ξ゚听)ξバスは走るようです
- 45: (-_-)君のいないバス停のようです :2009/02/22(日) 23:42:02.54 ID:VKYAoUBw0
(-_-)君のいないバス停のようです
- 47: (-_-)君のいないバス停のようです :2009/02/22(日) 23:44:01.08 ID:VKYAoUBw0
「なあ、今日も行かないのか?」
扉の向こうから声が掛けられる。
毎日毎日飽きないのだろうか。
月、火、水、木、金。
平日はいつもこの声が聞こえる。
(-_-)「・・・」
ずっと黙っていると再び声が掛かる。
「じゃあ、バス停で待ってるから」
そう言うと足音が遠ざかってゆく。
誰も頼んでなんかいない。
いつまで友達ぶっているつもりだろうか。
- 48: (-_-)君のいないバス停のようです :2009/02/22(日) 23:46:00.48 ID:VKYAoUBw0
「また行かないの?」
まるで割れ物を扱うかのように母親がたずねてくる。
(-_-)「行かないよ」
その一言を聞いてしばらくすると、あいつと同じように離れていく。
どうせみんなそうなんだ。
特に取柄もない。
声を出せば雰囲気を崩してしまうような男。
こんなのと関わりたがるやつがいるはずがないんだ。
家からでなくたって良い。
すこしすると、めったに部屋からでなくなっていた。
- 49: (-_-)君のいないバス停のようです :2009/02/22(日) 23:48:00.64 ID:VKYAoUBw0
それでも、僕を毎朝迎えに来るやつがいた。
近所に住むギコと言う男だ。
昔から学校に通うときは一緒だった。
小学校、中学校。
そして、現在の高校も。
毎日僕が学校に来ないと分かっていながらも必ず迎えに来る。
ひどい時は休日にも「遊びに行こう」といって扉をノックする。
(-_-)「なんなんだよ・・・」
正直構わないでほしい。
なぜそこまでして構うんだよ。
外に出たっていいことなんかない。
僕はそれを知っている。
- 51: (-_-)君のいないバス停のようです :2009/02/22(日) 23:50:00.39 ID:VKYAoUBw0
次の日も、案の定やつは来た。
「なあ、たまには行こうぜ」
(-_-)「・・・」
「おーい?聞いてるか?」
(-_-)「・・・」
「なあ、ヒッキー」
(#-_-)「ああ、わかったよ!」
しつこさに痺れを切らし扉に怒鳴りつける。
それに臆することなく返事が返ってくる。
「本当か?じゃあ待ってるからすぐ支度しろよ」
(-_-)「バス停で待ってて」
「おう!ちゃんと来いよー」
- 52: (-_-)君のいないバス停のようです :2009/02/22(日) 23:52:01.50 ID:VKYAoUBw0
明るい声が聞こえて足音は遠ざかる。
(-_-)「行くはずないのに・・・」
いつも通りパソコンの電源を入れて、それに向き合う。
部屋にはカタカタとキーボードの音が響き渡る。
(-_-)「どうせ時間が来たら勝手に行くだろ」
大した心配もしてなかった。
どうせ向こうも待つほど馬鹿じゃないだろうし。
迎えが来るのは7時50分。
8時頃のバスに乗るためだ。
パソコンの時計を確認する。
表示は8時40分になっていた。
するとイヤホンから流れる音楽を遮るようにして音が響く。
それは本当に「響く」といった表現が正しかった。
(-_-)「煩いな・・・」
ボリュームを上げる。
そうすると外からの音は完全に断ち切られた。
- 55: (-_-)君のいないバス停のようです :2009/02/22(日) 23:54:00.59 ID:VKYAoUBw0
* * *
バス停に女性が一人いた。
屈むようにして花束を置いている。
こちらに気がつくと声をかけてきた。
(*゚ー゚)「知ってますか、2年前のこの日、ここで事故があったんです」
よく知っている。
死亡者は2名。
運転手とバス停に居た少年。
名前は――――。
(*゚ー゚)「詳しいんですね」
ゆっくりと頷くと、彼女と同じように花の前で拝む。
彼女はとても寂しそうだった。
(*゚ー゚)「彼、いっつも落ち込んでバス停に来てました」
(*゚ー゚)「でも、その日だけはとっても喜んでるみたいでした」
その日――――。
引きこもりの弱虫がバス停に行くと言った日。
- 57: (-_-)君のいないバス停のようです :2009/02/22(日) 23:55:59.90 ID:VKYAoUBw0
(*゚ー゚)「その日、私は初めて彼と話しました」
『今日、大切な奴がバスに乗るんだ!』
(*゚ー゚)「すごく嬉しそうで、思わず笑ってしまいました」
だけどその少年はバスに乗らなかった。
大切な人が来なかったから。
(*゚ー゚)「来るって言ってたから、もう少し待つよ。彼はそう言ってバスを見送りました」
そこで一息つくと、再び言う。
(*゚ー゚)「バスが、空にまで人を連れていくとは思ってもいませんでした」
そこでバスが来た。
最後に女性は一言だけ言って乗車した。
「その人は来たのでしょうか」
バスが見えなくなってから、ゆっくりとベンチに腰を掛ける。
恨めしいぐらい晴れ晴れとした天気。
あの日も丁度こんな感じだった。
- 58: (-_-)君のいないバス停のようです :2009/02/22(日) 23:58:00.19 ID:VKYAoUBw0
(-_-)「なんで待ってたんだよ。誰も頼んでないじゃないか」
(-_-)「馬鹿みたいだ。来ないことぐらい分かるだろうが」
(-_-)「何喜んでんだよ」
頬を何かが伝う。
それが何なのか、認めたくはなかった。
顔を手で覆い何度も言ってやる。
馬鹿、阿呆、間抜け。
「いつもみたいに迎えに来いよ・・・」
「お前が来ないからさ、結局一人できちゃったじゃんか」
花なんて似合わないもの貰ってんなよ。
お前は僕と馬鹿をやる方が似合ってる。
- 62: (-_-)君のいないバス停のようです :2009/02/23(月) 00:00:02.09 ID:KcSPyTwy0
『今日も一日、元気に行こうぜ』
今では聞こえなくなった笑い声が耳に響く。
僕が乗りたいバスはいつまでも迎えに来ない。
どこに行くにも、君が乗ればそのバスの行き先は目的地になった。
君が乗らなければ、そのバスに意味がない。
僕は来るはずのないバスを待っている。
それは目的地に行けるバス。
たったひとり、君のいないバス停で――――。
(-_-)君のいないバス停のようです END
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