( ^ω^)が迷い込んだようです

17: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 18:26:28.71 ID:JQdN1ghY0
  
城の門は重厚で、外からは容易に開けられそうもない。
どうしたものか、とブーンは頭を悩ませた。

( ^ω^)「誰かー誰かいませんかおー?」

中に届くとは思わなかったが、ブーンはだめもとで門の外から声をかけた。
ギギ…
すると丁度ブーンが一人通り抜けられるほどの幅だけ、門が音を立てて開いた。
門の裏に人がいたのだろうかと覗き込んだがそんな様子もない。
どのような仕組みになっているのかとても気になるところだが、その疑問は食料問題と比べるとブーンにとっては些細なものであった。
疑問を忘却の彼方に放り込み、ブーンは門を潜って整えられた庭を進んでいった。



18: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 18:30:18.22 ID:JQdN1ghY0
  
ブーンが城の前までたどり着くと、城の扉は既に開いていた。
開いた扉の前には少女―ツン―が立っていた。

( ^ω^)「お?」
ξ゚ー゚)ξ「ようこそ」

ツンは月光に照らされながら天使のような微笑をブーンに向けた。

ξ゚ー゚)ξ「私はツン、この城に住んでいるの」
(*^ω^)「……」
ξ^ー^)ξ「歓迎するわ、迷子の旅人さん?」

ブーンはその微笑に暫くの間、疲労も空腹も忘れて見惚れていた。



19: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 18:34:18.54 ID:JQdN1ghY0
  
ツンはブーンを城の中に入るよう促した。
ブーンは軽くツンに会釈をすると促されるままに城へ足を踏み入れた。
案内された城の中は豪華絢爛、というわけでもなかった。しかし、貧相というわけでもない。

ξ゚听)ξ「…そろそろ、名前を聞いてもいいかしら?迷子の旅人さん?」

歩く足を止め、ツンは後ろを振り返った。
美しい髪が軽やかに揺れる。
ツンにそう言われて初めてブーンは自分がまだ名乗っていないことに気が付いた。
バタバタと慌しく身なりを整えてツンに礼をした。

(;^ω^)「ぼっ僕はブーンだお。当てもなく旅をする途中で道に迷って…
       勝手に庭に入った上に自己紹介が遅れてごめんなさいだお」
ξ゚听)ξ「城に入ったことは構わないわ。声をかけられてもどうせ聞こえないもの
      ごめんなさい、定期的に決まった日時にしか人は来ないような場所だから」
ξ゚ー゚)ξ「だからお客様は嬉しい。私は外に出ることができないから」

少し悲しげに口元を笑みの形に模らせた。
先ほどの微笑とは余り変わっていないようでいて明らかに異なるその笑みにブーンは言葉をかけることができなかった。



20: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 18:37:55.09 ID:JQdN1ghY0
  
ξ゚听)ξ「あら、別にあなたがそんな顔する必要はないわ。別に私は私を哀れんでなんかいないし
      ただ太陽の光に長時間当たれないだけであとは殆ど変わらないわ。寧ろそれ以外は丈夫なくらい」
( ^ω^)「そうなのかお?じゃあブーンは助けてくれたお礼に旅の話をするお!」
ξ゚ー゚)ξ「本当?」

ツンに再びもとの笑顔が戻った。
ブーンはほっとしながらもツンの笑顔に何故か自分の顔が赤くなるのを感じた。
それを誤魔化すかのように城の造りや調度品に目を向けた。
見る者が見れば相当な値打ちものであろう、アンティークの調度品も見える。
ここまで価値のあるものをそろえているにも関わらず、嫌味を感じさせない城の内装にブーンは思わず感嘆の溜息をついた。



21: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 18:43:51.48 ID:JQdN1ghY0
  
( ^ω^)「きれいなお城だお…」
ξ゚听)ξ「ありがとう、ドクオが聞いたら喜ぶわ」
( ^ω^)「お? ドクオって誰だお?」

ブーンは初めて聞く名前に首を傾げた。

ξ゚听)ξ「ここの管理と私の世話をしてくれてるの。今は食事を作ってるわ」

城の絨毯が敷かれた廊下をツンの案内で進んでいくと、廊下の突き当たりに大きな扉が一つ。
扉の大きさからかなり大きな部屋であることが推測できる。

ξ゚听)ξ「ここよ」

ツンは鈍く光を放つ金色のノブを掴み、扉を開けた。
同時にその隙間から何ともいえない良い匂いが漂ってきた。

ξ゚听)ξ「ようこそ、ブーン。ディナーに招待するわ」



22: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 18:52:39.67 ID:JQdN1ghY0
  
ツンの手によって扉は開け放たれ、目の前の景色が広がる。
一番最初に目に入ったのは、部屋の中心に置かれた大きなテーブル。
そしてその上に乗せられた料理。
空腹限界だったブーンの腹が鳴った。

ξ゚听)ξ「ドクオー?」
('A`) 「おお、丁度できたぞ」

部屋の更に奥にある、調理場だろうか、そこから一人の男が出てきた。
器用なことにたった2本しかない腕で5枚の皿に乗った料理を運んでいる。
黒髪の、どこか陰鬱そうな男だ。

ξ゚听)ξ「ブーン、紹介するわ。さっき話してたドクオよ」
('A`)「…よろしく」

ドクオは皿をテーブルに並べながらややおざなりにブーンに会釈をした。

( ^ω^)「僕はブーンだお! よろしくだお!」

おざなりさを気にも止めず、ブーンは皿を置き終えたドクオの手を掴みブンブンと勢いよく握手をした。



24: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 19:01:11.04 ID:JQdN1ghY0
  
( ^ω^)「ハフッ! ハムハムッ! ハムッ!」
('A`) ξ゚听)ξ「きめえwww」

テーブルに並べられた料理を次々に平らげるブーン。
あまりの勢いに二人は若干引き気味になっていた。

(*^ω^)「この料理、本当に美味しいお!ドクオは天才だお!」
('A`)「どーも」

ブーンの褒め言葉にもドクオはやる気のない返事しか返さない。
これが彼の素であり、最大限のやる気なのかもしれない。
やる気のないドクオの返しに慣れたのか、それとも元々気にしていないのか、ブーンはそのまま次の皿に手を伸ばす。
食事の時間が終わり、食後のティータイムになるまでブーンの周りには皿が高く積み重ねられ続けていった。



25: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 19:08:33.54 ID:JQdN1ghY0
  
( ^ω^)「…というわけで僕は二度と鮫●事件には関わらないと決めたんだおw」
ξ;゚听)ξ「乙…というか、よく無事だったわね…」

食事を終えて、食後のティータイム。
紅茶を飲みながらブーンは約束どおり、ツンに旅の出来事を話していた。
ヤマジュン国で危うく大切な何かを失いそうになったこと。
ある国で興味本位に首を突っ込んだ事件が公安に関係していて、危うく死にかけるところだったこと。
数々の国を回ってきたブーンの話は尽きない。
ブーンが話をし、それをツンが聞いている間ドクオはてきぱきとテーブルの上を片付けていた。
会話にやる気はないくせにこういった仕事はきちんとこなすようだ。



26: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 19:19:31.01 ID:JQdN1ghY0
  
('A`) (…そろそろか…)

ドクオはちらりと時計を見、不敵な笑みを口元に浮かべた。

( ^ω^)「お…?」

偶然その笑みを目にしたブーンは強い違和感を感じた。
先ほどまでの表情と違う、ただ陰鬱だった表情に笑みが浮かんだことだけではない。
しかしその違和感の根本が分からない。

( ^ω^)「…ッ?!」

ブーンはその違和感の元を探ろうとしたが、その結論に至る前に
ドンッ!

ξ゚听)ξ「きゃ!」
('A`) 「メインディッシュの時間だ」

ブーンの意識は途切れた。



27: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 19:25:53.53 ID:JQdN1ghY0
  
( ^ω^)「……お?」

ブーンは眠った記憶もないまま、目を覚ました。
靄がかかったようにはっきりしない頭であたりを見回す。
見知らぬ部屋。ベッドの上。

( ^ω^)「僕はご飯を食べて、お茶を飲んで、ツンとお話をしてたはずだお…」

ブーンは自分の記憶を遡る。
何度思い返してもこの部屋に入って眠った記憶はなかった。
お茶を飲んでいた辺りから記憶が途切れている。

( ^ω^)「お腹がいっぱいになって…眠くなっちゃったのかお?」

そうだとしたら一体、どうやってここまできたのだろう。ブーンは頭をかいた。
自分の足できたのでないのなら誰かがここまで自分を運んできた?



28: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 19:31:45.66 ID:JQdN1ghY0
  
( ^ω^)「ツンじゃ無理そうだし…ドクオかお?
       あとでお礼を言わなきゃだお…」
('A`) 「なら、たっぷりとよろしく頼むわ。土下座つきで」
( ゚ω゚)「ふぉーーー!」

自分以外いるはずのない部屋から声が聞こえる。
あまりの驚きにブーンはベッドから転がり落ちた。

(;'A`) 「な…なんだよ…イキナリ叫ぶな」
(;^ω^)「いたたたた…びっくりしたのはこっちだお…」



29: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 19:37:59.40 ID:JQdN1ghY0
  
('A`)「ノックはしたぜ? 何の返事もないからくたばったかと思ってきてみれば…」
( ^ω^)「鮫●事件に巻き込まれて生き残った僕が、そう簡単に死ぬわけないお!」
('A`)「あーそうかよ。ま・昨日もイキナリぶっ倒れたし、まだ疲れてんじゃねーの?」

どうでも良さ気にドクオが言う。
昨日から薄々感じていた考えが確信に変わった。
自分はドクオに好かれていない。
もし本当に自分がこの部屋で死んでいてもきっとドクオは気にも留めないだろう。
担いで、運んで、埋めて、終了。
そこまで考えて、ブーンはやめた。そして考えをやめるのが遅かったと後悔した。

( ^ω^)「やっぱり僕はお茶を飲んでる最中に倒れたのかお?」
('A`) 「……あぁ。ったく、ここまで運ぶの重かったんだからな。このピザ野郎が」

ドクオはコキリと首を鳴らし、肩を揉んだ。



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