ξ゚听)ξバスは走るようです

83: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:20:01.00 ID:KcSPyTwy0



( ・∀・)バス停に咲くようです



85: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:22:00.36 ID:KcSPyTwy0

川 ゚ -゚)「今度はあれが欲しいんだけど・・・」

雪が積もった街中を彼女と二人で歩いていた。
何か会話をするたびに「あれが欲しい」「これが欲しい」に辿り着く。

( ・∀・)「・・・わかったよ」

それを断らず、釈然としないながらも承諾する。
いつもこうだった。

何かを言われては自分の意志を持たずに流される。

川*゚ -゚)「ありがとう」

こんな時ばかり人の体に触れてくる恋人。
あまりいい気分ではない。



87: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:24:00.50 ID:KcSPyTwy0

そんな時だった、少し気を抜いて転んでしまった。
下は雪道なのだから仕方がない。

その瞬間、懐かしい声が思い浮かぶ。

『そこ、滑りますよ』

ほんの少しの笑いが混じった声。
いつからか行かなくなったバス停で聞いた声だ。

( *・∀・)「いやー恥ずかしい」

冗談交じりに立ち上がる。
通りすがる人たちはみな自分を見て笑っていた。

こんなことはどうってことない。
少なくとも「僕」は。



89: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:26:08.23 ID:KcSPyTwy0

川 ゚ -゚)「・・・」

彼女は少し苛っとした表情をしている。
さっさと立って、と冷たく一言を残しさっさと歩いていく。

彼女は人をブランド感覚で見ている所があるのだろう。
少しうんざりしながら彼女の後を追う。

そして、また彼女の財布代わりとなる。

少しして着いた場所はファミレス。
時間も昼時を大きく過ぎているため、人気が少なかった。

ある程度彼女の買い物に付き合い、充分だと思ったがそうではないらしい。
どこか不機嫌そうだ。

川 ゚ -゚)「話があるんだけど」

よほど空気が読めていない奴じゃない限り一発で分かるだろう。
重く言い放たれた言葉から、これから何を言われるか悟った。



90: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:28:09.17 ID:KcSPyTwy0

「わかれよう」

ほらきた。
店員はこの空気の重さを気にもせず料理を持ってくる。

どうも、と小さな声で伝える。
店員はお辞儀を返し、他のテーブルを拭き始める。

川 ゚ -゚)「聞いてる?」

( ・∀・)「・・・うん」

少しうんざりしていたとはいえ、流石にこたえる。
とりあえず食べよう、彼女にそう言うとそれを無言で食べ始める。

( ・∀・)(恐らくこっちの意見は聞いてくれないよな)

そんなことを考えながらも食事を進めた。
彼女は食べ終わり、こちらを見つめる。

それは恋人に向けるようなものではなかった。
冷淡な目を、ただただ向けてくる。



92: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:30:00.35 ID:KcSPyTwy0

( ・∀・)「どうしても別れなくちゃダメなの?」

食事を終えて最初の言葉がそれだった。
彼女は、表情ひとつ変えることなく頷く。

流石に店員も気づいたようで、ちらちらとこちらを見てくる。
ばればれだってば。

それから十分程の無言が続き、
彼女は「そういうことだから」と告げて店を出て行った。

( ・∀・)「・・・またこっちが払うのか」

最後ぐらいは割り勘でもいいじゃないか。
心の中で文句を言ってみるが空しい。

( ・∀・)「あ、すいませーん」

店員を呼ぶと、はっとしたような顔をしてすぐに駆けつけた。

( ・∀・)「コーヒーひとつお願いします」

窓の外は再び雪が降り始めていた。
そして思い出すのは、3年前のできごと――――。



94: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:32:00.79 ID:KcSPyTwy0

* * *

大学2年の冬、大学に通うためバスに乗っていた。
空はうす暗く、白い雪が、窓に張り付いては溶けるを繰り返していた。

バスから見える風景も、最初こそは新鮮だった。
しかし毎日見ていると流石に何も感じなくなる。

( ・∀・)(今日は人いるかな)

このバスはいつも人がいないバス停を通る。
人通りも少なく、誰も乗らないのだ。

しかし、その日は少し違っていた。
バス停のベンチに人が座っていたのだ。

建物とはとても言い難く、本当に雨風を防ぐためだけの物。
そこのベンチに人。

珍しいこともあるものだと思い、じっと見つめる。

ζ(゚ー゚*ζ

制服を着た女の子。
マフラーを首に巻いていた。



97: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:34:05.96 ID:KcSPyTwy0

ところが、バスが停まってもその子は乗ってこない。
少し経つとバスは扉を閉め、再び通路に戻る。

次の日もそのまた次の日も、それは繰り返された。

このバス停は、人の乗り降りが全くない。
ここからどこかに用事がある人がいないのだろうし、
ここに用がある人もいないからだろう。

だからこそ、この日、バスの常連客は驚いた。

( ・∀・)「あ、降ります」

運転手すら驚いていた。

金を払いバスから降りる。
それが再び道に戻るのを確認すると少女に近づいた。

そこで、世界が反転する。



98: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:36:00.43 ID:KcSPyTwy0

(;・∀・)「いたた・・」

腰を押さえて尻もちをつく僕に、目の前の少女は笑いながら答える。

ζ(゚ー゚*ζ「そこ、滑りますよ」

普通転ぶ前に言うもんだろう。
苦笑いをしながら彼女の隣に腰を掛ける。

ζ(゚ー゚*ζ「なんで降りたんですか」

少女は不思議そうに訊く。
こっちからみたら君の方が不思議なんだけどね。

そこで気づく、明らかにこっちが不審者だということに。

(;・∀・)「えっと、あのね、怪しい者じゃないんですよ」

彼女はポカンとした後、腹を抱えて笑いだした。
笑い終えた後には、目を滲ませていた。

ζ(;ー;*ζ「怪しい者って言ってるみたいですよ」

( *・∀・)「・・・はは」

何故だか楽しくなってくる。



100: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:38:01.01 ID:KcSPyTwy0

その日から僕はそこでバスを降りることが増えた。
彼女がたまにいる、そんな時は決まって降りるようになった。

ζ(゚ー゚*ζ「またサボりですか?いけないんですよ」

( ・∀・)「君に言われるとは思わなかった」

そんな事を言うと目が合う。
それがたまらなくおかしくて二人で笑う。

ζ(゚ー゚*ζ「私だって、学校が嫌いなわけじゃないんですよ」

彼女はどこか遠くを見るように言う。

( ・∀・)「どういうこと?」

訪ねてみると、「しょうがないですね、特別ですよ」と言って教えてくれた。



102: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:40:00.93 ID:KcSPyTwy0

ζ(゚ー゚*ζ「友達だっています、先生とだって仲いいんですよ。
      勉強も大変だけど、嫌いじゃないです」

だったらなおさらサボる理由が分からなかった。
彼女はどこかしんみりとした声で再び話す。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、たまーにそれが全部息苦しく思えるんです。
      痛い子だと思われても仕方がないですよね」

僕にはそれのどこが痛い子なのか分からなかった。
構ってちゃんなどとは明らかに違う。

( ・∀・)「別にいいんじゃないかな」

彼女は少し俯く。
別に嫌な気持ちになったのではないようだ。
口元が笑っているのが見える。

ζ(゚ー゚*ζ「それに、私がいないと転んじゃう人もいますし」

彼女は胸を張りながら答える。
恥ずかしながら言い返せなかった。



103: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:42:01.05 ID:KcSPyTwy0

春になると彼女はバス停に来る回数が減った。
高校三年生になり、受験が近づいたからだろう。

それでもたまにはバス停に居たし、僕もそれに合わせて降りていた。
そんな関係が大好きだったし、彼女と話すことは僕にとって何よりの楽しみだった。

そして、季節は流れる。
一年はあっという間に過ぎた。

彼女と出会い二度目の春。
僕はそのバス停で降りた。

ζ(゚ー゚*ζ「私、明後日卒業ですよ」

彼女がどんな学校に行くのかは知らない。
だけど、結構離れた場所に行くのだとは聞いた。

雪ではなく桜が散っている。
彼女は心なしか頬が赤い。

わかってる、こんなロマンチックな雰囲気。
そして男女だ。

でも、僕にはたった一言が伝えられなかった。



105: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:44:00.82 ID:KcSPyTwy0

ζ(゚、゚*ζ「意気地がないんですね」

彼女は少し拗ねたように言う。
黒く、少しウェーブがかかった髪が風に揺れる。

( ・∀・)「・・・また今度」

その今度がいつかは分からなかった。
何より僕のことなんてすぐに忘れるだろうということでの発言だった。

ζ(゚ー゚*ζ「言いましたね」

彼女はしてやったりという表情でこちらを見ている。
卒業して遠くに行ったらどうせ忘れてしまうだろうに。

そして彼女はこの街を離れていった。
それ以来、僕はそのバス停で降りることは無くなった。



106: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:46:01.34 ID:KcSPyTwy0

* * *

コーヒーを飲みほし、二人分の代金を払い店を出る。
まだ午後の3時になっていない。

あまりにも中途半端な時間だ。

何もすることのない僕はそこらへんをうろつき始める。
そしてふと思う、あのバス停に行ってみよう、と。

どのバスに乗るかは忘れていない。
一度電車に乗り、隣の駅まで行く。

バスの時間がちょうど良かったため、それに乗り込む。
時間も昔とは違うため知らない顔ばかりだ。

別に彼女がいるなんて期待しているわけではない。
ただ、行ってみたくなったのだ。



109: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:48:00.74 ID:KcSPyTwy0

昔、彼女がいたバス停は何一つ変わっていなかった。
降りる人もいなければ乗る人もいない。

そこで僕は降りる。

誰もいないベンチに僕は腰掛ける。
雪は止み、少しずつ陽が射してくる。

買い物に付き合わされていたせいか、気持ちの変化が起きたせいか。
はたまた、心地のよい天気のせいなのか、僕はうとうととしていた。


ほんの数分眠っていたのか、もっと眠っていたのかは分からない。
寝ていたという事実に驚き急いで立ち上がる。

時刻表を見ようとするが、下は雪道。
そう、あの時と同じだ。

世界はくるりと姿を変えた。



112: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:50:01.30 ID:KcSPyTwy0

「ふふ」

( ・∀・)「・・・え?」

起きたばかりで気づかなかったのだが隣に誰か座っていたようだった。

「そこ、滑りますよ」

ゆっくりと振り返る。
黒く長い髪で、少しのウェーブ。

ζ(゚ー゚*ζ「私がここに居ないと誰かさんは転んじゃいますね」

いつも思うんだ。
君は言うのが遅いよ。

もっと早く言ってくれなきゃ対処できないよ。
優柔不断で、どうしようもない男なんだから。



113: ( ・∀・)バス停に咲くようです :2009/02/23(月) 00:52:00.75 ID:KcSPyTwy0

( ・∀・)「僕はよく転ぶ人間らしいよ。ここに来る前も転んだ」

彼女は笑う。
それにつられて僕も一緒に――――。

振られたというのも転んだうちだろう。

( ・∀・)「でも、誰かが手を取ってくれたら転ばない気がする」

ζ(゚ー゚*ζ「あなたは、その人も一緒に転ばせそうですけどね」

恥ずかしながら言い返せない。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、そういうのも悪くないかもしれないです」

彼女はゆっくりと歩み寄ってきて僕の目の前でしゃがむ。
僕は尻もちをついたまま。

ζ(゚ー゚*ζ「どうぞ」

風が吹く。
彼女の髪はゆっくりと揺れる。

雪が積もるバス停にきっともうすぐ春が来る。
差し出された小さな手を、僕はゆっくりと掴んだ。


( ・∀・)バス停に咲くようです END



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