(・∀ ・)たった一つのようです

2: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 11:35:30.60 ID:7qxc1sZX0

2:小【コ】


二つ目の国の話をしよう。
そこは小さな国だった。
全てが小さな小人の国だ。

何せ村も、人も、物も、全てが小さいものだから、僕はまるで怪人とか化け物扱いさ。
踏み込んだ瞬間全員潰してしまうかと思ったよ。
いやまぁ、実際潰してしまったんだけど。

(#∵)「こらー!入ってくるな! この化け物め!」

(・∀ ・)「もう入っちゃいましたよ。あ、すみません家踏んじゃいましたはは」

(#∵)「くぅぬやろーがぁ!!」

ビコーズ村のビコーズ村長という小さなおじさんが、僕の足に噛み付いてきたけど
痛くも痒くもない。
彼は僕の親指程度の大きさしかないから、飛び上がってもせいぜい10cmだしね。

なぜ彼らがこんなに小さいのか、それはわからない。
けど、きっとこういう種族なのだと僕は自分を納得させている。
妖精とか、そんな感じのものなのだろう。



3: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 11:37:27.16 ID:7qxc1sZX0

(・∀ ・)「ところでお聞きしたいんですけど」

ミ(#∵)彡「ぬぅっ!? この状況で暢気に話を続けるとはとんだ神経の図太い奴だ!
     許すまじ!許すマジ!」

(・∀ ・)「え?どっち?」

(#∵)「マジ許さねぇ!」

ビコーズ村長は何故か怒り狂って僕に対して体当たりしてくるけれど
いかんせん、小さすぎるから怒った顔が良く見えない。
それどころかそんなに飛び跳ねられていると間違って踏んでしまいそうだからちょっと大人しくして欲しい。

だから僕はあえて和やかな口調で話を続けた。
そうやって和やかに話しかけることで戦意を失わせる作戦なのだ。

(・∀ ・)「あの、僕この村に入れないんですけどどうすればいいですかね?」

(#∵)「おまっ、いれねぇよ! 絶対いれネェよ! つーかお前が踏んでるそれ俺の家だよ!」

しまった、小さすぎて見えなかった。
和やかに会話を進めたつもりなのに気が付けば僕は村長をさらに怒らせていたらしい。
ピョンピョンと跳ねる高さが若干上がってきた。

仕方なくゆっくりと足を避けると、そこには無傷の家がひっそりと佇んでいて
……あれ?壊れてないなぁ



4: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 11:40:02.06 ID:7qxc1sZX0

(・∀ ・)「壊れてないですよ」

(#∵)「壊すつもりで踏んだのかよ! お前マジありえねぇ!ひでぇ!」

(・∀ ・)「壊れてないんだからそんなに怒らないで下さい」

(#∵)「怒るだろお前!今怒らないでいつ怒るんだよ!! 温厚な俺も怒るよ!」

*(‘‘)*「おとうちゃま? どうかちたの?」

僕と村長が言い争っていると、突然僕がさっきまで踏んでいた小さな家から
これまた小さな女の子が出てきた。
亜麻色の髪を高い位置でしばり、若草色のワンピースを身に纏ったその女の子は
まんまおとぎ話に出て来る妖精のようだった。
少女は巨人並に大きい僕を見上げるように、恐々と視線を送ってきた。

(・∀ ・)「あ、娘さんですか?可愛いですね?」

(#∵)「やらねぇよ!」

(・∀ ・)「誰も下さいとはいってません」

*(‘‘)*「おとうちゃま?何おこってるの?へりかるこわい!」

( ^.^)「おお大丈夫大丈夫〜〜、お父さんが護ってあげるよ〜〜」

(・∀ ・)「うわ」



6: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 11:42:53.29 ID:7qxc1sZX0

(#∵)「うわじゃねえよ!」

どうしてそんなに怒るんだろう。
ほんのちょっと引いただけじゃないか。
それに比べて娘さんの方は、僕と話しているのを見て安心したのか
悪人というものを知らないような足取りで僕の方へとちょこちょこ寄って来た。

何も僕が悪人と言ってるわけではないけど、こんなにも無防備に寄って来られたら
お父さんが過保護になるのも解る気がする。

*(‘‘)*「おにいちゃんはどこからきたの?」

(#∵)「ヘリカル、近寄るんじゃない!死ぬぞ!」

(・∀ ・)「お兄ちゃんはね、外の世界からきたんだよー」

僕は村長さんの言うことを無視してヘリカルちゃんというらしい娘さんに話しかけた。
ヘリカルちゃんは外の世界と言う言葉にその大きな目を輝かせ、興味深そうに僕に聞いてくる。
どうやらこの子は、この小さい村以外の世界を知らないみたいだ。

*(‘‘)*「そとのせかいってなぁにー!?」

(・∀ ・)「外の世界は外の世界だよ。この村よりも大きいところさ、すごく広いんだよ」

( ∵)「おいコラやめろ」



7: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 11:44:23.04 ID:7qxc1sZX0

*(‘‘)*「ヘリカルもいける?」

(・∀ ・)「その気になればね。
     でもみんな大きいからヘリカルちゃんがいくのはちょっと大変かなー」

*(‘‘)*「だいじょーぶだもん!ヘリカルも見たい!!つれてっておにいちゃん!」

( ∵)「やめろってば」

(・∀ ・)「じゃあ、僕の掌の上に乗ってみる? ちょっとは外の世界が見渡せるかもしれないよ?」

*(‘‘)*「うん、のるー!」

( ∵)「やめろ!!!」

そこでビコーズさんが思い切りどなった。
小さな体からは考えられないその声量に僕とヘリカルちゃんの体は一瞬止まる
が、すぐにヘリカルちゃんがむくれて泣き出してしまった。

その声も、やはり小さな体には似合わないほど大きかった。

*(;;)*「あ……あぁぁああ〜〜〜ん!!おとうちゃまのばかぁ!!」

( ∵)「娘を泣かすな!」

(・∀ ・)「僕のせいかなぁ」



10: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 11:46:23.11 ID:7qxc1sZX0

しかし村長の焦った様子は変わることなく続いていて、引っ張るようにヘリカルちゃんの手を引いた。
しかしヘリカルちゃんの泣き声は、収まるどころかどんどん大きくなっていく。
その声ははるか高い位置にあるはずの僕の耳をキーンとさせるほどだった。

やがて周りの民家の人々も何事かとざわめき出し、皆が家から顔を出してきた。

「なんだなんだ」
    「どうかしたのか」
 「なんだあの巨人は」
             「どうしてこんなところに」
        

(;∵)「くそっ……こんなところで……」

(・∀ ・)「あの、僕もしかして何かマズイことしちゃいました?」

(#∵)「お前のせいだ!このやろう!」

村長は僕にその辺に転がっていた石を投げてきたが、どうせ当たっても痛くない。

そう思ってそのままじっと動かずにいたのだが
しかしここで少し予想外なことが起きたのだ。

その石は、そのまま僕の足を通り抜けて行った。

(・∀ ・)「え……?」



11: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 11:48:53.66 ID:7qxc1sZX0

ヘリカルちゃんが僕の足にしがみ付く。
あれ?しがみついているように見えて、ヘリカルちゃんの半分は僕の足にうまっている?
埋まっている?いや、そんなはずは…そう思って触れてみると、彼女に実態はなかった。

どうして?
僕は首を傾げたが、相変わらずヘリカルちゃんは泣き止まない。
住人はそんなヘリカルちゃんがうまっているのを見て半狂乱だ。

思えば、最初からおかしかったのかもしれない。
踏まれて無傷な家なんて、あるわけもないんだから。

(#∵)「くそくそくそっ、まただ、また気づかせてしまった!」

(・∀ ・)「え、ちょっと……」

(#∵)「やり直しだ、またやり直さなければいけない、今度は侵入者なんて入れないように、もっと工夫しなければ!」

そういって村長は走り出す、家の中へと走りだし、その家を抜けて赤い煉瓦の小さなおうちへ
そのおうちも抜けると外路地にはいり、野良犬がワンワンと吼える。
しかし村長は動じない。
動じないで走り続け、今度は電灯の上を上り出した。
ぽっかりと暖かい光を放つ橙の結晶を割ると、思い切りそれを下に落とし

そして



12: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 11:49:26.21 ID:7qxc1sZX0





―――パリィイイイイイン………!!!





14: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 11:52:49.15 ID:7qxc1sZX0


ヘリカルちゃんの泣き声が木霊する。
ビコーズさんの頭を抱える姿が、住民達の慌てふためく姿が
映像がぶれて、まるで鏡の水底に沈む人形のように、暗く、暗く、暗く……………







(・∀ ・)「……あれ?」

目を開くと、そこはまっさらな更地だった。
あの小さな町も、小さな人も、小さな物も、何もかも消えうせている。

変わりにあるのは、荒廃した土地と、無遠慮に吹き荒れる風だけだ。
砂交じりの風が僕の口の中に入ってくる

(・∀ ・)「わぷっ……」



15: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 11:55:48.65 ID:7qxc1sZX0

ペッペッと砂を吐くと、もう一度辺りを見回した。
何もないところだけど………
しかしキョロキョロと見回すと、中心の方に何かが見えた。

あれはなんだろう?

僕が近付いてみると、それは石碑にも似たコンピュータのようだった。
その電子の塊はカタカタと音を立てていて、どうやらまだ機能しているみたいだ。

コンピュータは未だ鈍い光を放っていて、近付いた僕の顔を薄く照らす。
機械的な文字で、画面にはこう残してあった。



16: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 11:59:11.54 ID:7qxc1sZX0

『 コノ村ノ 再興 ヲ 復活ヲ
  機械ニ支配サレ テモ 
  決シテ 消エハシナイ 消サセナイ
  私ハ諦メナイ
  イツカマタ ミンナ 
              デ ワラ イ……  』

(・∀ ・)

石の下の方には、小さな字で、ビコーズと刻んである。             
きっとこれは村長の字だ
あの小人らしい、小さい字がひっそりと主張されている。    


(・∀ ・)

イツカマタ ミンナ デ
           
(-∀ -)「ああ……」

そうか、そうだったんだね。
村長あなたは。



17: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 12:00:01.03 ID:7qxc1sZX0

二つ目の国の話をしよう。
そこは小さな国だった。
全てが小さな小人の国だ。

だけどそれは見せかけの国。
機械に支配されて、滅んだ国のなれの果てだ。

ホログラムを残し、優秀なコンピュータを残し、彼らは一体何を伝えたかったのか
それは僕にはわからない。

だけど覚えていて欲しい。

昔々その国に、小さく可愛らしい民族が、笑いあいながら住んでいたということを。



死んだ国に、光よあれ。



19: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 12:01:35.45 ID:7qxc1sZX0

:::::::::::


( ・∀・)「おかえり」

(・∀ ・)「ただいま…です」

神様の所に帰ると、この方はもう結果はわかっているような顔をして優雅に紅茶を飲んでいらっしゃった。
当たり前だ、神様なんだから。
わからないことなどないのだ。

(・∀ ・)「一つ、聞いてもいいですか?」

( ・∀・)「なんだい?」

(・∀ ・)「あの国はいつ滅んだのですか?」

( ・∀・)「知ってどうする?」

(・∀ ・)「どうということはないですけど………」

ただ、気になったのだ。
僕が見た全てが幻だったのだと信じたくなくて。
しかし神様はその問いに答えてくださることはなかった。

( ・∀・)「じゃあやめておけ。知らないことに首をつっこんでも、やっかいな事にしかならないよ」

神様がそう言うのだったら、僕はそれに従うしかない。
だって神様が僕の世界なのだから。



20: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/01(木) 12:02:49.03 ID:7qxc1sZX0

僕はわかりましたと頷いて、消えた国のことを、頭の中から消去した。
デリート、デリート、デリート
コンピュータと同じように、綺麗サッパリ削除しよう。

目に映るのはこの人の綺麗な顔
耳に聞こえるはこの人の美しい声
口を閉ざせば静寂が訪れる、この空間があれば僕はもう何もいらないのだ。



2:故【コ】
            了



戻る次のページ