壁をみながら、階段をのぼる。


その間にも、そこかしこに色々なポスターがあって、目移りしてしまう。
やがて、ずいぶん昇って辿り着いたのは、ちょっと大きな箱が並ぶゲーム屋さん。



125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:05:14.33 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「こ、これが噂のエロゲ……」

(*´_ゝ`)「ふふふ、何かめぼしいものがあったら、買っても い い の よ」

(;^ω^)「あれ…これ、前にPS2で見たことあるような…」

(;´_ゝ`)「待て、曲芸はだめだ、似たようなのが何十個出てると思ってるんだ!?」

(;^ω^)「え、はあ……」


その他にも、いくつか見たことあるようなのを見つつ、
僕は物珍しさに心おどり、じっくりと見てまわっていた。


すると。



「あ、あれ? アーウィンさん?」



( ´_ゝ`)「む、その声は……シャナさんか!」


ノハ*゚听)「はい! 偶然ですね!」



128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:08:23.48 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)(あ、あーうぃん…?)

現れたのは、赤い瞳に赤髪の、活発そうな女の子だった。
こういうとこって、こんな子も居るんだなぁ……。


( ´_ゝ`)「久しぶりですね、ワンフェ以来ですか」

ノパ听)「ですねー、あ、そうそう、今日これ買っちゃいました」

( ´_ゝ`)「お、ティンクル☆くるせいだーすですね」

ノハ*゚听)「はい! 面白いって聞いてたので」

( ´_ゝ`)「うん、ストーリーはまあ、正直あれだけど戦闘はなかなかだよ」

ノパ听)「なるほどー」

ノパ听)「あれ、ところでアーウィンさん、こちらの方は?」


こちらとは、僕のことですね。


( ´_ゝ`)「ああ、俺の愛する弟分さ」



129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:11:16.56 ID:dJWZd+4k0
ノハ*゚听)「あ、っていうと…ジゴミルさんですか!?」

(;^ω^)「じごっ……え、いや僕は…」

ノハ*゚ー゚)「リアルだとはじめまして、ですね、シャナです!」

(;^ω^)「は、はあ…シャナさんですかお…」


明るい子だなぁ、でも勘違いしてるのは明白だ。

けど、それより何だろう、変な感じがする、デジャヴというか、
どっかで見たことあるような…ないような……。


( ´_ゝ`)「はっはっは、違いますよシャナ氏」

ノハ;゚听)「あれ、違いましたか…すいません」

(;^ω^)「い、いえ…」

( ´_ゝ`)「ほら、前に話した、居候の子ですよ」

ノハ*゚听)「あ、ああ! そういえば! 思い出しました!」



131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:13:31.25 ID:dJWZd+4k0
ノパ听)「たしかー、私と同い年で……」


ノパ听)「同じがっ………こ、お………」


そこで急に、快活に話していたシャナさんが、ピタリと固まり、
やがて、捻り出したような声をあげた。


(;^ω^)「え?」







ノハ )「……え゛」


硬直したまま、信じられないという表情で僕を見る。

その瞳は、ルビーのような赤い色、そうか、見たことあると思ったら、クーさんだ、
なんとなくだけど、クーさんに似ている、気がする。



133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:16:16.08 ID:dJWZd+4k0
ふーむ、なんだかこれはビンゴかもしれない。
そういえば、確かクーさんには姉妹が居るとか、どっかで見た気がするし。

思い切って聞いてみようかな。


( ^ω^)「あの、もしかして……スナ」

ノハ//Д/)「――――――!!!!!」


言葉も途中に、シャナさんは物凄い驚いていた。
あまりの動揺っぷりに、最後まで言い切れなかった。

そして、突如として、その場でしゃがみこんだ。


ノハ;゚Д゚)「お、お願いします!!!」


(;^ω^)「うわっ!? なんで!? なにが!?」


ノハ;゚听)「どどどどうかこの事は、この事はご内密にいいいいいいいいいいいいい!!!」



135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:20:01.43 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「し、シャナさん…!? ちょっとあの!? な、何がどういう!?」


ノハ;凵G)「違うんです! シャナはその、違くて私は!」


:::(*´,_ゝ`)::::「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


(;^ω^)「え、え、シャナは違う!? そ、それはつまり!?」

ノハ;凵G)「あの、いや、だから!! その……う、うあああああああああん!!」


その後、店内で騒ぎすぎ、と追い出された僕らは、
ちょっと先の交差点の奥にある、ジョナサンへとやってきた。

その間、怯えまくっていた彼女だったが。


( ´_ゝ`)「落ち着いてください、ここに居るという事は、つまり彼も我々と同じなのですよ」

ノハ;゚听) ハッ

そんな兄者さんの言葉で、ちょっと落ち着いたようだ。
しかし同じ…か、まあいいけども。



137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:23:11.65 ID:dJWZd+4k0
ていうか、もっと早くなだめてほしい。
ずっと爆笑しながら見てたんだよ、この人。

それから、シャナというのは、ハンドルネームだと聞いた。
本当の名はスナオ・ヒート、ちなみに思ったとおり、クーさんの双子の妹さんだ。


ノハ;゚听)「ほ、ほんとに…黙っててくれますか?」

(;^ω^)「ほんとに言わないお、だからそんなに顔を寄せないで……」

( ´_ゝ`)(写メ撮っとこ)ピロリロリーン


ヒートさんはうるんだ瞳で僕にすり寄り、
しつこいくらい、秘密にする事をおねがいしてきた。

そろそろ、かわいそうになってくる…別に何もしてないのに……。


ノハ;゚听)「あ、でもですね! 私は基本、泣きゲーしかやらないんで!」

(;^ω^)「はぁ……なきげ……?」

ノハ;゚听)ノシ「抜きゲーなんかは本当、ぜんぜん手出しませんし、ねぇアーウィンさん!」

( ´_ゝ`)「そうですねぇ」



142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:36:16.37 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「ところで、あーうぃんって?」

( ´_ゝ`)「俺のHN、指輪が魔法の本になるのが元ネタ」


ノハ;゚听)「まあ確かに…大番長はやりましたけど…あれは普通にゲームですし…」

( ´_ゝ`)「でも大悪司もやってたよね、確か」

ノハ;゚听)「あ、いえ…あれは……」

(;^ω^)(…どうしよう、言ってる事がよくわからない)


それから、数時間にわたって話は続いた。

よくわからないが、泣きゲーとエロゲとギャルゲは別物らしい。

最初はヒートさんの言い訳大会だったけど、だんだん話は普通に弾んでいった。
ちなみに、二人はドリンクバーしか頼んでいない、すごいな…これが都会式なんだろうか…。

そうして、砂糖やらミルクやらのゴミが、灰皿からあふれかえる頃。
なかば、やけくそに近いテンションだったせいだろうか。


ノパ听)「それで、なんで内藤君は居候することになったの?」

(;^ω^)「それは……えーと」



143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:38:27.77 ID:dJWZd+4k0
( ´_ゝ`)「おお、人の中心に平気で突っ込むとはやりますな!」

ノハ*゚听)「私の秘密は知られたからには、内藤君の秘密も知りたいんだよ!」

(;^ω^)「い、いやー…あんまり、人に聞かせることでもないし…」

ノハ*゚听)「ううん、これも縁だし、なんかあったら私もできる限り力になるよ!」

(;^ω^)「うん…でも、ぜんぜん良い事ないお?」

ノハ*゚听)「大丈夫!」

(;^ω^)「じ、じゃあ……えと、家が無くなったからだお…」

ノハ;゚听)「……家って……え?なんでそんな……」


( ^ω^)「うん…まず父親が、僕が物心つくまえに死んじゃって、
       それからずっと、母ちゃんと二人で暮らしてたんだけど」


( ^ω^)「その母ちゃんも、一昨年の冬に病気にかかって入院して
       去年の春頃に死んじゃったお……あっと言う間に、だったお」



145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:41:24.92 ID:dJWZd+4k0
母ちゃんが入院した頃から、僕は学校にも行かず、バイトに明け暮れた。
高い金をはらって手術をすれば治るかも、というので、働いたのだ。

けれど、別にその金自体が無いわけでは無かった。
何故か知らないが、それなりの貯蓄はあったから。

ただ、何より、もう呑気に学校へ行く気には、到底なれなかった。


でも……それも無意味に終わった。
あれはちょうど、辛い冬を乗り越えた頃、だったかな。

ちなみに、母ちゃんは自分で手術を断ったそうだ。
そんな事に大金を使うより、僕の人生に使って欲しかったから、らしい。


その所為で、僕はひとり、誰も居ない家に残されることになった。


ちなみに母ちゃんは、自分に保険もかけていたようで、
とにかく、すごい額のお金がはいってきた。まあ、嬉しさの欠片も感じなかったけど。

でも、それが形見のようにも思えて、使うまいと決めた。
だけどすぐに、使わないと生活できないと知った。



149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:43:41.82 ID:dJWZd+4k0
そして、色々な人が僕の元へ訪れた。

だけどお金目当てである事を知って、すべて門前払いにした。

思えば最初に僕から、幾ばくかのお金を騙し取っていった人のおかげだ。


だから、家を売った。


これで、もう煩わしいこともなくなる。

最後に、あの地に留まった時に寝泊りしたのは、思い出の公園。
だから余計に、忘れかけていたあの子を、その時にはっきり思い出した。

この地を、離れようと思った。
別れの春が来るこの地が、僕は嫌いになったから。


そうして、しばらく色々な場所を転々としている内に……。


僕は警察に捕まった。



152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:46:07.73 ID:dJWZd+4k0
どうやら、捜索願を出されていたらしい。
それを出したのは、流石さんだった。


そして、僕は母者さんと電話でいろいろとお話をした。

居候の話をきいて、最初は断ろうと思った、そしたらなんか、殺されそうになって。
まあ、あの家の人たちは何度か家に遊びにきていて、見知った顔だったのもあって……。


( ^ω^)「今に至る…だお」


そして、沈黙。

ちょっと話し過ぎたかもしれない。

普段はなるべく考えないようにしてる分、いざこうして思い返してみると、
想いが止まらなくなってしまう、ようやく消えかけていた物が、戻ってきてしまう。

だから、あまり話すまいと思っていたのだが……。
まあ正直、ちょっとだけすっきりした、というのもあって、何ともいえない。

だけど黙っているのも気が引ける、僕は笑って沈黙を破った。


(;^ω^)「ほら、あんまり良いもんじゃなかったお?」



154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:48:06.46 ID:dJWZd+4k0
ノハ )

ヒートさんは、何時の間にやら俯いている。

ていうかよく見たら、肩がぶるぶる震えている。

んで、もっとよく見ると、前髪の下からポツポツ何かが落ちていく。
続いて、今度はひっくひっくと嗚咽が聞こえてきた。

これは……。


( ´_ゝ`)「泣かせちゃったNE」


あ、やっぱり?


ノハ;凵G)「う…っく、ひっく……ぐす………ご、ごめん、内藤君」

(;^ω^)「いや、いいんだお、昔の事だし…」


って、ヒートさんは何故立ち上がるんでしょうか。
いや、何で僕のとなりに座るんでしょうか。

ノハ;凵G)「ううん……わたし…ひっく、しらずに…むりやり…」



159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:51:06.72 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「…ちょ」

ソファーの上、ずりずり後ずさるが、ゆっくりと迫ってくる。
いや、ほんとに近い近い、距離がちかいって。


ノハ;凵G)「うわああああああああああん、ごめんよおおおおおおおおお!!」

あうあう焦っていると、ヒートさんが勢いよく抱きついてきた。
周囲の目がこっちへ向いた気がする、あと兄者さんが写メを撮ってる。

ちなみにヒートさんは、そのまま号泣している。
これはあれだ、傍から見るとカップルのもつれとか、そういうのに見えるんだろうな。

( ´_ゝ`)(お、この角度良い感じ)ピロリロリーン

(;^ω^)「ちょ、もちつけ!」

ノハ;凵G)「内藤はこんなに頑張ってるのに、私は…こんな所でゲームなんか探して…」

(;^ω^)「いや、僕もそんな所で一緒にゲームを見てたんだけど……」



160: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:53:48.12 ID:dJWZd+4k0
ノハ;凵G)「こんなじゃ駄目だ! 私はだめだめだあああああああああああ」

(;^ω^)「僕もこの状況はよくないと思う」

ノハ;凵G)「そう…そうだな、よし、わかった!!」


何がわかったのか知らないけど、ようやく離れた。
ああ、状況さえ間違えなければ、とてもいい体験だったと思う。


ノハつ凵G)「内藤、私は決めたよ、できることをすると!」

(;^ω^)「はぁ……」

ノハ#゚听)б「休み明けだ! …待っていてくれ、内藤!!」

(;^ω^)「え、それって…?」


ノハ#゚听)「やってやる…やってやるぞおおおおおおおおおおおおおおお!!」

最後にそう叫ぶと、ヒートさんは物凄い速さでその場を離脱した。
そして、呼び止める暇もなく、店を飛び出し。
窓の向かいにある歩道を駆け抜けて、やがて、遠く見えなくなった。



163: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:56:53.17 ID:dJWZd+4k0
(;^ω^)「……えーと」

( ´_ゝ`)「ドリンクバーの代金……いや、まあいいんだけどさ」

(;^ω^)「あ、そういえば」


そんな一部始終を、僕らは他のお客さん共々、見えなくなるまで見送ったのだった。




………。



( ´_ゝ`)「たっだいまー」

(;゚ω゚)(……尻が切れてたらどうしよう…)


再び買い物をして、うしろの処女を死守しながら、ようやく帰ってきました。



165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 19:59:13.07 ID:dJWZd+4k0
すると玄関には弟者さんが居て、兄者さんが何かを手渡しました。

(´<_` )「ん、これは?」

( ´_ゝ`)「うむ、おみやげだ」

(;^ω^)(あ、あのなんか白い服の女の子のフィギアだお…)

たしかアルターの、りんほーすUが定額で買えたとかで凄く喜んでいた。
てか、弟者さんはどう見ても、どう考えても、喜ばないだろ…。

と思っていたのだけど。


(´<_`*)「……おお、これ通常値か!? よくあったもんだ、流石だな兄者」

( ´_ゝ`)「ああ、プレイ用にでもしてくれ」

(´<_` )「そうだな、観賞用はもうあるからな」


(;^ω^)「…プレイ用?」

( ´_ゝ`)「ぶっかけるって事だ」

(;^ω^)「え、何を…?」



169: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:01:28.86 ID:dJWZd+4k0
( ´_ゝ`)「それでどうだ、あのプチプチ娘の攻略は終わったか?」

(´<_` )「もうちょっとだぞ」

( ´_ゝ`)「よし……また新作も仕入れてきたし、とっとと始めようか」

(;^ω^)「……あ、弟者さんも、やるんですね…」

(´<_` )「ん、意外か?」

(;^ω^)「…まあ、なんか身なりもキチッとしてますし…」


(´<_` )「……俺には夢があるんだ」

(´<_` )「今のヲタクの概念を壊す、というな」

(;^ω^)「はー…」

(´<_` )「だから、その為にまず、俺はお洒落には気を使うようにした
       見た目さえよくしておけば、やがては……」



171: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:03:27.41 ID:dJWZd+4k0
「あの人、お洒落だけどヲタクなんだよね」

から

「あの人、ヲタクだけどお洒落だよね」


(´<_` )「に変わっていくだろう、そしてそれがどんどん広がり、浸透していけば、
       それはやがて流行となり、自分を、世界さえも変えてしまえる瞬間がくる」


(;^ω^)「そうかなぁー」


(´<_` )「ふふ、世の中には普通の奴、もしくはそれ以上なのに隠れヲタ、
       なんて相当な数が居る、お前の理想とする都会の人とて、例外じゃないんだぞ?」
       

まあ、確かに…ヒートさんだって、パッと見……。
いや普通に見ても、そっち系の人間にはとても見えないものなぁ。


(´<_` )「そして…もしそんな彼らが立ち上がれる日が来れば、間違いなく世界は変わる」

(´<_` )「その尖兵となりたいんだ…俺は」



175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:06:29.40 ID:dJWZd+4k0
弟者さんは遠い目をして話す。
どうしよう、そろそろ話についていけないや。

( ^ω^)「あ、でも…兄者さんは? ちゃんときもいお?」

(*´_ゝ`)「本人目の前にして、しかも指までさして言えるブーンがいつも素敵さ」


すると、弟者さんは目を閉じ、ゆっくりと首を横にふった。


(´<_` )「違うな、どんなに身なりを整えても、直接そういう行動をとれば、
       それはそれでしか無いんだ、人の目は変わらない」

(´<_` )「だから焦らず、少しずつ、感覚を麻痺させていくのが大事なんだ」

( ^ω^)「それもなんか地味に嫌っていうか、怖いですね」


(´<_` )「そう、だから、兄者は俺の代わりに、全ての汚れを背負ってくれているんだよ」

(´<_` )「表立って動けない俺の代わりに、こうして買いに行ったりしてくれるから、
       そう、俺は兄者が居てくれるから、自分の目標に向かって走れるんだ」


(;´_ゝ`)「弟者…お前ってやつは…」



178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:09:21.89 ID:dJWZd+4k0
(´<_` )「そう、兄者が居なければ、俺は隠れヲタでなんか居られなかった…」

( ´_ゝ`)「ああ、ああ…俺も、お前が家では俺をいつも認めてくれるから、
       こうして自信をもってヲタク道を走れるんだ」

(´<_` )「持ちつ持たれつ……流石だな俺ら」


心底どうでもよかった、そんな事を熱弁されてもなぁ…。
僕はべつに偏見はないけど、そもそも興味がないですし。

と言いたい所だけど、今の僕には、すごいんですねー、と相槌を打つくらいしかできない。
どうにか切り上げて、そろそろ玄関から離れたい…。


( ´_ゝ`)「よおし! 弟者よ、今日は徹夜でプレイだ!!」

(´<_` )「眠気覚ましも買ってあるとは、流石だな兄者」


と思ってたら、僕を置いて、変なテンションで二人は自分の部屋へと消えていった……。


なんか…つかれるなぁ……。



180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:12:19.92 ID:dJWZd+4k0
……。


そんなこんなで、休日が明けまして。

まだ通い始めて日も浅い僕は、毎日まだまだ心躍ります。
日差しも気持ち良いですし、先週は雲ってばかりだったけど、今日は晴天ですし。

学校さいこー、ひゃっほう。

手を広げ、ダッシュで道を行く僕は、ブーンとお空をフライング気分。

いまさら言うまでもないが、ブーンは、僕のあだ名もといニックネームだ。
昔はよくそう呼ばれていたけど、今はもう、あまり呼ばれない。

だからこうして走っていると、ノスタルジックな気分になれる。


けれど、まばらに見え始めた生徒達に、僕は手をさげて普通に走りはじめた。
でも走るのはやめない、走るのは好きだ。

この荒くなる呼吸の中にある高揚感も、足に感じる抵抗も。

つよく踏み出したときのふわっとした感じも、
前に転倒しそうなのを堪えるように走る時も、

そして、滲む汗を冷やす風が、とても気持ちいいから。



183: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:15:13.99 ID:dJWZd+4k0
とっとこ走れば、あっと言う間に教室へ到着。
入るなり、汗を拭って席へついた。

  _
( ゚∀゚)「おー、なんだ暑苦しいな」

(;^ω^)「どうも天気がいいと走りたくなるお…」


やがて、担任が来て、話を聞いて、授業が始まった。
けどそこで、僕は違和感に気付いた。


(;^ω^)「…あれ、クーさん?」


川; - )「……」


川;゚ -゚) ハッ

なんだか、とても眠そうに見えた、ていうか、今ちょっと寝てたような…。
それに、目の下には小さなくまがある、どうしたんだろう、珍しい。



185: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:17:16.03 ID:dJWZd+4k0
ちなみにその後、クーさんは授業中にも頭を揺らしていた。
ふと見れば、眼は今にも閉じそうで、うつらうつら、こっちまで眠くなりそうだ。

なので隙を見て、肩をトンdしてみた。

川;゚ -゚) ハッ

すると、バッと顔をあげて、驚いた様子で僕を見る。
けどすぐに、何事もなかったように前を向いた。


ど……どうしよう、これ。


(;^ω^)(…面白い……!)


今まで見たこともないような、ちょっぴり情けない姿は新鮮で、
僕はクーさんが船を漕ぎ始めるたびに、何度もそれを繰り返した。

……ちなみに、気付くと周囲の視線がとても痛かった。

そうでした、すっかり忘れてたけど、
クーさんと親しくしてると、色々アレなんでした。



189: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:19:32.71 ID:dJWZd+4k0
ちょっと怖くなったので、いい加減やめる事にした。
すると、ちょうど午前の授業が終わって、開放感に浸る声がざわめく。

  _
( ゚∀゚)「内藤!! 行くぞ!!」

(;^ω^)「あ、ちょっと待ってお」

しまった、もうお昼じゃないか。
準備を怠ってしまった、えーと、財布はどこだ…。

  _
( ゚∀゚)「先いってるぜー?」

(;^ω^)「あ、はいおー……あれ、鞄の中かな…」

慌ててるせいか、見つからない、まさか忘れた?
と更に焦りまくる僕だったが、そこへ不意に、肩を叩かれた。

何の気なしにふりむくと、クーさんだった。


(;^ω^)「え、なんだお?」

川 ゚ -゚)「……」



192: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:21:50.58 ID:dJWZd+4k0
戸惑う僕を、クーさんの眼が射抜く。

あ、そういえば……。
僕ってば調子に乗って、なんども突っついちゃったから。


(;^ω^)(もしかして……ちょっと怒ってたり…?)


(;^ω^)「……」


川 ゚ -゚)「……ありがとう、起こしてくれて」


と、まあ不安に駆られていたら、
あまりに予想外の言葉が飛んできた。ちょっとびびった。

(;^ω^)「ええ!?」

川 ゚ -゚)「おかげで、どうにか乗り切れたよ」

(;^ω^)「う、うん…かなり眠そうだったお」

川 ゚ -゚)「……実は今朝、かなり早起きさせられてね…」



193: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:24:35.49 ID:dJWZd+4k0
ふむ…変な言い回しをするものだ、早起きしたんじゃなくて、させられた、か。

よくわからないが、まあ確かに、今もまだ眠そうですし。
ほら、今も手を口にあてて、ふぁ…なんてあくびしてますし。

何だか妙に饒舌なのも、睡魔によるナチュラルハイってやつなのかもしれない。


( ^ω^)「あれ、ていうかクーさん、ご飯は?」

川 ゚ -゚)「……ああ、それがな」


その時。


(;^ω^)「ん?」

川 ゚ -゚)「…来たか」


廊下の方から、なんか走り回る音がする。
あと、なんかやたら騒がしい声も。

それに疑問を持って間もなく。


ガララッ、ガターンッ、と教室の扉は勢いよく開け放たれた。



194: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:26:39.59 ID:dJWZd+4k0
ノハ;゚听)「内藤!! 内藤は居るかあああああああああああああ!!」


そこに居たのは、なんだか大きな風呂敷を抱えた、赤い髪の女の子。
どっかで見たことある、えーと、そうそう、こないだ会ったヒートさんだ。

姉であるクーさんにでも、会いに来たのだろうか?


ノハ*゚听)「あ、居た!! 見つけたぞおおおおおおおおおおお!!」


それで、ちなみにどうして、僕の名前を叫んでいるのかな。

それでそれで、どうして嬉しそうに僕を指差しているのかな。


あ、一直線にこっち来る、いや、あのですね。

実は今クーさんと普通に話してたせいで、周囲の眼が怖かったんよ。
なんかこう、あの野郎……みたいな視線を感じたんよ。

だと言うのに、そこへ更にそんな、明らかに僕に会いにきました!
みたいな状況ってさ、それって、かなりよろしくない、と、思われるんですけども。



195: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:30:00.76 ID:dJWZd+4k0
ノハ;゚听)「よいっしょ、と」


とても大きな四角い物体が、ドサッと机のうえに置かれた。

ああー、何ていうかね、流石にわかるよこれ、
これに至る経緯はわからないけど、これが何かはわかるよ。


(;^ω^)「あ、あの……これって……」


ノハ*゚听)「お弁当……作ってきた、た、た、た食べてくれ!!」




ざわ・・・ざわ   
         「オイ、イマ」
             ざわざわ
  「キイタ?」           (゚A゚)
        「マジカヨ・・・」
   ざわ・・・    「エ、弁当?」
 「スナオサンガ!?」
      ざわ・・・



201: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:33:22.40 ID:dJWZd+4k0
あ、今回ばかりはさすがに、睨んでくるだけじゃ収まらないようだ。
もう明らかな周囲のどよめきが、はっきりと聞こえるよ。


ノハ*゚听)「その、だな、不慣れだから、内藤の口に合うかはわからないけど……」

よけいにその場を煽るような事を、ちょっと、こう、
もじもじっと、しながら言ってきた。


( ^ω^)「いえあの、うん、席間違えてますお? ほら、クーさんは隣だお?」

これは不味いと、僕はなるべく優しく諭してみた。


ノハ;゚听)「あれ、ほんとだ!? お姉ちゃん、内藤の隣だったのか!!」

川 ゚ー゚)「…まあね」


いや、何でそこでちょっと嬉しそうに微笑むのかしらーー。
ていうか、居ることを知らなかった、みたいなのも勘弁願いたかったですの。


ノパ听)「実はな、これお姉ちゃんに教わりながら、一緒に作ったんだ」



202: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:36:23.09 ID:dJWZd+4k0
川 ゚ -゚)「おかげで寝不足だよ」


ノパ听)b「だから、さっきはああ言ったけど、味は保障付きだぞ!!」

ああなるほど、それでクーさん寝不足だったのか。
んでつまり、見方を変えれば、これクーさんお手製弁当でもあるわけだ。

なるほどー、火に油入りました。
針のむしろです、どうしてこの二人は気にならないんだろう。

(;^ω^)「ぐす……えーと、どうして急にお弁当…?」

川 ゚ -゚)(……涙目だ)

ノパー゚)「言ったろ、私にできることをするって」

ノハ;゚听)「それで考えたけど、やっぱりこんな事くらいしか、思いつかなかったんだ」

(;^ω^)「い、いやでも、僕ら知り合ったばかりだし、別にそんな親しいわけじゃ」

ノハ*゚听)「何を言ってるんだああああああ!! 私たちは!!!」


ノハ#゚听)「お互いの秘密をこの胸に抱えた仲だろおおおおおおおおおおおお!?」



208: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:38:57.08 ID:dJWZd+4k0
「秘密!?ヒミツッテナンダ!?」
「タダナラヌカンケイ!?」
   (#゚A゚)
「アイツ・・・クーダケジャ アキタラズ!」


川 ゚ -゚)「……よっ…と」

もう何を言っても、泥沼にはまるばかりなんだと思えてきた。
あ、それとクーさんクーさん、クーさんはどうして、さり気なく机を寄せるの?


ノパ听)「え、お姉ちゃん??」

川 ゚ -゚)「これ、二人じゃ無理だよ」

ああ、なるほどね、重箱6段くらいあるもんね。
確かにこれを僕一人で食べろというのは、無理よね。

体積的に限界がありますし、うん? ていうか今二人って言った?


ノハ;゚听)「あ、もしかして……最初から、こうなるの分かって…?」

川 ゚ー゚)「ふ……まあね」

ノハ*゚听)「お姉ちゃん……」



210: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:41:25.97 ID:dJWZd+4k0
ああ、ヒートさんと、って事か。

んでクーさん加わって、三人か。

それでも厳しそうだなぁ、特にクーさんとか、あんまり食べなそうだし。
ああ、そんな事考えてる間に、僕とクーさんの机に弁当が広げられていくよ。

わあ色とりどり、おいしそうだ。


さあてこの状況から、いかにして逃げようか。


    しかし げんじつ からは にげられない 


そんな言葉が瞬時に浮かぶあたり、今の僕はそうとうキテいるらしい。
だが、それでも考えろ、どうすればいい、どうすればこの危機的状況を回避できる。


ノハ*゚听)「ありがとうお姉ちゃん!」

川 ゚ -゚)「おっと…危ないぞ」

ノハ*゚听)「えへへ」



213: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:44:18.29 ID:dJWZd+4k0
何かすぐ側で、美しい姉妹愛が繰り広げられてるけど、
それどころじゃない僕は、必死に考えた。

そうだ、これだ、この弁当のサイズ、これは使えるぞ。
どうせ食いきれやしないんだ、誰かを呼べばいい。


名づけて、あれれ〜こんなに食べきれないよ〜〜作戦。



(;^ω^)(よし……)

Σ(;'A`)ピコーン


('∀`)「あれっ!? 参ったなぁ! 弁当忘れちゃったよ!!」



しかし、誰にする、こんな状況で誰を呼べるって言うんだ。
僕はこっそりと辺りを見回した、なんだか怖い眼で見てくる人ばかりだ。



214: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:46:36.76 ID:dJWZd+4k0
('∀`)「おやおやおや!!? 財布もない!! あいったぁ!俺としたことが!!」

('A` )チラ



(;^ω^)(ど、どうする…どうする僕…!)



('∀`)「やっべ、今日昼飯抜きかなあ!!?」

('A` )チラ



ノパ听)「よし、じゃあ食べるぞおおおお!!」

ノハ*゚听)б「ほら内藤、どこ向いてるんだ! 冷めちゃう…ぞ!!」

川 ゚ -゚)「大丈夫、とっくに冷めてるよ」


うう……もういっそ、全てを投げ出し、ここから逃げてしまいたい…。



216: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:49:11.85 ID:dJWZd+4k0
けど流石に、食べない、というのはかなり失礼だ。
さっき聞いた通り、僕なんかの為に早起きして、寝不足なんだから。


(; ω )(……はっ)


て、そうだ、そうだよ……僕は何を考えているんだ…。


わざわざ苦労して作ってきてくれたのに、さっきから僕は自分のことばかりだ。

なんだ僕は、世界の中心気取りか、なにを馬鹿な。
自分の小ささなど、もう何度も味わってきたはずだ。

もう覚悟を決めろ内藤ホライゾン、僕がやらなきゃ、誰がやる。
人の親切、心の優しさを無下にするなんて、最低だ。

他がなんだと言うんだ、これは彼女らの優しさなんだ。
それをちゃんと受け止めないなんて、ただの裏切りに過ぎない。
矢でも鉄砲でも持って来ればいい、覚悟は決めた、もう負けねーお。

( -ω-)「……」

川 ゚ -゚)「……?」



217: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:51:33.70 ID:dJWZd+4k0
ノハ;゚听)「……内藤? あの…もしかして、食べたくな」

( ^ω^)「いやこれは凄い…おもわず言葉を失ってしまったおwww」


ノハ*゚听) パァ


( ^ω^)「それじゃ、早速いただくとしましょうかおwwwww」





そして、今まさに手を合わせ、いただきますしようとした、


その時。



222: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:53:32.49 ID:dJWZd+4k0
開きっぱなしのドアをくぐり、教室へ駆け込む者が居た。

  _
( ;∀;)「くっそおおおおおおおおお、サイフ忘れたあああああああああああああ」

(;´・ω・`) 「はあ、なんで僕まで付き合わなきゃいけないのさ……」

 _
(;゚∀゚)「なら奢ってくれてもいいじゃんよー」

(´・ω・`) 「だが断る」



( ゚ω゚)「ジョルジュ!ショボン君! 二人とも!! ちょっと来てくれおーーーーーー!!!」







(゚A゚)



226: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:56:16.20 ID:dJWZd+4k0
  _
(;゚∀゚)「あん? お前まだ居たのかって、なんだこりゃ……」

(´・ω・`) 「おや、なんか凄い状況に鉢合わせたね」

(;^ω^)「ちょっと、食いきれそうにないんだお、手伝ってくれお」


(;´・ω・`) 「え…でもこれって……えーと、いいの?」

(;^ω^)「い、いいかお?」

川 ゚ー゚)「ん? ああ、構わないよ」

ノパ听)「ご飯はみんなで食べた方がおいしいと、うちの米好きも言っている」

  _
(;゚∀゚)「って、ヒート!? なんでお前このクラスに居るんだ?」

ノパ听)「む…何だ、ジョルジュも同じだったのか」


(;^ω^)「え、知り合い?」



230: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 20:59:08.18 ID:dJWZd+4k0
  _
( ゚∀゚)б「あー、俺とこいつ、陸上部」

ノハ#゚听)「こいつ言うな!」

  _
( ゚∀゚)「てか、料理なんざできたのか?」

ノパ听)「お姉ちゃんに習ったからな」
  _
( ゚∀゚)「ふーん…どれ、じゃあ俺も貰おうかね」

ノパー゚)「ふふん、頬が落ちても知らないぞ」


こうして、僕らは更に机をひっぱってきて、
5人で仲良く、わいわいお弁当を食べはじめました。


ノハ;゚听)「…どう?」

( ^ω^)「うめえwwwww」

ノハ*゚听)「おおー」

(;´・ω・`) (この…なんか緑色の台形物体はなんだろう…)



233: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 21:01:07.58 ID:dJWZd+4k0
川 ゚ -゚)「……」
  _
( ゚∀゚)「あ、これお前だろwwwww形変だもんよwwwww」

ノハ;゚听)「え、いや、それは……」


川  -゚)「……」

  _
(;゚∀゚)「あ、あれ…?」

(´・ω・`) 「馬鹿だねぇ」


と言うわけで、何処からどう見ても、仲良しグループって感じです。
これなら、もう僕がどうこう、とはなりますまい。

ちらっと見れば、羨望とも取れる視線はあれど、殺伐さは薄れた感がある。


(;^ω^)(……危機は去った)



234: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 21:03:57.49 ID:dJWZd+4k0
しかし、ほっとするのも束の間。

クーさんの細い指が、そっと僕の頬に触れた。


川 ゚ -゚)「ごはん着いてたぞ」


そして、そんな事を言って、ちょっとだけ微笑んだ。
あれを食べたりしなかったのが、せめてもの救いだろうか。

何にせよ、チクチクするんだよ、背中が、段々わかるようになってきた。




( ^ω^)「……え」




だけど。



236: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 21:06:39.95 ID:dJWZd+4k0
たくさんの人。

たくさんの表情がある中に。






ζ( - *ζ「………」



ζ(-、-*ζ「……」





(;^ω^)「…………」

その中に、一つだけ。

とても悲しそうな視線があったのは。


それが、今にも泣きだしてしまいそうに見えたのは、僕の思い違い……なのだろうか。



238: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 21:09:10.64 ID:dJWZd+4k0
………。



その日の放課後、そろそろ帰り道にも慣れてきた僕は、
ちょっと寄り道していく事にした。


と言っても正確には、行ったことの無い場所を見てみよう、ってのだけど。

そんな訳で、僕は校舎内を歩き回ってみた。

あまりの広さに、それだけで時間的余裕は無くなってしまった。
この分では、更に広大な校舎外を見てまわったら、どうなる事やら。


( ^ω^)「……そろそろ、帰ろうかな」


校舎から聞こえてくる喧騒、グラウンドに響く大きな声たち。
空はいつしか夕日に染まりはじめ、焼き焦がされるように、黒い夜が反対から迫ってくる。

遠く見える正門では、長い影をひき連れて帰りを急ぐ、生徒達の姿。
何となく、僕だけ取り残されてしまったような、そんな心寂しさを感じた。



240: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 21:12:13.12 ID:dJWZd+4k0
探し物はなんですか、見つけにくいものですか。
そんなフレーズが頭をよぎる、僕は、何をしているのだろう。

自分でもよくわからない、この胸に引っ掛かる、何か。
それは、時折あらわれては、僕の心をざわつかせる。

けれど、眼を細めて夕日をみれば、ちょっと癒されるように、静まっていく。


そして色あせた景色を、風が流れていく、木々も揺らさず、優しくふんわりと。
まだ肌寒さはあれど、微かにあるぬくもりに、思い出はそっと蘇る。


ああ、そうか。

また、あの季節が来る。


(  ω )「……」


生きていれば、そりゃあ当然のようにあるだろう、色々あるだろう。
だけど、それでもやっぱり、僕の中では、ざざざ、と木々が揺れている。



244: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 21:15:07.64 ID:dJWZd+4k0
( ^ω^)「……あ、そうだ…あの庭園に行ってみよう」


何か理由があったわけじゃない。

ただ、何となく、ふと思い立ったから。


視界の端にあった、大きな森のような庭園に足を踏み入れた。

もしかして、また迷うんじゃないか、という不安もあったが、
中には、ちゃんと整備された道があって、親切に看板まであったから平気そうだ。


先へ進むと、小川があった。


ちゃぷちゃぷ、ごぼぼ。


水が弾かれる音と、気泡がつくる音が混ざり合い。
それが無数に重なっては、大合唱。

心休まる自然の音。



246: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 21:17:39.70 ID:dJWZd+4k0
しばらく、こうして聞き入っていたい気分だ。
けれどじきに暗くなる、残念ながらそうもいかない。


( ^ω^)「うーん、なんか生き物いないかなー」


( ^ω^)「あ、クチボソの群れが居るお」


( ^ω^)「……ん」


(;^ω^)「お、何だあれ…?」


僕は、小川の奥になにかを見つけた。

興味をひかれて近寄れば、それは、
よくある薄紫のパイプを縦に切った、手作りの用水路。

しかも、それが木々の間を抜け、はるか先まで伸びている。


(;^ω^)「な、何なんだお……一体、この先に何が」



248: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 21:20:16.99 ID:dJWZd+4k0
凄く気になるけど、もうじき陽が沈む。
暗くなる前には学校を出たいもんなぁ、どうしよう……。

と、悩んだ挙句、まあちょっとだけですし、と行ってみる事にした。


サラサラと、パイプを流れる川の水。
一体、どこの誰がこんな物を作ったんだろう。

色々思うことはあれど、とにかく何があるのか、僕はひたすら歩いていく。
やがて、木々が数を減らしはじめると、その先に、ちょっとした広場ができていた。


( ^ω^)「ここは……」


広場には、これまた大きな水たまりがある、最初は池か、湖か、と思ったが、
底はとても浅く、本当にただの水溜りだとわかる。

( ^ω^)(ここに水を送ってるのか…)


(;^ω^)「って、それはわかるけど、結局謎だお……」



249: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 21:23:10.52 ID:dJWZd+4k0
「あれ?」


そして、僕以外、誰も居ないはずの場所に、疑問符が響く。


(;^ω^)「……お?」


lw´‐ _‐ノv「あなたは、だあれ?」


居たのは、夕闇に溶け込むような、紫色の髪の毛を携えた女の子だった。
あどけなさが少し残る声、体格も背丈も小さくて、とことこ歩く姿は小動物のよう。


この子も、赤い目だ、とか。

しかし可愛い子だな、とか。

いやいや何で、こんなとこに女の子が一人で、とか。

誰なんだあんた一体、とか思うことは多々あれど。



(; ω )「なんで……君は…」



252: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/05(日) 21:26:14.65 ID:dJWZd+4k0
まず、どうしても気になる事があって、僕は思わず問いかけていた。


(;^ω^)「……制服に長靴で、水たまりに入っていくんだお?」


その子は、ぬかるみに足を取られながら、ざばざば水たまりを進んでいく。
やがて、ゆっくり振り返ると、僕を見つめて、うっすらと微笑みを浮かべた。


そして。


lw´‐ _‐ノv「………米」

とだけ、呟いていた。




…………どうしよう、状況が、全然わからないんだけど。
                                      



                 Open your eyes for the next time――――→



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