( ^ω^)最終電車のようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 22:56:59.16 ID:Vlxlg+Hr0

 チンチンチンチン

警笛が聞こえてきた。

 チンチンチンチン

警笛は遠ざかっていった。


( ^ω^)


目の前にいる男は、妙にそわそわした様子で、先ほどから携帯をいじくっている。
数分後、意を決したかのように席を立つと、通路を挟んだ隣の席の横に移動した。

(´・ω・`)「はい?」

( ^ω^)「どうも」

最初から席に座っていたショボンは、急に男が近づいてきた事で、読んでいた雑誌を閉じて顔を上げた。

( ^ω^)「すいません。駅につくまでで良いので、少しお話でもしませんかお?」



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 22:57:58.67 ID:Vlxlg+Hr0


( ^ω^)最終電車


      のようです(´・ω・`)



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 23:02:10.01 ID:Vlxlg+Hr0

男はブーンと名乗った。
男が名乗ると、ショボンも名前を名乗った。

( ^ω^)「すいません急に」

(´・ω・`)「いえ、いいんですけど」

ショボンは不審そうな眼差しでブーンを見つめている。

( ^ω^)「旅行、ですか?」

ブーンはショボンの足下を見て言った。

(´・ω・`)「ああ、このケースですか」

ショボンは一度咳をしてから、ブーンに言った。

(´・ω・`)「休暇を取って海外にでも行こうと思いまして。今日はこのケースを買っただけなんですよ」

ブーンはなるほど、というように大きく頷いた。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 23:07:21.24 ID:Vlxlg+Hr0

( ^ω^)「良いですね。僕も旅行に行きたいもんですお」

そう答えてから、ブーンは電車の窓から見える高層ビル群を眺めた。

( ^ω^)「仕事、仕事、仕事ですからね」

(´・ω・`)「大変そうですね」

ショボンは表情を変えず、ブーンの横顔をじっと見つめながら言った。

(´・ω・`)「そんな事を聞くために、話しかけてきたのですか?」

ブーンはショボンを怒らせてしまったとでも思ったのか、手を合わせて謝った。

( ;^ω^)「用事という用事は無くて、ただ一人が寂しかったもので。
      最近仕事以外で人と話す事が無いんですお」

そう言ってから、ブーンはもう一度だけ「すいません」と謝った。
人の良さそうな男だ。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 23:11:08.08 ID:Vlxlg+Hr0

(´・ω・`)「お仕事、何なされてるんですか?」

ハンケチを取り出し、顔を拭き始めたブーンに、ショボンは言った。

( ^ω^)「一応、警部として働いていますお」

ショボンは開きかけた雑誌を閉じ、ブーンの顔に視線を合わせた。
一瞬だけ探るような目つきをしていた。

(´・ω・`)「ほう、素晴らしいですね」

( ^ω^)「何がですか?」

適当な相づちだったのか、聞き返されたショボンは返答に困っていた。

(´・ω・`)「いえ、市民を守る警察という仕事が、ですよ」

当たり障りの無い返事だったが、褒められて嬉しかったのか、ブーンは顔をほころばせた。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 23:15:32.13 ID:Vlxlg+Hr0

( ^ω^)「大したもんじゃありませんお」

(´・ω・`)「謙遜を」

( ^ω^)「いえ、本当に。仕事が出来ない男だから、仕事に追われている訳なんですお」

(´・ω・`)「なるほど」

二人は声を上げずに笑い合った。

( ^ω^)「ところで貴方の職業は?」

ショボンの喉が、微かに上下した。

(´・ω・`)「小説家です。この年になっても、全然売れていませんけど」

小説家と聞くと、ブーンは目を見開いて驚いていた。

( ^ω^)「凄いですお! 小説は大好きですお。今まで何を書かれていたんですお?」

(´・ω・`)「あの、本当にマイナー作家なので、聞いてもわからないと思いますよ」

ここまで食いつかれるとは思っていなかったらしく、ショボンはたじろいでいる。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 23:20:01.52 ID:Vlxlg+Hr0

( ^ω^)「今日会ったのも何かの縁ですし、今度小説を買う時、探してみますお」

ショボンは諦めたように天井を仰いだ。
顔をもう一度男に向けると、ショボンは言った。

(´・ω・`)「『凡庸の悪魔 汎用の天使』というタイトルです。もう絶版になってるから、探しても無いかも」

ブーンは嬉しそうに幾度か頷いた。

( ^ω^)「いつもいく古本屋ならあるかもしれませんお。ありがとうございますお」

(´・ω・`)「いえ、こちらこそ。読んで頂けるなら、私も嬉しい」

会話が止まった。

 ガタン ゴトン

 ガタン ゴトン

電車が規則正しく揺れる。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 23:26:17.87 ID:Vlxlg+Hr0

( ^ω^)「小説といえば」

(´・ω・`)「はい?」

雑誌に目を落としていたショボンは、ブーンの声に反応して即座に顔を上げた。

( ^ω^)「最近お勧めのものとかあります?」

一瞬ショボンの動きが止まった。
数秒してから、ショボンは口を開いた。

(´・ω・`)「ありません」

ブーンはぽかんと口を開けた。

(´・ω・`)「ああ、えっと、最近は忙しくて、あまり読んでいないんですよ」

( ^ω^)「へえ。小説家は、一日一冊くらい本を読んでるかと思いましたお」

(´・ω・`)「ははは。私は速読なんて出来ませんから」

( ^ω^)「ふうん」

ブーンはじろじろとショボンの顔を見ている。
視線から逃げるように、ショボンは俯いて雑誌のページをめくった。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 23:30:05.74 ID:Vlxlg+Hr0

( ^ω^)「忙しいんですか」

(´・ω・`)「え、ええ、この時期になると、ちょっとね」

ショボンの視線は雑誌に固定されている。
ただし目線は文字を読んでいなかった。

( ^ω^)「それなのに旅行?」

(´・ω・`)「今の仕事が一段落すれば、ですよ」

ブーンはこくりと頷いてから、はっと思い出したように呟いた。

( ^ω^)「そういえば、小説家って有休あるんですね。ちょっと驚きました」

(´・ω・`)「え?」

ショボンはようやく顔を上げた。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 23:35:34.62 ID:Vlxlg+Hr0

( ^ω^)「さっき休暇を取って温泉に行くって言ってたじゃないですか」

(´・ω・`)「ああ、ええ、そうなんです。私雑誌のライターも兼ねていまして。本業はそっちなんです」

ショボンは慌てて付け加えた。

( ^ω^)「何の雑誌ですか?」

(´・ω・`)「これですよ」

ショボンは膝の上に広げている雑誌を指さした。

(´・ω・`)「これの街角ラーメンコーナーを任されているんです」

( ^ω^)「見ても良いですかお」

(´・ω・`)「これですよ」

開いているページに記事があるらしく、ショボンはもう一度指さした。

(´・ω・`)「ただし今は駄目です。恥ずかしいですから」

ブーンが手を伸ばそうとしたら、ショボンは雑誌を閉じてしまった。

( ^ω^)「うーん残念です。今度買ってみます」



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 23:39:23.32 ID:Vlxlg+Hr0

( ^ω^)「雑誌の名前は?」

ショボンは雑誌の表紙をちらっと見た。

(´・ω・`)「『ライク ア ウォーカー』です」

( ^ω^)「ありがとうございますお」

覚えようとしているらしく、ブーンは口の中で何度か雑誌の名前を呟いた。

( ^ω^)「あ」

(´・ω・`)「何です?」

今度のショボンの反応は早かった。

( ^ω^)「温泉じゃなくて、海外でしたっけ?」

ショボンは何のことだかわからなかったらしく、首を傾げた。

( ^ω^)「ほら、今度行く旅行」

理解するまでの間、ショボンの動きがまた止まった。

(´・ω・`)「まだ、未定です」

ショボンは呻くような低い声で答えた。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 23:44:25.51 ID:Vlxlg+Hr0


 ガタン   ガタン


 プシュウウゥゥ


電車が駅に着いた。
二人はちらちらと顔を見合わせているが、どちらも降りる様子は無かった。

( ^ω^)「何処で降りるんですか?」

(´・ω・`)「ああ、ブーンさんは?」

ブーンは、どうして聞き返されたかわからないようで、少し戸惑っていた

( ^ω^)「三つ先の駅です」

(´・ω・`)「私は、五つ先です」

ショボンは即答した。
本当に彼が降りたいのは、二つ先の駅なのだが、下車駅をブーンに知られたくなかったのだ。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 23:48:37.44 ID:Vlxlg+Hr0

ブーンは訝しむ様子も無く、そうですかとだけ言った。
彼の様子に安堵したのか、ショボンの喉が、また少し動いた。


 プシュゥゥウゥ

 ガタン     ガタン

 ガタン   ゴトン

 ガタン   ゴトン


電車が動き出した。

( ^ω^)「僕も最近忙しいんですお」

携帯を開こうとしているショボンに、ブーンが言った。

(´・ω・`)「お仕事で?」

( ^ω^)「ええ」

ショボンはあまり乗り気じゃなさそうな返事をした。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/12(日) 23:56:13.96 ID:Vlxlg+Hr0

( ^ω^)「最近起こった事件の捜査が難航しているんですお」

(´・ω・`)「それは大変ですね」

ショボンは携帯を操作し始めた。
ブーンからは見えないが、彼の指はでたらめにボタンを押していた。

( ^ω^)「ほら、連続ばらばら殺人事件」

ショボンの指の動きが少し速くなった。

(´・ω・`)「あー、ニュースで見ました」

( ^ω^)「残忍な事件ですよね。死体をばらばらにして天井から吊すなんて」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 00:01:32.73 ID:t7LjY9CJ0

(´・ω・`)「今何人やられているんでしたっけ?」

( ^ω^)「この前品川で見つかった死体で、もう八人目ですお」

(´・ω・`)「恐ろしいですね。貴方は大丈夫そうですが、私は気を付けないと」

( ^ω^)「どうしてですかお?」

(´・ω・`)「え?」

ショボンの指の動きが止まった。
彼は携帯のディプレイとブーンを交互に見渡していた。

( ^ω^)「殺されているのは一人暮らしの若い女性ばかりですお」

一瞬の沈黙があった。

(´・ω・`)「そう、ですね。私は対象外か」

( ^ω^)「まあでも、犯人の目的がわからない以上、危ないのは変わりませんか」

ショボンは携帯をポケットにしまった。
すると今度はブーンが携帯を取り出して、操作を始めた。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 00:06:24.52 ID:t7LjY9CJ0

( ^ω^)「犯人は絶対頭のおかしい奴ですよね。
      猟奇殺人犯の考える事はたぶん一生理解出来ないお」

(´・ω・`)「そうですね」

( ^ω^)「殺したいだけなら首でも絞めて殺せば良いのに。頭が悪いとしか思えないお」

(´・ω・`)「あー」

( ^ω^)「絶対まともな奴じゃないお」

ブーンはメールでも読んでいるのか、携帯を注視している。
ショボンは窓から見える、流れる景色を見ながら言った。

(´・ω・`)「ばらばらにする事に意味があるのかも」

( ^ω^)「どういう意味ですか?」

携帯を見ていたはずのブーンは、ショボンの方を向いていた。
ショボンは横目でちらちらとブーンを見ながら続けた。



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 00:12:40.33 ID:t7LjY9CJ0

(´・ω・`)「例えば、宗教的な意味とか」

ブーンは肩をすくめて鼻で笑った。

( ^ω^)「無いですお。ただいかれているだけですお」

ブーンは再び携帯を操作し始めた。
ショボンは一旦座り直してから言った。

(´・ω・`)「じゃあ、運びやすいとか」

( ^ω^)「何ですか、それ」

ブーンは携帯を見続けている。

(´・ω・`)「ばらばらにすれば、運ぶのも楽じゃないですか。
      一旦別の場所でばらばらにしておいて、被害者のアパートに死体を持って行った。
      そう考えられませんか?」

ブーンは携帯ごしにショボンをちらっと見た。

( ^ω^)「凄いですお。本当はまだ機密事項なんですが、その通りです。
      害者は別の場所で殺されてから害者の自室に運び込まれている。
      犯人はあくまで、飾り付けをする為に害者の部屋に乗り込んでいるんです。
      よくわかりましたね」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 00:17:54.88 ID:t7LjY9CJ0

(´・ω・`)「いや、別に」

ショボンは言いよどんだ。

(´・ω・`)「ふぅ、寒いな。この電車、エアコンがかかり過ぎだ」

( ^ω^)「ばらばらにする点については、実はこちらでもそうだと思っていたんです。
      問題は飾り付けの方ですお。犯人が何の為に害者をばらしたのか、まだわかっていない。
      ばらばらにしたのは飾り付けの為でもあると思うんですが、どうでしょうか?」


 ガタン    ガタン

 プシュゥゥゥウ


電車が駅に着いた。

( ^ω^)「どう思います?」

無視しようとしていたらしいショボンは、びくっと肩を揺らした。

(´・ω・`)「さあ、私には何とも」

それ以降、電車が駅を発つまで、二人は無言だった。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 00:23:43.88 ID:t7LjY9CJ0

( ^ω^)

(´・ω・`)

ブーンは携帯を、ショボンは外の景色を、お互い目を合わせる事無くぼんやりと眺めている。

( ^ω^)「ご家族は?」

(´・ω・`)「結婚ならまだですよ」

ブーンの唐突な質問に慣れ始めているのか、ショボンは頬杖をつき、景色に顔を向けたまま言った。

(´・ω・`)「貴方は?」

( ^ω^)「さっきもちょっと言ったけど、一人暮らしですお」

(´・ω・`)「お互い寂しい身ですね」

( ^ω^)「恋人とか?」

(´・ω・`)「きっと貴方と同じですよ」

ショボンの瞳に、窓の外を流れる景色が反射している。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 00:32:34.52 ID:t7LjY9CJ0

( ^ω^)「ああ、僕はいるんですお」

(´・ω・`)「え?」

( ^ω^)「一応、恋人というか何というか、それらしい女性は」

ショボンとブーンは一瞬の間見つめ合った。

(´・ω・`)「貴方一人暮らしって……いや、仕事以外では人と喋らないって言ってたじゃないですか」

( ^ω^)「そうなんですお。その、彼女も同じ警部なので」

ショボンは口を半開きにして、ブーンの顔を見つめている。
裏切られた、とでも言いたげな表情だった。

( ^ω^)「仕事が忙しくなったら、プライベートではめっきり顔を合わせなくなって。
      今の捜査に区切りがつけば、一緒にデートでも行こうと思っているんですお」

恥ずかしいのか、ブーンはぽりぽりと頭を掻いた。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 00:36:41.91 ID:t7LjY9CJ0

( ^ω^)「恋人は」

(´・ω・`)「いませんよ。欲しくもありませんが」

ショボンの返事は素っ気なかった。

( ^ω^)「女性に興味が無いのですかお?」

(´・ω・`)「別にホモセクシャルではありませんけどね」

( ^ω^)「あはは。でも僕と違ってもてそうなのに、勿体ないですお」

ショボンはそっと下唇を噛んだ。
まばたきの回数が増えている。

(´・ω・`)「勿体ないというのは変ですよ。女性との付き合いは、必ずしも有益であるとは言えない」

( ^ω^)「どうしてですかお?」



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 00:43:30.56 ID:t7LjY9CJ0

(´・ω・`)「女性は感情的にものを言うじゃないですか。
      どれだけこちらが正しくても、決して謝らないし、そもそも悪いと思っていない。
      自分勝手でわがままで、面倒な事を任せる癖に主導権は握りたがる。
      金の出費だって相当なものだ。あいつらは食事の代金は払わなくて当然だと思ってる」

( ^ω^)「なるほど」

ショボンの呼吸が荒い。

(´・ω・`)「まあ、全ての女性がそうである訳では無いんですが」

一呼吸置いてから、付け加えるように言った。

( ^ω^)「何か女性関係で悪い思い出でもあったんですか?」

ブーンの遠慮のない質問が飛ぶ。

(´・ω・`)「そういう訳では無いんですが」

ショボンは落ち着きを取り戻そうとしているかのように、声を抑えて言っているようだった。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 00:48:34.55 ID:t7LjY9CJ0

( ^ω^)「そういえば、また事件の話に戻りますが」

ショボンの喉が大きく動いた。

( ^ω^)「事件の犯人は、きっと女性に対して深い恨みがある者だと思うんですお。
      死体を傷つける犯人っていうのは、大抵は感情的な動機に基づいて犯行を犯しますから」

(´・ω・`)「ほう、なるほど。しかし無差別殺人で恨みが晴れるもんなんですかね」

( ^ω^)「特定の女性ではなく、女性の存在そのものに恨みがある者の犯行。
      捜査本部はこう見解していますお」

(´・ω・`)「ああ、そうか。鋭いですね」

( ^ω^)「え?」

(´・ω・`)「え?」


 ガタン  ゴトン

 ガタン    ガタン


 プシュゥゥゥゥゥウ


駅に着いた。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 00:53:35.75 ID:t7LjY9CJ0

( ^ω^)

(´・ω・`)

( ^ω^)「今何て言いました?」

降りる客がいたらしく、足音が遠ざかっていくのが聞こえた。

(´・ω・`)「いやあ、鋭い推理で、探偵顔負けだなあと。
      正解かどうかは別にして、警察はそうやって犯人を特定していくんですね」


 チャラン


小気味よい効果音が流れた。
メールが来たらしく、ブーンが携帯を取り出した。

( ^ω^)「動かすのは足だけじゃないお」

ブーンはメールの返信をしつつショボンに答える。
歳の割に、指の動きは速かった。



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 00:58:10.99 ID:t7LjY9CJ0

(´・ω・`)「降りるのはここじゃ無いんですか?」

( ^ω^)「次の駅ですお。貴方は何処でしたっけ?」

電波状況が悪いらしく、ブーンは携帯を持った腕を高く振り上げた。
彼の視線はディスプレイに向いていて、ショボンの方は見ていない。

(´・ω・`)「次の、次の次です」

( ^ω^)「よし。送れた」

ブーンが腕を下ろした。

( ^ω^)「二つ先って事ですかね」


 プシュゥゥウゥウ

 ガタン   ガタン


電車が動き出す。

(´・ω・`)「三つ先です」

ブーンは返事をしなかった。



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 01:01:20.09 ID:t7LjY9CJ0

 ガタン  ゴトン

 ガタン  ゴトン


最終電車は音を刻む。


( ^ω^)「しつこいようですけど」

(´・ω・`)「また事件の話ですか」

ブーンはきょとんとした顔を見せた。

( ^ω^)「いえ、小説の話を聞こうかと。事件の話の方が面白いですかね」

(´・ω・`)「いや、それは」

( ^ω^)「犯人がどうやって死体を運んだか、なんですがね」

ショボンの言葉を遮って、ブーンが話を続けた。



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 01:05:31.52 ID:t7LjY9CJ0

( ^ω^)「ばらばらになった死体をどうやって運んだが、ショボンさんはわかりますかお?」

ショボンは詰まらなそうに口をとがらせた。

(´・ω・`)「手で持ち歩くのは不可能ですよね」

( ^ω^)「何でです?」

(´・ω・`)「そんな事もわからないのですか?」

( ^ω^)「一応意見を聞いておこうと思って。
      捜査が詰まっているので、何か参考にでもなればと思っているんですお」

(´・ω・`)「素人の意見を聞いてどうするんですか」

( ^ω^)「違った視点から見て初めて見えてくるものもありますお」

ショボンの頬が引きつったようにぴくぴくと動いた。
舌打ちを我慢したようにも見えた。



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 01:12:04.40 ID:t7LjY9CJ0

(´・ω・`)「まず、人目につく」

( ^ω^)「近い場所に住んでいたら、人に見られる可能性は少ないですお。
      住宅街を夜中にうろつく人はあまりいませんから」

(´・ω・`)「それに死体はばらばらなんでしょう。
      人間の手は二つしかない。手足が切り刻まれている人間をどうやって運ぶっていうんですか」

( ^ω^)「そうですね。あれ?」

(´・ω・`)「え?」

ブーンは考え込むように顎に手を置いた。
ショボンは彼の様子をじっと凝視している。

( ^ω^)「手足がばらばらって、何で知っているんですかお?」

(´・ω・`)「それは……」

ショボンの言葉は続かない。



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 01:15:14.45 ID:t7LjY9CJ0

ショボンの喉が何度も上下する。
唾を飲み込む頻度が極端に増えてきた。

( ^ω^)「あ!」

(´・ω・`)「え……」

( ^ω^)「あー! すいません」

(´・ω・`)「何、何が」

ショボンは蚊が鳴いているような声で聞き返そうとする。
ただしタンが詰まっているのか、上手く喋れないでいた。

( ^ω^)「これは機密でも何でもなく、何処でも報道している事でしたお」

(´・ω・`)「ああ、あー」

ショボンの肩ががくっと下がった。
彼のうろたえた様子とは違い、ブーンは飄々としている。



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 01:20:23.72 ID:t7LjY9CJ0

( ^ω^)「続けてくださいお」

(´・ω・`)「へ?」

( ^ω^)「死体をどうやって運んだか、ですお」


 ガタン ゴトン

 ガタン ゴトン


(´・ω・`)「布か、何かでくるまれていた、とか」

ブーンは渋い顔をして唸った。

( ^ω^)「それは無いと思いますお。それぞれの死体の場所は、相当離れている。
      きっと犯人は何らかの交通手段を使って死体を運んだはずですお」

(´・ω・`)「じゃあ……」

( ^ω^)「運んでいてもおかしくないものに、死体は入っていたんですお。
      例えば、その旅行用のケースのように」



95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 01:23:51.21 ID:t7LjY9CJ0

 ガタン ゴトン

 ガタン ゴトン

 ガタン ゴトン

 ガタン ゴトン

 ガタン ゴトン


(´・ω・`)「あ」

かなり間が空いてから、ショボンは言った。

(´・ω・`)「車。車で運べばいいんですよ」

ブーンは舌を出して、ペロッと唇を舐めた。

(´・ω・`)「車なら運んでいてもばれない。人目にもつかない。
      犯人は車を使って死体を運んだんです。どうですか、この推理」

 ガタン ゴトン

 ガタン ゴトン

 ガタン ゴトン



99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 01:30:26.53 ID:t7LjY9CJ0

( ^ω^)「違いますお」


 ガタン  ガタン


駅が近いとアナウンスがあった。
同時に電車の速度が落ちてきた。

( ^ω^)「犯人はもっと賢かった。ナンバーを見られるのを恐れて、車で移動はしなかったんですお。
      とあるホームレスの証言があります。大きなケースを持った人間が、駅から出てきた。
      時間を照らし合わせると、それは最終電車でしたお。
      その人物は始発が出る頃に駅に帰ってきたらしいですお。やはりケースを持って」


 ガタン       ガタン


( ^ω^)「駅の監視カメラで映像を確認したら、三十代から四十代くらいの男が、確かにケースを持っていましたお」


 ガタン             ガタン


( ^ω^)「それから僕は毎晩、最終電車に乗り続けましたお。
      カメラに映った男を捜すために」



105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 01:35:05.17 ID:t7LjY9CJ0


  ガタン



( ^ω^)「それと、ケースの蓋、ちょっと開いてますお?」

(´゚ω゚`)



 プシュゥゥゥウゥゥ


扉が開く音がした途端、ショボンは立ち上がり、逃げ出した。
しかし彼が通路に飛び出した時、彼の体は宙を舞い、床にたたき付けられた。

ξ#゚听)ξ「手錠!」

彼の背中を押さえつける女性が見えた。

( ^ω^)「おう!」

カチャリという金属の音が聞こえた。



111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 01:38:36.80 ID:t7LjY9CJ0

ξ#゚听)ξ「ブーン! ケースを!」

女性が叫ぶ。
他にも大勢の警官の足音が聞こえた。

ブーンがケースを開ける。
中に入っている私と目が合うと、彼はにっこりと笑った。

( ^ω^)「良かったお。死体じゃなくて」

麻酔を打たれた体は、意識こそあれど声も出せない状態だった。
お礼を言う代わりに、私はにっこりと笑った。



 −了−



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