( ^ω^)ブーンは、春がくるたび戸惑うようです
- 2: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 20:34:53.94 ID:gloFRNAH0
- ;;; :::: ... ::::: ::;;;:::.....
;;;; ,,, 、、 ,i' :;;::.,,: 丶;;:;;:
ヾヾ ゞ ```
ゞゝ;;;ヾ :::,r' ` ` i、;;;ヽ;;; ヾ;;;
i;;;::::′~^ ` ` ;;; ″~ ~
ii;;::iヽ / ` ゞ:,,,:: ヾ 〃::;:
iii;::i ` ` ` ii;;;;::: ::
iii;;::i `D「涙の再会、はじめました」 iii;;;;::: ::
iiiii;;::i ` ` iii;;;;::: ::
iii.,ii;;:i, iii;;;;::: :::
iiiii゚i;;:i ` ` iiiii;;; :::::
iiiiiii;;::i ||iiii;;;;::::
iiiiiii;;::::ヽ;;,,';;"'';;";;""~"`"`;.";;""'"~"`~"'';;,,, /iiiiii;;;;o;;;
iiiiiii;;::;';;" `;;/i:ii iii;;;;;::::
- 4: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 20:37:08.97 ID:gloFRNAH0
- カツカツと、チョークの音が小気味よく鳴って。
壇上にたつ教師のよく通る声が響けば、それに合わせて、黒板を白い文字が埋めていく。
更に、それを黒い文字で、白いノートに生徒達が記しちゃったりしてる。
そんな、何の変哲もない授業風景だったけれど、ふと、ノイズが走る。
教室にあるスピーカーから、ブツブツ音が聞こえてくる。
そう、これはチャイムの予兆である、とか言ってる間に、きんこん鳴り出した。
从'ー'从「じゃ、今日はここまでにするよ〜」
そんな教師の言葉は、さながら自由への招待か。
ざわざわ喧騒が室内をつつみ、ある者は立ち上がり、ある者は鞄をあさる。
時刻はお昼、みな空かせたお腹を満たすべく、それぞれ動き始めた。
だがしかし、僕はまだノートに全部うつし終えてないんよ、ち、ちょっと待って…。
_
( ゚∀゚)「おーし、はやいとこ食堂行こうぜー」
川 ゚ -゚)「……」
(;^ω^)「お、もーちょい、待ってお」
- 6: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 20:39:54.92 ID:gloFRNAH0
- 慌てながら、カリカリとペンを駆る。
ってああ、日直の人、まだ消しちゃらめぇ。
しかし、そんな願いもむなしく、まだ書いてない部分は粉になった。
(;^ω^)「ああ……駄目って言ったのに…」
頭の中でだけど。
_
( ゚∀゚)「ほれほれ、いいから行こうぜー」
(;^ω^)「うん…」
まあ、確かに、全部を書きうつす必要は無いやね。
僕は机の上を片付けて、立ち上がった。
すると、隣に座るクーさんも、同じく席を立つ。
ちなみに、今日のクーさんはメガネっ娘だったりする。
横にほそながい形で、額縁の小さな学者っぽい眼鏡、なんだかとても知的だ。
- 7: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 20:41:44.89 ID:gloFRNAH0
- とは言えども、べつに目が悪いわけでは無く、
あった方がよく見えるから、たまーにしているそうだ。
川 ゚ -゚)「……ノート、あとで貸しましょうか?」
( ^ω^)「わーい」
しかも、心なしか優しそうに見える、いやまあ、普通にいつも優しいんだけど。
メガネ効果か、こう、温和な感じがするというか。
…ていうか、なんか、いま、口調すらいつもと違ったような……あれ?
川;゚ -゚)「あ…それと、私も、その、一緒に行って……いいですか?」
(;^ω^)「へ? そりゃあ、勿論、いいんじゃないかと…」
_
( ゚∀゚)「…………」
こうして、三人で連れ立って、僕らは長い廊下を行けば、
あいかわらず、ジロジロ見てくる人たちが居る、なんだかなぁ。
- 8: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 20:43:47.59 ID:gloFRNAH0
- …それと、さっきから気になってたんだけど。
今日はクーさん、お弁当持ってきてる、普通のサイズのお弁当箱。
まあ、それはいいんだ、持ってるのはおかしくない。
問題なのは、なぜ、二つ持っているのか、という事だ。
( ^ω^)「……?」
川;゚ -゚)「……ど、どうしたの?」
と、そんな僕の視線に気付いたのか、クーさんは疑問符を浮かべる。
しかもちょっと、おどおどしてる、あれ、こんなキャラだったっけ……?
何か、視線もちゃんと合わせようとしないし。
身体をちょっと縮こめてるし。
まるで、気弱な子って感じだぞ、本が似合いそう。
とか何とか考えていると。
川 ゚ -゚)「…ああ、そうか」
と、何かを思い出した素振りを見せ、
青い布にくるまったお弁当を、僕に差し出してきた。
- 10: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 20:45:58.33 ID:gloFRNAH0
- ( ^ω^)「えーと……?」
川 ゚ -゚)「…君の分だよ」
(;^ω^)「え……え?」
川 ゚ -゚)「妹は、今日は寝坊してね…だから、私が用意しておいたんだ」
(;^ω^)「あ、ありがとう…だお」
何で、と困惑しながらも、とりあえず、受け取った。
ていうか、用意しておいた、って……え、ええ…なんでクーさんが…。
あ、そっか、そういえば、二人で作ってたんだっけ。
…いやいや、ちょっと待って。
僕はさ、前にちゃんと断ったんだよ、お弁当。
けどヒートさん、頑なに僕の分は用意すると、全然聞いてくれなくて、
だから、もうしょうがない、いずれ飽きるだろう、と思ってたんですよ?
つまり諦めるのを待ってたんですよ。
そこで、クーさんが作っちゃったら、果てなき先までつづくロードじゃないですか。
(;^ω^)「あの…クーさん、別にその、無理して作ってくれる必要ないんだお?」
川 ゚ -゚)「別に、無理はしていないよ」
- 11: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 20:48:45.17 ID:gloFRNAH0
- どのみち、三人分は作るのだから、変わらないとクーさんは言う。
そ、そうなんだろうか…僕は作った事ないから、それは謎だけど、とにかく、
なんかね、クーさんに作ってもらう、ってのはまた、なんか違う気がします。
(;^ω^)「でも…」
「悪いよ」と言えば「気にするな」と返ってくる。
遠慮しても遠慮しても、頑として遠慮するなと言う。
……何故、姉妹そろってこう…あれなんだろう。
そうして、ひたすら遠慮を続けながら、食堂を目指した。
その道中。
ちょうど人波の途切れた階段で、不意にクーさんの声色が変わった。
変わった、ていうか。
ぐす、って、鼻をすするような。
あれ? え?
ちょっとあの。
川 - )「そんなに……いや、か?」
- 12: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 20:51:06.86 ID:gloFRNAH0
- Σ(;゚ω゚)「!?」
やや掠れ気味の、ひねり出したような声だった。
あと、伏目がちだけど、瞳がうるんでいたのが、見えてしまった。
川 - )「……ぐす」
いや、ちょ、え、え?
えええええええええええええええええ、ななななな、なぜにホワーーーイ!!
どどどどどどどどうしよう!!
いや待て! 落ち着け! これは孔明の罠だ!!
_
(;゚∀゚)「おいおいおいっ、何いきなり泣かしてんだよ!?」
我関せず、といった感じで、前を歩いていたジョルジュだったけど、
さすがに異変に気付いたのか、慌てて立ち止まった、そして何したんだと僕に問う。
ええ、僕も知りたいです><、いや、それどこじゃないって、
こんなとこ、誰かに見られたら、と思ったけど、それは手遅れだった。
通り行く人は、めっちゃジロジロ見てくるし、それ以外にも…ひぃ。
- 13: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 20:53:27.98 ID:gloFRNAH0
- 川 - )「……」
あわわわ……そんな悲しそうな瞳で、ど、ドナドナが。
そう、まるでドナドナ、見ているよ、瞳で、悲しそうなドナドナ。
あわわわわ……。
(;゚ω゚)「あ、あのクーさん? どどど、どうしたんですかお…?」
川 - )「……あの子が持ってきたときは、喜んでくれてたのに…」
川 - )「私が持ってきたら……私のは、や…なのか……?」
えーと、まあ、あれは喜んだというか、空気を読んだというか、なんですが。
確かに……ここで否定しまくるというのは、そういう見方になるかもしれませんね。
うん、なる。
確かになる、なるよね……なるのか?
……なるの? え、ほんとに…?
- 15: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 20:56:15.84 ID:gloFRNAH0
- (;゚ω゚)ノシ「ちちち違うちがう違うお! 全然まるっとそんなことないお!!」
(;゚ω゚)「嫌とか、そんなのありえないお!! むしろ喜びキャパシティオーバーで!」
川 - )「……」
(;゚ω゚)「えーっとおおお、とにかくですね、ありがたく頂戴する次第でありまして!!」
( ;ω;)「その、ご、ごめんなさああああああああああい!!!!」
そうして気付けば、僕らは小さな人だかりの中心に居た。
( A )
僕はなぜか、周囲から白い目で見られていた。
僕はなぜか、そんな中で必死こいて謝っていた。
僕はなにか悪いことをしたのだろうか。
でも、各方位から視線と言う殺気が飛んでくるし、
今、会談の踊り場に、不穏な空気が流れていますし。
あ、しかも、なんかいま舌打ちが聞こえた。
ひいいい!
- 17: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 20:59:11.37 ID:gloFRNAH0
- ……。
食堂に着けば、すでにショボン君とヒートさんが居たけれど、
二人も、さっき到着したらしく、席は埋まっていて、空きは無い。
d('∀`)ノシ
とほー、と途方にくれて、そのまま僕らは立ちすくむ。
その時、たぶん早弁の人だったんだろう、ちょうどよく空いてくれて、
よかったよかったと、一安心して、僕らは席についた。
d('A`)ノ
(´・ω・`) 「はあ、やれやれ…しかし、そっちも遅かったね?」
_
(;゚∀゚)「ああ、ちょちトラブルがな…」
川 ゚ -゚)「うん、内藤君が急に泣き出しちゃって」
ノハ;゚听)「ほんとだ、目が赤いぞ」
( ω )「…………」
- 19: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:02:13.60 ID:gloFRNAH0
- ちなみにクーさんは、もうすっかり、いつもの調子に戻っていた。
というか、眼鏡を外したら、すっかりいつもの調子に戻っていた。
その、あまりの豹変振りに、思わず訪ねてみた。
川;゚ -゚)「…どうも、な…眼鏡してると、相手の顔がよく見えるから…」
気恥ずかしくなって、つい性格も変わってしまうらしい、ついって何さ……。
ていうか、それ、普段はあまり見えてない、って事なんだろうか。
_
( ゚∀゚)「そういや、今までメガネモードの時は、いつも以上に無口だったっけな」
(;^ω^)「お…でも、別にさっきは無口って感じじゃ無かったけど…」
_
( ゚∀゚)「ああ、それは俺も意外だったわ」
ノパ听)「お姉ちゃん、けっこう人見知りするから」
川 ゚ -゚)「……」
(´・ω・`) 「正反対なんだねぇ…見習えばいいのに」
ノハ;゚听)「…な、なんで私を見るんだっ」
…こっちも、何かあったんだろうか。
- 21: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:04:26.57 ID:gloFRNAH0
- _
( ゚∀゚)「……しっかし、あれだな、ほんと、話してみると印象って変わるもんだなぁ」
( ^ω^)「…お?」
川 ゚ -゚)「……?」
ジョルジュは、クーさんを見ながらぽつりと言った。
_
( ゚∀゚)「ぶっちゃけ俺さ、スナオの事、根暗で無口で貞子みてーだと思っ」
ノハ#゚听)「なんだと貴様ああああああああああああああ」
_
(;゚∀゚)「ちょww落ち着けwwwwまだ話の途中だって!」
ノハ#゚皿゚)「ガルルル……」
ああ、そういえば考えてみると…。
ジョルジュって、全然クーさんに興味なさそうだったもんなぁ。
いわゆる、下心を感じない、だからこそ、僕はあの日、ジョルジュに助けを求めたんだ。
(´・ω・`) 「それで? 今はどうなの?」
- 22: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:06:28.76 ID:gloFRNAH0
- _
( ゚∀゚)「つまんねーくらいにフツーな奴なんだな、って思った」
ノハ#゚皿゚)「どういう意味じゃわれえ!」
_
(;゚∀゚)「変な意味じゃねーよ! だからその、なんだ…」
川 ゚ -゚)「……」
何だろう、ジョルジュは、何かを言いあぐねている。
しかし、やがてああーっ、と声を荒げて、頭をくしゃっと掻いた。
_
(;゚∀゚)「実はな、こいつから聞いちまったんだけどよ」
ノハ;゚听)「え、ちょ、おい! こら言うなやめろ!!」
_
( ゚∀゚)「その弁当さ、初日以来、スナオがずっと一人で用意してたんだろ?」
え?
川;゚ -゚)「……」
え? 一人で、って、何? どういうこと?
- 24: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:09:31.68 ID:gloFRNAH0
- 困惑する僕をよそに、あちゃーっとヒートさんは顔をしかめ、
クーさんは、やや俯き加減に、目をそらした。
(;^ω^)「え、と……どういう事だお?」
_
( ゚∀゚)「言った通りの意味だよ、つーか、ヒートは部活の朝練あるからな
もともと連日で弁当の用意なんざ、できるわきゃねーの」
ああ、なるほど……そこに気付いたジョルジュが、
同じ部活をやってるヒートさんに、問い詰めたわけか……。
ノハ;´凵M)「あうぅ………面目ない」
(;^ω^)「いや、それはいいんだけど……じゃあ」
じゃあ、何でクーさんは、僕の分まで用意したんだ?
もしかしたら、頼まれたのかもしれないけど、でも、それじゃおかしい。
何せ、僕はちゃんとヒートさんに断っているのだ、用意しなくていいって。
んで、今までの、彼女がとるクーさんへの態度を考えれば、
それでも作らせるような、そんな図々しい真似をさせるとは、到底思えないのに。
- 26: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:12:06.10 ID:gloFRNAH0
- 川 ゚ -゚)「…それは……」
(´・ω・`) 「内藤君へのお弁当、っていう理由が、もし無くなってしまったら、
もう、今みたいに皆で過ごせなくなってしまう、と…思ったから?」
コップの水をくいっと飲み干して、ショボン君がさらりと言った。
沈黙は、肯定だけを示していた。
そして……何となく、僕にもわかってきた。
そう、そうなんだ。
だからいつも、クーさんだけが眠そうだったんだな、うん。
じゃなくて。
クーさんが、誰かと話しているとこなんて全然見ない。
きっと、それはつい最近じゃなくて、ずっと、前から…。
そして、そんなクーさんが、皆にとっての当たりまえだった。
- 28: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:14:08.02 ID:gloFRNAH0
- それで、平気なんだと思っていた。
だけど、そんなこと、全くなかった。
いや、むしろ、あるわけないじゃん。
平気なわけないじゃん。
忘れるわけないじゃん。 ……――見慣れたはずの部屋は、別世界のようで緊張し
僕は真っ暗な部屋に座りこみ、石のように固まって
目は冴え頭もすっきりしてるのに、体だけ動かなく
カーテンを閉める人が居ないから、夜が外に広がっ
ひどい耳鳴りがする、鼓動の音だけが生きてる事を
あの、静寂の家をさ。 何も考えられない、頭の中が真っ白で何も思い――……。
一人、たった一人。
自分ひとりだけ残された、あの寂しさを。
- 30: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:17:47.18 ID:gloFRNAH0
- なんにもない、本当になにも無い、耳鳴りだけが響く、あの虚しさ。
過ぎ去る日々が、何も残せずに終わってしまう、あの絶望感。
それはまるで、アナル攻めで到達してしまった後の、
賢者の時間がくれた、悲しさにも似て。
もう、普通のでは満足できないんじゃないか、
と、思ってしまうような、恐怖にも似ている。
( ω )「…そして、自分の指が尻の奥へ沈んでいく時の、あの不安にも似て」
川;゚ -゚)「……!?」
そうだ、僕は知ってる、一人の悲しさ、それ以上に、つまらなさを、僕は知ってるんだ。
思えば、最初に惹かれたのも、そのせいだったのかもしれない。
かつての僕のように、塞ぎ込んでいるだけなんじゃないか、と。
- 33: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:22:30.68 ID:gloFRNAH0
- だからこそ、わかるんだ。
クーさんは、怖がっている。
変わる事を、恐れている。
周りの人間が、こうだと決め付けた人間の偶像。
きっと、その像を少しでも動かしたら、皆、奇異の目を向ける。
そして、それを一人で壊すには、とてつもない勇気が必要だ。
けど、それを出来なかったのだとしたら、それはクーさんの弱さでしか無い。
自分で勇気をだして動かなきゃ、何も変わらないのは当然だ。
つまり同情すべき点はなに一つない、弱い奴が悪い、これ真理。
( ω )「……クーさん、僕は」
川;゚ -゚)「……な、なに? 何の暴露…?」
- 34: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:24:32.80 ID:gloFRNAH0
- だけど、残念ながら、僕もその弱い奴なんだよね。
誰かの助けが無けりゃ、生きる事すらできないような、弱っちい人間だ。
だから助け合おうとする、弱い僕らは、手を取り合う。
誰かの力があって、ようやく歩けるくらいで、ちょうどいいんだと思う。
だって、それが……。
( ^ω^)「クーさんが、すごく優しくて、すっごく面倒見がよくて
そんで、すんごくいい人だって事くらい、初めて会った時から知ってるお」
川;゚ -゚)「……え」
ノハ--)「うんうん、当然だな」
川;゚ -゚)「……」
( ^ω^)「まさに都会に相応しいって、そう思ってるお」
いきなりの褒め殺し、クーさんは目をぱちくりさせている。
ヒートさんは「今頃気付いたのか?」と何故か誇らしげだった。
うーむ…しかし、いきなりこんなの言っても、わけ分かんないだろうなぁ。
ていうか、なんだろう、異様に困惑してないか…気のせい?
- 35: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:27:23.52 ID:gloFRNAH0
- けどいいさ、どうせ他になにも思いつかないし、心のままに伝えるんだ。
きっと、僕なんかには、それくらいしか、できやしないんだから。
川;゚ -゚)「…内藤君…?」
( ^ω^)「だから、僕と、友達になってほしいんだお」
川;゚ -゚)「……」
( ^ω^)「お弁当とか、そんな見返りなんかなくても、こうやって一緒に過ごして、
くだらない事だって話して、遊びにいったりもして、それで…」
( ω )「……それが、いつか、幸せだって気付けないくらい、当たり前になって」
( ^ω^)「喜んだり、怒ったり悲しかったり、楽しかったりしながら」
( ^ω^)「この先ずっと、みんな一緒に笑えているような、
そんな友達になりたいって…僕は、そう思ってるんだお」
- 38: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:29:40.08 ID:gloFRNAH0
- 川 ゚ -゚)「……」
ノハ*゚听)ノシ「お、おおっ、おう!! わたしも! 私もだ!!
私もそう思うぞおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
_
( ゚∀゚)「あwwwwいいんじゃねーのwwwwwwww?」
(´・ω・`) 「青春だねぇ」
_
( ゚∀゚)「お前も、乗wwwれwwwよwwwwwwww」
(´・ω・`) 「乗ってるさ、もちろん」
……よかった、みんな話に合わせて、乗ってくれた。
そんな安心に喜びが混じって、僕の顔もほころぶ。
川;゚ -゚)「……」
やがて、クーさんは、揺れる瞳で、僕らを見渡した。
…ほとんど、僕の勝手な憶測で言ってしまったから、
クーさんがどう思ったか、わからない。
しばしの無言、これは失敗かな……と、ちょっと怖くなってきた。
- 41: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:31:35.70 ID:gloFRNAH0
- けれど、そんな僕の戸惑いを打ち消すように。
クーさんは、くしゃっと表情を崩し、柔らかな笑顔を咲かせて。
「ありがとう」と言った。
確かに、はっきりと、そう言った。
しかし、それ以上に。
(;^ω^)「……!」
その笑みを前に、僕はこみ上げてくる何かを、どうにか飲み込んで、
代わりに言葉を失った、ついでに、顔がかぁーっと熱くなるのを感じる。
「美しい」と「可愛い」そんな二つの感情が同時に起きて、軽いパニック状態です。
川*゚ー゚)「……?」
ぎゃあ直視できない、浄化される、お日様を前にした、吸血鬼のような気分だ。
だってだって、あれは卑怯だよ、なにこの、なに?
ギャップとでも言うのか、普段が無表情なぶん、余計にくる。
だけど、見ていると、暖かくて心安らぐような、ずっと見ていたいと思うような…。
正に、神が与えたもうた極上のスマイル、これが0円なんて、おこがましいと思わんかね。
- 43: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:32:48.51 ID:gloFRNAH0
- ふと横を見れば、ジョルジュとショボンの二人も、気恥ずかしそうにしていた。
ヒートさんに至っては、手を組んで、なんか、泣きながら笑ってる。
ノハ;凵G)「ぐすぐす……お、おでーちゃん、よかったね…ひっく…」
そして、タイミング悪く、いや良くか。
現場を目撃してしまった、一部生徒たちの視線も、釘付けみたいです。
まるでクーさんを中心に、風が吹き抜けたように、ざわめきが走る。
「・・・・」ガシャーン!!
「ウワ!? 落トスナヨ!」
わーわー
「チョット、ミルナクン! ドコミテルノヨ!」 ざわざわ
どよどよ 「ハッ、ゴメ」
「ナンダナンダ?」
( A )フッ パタリ
ざわ・・・ 「オイ! 誰カ 倒レタゾ!?」
どよどよ
ぎゃーぎゃー 「ダレアノ子?」
「カワイイ・・・」
そして、波紋になって、やや広がった。
- 44: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:34:13.04 ID:gloFRNAH0
- _,
(;-∀-)(……不覚…俺としたことが…おっぱいも出てない女なんぞに…)
(;´-ω-`) (むぅ……不意打ちとはいえ…)
そんな周囲と、僕らの戸惑いなど知るよしもなく、
クーさんは、少し意地悪げな笑みを浮かべて、僕を見た。
ま、まだちょっと、ドキドキしてるのは、いかがなものかだけど。
川 ゚ー゚)「けど…ふふっ……都会に相応しい、か…」
( ^ω^)「おっお、そうだお、クーさんなら都会の一角を担えるお」
(´・ω・`) 「ああ、それでも都会の頂点にはいかないんだね」
ノハ;゚听)「厳しいんだなー」
( ^ω^)「それはしょうがないお、だって都会だもの」
_
(;゚∀゚)「……俺、おまえのその感性だけは、よくわかんねえや…」
(;^ω^)「……名前が似てるだけあって、やっぱ言う事も似てるお…」
- 46: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:35:38.65 ID:gloFRNAH0
- _,
( ゚∀゚)「ん? あんだって?」
( ^ω^)「や、なんでもないお」
从 ∀从 都会都会って、お前は、都会村の住人か
……何故か、ふと高岡の事を思い出した。
来たメールは、片っ端から消してたけど…たまには。
たまには、連絡を取ってみようかな、と、ちょっとだけ思った。
……けど。
从 Д从 もういい! 好きにしろこの馬鹿ァ!!
いざ実行を考えると、正直、気が引けるんだよねぇ。
それにほら、居ないからこそ、美化してるのもあるだろうし。
- 47: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:37:44.56 ID:gloFRNAH0
- 川 ゚ -゚)「ところで、内藤君」
( ^ω^)「なんだお?」
川;゚ -゚)「尻に指が沈んでいく不安って言うのは、なんの事だったんだ?」
(;^ω^)「ええ!? そ、そんなこと、僕言ってないお!?」
_
(;゚∀゚)(言ってたよな……)
(;´・ω・`) (言ってたね……)
ノハ*゚听)(す、好きなんだろうか……ドキドキ)
いや……そ、そんな馬鹿な……言ってないぞ。
ちょっと頭の中で考えただけで…。
あれ…言ってない……よね…?
………。
- 48: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:40:07.99 ID:gloFRNAH0
- 放課後になりました、ふぅ、と一息ついて、カバンを机の上に投げた。
それぞれ、思い思いの言葉を投げては、教室を出たり、談笑したりしている。
今はもう落ち着いてるけど、お昼から戻ってきてからがまた、大変でした…。
何が大変って、そりゃ……。
_
( ゚∀゚)「さーて、とっとと部活いくか」
( ^ω^)「お、んじゃ僕も帰るお」
軽い挨拶をかわす僕らの前を、長髪をなびかせ、クーさんが横切る。
しかし、ふと立ち止まると、体を半分、顔だけこちらへ向けて。
川 ゚ー゚)「…じゃあ、また明日」
_
(;゚∀゚)「お、おう、んじゃーな」
(;^ω^)「ばいばいだお」
穏やかな目で、ふっ…と笑った、とても自然な笑顔だった。
そして、背筋を伸ばし、綺麗な姿勢で去っていく。
- 49: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:42:57.64 ID:gloFRNAH0
- そう、あれから、クーさんはずっとこの調子だ。
僕ら限定とは言え、無愛想で笑わない、なんてのは、もはや都市伝説。
顔を合わせれば、その度にクーさんは微笑み、そろそろ心臓がやばい。
今までは、なんていうか、細く、切れ味するどい目、な感じだったけど。
今は、こう、まんまるおめめで、ぱっちりしていて、実に女の子らしいというか。
……改めて思う、クーさん、とんでもない美人だ。
_
( ゚∀゚)「……なあ、内藤」
( ^ω^)「……なんだお?」
と、なんだかジョルジュが、ちょっと照れた様子で口を開いた。
やはり、思うところは同じ、って所だろうか。
_
(*゚∀゚)「……おっきい横乳って……いいよなぁ」
(;^ω^)「そうですか……」
そうでもなかった。
- 51: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:45:06.83 ID:gloFRNAH0
- 僕は、恍惚の表情をうかべる友人に、激励の言葉をのこし、席を立った。
すると、ジョルジュは慌てて追いかけてきて、言い訳をはじめた。
_
(;゚∀゚)「待て、誤解すんなよ? 俺は、服着た女にゃ興味ねーからな?」
(;^ω^)「それ、別の誤解を招くと思うんだけど…」
_
(;゚∀゚)「いや、だからさ、俺はあれで判断するって決めてんだよ」
(;^ω^)「……あれ?」
_
( -∀-)「ああ…男の夢が包まれた、やんごとなき膨らみ、その名を」
_
( ゚∀゚)o彡゜「おっぱ(;^ω^)ノシ「は、恥ずかしいから…!」
天下の往来、廊下と言う場で、変態行為をとる友人を、僕は必死に止めた。
なんだか、周りからくすくす笑われている、まあ、失笑で済んでよかった。
(´・ω・`) 「…君ら、何やってんの?」
- 52: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:47:13.64 ID:gloFRNAH0
- ショボン君いわく、ジョルジュは、海やプールなど、
女の子が水着になる場所で、運命の相手を見つけると決めているらしい。
だから、服を着ている女の子には興味ないそうだ。
_
( ゚∀゚)「そうすりゃあ、嘘偽りのない、本物のおっぱいで判断できるってもんよ」
しかも、すごい誇らしげに……。
(;^ω^)「……………馬鹿?」
_
(;゚∀゚)「んな、なんだとぉ!?」
(;^ω^)「ていうか、水着だって、今時よせてあげてるもんじゃないかお」
_
(;゚∀゚)「それでも、ガッカリ率は桁違いだろうが!
つーか、お前だって、人を都会っぽいかどうかで見てるじゃねーか!」
( ^ω^)「僕のは内面的なものだお、要は性格が大事だと言ってるだけだお」
_
( ゚∀゚)「でもさ、都会っぽくないってだけで、たまにすげー冷たくなるじゃん、お前」
(;^ω^)「そ、それは……」
- 53: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:49:17.22 ID:gloFRNAH0
- _
( ゚∀゚)「なー、ショボン、内藤の方が馬鹿だよなー?」
(´・ω・`) 「んー、五十歩百歩、って知ってる?」
_
(;゚∀゚)(;^ω^)「………」
ノハ )「……お前ら」
(;´・ω・`) 「って、あれ? スナオさん?」
気付くと、ヒートさんが居た。
いったい、いつの間に…。
とか思っていると、満面の笑みを浮かべて。
ノハ*゚∀゚)「三馬鹿トリオ……って感じだな!!!!」
とても元気に、そう言った。
あ、なんかそれって、素敵な響き……。
- 56: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:51:40.89 ID:gloFRNAH0
- (*^ω^)「さ、さんばか……」
ノハ*゚ー゚)(エロゲに出てきそうだwwwwww)
(li´・ω・`) 「ちょちょ、ちょっと待ったぁ! 今、それ僕も入ったよね!?
そこに含まれるの、本気で勘弁してほしいんだけど!」
_
(;゚∀゚)「おいショボン! どういう意味だそれ!!」
(*^ω^)「そうだお! ひどいお!」
_,
(;゚∀゚)「内藤! お前も喜んでんじゃねえ!!」
ノパ听)「ほらほら、ジョルジュは早くしないと、部活遅れるぞ!」
最後にそう言うと、ヒートさんはスカートを翻し、赤い髪をなびかせ、
僕らに背を向け、廊下を走りだした、それを二人は慌てて追いかける。
ノパー゚)「ギコ部長に、また怒鳴られたいのか!」
_,
(;゚∀゚)「げっ……そりゃ勘弁…」
(;´・ω・`) 「いや、ちょっと、訂正してよ!!」
- 57: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:53:24.33 ID:gloFRNAH0
- そして、僕はぽつんと一人、取り残され。
るかと思いきや、ヒートさんが走りながら振りかえり、
ノハ*゚听)ノシ「じゃあな内藤!!」
健気にも、ぶんぶん手を振りながら、叫んだ。
しかも、とてもとても、嬉しそうに、楽しそうに。
……恥ずかしい。
何もあんな、遠距離から叫ばなくてもいいのに……。
ほら、なんか道行くみんな、目で追ってるし。
最近、こんなのが多くて、そろそろ怖いんだよ……。
ノハ*゚听)ノシ
(;^ω^)「…あ、あはは…」
しかし、ヒートさんは、お構い無しに手を振りつづける。
けど、手を振り返すのもなぁ、うーん……しょうがない。
苦笑いを浮かべて、ひとつ、うなづき返してみた。
- 60: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:55:40.28 ID:gloFRNAH0
- ノハ#゚−゚)ノ「………」
すると、むー、って感じで頬を膨らませて、僕を睨んできた。
……どうあっても、僕に手を振らせたいらしい。
それにしても、表情がころっころ変わるなぁ。
ノハ;凵G)「………」
ほら、今もころころ変わって…かわ…………ぶっ!?
ななななんですと!? え、そこ泣くとこだった!?
しかも、ついには、膝をついて、両手で顔を覆い、さめざめと泣き始めてるし。
あ、ここで僕が背を向けるとさ、なんか僕がこう、捨て去るみたいな、だよね。
なんだというのか。
ああ、もお……。
(;^ω^)ノシ「ば、ばいばいだおーーーーー!!!!」
ノハ*゚听)ノシ
う……嘘泣き……だ…と…?
- 61: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 21:58:36.38 ID:gloFRNAH0
- ……。
さて、この後はどうしようかな……>>50。
1、猫さんに呼ばれてたっけ
2、田んぼの手伝いに行こう
3、真っ直ぐ帰ろう
4、どっか寄り道して行こうかな
クリア回数 0
※選択可能範囲 1〜1
※(選択可能範囲は、クリア回数によって増加)
……。
- 63: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:00:39.94 ID:gloFRNAH0
- ポケットに手を入れると、何かが触れた、例のバッジだ。
そういえば、誰かに聞こうと思ってたのに、すっかり忘れていた。
……てか、猫さんに放課後、来てくれとか言われたっけ…。
いつでもいいとは言ってたけど、行ってみようかな。
(;^ω^)(…あ、でも……)
米仙人に、田植えを手伝うとか言っちゃったんだ。
どうしようかな……まあ、後で見に行けばいいか…。
ていうか、そもそも、まだ田植えのシーズンじゃないし…。
……。
結局、気になるので見に行ってしまった。
しかし、水田には誰も居なかった。
…やっぱり、シーズンじゃないからか。
そんなわけで、僕は中庭に向かうべく、校舎へと戻ってきた。
- 66: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:02:08.19 ID:gloFRNAH0
- 学校の中庭、それは校舎の中心にある、大きな広場のことで、
噴水があったり、ベンチがあったり、公園みたいな場所だった。
四方を、高くそびえる校舎に囲まれ、ずらっと窓が並ぶその様は、圧巻の一言。
はるか彼方に見える天窓は、暗くなり始めの空を映していた。
そんな公園内にて、砂地をじゃり、と踏みしめ、僕は行く。
(;^ω^)「えーと……」
生徒の姿はちらほら見えるが、肝心の猫さんは見当たらない。
しょうがないので、とりあえず、そこらのベンチに腰を下ろした。
噴水の水しぶきの音が、涼しげに響いてくる。
風もなく、空気も穏やかで、時間だけがくれていく。
外から入り込んだ喧騒は、校舎の壁を反響して、小さくこだました。
( ^ω^)(……叫んだら、おもしろそう)
とか思ったけど、さすがにそれは、恥ずかしい。
なので、手を叩いてみた、パンッ、てね。
- 67: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:04:49.09 ID:gloFRNAH0
- すると、やや遅れて、かなり上のほうからパンッ、と音が響いた。
(;^ω^)「なにぃ……」
いかん、これは楽しいぞ、も、もっかい…。
……タァン!>
( ^ω^)「てい」パン
すげー! なにこれ! やまびこってやつ?
面白い面白い、わーい、もっかいもっかい!
あ、拍手したらもっと凄いかも、わくてかわくてか!
- 68: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:07:18.36 ID:gloFRNAH0
- ……そうして、どれくらい待っただろう。
とりあえず、手が赤くなってしまって、とても痛い。
あと、もしかして、僕はすごく寂しい人間じゃないかと気付いて、心が痛い。
制服姿の生徒たちは居なくって、体操服の人たちが目立ってきた。
なんと、いつのまにか、部活が終わるくらいの時間になっていたらしい。
どうしよう…このまま居てもなぁ…。
だいたい今は放課後、校舎内に、生徒は居ちゃいけないんだよね。
といっても、校舎外、いわゆる運動場とか、そういうのは平気だけど、
校舎内には、立ち入り禁止になっている、ほら、私物とかあるから。
ここは、特にそれが厳重で、夜は警備の人がたくさん見回ってるらしい。
うーん……帰ろうかな…。
あ……その前に、ちょっともようしてきたぞ…。
- 69: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:09:30.46 ID:gloFRNAH0
- (;^ω^)「うー、トイレトイレ」
そんなわけで、僕は校舎の一階にある、トイレを目指した。
道中、数人の部活上がりの女子生徒たちと、すれ違った。
あのラケットに、金……いや、黄色いボール、テニス部の方々らしい。
ヘアバンドに、汗に濡れてまとまった髪、なんだか、あれだなぁ。
おつかれさまです、僕は内心呟きながら、先を急ぐ。
今、トイレを求めて全力疾走している僕は、
この学校に通う、一般的な男の子。
強いて違うところをあげるとすれば、腹話術が得意ってとこカナ。
そんなわけで、校舎の一階にあるトイレにやってきたのだ。
すると……女子トイレから、一人の若い女子が出てきた。
ζ(゚、゚;ζ「……え…」
前全開のジャージ姿で、しばし呆然と僕を見つめてくる。
うほっ、いい透けブラ。
- 72: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:12:12.40 ID:gloFRNAH0
- ζ(////*ζ「〜〜〜〜〜っっ!!」
(;^ω^)ハッ
そう思っていると、女子は恥ずかしそうに頬を染め、
突然、僕の見ている前で、ジャージのホックをあげはじめたのだ。
ζ(゚−゚;ζ「……」
いかん、胸見てたのが、すごい勢いでばれたっぽい。
しかし凄いな今の、クーさんより大きかったんじゃ…。
いや、ていうか……この子って……見たことある、っていうか。
ζ(゚、゚;ζ「あ、あの……」
(;^ω^)「お?」
ζ(゚、゚;ζ「……ど、どうして…」
(;^ω^)「え、ええ!?」
どうして、どうしてと来たよ、何がどうしてなんだ、どうしてって、どうして?
ていうか、何だろう……これ、気のせいかな。
この子……もしかして……。
- 74: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:14:24.64 ID:gloFRNAH0
- ::ζ(゚、゚;ζ::「……」
もしかして……怯えてる?
ちょっと、なんか、震えてるっぽいし。
頬は赤く染まって、エメラルドグリーンの瞳は不安に揺れている。
……いや、そりゃそうか、こんな時間に、校舎で見知らぬ奴があらわれて、
しかも、透けブラを凝視されたんだもの、そりゃ警戒するよね。
……いけない、ここで変な噂がこれ以上たったら、命にかかわる。
とにかく、僕が透けブラを見に来たわけではないと、説明せねば。
(;^ω^)「い、いや、違うんだお、決してそうではなくて…」
ζ(゚、゚;ζ「え……?」
(;^ω^)「ちょっと待ってたら、こんな時間になっちゃって、そんで、
僕ってばのんけだから、ほいほいトイレに来ちゃって、それでその」
ζ(゚、゚;ζ「……!」
- 77: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:16:51.11 ID:gloFRNAH0
- ζ( 、 ;ζ「……ーン……」
デレさん、らしき人は、急に俯いてしまった、
柔らかそうな金色の髪が、表情を覆う、うなじに張り付いた髪がちょっとえっちだ。
ζ( 、 ;ζ「わ……を…待って……れ…たん…ですか……?」
あ、しかもなんか俯いたまま、ぼそぼそ喋ってる。
聞き取りづらい、そうとう怖がられてるなぁ、これ……。
しかし、なんていうか、聞いてた印象と、えらい違うんだなぁ。
……いくらんでも、ここまで怖がるのは酷いんじゃなかろうか……。
とか思ってたら、あ、顔あげた。
げ。
なになに、ちょっと、なんか、目がうるってるんですけど。
ぼ、僕って……そこまで危ない人に見えるんだろうか…。
流石に、そろそろ、傷つくなぁ……あはは……。
だがしかし、くじけている場合じゃない。
とにかく、今は説明して、とっととこの場を去ろう、それが一番だ。
- 78: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:19:35.94 ID:gloFRNAH0
- (;^ω^)「あ、あの……デレさん、ですよね?」
ζ(゚、゚*ζ「………え」
名を呼んだら、反応をしめした。
ていうか、ちょっと様子が変わった。
何ていうか、おどおど感が和らいだというか。
これはチャンスだ、と、僕は言葉の洪水をあびせかける。
(;^ω^)「僕はその、いちおう、同じクラスの、ほら、こないだ転入してきた、
内藤というしがない一生徒でして、決して危険人物などでは…ない…
ないんじゃ…ないかなーと思うんですよ!」
(;^ω^)「だから、そ………」
すると、言葉も途中に、驚くべき事態が起きてしまった。
ていうか、あまりの事に何が起きたのか、理解できなかった。
ζ(;、;*ζ「………っ…う……ぐす」
(; ω )「………!?!?!?!?」
- 80: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:22:10.38 ID:gloFRNAH0
- 一度、頬を涙が伝ったのが見えて、そこからはもう、一気に、だった。
ダムが決壊、なんて表現がしっくりくる、ぶわって出て、ぽろぽろこぼれていく。
ど、え、え、な、なにこれ、どうしよう。
ζ(;−;*ζ「う……………やだ……わたし………うぅ……っ」
その場で、石のように固まる僕に対し、
デレさんは、嗚咽をもらしながら、何度も何度も涙を拭っていた。
僕も、何度も何度も、浮かんだ思いを否定した。
言うべきだと、思うのに、何かがそれの邪魔をして、言葉が出ない。
何も出てこない、何やってるんだ、僕は何やってるんだ、なにやってんの?
やがて、実際の時間より、ずっと長く感じる間を置いて。
ζ(;、;*ζ「ご、ごめんなさい……!!」
そう言って、顔を見られないよう、覆い隠し、
僕の横を通り抜けて、暗くなり始めた外へと駆けて行った。
彼女が通り過ぎると、風に乗って、汗の匂いがした。
そして、取り残された僕は、ただ、呆然と、その場で立ち尽くすことしかできなかった。
- 81: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:26:46.85 ID:gloFRNAH0
- (;゚ω゚)「………」
違う、違う、そんなはずはない。
だから、わけがわからない。
わけがわからないのに、何で、こんなに、苦しいんだろう。
胸が張り裂けそうなくらい、罪悪感めいたものが押し寄せる。
いたたたた……立ってるのも、ちょっと辛い。
よろよろ壁に寄り添って、そのままへたり込んだ。
どうしよう…眼に、焼きついてしまった。
悲しみに歪んだ、瞳、あの色。
何故か、僕の記憶と重なって、デジャヴとして認識された。
泣きたいくらい、胸が痛いのに、熱いものは込み上げてくれない。
ていうか、なんか腹の奥底が冷たい、冷めてる、ああ、そのせいか。
- 83: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:29:11.72 ID:gloFRNAH0
- ああ、もう、全然泣けないぞ、なんじゃこりゃ。
それが、あまりに歯がゆくて、僕は呻き声だけをもらした。
(; ω )「……え…」
ふと、彼女が去った方を見た、そこに、一人の生徒が居た。
すでに外は暗くなって、校舎の灯りが、スポットライトのように彼を照らしている。
僕はその姿に、掠れた声で、疑問符をこぼした。
けど、今回はなによりも、とにかく怖かった。
何でかは、わからない、表情なんてまったく見えやしないのに。
僕を見る、彼が。
友達になりたい、話をしたいと願ったはずの、
モララー君の姿が、あまりにも怖くて、僕はその場を逃げ出した。
見えないはずの視線が、背中に刺さっている気がして……痛かった。
- 87: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:32:41.63 ID:gloFRNAH0
- ……。
無人の廊下に、足音を響かせて、僕は走る。
走って、走って、走り続けて。
廊下の曲がり角に、差し掛かった所で。
目の前に、人が飛び出してきた。
(;゚ω゚)「!!」
「うおわあっ!?」
というより、僕が歩いていた人に、僕が突っ込む形だ。
小さな人影だった、急ブレーキで立ち止まる、足はむりやり止めたけど、
しかしながら、体はそうもいかない、慣性の法則は、なかなかやる奴だから。
そして、法則の赴くままに、僕はその人を押し倒すように、倒れこんだ。
って、いかん、このままでは、倒した人が頭から倒れるぞ。
- 89: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 22:35:07.91 ID:gloFRNAH0
- 瞬間的に、幸か不幸か、そこまで察した。
同時に手が伸びて、抱きかかえる、そして引っ張る。
顔がぐい、と近づくけど、お約束は回避だ。
ていうかどう考えても、頭をぶつけないように避けるでしょ。
とか考えている間に、床へ衝突、二人分の重みが両腕にかかる。
ゴリッて感じの音がした、あと膝も強打した、これは痛い。
ていうか痛い、すげー痛い、けど我慢だ、男の子だもの…。
そして、妙に軽い体を、抱きかかえたまま、しばしの間を置いて。
四つんばいの状態で、よろよろ身を起こせば、そこに居たのは……。
(;^ω^)「……ご、ごめんなさい、大丈夫ですかお…?」
(;*-∀゚)「てぇなあ……なんだってんだよ……」
って。
(;^ω^)「猫さん!?」
(;*゚∀゚)「お前…!?」
- 99: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 23:13:35.50 ID:gloFRNAH0
- 誰も居ないはずの、ちょっと不気味な、夜の校舎で。
僕は、押し倒した少女を、上から見つめて。
少女は、押し倒してきた僕を、下から見つめていた。
あまりに突然すぎて、二人揃って、きょとんとするばかり。
(;*゚∀゚)「な、なんでお前、ここに…」
(;^ω^)「え、いや、だって…猫さんが来いって…」
(;*゚∀゚)「あ、ああ…それは、そうだけど……」
(;^ω^)「?」
(*゚∀゚)「……とりあえず、そこ退け」
(;^ω^)「は、はい!!」
僕は慌てて飛びのいた、肘と膝に鈍痛が走った。
でも、表情には出さずに堪えた、がまんがまん……。
- 102: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 23:15:15.68 ID:gloFRNAH0
- (;^ω^)「あの…怪我は…?」
(*゚∀゚)「俺は平気だ、てか、お前だろ、お前、変なこけかたしてなかったか?」
猫さんが、心配そうに僕をのぞきこんでくる。
……いきなり抱きつかれ、押し倒されコンボの直後だと言うのに、
どうして、こうまで平然と、しかも僕の心配できるんだろう。
いっそ、不思議に思えた。
そして、今の僕には、そんな優しさがこたえた。
体の痛みは、むしろ胸の痛みを払ってくれる。
だけど……ああっ、やめて、そんな目で見ないで。
( ;ω;)「いやっ、やめてよ! 優しくしないで!!!!」
(*゚∀゚)「……」
殴られた、とても痛い。
( #)ω^)「……ごめんなさいでした」
(*゚∀゚)「ああ」
- 103: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 23:17:14.62 ID:gloFRNAH0
- (*゚∀゚)「で………なんだ、何かあったのか?」
僕はすっ頓狂な声をあげた、しかし、猫さんは真剣な目で僕を見る。
いちおう、とぼけてはみたけども、茶化すなと怒られた。
(*゚∀゚)「あんな、尋常じゃない面して走ってきたら、誰だって何かあったと思うだろ」
それはごもっともで、しかし、こんなのは、人様に話せる事じゃない。
……いたたた、思い出したら、また痛くなってきた。
息苦しい、胸が痛い……うぼぁ……。
(*゚∀゚)「……」
(*-∀-)「はぁ……また、ひどい顔しやがって」
(; ω )「ひ、人の身体的特徴をどうこう言うのは、よくない…お」
(*゚∀゚)「……辛いか?」
(; ω )「え…」
猫さんの、何気ない問いかけ。
それに、僕は応えようと顔をあげた、その瞬間。
- 106: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 23:20:05.08 ID:gloFRNAH0
- 猫さんが、片足を持ち上げた。
む、見えそう、いや、見えないな、小さいし…。
ていうか、この姿勢。
これ知ってる、やくざキックだ!
(#*゚∀゚)「おらあ!!」
(; ω )「ごぶぇ!!?」
腹部に、ていうか鳩尾に、凄まじい衝撃を受けて、呼吸が止まった。
痺れのような感覚が、一気に全身に広がると、続けて激痛。
うめき声すら、あまりに痛くて出せない、僕は膝をついた、これがまた痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い……。
- 107: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 23:24:29.97 ID:gloFRNAH0
- あんまりにも痛くて、気付いたら、目に熱いものが込み上げてきた。
僕は、それを堪えることなく、溢れさせた。
涙が、ぽろぽろ流れて、床にぽたぽた落ちていく。
(*゚∀゚)「……」
猫さんが、僕を見下してる。
ひ、ひどい……。
だけど、何処にも行かずに、そこに居てくれた。
( ;ω;)「う……」
酷いし、痛いし、悲しくて。
もう、我慢できず。
僕は声を張り上げて、小さな子供のように泣きじゃくった。
- 109: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/26(日) 23:28:08.58 ID:gloFRNAH0
- 夜の校舎に、僕の、あまりに情けない泣き声が響く。
だけど、もうそんなの構いやしなかった。
泣いて、泣いて、泣き疲れても、まだ泣いた。
はて、これは一体、どうしたものか。
今度は、ぜんぜん止まらないよ。
そして、猫さんは、それでも黙ったまま。
ただ、ただ、側にいてくれた。
Open your eyes for the next falls down――――→
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