Vocaloid達がジグソウのゲームに参加させられたようです。

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 23:11:35.08 ID:cOzNXfJZ0
目が覚めたとき、自分が何時寝たかと言う事に気がつかなかった。

ミク「ここは、……どこ?」

散らかった薄暗い部屋の中のイスに、ミクは腰掛けてた。
手足は固定され、硬いイスに長いこと寝ていたから体中が痛かった。

ミク「なんなの?これ……」

もやが掛かっているかのような意識で、現状をゆっくりと確認していく。
暗い部屋。裸電球。固定された手足。目の前には机に乗っている大きな銀色の箱。ボコボコッという音。
強制的に奪われたであろう意識がゆっくりと覚醒してはきているが、理解不能な状況が多すぎる。

ミク「なんなの…………。ここ、は。どこ?」

当然の疑問。
と、同時に。手に握られていたカセットテープに気がつく。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 23:15:06.20 ID:cOzNXfJZ0
固定された手で、そのテープの再生機の角度を変えながら見てみると、プッと小さく何かが切れる音がした。

そして、そのカセットテープにはガムテープが張ってあり、癖の強い文字で「PLAY ME」の文字。

ミク「何……これ」

疑問だらけである。全てに対する答えが与えられていない。
しかし、寝ぼけているような頭だからこそ。そのカセットテープの再生ボタンにすぐ、指が伸びた。

サーッと言う砂嵐のような後。声が聞こえてきた。

http://www.uploda.org/uporg1724269.3gp



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 23:18:05.98 ID:cOzNXfJZ0
気味の悪すぎる声に全身に鳥肌が立つ。

ミク「―――ッ!!キャアアアアアアアアアッ!!」

悲鳴が遅れて出てきた。
何がなんだかわからない。
が。しかし。
首元からは何かの時を刻むようなチッチッチッチッチッという小刻みな音が聞こえる。

そして。



ポチャンッ。



そんな軽い音と共に、ボゴボゴと音が鳴る深緑色の液体の中に黒い箱が落下した。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 23:22:47.93 ID:cOzNXfJZ0
カシャンと音を立てて、手足の枷が外れた。
それと同時に荒い呼吸を落ち着けようと、胸を押さえ、床に倒れこんだ。

ここは何処なのか。誰にも気がつかれていなかったと思った自分の罪を何故知る者が居るのか。
ゲームとは一体なんなのか。爆弾とは一体なんなのか。制限時間とは一体なんなのか。


頭の中には次から次へと疑問系の問が浮かぶ。

しかし。
首を横に曲げると、自分の首につけられた時計の中を0を目指して60から逆送する秒針が見える。

ミク「ああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

死から逃げられぬ首輪のように、首につけられた鉄の首輪をはずそうと、首をかきむしった。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 23:24:43.06 ID:cOzNXfJZ0
ブシュッ。

血の飛沫が床へと飛ぶ。

ミク「外れないッ!!外れないッ!!!!」

既に時を刻む秒針は40を切った。

もし。

もし、これが。




本当に爆弾だったら!!!!



ミク「―――ッ!!!」

意を決し、ミクはその銀色の大きな水槽の前へと立った。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 23:28:32.98 ID:cOzNXfJZ0
※注 王酸とは腐食性のもっとも強い混合液です。この場面で濃緑色をしているのは、何処に箱があるのか解らなくするためにジグソウが何かをあらかじめ溶かしたか、着色したのでしょう。

水槽の前へとは立ったが。
それは、腐食性が強い液体であると共に、揮発性が非常に強い液体でもある。
つまり、言ってしまえば毒ガスにもなりえるのだ。

……近寄れない。
意識が遠のくような臭気に、体が拒絶反応を示す。

ミク「ウッ……ウウッ」
涙があふれる。
なぜ、こんな事態になったのか。


いや。

そんなコトを考えている余裕は、後30秒も残されていない。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 23:32:57.82 ID:cOzNXfJZ0
大きく息を吸い込む。
まだ、今は動く手で涙をぬぐう。

戸惑い、躊躇、迷い、後悔、懺悔、悔恨。

それらは今、一切の価値を持たない。
ただ。自らを傷つけ、生を得るためには。

手を――――――。




ミク「キィヤァ嗚呼アアアアアアア嗚呼亜唖ッアアアアアアアアアアアアア!!!」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 23:37:08.68 ID:cOzNXfJZ0
あった!!

激痛。


熱、痺、刺、切、裂、冷。

それらが激痛と。いや、意識すらをも奪う烈痛となって手を蝕んでいく。


ミク「あったッ!!」


しかし、その中にも唯一の希望。

引き上げられた希望の黒い箱は、その残された唯一の希望。



歌姫と呼ばれていた少女の白き手は赤黒く変色していた。
痛みは、引かない。


しかし。
10秒を切っているであろう秒針が、強制的に生を奪おうと死神の鎌を首に掛けさせる。


その手で、箱のふたを開けた。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 23:40:44.09 ID:cOzNXfJZ0
その後、どれくらいだろうか。
数分なのか、数時間なのか。もしかしたら、一日以上になるのかもしれない。
意識が飛んでいた。

起きた時。まず初めに感じたのは、痛み。
感覚が麻痺するような感覚ではあるが、しっかりと。痛みだけは感じていた。

しかし。
生きている。

記憶は無いが、2秒前で秒針が止まった首輪が床に転がっていた。
そこには自分で刺したであろう鈍色の鍵が刺さっていた。

ミク「た……助かった。の?」


その、答えは。



足元に有る「PLAY ME」とかかれたカセットテープ



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 23:43:55.74 ID:cOzNXfJZ0
『PLAY ME』
悪魔が描いた文字ですら、ここまで気味の悪い文字になるとは思えない。

しかし。
そこに答えはある。
血と、汗と、気を失った時の失禁とで汚れた服で、をのカセットテープを取る。

マネキンのように動かぬ指を使って、再生ボタンをなんとか押した。

サーッと。砂嵐。
の、後。

http://www.uploda.org/uporg1724325.3gp



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 23:49:31.67 ID:cOzNXfJZ0
終わり。じゃ。無かった……。
ヘタッと。腰が抜ける。
待ち受ける恐怖とで。パンツと床、さらには服を尿が汚す。

ミク「う……ううっ」

その情けなさと。自分が行ったことへの後悔と。目に見えぬ恐怖。
それが涙となって。晴れぬ後悔をただただ深くしていった。

今度ばかりは泣く時間が、すこしはあった。

かつて。某サイトに狂信的とも言えるであろうブームを巻き起こした少女は、汚れた服ですすり泣く。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 23:51:15.07 ID:cOzNXfJZ0
ミク 「4……2…………1」

相当の時間が立ってから。ようやくミクは立ち上がり、鋼鉄製の扉に暗証番号を入れた。
ガゴンッと音を立てて。ゆっくりと、扉が開く。




???「ミクッ!!!」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/13(月) 23:53:57.99 ID:cOzNXfJZ0
扉の向こう側から聞こえた声は。

ミク「MEIKOッ!!!」

この、光り届かぬ絶望と恐怖が渦巻く井戸の底に、見知った顔があった。
MEIKOの他にも。

ミク「KAITO!!。リンッ!レンッ!!」









同じVOCALOIDというつながり以上、親友以上の。家族達がそこにいた。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 00:02:11.12 ID:gjMFb6gk0
そこから、ミクの記憶はビデオの早送りの用に、すこし時間が早くなる。

まず、お互いが何故このような境遇になったのかということについて語り合った。

MEIKOは大量飲酒によるアルコール依存症。精神的にも辛く、実害的には肝硬変になりかけているという診断が健康センターから届いている。
KAITOは女性トラブル。容姿端麗だが、どこか安心させてくれるようなKAITOの外見から、恋に落ち、対立を経て自殺までした女性は少なくない。
レンは非行。ドラックには手をつけていないものの、窃盗、喫煙、飲酒。さまざまな行為を経てから、今は14歳にしてあたり一体を締めるチームの長になっている。
リンは売春。育ち盛りの少女はただ自分の金銭欲を満たすために、己の体をだれかれかまわず売った。現在はそういった闇プロダクションに所属し、売りをして金銭を稼いでいる。



その話を聞いて。誰もが無言だった。
助け合おうときめていたのに、皆それぞれそのような心の闇を持っていたとは……。


だが、そこで。
こんどこそは。こんな状況だからこそ。もう一度決断力を強めよう。と。皆が決意した。


しかし、その部屋の中央に置かれた『PLAY ME』を再生したところで、ミクの記憶は正常に戻る。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 00:07:29.05 ID:gjMFb6gk0
(めんどくさいので読まなくてもOK)
人間の記憶というものは、短期記憶、中期記憶、長期記憶と言う三つが存在する。
中期記憶は抜かし、長期記憶と短期記憶には非常に特徴的な点が存在し。
短期記憶、つまりワーキングメモリは20分で45パーセントを忘れるというほどに、記憶を保持しておく時間が短い。
さらには、そこに強烈な記憶、つまり長期記憶になりえる可能性の有る記憶が後に入ってくると、短期記憶はさらに多くの事象を忘れてしまう。
(――――ここまで)

きっと。
ミクの記憶が早送りになったのも、その皆の結束力を一瞬で破壊する内容が、そのカセットテープに吹き込まれていたからだろう。



MEIKOが慎重に、その再生ボタンを押すと、
サーッという砂嵐の後。

http://www2.uploda.org/uporg1724392.3gp



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 00:10:27.10 ID:gjMFb6gk0
決断力など。
疑いという悪魔からしてみれば、それを崩すのはなんとたやすいことか。



そのテープを聴いた瞬間、皆の目には疑惑と懐疑が宿った。


ミク「うそ………でしょ?」

誰も返事はしない。

ミク「嘘。だよね?誰も、みんな。皆被害者なんだよねッ!!………嘘だって。嘘だって言ってよッ!!」





リン「うるさいっ!!!!!」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 00:16:09.35 ID:gjMFb6gk0
リン「うるさいうるさいうるさいうるさい!!!!黙れ黙れ黙れ!!!」

MEIKO「リン…………」

リン「誰?誰なの?狼は誰!?嘘つきは誰なのよ!!」

KAITO「リン。落ち着きなさい。今はしっかりと状況をもう一度整理して考えなきゃだめだ!」

レン「…………KAITO ?」

KAITO「どうしたんだい?レン?」


そう聞くKAITOに対し、レンは顎を押さえて、ゆっくりとKAITOを見据える。


レン「僕たちは皆何かしら自分を傷つける行為を行っている。
   例えばミクはドラック。依存性は強く、脳の縮小から幻覚幻聴。さまざまな効果がある。
   例えばMEIKOはアルコール。肝臓にはもちろん悪く、実害も出ている。
   例えばリンは売春。これは体と精神を傷つける行為以外の何物でもない。
   さらには僕。僕はアルコールとタバコだ。それほど大きな実害は無いものの、許容範囲を大きく超えた吸い方、飲み方をしたことも有る。さらには僕は未成年だ。


       KAITO。君だけは。自分を傷つけてないね?」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 00:20:22.55 ID:gjMFb6gk0
!!!!

聡明なレンの判断に皆が驚いた。
確かに、まさしくその通り。
ミクは自分が犯人では無いと言う事がわかっている。
と、言う事はKAITO、MEIKO、リン、レン。の誰かが嘘をついていると言う事だ。


だとするならば、レンの言う事は可能性の一つとして大きな要因となるのではないか。
それ一つで決め付けるのは、一つの命を奪う上で大きすぎるが、小さいと言う事は誰しもが出来なかった。


KAITO「レンッ……!いきなり何を言い出すんだ!!」


KAITOが一歩前進する。
すると、ミク以外の皆が一歩後退した。


KAITO「…………」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 00:23:36.39 ID:gjMFb6gk0
リン「これではっきりした!嘘つきはあんただッ!!!」

リンは自分の出てきた扉へと走り、KAITOの顔写真が張られているボタンを押す。

KAITO「なっ!!」

リン「死ね!!殺人鬼なんて死んじゃえ!!!」



…………。
…………………………。



床にへたり込んで泣くリン以外に、誰もが喋らなかった。



と。
最初に行動を起こしたのはMEIKO。
無言でMEIKOは自分の出てきた扉まで行き、皆を振り返る。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 00:27:16.38 ID:gjMFb6gk0
MEIKO「違うね」

MEIKO「KAITOは犯人じゃない
    KAITOは確かに自分を傷つけてはいないかもしれない。
    けどね。最初にこの部屋にたどり着いた私はKAITOの悲痛な叫びを聞いている。
    私たちの性格は私たちが一番理解している。
    KAITOはあんな叫び声を出せるような演技力も知能も持っていない
    さらに言うと、リンも同じく。自分の嘘を隠しとおすためにあそこまでやる勇気と知恵を持つような子じゃない。
    そしてミクはあそこまで重度のやけどを負っている。犯人である可能性は低い。
    そして、もちろん私は自分で私を否定させていただく。
    残るのは



  

         レン。演技力も知能もある。あなたよ!」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 00:31:54.60 ID:gjMFb6gk0
レン「なっ!!」

MEIKO「私は貴方の判断では動かない。私は私の推理とやり方でやらしていただく」

そして、MEIKOはボタンを押した。

レン「馬鹿げている!!論理的に考察しても、KAITO以外の人間は浮かんでこない」
ミク「待って!!
   ジグソウは、ジグソウはこうなる事はわかっていたんだよ!!
   だとするなら、落ち着いて考えないと絶対に罠にはまる!!」

レン「うるさいッ!!姉貴風情をするな。僕は僕の考えでやらせていただく。そうやって僕はメンバーの上に立ってきた!」


レンは、自分が出てきた扉へと行き。KAITOのボタンを押した。


これで、二体一。残るはミクとKAITO自信の決断。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 00:35:53.93 ID:gjMFb6gk0
…………。

KAITOの顔が青ざめているのが解る。

……。
………………。

KAITO「ミク……君も僕を疑っているのかい?」
KAITOがそう、静かに聞いた。

ミクは。声が出ない。


KAITO「………………そうか」
KAITOは答えの無いミクを見て、静かに、静かにそういった。
そして、皆の疑いの目を受けながら。ゆっくりと自分の出てきた扉へと歩いていった。





KAITO「死して身の潔白を証明させてもらうよ。皆。狼に気をつけて!」


そこで、何故全ての扉に、5つのボタンがあったのかがわかった。




3対1。1人の数では。判決は覆らない。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 00:40:29.88 ID:gjMFb6gk0
ボチンッという、小さいが響く音が小さい部屋で反響した。


KAITO「皆。嘘つきには気をつけて。あと、こっちに着ちゃ。絶対駄目だよ」

大切な言葉。紡ぐよう。二度。再度。もう一回。


最後に、ニコッと、あのやさしい、兄さんと呼ばれていた青年の柔和な笑顔。


ミク「駄目えええええええええええええええッ!!!!!!!!!!!!!!!!」



少々のタイムラグが永遠にも感じるように。
一瞬か、永遠に近い時間か。いや、その双方に如何なる違いがあるというのか。


ッパアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!



KAITOが中央からはじけ飛んだ。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 00:43:59.97 ID:gjMFb6gk0
バシャッアアッと血と肉片のシャワーを浴びて、皆は確信する。
狼は。まだウサギを狙っている。


KAITOの死などというのは、自分の死までの一過程に過ぎないというかのごとく。
皆は無言だった。

そして、それに背を向ける形で、開いた扉へとMEIKOとレンとリンが歩み始めた。


誰もが顔に影を落としているが。それは親友を亡くした負の影では無い。
むしろ。




親友の死をも糧として、己が生きる道を切り開いたもののする。悪魔の笑み。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:19:58.55 ID:gjMFb6gk0
皆の後に続き、ミクが次のステージとなる部屋へと入った。
……後ろは。振り返らない。

そこは、長い廊下だった。
暗く、どこまでも続いているかのような廊下。

そして、皆の前には3つのイスが鎮座してあった。
その上からは天上から釣り下がっている水槽のようなものからホースがつながり、3つのマスクがイスの上に垂れ下がっている。


そして。
必然の如く。

『PLAY ME』のカセットテープ。




三つのイスの真ん中からそれをMEIKOが拾い上げると、静かに、再生のボタンを押した。

サーッと砂嵐。
http://www2.uploda.org/uporg1724588.3gp



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:22:20.03 ID:gjMFb6gk0
………………。

会話の余地など無い。
誰しもが誰しもを疑っている状態で、この課題。
あまりにも、難題すぎる。


リン「もう……もういやだよぉ。助けてよ……なんで。なんでこんなことに…………」


MEIKO「泣き言を言うなッ!!!」


へたり込むリンに対して、MEIKOが怒声を上げる。


そして、MEIKOは。






自分からイスに座り。マスクを被った。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:25:47.04 ID:gjMFb6gk0
MEIKO「私は狼じゃない。だけどそれを証明する手立ては無い。
    レンも、リンもそれは同じ。
    だけどね。ミクだけは身の怪我を持ってそれを証明している。
    ただ、仮の証明であるだけで、しっかりとした証明とはいえないけど。一番可能性が薄いのはミク、あなたよ
    だから私は自分の身をもってレンとリンに言います。

      私の横に座りなさい。」



そこには。
一番の年長者として。いや、母と言うような母性が滲んでいた。
まだ、あの後でも、結束力と言う言葉を信じて。己が身を呈す。そんな強気女の信念。


そして。次に座ったのは。レン。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:27:51.15 ID:gjMFb6gk0
レン「MEIKO。僕だって誰かを疑いたいわけじゃない。
   この声の主は、3人を犠牲にすれば1人だけ助けると言っている
   と、するならば。3人を犠牲にしなくても、この後皆で助かる可能性が微細ながらあるって事だ。
   僕はその可能性に賭けて見たい。
   そして、リン。この場をやり過ごすのに、君じゃ役不足だ。リン。ミクに命を預けな……」



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:30:16.52 ID:gjMFb6gk0
そして。その言葉を聞いてからか。
リンが静かにイスへと腰掛けた。

MEIKO「ミク。貴方にこんな大役を押し付けるのは、怪我をしていることから。本当に申し訳ないと思う
    でも、ミク。貴方がやらないと。これから皆。皆を疑いあわないといけない。
    それに、私たちはKAITOという犠牲を既に払った。これを狼だと思えば。誰もが納得し、先を見ることが出来る
    お願い。私たちの命。貴方に預けたわ」




ミク「…………わかった。」


その言葉を聞いて、リンとレンがマスクを同時につけた。



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:33:43.96 ID:gjMFb6gk0
ガゴンッと音がして、床が開いていく。
3メートル×1メートル。深さは50センチほどの黒い溝とも言うべき穴。

そこは、皆の命を助けるために有る、地獄。

何があるかはわからない。が。
みんなの決断力の速さから、ガスはまだ空気中に微粒漂う程度。
3分間。めいっぱい使うことが出来る。




ミク「――――――ッ!!!キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」



穴の中の地獄を見て。ミクは。今日何度目かの絶叫を上げた。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:37:27.56 ID:gjMFb6gk0
おぞましいという以外何物でもなかった。
そこには、不快とされうる全ての虫達が楽園を作っていた。


ゴキブリや蜘蛛。黒きうごめく艶やかな地獄の宝石達。


穴の出口には何か油でも塗ってあるのか、虫達は穴の外へは出てこない。


そんなことよりも。
ミクはその光景を見た瞬間に卒倒しかけていた。

肉体的なダメージをここまで与えられているのに、さらに、精神的な苦痛をこれからどれほど味わわなければいけないというのか。




MEIKO、リン、レンの状況説明を求める声が、どこか遠くに聞こえる。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:39:34.62 ID:gjMFb6gk0
時間は、すぎていく。
今回は秒針の音は無いが。シューッと何処からか聞こえるガスの音が、耳に届く。

ミクは、目を閉じて、歯を食いしばる。
涙があふれる。手が痛い。足が震える。怖い。嫌だ。辛い。キモチガワルイッ!!



ミク「ああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」






その悲鳴とも絶叫とも取れぬ声と共に、ミクは。


地獄へと足を踏み入れた。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:41:35.56 ID:gjMFb6gk0
(注 解っていると思いますが、ここから表現がさらに酷くなるので、読む方は注意をお願いします)



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:42:59.53 ID:gjMFb6gk0


ブチプチプチブチプチピチプチブチッ!!!
足元から、そんな音が聞こえてくる。
床が静かに沈むと同時に、足の裏には確実に。それらを踏み潰す感覚が伝わってくる。

ゾクゾクッと怖気が走る。悪寒が昇ってくる。
しかし。そんなコトなどお構いなし。


足元がうごめいた。



ズルッ。


足が。もつれる。



そして。
ミクはその床に。


倒れこんだ。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:44:41.25 ID:gjMFb6gk0
ミク「嫌かアああ当てて唖fdqdファだdふぁだdふぁdふぁdfくぁrふぁd!!!!!」


鳥肌が立つ?

それは違う。
感覚は似ているが。
昇ってくる感覚は怖気によるものではない。




虫達が。蟲達が群れを成して。
その白き肌を蹂躙する。



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:47:25.94 ID:gjMFb6gk0
うごめく床の上を転げまわりながら、何とかそれらを払い落とそうとする。

が、ジグソウはテープの中で、底と言った。

底?そこ?ソコ?SOCO?
………………。



底!?



掃ってなど、いられない。

体に付くなら付くがいい。ただ。地面の虫達を左右に書き分け。底を目指す。


もう、何も考えることは無い。



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:50:12.59 ID:gjMFb6gk0
自分でも無様な格好だと思う。
涙、鼻水、涎、汗、さらには失禁すらしている。
もう服など着ていても着ていなくても変わりないのかもしれない。


しかし、それはただ汚れるのではない。


絶対的な勇気。皆を助けるのだという信念。
悪などには屈しないという正義感。




誰が、それを笑えるか。




そして。金色に光る。箱が。黒き奴らの中から現れた。



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:55:17.75 ID:gjMFb6gk0
ミク「あっt」

喜びを表現したいが。それは許されない。
口腔を開ければ。それだけ虫達に住める空間が増えるからだ。

直ちに穴を這い上がる。
体についてきた蟲たちを速攻で払い落とす。


恐怖心よりも、皆を助けたいという気持ちが勝っていた。


ミク「皆!!」


時間は、まだ1分以上も余っている。


鍵は。手に入れた。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 01:58:52.70 ID:gjMFb6gk0
――――――ズキッ。


速攻で皆のマスクの鍵穴にその鍵を差込み。皆を助けたいというのに。ミクの行動はそんな頭痛によって一時停止させられた。

「クッ……」

だめだ。皆を助けさえすれば、いくら寝ても良い。
むしろ。ここで皆を助けられれば。私は死んでも良いッ!

次のステージに。ゲームクリアーに。向かいたい。


ミクは、その意志だけで。噛まれ血が所々から出ている脚を引きずり、皆のマスクに鍵を入れ。命を。救う。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 02:05:16.87 ID:gjMFb6gk0
…………。

いや。違う。

それは、私に掛けられた使命じゃない。




足が。止まった。
己の記憶に矛盾点が生まれる。


自己陶酔ではなく、他者陶酔とも言うべき、友情という悲壮劇の裏にあった、自分の行動をもう一度考え直す。

なぜ、私は、ここまでもすんなりと体が動いたのか。
なぜ、私は、一時記憶が早送りの状態へと変ったのだろうか。
なぜ、私は、KAITOやMEIKO。リン、レンを疑わなかったのだろう。










なぜ、私は、見も聞きもしていない敵の名を。『ジグソウ』と、口に出すことが出来たのだろう?



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 02:08:10.21 ID:gjMFb6gk0
そして。合点がいった。

ああ。そうか。と。
クスッと、笑いがこぼれた。


なんだ。…………酷い人だ。


皆に信じ込んだ者に裏切られる苦しみを知らせるために、私に一番酷い役回りをさせるとは。





ミク「鍵があった!待ってて!今助けるから!!」






口ではそういう。マスクをしている皆は、ミクが、鍵を。穴の中に放り投げた事を、見ることが出来ない…………。



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 02:13:36.38 ID:gjMFb6gk0
記憶が戻ってきた。

私はいつもの如く歌姫の仮衣を着て、ストレスがたまるだけな、歌を歌っていた。
そして。その帰り。
私はいつもの如くバイヤーから、『気分がスッとするクスリ』を買おうと、某歓楽街へと訪れた。

そこで、いつものバイヤーはおらず、1人。おかしな仮面を被った男がいたのだ。
その男から、これは効くと『オニス』というクスリを買ったのだ。


あまりにも効果を進める男の前で、そのクスリを一錠飲むと、瞬間、意識が吹き飛んだ。
それはトリップの意味ではなく、猛烈なる眠気だった。


その後、私が目を覚ましたところは、医療施設のような場所だったが、医療スタッフはおらず。年を取った老年の男性が浅く呼吸をする。ビルの一室だった。



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 02:17:02.23 ID:gjMFb6gk0
老年の男「起きたかね?」

ミク「…………ここは?」

老年の男「はじめまして。私の名はジグソウ。もちろん仮の名前だがね。これから、少々長い話をするが。君ならばきっと聞いてくれると信じているよ?」


そして、男は持論を語り始めた。
曰く。
命をおろそかにする者は、命を欲する者に変るべきである。というのが主題であった。


後で聞いた話によると、『オニス』とはラテン語onisからつけた名であり、それは贖罪を意味らしい。






そうして。私は選ばれたのだ。



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 02:20:03.81 ID:gjMFb6gk0
彼の話は面白い話であった。
いや、それ以上に。大いに賛同できうる話であった。
私も、彼の為に一つ力を貸しても良いと。思えるほどに値する。


そして、彼は。今回のゲームに参加させる人物を継げた。

最初聞いたときは驚いた。
皆がそこまでの心の闇を背負っていたとは。



だが。同時に、嬉しさのような感情も湧いた。
同族意識ではなく、それは同族嫌悪による、同族に罰を与えることが出来る事から来る喜び。


そして、私は彼の言うとおり、ゲームの支度を手伝ったのだ。



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 02:22:33.28 ID:gjMFb6gk0
記憶は消した方が良いという彼の提案から、医療の知識が非常に強かった彼から薬を受け取り、自分の記憶に鎖を巻いた。
そして、私はゲームの一参加者となった。

彼の提案から、私は一番辛い部屋へと入れられた。

しかし。眠る前は嬉しさと楽しさが渦巻いていた。





皆が、信じていた者に裏切られる時。どんな顔をするのか。と。




それだけを考えて眠りに付いた。



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/14(火) 02:27:07.57 ID:gjMFb6gk0
きっと、みなの顔の皮膚が解けるまで、後10秒を切っただろう。

皆が口々に私を急かしている。

私は。迫真の演技をする。

ミク「待って!すぐ。もうすぐ助けられるからッ!!!!!」

鍵は、既に虫達の下へと潜っていった。
外へと通じるという扉は開き。向こうではジグソウが手を叩いている。

私はそちらに向かって歩き始める。


最後に


「さようなら」

と。小さく言い残して。

上にある水槽にゴボッと気泡があふれた。
ホースを水槽に溜めてあった塩酸が伝う。



ジグソウ・ミク「ゲームオーバー」


絶叫がこだまするくらい部屋。歌姫は小さくそういい残す。。。



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