( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

67: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:11:26.59 ID:e5u5I1QA0
  
第五話 『友のために』

ブーンとクーは、再び背中合わせになった。

敵は高速移動をしている。
つまり、点から点ではなく、点の間を線で移動しているわけだ。
ならば響く音と、目を凝らせば見える地の砕け方を見れば――

川 ゚ -゚)「多少の攻撃位置は割り出せる!」

クーが刀を振った。
金属音。
刀の先には、ナイフで受け止めるツーの姿が。

(*゚∀゚)「やるじゃないのさ。
     止められたのは久しぶりだよ」

川 ゚ -゚)「今だ、内藤!!」

( ^ω^)「おっ!」

クーの背後から、ブーンが拳を構え飛び出した。
最初からクーが動きを止めてくれることを信頼していたのか、その初速は速い。



68: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:13:26.62 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「!」

クーが押さえているので、回避運動は出来ない。
逃げられないと判断したツーは、もう一方の腕に持ったナイフで打撃を受け止める。
が、衝撃までは受け止められなかった。

( ^ω^)「んッ!!」

アッパー気味の、上昇打撃だ。

(*゚∀゚)「!?」

ツーの身体が浮く。
更にクーが、宙に浮く彼女目掛けて蹴り上げを放つ。
防御。
だが、更に身体は浮く。

川 ゚ -゚)「行くぞ!!」

( ^ω^)「把握!」



70: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:15:55.15 ID:e5u5I1QA0
  
ブーンの打撃が隙だらけのツーに向かう。
が、ツーは何故か高速移動を発動しない。
その拳を、ナイフで何とか受け止める。

(*゚∀゚)「ッ……!」

( ^ω^)「おぉぉぉぉぉ!!」

身を回転させながらの連続アッパー。
昇龍拳の連打ともいえる、その強烈な連撃を、ツーは全てナイフで受け止めていく。
だが衝撃はまともに受け、身体はそのままみるみる浮いていく。

( ^ω^)「今だお、クー!」

(*゚∀゚)「!?」

横を見れば、自分と同じ高さに飛び、刀を構えたクーがいた。

川 ゚ -゚)「貴様の高速移動の弱点――」

それは

川 ゚ -゚)「地を蹴らねば発動しないことだッ!!」

渾身の一撃。
その身を両断するかというほどの一撃が、ツーに襲い掛かる。



72: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:18:03.47 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「ッ!!」

ナイフ二本をクロスさせ、剣撃をガード。
が、防げない。
殴り飛ばすような勢いで、クーの刀がツーの身体を吹き飛ばす。

轟、という音を立て、ツーは地面に激突した。
砂煙が派手に舞う。

( ^ω^)「やったかお!?」

川 ゚ -゚)「どうだろうか」

着地し、砂煙の中を目を凝らすように見つめる。
単調に揺らめく茶色の煙。
が、動きがあった。

(*゚∀゚)「あいててて……乱暴だなー、もう」

フラリと立ち上がったのは、紛れも無くツーだ。
スーツは所々が破れ、埃と土でボロボロだが、その身にダメージはあまり見られない。

( ^ω^)「そんな……」



73: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:20:29.38 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「地を蹴らないと発動しない、までは合格点を上げてもいいけど
     それ故の利点をアンタらは見落としちゃったね」

川 ゚ -゚)「利点……?」

(*゚∀゚)「逆に言えば、地を蹴ればあれほどの速度が出るってことさ。
     そんな速度と衝撃に耐えうる私の足が、今の落下如きでやられるとでも?」

彼女は己の足を指差し

(*゚∀゚)「あの程度の衝撃なら、私の足でノーダメージ着地可能ってわけさ」

(;^ω^)「そんな……」

(*゚∀゚)「でも、正直驚いたよ。
     あの速度を捉えたこともだけど、初戦で私を宙に浮かし
     更には最大の一撃を放てるまでの連携を繋げられたってことはね」

見抜かれた。
先ほどの手が、二人に出来る最良の手だということを。
ツーの顔が、ニヤリと歪んだ。

(*゚∀゚)「もうこれで勝ち目ないねぇ……」



75: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:22:40.40 ID:e5u5I1QA0
  
ヒビが入ったナイフを投げ捨てる。

(*゚∀゚)「さっきのお返しも含めて、私の得意技を見せてあげるよ」

(;^ω^)「!?」

消える。
現われた。
己の背後に――

(;^ω^)「あうっ!」

背中に衝撃。
ツーの一撃が、背骨に響き悲鳴を上げる。
続いて、足払い。
ブーンの身が、宙に浮く。

(*゚∀゚)「さぁ、お手玉の始まりさ!」

言い終わるか終わらないかの内に、ブーンの身が更に浮いた。
背中、脇腹、肩、膝裏、尻。
様々な場所を、もはや連撃と言うには速すぎる速度で打撃を入れていく。



76: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:25:20.78 ID:e5u5I1QA0
  
川;゚ -゚)「な、内藤!?」

ツーの姿が見えない状況では
ブーンはただ身を浮かし、身体をガクガクと動かしているだけのようにも見える。

川;゚ -゚)「くそっ!」

クーが助けに入る。
しかし――

(*゚∀゚)「やーらせないんだなー、これが!」

ヒュッという風切音と共に、クーの利き手である左肩にナイフが突き立つ。

川;゚ -゚)「ぐっ……!」

(*゚∀゚)「それでまともに刀は振れないでしょ?
     そこでゆっくり見てなよー」

ブーンの身体が、仰向けの状態で一際高く浮いた。

(*゚∀゚)「この男の処刑を、さ!!」



78: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:27:29.07 ID:e5u5I1QA0
  
彼の身体の先、空の頂点とも言える場所に、ツーが姿を現す。
両手には鋭利なナイフ。
狙うは喉と心臓部。
突き立てれば一番血が吹き出る、彼女にとっては最高の攻撃目標だ。

(*゚∀゚)「ごぉーとぅーへぇーる!!」

ブーンの身体が、落下するために空中で静止する。
同時にツーがナイフを逆手に握り落ちてくる。
そのまま刺し、地面に叩きつけるつもりだ。

( ´ω`)(こ、このままじゃ……)

身体に鞭打つ。
が、数え切れないほどの打撃を浴びた結果、その身体が動くことは無かった。
死の刃が迫る。

対するツーは、歓喜の極みにいた。

(*゚∀゚)(血! 血! 真っ赤な血!
     噴き出る湧き出る真っ赤な血!)

大好きなそれが、今目の前から噴き出そうとしている。
たまらなく最高だ。



79: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:29:34.65 ID:e5u5I1QA0
  
その瞬間。

(*゚∀(#)「ッ!?」

左頬に衝撃。
続いて閃光。
首が限界まで曲がりながらも、ツーは冷静に事を分析する。

攻撃か?

誰が?

失敗作か?

いや、奴は未だ地面だ。

では、誰が?



82: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:31:47.66 ID:e5u5I1QA0
  
見る。
自分と、ブーンと、クー以外の、奴を。

ドクオ。

奴が、怯え嘆き泣き叫ぶ奴が、何かデカい銃を構えてこちらを見ている。
銃口からは煙。

撃ったのか?
私を、撃ったのか?

(*゚∀゚)「なんだよ……なんだよ、お前ぇぇぇぇ!!」

(;'A`)「うあぁぁぁぁぁぁ!!」

射撃。
射撃。
射撃。

3つの光弾がツーに迫る。



85: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:34:00.26 ID:e5u5I1QA0
  
空中では高速移動が出来ない彼女に直撃すると見えた弾。
が、それは叶わなかった。

(*゚∀゚)「当たるかぁぁぁ!」

空中で姿勢を調整。
足をブーンに向けた。

川;゚ -゚)「まさか!」

(*゚∀゚)「こういうことだって出来るのさぁぁぁ!!」

力無く浮くブーンの身体を蹴り飛ばした。
瞬間、ツーの姿が消える。

高速移動の条件は
『地』を蹴ることではなく、単に『蹴』ることだった。
クーは己の認識の甘さを悔やむ。

川;゚ -゚)「くっ……!」

ドクオを護らねば。
何がどうなって彼が銃を手にしたかは知らないが、彼を、ブーンの親友を護らねば。
クーは全力でドクオの元に走った。



86: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:36:03.62 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「なぁんてね」

川;゚ -゚)「!?」

彼女の顔が、目の前に出現した。

(*゚∀゚)「今の時点で一番危険なのはアンタなのさ。
     だから、先にやられてよ」

川;゚ -゚)「うぁっ!?」

腹部に冷たい激痛。
ナイフが深々と刺さっていた。
そのまま膝を折るクー。
それを睥睨するツー。

(;'A`)「う、うわぁ!?」

クーの腹から流れ出す血を目撃し、腰を抜かすドクオ。

(*゚∀゚)「安心しなよ。
    すぐにアンタの色んな箇所から噴き出させてやるからさぁ」



87: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:38:29.69 ID:e5u5I1QA0
  
ナイフを持ち、ケラケラ笑いながら近付く。
ドクオは腰を抜かしたまま、後ずさった。

(;'A`)「く、来るな!!」

(*゚∀゚)「なんでさ?
     アンタ、私を撃ったんだよ?
     その報いを受けないつもり?
     ごめんで済むなら警察いらないよ?」

(;'A`)「お、お、お前だって……お前だって刺したじゃないか!!」

(*゚∀゚)「私はいいの、私は」

とんでもないことをサラリと言う。

(*゚∀゚)「なぁんてね……」

ふと、彼女の表情に暗い影が差した。
その微妙な変化を、ドクオは読み取る。

(*゚∀゚)「私だってさ……普通の女の子としてさ……普通に恋してさ……普通に子供持ってさ」

(;'A`)「お、お前……?」



89: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:40:37.65 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「私ね……アンタと同じ歳くらいのときに、初めて人殺したんだよ」

('A`)「え……」

意外な告白。
彼女は少し悲しそうに語り始める。

(*゚∀゚)「持ってたカッターナイフでね、スパっと。
     原因は、ただのちょっとした喧嘩だった」

そして

(*゚∀゚)「それでねぇ……相手の同級生の女の子は、泣き叫びながら……
    結局は救助が間に合わずに死んじゃった」

('A`)「…………」

(*゚∀゚)「その時、私はね?」

('A`)「あ、あぁ……」



90: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:43:49.28 ID:e5u5I1QA0
  
彼女は、表情を一変させた。

(*゚∀゚)「最 高 に 興 奮 し た」

(;'A`)「!?」

(*゚∀゚)「ハハ、ハハハハハハ!
     ビビった? ビビったぁ?
     私がもしかしたら優しい人だと思ったぁ?」

神経を逆なでするように彼女は笑う。

(*゚∀゚)「ハハハハハハハハハハハハハ!!
     ないよ、そんなことあるわけないよ!
     私が人を殺して悔やむ?
     そんなことあるわけないよ!」

(;'A`)「…………」

(*゚∀゚)「私ね!? 生まれながらの殺人鬼なの!
     生まれたときから殺人鬼なの! だから人の生き死には私が決めていいの!」

狂気の笑い。
その歯車がいつ狂ったのかは知りようがない。
しかし、彼女のその狂気は曲げようのない事実だった。



92: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:46:34.62 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「それでね――」

ふと、肩に手が乗る。
振り向く。

( ^ω^)「…………」

(*゚∀゚)「なっ――」

避ける間も無く頬に衝撃――更に吹き飛び、地面を転がる。

(*゚∀゚)「ッ……!」

( ^ω^)「謝るお……」

(*゚∀゚)「はぁ!?」

(#^ω^)「刺し殺したその子に謝るお!!」

(*゚∀゚)「なんでさ!? なんで私が謝るの!?」

(#^ω^)「謝るお!!」

轟、と風がブーンを中心に舞い出す。
握り締めたその両手が、今までのどの状況よりも白く発光している。



93: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:48:39.98 ID:e5u5I1QA0
  
(;'A`)「ブ、ブーン……」

彼がこんなにも怒りを発する理由を、ドクオは知っていた。
高校入学当時。
ブーンが犯してしまった、拭えることのない罪。
謝ろうとしても、謝る相手がいない罰。

(#^ω^)「うああぁぁぁあ!!」

地を蹴り、疾駆。
その速度は先ほどの彼のものではなかった。

(*゚∀゚)「なんだってんのさ!」

尋常ではない怒気を感じ、ツーは後退を考える。

ここで逃げるのは癪に障るが、正直こんなキチガイを相手にするもの時間の無駄だ。
失敗作は怪我を負い、この男も先ほどの攻撃が効いているはず。
ドクオの7th−Wは奪いたいところだが、あの銃を見る限り、指輪が彼を認めてしまったようだ。
今殺すことも考えられたが、現状を考えると後退が望ましい。

彼女はそう判断する。
それが、自分が逃げ出したい言い訳だとは気付かない。



94: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:50:48.51 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「また今度遊んであげるよ!」

後ろへ飛ぶ。

(#^ω^)「待つお!」

(*゚∀゚)「憶えておいてねー!」

姿が消える。
標的の姿が見えなくなったことで、ブーンは足を止めた。
拳を握り締め、つぶやく。

(#^ω^)「ツー……!」

(;'A`)「ブーン……」

その怒りを発する親友を、ドクオは見ていることしか出来なかった。



97: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:52:52.82 ID:e5u5I1QA0
  
夜。
廃ビルの屋上。
今日の朝からいたその場所に、ツーは戻ってきていた。
折れたナイフを確認し、装備を整えていく。
既に足には赤いブーツは無く、指輪に戻っていた。

(*゚∀゚)「あー、疲れた……ちょっとハシャぎ過ぎたかな?」

( ゚∀゚)「アホか、テメェ。
     派手に暴れて、結局何も奪えてねぇじゃねぇか」

(*゚∀゚)「あれ、優秀作さん、こんな所でどうしたの?」

( ゚∀゚)「ジジイがここに呼んだんだよ。
     何か話すことがあるんだとよ」

ジョルジュが忌々しそうに廃材を蹴飛ばす。

(*゚∀゚)「アンタ、ホントにマッキーのこと嫌いなんだねぇ」

( ゚∀゚)「当たり前だ、ボケ。
     あんな何でも知ってるような顔してる奴が、俺は大嫌いなんだよ」

「そりゃ悪かったのぅ」

( ゚∀゚)「……聞いてたのか。 趣味悪いぜ、ジジイ」



99: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:56:05.97 ID:e5u5I1QA0
  
屋上へ至る扉の影から、その声の主が出てくる。

/ ,' 3「悪態の否定は無いのかの?」

黒いローブを羽織った、低身の老人だ。
腰がほぼ90度に折れ曲がっており、その歩みは危なっかしい。

( ゚∀゚)「事実だぜ、荒巻のジジイ? 何ならここで殺すか?」

指輪を取り出しながら、ジョルジュが睨む。

/ ,' 3「ほっ、仲間同士で争ってどうするんじゃ」

( ゚∀゚)「いつ敵同士になるのかねぇ、楽しみだねぇ」

/ ,' 3「敵になる気満々かい……」

やれやれ、と吐息しながら、荒巻は歩いてくる。
その背後からは大男。

(゜∈゜)「…………」

( ゚∀゚)「なんだ、ソイツも連れて来たのか。
     全然喋ったとこ見たことねぇけど、ソイツいる意味あるのか?」

/ ,' 3「ボディガード、というヤツじゃよ」



100: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:58:25.45 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「マッキーには必要ないでしょーに」

/ ,' 3「お主ら、いちいちうるさいぞ……言いたいことも言えん」

( ゚∀゚)「あんだよ、言いたいことって?」

/ ,' 3「ようやく、見つけたのじゃよ」

(*゚∀゚)「何を?」

その疑問を聞いた荒巻は、肩を落とす。
やれやれと2度目の吐息をしつつ

/ ,' 3「お主ら……何故にこの『VIP』という組織に身を置いておるのか、解っておるか?」

( ゚∀゚)「失敗作をぶっ殺すため」

(*゚∀゚)「血が見たいから」

口々に言う。

/ ,' 3「……もはや何も言うまい」

( ゚∀゚)「冗談、冗談だよ。 いや、冗談じゃねぇけど」



101: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 00:00:39.99 ID:5zoHe3fa0
  
(*゚∀゚)「で、結局は何が言いたいわけ?」

/ ,' 3「……少しは頭の良い部下が欲しいものじゃのぉ」

( ゚∀゚)「あぁ? 馬鹿にすんなよ、ジジイ」

/ ,' 3「では、我ら『VIP』の目的は?」

(;゚∀゚)「そりゃ、アレだ。
     えー……あー……んー……」

悩むこときっかり5秒。
荒巻が半目で見ていることに気付かず、彼は結論した。

(#゚∀゚)「ぶ っ 殺 す !!」

/ ,' 3「阿呆」

即座に返される。
ジョルジュは悔しそうに廃材を蹴飛ばした。

/ ,' 3「とうとう所在が明らかになったんじゃよ」

( ゚∀゚)「だぁから、何がっつってんだろ?」



104: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 00:02:57.49 ID:5zoHe3fa0
  
/ ,' 3「『最強』」

(*゚∀゚)「あぁ、なんかそんなの探すとか言ってたわねぇ」

/ ,' 3「彼の研究所の隠し地下室に、まるで封印されるように設置されていた」

( ゚∀゚)「へぇ……」

ジョルジュが興味深げにニヤリと笑う。

( ゚∀゚)「目覚めは?」

/ ,' 3「これからのワシの努力次第じゃな。
    クルト博士の遺した資料をどれだけ集められるか……」

(*゚∀゚)「ま、そういう難しいことは任せたわ。
     私達は今まで通り、奪って殺せばいいのよね?」

/ ,' 3「言い方最悪じゃが、その通り」

( ゚∀゚)「んで? 話はそれだけか?」

/ ,' 3「落ち着け。
    もう一つ話を持ってきておるわい」



105: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 00:05:11.11 ID:5zoHe3fa0
  
(*゚∀゚)「何々?」

/ ,' 3「新たな我々の同志を紹介しよう。
    こちらへ来なさい」

声と共に、屋上の扉が開く音。
開いた空間の奥から、声が響いてきた。

「凶悪組織『VIP』に招待されるとはな……」

( ゚∀゚)「あ?」

「流石だな、――」

声が途切れる。
数秒の沈黙。
屋上に吹く風が音を立てて流れる。

(*゚∀゚)「は?」

疑問の声に答えるように、扉の影から声の主が出てくる。



107: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 00:07:42.30 ID:5zoHe3fa0
  
( ´_ゝ`)「むぅ……そこで続くは台詞は『俺ら』だろう?
       言ってくれないと困るじゃないか」

(;゚∀゚)「いや、悪ぃけど意味わかんねぇわ」

( ´_ゝ`)「ふむ……やはり弟者がいないと調子が出らん」

長身の男で、脇にノートPCを抱えている。

/ ,' 3「お主らがあまりにも頭が悪いので、頭脳分補給ということで認識して構わん」

( ´_ゝ`)「ふっ……頭脳以上の働きだって出来るんだぜ、俺らは」

(;゚∀゚)「『ら』ってなんだよ、『ら』って」

( ´_ゝ`)「ふむ……やはり弟者が一番俺と相性がいいらしいな」

(*゚∀゚)「ブラコン?」

(;゚∀゚)「大丈夫か、俺ら……」

(゜∈゜)「…………」

/ ,' 3「むぅ……」

悪の会議は何かズレたまま続いていった。



108: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 00:09:51.25 ID:5zoHe3fa0
  
ブーンの部屋で、二人は会話していた。
片方はブーン。
片方はドクオだ。

あの後、腹に傷を負ったクーを病院へ連れて行こうとしたが
またもや頑なに拒むので、仕方なくまたもやブーンの家に運んだのだ。

彼女は今、ブーンのベッドで静かに寝息を立てている。
傷の処置は自分でしたらしいが、随分と医療に精通していることに二人は驚いたものだ。

( ^ω^)「で……ドクオは、あの銃をどうやって?」

ツーに襲われたときの疑問点を、ドクオと共に整理していく。

('A`)「いや、何つーか……ブーンを助けなきゃ、って思ったら突然指輪が光って……」

ドクオが左手を掲げる。
その中指には、あの時と変わらずに茶色の指輪がはめられていた。

('A`)「なぁ、ブーン……教えてくれないか?
    お前の、あの白いグローブと、そこに寝てるクーって人の事を」

そして

('A`)「お前達の身の周りで、何が起こっているんだ?」



110: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 00:12:11.86 ID:5zoHe3fa0
  
(;^ω^)「それは……」

ブーンは言うべきか迷った。
このまま何も知らずに彼を解放すれば、彼は元の生活に戻れるかもしれない。
出来れば、親友を危険な状況に巻き込むようなことはしたくはなかった。

('A`)「やっぱ……教えてはくれないのか?」

ドクオが寂しそうな表情で問いかける。
高校入学当時の時と、同じ表情だとブーンは感じた。
他人を信用したいが出来ない、そんな切ない感情。

川 ゚ -゚)「話そう」

(;^ω^)「ク、クー? もう起きても大丈夫なのかお?」

振り返れば、上半身を起こした彼女がしっかりとこちらに目を向けていた。
だがその手は未だ腹を押さえているのを見ると、傷はまだ痛むらしい。

川 ゚ -゚)「ドクオは指輪に認められた。
     つまり知る権利は充分にある」



111: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 00:14:14.65 ID:5zoHe3fa0
  
(;^ω^)「で、でも……!」

川 ゚ -゚)「聞け、内藤」

いつもと少し違う、叱るような口調に思わずブーンは口を閉ざした。

川 ゚ -゚)「指輪に認められた、と聞けば随分と偉そうに聞こえるだろう」

(;^ω^)「…………」

少し、それはブーンに当てはまった。
他人とは違う、強力な力を持った優越感。
自分が正義のヒーローになったような錯覚。
ブーンは悪いとは思いつつも、そんな感情を少なからず抱いていた。

川 ゚ -゚)「だが、それは違うんだ」

(;^ω^)「違う……?」

川 ゚ -゚)「指輪に認められれば、その者は逃げることが出来なくなる。
     言うなれば呪縛に等しいんだ」

(;^ω^)「呪縛……」



112: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 00:16:18.60 ID:5zoHe3fa0
  
ふと、ドクオが声を漏らして苦笑した。

('A`)「呪縛、ね……確かにそうだわな。
    お前らの話を聞いてると、俺は自分の運命を呪う気分になる」

左手を握る。

('A`)「陸上部で努力して、皆に認められてさ……。
    俺はそんな生活を自力で手に入れたんだ。
    それをこんなちっぽけな指輪が原因で、俺は命を落とす可能性がある。
    今まで積み重ねてきたものを一瞬で崩されるんだ」

彼は、苦々しく笑う。

('A`)「これのどこが呪縛じゃないって言うんだ?」

(;^ω^)「ドクオ……」

('A`)「別にお前を恨んでるわけじゃねぇぞ、ブーン。
    俺は俺の運命を呪ってんだ」

川 ゚ -゚)(自分の、運命……か)



114: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 00:18:19.80 ID:5zoHe3fa0
  
('A`)「ブーン、クーさん……話してくれ。
    お前達の、いや、俺達の身の周りで何が起こっているのかを。
    これから俺はどうすれば良いのかを」

( ^ω^)「ドクオ……!」

('A`)「俺はやるぞ……生き残って、あの生活を確固たるものにするんだ。
    そして絶対に呪縛に負けずに、幸せを掴んでやるぜ」

ニッ、と笑うドクオ。
その口の端は少し恐怖か何かで歪んではいたが、その決意は固いだろう。

川 ゚ -゚)「ならば、話は決まりだな……よろしく頼む、ドクオ」

( ;ω;)「ドクオ〜!!」

(;'A`)「う、うわ、抱きつくな、気持ち悪ぃ! 俺はそんな趣味ねぇぞ!」

ギャアギャアと騒ぐ二人を見つめ、クーは吐息した。

川 ゚ -゚)(私に……運命などあるのだろうか……?)

疑問に答える声は無い。
だが、いずれは自力で答えに辿り着こう。
クーは二人を見つつ、密かにそう決意するのだった。



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