( ^ω^)やまさんのようです

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 20:28:48.71 ID:MnRRq0n5O
(;^ω^)「強くならないと……ダメですかお?」

川 ゚ -゚)「そうだなぁ、少なくとも私はダメじゃないかと思うなぁ」

(;^ω^)「でも……その……」

川 ゚ -゚)「部活はトラウマか? そりゃあなぁ……うーん」

しばし考えに耽った後、先輩はいかにも閃いたと顔を明るくした。


川 ゚ -゚)「それなら夏休み明け、生徒会に立候補するといい!
     私は生徒会長になるつもりだ、君が来たならビシバシ指導してやるぞ!」

( ^ω^)「生徒会……僕に出来ますかお?」

川 ゚ -゚)「出来る出来ないじゃない、やるかやらないかだ!
     やれば出来る、やらなきゃ出来ない、トライすれば何事も成功だ!!」

(;^ω^)「よく分からないけど、分かりましたお」

こうして僕は生徒会に入り、それからずっと指導を受けてきた。
その甲斐あってか、僕は先輩の次の生徒会長にもなり、少しは立派になれたんだと思う。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 20:43:18.11 ID:MnRRq0n5O
雲が流れて、空が一面の青になって、僕はようやく今に戻ってきた。
教室から逃げだした僕はそのまま屋上に向かい、仰向けに寝転んでいたんだっけ。


( ^ω^)「……ああ、空は青いなぁ」

川 ゚ -゚)「ああ、あつはなついんでんなぁ」

( ^ω^)「あつとなつが逆やないかーい」


(; ゚ω゚)「―――ってぬおわああああああああああああああ!!」


びっくりした、心臓が止まるかと思った。
僕の驚愕の雄叫びに耳を塞ぐ先輩を見て、我にかえった。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 20:45:19.42 ID:MnRRq0n5O
川 ゚ -゚)「五月蠅いよ、ホントに君は、五月蠅いよ」

( ^ω^)「さり気ない五・七・五止めるお」

川 ゚ -゚)「そうそう、私の病弱演技も板についてきたとは思わんかね?」

( ^ω^)「いやどこがですお、思いっきり普段の調子じゃないですかお」

川 ゚ -゚)「む……それはあれだ、君の前だとボケずにはいられないっていう何かが!」

( ^ω^)「僕も先輩には突っ込まずにはいられませんお」

師弟で、漫才コンビで、先輩後輩で、男と女で。
僕と先輩の間には色々あるのだなと改めて認識すると、妙に嬉しかった。


( ^ω^)「本当、先輩は愉快な人ですお」

川 ゚ -゚)「君には負けるよ」

( ^ω^)「先輩に勝てる人なんて、全世界でも一握りだっていうのに?」

川 ゚ -゚)「ジョルジュから色々聞いているからな」

……その言葉を聞いた僕の顔が、先輩に見られなくてよかったと思う。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 20:47:27.31 ID:MnRRq0n5O
川 ゚ -゚)「内藤君の話は、どれも面白いものばかりで反則級だよ。
     話をしているジョルジュでさえ、思い出し笑いを堪えるのに必至だからな」

(  ω )「へ、へぇ、そうですかお」

川 ゚ -゚)「死んだふりをしていたら偶然ティッシュが顔の上に乗った話とかな!
     他にも色々! 積もるほど君についての話を聞いたものさ!」

(  ω )「……へー」

そんなに色々話したってことは、それだけ長い間一緒にいたということなのだろう。
きっと、この前の雨の日みたいに楽しそうに、二人仲良くして。

先輩がジョルジュと言う度に、僕の心がどす黒く染まっていくのが分かる。
それはもう、全てを埋め尽くす寸前で。


川 ゚ -゚)「それで、今もジョルジュに話を聞いてここに来たんだ。
     一体どうしたんだ、悩みがあるなら私で良いなら聞くぞ?」

そして、今とうとう僕の心を真っ暗にしてしまった。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 20:50:28.93 ID:MnRRq0n5O
(  ω )「ははっ、いいですお、それじゃあ僕はもう行くんで」

川 ゚ -゚)「待て、どうしたんだ一体?」

(  ω )「本当必要ないんですお、僕はもう昔みたいに弱い僕じゃないし」

川 ゚ -゚)「……何?」

(  ω )「もう先輩に頼ることもないし、先輩に守ってもらう必要もないんですお。
       僕はもう一人でやっていけるから、だから来ないでください、それじゃ」

川;゚ -゚)「ま、待て!」


止めようとする先輩を振り切って、僕は屋上から、また逃げだした。
教室からも屋上からも逃げ出して、僕はどこに行けばいいんだろう、僕の居場所なんてどこにもないんだろうか。

きっとその通りなんだ。
皆良い人なのに、僕が汚れているから傷つけてしまう。

こんな人間なんていない方が良いんだ。

僕は誰にも必要とされていないから、消えた方が良いんだ。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 20:52:32.67 ID:MnRRq0n5O

「待つんだ、内藤君!!」


後ろから先輩の声が聞こえた。
本気で追いかけられたらあっという間に捕まってしまうだろう。

だけど、僕は、それでも必死に逃げようとした。
捕まっても振りほどいて逃げるつもりだった。
もう二度と、先輩と話なんてしたくなかった。

いや違う、話はしたいけど、してはいけないんだ。
きっと僕は先輩を傷つけてしまうから、また皆に迷惑をかけてしまうから。


一度だけ、最後に一度だけの想いで振りかえった。


―――先輩が廊下の奥で、うずくまっているのが見えた。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 20:54:44.90 ID:MnRRq0n5O


その時、何を思うのよりも早く、僕の足は先輩に向かって駆け出していた。




何故と疑問に思うのよりも早く、口からは言葉が漏れていた。




『助けなくちゃ』、と。




全部諦めるつもりだったのに、そんな想いにだけ体は正直だった。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 20:56:37.99 ID:MnRRq0n5O
(;^ω^)「先輩、先輩!! どうしたんですお!!」

先輩の体を抱き抱え、呼びかける。
先輩は泣きながら、何かをうわ言のように繰り返していた。


(;^ω^)「どうしたんですお、どこか痛いんですかお!!」

川 ; -;)「ぅ……ぇ……ぅぅ……」

(;^ω^)「何ですかお! もっとはっきり!!」

川 ; -;)「う……ぇぅぅ……!!」


(;^ω^)「わ、分かんないですお! 保健室行きますかお!?」

こんなに泣いているのだから、よっぽどの重傷なのだろう。
そう思った僕は救急車を呼ぶ覚悟だったのだが……先輩は鼻水を啜ってから再び口を開いた。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 20:58:29.31 ID:MnRRq0n5O
川 ; -;)「に、200メードルだっだがらぁ……ごれ以上ば、だめだっでぇ……」

(;^ω^)「にひゃっ……!?」

それはあれか、僕が200m以上の歩行を禁止したアレなのか。
あれは『歩行』であって、全速力で200mではなかったのだが……今は突っ込むべきではないだろう。


(;^ω^)「あのー、その……」

川 ; -;)「にがざない」

(;^ω^)「で、ですよねー」


先輩の腕はがっちりと僕の体をロックしていた。
豊満な胸の感触が艶めかしく、こんな状況だというのに意識せざるを得ない。

一通り泣き終えた後、先輩が言葉を綴始める。



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 21:00:48.68 ID:MnRRq0n5O
川 ゚ -゚)「……駄目なのか、私のは」

( ^ω^)「何がですかお」

川 ゚ -゚)「その、体の弱い子を装うってやつ……可愛くなかったか」

( ^ω^)「まぁ、ぶっちゃけて言うと……はい」

川 ゚ -゚)「そうか……」

どうやら本気で落ち込んでいるようで、消え入りそうな声であった。
ここまで落ち込まれると、悪い事をした気分になってしまう。


川 ゚ -゚)「どこがダメだったんだ、言われれば直す、教えてくれ!」

( ^ω^)「いやそもそも、先輩がやるっていうのに無理が……」

川 ゚ -゚)「何だそれは! 私を全否定か! つまり私はお前を好いてはいけないというのか!」

( ^ω^)「そういう訳では……って、ん?」

今、とんでもない言葉が聞こえたような―――



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 21:03:08.11 ID:MnRRq0n5O
(;^ω^)「えっ……先輩はジョルジュが好きなんじゃないんですかお?」

川 ゚ -゚)「何だそれは、変な事を言わないでくれ」

(;^ω^)「だって、この前相合傘……」

川 ゚ -゚)「見てたのか? いや私が傘を忘れてしまってな……」

(;^ω^)「あんなに楽しそうに!」

川 ゚ -゚)「君の話をしていたからなぁ」

つまり……僕の勘違いだったということか?
あれだけ悩んで、あれだけ苦しんで、あれだけ迷惑を掛けて……全て僕の勘違い?


川 ゚ -゚)「もしかして、君の悩みってのはそういうことだったのか?」

(;^ω^)「……えーと」

川 ゚ -゚)「何だ両思いだったか、ははっそうか、嬉しいぞ内藤君!」

先輩のふくよかな物体がより一層押しつけられるも、僕はその感触を味わう余裕もなかった。



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 21:04:51.75 ID:MnRRq0n5O
(;^ω^)「だ、だって先輩、弱い男は駄目だって!
       だから『やまさん』なんて呼ばれている僕はダメだと思ったのに!」

川 ゚ -゚)「そんな事を言うなら、君だってか弱い女の子が好きなんじゃなかったのか?」

( ^ω^)「誰から聞いたんですお?」

川 ゚ -゚)「ジョルジュが言っていたんだが?」

そういえば、ちょっと前にそんなことを言ったような気もする。
でもあれは何となく有りがちな模範解答をしたまでで、本心という訳では……。


( ^ω^)「なんて言うか、好きになる人と」

川 ゚ -゚)「タイプっていうのは」

( ^ω^)「また違うんじゃないかなと」

川 ゚ -゚)「また違うんじゃないかなと」

二人で言って、二人で笑ってしまった。
どうやら僕たちは似た者同士だったらしい。



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 21:06:58.68 ID:MnRRq0n5O
( ^ω^)「僕はずっと、先輩に追いつけないと思ってたんですお」

川 ゚ -゚)「ん?」

( ^ω^)「背中を追いかけるばかりで、遠い存在だったから、ずっとずっと追いかけることしか出来ないんじゃないかって。
       それでも一緒にいたいなと思って、それでこの学校に来たんですお」

川 ゚ -゚)「別に私が先に行ってるつもりはないんだがなぁ」

( ^ω^)「年上だったり何だりで、先輩は自分が思っている以上に進んじゃってるんですお」

むぅと悲しそうに唸ったかと思えば、今度はぽんと手を叩く先輩。
すると僕の手を握り、愛しそうに指を絡めるのだ。


川 ゚ -゚)「君が後ろにいるというのなら、私がちょっと戻ろうじゃないか。
     長い人生だ、少しくらい振り返ったって罰は当たるまい」

( ^ω^)「良いんですかお?」

川 ゚ -゚)「構わん、私はずっとずっと内藤君と一緒に居たい」

その時は先輩は、あの時のように頼もしくて、それでいて最高に可愛かった。



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 21:09:49.75 ID:MnRRq0n5O

『先輩』


『内藤君』


『愛してます』


『愛してるよ』



色々あったけど、物語が二人の口付けで終わったなら、


それはきっと、最高のハッピーエンドなんだと僕は思う。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 21:10:54.68 ID:MnRRq0n5O

(*・∀・)「おーう、ビューティフォー」


( ゚∀゚)「おーう、ビューティフォー」



(*・∀・)「イッツ、ワンダフォー!!」


( ゚∀゚)「イッツ、ワンダフォー!!」



ちなみに、僕と先輩の行動をとある二人の人間が監視していたと知ったのは、もう少し後の話。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 21:13:50.74 ID:MnRRq0n5O
それから数ヶ月後、木枯らしが吹き始め、肌寒く感じることの多くなった季節。
僕と会長が並んで歩くと、至る所から挨拶のお声がかかった。


( ^ω^)「うーん、ちょっぴり有名人気分ってやつだお」

川 ゚ -゚)「生徒会長と副会長のカップルとなればな、物珍しい気分になるのも分からなくはない」

( ^ω^)「おまけにバカップルとなれば、だお」

川 ゚ -゚)「む、まさか先にボケられるとは心外だな」

別にボケたつもりは無かったんだけどなぁ。
とは流石に照れくさくて言えず、笑って誤魔化すしか出来なかった。


玄関で先輩に暫しの別れを告げ、階段を上り、教室に入る。
今ではあの時のヒステリックも無かった事にして貰えたようで、皆、平然と付き合ってくれる。

……たった一人を除いては。



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 21:16:42.82 ID:MnRRq0n5O
( ゚∀゚)「ないとぉおおおおおおおおお!! おはよぉおおおおおお!!」

( ^ω^)「はいはい、おはよーおはよーこけこっこー」

( ゚∀゚)「元気かぁああああああああああ!! 俺は元気だぁああああああああ!!」

( ^ω^)「元気元気のんたんだお、だからとりあえず離れるお」

あの時の事がトラウマになったのか、ジョルジュは毎朝僕に飛びついてくるようになった。
僕のせいであるのは確かなので、強く止めるように言えないのが難しい所だ。


ちなみに『やまさん』という渾名は廃止された。
もっとも、不快だからだとか、そういう訳ではない。

やまさんは恋をしている全ての男女を指して言われるようになった。
東にカップルがいると聞けばやまさん、西に片思いしている子がいればやまさん……という具合である。

名付け親はジョルジュとモララー先生。
僕と先輩が口付けしている場面を見ていて思いついたらしい。
非常に悪趣味でむかついてはいるのだが、全校生徒が楽しんでいるので、まぁ良しとしよう。



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 21:18:50.98 ID:MnRRq0n5O
( ゚∀゚)「あーあ、渾名ないのはさびしーよなー」

( ^ω^)「僕は清々してるお」

( ゚∀゚)「今の候補としては、副会長的な意味を込めてサブちゃん、もしくはもーほーちゃんなんてのが……」

(;^ω^)「待て、もしかして後者はお前と僕を指して言う気なのか、そうなのか!?」

( ゚∀゚)「でもなー、やまさんみたいに何かそれを決定付ける事件が欲しいんだよなぁ……」

(; ゚ω゚)「おい聞け、お前もしかしてそっちの気があるのか、そうなのか!?」



( ・∀・)「うっさいぞ馬鹿二人ー、席につけー」


(; ゚ω゚)「ママは黙ってて!! 今とっても大事な話をしてるから―――」



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 21:21:14.32 ID:MnRRq0n5O

( ・∀・)「……ママ?」

( ゚∀゚)「……ママ?」



(;^ω^)「……やべっ」



どうやら、とんでもない渾名が与えられる予感がする。


明日から、また騒がしくも楽しい毎日が始まる……いや、今も、そして明日からも続いていくんだろう。



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 21:39:03.66 ID:MnRRq0n5O


それと、『やまさん』の名が恋をしている人に与えられるようになった理由。




なんでもやまさんの『やま』は、『恋の病』の『やま』らしい。




表向きには変だと言ってはいるが、実はちょっと気に入ってるのは秘密だ。




―――( ^ω^)やまさんのようです おしまい



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