(´・ω・`)ショボン警部が虚構の城を崩すようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:01:57.07 ID:syuAxS930

 −1−

 ドクオはコンビニの弁当をテーブルの上に広げ、遅めの夕食を始めた。
 テーブルの周りにはキャンバスが積み重なっており、画材道具や関連の本で、狭いアパートは散らかっていた。
 今年で還暦を迎えるドクオだが、肌はみずみずしく、眼光は鋭い。

 弁当を食べ終えると、中身が詰まってぱんぱんになったゴミ袋に、弁当の空箱を無理矢理押し込んだ。
 「おしっ」と気合いを入れ、袖をまくる。彼が絵を描くときの合図だ。

 椅子に座り、イーゼルに立てかけられたキャンバスと向かい合った。
 キャンバスには描きかけの山の風景が描かれている。
 彼が描いているのは油絵だ。
 彼の部屋に置かれている絵は全て彼が描いた油絵で、一般人なら鼻が曲がりそうなほどの油の異臭が部屋に漂っていた。



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:03:45.26 ID:syuAxS930

 部屋はわざと薄暗くしていた。少し暗い方がより落ち着いて絵が描けるからだ。
 筆を手に取り、山の風景に思いを馳せる。
 彼の故郷は山奥の村で、記憶にあるそこの景色を絵に起こそうとしているのである。

('A`)「……………………」

 彼が絵を描いているときの集中力は凄まじいものがある。
 視界はキャンバスのみで、聴覚は全く無意味の器官と化す。

 以前このアパートのトイレでボヤ騒ぎが起こったとき、彼は避難するどころか火事にも気がつかなかった。
 消防隊がサイレンを流し、どたどたとアパート内を走り回っていたことさえ気がつかなかったほどだ。
 近所の高校生が遊びで放火し、捕まったというのを聞いて、初めて火事のことを知ったのだ。
 それほどまでに彼は絵を描くという行為に没頭でき、アパートの住人は彼のことを不気味な男だと認識していた。

('A`)「……………………」

 彼の意識は今キャンバスに半分描かれた故郷の町並みを巡っている。
 自身の想像からインスピレーションを得ようと、脳細胞をフルに働かせていた。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:05:22.77 ID:syuAxS930

 その140億個の脳細胞の内、10分の1程度でも背中に向いて働いていたならば、
 彼は助かっていたのかもしれない。
 
(;゚A゚)「ぐっ」

 意図した声では無かった。
 首に巻き付けられた紐が、喉を締め付けたことで漏れたものだ。 

 キャンバスにあった意識がアパートの一室に戻ってきた。
 手足をばたつかせ首に巻き付いたヒモから脱出しようとするが、普段から全く体を動かさない老体の彼には難しかった。

 やがてドクオの心臓は止まった。
 しかし後ろからドクオを締め上げていた者は、しばらくそのままの格好で力を入れ続けた。

 5分後、その者はようやくドクオの死に確信を持ったのか、ヒモを握りしめていた手を離した。
 ドクオは顔から床に倒れ込んだ。
 彼が倒れた場所には、もう永遠に完成しない、描きかけの故郷が描かれたキャンバスが落ちていた。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:06:32.79 ID:syuAxS930



    ショボン警部が

      【虚】
      【構】

      の城を
        崩すようです



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:09:57.89 ID:syuAxS930



  **** 捜査編 *****



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:12:21.61 ID:syuAxS930

 −2−

 車のハンドルを握っているショボン警部は珍しく顔に疲れがあった。
 いつも鋭い光が宿っている目が、やや曇り気味だ。

从*゚ーノリ「教えてくださいよ。こういうのって、上司と部下の絆を深めると思うんです」

 助手席に乗っているルカ警部は、二十台半ばとは思えぬ若者のアクセントでショボンに話しかける。

(´・ω・`)「面白い話じゃない」

 キャリア組だったショボンが、どうして警部の座に居座り続けているのか、ルカが訊いているのだ。

从*゚ーノリ「凄く深い事情とかあって、話しにくいんですか?」

 彼女の声には、その“深い事情”を期待しているような含みがあった。

(´・ω・`)「それより、今回の事件の話をしてくれ」

 呆れた声で言った。
 ルカはつまらなそうに唇を結び、それ以上質問するのをやめた。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:14:03.36 ID:syuAxS930

 鞄からファイルを取り出し、紺色のスカートを履いた膝元で広げた。

从*゚ -ノリ「害者の男性は鬱田ドクオ。59歳。無職。
     個人アパートVIP荘の203号室で1人暮らしをしていました。
     結婚していましたが、15年前に妻を亡くしていて、子供はいません」

(´・ω・`)「生活はどうしていたんだ」

从*゚ -ノリ「生活保護を受けていたみたいです。それから両親の年金の仕送りとかもあったようです」

(´・ω・`)「友人とか」

从*゚ -ノリ「アパートの住人に聞き込みを行った結果、今までそんな人を家に呼んだことは無いだろうって。
     かなり偏屈なじいさんだったみたいですよ。毎日部屋に籠もって油絵を描いてたらしくて」

(´・ω・`)「油絵?」

从*゚ -ノリ「ええ。アパートに行けばわかりますよ」

(´・ω・`)「そうか」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:16:36.41 ID:ZXe5gVqI0

 ショボンの質問は続いた。
 ルカにとっては、彼が何故そんな質問をするのかわからないようなものも多かった。
 答えられない質問が続くと、あとでファイルで確認すると言って、ショボンの質問は終わった。

从*゚ーノリ「それで、どうしてキャリアの道を蹴ったんです?」

(´・ω・`)「またか」

 ルカはどうしても知りたいようだった。彼女も有名大学を出たキャリア組の1人である。
 ろくに経験もしないうちに警部となり、ショボン警部の下についた。
 同じキャリアであったショボンが、どうして30歳を超えても警部なのか、疑問に思っているのだ。

 数々の功績を打ち立てたという記録から、ショボンが無能だから昇進しない訳ではないと知っていた。
 上を目指しているルカにとって、ショボンの存在は異色過ぎるのである。

(´・ω・`)「面倒だからだ。仕事が増えるのは嫌いだ」

从*゚ -ノリ「嘘でしょう。ショボンさん、歩いたままでも寝られるんじゃないかって捜査一課で言われてますよ。
     24時間仕事してるから」

(´・ω・`)「本当だ。まさに今とても怠い」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:18:20.74 ID:ZXe5gVqI0

 ショボンの言葉は半分真実である。
 彼は実際に心身共に疲労していた。
 しかしそれは部下の質問攻めに困っているからである。

从*゚ -ノリ「警察が嘘ついちゃ駄目なんですよ」

(´・ω・`)「ついていい嘘もある」

从*゚ -ノリ「何です、それ」

(´・ω・`)「嘘も方便ってことだ」

 ハンドルを大きく右にきり、大通りから小道に入った。
 車を真っ直ぐ走らせると、2台のパトカーが前方に見えた。
 そのすぐ傍に、目的地のアパートがあった。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:20:27.30 ID:ZXe5gVqI0

 −3−

 ショボンとルカが駐車場に車を止め、中から降りると、待っていた警官が帽子を取って2人に挨拶をした。
 彼らに一言、二言告げると、警官たちはパトカーに乗り、走り去っていった。

(´・ω・`)「アパートにつけばわかるの意味が理解出来た」

从*゚ -ノリ「でしょう」

 外に居ても、油絵の油の匂いが風に乗って運ばれてきた。
 悪臭に気分が滅入ってくる。

(´・ω・`)「ここには誰が住んでいるんだ」

 ツタが這う古い木造アパートを見上げ、ショボンがルカに訊く。

从*゚ーノリ「101号室にフリーターが一人。102号室に浪人生。103号室には若い夫婦。
      201号室にも、夫婦が。こちらには子供もいます。202号室は空き部屋です」

(´・ω・`)「203が害者の部屋だったな。まずは現場が見たい」

从*゚ーノリ「鍵は予め大家から預かっているので、中に行きましょう」

 アパートの外側にある階段から二階を目指す。
 歩く度に軽い金属音が響く、さび付いた階段だった。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:22:37.18 ID:ZXe5gVqI0

 アパートの部屋のドアは全て通りに面している。
 しかし人通りの少ない道なので、例え犯行の際ドアを使って出入りしたとしても、
 犯人を目撃した者はいないだろうとショボンは思った。

 カラーコーンが置いてある203号室の前までいき、ドアを引き開けた。
 ドアは階段と同様のさびに覆われていて、開けるときに金属の悲鳴が聞こえた。

(´・ω・`)「凄いな」

从*゚ーノリ「中のものはほとんど動かしてません」

 ものが溢れかえった部屋の中を見て、ショボンはしばし立ち尽くした。
 玄関で靴を脱ぎ、2人は中へ入った。むせ返る油の匂いが彼らを出迎えた。

 キャンバスが溢れかえっていて、足の踏み場が少ない。
 害者が倒れていたであろう位置に、チョークで印がつけられていた。

从*゚ーノリ「財布の金が盗まれているみたいです。
      棚とかも荒らされているし、ただの物取りの犯行のようですね」

 ショボンは部屋の中心に立ち、ぐるりと周りを見渡した。
 押し入れの奥から放り出された布団や衣類を見て、顔をしかめた。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:24:32.12 ID:ZXe5gVqI0

从*゚ーノリ「害者の部屋には隠し金庫がありました。
      小さな金属のもので、犯人はそれを見つけて、こじ開けようとしたらしいです」

(´・ω・`)「どこにある」

从*゚ーノリ「風呂場の天井が一部開くようになってて、金庫はそこに隠されていました」

(´・ω・`)「風呂は各部屋にあるんだな」

从*゚ーノリ「トイレだけ共同ですね」

 ショボンは風呂場へ続くガラス戸を開けた。ダイアル式の金庫が風呂のタイルの上に置いてあった。
 確かに金庫のふたの隙間部分に、金属が剥がれた跡があり、こじ開けようとしたことがわかった。

从*゚ーノリ「犯人は金庫が開かなかったから、元の位置に戻したみたいです」

(´・ω・`)「ふうん」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:26:33.88 ID:ZXe5gVqI0

 ショボンはルカに「金庫の中身を確認しておけ」と言ってから、風呂場から出た。
 チョークが引かれてあった場所に、一枚のキャンバスが落ちているのを見て、手袋をはめた手でそれを拾い上げる。

(´・ω・`)「未完成だ」

从*゚ーノリ「鬱田ドクオはその絵を描いている途中で殺されたとみています」

 ルカは倒れていたイーゼルと丸椅子を立て、ショボンからキャンバスをもぎ取りイーゼルに立てかけた。

从*゚ーノリ「ちょうどこんな感じで」

 キャンバスに向かい合うように椅子に座った。
 背中がベランダに向いている格好だ。

(´・ω・`)「そして後ろから、ナイロン製の洗濯用のヒモで絞め殺したという訳か」

从*゚ーノリ「ええ」

(´・ω・`)「妙だな」



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:28:30.07 ID:ZXe5gVqI0

 開けはなった戸からベランダに出たショボンは、低い声で呟いた。
 くるりと後ろを向き、ルカの方を振り返る。

(´・ω・`)「犯人はこのベランダから侵入し、室内で絵を描いていた鬱田ドクオを殺害したということか」

从*゚ーノリ「そう見ています」

(´・ω・`)「いくらなんでも部屋に誰か入ってきたら気がつくだろう」

从*゚ーノリ「そのことについて、ちょっと面白いことが聞けました」

 ルカはアパートの住人から、ドクオが絵に熱中しているときは
 例え火事が起こっても気がつかないという話を聞いたことを伝えた。

(´・ω・`)「そういう人間なら、気がつかないかもしれないな」

从*゚ーノリ「よほど絵がお好きだったんでしょうね」



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:30:20.21 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「ベランダのガラス戸に鍵はかかっていなかったのかな」

从*゚ーノリ「絵を描くときは解放していたらしいです。死体発見時も解放していたままでした」

(´・ω・`)「……そうなんだ」

 訊きながら、ベランダの木の柵から身を乗り出し、下をのぞき込んだ。
 下は103号室だ。下の部屋のベランダの柵を使えば、二階に上がれるかもしれないとショボンは思った。
 アパートの裏はコンクリートの塀を挟んで建っている民家のせいで、ほとんど陽が当たってこなかった。

(´・ω・`)「んっ?」

 ふと横を向いたとき、隣の部屋のベランダと意外と近いことに気がついた。
 意を決して飛び移れば移動できない距離ではなさそうだ。
 じっくり確認してから、ショボンは部屋の中へ戻っていった。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:32:24.69 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「ルカ。隠し金庫のことだけど、住人はその存在は知っていたのか」

 物取りのはずなのに、どうして隠し金庫と住人を結びつけるのか、ルカにはわからなかった。

从*゚ -ノリ「絵と金庫の自慢話を会う度に聞かされていたみたいです。
     アパートの住人は全員金庫があることを知っていました」

(´・ω・`)「金庫がどこにあるのか、中身はなんなのか、というのは?」

从*゚ -ノリ「さすがにそこまでは聞いてないみたいでしたけど。
     でも中身はきっとお金でしょう。銀行は信用出来ないということを言っていたと、住人から証言を得ましたし」

 ルカは資料で確認するでもなく、ぺらぺらと住人の証言を述べていった。
 そういえば彼女のあだ名は“歩く資料室”だったな、とショボンは思い出した。
 ファイルの内容や証言などを、メモを取らなくても完璧に思い出せる特徴からきている。
 また証人の一挙一動も頭の中に入っている。天才的な記憶力だと捜査一課では噂されていた。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:34:32.24 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「指紋は出てるか」

从*゚ -ノリ「そういうへまはしていないみたいです。
     部屋の中とベランダの指紋を確認しましたけど、害者の指紋以外は出てきませんでした」

(´・ω・`)「きっともう一度取ることになる」

从*゚ -ノリ「えっ?」

 ルカの困惑した態度には反応せず、ショボンは部屋から出ようとしていた。

(´・ω・`)「聞き込みを始める」

 彼の歩みには、何かを掴んでいるような自信が感じられた。
 ルカは急ぎ足で、彼の背中を追った。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:36:30.16 ID:ZXe5gVqI0

 −4−

 202号室は空き部屋なので、聞き込みは201号室から始めることにした。
 しかしショボンは202号室を素通りすることはせず、中を調べたいとルカに言った。

从*゚ーノリ「この空き部屋から侵入して、ベランダから飛び移ったって考えてるんですか?」

(´・ω・`)「まあな」

从*゚ーノリ「無理ですよ。空き部屋にだって鍵はかかっていたんですから。壊された形跡もありませんし」

(´・ω・`)「ちょっと中を確認したいだけだ」

 輪っかに束ねられた鍵から空き部屋の鍵を探し、ルカがドアを解錠した。
 ドアを開け、二人は中へ入った。家具も人もいないと、同じ部屋でも広く感じられた。

 靴を脱ぎ、中に入ると、キッチンとバスルームを確認した。
 次に押し入れの中を探り始める。

(´・ω・`)「……」



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:38:43.08 ID:ZXe5gVqI0

 頭から押し入れに入っていったショボンは、出てきたときには一枚の毛布を手にしていた。

从*゚ーノリ「1年前まで住人がいたらしいです。臭いに堪えかねて出て行ったって、大家さんが」

(´・ω・`)「無理もない」

 ショボンは毛布に顔を近づけ、臭いを嗅いだ。

从*゚ーノリ「ここのベランダの鍵は、事件当時開いていたらしいです」

(´・ω・`)「開いていた?」

从*゚ーノリ「まあつまり、ずっと開いたままだったってことでしょうね」

 ルカがガラス戸に手をかけると、何の抵抗もなくするすると開けられた。
 ベランダから見える景色は、203号室と同じ、窓の無い民家の壁と、その向こうにある殺風景な雑木林だった。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:41:20.10 ID:ZXe5gVqI0

 −5−

 201号室は夫婦が住んでいる部屋だ。

 呼び鈴を鳴らすと、すぐにドアは開いた。一番最初に見えたのは、小学生の女の子だった。
 彼女は開いたドアのすぐ下に居たので、ドアを開けたのは彼女だとわかった。

 少女の後ろには、カーディガンを羽織った三十前後の女が立っていた。
 化粧っ気が無いが顔が整っているので、化粧次第では随分と若く見えるだろうとショボンは思った。

(´・ω・`)「警察の者です。203号室の事件のことで、お話を」

 無表情だった女の顔に、緊張の色が浮かんだ。
 空気が変わったことに気がついたのか、少女は奥の部屋に走り去っていった。

川 ゚ -゚)「話すことは全てお伝えしましたが」

(´・ω・`)「ああ、ご心配なく。いくつか確認を取るだけですので」

 話しながらショボンは女越しに室内を一瞥した。
 取り立てて変わったものも置かれていない、ごく一般的な家庭という感じだった。
 先ほどの少女がこたつに潜っているのが見える。
 部屋を訪れる前に確認した資料では、少女の名前はヘリカルといった。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:43:51.54 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「ご主人はおられますか?」

川 ゚ -゚)「今出かけています」

 最も話を聞きたい相手が居なかったことに多少の落胆を覚えるが、悔やんでも仕方が無い。

(´・ω・`)「あなたはクーさん、ですよね」

川 ゚ -゚)「ええ」

(´・ω・`)「事件が起こったとき、あなたは店で働いていたと聞いていますが」

川 ゚ -゚)「はい、そうです」

(´・ω・`)「申し訳ありませんが、一応店の方の連絡先を教えて頂けないでしょうか」

 表情の少ないクーが露骨に嫌そうな顔をしている。

(´・ω・`)「よほどの事情が無い限り職場に連絡をつけることはりません。
     それにあなたを疑っている訳ではなく、あくまで確認の為なんです。
     事件を起こしたのは強盗の仕業ですしね。何とか捜査にご協力できないでしょうか」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:47:09.32 ID:ZXe5gVqI0

 そこまで言われて、渋る訳にはいかない。
 クーは一度奥に戻り、店の名前と電話番号が書かれた紙を持ってきて、ショボンに渡した。
 キャバクラの名前だった。

 ショボンの後ろでじっとしているルカは、ただの聞き込みでそこまでしなくても、と思っていた。
 無理矢理聞き出したショボンよりもルカの方が申し訳なさそうな顔をしていた。

(´・ω・`)「第一発見者はあなたでしたね」

川 ゚ -゚)「はい」

(´・ω・`)「そのときの様子を教えてください」

川 ゚ -゚)「仕事から帰ってきたとき、いつもより油絵の臭いが酷いと思って。
     そしたらドクオさんの部屋の扉が少し開いていたんです。
     このアパート、玄関の立て付けが悪くて、鍵をかけてないと勝手に開いちゃったりするから」

(´・ω・`)「なるほど。ではドアを閉めようとして近づいたところに、ということですか」

川 ゚ -゚)「ええ。そうです」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:50:23.81 ID:ZXe5gVqI0

 ショボンは訊いたことをメモに取り、考え込むように唇を指を当てた。

(´・ω・`)「モララーさんは働いておられないんですよね」

 質問の内容が突然夫に飛んだことで、クーの目が微かに揺れ動いた。

川 ゚ -゚)「ええ、まあ」

(´・ω・`)「普段は何をしているんでしょうか」

川 ゚ -゚)「仕事を探すか……たまにバイトをしたりしています」

 事件のことと無関係に思える質問に、ルカはうろたえている。
 これはただの聞き込みでは無いと感じ始めた。

(´・ω・`)「お子さんは事件当日、この部屋で眠っていたらしいですね。
     少しだけ話を訊かせてもらってもよろしいでしょうか」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:51:37.93 ID:ZXe5gVqI0

川 ゚ -゚)「いいですよ。ヘリカル」

 クーが奥の部屋に向かって呼ぶと、こたつに入っていた少女がとたとたとこちらに駆けてきた。
 ショボンたちの姿を見やると、クーの後ろに隠れてしまう。

(´・ω・`)「やあ。訊きたいことがあるんだけど、いいかな?」

 こくん、とヘリカルは頷く。

(´・ω・`)「この前の金曜日、夜の九時よりあとに、変な物音とか聞いてないかな?」

*(‘‘)*「聞いてないよ」

 小さなおさげを横に振って、ヘリカルは否定した。

(´・ω・`)「そのとき何してたか覚えてる?」

*(‘‘)*「テレビ見て、お風呂入ってから寝た」

川 ゚ -゚)「大体十時頃には、いつも寝ちゃうんです」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:53:38.22 ID:ZXe5gVqI0

 若者の夜更かしが年々酷くなっている統計があるが、ヘリカルは小学一年生だ。
 最初から期待はしていなかったが、それ以上彼女について訊くことは無さそうだった。

(´・ω・`)「お父さんは一緒にいた?」

*(‘‘)*「いたよ」

(´・ω・`)「寝るまでいたの?」

*(‘‘)*「うん」

(´・ω・`)「寝てからも?」

*(;‘‘)*「えっ?」

 「変な質問ですよ」ショボンの後ろからルカの非難が聞こえてきた。

从*゚ -ノリ「寝てたらわかるはずないじゃないですか」

(´・ω・`)「ああ、そうだったな。これは失敬」

川 ゚ -゚)「……」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:55:21.59 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「以前訊いた話では、モララーさんはずっと部屋にいたらしいですね」

川 ゚ -゚)「はあ、たぶん」

(´・ω・`)「わかりました。その辺りは今度、モララーさん自身にお聞きするとして」

 クーは小さくため息をついた。
 また来られるのが嫌なようだ。

(´・ω・`)「ドクオさんのことについて、お聞かせください。
     彼が普段どういう生活をしていたか、どんな人柄か、答えられる範囲で良いので」

 クーは顎に手を当てて、考え込む仕草をした。

川 ゚ -゚)「昨日お話ししたことと同じだと思うんですけど」

(´・ω・`)「はい」

川 ゚ -゚)「かなり変わった人でした。絵が凄い好きらしくて」

(´・ω・`)「変わってるというのは?」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:57:08.75 ID:ZXe5gVqI0

川 ゚ -゚)「いつも大体アパートにいて、絵を描いているみたいなんですよ。
     ほら、匂いでわかるんです。描いているかどうか」

(´・ω・`)「ああ、なるほど」

川 ゚ -゚)「アパートとかですれ違ったら、よく話しかけてきました。
     大抵は絵の話でした。昔は相当有名な画伯だったと言っていました」

(´・ω・`)「信じていましたか?」

川 ゚ -゚)「少し。絵を見せてもらったことがあるんですけど、凄く上手かったし。
     いつも自慢げに話していたから、ひょっとしたらって」

(´・ω・`)「ドクオさんの部屋には金庫があるんですが、そのことは?」

川 ゚ -゚)「聞いたことがあります。凄い大金が入っているんだったかな」

(´・ω・`)「そう聞いたんですか?」

川 ゚ -゚)「いえ、たぶんはっきりとそう聞いた訳ではないんですけど……」

 その後、資料と照らし合わせながらいくつか質問をした。
 聞き込みが終わると、ショボンは丁寧に礼を述べた。
 扉が閉め切られるまでショボンは頭を下げていた。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 17:58:56.47 ID:ZXe5gVqI0

 −6−

从*゚ -ノリ「ショボンさん。ただの聞き込みの度を超えていますよ」

(´・ω・`)「何が?」

 アパートの階段を下りていたショボンは、振り返らずに言った。

从*゚ -ノリ「まるで容疑者にするような質問でした」

 下に降りると、ショボンは102号室を目指して歩いた。
 そこには男が一人で住んでいるはずだ。

(´・ω・`)「間違ってない」

从;゚ -ノリ「それじゃあ……」

(´・ω・`)「この部屋に住んでいるのは浪人生だったか」

 ショボンはここに来る前に聞いておいたデータを思い出しながら言った。

从*゚ -ノリ「そうです。19歳の浪人生が一人暮らしで」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:00:50.89 ID:ZXe5gVqI0

 こうやって逐一質問しなければならないのがうざったかった。
 昨日、ルカは一人でこのアパートにやってきて、聞き込みをしていた。
 ショボンが別件で仕事をしていて、二人で来られなかったせいだ。

 呼び鈴を鳴らし、しばし待った。
 反応が無いので、もう一度呼び鈴を鳴らそうとショボンが手を伸ばしたとき、ドアが小さく開いた。

(´・ω・`)「警察の者です」

 開いたドアから、眼鏡をかけた神経質そうな男が顔を覗かせた。
 警察と聞くと、男はドアを完全に開き、姿を見せた。
 片手をポケットに入れていて、あまり態度は良くなかった。

(´・ω・`)「事件のことで、いくつか訊きたいことがありますので、ご協力ください」

(-@∀@)「良いですけど」

(´・ω・`)「アサピーさん、でしたね」

(-@∀@)「はい」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:02:36.82 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「18日の金曜日、午後九時以降に、不審な物音を聞いたり、不審な人物を見たりとかしませんでしたか?」

(-@∀@)「昨日も話しましたよ」

(´・ω・`)「申し訳ありません。これは確認の為なので」

(-@∀@)「ずっと部屋に籠もっていたので、何も気がつきませんでした」

(´・ω・`)「部屋で勉強を?」

(-@∀@)「はい」

 ショボンはちらっと奥の部屋に視線を送った。無駄なものが一切無い部屋だった。
 壁の隅に、本がうずたかく積まれているのが見える。

(´・ω・`)「おっ」

 視線を戻すとき、玄関の靴だなの上に宝くじの券が数枚あるのが見えた。

(´・ω・`)「宝くじですか。私も買ったことがあります。
     といっても300円しか当たったことないですけど」

(-@∀@)「はあ」



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:04:37.24 ID:ZXe5gVqI0

 緊張をほぐすつもりの話だったが、あまり興味はなさそうだった。

(´・ω・`)「寝るまで勉強していたんですか」

(-@∀@)「そうです」

(´・ω・`)「ふむ。ドクオさんについて、知っていることを聞かせてください」

 アサピーは片手で眼鏡を直し、一拍間を入れてからドクオのことを話し始めた。
 大体クーの言っていたことと同じだった。

(´・ω・`)「ほとんど外出はしなかったそうですね」

(-@∀@)「はい」

(´・ω・`)「それにしても、油絵の臭いが酷いですね」

 こうやって玄関先で話しているときでさえ、つんと鼻をつく。

(-@∀@)「みんな困ってましたよ」

(´・ω・`)「みんなというと?」



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:06:46.96 ID:ZXe5gVqI0

(-@∀@)「アパートの人たちですよ。大家さんに苦情を言った人もいるみたいです」

(´・ω・`)「あなたはそうしなかったんですか」

(-@∀@)「どうせ誰かが言うだろうと思って」

(´・ω・`)「なるほど。他に何か、ドクオさんのことについて話せることはありますか?」

(-@∀@)「いや、特には。ところで刑事さん」

(´・ω・`)「何でしょう?」

(-@∀@)「強盗犯は捕まえられそうですか?」

(´・ω・`)「現在、捜査一課が死力を尽くしています。
     早くあなたが落ち着いて勉強が出来るよう努力しましょう」

(-@∀@)「お願いしますね」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:08:58.37 ID:ZXe5gVqI0

 −7−

 101号室のフリーターはどうやら留守らしく、呼び鈴を押しても反応しなかった。
 住人の名前がジョルジュということだけ確認し、ショボンたちは103号室へ向かった。

从*゚ーノリ「この部屋にはギコとしぃという夫婦が住んでいます。
     クーのところと違って子供はいません。事件当日は、夫は仕事で、家にはしぃだけがいたらしいです」

 ショボンがファイルを見て情報をおさらいしている横で、ルカは得意げに訊いたことを話している。
 歩く資料室はとてもお喋りなたちだった。

 ショボンが呼び鈴を鳴らすと、二十台前半らしき女がドアを開けた。
 ショートカットで髪を染めている、童顔の女だった。

(´・ω・`)「しぃさんでしょうか?」

(*゚−゚)「はい」

 口元に緊張が浮かぶ。ルカの顔は知っている為、二人が警察なのをわかっていた。

(´・ω・`)「警察の者です。先日の聞き込みの内容を確認する為に、いくつか質問にきました」

 話している途中で、奥から一人の男がやってきた。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:10:39.94 ID:ZXe5gVqI0

 身長の低いしぃよりも少し高いくらいの、小柄な男だった。
 上下スウェットで、しぃと同じキャラクターもののスリッパを履いていた。

(´・ω・`)「ギコさんですか」

(,,゚Д゚)「そうだゴルァ」

(´・ω・`)「事件のことで、いくつか訊きたいことが」

(,,゚Д゚)「昨日も訊かれたぞ」

(´・ω・`)「今日はただの確認です」

 ギコの舌打ちは、ショボンの後ろに立っているルカにも聞こえた。
 警察が嫌いなようだった。

(´・ω・`)「18日の金曜日、ギコさんは夜遅くまで残業をされていて、家に居なかったようですね」

(,,゚Д゚)「ああ」

(´・ω・`)「大体いつ頃まで?」



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:12:38.97 ID:ZXe5gVqI0

(,,゚Д゚)「帰ってきたのが12時くらいだったから、11時くらいまでかな」

(´・ω・`)「職場の連絡先を教えて頂けないでしょうか?」

 ギコの顔が赤く怒張してくるのが目に見えて分かった。
 どうやら彼は相当な短気らしい。

(,#゚Д゚)「おれのこと疑ってんのかゴルァ!」

(*;゚−゚)「あなた!」

 彼の横でしぃが制止しようとするが、今にも掴みかかってきそうな剣幕で怒鳴る。
 ショボンは穏やかな顔で彼をなだめる。だが彼の怒りは収まらない。

(´・ω・`)「あなたを疑っている訳ではありません。強盗犯が同じアパートにいる訳無い」

(,#゚Д゚)「じゃあどうしておれの仕事が関係あんだぁ!? ゴルァ!」



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:14:19.18 ID:ZXe5gVqI0

 ショボンの冷静な態度が逆に彼の勘に障るようだ。

(*;゚−゚)「申し訳ございません。今日のところはこれで」

 見かねたしぃが怯えた声で言った。

(´・ω・`)「そうした方がよさそうですね。おや」

 ショボンの視線はしぃの手に向いていた。
 手の甲に大きな絆創膏が貼ってあったのだ。

(´・ω・`)「その傷は、どうされたんです?」

 ショボンが指さすと、しぃは少し困ったような表情で、

(*゚−゚)「お料理に失敗しちゃって」

 と言った。



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:17:02.79 ID:ZXe5gVqI0

 −8−

从*゚ーノリ「そろそろ話してくれても良いんじゃないですか?」

(´・ω・`)「何をだ」

 アパート近くの路地に車を止めて、ショボンたちは見張りを行っていた。
 モララーとジョルジュが帰宅するのを待っているのだ。

从*゚ーノリ「どうして住人を疑っているのかですよ」

 助手席から身を乗り出す勢いで迫ってくるルカに、ショボンは少々たじろいだ。
 ルカの体から仄かに香水の匂いがした。

(;´・ω・)「近い。離れろ」

从*゚ーノリ「離れたら教えてくれます?」

(´・ω・`)「少しだけな」

 ルカが離れると、気を落ち着かせるかのようにショボンはスーツの袖を直した。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:19:28.20 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「犯人の狙いはどう考えても金庫とドクオだ」

 ショボンは制服のポケットから煙草を取り出し、口に咥えた。
 ルカが見たこともないような外国の煙草だった。

(´・ω・`)「外部犯ならもっと入りやすそうで、金がありそうな家を狙う。
     それも家に人がいるときなんて狙わない。
     犯人は確固たる殺意と金庫という目的を持った上でドクオの部屋を狙ったんだ。
     その証拠に、金目のものはほとんど盗まれていないにも関わらず、部屋はかなり荒らされていた。
     普通なら探さないだろう押し入れの奥も、中にあった布団をわざわざ出して調べている。
     犯人は殺害後、必死に金庫を探したんだ」

从*゚ -ノリ「殺意って、住人たちに殺害の動機なんて無さそうでしたけど」

(´・ω・`)「何が理由で憎しみを生むのかわからない。傍目には目を剥くような拙い理由かもしれない。
     とにかく、犯人は行きずりの強盗じゃなくて、このアパートの住人の可能性が高い。
     ドクオの友人関係は洗う必要も無いくらいさっぱりだ。
     彼の周りにいる者で、金庫のことを知っているのはこのアパートの住人くらいだ」

从*゚ -ノリ「ははあ、なるほど」

(´・ω・`)「アパートの住人の誰かが他の者に金庫のことを話したのかもしれない。
     でも通常は考えにくいし、殺意が生まれる理由にもならない」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:21:31.10 ID:ZXe5gVqI0

从*゚ -ノリ「じゃあ誰が殺したんですか?」

(´・ω・`)「幸い検死の結果で、死亡推定時刻は確定している。
     コンビニ弁当の消化具合から、午後十時半から十一時半だとわかっている。
     その間のアリバイを調べれば、わかると思っていた」

从;゚ -ノリ「思っていた?」

(´・ω・`)「きた」

 夕暮れ空の下、スクーターに乗った男が前からやってきた。
 ショボンたちが乗っているスカイラインの横を通り、アパートの駐車場へ入っていった。

 ショボンは無言で車から降り、早足で男に近づいていった。
 質問をはぐらかされたルカは、納得のいかない顔でショボンの後ろを追った。

( ・∀・)「……」

(´・ω・`)「警察の者です。モララーさんですよね?
     事件のことについて訊きたいことがあります。よろしいですか?」

( ・∀・)「いいよ」



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:23:15.72 ID:ZXe5gVqI0

 革ジャンを着た男は、長い前髪の間からショボンたちを観察するように目を這わせた。
 目尻にやや皺があるが、格好は今風の若者という感じだった。

(´・ω・`)「ここでお話するのはちょっとまずいですね。
     近くに車を停めてありますが、そこで良いですか?」

( ・∀・)「ああ」

(´・ω・`)「ではこちらへ」

 ショボンは車まで案内すると、助手席のドアを開けてから、運転席に乗り込んだ。
 モララーは助手席に座り、ルカは後部座席に座った。

(´・ω・`)「簡単なことです。先日訊いたことの確認程度ですから」

( ・∀・)「煙草吸ってもいいかい」

 ジャンパーの胸ポケットから、煙草を取り出しながらモララーが訊いた。
 「いいですよ」ショボンが答えると同時に、モララーはジッポライターで煙草に火をつけた。
 非喫煙者のルカが渋い顔をしたのが、ショボンの席からバックミラーで見えた。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:25:11.32 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「では、18日の金曜日のことを訊かせてください。午後九時以降から、寝るまでに。
     何か変わったことはありませんでしたか? 不審な物音や、人物などを見たとか」

( ・∀・)「さあ、知らないな」

(´・ω・`)「その時間はずっと家に?」

( ・∀・)「ああ。子供を寝かしつけて、酒を少し飲んでから寝たよ。12時くらいだったかな」

(´・ω・`)「お子さんとはずっと一緒だったんですね?」

( ・∀・)「まあな」

(´・ω・`)「寝かせたあとも?」

( ・∀・)「なあ、刑事さん」

 モララーは一度大きく煙草を吸い、深呼吸のようにはき出した。
 紫煙が車内に立ちこめた。
 ショボンはモララーの、左手の薬指を注視している。
 滑らかな光沢をした銀色のリングが輝いていた。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:27:04.19 ID:ZXe5gVqI0

( ・∀・)「早いとこ犯人を捕まえてくれ。うちには小さい娘がいるんだからよ」

(´・ω・`)「ええ、全力で捜査に当たります」

( ・∀・)「強盗殺人なんだろ。中国人とか、そういうギャングの連中か?」

(´・ω・`)「わかりません。鑑識の結果次第では、そういう可能性も」

 モララーはぺろりと唇を舐めた。
 ショボンとモララーはお互いがお互いを探り合うような目つきをしている。

(´・ω・`)「金曜日は、ふだん何をしているんですか?」

( ;・∀・)「は?」

(´・ω・`)「参考までに」

 思わぬ質問にモララーがたじろいだ。
 戸惑いの他に、何かが表情をよぎったようにショボンは感じた。

( ・∀・)「別に、何も」



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:29:12.29 ID:ZXe5gVqI0

 表情はすぐに元通りになった。
 ショボンは納得したように数度小さく頷いてから、ドクオの質問に移った。

( ・∀・)「あいつは家があるホームレスだよ。一日中アパートに籠もって絵を描いてる」

(´・ω・`)「油絵ですね」

( ・∀・)「飯を食っているときなんかにあの臭いを嗅いだら吐きそうになるぜ」

(´・ω・`)「夏は大変そうですね」

( ・∀・)「まあな」

 モララーはしきりに時計の時間を気にしていた。
 クーの出勤時間が迫っているのかもしれないと思い、ショボンはそこで質問を切った。

(´・ω・`)「また確認をしにくるかもしれないので、その時はよろしくお願いします」

( ・∀・)「ああ。じゃあな」

 車を出て、アパートに戻っていくモララーの背中を、ショボンはじっと見つめていた。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:30:52.62 ID:ZXe5gVqI0

 −9−

 101号室のジョルジュがアパートに帰ってきたのは、午後八時を回った頃だった。
 歩いて帰ってきた彼は、ややほろ酔い気味の足取りだった。

(´・ω・`)「すみません」
  _
( ;゚∀゚)「えっ」

 後ろから声をかけると、ジョルジュはびくっと体を揺らした。

(´・ω・`)「警察の者です。203号室の事件のことで、少しお話を」

 ショボンの後ろにルカが居るのを見て、「ああ……」と納得した顔でジョルジュは呟いた。
 心なしかほっとしているようにも思えた。

(´・ω・`)「近くに車が停めてありますが、あなたの家で話を伺うことも出来ます。
     どちらがよろしいですか?」
  _
( ゚∀゚)「車が良いです」

 ジョルジュは迷うことなく即答した。ショボンはこくりと頷いてから、車に向かって歩き出した。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:32:42.94 ID:ZXe5gVqI0

 助手席に座っているジョルジュに、他の住人に訊いたことと同じ質問をした。
 ジョルジュの話では、午後九時からは少し遠くの繁華街で飲んでいたとのことだった。

(´・ω・`)「飲んでいた店の名前はわかりますか?」
  _
( ゚∀゚)「ああ、どこだったかな」

 腕を組んで鼻をすすりながら、目線を上に向けて思い出そうとする素振りをしていた。
  _
( ゚∀゚)「酔っていたから忘れたよ」

(´・ω・`)「お一人で?」
  _
( ゚∀゚)「ああ」

(´・ω・`)「帰ったのはいつ頃ですか?」
  _
( ゚∀゚)「12時くらいだったと思うよ」

(´・ω・`)「本当に?」

 ショボンがすごむと、ジョルジュの目が微かに泳いだ。



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:33:58.76 ID:ZXe5gVqI0
  _
( ;゚∀゚)「えっと、いや、酔っていたから、そんなに精確ではないかも」

(´・ω・`)「……」
  _
( ;゚∀゚)「でもたぶん12時頃だったんじゃないかと。
     うちはテレビとか時計が無いんですよ。そのときたぶん携帯の電池が切れてたし。
     だからそんなに精確じゃないんじゃないかなあと思います」

(´・ω・`)「わかりました」

 ジョルジュは明らかに動揺していた。
 警察をとても恐れているようだった。

(´・ω・`)「出かけたとき、帰ってきたときに、何か気がついたことはありますか?」

 ジョルジュの瞬きの回数が徐々に増えていく。
 必死に思い出そうとしているようだが、何も覚えていないようだった。

(´・ω・`)「まあ、何か思い出したら連絡してください」



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:36:52.09 ID:ZXe5gVqI0
  _
( ゚∀゚)「あっ、は、はい」

(´・ω・`)「それでは」

 ジョルジュはあまり体調がよくないようだった。
 質問の最中に何度も鼻をすすり、時折体を震わせていた。

 アパートに帰っていく彼は、肩を抱いて大げさに寒がっていた。
 モララーのときと同様に、ショボンは背中を凝視していた。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:38:18.53 ID:ZXe5gVqI0

 −10−

(´・ω・`)「困った」

 一応全員の聞き込みが終わったが、ショボンはアパート前に車を停めて動かないでいた。

从*゚ -ノリ「困りましたね」

 ジョルジュが出ていったあと、助手席に座り直したルカは、腕組みをして俯いていた。
 二人とも表情は暗い。

(´・ω・`)「事件当時、アパートにいたのは四人。モララー。アサピー。しぃ。そしてドクオ」

从*゚ -ノリ「でも容疑者は3人じゃない」

(´・ω・`)「ジョルジュのアリバイが無い以上、彼の証言を鵜呑みにすることは出来ない」

 ショボンは煙草を取り出し、火をつけた。
 ため息と一緒に煙をはき出した。

(´・ω・`)「つまりドクオを殺害出来た人物は4人で、その4人には全員アリバイが無い」



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:41:01.74 ID:ZXe5gVqI0

从*゚ -ノリ「フツー逆ですよね」

 ルカの言葉には一種の苛立ちが含まれていた。

从*゚ -ノリ「ほら、ドラマとか小説だと、全員にアリバイがあるはずじゃないですか。
     なのに全員がアリバイなしって、どういうことなんでしょうか」

(´・ω・`)「時間的に仕方無いところもあるがな。だが僕が困っているのはもっと別のことだ」

从*゚ -ノリ「別のことって?」

(´・ω・`)「論理的思考を排除した刑事の勘というもので言わせてもらえると」

从*゚ -ノリ「もらえると?」

 ショボンは吸い殻入れに、まだ吸う余地が多く残っている煙草を押しつけた。
 エンジンキーを回し、ハンドルを握る。

(´・ω・`)「住人は嘘をついている。しかも全員だ」

 ルカがはっと息を呑んだ。
 車がゆっくりと発進していった。



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:44:10.82 ID:ZXe5gVqI0
ちょっとだけ休憩です。↓アパートの見取り

  _
( ゚∀゚)101        (-@∀@)102   (,,゚Д゚)(*゚ー゚)103

( ・∀・)川 ゚ -゚)*(‘‘)*201   空きや202     ('A`)203



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:53:03.83 ID:ZXe5gVqI0

 −11−

 しぃは買い物かごを押しながら、夕飯は何にしようか考えていた。
 横を歩いているギコは、いつものスウェット姿だった。

 夕方のマーケットはそこそこ混んでいて、主婦の姿が多く見えた。
 腹が出た厚化粧の主婦が目の前を通り過ぎるのを見たとき、
 自分もこのようなおばさんと同じ立場であるという思い込みから、憂鬱な気分になった。

(,,゚Д゚)「今日は鍋がいいぞ」

(*゚ー゚)「ごめんなさい。今日は魚が安い日だから、焼き魚とか、お刺身にしたいの」

(,,゚Д゚)「ちっ」

 ギコは不満げに舌打ちをした。彼から見えないように、しぃはそっと顔をしかめた。
 どうしてこの男と結婚してしまったのだろうと、毎日のように彼女は考えている。

 鉄工所で働いているギコと出会ったのは、彼女がまだ高校生の頃だった。
 若かった、とその頃を思い出して、しぃは自分の思慮の浅さに後悔する。



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:55:30.00 ID:ZXe5gVqI0

 魚のパックと漬け物、それからビールを2缶買って、しぃは会計へ向かった。
 会計はいつもギコがしていた。しぃにはほとんど金を持たせない主義だった。
 しぃの月々の小遣いは安く、同じ年頃の女のような遊びが何一つ出来なかった。

 会計を終え、袋に商品を詰める作業はしぃがやっている。
 ギコは先にマーケットから出て、吸い殻入れがある場所で煙草を吸っていた。

(*゚ー゚)「おまたせ」

(,,゚Д゚)「帰るぞゴルァ」

 ギコはしぃの手から買い物袋を奪い取り、先に歩き出していった。
 彼と並ぶことはせず、少し後ろを歩くようにしてしぃはついていった。
 これはギコが優越感を感じる距離感なのだと、しぃは知っていた。

 アパートまでは歩いて十分ほどで、しぃはその間ずっとギコに喋りかけていた。
 彼が打つ相づちは素っ気なく、ほとんど一方的なお喋りという感じだった。

(,,゚Д゚)「あっ」

 アパートの前に停めてあった車に、もたれかかっている者を見つけたとき、ギコは小さく唸った。
 先日アパートを尋ねてきた二人組の警察だとすぐにわかった。



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:57:10.17 ID:ZXe5gVqI0

(,,゚Д゚)「犬どもが。しつこくやってきやがるな」

 声が届かないのを良いことに、警察相手に毒を吐くギコの後ろで、しぃは青ざめた顔をしていた。
 二人組の警察のうち、男の方が先にこちらに気がつき、にこやかな顔で近寄ってきた。

(´・ω・`)「どうも。先日も話を訊かせて頂いたショボンです」

 胸ポケットから警察手帳の端を出し、ショボンは言った。
 彼の後ろに居た女も「ルカです」と名乗り警察手帳を開いた。

 初めて会ったときから、とても警察とは思えない女だ、としぃはルカを見て思っていた。
 話し方や素振りを見ても、同年代のような親しみがあった。
 ただし気を許せる訳が無く、しぃの体はかちこちに緊張している。

(´・ω・`)「今日はしぃさんに話を訊きにきました」

(*;゚−゚)「私にですか」

(´・ω・`)「ええ。お時間よろしいですか?」



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 18:59:01.72 ID:ZXe5gVqI0

(,#゚Д゚)「まどろっこしいやつだな。さっさと訊けばいいだろ」

 早くもギコは苛立ってきているようで、その様子にルカは怯えていた。

(´・ω・`)「当日の様子をもう一度確認したいだけです」

(,#゚Д゚)「それだったらしぃはずっと家にいたはずだ。そうだろ?」

 ギコが同意を求めているしぃは、ただ頷いているだけである。

(´・ω・`)「間違いありませんね?」

(,#゚Д゚)「当たり前だろ。しぃが嘘をつくはずねえじゃねえか」

(´・ω・`)「私も、しぃさんが嘘をつくタイプでは無いと思っています」

 ショボンはやたらしぃを持ち上げるように強調して言った。
 すると逆に、しぃはどんどん萎縮していった。

(,#゚Д゚)「しぃ。行こうぜ。こいつらに何か変なこといったら、すぐにマスコミに流れちまうぞ」

(*;゚−゚)「マスコミ?」



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:00:57.66 ID:ZXe5gVqI0

 俯き気味だったしぃがぱっと顔を上げた。
 彼女は何かに怯えるような目つきをしていた。

(,#゚Д゚)「そうさ。マスコミと警察は繋がってるからな。
     ちょっとでもネタになりそうなこと言えば、すぐに記事にされて晒しもんにされんだよ」

(´・ω・`)「個人の情報は守りますけどね。繋がりだって大してありませんし」

(,#゚Д゚)「いいや、嘘だな。おまえらは嘘つきだ。警察はみんな嘘をつく」

(´・ω・`)「つくのではなく、見抜くのが仕事です」

(*;゚−゚)「あのっ、あ、ごめんなさい」

 しぃは泣きそうな顔をしていた。頭が混乱しているようだ。
 どうして自分がショボンたちに謝っているのかさえわからないような顔をしていた。

 今日も無理そうだな、とショボンは思った。
 適当に別れの挨拶をしてから、ショボンたちはギコたちの前から去っていった。

 ギコは鼻息荒くし、ショボンたちの背中を睨み続けていた。
 しぃはいつまでも青い顔をして俯いていた。



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:03:20.16 ID:ZXe5gVqI0

 −12−

 ショボンはルカと別れ、単独で行動していた。
 今夜ショボンが行くのが、クーが働いているキャバクラだったからだ。

 繁華街の中心にあるビルの三階に、目的のキャバクラがあった。
 重そうな木の扉の前に、ロシア語の店名が書かれている看板がある。
 ショボンはネクタイの位置を直してから、店の扉をくぐった。

 薄暗い店内には、洋楽のポップ曲が流れていた。

(‡`Д´)「いらっしゃいませ! お客様お一人ですか!?」

(´・ω・`)「すいません、私はこういうものです」

 すぐさまやってきた黒服に、警察であることを伝えると、男は営業スマイルをやめた。
 黒服の頬にはタトゥーを消した跡がある。
 ショボンは薄く笑いながら、店長と話をしたいと言った。

 「少々お待ちください」そう言って黒服は奥へ走って消えた。
 間もなく店長らしき中年の男がやってきて、ショボンは店の奥にある事務室らしき部屋に案内された。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:06:55.18 ID:ZXe5gVqI0

(´・_ゝ・`)「店長のデミタスです」

(´・ω・`)「警部のショボンです。お忙しいところ申し訳無い」

 小さなデスクに二人は向かい合って座った。
 壁にはスーツやカレンダーがかかっていて、ロッカーなどのせいで部屋は狭い。

(´・_ゝ・`)「それで、うちの従業員に何かあったのでしょうか」

(´・ω・`)「いや、直接の関係は無いんです。ちょっとした確認の為だけに来たので。ご安心を」

 しかしデミタスの警戒は解かれず、緊張した顔は強ばっていた。

(´・ω・`)「クーさんという女性が働いていますよね」

(´・_ゝ・`)「ええ」

(´・ω・`)「彼女の住んでいるアパートで、先日殺人事件が起こりました。
     そのとき彼女はこちらで働いていたと聞いています」



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:08:44.65 ID:ZXe5gVqI0

(´・_ゝ・`)「いつでしょうか」

(´・ω・`)「18日です。正確にいえば18日と19日でしょうか」

(´・_ゝ・`)「少々お待ちを」

 デミタスは近くの棚から勤務表を取り出し、確認してからデスクの上に置いた。

(´・_ゝ・`)「確かに働いています。まだカメラの記録にも残っているはずです」

(´・ω・`)「そうですか」

(´・_ゝ・`)「調べることは、以上でしょうか」

(´・ω・`)「一応カメラのデータをこちらで保管したいのですが、よろしいですか」

(´・_ゝ・`)「いいですよ」



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:11:31.82 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「記録メディアを持ってきていますので、そちらにデータを移してください」

(´・_ゝ・`)「わかりました」

 デミタスがパソコンで作業を始めている間、ショボンは携帯を開き、きていたメールを確認した。
 ルカからだった。メールには一言、見失いましたとだけ書かれていた。
 彼女はショボンの指示によって、ジョルジュの尾行をしていたはずだ。
 あとで連絡する、と返し、ショボンは携帯を閉じた。



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:14:03.09 ID:ZXe5gVqI0

 −13−

 ルカと合流したショボンは、アパートに向かって夜の街を車で走っていた。
 煌びやかで騒がしいビル街を抜け、ちらほらと住宅が見え始めた頃に、ショボンが口を開いた。

(´・ω・`)「どうも犯行は行き当たりばったりで、いまいち計画性が見えない」

从*゚ーノリ「計画性ですか」

(´・ω・`)「まあ、多少は構想があったのかもしれんが、大したものじゃない。
     容疑者の四人には未だにアリバイが無い。
     しかもジョルジュ以外は犯行時に家にいたと言っている。
     アリバイ工作とまではいかないまでも、せめて外に居たと証言した方が精神的にも楽なはずだ」

从*゚ーノリ「下手なアリバイ工作で疑われるのを避けたという考え方も出来ますよ」

(´・ω・`)「それにしても捜査に対して無防備過ぎる。これじゃ一度疑いがかかったら振り切るのは難しい。
     犯行は物取りに見せかけようとしている意図が見えるが、ごまかし程度にもなっていない。
     その証拠にあの部屋を見た警官は全員このアパートの住人を疑った」



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:16:14.60 ID:ZXe5gVqI0

从;゚ーノリ「私は物取りのセンで進めようとしましたけど」

(´・ω・`)「おまえは経験が少ないから仕方が無い。ともするとかなり感情的な犯行だったのかもしれないな。
     まあ、考えてもわからないかもしれないことを考えるのは無駄過ぎる。
     今考え、答えを出さないといけないことは何だ、ルカ?」

从*゚ーノリ「犯人の侵入経路。そして逃走経路ですね」

(´・ω・`)「その経路を選んだ証拠と、その理由が解明できれば、案外すぐに犯人が特定出来ると思う」

从*゚ーノリ「今時間はちょうど十時半です。
     アパートに着くのは十分後なので、犯行時刻の再現が出来ますね」

(´・ω・`)「運動は得意か?」

从*゚ -ノリ「はい?」

(´・ω・`)「運動。特に木登りとか」

 ルカはきょとんとした顔で首をかしげた。
 ショボンはFMラジオの音量を上げ、流れてきた流行のポップ曲に体を揺らし始めた。



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:19:02.54 ID:ZXe5gVqI0

 −14−

 アパートに着くと、まず103号室へ向かった。
 経路の確認の為にちょっとした実験をする為、住人のしぃとギコに許可を取りにいったのだ。
 ところが二人は留守らしく、部屋の明かりはついておらず、呼び鈴を鳴らしても反応は無かった。

 仕方無く許可無しでやろうということになり、二人はアパートの裏手に回った。
 アパートに庭などはなく、コンクリートの塀とベランダに挟まれた狭い隙間があるだけだった。

(´・ω・`)「まず僕がやってみる」

从*゚ーノリ「落ちても受け止めれませんよ」

(´・ω・`)「そんなことは期待していない」

 ショボンは103号室のベランダを囲う木の柵に足をかける。体重で木が軋み、音が鳴った。
 片方の足は塀に当て、両手両足を使ってするするとのぼり始めた。
 そして彼が二階のベランダに手をかけたときだった。塀の向こうからぱっと明かりに背中を照らされた。

 振り返って確認したところ、隣の住宅についている泥棒よけのライトの光のようだった。
 動体探知機がショボンに反応したらしく、眩しい照明が目に入ってくる。

从;゚ーノリ「ショボンさん」

(´・ω・`)「とりあえず最後まで上ってみる」



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:20:55.07 ID:ZXe5gVqI0

 光を浴びながらも塀に足をかけ、二階のベランダへ到着した。
 時間は一分もかかっていなかった。

从*゚ーノリ「じゃあ、私行きます」

 二階でショボンが見守る中、彼と同じ場所を通ってルカがよじ登ってきた。
 だがショボンよりずっと身長の低いルカは多少の苦戦を強いられた。
 不格好な体勢で苦心しつつ、それでも何とか二階まで上りきった。

从;゚0ノリ「ふぅー。死ぬかと」

(´・ω・`)「じゃあ次は下りてみよう」

从;゚ーノリ「はーい」

 ベランダの柵をまたぎ、両手でぶら下がるような格好になった。
 ここでまた動体探知機が反応し、ショボンの姿が夜の闇に浮き彫りになった。
 彼の体の影が103号室の閉じられたカーテンに大きく映し出されている。

(´・ω・`)「早く来い」



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:22:48.51 ID:ZXe5gVqI0

从;゚ーノリ「い、いきますよ。いけばいいんでしょう。
     あと私スカートだから、真下にいないでくださいよ」

(´・ω・`)「落ちたときの保険だ。我慢しろ」

 小声でぶつぶつと文句を言いながら、ルカは柵に足をかけ、上をまたごうとした。
 足の長さがぎりぎりだから、大きく体を曲げる必要があった。

(´・ω・`)(白か。意外だ)

 ルカの腰が木の柵に乗ったとき、彼女の体がぴくんと跳ねた。

(;´・ω・)「危ない!」

 上体のバランスが崩れ、彼女の体はぐらりと空中に傾いた。
 低いうめき声を上げながら、スローモーションで宙を舞っている。
 背中から落ちてきたルカを、ショボンは両手を広げて地面に落ちる寸前に抱き留めた。

(;´・ω・)「大丈夫か?」

从*;ーノリ「はいぃ……」



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:40:19.73 ID:ZXe5gVqI0

 腕の中で荒い呼吸をしている彼女を、ひとまず地面に降ろした。
 スカートがめくれて露わになった股下から、血の筋が続いている。

(´・ω・`)「なんだコレ」

从*;ーノリ「たぶん、尖ってるところに足をぶつけたんです」

 そんなものあったかなと疑いつつ、持っていた懐中電灯で二階のベランダを照らした。
 目を懲らすと、確かに金属片が柵の手をかける部分の影から出ているのがわかった。
 おそらく柵の補強材だろうとショボンは目をつけた。

(´・ω・`)「あの赤さびがついているやつか」

从*;ーノリ「たぶん。どうしましょうショボンさん。凄い痛いです」

(´・ω・`)「そうか。唾でもつけとけ」

从*;ーノリ「舐めてくれるんですか?」



99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:42:07.23 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「僕は上司だぞ。あまり舐めた口を利くな」

从*;ーノリ「舐めるだけに?」

 ショボンは呆れかえって夜空を仰いだ。
 落下の混乱が冷め切っていないようで、ルカは未だによくわからないことをのたまっている。

(´・ω・`)(しかし、これはどういうことだ)

 隣の住宅から降りかかるライトの光と、103号室を交互に見上げて、ショボンは考え込んでいた。



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:44:39.60 ID:ZXe5gVqI0

 −15−

 ショボンは空き部屋である202号室のベランダに居た。

从;゚ーノリ「い、いきますよ」

 柵に足をかけ、今まさにルカが203号室からこちらに飛び移ろうとしているところだった。
 ベランダとベランダの距離はおおよそ2メートルあり、足を踏み外せば下の室外機にダイブすることになる。

从;゚0ノリ「とぉ――!」

 間抜けなかけ声と共に、ルカが夜空を舞った。
 彼女の体は202号室のベランダの柵を越え、ショボンの眼前に落ちた。

从;゚ーノリ「で、出来ました!」

(´・ω・`)「子供でも飛び越えられる距離だしな」

从;゚ーノリ「帰りも飛び移るんですか?」

(´・ω・`)「いや、この部屋を抜けて外に出よう。もう一つの経路を確認しなければいけない」

从*゚ーノリ「良かったぁ」



102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:45:48.41 ID:ZXe5gVqI0

 二人は靴を脱ぎ、202号室を抜けて外の廊下へと出た。
 しっかりと部屋に鍵をかけてから、ショボンはルカに向き直った。

(´・ω・`)「残る経路は屋根だ。さあルカ、おまえならどうやって屋根の上に上る?」

从;゚ーノリ「どうやってって言われても、梯子か何か無ければ無理でしょう」

(´・ω・`)「梯子があるなら一階からベランダに上がる方がよほど簡単で楽で早いぞ」

从;゚ーノリ「そうでしょうね。でも自力で上がるのは無理なんじゃないでしょうか」

(´・ω・`)「ああ。僕もそう思う」

 二人は無言で見つめ合い、しばらく沈黙があった。

从*゚ーノリ「あの、どうします?」

(´・ω・`)「鉄棒の体操選手を呼んで実験しても無意味そうだしな。今日はもう帰ろうか」

 ついさっき経路を確認しようと言ったショボンが、既に帰るつもりでいる。
 どうも自分が振り回されているようで、ルカは面白くなかった。



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:48:19.78 ID:ZXe5gVqI0

 −16−

 模試の結果を手にしたまま、アサピーは予備校の門をくぐった。
 外は薄暗く、遠くの空に夕焼けの名残が残っていた。

 模試の結果は実に満足の出来だった。志望校の判定がAだったのだ。
 浪人までした成果が確実に現れていることに、顔がほころびた。

 実家に報告しようかどうか考えながら、路地の角を曲がったとき、目の前にいた人物に体を強ばらせた。
 先日も会った警察だった。いつまで経っても、警察と話をするのは慣れないだろうと彼は思った。

(´・ω・`)「こんにちは」

(-@∀@)「こんにちは」

(´・ω・`)「模試の帰りかな?」

(-@∀@)「今日は結果をもらいにいっただけですよ。予想通りのA判定でしたけどね」



106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:50:01.47 ID:ZXe5gVqI0

 訊かれてもいない模試の結果を自分から言ったのは、誇らしい成績だったからだ。
 ショボンは顔を輝かせて「やったじゃないか」とアサピーの肩を叩いた。
 照れくさいらしいアサピーは、ぽりぽりと頭を掻いた。

(´・ω・`)「軍手、けっこう痛んでるね」

 ショボンはアサピーの右手にはめた軍手を指さして言った。
 汚れた布には縫った跡があり、糸がほつれていたりして随分とくたびれていた。

(´・ω・`)「新しい手袋にしないの?」

(-@∀@)「ああ、まあしたいんですけど、これでも使えない訳じゃないし」

 普通の手袋ではなく軍手、それも破れているものを使っているのが恥ずかしいのか、アサピーは俯いている。

(´・ω・`)「縁起が悪いから、早く買い換えた方がいいよ」

(-@∀@)「お母さんから買って貰ったものなんで、使えなくなるまで使いたいんです」



107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:51:52.08 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「お母さん思いなんだね。道具を長く使うのはいいことだよ」

(-@∀@)「あの、それに、うちは貧乏なんで。余計なものは買いたくないんですよ」

(´・ω・`)「実家は何処だったっけ?」

 世間話をしているようで、しっかりと職務質問になっている。
 ショボンの穏やかな口調のせいで、アサピーはそれに気がついていない。

(-@∀@)「××県です」

(´・ω・`)「結構遠いね。一人暮らし、お金がかかるんじゃない?」

(-@∀@)「そうでもないです。実は大家さんとうちのお母さんが親戚で。
      それで家賃をタダにして、勉強の為に一年間貸してくれるって、あの部屋をくれたんです」

(´・ω・`)「ほう。親切な人だね。お父さんは何してる人?」

(-@∀@)「いません。小さいとき亡くなりました」

(´・ω・`)「ああ、すまない」

(-@∀@)「いえ」



108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:54:39.34 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「じゃあ母子家庭で育ったんだな」

(-@∀@)「ええ」

(´・ω・`)「苦労したろうに」

(-@∀@)「ええ、結構。兄弟もいましたから」

 腕を組んだショボンは、まるで見てきたかのようにしきりに頷いていた。

(-@∀@)「あのう、今日は何の用できたんですか?」

(´・ω・`)「ああ、そうそう。実はアパートの住人について訊きたいことがあったんだ。
     君はあのアパートに住んでいる人と仲が良かったりするのかい?」

(-@∀@)「いえ。挨拶をする程度です」



111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:58:06.92 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「じゃあ他の住人で、一緒にいるところを見たこととか」

(-@∀@)「部屋の違う人同士で一緒にってことですか?」

(´・ω・`)「そうだ。夫婦や家族同士じゃなくて、他人同士で」

 一瞬考え込む素振りを見せたが、アサピーはすぐに「知りません」と答えた。

(-@∀@)「もしかしたらいるかもしれないですけど、僕にはわかりません」

 ショボンは少しばかり落胆しているようだった。
 「引き止めてしまってすまない」とだけ言うと、ショボンたちは踵を返し、
 近くに停めてある車に向かって歩き出した。

 アサピーは話が終わって初めて、自分の心臓が大きく鼓動しているのがわかった。
 やっぱり警察には今後一生慣れないだろう。
 ショルダーバッグに模試の結果を詰め込みながら、アサピーは短いため息をついた。



112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 19:59:54.34 ID:ZXe5gVqI0

 −17−

 「ば、ば、ばれてねえよな」

 「大丈夫だ。いい感じにあの件が目くらましになってる」

 「本当だな? 本当だよな?」

 「ああ。安心しろよ」

 「ちくしょう。こんなことならさっさと引っ越しとけば良かった」

 「そうだな。ところでそろそろ限界か?」

 「あ、ああ、かなり、やばいよ。凄くやばい。おまえに言われた通り、全部捨てちまったんだから」

 「そんな目で見るんじゃねえよ。そうしてもらわないと危険なんだ」



113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:01:35.82 ID:ZXe5gVqI0

 「いつになったらこんなこと終わるんだよ」

 「もう少しの辛抱だろ」

 「なあ、少しだけ、少しだけでいいから」

 「ちょっと待て。今はやめろ。絶対に駄目だ」

 「どうして」

 「おまえつけられてただろ。おれが気がついて場所を変更しなかったらあのときおしまいだったんだぞ」

 「いいじゃねえか。あの後だって、ちゃんとくれただろ」

 「あのときはな。でももうだめだ。やつらに感づかれないように、下手なことはしない方がいい」

 「でも、でも駄目だ。おれ、もう……」

 「おれだって我慢してるんだよ」

 「そうだけど。でも」



116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:03:20.37 ID:ZXe5gVqI0

 「でもじゃねえ。とにかく今は辛抱だ。いいな?」

 「ああ、ああわかってるよ。わかってるさ。我慢だろ。くそ」

 「かなりきついみたいだな」

 「う、うん」

 「じゃああと一週間。一週間我慢出来たら少しだけならいいぜ」

 「本当だな」

 「ああ。あいつにも言っておく」

 「頼むぜ相棒」

 「相棒? ふざけんな。おれとおまえが相棒だなんて冗談でもわらえねえ」

 「……」

 「じゃあな、お客さん」



117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:05:10.76 ID:ZXe5gVqI0

 −18−

 警視庁捜査一課本部の自分のデスクの上で、ショボンはパソコンを睨んでいた。
 画面には事件当時、クーが働いていたキャバクラの映像が映っている。

 確かに彼女はあの時間、そこで働いていたようだ。
 記憶にある店の内装は同じだし、クーと一緒に頬にタトゥーの跡があった黒服も映っていた。

(´・ω・`)(さて、どういうことだろうな)

 視線はパソコンに置いたまま、事件をおさらいする為に、彼は頭の中で思考を巡らせた。



118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:07:17.86 ID:ZXe5gVqI0

 殺人があったのは203号室。殺害されたのは独り身の鬱田ドクオ。59歳。
 自称画家だが名声があった訳ではなく、単なる趣味で絵を描いていた。

 しかし住人たちには、名のある画家だと言いふらしていた。
 犯人の目的はドクオの殺害と金庫の中身である。


(´・ω・`)(そういえば、金庫に何があったか訊いていないな。あとで訊いておこう)


 住人たちはドクオの話から、金庫には大金があると思っていた。
 金庫の存在を知っていたのは住人たちだけ。


 またドクオが絵を描いているとき、周りが全く見えなくなるまでに集中することを知っていた。
 よって容疑者はアパートの住人で、あの時間にアリバイの無い四人。
 アサピー、しぃ、モララー、ジョルジュ。


 ジョルジュは外で飲んでいたというが、未だ裏は取れず、証言は非常に曖昧。
 その他の者は全員家に居たと証言している。


 犯人の侵入経路として考えられるのは二つ。一階からよじ上る方法。
 もう一つがベランダを飛び移る方法の二択であり、その他は考えられない。



121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:09:08.99 ID:ZXe5gVqI0

 まず侵入経路を考えたときに大きな疑問が生まれる。
 一つは103号室に居たはずのしぃの存在だ。


 アパートの隣に建っている住宅には動体探知機が取り付けられた照明がある。
 一階からよじ上るとすれば、自分の影が大きく室内に投影されてしまう。
 しぃがそれに気がつかないはずは無い。

 隣の102号室から上ると考えても、あの部屋にはアサピーがいるから同じことである。
 101号室のジョルジュはその時間居なかったことになっているが、すぐ上の201号室にはモララーが居る。

 共同トイレに行っていた一瞬の間に上ることは出来るかもしれないが、
 しぃもアサピーもその時間にトイレには行っていない。


 これをクリア出来るのは、102号室と103号室に住んでいるアサピーとしぃだけである。
 つまり一階から侵入したと考えると犯人は二人のうちの誰かになる。

(´・ω・`)(待て待て待て。あれだけ目立つ照明なんだ。
     いくら浅はかな犯人でも、自分が疑われるという考えに行き着くだろう。
     大体自分の部屋から上って殺すなんて、考えるか?
     だったら人がいない時を見計らって……待て、アサピーは浪人生だ。
     あの時間に部屋を開ける可能性があるのはしぃとギコ。
     事件当日はしぃが居たが、僕が侵入経路の実験をしたときには103号室は空いていた。
     居ないときもあるんだ。犯人はそのときを狙って犯行をすればいいだけの話だ)



123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:11:19.42 ID:ZXe5gVqI0

 一旦気持ちを落ち着かせて、もう一つの侵入経路について考える。
 空き部屋の202号室のベランダから飛び移る方法である。

 しかし202号室のドアには鍵がかかっていて、事件当日も開いていなかった。

 すると202号室のベランダに行くには下からよじ上るか、さらに隣から飛び移るの二つに絞られる。
 真下の102号室にはアサピーがいるので、前述した理由で(アサピーが犯人でない限り)不可能である。

 では隣から飛び移ったとしたら。


(´・ω・`)(犯人はモララーだ。その時間部屋に居たのはモララーと彼女の娘のヘリカルだけ。
     小学一年生があのベランダを飛び移りドクオを殺害し金庫を探したとは思えない。
     ベランダから飛び移ったとなれば犯人はモララーということで確定してしまう)

 ここまで考えて、全く犯人が絞れていないことに気がついた。


 アサピーが犯人の場合。自室から202号室によじ上り、ベランダを飛び移って侵入出来る。
 しぃが犯人の場合。自室から203号室のベランダによじ上れる。
 モララーが犯人の場合。自室からベランダを飛び移って203号室に侵入出来る。

(´・ω・`)(容疑者四人の内、一応この三人は侵入可能だった訳か)



125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:12:58.76 ID:ZXe5gVqI0

 この考えでは、容疑者の内、唯一ジョルジュだけが侵入不可能だったということになる。

(´・ω・`)(本当にそうか?)

 ショボンの頭の中で事件に関しての記憶がいくつも想起され、消えていった。
 必要な情報だけを結合し、纏まった考えにならなければそれも消えていく。
 そうやってしばらく思考の渦が巻いていた脳に、一つの考えが浮かび上がった。


(´・ω・`)(玄関から侵入したらどうだ?)

 何らかの方法でドクオ自身に玄関を開けさせ、侵入した。


(´・ω・`)(無いな。話によれば、消防隊員がノックしても気がつかなかったやつだ。
      玄関を開ける訳……)

(;´・ω・)「! ルカ」

从*"ーノリ「へあ?」



126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:14:17.10 ID:ZXe5gVqI0

 少し離れたデスクの上で、涎を垂らして寝ていたルカは、ショボンの声に反応して顔を上げた。

(´・ω・`)「死体発見時、ドクオの部屋の鍵は開いていたらしいな」

从*"ーノリ「そうですよぉ」

(´・ω・`)「何故だ」

从*"ーノリ「さあ……」

(´・ω・`)「そういえばベランダも開けっ放しだったらしいな」

从*"ーノリ「そうですねぇ」

(´・ω・`)「何故だ」

从*"ーノリ「ベランダは殺される前から開いてたって言ったじゃないですかぁ」

 問題はそこであった。元から開いていたベランダが、どうして開けっ放しになっていたか。
 また玄関の鍵が開いていたのはどうしてか。



127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:16:17.51 ID:ZXe5gVqI0

从*"ーノリ「ベランダは閉め忘れたからでしょう」

(´・ω・`)「あり得ない。犯人は家の中を荒らしているんだ。その最中は絶対に閉じていたはずだ」

从*"ーノリ「じゃあ、犯人がもう一回開けていったんでしょう。玄関のドアも」

 ショボンもそう考えざるを得なかった。ただし理由は全くわからない。


(;´・ω・)(落ち着け。落ち着くんだ。この事件は複雑でもなんでもない。
      犯人は普通の思考の持ち主で、通常の人間が取る行動しかしていないはずだ。
      事件の全容が見えないのは他の要素が邪魔しているからだ。
      落ち着いて考えるんだ。真相は絶対にシンプルなものなんだ)


 ショボンは自分が犯人になったつもりで考えてみた。
 あらゆる事態を想定して、疑問が上手く融解出来る方向をめざし、頭を働かせる。

 玄関のドアが開いていたのは、閉められなかったからである。
 死体が発見されるのは時間が経ってからの方が都合が良いに決まってるからだ。



129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:18:35.88 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)(犯人は玄関から逃走した?)

(´・ω・`)「ルカ。ドクオの部屋の鍵は室内にあったか?」

从*"ーノリ「ありましたよぅ。テーブルの上に」

 玄関から逃走したとすると、鍵をかけて逃げるだろう。
 テーブルの上にあったなら犯人だって気がついていたはずだ。
 何故犯人は玄関から逃走したのに、鍵をかけなかったのか。

(´・ω・`)(鍵をかける暇がなかった。それくらい、慌てていた)

 なるべくシンプルになるような答えを考え、思いついたのがそれだった。


(´・ω・`)(どうして犯人は、侵入経路を通ったときと同じ方法で逃げなかったんだろう)


 思考は時間をさかのぼる。


(´・ω・`)(犯人は、どうしてベランダを使って逃げなかったんだろう)


 シンプルに、より直感的な答えを探して。


(´・ω・`)(使わないじゃない。これも使えなかったと考えるべきだ)



131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:20:25.45 ID:ZXe5gVqI0

 逃走時、ベランダが使えなかった理由。
 ここに、全てが隠されている気がした。

 何故容疑者全員にアリバイが無いのか。
 住人たちが嘘をついているとすれば、それはどうしてなのか。

 絡み合った糸の末端が、そこに、全て。


(´・ω・`)「指紋だ」

从*゚ -ノリ「はい?」

(´・ω・`)「指紋を調べよう」

从*゚ -ノリ「203号室はもう調べ尽くしましたよ」

(´・ω・`)「違う。調べるのは、202号室だ」



133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:22:53.39 ID:ZXe5gVqI0

 −19−

 クーは仕事帰りにしばしばコンビニへ立ち寄っていた。
 その日もいつものように、アパート近くのコンビニへ、ツマミとビールを買いにいっていた。

 時々このコンビニでドクオを見かけたな、と思い出し、彼女は顔を暗くした。
 どうしてあの人が殺されたんだろうと、彼女は一人のときによく考えていた。
 犯人が未だに捕まっていないことも彼女の憂鬱の原因の一つだ。

(´・ω・`)「すいません」

 コンビニの駐車場を横切っていたとき、車の影からクーを呼び止める声があった。
 以前と同じスーツ姿だったので、クーはすぐに警察だと気がついた。

(´・ω・`)「こんな夜更けになんですが、少しお話をさせて頂けないでしょうか」

川 ゚ -゚)「ええ、いいですよ」

 いつも一緒にいる婦警の姿が無かった。
 クーの考えていることを見透かしているように、「今日は一人できたんです」とショボンは付け加えた。



135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:24:14.70 ID:LMrzUhjJO
  _
( ゚∀゚)101        (-@∀@)102   (,,゚Д゚)(*゚ー゚)103

( ・∀・)川 ゚ -゚)*(‘‘)*201   空きや202     ('A`)203



136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:24:48.16 ID:ZXe5gVqI0

川 ゚ -゚)「ドクオさんのことですか」

(´・ω・`)「ええ」

川 ゚ -゚)「もうお話しすることはありませんよ。あの日のことは、もうだいぶ忘れちゃってるし」

(´・ω・`)「あの事件のことで私は動いていますが、質問の内容自体はあなたとモララーさんのことなので」

 クーの額に小さな皺が寄った。
 攻撃的で挑発的なショボンの視線が、クーの不安を煽った。

(´・ω・`)「モララーさん、仕事見つかりましたか?」

川 ゚ -゚)「いえ、まだ」

(´・ω・`)「今のアパートに移ってからずっと働いておられないようですね」

 調べたのか、という非難の目線をショボンに向ける。
 ショボンは無表情でその視線をはねのけた。



138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:27:01.21 ID:ZXe5gVqI0

(´・ω・`)「今のお店で働き出したのは、いつ頃ですか」

川 ゚ -゚)「1年前くらいです」

(´・ω・`)「アパートに移った時期と同じですよね」

川 ゚ -゚)「ええ」

 ショボンの下唇を噛む仕草が、クーは気になって仕方が無かった。
 彼が何を考え、どういう意図で質問をしてきているのか、はっきりとわからないのがもどかしい。

(´・ω・`)「ヘリカルちゃん、小学一年生ですよね」

 クーは半開きの口で目を見開いた。
 まさか子供の名前が出てくるとは思わなかったからだ。

(´・ω・`)「難しい年頃になってきますよ。
     小学生になれば学費やらで色々と負担あるでしょうし、これから大変ですね」

川 ゚ -゚)「何が言いたいんだ」



141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:28:55.84 ID:ZXe5gVqI0

 クーは無表情だった。鉄仮面のような表情をしていた。
 しかし声は尖っていて、冷静さはほとんど無かった。

(´・ω・`)「気に障ったなら申し訳ありませんでした」

川 ゚ -゚)「何が言いたい。何が訊きたい。どうして私たちにつきまとう」

(´・ω・`)「事件解決の為ですよ」

川 ゚ -゚)「モララーが殺したと思ってるのか」

 ショボンは無表情だった。張り付いたような顔は、クーと同じだった。
 ただし目の奥には燃えたぎる闘志があった。クーには無い輝きだった。

(´・ω・`)「私は、間違いを犯さない人間はいないと思っています」

 ショボンは静かに、丁寧な口調で言った。

(´・ω・`)「ただ、どんな状況でも、絶対にやり直しは出来ると思っている。
     だから私は犯人を捕まえるんです。被害者の為だけでなく、犯人の為にも」

 「また出直します」ショボンは深く頭を下げてから、車に乗り込んでいった。
 車が見えなくなるまで、クーはその場に立ち尽くしていた。



143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:31:20.66 ID:ZXe5gVqI0

 −20−

 おさげを左右に振りながら、ヘリカルは学校の校門を抜けた。
 今日はお母さんが仕事だから、夕ご飯が無いのを知っていた。
 またお弁当なのかな、と少しだけ元気が無かった。

 大股でリズミカルに歩く彼女は、前方にいた大人を見て、顔をきょとんとさせた。
 どこかで見た顔だった。誰なのかというは思い出せなかった。

从*゚ーノリ「ヘリカルちゃんだね?」

 ヘリカルは答えられなかった。知らない大人と話してはいけないのだと思っていたからだ。
 大人の女は困った顔で笑った。子供っぽい笑顔で、思わずヘリカルも少し笑ってしまった。

从*゚ーノリ「お姉さんはね、ルカっていうの。まえに家に行ったことあるんだけど、覚えてない?」

*(‘‘)*「あっ!」

 記憶に残っていた女と目の前の女が重なり、ヘリカルは破顔した。
 知らない人じゃないから、喋ってもいいのだと思い、気が楽になった。



145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:33:00.40 ID:ZXe5gVqI0

从*゚ーノリ「あのね、お姉さん、ちょっと訊きたいことあるんだ。
      ここでいいからお話させてくれないかなあ」

*(‘‘)*「いいよ」

从*゚ーノリ「ありがとう」

 ルカは膝を折り、ヘリカルと同じ高さになって話し始めた。
 話の内容は学校のことや、友達のことなど、世間話だった。
 本題に入る前に、必ずその話をしてからやれ、と彼女は上司に言われていた。

从*゚ーノリ「あのねヘリカルちゃん。18日のこと、まだ覚えてる?」

*(‘‘)*「じゅうはち?」

从*゚ーノリ「ほら、まえにも訊いたこと」

*(‘‘)*「テレビ見て寝たこと?」

从*゚ーノリ「それ!」



146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:34:43.10 ID:ZXe5gVqI0

 「よく覚えてたねえ」ルカは満面の笑みで、ヘリカルの頭を撫でた。
 褒められるのが嬉しくて、ヘリカルは小さく飛び跳ねた。

从*゚ーノリ「あのとき、すぐに寝たんだよね」

*(‘‘)*「うん。テレビ見てから寝たよ」

从*゚ーノリ「そのあと、もしかして起きてたんじゃない?」

 ヘリカルは何かを言いかけて、あっと口をつぐんだ。
 俯いて、足をもじもじさせて、何も喋らなくなった。

从*゚ーノリ「喋るなって言われてるんでしょ?」

 ヘリカルは何も言わなかった。ただ、否定もしなかった。

从*゚ーノリ「大丈夫! お姉さん、ヘリカルちゃんが言ったこと絶対誰にも喋らないから」

*(‘‘)*「誰にも?」

从*゚ーノリ「うん! 約束は絶対守る。命かけるから!」



148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:36:37.21 ID:ZXe5gVqI0

 小学生のとき、よく男子たちが冗談で命をかける約束をしていたのを思い出しての台詞だった。
 思いつきの言葉だったが、ヘリカルにはよく効いているようだった。

从*゚ーノリ「誰にも言わないよ。あなたのお父さんにも」

*(‘‘)*「本当……?」

从*゚ーノリ「絶対言わない」

*(‘‘)*「本当に?」

从*゚ーノリ「本当に本当」

*(‘‘)*「本当に本当に本当?」

从*゚ーノリ「本当に本当に本当」

*(‘‘)*「……」

 「耳かして!」ヘリカルはルカの耳元に顔を近づけ、小声で話し始めた。
 間もなくして、ルカの目が大きく見開かれた。



151: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:38:55.70 ID:ZXe5gVqI0

 −21−

从*゚ -ノリ「以上です」

 捜査一課のデスクに座っているショボンの傍で、直立不動のルカがディスクレコーダのスイッチを止めた。

(´・ω・`)「ご苦労」

 ヘリカルの証言をこっそり録音したものを、ショボンの前で流していたのだ。
 あんなに小さい子に嘘をついてしまったのは心が痛んだが、事件の為と腹をくくっていた。

(´・ω・`)「しかし、思わぬ収穫だったな」

从*゚ -ノリ「はい。想像以上の情報だったので、私も驚きました」

(´・ω・`)「そうか―――そういえばあのとき、ドアを開けたのは彼女だったな」

从*゚ -ノリ「え?」

 ショボンは初めてクーの家を訪れたときを思い出していた。

(´・ω・`)「彼女はあの時、父親の帰宅を待っていたんだ」



154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:40:54.43 ID:ZXe5gVqI0

从*゚ -ノリ「何の話ですか?」

(´・ω・`)「いや、こっちのことだ」

 ショボンはぐっと背伸びをした。
 事件解決が近いことを感じ、今までの疲労が一気に襲ってきているのだ。
 あとは野となれ山となれ。駄目なら強硬手段に出ようと、彼も彼で腹をくくっていた。

(´・ω・`)「そうだ。聞き忘れていたことがあった」

从*゚ーノリ「私にですか?」

(´・ω・`)「ああ。最初に聞き込みに行った日はいつだ?」

从*゚ーノリ「19日の朝です」

(´・ω・`)「聞き込みに行った部屋の順番は?」

从*゚ーノリ「201号室、103号室、102号室、101号室です」

(´・ω・`)「103号室にしぃは居たか?」



156: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:44:36.74 ID:rKXkHhS30
支援
どうか、ズレませんように

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201            |202             |203
( ・∀・)川 ゚ -゚)*(‘‘)*  |空き部屋          | ('A`)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
101            |102             |103
( ゚∀゚)           |(-@∀@)           | (,,゚Д゚)(*゚ー゚)



157: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:44:38.55 ID:ZXe5gVqI0

从*゚ -ノリ「え、ええ」

(´・ω・`)「家を訪ねたとき、少し出てくるのが遅かっただろう」

从*゚ -ノリ「確か、そうだったと思います。呼び鈴を鳴らしてから1分以上はあったかな」

(´・ω・`)「彼女は何か言っていたかい?」

从*゚ -ノリ「電話をしていたので……と」

(´・ω・`)「そうか。うん、そうかそうか。だからジョルジュは……」

 ルカはまた置いてけぼりにされている気がした。
 彼と組んでから、このようなことはしょっちゅうだった。

从*゚ーノリ「ショボン警部。私はこれから、何を」

 ルカが指示を仰ごうとしたとき、捜査一課の他のデスクに座っていた警官が、
 ショボンに電話がかかってきたことを大声で伝えた。
 ショボンは電話を内線に切り替え、受話器を取った。

 彼がずっと待望していた報せに、思わずガッツポーズを決めた。



158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:47:44.88 ID:zsRICkY/0

从*゚ -ノリ「ショボン警部。何があったんですか?」

(´・ω・`)「走りながら話す。支度をしろ。おい! 手が空いている者はついてこい!」

从*゚ -ノリ「警部!」

 コートを乱暴に羽織り、ショボンは今にも飛び出そうとしていた。

(´・ω・`)「さあいくぞ。嘘だらけの虚構の城を崩しにいこうじゃないか」

 背中越しに言うと、ショボンは走って捜査一課を出ていった。
 彼の後を追って数名の警官がついていく。
 ため息を一つついてから、「待ってくださーい!」と出遅れたルカが駈けていった。



159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/10(土) 20:48:26.81 ID:zsRICkY/0



 捜査編 終わり → → →

  → → → 解決編へ続く



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