(・∀ ・)たった一つのようです

114: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/24(土) 23:54:23.35 ID:exc/kZR30

( ;∀;)「…………帰りたくない」

弱弱しく、吹けば飛んでしまいそうな小さな声で、漸く神様は呟いた。

( ;∀;)「だって、帰ってもどうしようもない。ブーン君は帰ってこない。
      ギコだって、僕のことなんか嫌いに決まってるんだ
      クラスの皆も、先生も、親も、みんなみんな僕のことなんて大嫌いに決まってる。
      何より僕が一番、僕のことが大嫌いだ!」

その言葉に、僕は自分の形が段々元に戻っていくのを感じた。
世界が再構築されていく。
暖かいヴェールが、心地の良い子守唄が、光溢れる世界が、暗闇がはがれどんどん露になっていく。

(・∀ ・)「……………神様」

( ;∀;)「帰りたくない、帰りたくない、帰りたくない……!」

そんな中で、神様は一人泣きじゃくっている。
僕はそれ以上何もいえなかった。
それが神様の選択だって言うのなら、それ以上何かを言うのはおかしいから。

僕は戻ってきた両腕で神様をそっと抱きしめると、静かな声でわかりました、と呟いた。

( ;∀;)「帰りたくない、帰りたくないんだ、いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだいやだ!」



116: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/24(土) 23:55:30.36 ID:exc/kZR30

(・∀ ・)「神様がそう望むなら、僕はもう何も言いません」

( ;∀;)「うっ……あっ………」

(・∀ ・)「つらいですもんね、悲しいですもんね。大丈夫ですよ、ずっと僕がここにいますから」

( ;∀;)「……ひっぐ………うぅっ……」

(・∀ ・)「大丈夫、全て忘れてしまいましょう。全て忘れて、平穏な気持ちで暮らしましょう。
     僕だけは、神様の味方ですから」

再構築された世界に、唯一つ前と違う風景があった。
それは世界の真上にぽっかりとあいた夜。
太陽と一緒に存在する闇に、僕は眩暈を起こしそうにすらなったが、この人が一緒にいるならもうどうでもよかった。
神様は僕の腕の中で泣いている。

それでいい。
もうこれ以上この人を傷つけるものはあってはならない。
誰が悪かったとか、悪くなかったとかもどうでもいいんだ。
重要なのは、神様が苦しんで泣いているということだけだ。

( ;∀;)「マタンキ…………」

(・∀ ・)「忘れるんです、大丈夫……眠って、起きればまた元通りですから……」



118: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/24(土) 23:56:57.46 ID:exc/kZR30

手を翳して、低い声で呟いた。
大丈夫、大丈夫

僕がずっと、傍にいますから。
まるで子守唄のような僕の囁きに、神様はそっと目を閉じた。


:::::::::::::


今、僕の隣には神様がいる。
神様は相変わらず無垢な笑顔で、僕と一緒に花飾りを作っていた。
その顔はとても楽しげで、今までにあったことなどまるで覚えていないような顔だ。

( ・∀・)「マタンキ、見て見て、できたよ」

(・∀ ・)「上手ですね、流石は神様」

( ・∀・)「ふふふ」

神様は嬉しそうに笑う。
シロツメクサで作られたその髪飾りを僕の頭に載せると、真上にある夜を見つめた。

( ・∀・)「ここは静かだね」

(・∀ ・)「えぇ」



119: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/24(土) 23:58:28.05 ID:exc/kZR30

( ・∀・)「僕は、幸せなのかな?」

(・∀ ・)「えぇ」

その言葉に、神様は悲しそうに笑った。

( ・∀・)「時々、頭が酷く痛くなるんだ……大切な何かを忘れてしまった気がして」

(・∀ ・)「気のせいですよ」

右手を彼の頭に伸ばして、くしゃりと髪を撫ぜた。
やわらかい髪が僕の掌に当たると、神様はくすぐったそうに顔を顰めた。

(・∀ ・)「そんなものはすべて幻です。 神様の世界は、ここだけですから」

( ・∀・)「……そうかなー……?」

(・∀ ・)「はい」

そうかな、そうだね。
納得したように頷くと神様は、花飾り作りを再開した。

(・∀ ・)

ねえ神様

たとえ貴方が思い出せなくても、それは貴方が望んだことですよ。
だから、それが貴方の幸せのはずなのです。



123: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/24(土) 23:59:55.09 ID:exc/kZR30

少なくとも、僕は貴方と一緒で幸せです。
この世界で

貴方と二人だけの世界で。

( ・∀・)「どうしたの……?」

(・∀ ・)「いいえ、なんでもありません、いきましょう」

( ・∀・)「どこに?」

(・∀ ・)「さぁ……?」

( ・∀・)「ふふっ、変なマタンキだなあ」

にこにこと笑う彼の手をとって、僕達は歩き出した。
夜が包むこの世界
だけど暖かなこの世界。
緩やかに進むこの世界。
神様、僕は、あなたのしもべは、今なら声を大きくしてこの言葉を言えます。



124: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/25(日) 00:00:38.84 ID:r1k2e7n70





僕(しもべ)は、この世界が好きだよ





と。





131: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/25(日) 00:02:56.56 ID:r1k2e7n70

貴方がいれば、僕はいつでも、どこでも幸せです。

(・∀ ・)「……いきましょうか、神様」

( ・∀・)「うん」

そうして、僕達は光と夜が交差する世界の中、手を取り合って歩き出した。

もともとたった一つだった僕達は、今、この世界で二つになり、そうしていつしか
また混ざり合い溶けていくのだろう。

それはきっと、僕の幸せ
貴方の幸せ。


ずぅっと一緒におりますよ、神様。



133: ◆q/GlKnlG6s :2009/01/25(日) 00:03:28.48 ID:r1k2e7n70


10:夜【ヨ】



           了



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