( ^ω^)ブーンは、春がくるたび戸惑うようです
- 164: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/11(土) 00:17:23.14 ID:2QQoybtD0
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ヾヾ ゞ ```
ゞゝ;;;ヾ :::,r' ` ` i、;;;ヽ;;; ヾ;;;
i;;;::::′~^ ` ` ;;; ″~ ~
ii;;::iヽ / ` ゞ:,,,:: ヾ 〃::;:
iii;::i ` ` ` ii;;;;::: ::
iii;;::i ` B「稲作生活、はじめました」 iii;;;;::: ::
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iiiiiii;;::i ||iiii;;;;::::
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iiiiiii;;::;';;" `;;/i:ii iii;;;;;::::
- 4: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:19:30.02 ID:gEv9JQS10
- (;^ω^)「……米?」
状況があまりに不明なので、とりあえず反復してみた。
すると、少女は僕を無視して、水たまりを更に進んでいく。
lw´‐ _‐ノv「そう」
そんな水たまりの真ん中で、遠い目をしながら米を呟く女の子。
考えても、どんなに考えても、わけがわからない。
ええい、このままでは埒があかない。
(;^ω^)「あの、それで、そこで何をしてるんだお?」
lw´‐ _‐ノv「…ホウネンエビを撒くの」
(;^ω^)「え、エビ……? なんだお、それ?」
- 6: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:21:12.33 ID:gEv9JQS10
- lw´‐ _‐ノv「…豊作の年、と書いてホウネンエビ、この生き物がたくさんいると、
その場所で育った米は、たくさん収穫できるという…おはなし」
( ^ω^)「ああ、縁起物の生き物なんだ…」
lw´‐ _‐ノv「ちなみにエビとは言うけど、エビじゃあない、おっきなミジンコ
シーモンキーに近いのかもしれな…い」
(;^ω^)「へぇ……詳しいんだお」
あ、なるほど、そうか……理由とか、細かいことを色々スルーして考えたら、
この水たまりはもしかして、あれか。
( ^ω^)「あ、じゃあこれ、水田なんだね」
lw´‐ _‐ノv「違う…」
あれ、即答された、ていうか違うんだ……。
うーむ、かなり自信あり気に言ったから、ちょっと恥ずかしい。
- 9: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:23:38.56 ID:gEv9JQS10
- lw´‐ _‐ノv「これは……そう」
lw´‐ _‐ノv「田んぼだ…よ」
( ^ω^)「………」
lw´‐ _‐ノv「………」
(;^ω^)「……そっか…田んぼか…」
lw´‐ _‐ノv「うん」
そうか、田んぼだったのか……。
よく分からないけど、それは盲点だった……。
- 10: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:25:58.70 ID:gEv9JQS10
- (;^ω^)「と、とにかく、それで、そのエビを撒いてるわけだ、豊作のために」
lw´‐ _‐ノv「ううん……エビだけど、食べ物じゃない…よ」
( ^ω^)「うん…食べないから、大丈夫だお……」
lw´‐ _‐ノv「……ほんと?」
( ^ω^)「本当だお」
lw´‐ _‐ノv「よかった」
なんかもう、何がわからなくて、何を聞くべきなのかも、わからなくなってきた。
こんな事をやっている間にも、陽はどんどん暮れていきますし。
暗がりに映えるは、水面の揺らめき、佇む少女と風にたなびく紫。
それは何処か幻想的で、写真にしたら、とても綺麗なんだと思う。
だけど僕らはこうして対面していて、わけもわからず見合っている。
形勢は、僕が不利だろう、ちょっとそろそろ限界ですし。
- 12: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:29:23.28 ID:gEv9JQS10
- (;^ω^)(ど、どうしよう……)
lw´‐ _‐ノv「先に動いたほうが、やられる?」
(;^ω^)「やりませんお……」
lw´‐ _‐ノv「そうなんだ」
どこか残念そうに言うと、彼女は手にした袋を開け、
その中身を、お空にぶわっとばら撒いた。
無数の砂のような物が、霧雨のように降りそそぐ。
僕はなんとなく、そんな姿を眺めていた。
彼女はぬかるみの中、水をかきわけ、ばしゃばしゃ歩く。
あーあー、あれじゃ制服が泥だらけになっちゃう。
lw´‐ _‐ノv「スパッツはいてるから、平気」
( ^ω^)「ああ、なるほど」
( ^ω^)「何の意味もないね」
- 14: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:31:35.20 ID:gEv9JQS10
- lw´‐ _‐ノv「……あ、見たいの?」
一人納得したように、スカートを捲り上げた。
確かに、紺のスパッツを履いているようだ。
けど、暗くてよく見えないのが、惜しいところかもしれない。
lw´‐ _‐ノv「あげないよ?」
( ^ω^)「いらないかな……」
こうして、僕はすっかり帰るタイミングを逃した。
まあ、放っておくのも、それはそれで何だか気が引ける。
とりあえず、僕はその場に体育座りで腰を下ろした。
(;^ω^)(僕は、何をやってるんだろう……)
lw´‐ _‐ノv「暇なら手伝ってくれてもいいのに……」
そしたらなんか、文句を言われた。
ほぼ反射的に「あ、ごめん」と答えて立ち上がってしまった。
いやそもそも、何がしたいのかさっぱり分からないのに、どうしろと。
- 16: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:34:10.87 ID:gEv9JQS10
- lw´‐ _‐ノv「ほら、あそこ」
すると、少女は指でなにかを指し示した。
なんだろう、小さなビニールハウスのような…。
lw´‐ _‐ノv「箱があるから、持ってきて……ほしい」
僕は言われるがまま、向かう。
あ、ほんとだ。
なんか大きなプラスチックの箱が、所狭しと詰まってる。
ひぃふぅみぃ……しかも計10箱……。
とりあえず持ってみようかな……って、すげー重い。
ちょっと、これ本当に重いんだけど。
だって中身、土ですし、そりゃ重いに決まってる。
けどまあ、持てないほどでもないかな。
一応、バイトで土木系もこなした身としては。
(;^ω^)「よっ!」
う、足がちょっとふらつく…。
- 17: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:37:09.07 ID:gEv9JQS10
- (;^ω^)「ひ、一つめ…!」
lw´‐ _‐ノv「おお……すごいパワフル…」
lw´‐ _‐ノv「不覚にも濡れた」
そう言う彼女のスカートからは、ぽたぽた水滴がたれている。
あんな平然と水たまりを歩いてたら、そりゃあ…まあ、濡れるよね。
lw´‐ _‐ノv「でも、台車で運べばいいのに」
( ^ω^)「ああ、あるんだ……先に言ってほしかったなぁ…」
そして、運び終える頃には、すっかり暗くなって、
天に広がる一面の夜空、瞬く星は、そんな夜の隙間を埋めていた。
ちなみに、それはもう、真っ暗になるとばかり思っていたけれど。
グラウンドを照らす大きな照明や、校舎から漏れる光に照らされて、
まっ暗で何も見えなくなる、という事はなかった。
これなら別に、暗くなるのを心配する必要はなかったんだなぁ。
- 20: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:39:35.78 ID:gEv9JQS10
- けど、乗りかかった船だ、こうなったらとことん付き合ってみよう。
人に優しく、困ったときはお互い様、都会っ子のたしなみです。
( ^ω^)「んで、これどうするんだお?」
lw´‐ _‐ノv「そのまま沈めておくの」
言われるままにせっせと運び、水たまりに沈めていく。
ごぼぼ、と気泡が上がっては弾けていく。
地上では重くても、水中ならば多少は動かしやすい。
少女も、おぼつかない足取りで、水面に浮かべた箱をずらす。
うーん、しかし見ていて危なっかしい。
今にも転びそうなのだが、なかなか上手いことバランスを取っている。
(;^ω^)「あ」
lw´‐ _‐ノv「あ」
けど、それも流石に限界がきたのか。
ふとバランスを崩し、転びそうになったのを踏ん張るが、
片方の長靴が、ずぼっと脱げて、そのまま素足を泥水に突っ込んだ。
lw´‐ _‐ノv「……」
(;^ω^)「だ、大丈夫かお?」
- 22: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:42:23.84 ID:gEv9JQS10
- lw´‐ _‐ノv「この…下に何があるかわからない感じは」
lw´‐ _‐ノv「闇鍋に、似ている…」
(;^ω^)(つまり……怖かったと受け取っていいのだろうか…)
そういえば、今何時だ、げ、もうこんな時間じゃないですか。
いい加減、帰らないと怒られてしまう。
なので、僕はもう帰るよ、と伝えた、そしたら彼女はこっちへ近づいてきた。
彼女が陸に上がると、歩くたびに長靴から妙な異音がする。
ぐぼ、というか、がぽ、というか、そんな音。
どう考えても、水が浸入してるようだ。
そりゃ、あれだけ激しく歩き回れば、そうなるだろうさ。
lw´‐ _‐ノv「じゃ、今日は終わり、あがっていいよ」
( ^ω^)「あ、はい、お疲れ様でしたー」
(;^ω^)ハッ
あ、しまった、あの言葉を聞くと反射的に答えてしまう…。
- 25: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:44:28.64 ID:gEv9JQS10
- (;^ω^)「あ、ところで、長靴は?」
ちなみに、少女は脱げた靴を回収せず、そのまま戻ってきた。
だから今は片っぽだけ、泥まみれの靴下姿だ。
田んぼを見れば、水面は静かに揺らめいている。
あれ、よく見たら何か居る……亀だ、亀が居るぞ。
はてさて、それで、さっき脱げたはずの、少女の長靴は今いずこ。
(;^ω^)「……見えないお」
lw´‐ _‐ノv「うん…」
lw´‐ _‐ノv「でも、替えがあるから」
なるほど、でもさ、替えを用意してあるってさ、なんかあれだよね。
まず、失くす事を前提にしてるよね、何をどうしたら無くなる、なんて事態に……。
いや、でも、そうか、今現在……無くなってるか……。
- 27: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:47:08.21 ID:gEv9JQS10
- lw´‐ _‐ノv「長靴は、犠牲になったのだ……田んぼの、犠牲にな」
何やら意味深な言葉を残し、少女はそのまま水田に背を向ける。
どうにも、このまま帰るつもりらしい、大したやつだ…。
(;^ω^)「ちょ、靴の替えはどうしたんだお」
lw´‐ _‐ノv「……?」
いくら何でも、靴下で帰るのは色んな意味で危ない。
すると、何故か少女は首をかしげ、とても不思議そうに僕を見た。
lw´‐ _‐ノv「だから、帰れば、ある…よ?」
( ^ω^)「……」
…家にかよ……。
- 28: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:50:32.62 ID:gEv9JQS10
- (;^ω^)「じゃあ、今は無いの…? 」
lw´‐ _‐ノv「うん」
(;^ω^)「じゃあじゃあ、他に履くものは無いのかお? ほら、校舎に、上履きとか」
lw´‐ _‐ノv「上履きは……」
lw´‐ _‐ノv「…すでに」
( ^ω^)「?」
少女は静かにふりかえると、哀しみを帯びた瞳で、じっと田んぼを見つめた。
………沈んでいるのですか…あなたも……。
ていうか、こうなるともう、何が沈んでるか分かったもんじゃないですね。
lw´‐ _‐ノv「というわけで、ないです……お」
(;^ω^)「……本気で、そのまま帰る気かお?」
lw´‐ _‐ノv「……」
- 30: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:52:37.82 ID:gEv9JQS10
- 僕の問いかけに、少女はうつむき、自分を抱きしめるように身をよじる。
lw´‐ _‐ノv「それは…私を……ただじゃあ帰らせない…ということ?」
lw´‐ _‐ノv「ケダモ……の」
(;^ω^)「いや……うん、まあいいや………」
反応にとても困るので、スルーを決行した。
そして僕は鞄をあさる、実は、ちょうど上履きを持ってきているのだ。
昼間あんなことあったし、まーた何かされたら大変だもの。
( ^ω^)「じゃあ、はい」
lw´‐ _‐ノv「こ…これって……」
( ^ω^)「いくら何でも、それじゃ怪我しちゃうお、これ使ってくれお」
- 32: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:54:15.84 ID:gEv9JQS10
- (;^ω^)「あ…いや、もちろんよければ、だけど」
出してから気付いたけど、相手は変だけど女子だ、やろうの上履きなど嫌かもしれない。
lw´‐ _‐ノv「そんな……私で……いいの?」
( ^ω^)「………」
lw´‐ _‐ノv「………」
lw´‐ _‐ノv「じゃあ、片方だけ」
(;^ω^)「なんで片っぽ…」
lw´‐ _‐ノv「おそろい……ペアリングならぬ…ペアシューズ」
( ^ω^)「うん……数百人単位でペアってるけど」
lw´‐ _‐ノv「それなら……」
lw´‐ _‐ノv「匂いを共有、足の臭さが……おそろい」
- 34: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:56:16.96 ID:gEv9JQS10
- (;^ω^)「…………」
それはやだなぁ……凄くやだなぁ……。
ていうか、誰が喜ぶのそれ……。
lw´‐ _‐ノv「つまりおそろいで…ペア臭ズ」
lw´‐ _‐ノv「なんちゃっ……た」
(;^ω^)「はぁ……」
lw´‐ _‐ノv「…2のD、内藤…ホライゾン……」
(;^ω^)「……え?」
突然なにかと思ったら、上履きに書いてあるのを読んだのか。
そういえば、まだお互い、名乗りもしてないのだった。
( ^ω^)「そうだお、僕は内藤ホライゾンだお」
lw´‐ _‐ノv「……内藤…」
( ^ω^)「うん」
- 35: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 21:58:28.73 ID:gEv9JQS10
- ( ^ω^)「それで…君は?」
lw´‐ _‐ノv「私は……」
lw´‐ _‐ノv「……米仙人」
( ^ω^)「……」
lw´‐ _‐ノv「……」
…………米仙人?
- 38: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:00:18.66 ID:gEv9JQS10
- lw´‐ _‐ノv「私のことは……米仙人と呼んで」
(;^ω^)「……米…仙人?」
lw´‐ _‐ノv「うん」
これは、本気で言ってんのかなぁ……。
できれば判断に迷いたいんだけど、きっと、これ、本気なんだろうなぁ……。
どうせなら、米仙女、とかにすればいいのに、そういう問題でもないけど。
ちなみに、苗が置かれていた場所を、米ハウス。
田んぼに住む亀は、ウリゴメと言うそうだ。
そうして、僕と米仙人は、照明に照らされるグラウンドの脇を抜け、
点々とつづく街路樹の道を、黙ったまま、並んで歩いた。
暗いし、家まで送っていった方がいいかな、とも思ったが。
道行く人々は、だれも米仙人を見るなり、バッ、と避けるので、
ああ……これなら、別に平気かぁ、と思った。
何せ彼女、びっしょり濡れたスカートに、泥だらけの姿で、
歩くたびに、ガッポガッポと、異音を鳴らしているのだ。
不審人物ってレベルじゃないぞ。
- 40: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:03:20.56 ID:gEv9JQS10
- ああ、ほらまた、すれ違ったサラリーマン風の男が、奇異の目で見てる。
lw´‐ _‐ノv「……恋人同士に、見られて…る?」
( ^ω^)「……たぶん、それは違うお」
変人同士に、見られてるんだよ。
lw´‐ _‐ノv「内蔵さん……」
誰だよ内蔵……ていうか内蔵って……。
(;^ω^)「じゃあ…僕、家こっちだから……」
lw´‐ _‐ノv「うん……」
僕らは、何の気なしに立ち止まる。
このあたりは住宅の密集地、あるいは住宅街、というのだろう。
どの家にも、黄色かったり白かったり、明るい光が灯り。
ゴールデンタイムなので、たまに、おいしそうな匂いもした。
- 41: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:06:29.66 ID:gEv9JQS10
- lw´‐ _‐ノv「それじゃ、また……ね」
lw´‐ _‐ノv「……ばいばい」
( ^ω^)「うん、気をつけてね」
lw´‐ _‐ノv コクン
こうして、ガボガボ音と共に、米仙人は去っていった。
僕は、その場で立ち尽くしたまま、ふと空を仰ぎ見る。
街灯がにじませる黄色い三日月は、やけに遠く、小さく感じた。
星は、ちょんちょん、いくつか、都会は見えないと聞くけど、それなりに見れるものだ。
その時、冷えた夜風が、僕を包み込むように吹いた。
さっきまではあまり感じなかったが、一人になったとたん、強くそれを感じる。
うーん、流石に夜になると、まだちょっと冷えるなぁ。
そういえば、あの子なんか水に漬かって、濡れていたのに、大丈夫かな……風邪ひかなきゃいいけど。
せめて、何か羽織る物があれば渡したんだけど、あいにく持ち合わせていなかった。
まあ、それは流石にやり過ぎか、初対面なんだから。
- 42: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:09:15.76 ID:gEv9JQS10
- そうだ、初対面なんだよね……その割には、我ながら自然だったなぁ。
うーん…不思議な感じ、馬が合うとでもいうのか、いや、それは無いな。
( ^ω^)「…ま、いいか」
何にせよ、感傷的になっていたのが、今は嘘のように落ち着いている。
あの子のおかげか、それとも、あの子のせいか……まあ、今は帰ろう、怒られちゃう。
……。
翌朝、僕はどこからか聞こえてくる物音に、目を覚ました。
たぶん外からだ、ガシャガシャ、と金属的な音がした。
( つω-)「ふぁ……こんな時間に…」
けど、音はすぐに止んでしまう、起こされ損だ。
それにしても、何だろう、新聞屋さんだろうか?
- 44: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:11:26.34 ID:gEv9JQS10
- いや、いくら寝起きの頭でも、それは違うだろう。
しん、と静まり返った部屋の中は、肌寒さをも感じさせる。
ぼんやり見れば、カーテンは外の明るさを受けて光っていて、
このまま眼を閉じてしまいたい、けど折角なので、起きることにした。
( ^ω^)「んー……お?」
大きく伸びをすると、またさっきの音がした。
近所迷惑だな、なんだと言うのか。
そう思って、僕はベランダへと向かう。
ぼんやり輝くカーテンを開くと、遥か遠いさきの空に、陽が昇りはじめている。
朝焼けはない、見渡すかぎりの青空は、まだ夜の名残を残していた。
(;^ω^)「……なんだあれ」
そして、僕はさっきの音の正体を知った。
見えるのは向かいの家だ、そこに、金属製のはしごがかけられていたから。
しかもそれがまた、えらく長いハシゴで、屋根まで届いてる。
うーむ、なんでハシゴ……まさか泥棒?
- 46: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:14:56.45 ID:gEv9JQS10
- いやーこんな堂々と?
まっさかー。
とか思っていると、何やらガタイの良い男が、しゃかしゃか登っていく。
おいおい、怪しすぎますよ、いくらなんでも……。
姉さん、事件です、事件の匂いがします。
どうしよう、何かあったら、警察とか呼んだほうがいいのかな。
でも、まずは様子見だ、果たして何をするつもりなのか…。
僕はドキドキしながら、ハシゴを登る男の、尻を見つめていた。
ガッシリとしていて、太いが、引き締まっているのがよくわかる、いい尻だ。
(;^ω^)「…?」
やがて男は、ハシゴを登りきった、つまり屋根まで登ったのだ。
流石にここまでくると、もう怪しさより、単に好奇心がわいてくる。
(;^ω^)「何をしてるんだろう……」
男は、屋根をすいすい歩いて、端で立ち止まった。
まさか飛び降りる気か、と思って、再び怖くなった。
- 49: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:17:35.78 ID:gEv9JQS10
- しかし、男はそのまま、身動きひとつ取らない。
両手をがっしりと組んで、仁王立ちしたまま、遠い朝陽を眺めているだけだ。
僕もそれにならって、昇りかけの太陽を見る、うおっまぶし。
いつの間にか、半分以上とびだして、張り詰めた朝の空気を和らげていく、
そんなぬくもりと一緒に、僕の部屋にも光が射した。
その時、ふと、男に動きが見えた。
男は、キラキラ輝く朝日の中で、組んでいた腕を解き。
片手は腰に、もう片手は口元にそえて。
(#゚∋゚)「こけこっこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
声高々に、朝を叫んでいた。
そして、僕はずっこけた。
おはようございます。
- 52: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:20:42.04 ID:gEv9JQS10
- …………。
(;^ω^)「あ……あれ?」
学校に着くと、僕の上履きが無くなっていた。
まさか、誰かに隠されたのだろうか……。
こないだは画びょう入ってたし、酷いことするなぁ。
(;^ω^)(ハッ…)
そこまで考えて、そういえば昨日、持ち帰ったのを思い出した。
同時に、そのあと上履きの片っぽを、米仙人に貸したことも。
とりあえず、キョロキョロ見回すけれど、彼女が居るはずも無く。
ならば、やむを得ない、片足で行くとする。
そんな訳で、片足でジャンプしながら、教室を目指すのが僕です。
でも、早々に疲れてしまった、まだ、階段にも着いてないと言うのに…。
- 54: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:23:18.06 ID:gEv9JQS10
- だが、この程度でくじける訳にはいかない。
僕はもっと辛いことや、苦しいことを知っているもの。
だから、たとえ片足ケンケンで、長い階段を往かねばならぬとしても、負けないのだ。
(;^ω^)「こんじょーーーーー!」
「おい、そこの変なの、止まれ」
(^ω^;)「はいお?」
(^ω^;)「……あれ?」
あれ、今、誰かに呼ばれたと思ったのに、おかしいな…。
振り返った先には、誰も居ない、いや正確には、僕を見ているのは居ない。
よく分からないが、気のせいだったらしい。
僕は自分に活をいれ、いま再び、階段を片足でジャンプする作業に戻った。
「あ、待てこら!」
(;^ω^)「ひぃひぃ、あと3階……」
- 56: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:25:22.32 ID:gEv9JQS10
- 僕は、このだだっ広い校舎を呪った。
いやまあ、いい加減あきらめて、普通に歩けばいいんだけど。
ここまで来ると、足を床につけたら、負けかと思ってる。
「おい! 無視すんなてめぇ!!」
(;^ω^)「え、は、はい!?」
再び、声をかけられた、というか叫ばれた、びっくりして振り向く。
だけど、やっぱり誰も居ない……どうなってるんだ…。
(#*゚∀゚)「どこ見てんだ! こっちだこっち!!」
(;^ω^)「え、あ、ほんとだ……」
もしや、聞こえてはいけない何かが聞こえているんじゃ……と、思ったら、
すぐ真下に人が居た、背の小さな女の子だった。
(*゚∀゚)「よーし、やっと止まったかー」
(;^ω^)「えーと…?」
- 58: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:27:34.15 ID:gEv9JQS10
- 階段がある分、よけいにちんまい、誰だろう…知らない子だけど。
うしろで二つに束ねた、淡い銀色のなめらかな長髪、
パッチリした水色の瞳に、ちらっと覗く八重歯がとても愛らしい。
おそらく一年生だろう、かわいいなぁ…なでなでしたい。
うむむ……妹者ちゃんと言い、昨日の米仙人と言い、
どうにも、年下っぽい子に、僕は弱いのかもしれない。
そして、よく見れば頭部には、ていうか……え?
…あの、これは…。
∧∧
(*゚∀゚)
(;^ω^)(……ねこ……み…み…?)
なんか、頭の左右に、ふさふさした、あれが。
いわゆる、猫耳が、ねこみみが、がが…ががが……がふっ……。
(*゚∀゚)「おい、聞いてんのか?」
- 63 名前: ◆aYo30Ks4N6 [空間がずれた] 投稿日: 2008/10/10(金) 22:30:18.87 ID:gEv9JQS10
- …はっ…いけない、あまりの事に、ちょっと意識がフェードアウトしてた。
しかしどうしよう、これ、ちょっと、かわい過ぎるんですけど……。
あああ、あのフサフサに触りたい…柔らかそうだな……持ち帰りたいな……。
(*゚∀゚)「それで、だ……お前なぁ、さっきからその」
(*^ω^)「あああ…猫さんかわいいお……よーしよしよし」
(* ∀ )「アヒャぁん…」
僕は気付けば、その子の頭に手を置いていた。
ぬおお、サラサラで、きめ細かい繊維のような毛が、
指の隙間をくすぐっていく……めっちゃ気持ちいいんですけも。
(;*-∀゚) ハッ
ヾ(#*゚∀゚)ノシ「うがあーーー!! 気安く人の頭を撫でるんじゃねええええ!!」
(;^ω^)「あいたっ、ごご、ごめんなさいお!」
と、いきなり撫でる手を全力で弾かれた。
ちょっと痛い、けど確かに今のは失礼だったね、うん。
- 65: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:33:27.95 ID:gEv9JQS10
- (#*゚∀゚)б「で、お前!」
(;^ω^)「はい?」
(*゚∀゚)「なに変な歩き方してるんだ、ていうか、上履きはどうした」
何だろう、教師のような物言いだ。
よく分からないが、ちゃんと答えたほうがいいのかな。
(;^ω^)「えーと……人に貸してしまいまして」
(*゚∀゚)「…片方だけを、か?」
( ^ω^)「ですお」
(*゚∀゚)「まさか……苛められてる、とかじゃねーだろうなぁ?」
(;^ω^)「ええ!? そっ、そういうわけじゃないですお!」
(*゚∀゚)「………」
(*゚∀゚)「まあいいさ、とりあえず来い、スリッパ貸してやる」
(;^ω^)「はあ、どもですお」
- 66: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:36:15.51 ID:gEv9JQS10
- 何だか、いじめだと思い込まれてる、ような気がする。
けどこの場合、迂闊な言い訳はどうせ逆効果だ、とりあえず、何も言うまい…。
こうして、僕は猫さんに連れられて、道を行く。
廊下には生徒がちらほら、まだ早い時間なので、こんなものだろう。
その道中、話を聞けば。
彼女はつー、4年生で僕の二つ上、そして、生徒会みたいな場所の人らしい。
だから、困ってる後輩が居たら、放っておけないそうだ、良い子だなぁ。
(;^ω^)「……ていうか、4年…? え、ええええ!!!?」
(#*゚∀゚)「なんだその反応は!」
(;^ω^)「あ、いえ、ちょっと信じられないというか…信じない、というか」
信じたくない、というか。
(*゚∀゚)「うん、正直なやつだなー、ぶっ殺すぞ」
- 70: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:39:13.99 ID:gEv9JQS10
- 本当は「あ、飛び級でしょ?」とか聞きたかったけど、
目がマジなのでやめました、妙な威圧感、こわいよう……良い人っぽいけど。
やがて、客用の玄関にて、僕はスリッパを頂戴した。
貸してやる、とか言ってたけど、これ勝手に持ってっていいのだろうか。
(*-∀-)「……ま、お前が忘れただけって言うなら…今日のところは見逃してやる」
( ^ω^)「どうもですお、猫さん」
(;*゚∀゚)「猫さんはよせ……とにかく、もしまた何か見かけたら、
今度は、ちゃんと話を聞かせてもらうからな」
(;^ω^)「は、把握ですお…」
うーん、違うのになぁ…。
けど、この様子では何を言っても、信じてはくれなそうだ。
何ていうか、優しさと言うより、正義感ってかんじだもの。
(*゚∀゚)「さてと、んじゃーな、お前も遅れんなよー」
( ^ω^)「はいですおー」
- 72: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:42:28.16 ID:gEv9JQS10
- こうして、親切な猫さんに感謝とお別れをつげて、僕は教室をめざします。
(;^ω^)「お?」
その時、僕は視線を感じて、ふりかえった。
最近はとくに、そういうのに敏感になってるので、わかるのです。
ザワ ザワ
しかし、周囲はすでに、生徒達がざわめきを作っている。
人波の中、ひとまず見渡しては見るが、特にそれっぽい人は見当たらない。
……いや、居た。
見つけると、すぐ、人ごみに溶けるように去ったけど。
あれは確かに僕を見ていた、たぶん、気のせいじゃない。
(;^ω^)「……?」
今のは……見間違いじゃないよね。
どどど、どうしてここに?
- 76: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:45:12.41 ID:gEv9JQS10
- いや、それより、何で僕を…?
……もしかして……と思い。
いや、そんなまさか……と否定する。
そんな都合の良いこと、あるわけない。
けれど、なら、どうして……?
そんな疑問が、頭の中でぐるぐる回って、
僕は、ただ、人波の前に立ち尽くすことしかできなかった。
…………。
- 78: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:48:12.65 ID:gEv9JQS10
- 授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
そういえば、僕の故郷では、お昼になるとサイレンが鳴るんだよね。
近くの山から、あの映画化したゲームよろしく、鳴り響くんだ。
何処もそうなのだろうか、ちなみにここは都会なので、鳴らないようです。
川 ゚ -゚)「……」
クーさんは、昨日ほどではないけど、眠そうだった。
現に、今もどこか呆けていて、眼もとろーんとしている。
それが意味することは……おそらく……。
川 ゚ -゚)「……」
とか思ってたら、なんかこっちを向いた。
そして、何も言わず、ただじっと僕を見ている。
(;^ω^)(……こ、これは……)
( 'A`)チラチラ
川 ゚ -゚)「…内藤君」
- 82: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:52:35.39 ID:gEv9JQS10
- (;^ω^)「は、はい…!」
川 ゚ -゚)「……お昼は」
まずい、と、頭をよぎる不安。
その時を同じくして、勢いよく立ち上がる者が居た。
_
( ゚∀゚)「うし、サイフ確認」
川 ゚ -゚)「また」
(;^ω^)「!!」
_
( ゚∀゚)「よっしゃ! ジョルジュ、突貫する」
_,
ガシッ(;^ω^)つ(;゚∀゚)「……ぜ?」
_
(;゚∀゚)「……え? 何? 何で掴むん?」
- 83: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:56:32.83 ID:gEv9JQS10
- (;^ω^)「い、行っちゃ……やだお…」
_,
(;゚∀゚)「お前……」
ジョルジュは、さりげなく尻を隠した。
我ながら、すごい速度でジョルジュを捕まえに行ったのだが、
クーさんはさして、気にする様子もなく、こっちへ歩み寄ってくる。
川 ゚ -゚)「……妹が持ってくるから、よければ、一緒にいいかな」
( A )……
やはりそういう事か。
なら、ここでジョルジュを逃がしたら、もうチェックだ。
何が何でも、行かせるわけにはいかない。
('A`)(こうなれば……次の手だ…)
( ^ω^)「わかったお、じゃあまた皆で、いいかお?」
川 ゚ー゚)「…ああ、あれも昨日が楽しかったらしくてね、張り切っていたよ」
- 90: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 22:58:46.43 ID:gEv9JQS10
- ちなみに、皆にはすでに、僕の身の上を話してある。
ほら、弁当の件で、あのままじゃ誤解されちゃうから、経緯を話すことにしたんだ、
なので、僕の境遇を知った優しい彼女らが、弁当をくれる事になった、という設定になってる。
……もっとも、実際は、ヒートさんなりの、口止め料なのだろう、
そんな事しなくても、誰にも言わないと言ってるのに、全然聞いてくれないから困る。
あ、勿論だけど、そっちはちゃんと隠しているよ。
_
(;゚∀゚)「それはいいが、とりあえず離してくれよ……」
(;^ω^)「だって、今、思いっきり学食行こうとしてたじゃないかお……」
_
(;゚∀゚)「いや、今のは、つい癖で……」
(;^ω^)「じゃあ……逃げない?」
_
(;゚∀゚)ノシ「あー、逃げない逃げない」
A`)コソコソ
('A`)(ふふふ……今の内に、隣の席に座っておけば…)
- 91: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:01:18.63 ID:gEv9JQS10
- その時、やはり先日と同じように、けたたましい足音と共に、
教室の扉が、壊れんばかりの勢いで開かれた。
ノパ听)「毎度おなじみ、スナオ便です、内藤さまへ」
ノハ*゚听)「愛情たっぷりのお届け物だぞおおおおおおおおお!!」
う……一言が余計だ……。
なんだか、ますます視線に敏感になってきたよ……。
振り向くのが怖い……。
ノパ听)「さあ! 今日もでーんと作ってきたぞ!」
(;^ω^)「って、またこんなに……クーさん、大丈夫なのかお?」
川 ゚ -゚)「…仕込みは、昨日の内にやっておいたし」
川 ゚ -゚)「それに、元々、三人分は作っていたから」
どうやら、以前からクーさん達は、お弁当持参だったらしい。
そういえば、僕はすぐ学食に向かっていたから、気付かなかった。
- 93: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:03:44.01 ID:gEv9JQS10
- (;^ω^)「う、うーん……でも、食費とかもあるし…」
ノパ听)「問題ない、少なくとも米と卵は自家製だからな!」
(;^ω^)「……?」
農家の方だったのだろうか、いや、でもこんな都会で…?
_
( ゚∀゚)】「……あ、よお、そっちはどうだ?」
ふと見れば、ジョルジュが誰かに電話していた。
携帯をいじってるのを見るたびに、いつも思うんだけど、
僕ってば、実は未だに、彼の携帯アドレスを知らない。
何だか、言うタイミングがわからなくて、ずっと聞けずにいるんだ。
でも友達としては、はやく知りたい……ああ、もどかしいなぁ。
( ´ω`)(携帯おしえて、って言うだけなのに……どうして僕は、言えないんだろう……)
A`)……
'A`)(これより、作戦行動の確認に移る)
- 95: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:06:23.75 ID:gEv9JQS10
- 'A`)(まずは、こうして内藤の近くの席を取る)
(*'A`)(そして……ここぞって所で「あれ、内藤君、お弁当なんだ」と話しかける……)
('∀`)(すると、どうだ……
ノパ听) あれ、友達か?
(;^ω^)そうだお、ってあれ? ドクオ君、お昼は?
ああ、ちょっと忘れちゃってね、ははっ
(;^ω^)それは大変だお……そうだ、よければ一緒にどうだお?
え、いいのかい?
川 ゚ー゚) たくさんあるから、遠慮はしなくていい
と、なるではないか)
(*'∀`)(そして……ふふ、内藤が人情脆いのはサーチ済み…)
(*'∀`)(完璧だ……いやーすまんねクラスメイトの諸君! あと>>92、精々羨望の眼で見てくれたまえ!!)
- 97: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:09:27.97 ID:gEv9JQS10
- ( ´ω`)「はあ……」
川 ゚ -゚)「……?」
ため息をつくと、クーさんが不思議そうに僕を見ていた。
そういえば、なんだか沈んでいる時って、いつも見られている気がするなぁ…。
何だろう、もしかして、心配でもしてくれてるのだろうか。
_
( ゚∀゚)】「おう、わかったぜぃ、じゃまたな」
ノパ听)「ささ、机寄せて!」
A`)……
_
( ゚∀゚)「ちょい待ち、ここじゃ狭いし、食堂行こうぜ」
川;゚ -゚)(……食堂…か)
ノパ听)「食堂かー…まあ確かに、あそこなら飲み物もあるもんな」
A`) !?
- 106: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:12:04.08 ID:gEv9JQS10
- (;^ω^)「え、でも…今から行っても、空いてないんじゃないかお?」
_
( ゚∀゚)「ああ、だから今ショボンに連絡したら、席とってくれたってさ」
( ^ω^)「おお、ショボン君が」
ノパ听)「よし、じゃあ行こう!!」
ノハ*゚听)「ね、お姉ちゃん!」
川;゚ -゚)「う………うん…」
A`)
`)
)
こうして、僕らはぞろぞろ食堂へ向かった。
ふと見れば、クーさんが何処かこう、落ち着かない様子だった。
(;^ω^)「どうかしたのかお?」
川;゚ -゚)「……いや、実は、食堂には、嫌な思い出があるんだよ」
- 112: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:15:33.26 ID:gEv9JQS10
- ノハ;゚听)「え!? なな、何があったの!?」
川;゚ -゚)「それが……ほら、あそこ、うるさいじゃないか」
川;゚ -゚)「どうにか、カウンターで買う所まで行ったんだけど……」
川;゚ -゚)「……その、配膳の人に、私の声が小さくて、聞こえなかったみたいで…」
それで、結局何も買えずに、そのまま帰ってしまったらしい。
ああ、確かに……あそこってみんな、我先に買うべし、と叫ぶからなぁ…。
(;^ω^)「トラウマになってるのね……」
_
( ;∀;)「ぶふっwwwwwwぎゃwwwははははははwwwwwwwwwwwwww」
川;゚ -゚)「……」
ノハ#゚听)「お、お姉ちゃんを、笑うなあああああああああああ」
_
( ;∀;)「サーセンwwwwwwwwでも、あのクーがwwwwうぇww」
ノハ;゚听)「くっ……その場に、その場にさえ居合わせていれば…!!」
ノハ;凵G)「私が代わりに叫んだのにいいいいいいいいいいいいいいい!!」
(;^ω^)「今叫ぶのかお……」
- 114: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:18:50.64 ID:gEv9JQS10
- 川 ゚ -゚)(……ほんとの事は、言えないな)
ちなみに、あとで聞いた話だが、その日はヒートさんが風邪で寝込んで、
看病やらで、弁当を作る余裕がなかった為、学食に行ったらしい。
そして、ざわめく食堂に到着すると、ショボン君がすでにご飯を食べていた。
ノパ听)「ずるいなっ」
(;^ω^)「あれ、こっちのは食べないのかお?」
(´・ω・`) 「そっちだけじゃ足りなそうだからね」
_
( ゚∀゚)「あー、俺もパンでも買ってくるかな」
川 ゚ -゚)「……男の子だな」
( ^ω^)「じゃあ、僕は飲み物とってくるお」
何となく、二人は飯が足りないというより、ただ、遠慮しているように思えた。
流石にこのまま、ずっと皆で弁当ってわけにもいかない、という事だろう。
だから、食堂に行こう、と行ったのかな、もしかして……。
- 115: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:21:38.39 ID:gEv9JQS10
- そんな事を考えつつ、見れば外は快晴、白い雲はまぶしいくらいだ。
こうして僕らは、陽気な昼下がりを、みんなでわいわい過ごしたのだった。
………。
放課後、みな開放感に浸る間もなく、一様に帰りの準備をはじめた。
それに習って、僕もカバンを机の上に投げた。
( ^ω^)「ふぅ……」
さて、今日はどうしようかな、真っ直ぐ帰るか、また散歩でもしてみるか。
立ち上がると、今更だけど思いだした、そういえば、僕の上履き……。
米仙人はどうしたのだろう、またあそこに居るのだろうか。
よもや、僕の上履きまで、あの田んぼに沈めたりしてないだろうか。
(;^ω^)「う……行った方がいい気がしてきたお…」
と、その時。
- 117: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:24:04.96 ID:gEv9JQS10
- 「ナニアレー」
「キャー、カワイイー」
「ネエ、アレッテ、クーサンノ」
「ダヨネダヨネ!」
なんだか、黄色い声が聞こえてきた。
見れば、クラスの女子数人が集い、盛り上がっている。
まあ、別にそれはいい、いいんだけど、問題はその彼女らが見ている場所。
それは、教室の入り口。
何かが、こっちを見ている。
顔を半分だけ覗かせて、じーっと見ているのだ。
川 ゚ -゚)「……シュー?」
(;^ω^)「あれって……」
米仙人ちゃんだ。
- 119: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:27:08.59 ID:gEv9JQS10
- (;^ω^)「お?」
川 ゚ -゚)「…?」
僕とクーさんは、その姿を見るなり、スポーティな瞳で、同時に立ちあがった。
そのタイミングが、あまりにバッチリだった為、思わず互いの顔を見合ってしまう。
しかし、何よりも問題なのは、いくばくかの視線が、僕を貫いたことだった。
こう…お前じゃねえ、座ってろ、的な……。
(;^ω^)「え、あー、と……どうぞ」
何だかよくわからないけど、とりあえず、もっかい席に座ってみる。
すると、クーさんは疑問符を浮かべながら、入り口へと向かった。
lw´‐ _‐ノv「あ、お姉ちゃん」
川 ゚ -゚)「どうしたんだ、こんな所まで?」
lw´‐ _‐ノv「うん、用がある…の」
川 ゚ -゚)「……ん、なんだ?」
- 120: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:29:17.22 ID:gEv9JQS10
- 「ア、シューチャンダ」
「クーサンノイモウトダッケ」
「カワイイナー」
( ^ω^)「……」
よく見ると、米仙人ちゃんは、手に何かを持っている。
あれは……そう、見覚えがある。
みんな履いてる、僕は今は履いてない、上履きちゃんだ。
(;^ω^)「…………」
僕は、何となく、悪寒にも似た、嫌な予感を察した。
これ以上、ここに居てはいけない……僕の中で、何かが言っている。
そんな心の声に促されるがまま、僕は荷物をまとめ、こっそり裏の入り口へ向かった。
- 123: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:32:14.21 ID:gEv9JQS10
- lw´‐ _‐ノv「ううん、違う」
川 ゚ -゚)「違う…?」
lw´‐ _‐ノv「用があるのは……あっち」
(;^ω^)「う……」
それは僕が、教室を出る、すんでの所だった。
クーさんと向き合う米仙人ちゃんが、クーさんを避けて、何かを指差した。
教室内には、まだ生徒たちがチラホラ残っている。
全員がではないにしろ、何人かは、その指し示す方向を向いた。
……えーと、ガンマナイフって知ってるかな?
まず人体を貫通する、たくさんの細くてか弱い光線を発射して、
それが交差する焦点にのみ、ダメージを与えるという医療技術だよ。
だからね、いくら一つ一つの線が弱くても、全てが一点に集えば、凄い威力なのね。
例をあげるなら、アバンストラッシュ・クロス、AとBを重ねることで、数倍の威力に。
- 124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/10(金) 23:34:04.34 ID:cSyXrlwN0
- 一つ一つの念が弱くても、怨みのレスを重ねる事でブーンに呪いを
125: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:35:13.27 ID:gEv9JQS10
- だと言うのに、このクラスに来てから、もう何度目だろう、これ。
これなら、もし僕の体内に癌細胞があっても、きっともう死んでるよ。
大魔王バーンも、たじたじですよ、腕を切られてポカーンですよ。
(;^ω^)(いたたた……)
lw´‐ _‐ノv「……内蔵…さん」
彼女が、ほほえみを浮かべて近寄ってくる。
だから内蔵じゃないぞう……いやごめん、何でもない。
川;゚ -゚)「……?」
あ、ほら、クーさんまで、なんかきょとん、としてるし。
(;^ω^)「あ、それ、もしかして届けてくれたのかお!?」
lw´‐ _‐ノv「うん」
僕はとっさに上履きを受け取り、ちょっと大きめの声で言った。
そう、こうなったらあれだ、上履きを無くした事にしよう、
- 129: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:37:42.14 ID:gEv9JQS10
- そして届けてくれただけなんだよ、とね。
作戦名は……さながら、コード上履き〜水没のロングブーツ〜 とでもしようか…ふふ。
( ^ω^)+「どうもありがとうだお、それじゃあ」
lw´‐ _‐ノv「それで、ね……話がある…の」
作戦失敗、はやい、はやいよスレッガーさん。
しかもなに、そのやたら意味深な台詞。
「…いい?」とか上目遣いに言われても、その、困ります…。
だって、悲しいけどここ、教室なのよね。
(;^ω^)「……なんだお?」
lw*‐ _‐ノv「えと、ここじゃ、ちょっ……と」
赤面しながらキョロキョロするのは、僕の方こそちょっと……なんですが。
て、え、何その……え、だってその言い方は…明らかに……ええ?
あ、どうしよう、背中に変な汗が。
- 130: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:40:09.73 ID:gEv9JQS10
- lw´‐ _‐ノv「…きて」
そんな僕の様子など、知るよしもなく。
米仙人さまは、僕の冷や汗まみれの、湿った手を握りなされた。
気持ち悪かったり、なさらないでしょうか。
あ、全然、気にもとめて居ないようで。
僕はそのまま、引きずられるように、廊下へ出た。
やや遅れて教室から、歓声にも似た声があがる、いや、あるいは、怒号だったかもしれない。
どっちにしても、騒ぎになったようだ。
川;゚ -゚)「……」
クーさんは、相変わらず、ぽかーんとこっちを見ている。
せめて、何か言ってくれれば、僕も言い訳なりできたのに……。
(;^ω^)「……米仙人さま、あの、どちらへ?」
lw´‐ _‐ノv「ないしょ…」
- 136: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:43:03.40 ID:gEv9JQS10
- ああ、どうか、せめてクラスの皆さんが、気付いてくれる事を願おう。
だいたい、何で誰も、突っ込んでくれないんだろう………。
このクーさんの妹と思わしき少女、長靴はいてるんですけど。
………。
そして、連れられるがまま、やってきたのは昨日の田んぼ。
ちなみに、ここまで来るまでにも、視線が怖かった、
見られてるかどうかは、わからんね、けんど、そんが逆に怖かとね。
(;^ω^)「はあ……それで、話ってなんだお?」
lw´‐ _‐ノv「うん…」
シチュエーション的には、何だかアレっぽいけど、まず在り得ないだろう。
昨夜からのちょっとした付き合いだが、それくらいはわかる。
どうせ、また何か手伝ってほしい、とかだろう。
- 138: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:45:25.86 ID:gEv9JQS10
- 僕はそう高をくくっていた、しかし……。
lw´‐ _‐ノv「まず、あの……ありがとう、昨日…は」
(;^ω^)「あ、いや、そんな改まって言われると……」
lw´‐ _‐ノv「……はじめて、なんだ…よ」
lw´‐ _‐ノv「何を言うでもなく……私と話をして」
lw´‐ _‐ノv「あんな、手伝いまで……ふつうに、してくれた…のは」
( ^ω^)「……」
しかし、何だか雰囲気がどこか違った。
やけに静かな空気の中、少女はうつむき加減に話を続ける。
僕も、そんな空気を前にして、思わず身をかしこまらせる。
だって、彼女の話すその声色は、表情は、真剣そのものだったから。
- 140: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:48:10.88 ID:gEv9JQS10
- lw´‐ _‐ノv「私…嬉しかった」
(;^ω^)「……」
どうしよう、なんだか、ドキドキしてきた。
僕は何もいえず、ただ息をのむばかり。
lw´‐ _‐ノv「私は…こんなだか…ら、あまり、仲良い人とかも……居なくて」
だけど、何となく、本当になんとなく。
何が言いたいのか、わかってきた気がする。
この子は、不器用なんだ。
そして、きっと、僕と同じなんだ。
僕と、同じものを望んでいる。
- 143: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:50:45.79 ID:gEv9JQS10
- lw´‐ _‐ノv「だから……その…」
胸の鼓動は、今でも強く響いてくる。
けれど、もうただの緊張によるものじゃない。
心に広がっていくような、そんな暖かさを持っていて。
これから訪れるであろう、言葉を待つそれは、高揚感にも似ている。
何て応えたらいいだろう、そう考えると、楽しみにすら思えた。
そう、それはきっと……。
lw´‐ _‐ノv「私と……」
( ^ω^)「……うん」
- 144: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:53:09.30 ID:gEv9JQS10
lw´‐ _‐ノv「一緒に……田植えをしてください…っ」
友達になる、という。
些細で、そしてかけがいの無い事。
そんな精一杯の願いに、僕はしっかりと頷きかえした。
言葉はいらない、最後にはそう思えた。
陽が傾いていく、けどまだ夕焼けには遠い。
風は、やんわりと吹き抜ける、音も無く。
水たまりでは、小さな波紋がひとつ、綺麗な円を描いた。
特に何もない、何でもない、いたって普通の日、普通の世界の中で。
僕らは今日、友達になりました。
- 146: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/10(金) 23:56:05.82 ID:gEv9JQS10
- …。
……って。
あれ?
………。
…………田植え……?
友達に、とかじゃ……?
…………………………え?
Open your eyes for the next time――――→
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