( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

5: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 21:26:09.49 ID:gGzEicxW0
  
第十四話 『愛のために』

戦場は、今や三つに分断されている。

一つは敷地内。
一つは玄関前。
一つは屋敷内。

その内の一つ、屋敷内。

ドクオは階段を駆け上がっていた。
は、と息を短続に吐きながら、銃を抱えたまま上っていく。
休む余裕も暇もない。
ブーンが、屋敷内をこちらに任せてくれたのだ。
彼は恐らくこう言いたかったのだろう。

好きな人は自分で護れ、と。

ドクオは言葉を聞かずとも、それを理解した。
だからこそジョルジュのいる戦場をブーンに任せ、今自分は屋敷の中に入っている。

それだけのことだ。



6: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 21:29:46.71 ID:gGzEicxW0
  
そこまで考え、改めて思考を切り替える。

クックルは2階から突入した。
この屋敷は4階建て。
ツンはおそらく、最上階にいるはず。
そこにクックルが辿り着くまでに、奴を倒さなければ。

(;'A`)「くそっ、どこだよ!?」

窓ガラスが割られているのは発見したものの、クックルの姿は無い。
とりあえずがむしゃらに走る。

(;'A`)「何でこの屋敷、階段が全階繋がってねぇんだ!?」

いちいち上への階段を探さなければならない。
しかも広く、その捜索に時間は掛かる一方だ。
しかし――

(;'A`)(妙に静かだな……)

思う。
いくら非戦闘員だけだといっても、少しは護衛兵みたいな人材を残していないのだろうか。
もしいれば、戦闘音などで場所が解るというのだが――



9: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 21:32:55.08 ID:gGzEicxW0
  
(;'A`)「!?」

廊下を曲がったところで、半分納得し半分絶望した。

死体だ。
ドクオの前方、幅五メートルほどの廊下に死体が散らばっている。
腕を引き千切られているのもあれば、足が無い死体もあり
更には頭が無く、赤黒い何かが漏れ出しているのさえある。

その光景と死臭に、ついドクオはその場で嘔吐してしまった。

(;'A`)「げほっ、げほっ……くそっ……!」

垂れた涎と胃液の混合物を拭いながら悪態を吐く。

こんなことをしている場合ではない。
クックルがツンの元へ確実に近付いている証拠だ。

急げ。
脳が命じ、身体が動く。

赤に染まったメイド服を着て死んでいる女を飛び越え
首が無い男の脇を通り、ドクオは3階への階段を目指した。
皮肉にも、死体が道を教えてくれる。



11: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 21:35:33.94 ID:gGzEicxW0
  
('A`)「あった!」

階段を見つけた。
血が滴りながらも点々と続いているのを見ると、クックルもここを上ったのだろう。

その時だ。

(;'A`)「!」

銃声。
断続的に、火薬が弾ける音が上から響いてくる。

(;'A`)「上ってことは3階……まだ最上階じゃない!」

ドクオは慌てて走り出す。
間に合え、間に合えと心に願いながら。



13: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 21:43:37.26 ID:gGzEicxW0
  
ミ;,,゚Д゚彡「くっ!」

トリガーを引く。
弾が高速で飛び出し、対象に命中。
しかし弾かれる。

フサギコは先ほどからこの動作の繰り返しだった。
原因は目の前の大男。

(゜∈゜)「…………」

ミ;,,゚Д゚彡「銃弾が効かないなんて……!」

屋敷の3階。
4階への階段へ通じる廊下に、フサギコは立ちはだかるかのように立っている。
その手には拳銃。
狙いは、ゆっくりと確実に近付いてくるクックルだ。

ミ;,,゚Д゚彡「!」

射撃。
火薬の爆発する音と衝撃はあるのだが、クックルはまったく動じない。
まるで鋼鉄の身体を持っているかのようだ。

このまったく歯が立たない状況に、フサギコは歯噛みする。



15: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 21:46:51.23 ID:gGzEicxW0
  
今、自分が立っている場所が最終ラインだ。
あとは生き残った非戦闘員とツンが、最上階の部屋に避難している。

他の護衛兵はほぼ全て殺されてしまった。
そして自分の手には通用しない銃。

(゜∈゜)「…………」

クックルが腕を伸ばしてくる。
フサギコはバックステップでそれから逃れた。

奴の腕に捕まっては駄目だ。
捕まった者や物は例外なく全てへし折られ、引き千切られる。
強固、かつ強力。

ミ,,゚Д゚彡「こうなったら――」

銃を懐へしまい、ナイフを取り出す。
点の攻撃が無効化されるならば、線の攻撃はどうだろうか。

あまり期待は持てないが、やってみるしかあるまい。
しかしどうやって攻撃を仕掛けるか。
接近戦が出来るような雰囲気ではないのだ。

誰か――
誰かサポート役がいれば――



17: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 21:50:20.25 ID:gGzEicxW0
  
(゜∈゜)「!」

瞬間、爆音。
背後からの衝撃によってクックルが仰け反る。

('A`)「おい、無事か!?」

ドクオだ。
先ほどまでは持っていなかった、巨大な銃を脇に抱えている。
彼は廊下の奥で片膝立ちになり射撃を開始した。

光弾、光弾、そして光弾。

その全てがクックルの背を直撃。
閃光と共にバシュンと聞きなれない音、そして仰け反るクックル。
しかし――

ミ;,,゚Д゚彡「ちょ、ちょっと待ってください!」

('A`)「え?」

ミ;,,゚Д゚彡「貴方が撃てば撃つほど、この大男がこちらに来るんですよ!」

(;'A`)「あ、悪ぃ……そっちに行けないのか?」

ミ,,゚Д゚彡「無理ですね……大男の懐を掻い潜ってこちらに来る、というのは?」

(;'A`)「お前、俺を殺したい?」

ミ;,,゚Д゚彡「ですよねー……」



20: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 21:53:20.58 ID:gGzEicxW0
  
途端、動きが起こる。
撃たれたクックルが背後を向き、ドクオの方へ向かって走り出したのだ。

(;'A`)「うぉ!?」

足は遅い。
が、その迫力は異常だ。
一瞬、腰を抜かしそうになるが堪え、ドクオは元来た道を引き返し始めた。

とりあえずこちらに来るならばラッキーだ。
その分、ツン達の安全性が上がる。

ドクオは己の身を囮に走り始めた。

('A`)「だが、逃げてばかりってのもアレだしな!」

背後を振り向き、射撃。
光弾が次々とクックルを直撃する。
しかし意に介さないといわんばかりに、発生した煙の中からクックルが飛び出してくる。
その現状を見て

(;'A`)「ねぇ、俺のウェポンって役立ってなくね?」

己のウェポン――7th−W『ガロン』――に語りかけるドクオ。
対するガロンは何も反応を寄越さず、ただただ茶色に鈍く輝くだけであった。



25: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 21:55:48.72 ID:gGzEicxW0
  
敷地内。
そこでは二対一の攻防が展開していた。

(*゚∀゚)「イィィィヤッホォォォ!!」

ツーのカマイタチが唸りをあげつつ迫り

(´<_` )「甘いぞ!」

弟者の金色の盾がそれを防ぎ

( ,,゚Д゚)「つぁっ!」

その隙にギコがツーに突進し

(*゚∀゚)「ひょいさ!」

そしてそれをツーが回避する――その繰り返しだ。

( ,,゚Д゚)「ちっ……戦力が増えても、捉え切れなければ戦いにならん」

(´<_` )「俺は防御専門で、アンタは接近戦……遠距離攻撃が欲しいところだな」

敵の攻撃を防ぎつつ、遠距離攻撃で敵の動きを制限すればギコの攻撃も当たりやすくなるだろう。
しかし今の状況では無理な話だ。
しぃが拳銃を持っているのは知っていたが、その彼女は今ここにはいない。
どうするか――



28: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 21:58:35.53 ID:gGzEicxW0
  
( ´,_ゝ`)「ふっ……ふっふっふ……」

笑い声。
見れば、背後の安全な位置にいたはずの兄者が、弟者とギコの付近で腕を組んで笑っている。

(´<_` )「どうした、兄者……どこか具合が悪いのか?」

(;´_ゝ`)「いや、具合が悪かったら笑わないだろ、常識的に考えて……」

(´<_` )「何と、兄者が常識を!」

煤i;´_ゝ`)「え、俺ってそんな風に思われてたの!?」

( ,,゚Д゚)「兄弟漫才は他でやれ。
     で、兄者……何か策があるのか?」

( ´_ゝ`)「よくぞ聞いてくれた」

兄者は、ゴソゴソと懐から――

( ,,゚Д゚)「指輪!?」

それは橙色の指輪だった。
形状はギコやブーン達のものと同じ。
ということは――



32: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:00:42.60 ID:gGzEicxW0
  
(´<_` )「いつの間にウェポンを?」

( ´_ゝ`)「いや、『VIP』に入った後で渡されてたの忘れてた」

( ,,゚Д゚)「もはやツッコミはせん。
     で、それをお前は使いこなせ、しかも今役立つのか?」

( ´_ゝ`)「役に立たんのなら笑いはせんよ」

指輪をおもむろに右手に装着する。
そして構え、口を開いた。

( ´_ゝ`)「発動!」

ハツドウ――
ツドゥ――
ドゥ――

木霊の後に残るは、風の吹く音。

( ,,゚Д゚)「…………」

(´<_` )「…………」

(*゚∀゚)「…………」

さんにんは そのばで うごけなくなってしまった!



36: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:03:58.15 ID:gGzEicxW0
  
(;´_ゝ`)「……あれ、おかしいな」

右手をブンブンと振りながら、納得がいかないように呟く。

( ,,゚Д゚)「期待した俺が馬鹿だった」

(´<_` )「流石だな、兄者……空気嫁」

二人の冷たいリアクションを見て、兄者は焦る。

(;´_ゝ`)「ま、待て! 今日は調子が悪かっただけだ!
      ウェポン発動ってレベルじゃねぇぞ!? ふはははははは!」

(´<_` )「兄者、途中から台詞が妙な方向へ曲がっているぞ」

( ,,゚Д゚)「お前……まさか、指輪に認められていないのか?」

ふと出た疑問に、兄者は過敏に反応した。
手足をバタバタと振りながら、という世にも奇妙な動作で

(;´_ゝ`)「い、い、いや、そういうわけじゃないぞ!?
      こ、ここで使えるようになれば格好いいなぁ、とかそんなこと思ってないぞ!?」

( ,,゚Д゚)「……認められんわけだ」

(´<_` )「むしろ認めたくないものだな、指輪側としては」

(*゚∀゚)「そろそろ攻撃していい?」

戦いはまだまだ長引きそうだ。



37: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:07:18.27 ID:gGzEicxW0
  
玄関前。
その場では高速ともいえる攻防が展開されていた。

(´・ω・`)「っ!」

( ゚∀゚)「うぉらっ!」

紫色の槍と、灰色の鎖が絡み合う。
槍は刺突。
鎖は宙を這う。

戦況としてはジョルジュが少し押され気味だ。
斬撃などとは違い、ショボンの槍を用いた攻撃方法は突きが主流。
ゆえに鎖で絡め取るには少しコツが必要なのだ。

(;゚∀゚)「ちっ、やっぱ槍はヤリずれぇ……何つって」

(´・ω・`)「悪いね……どうやら僕の方が有利みたいだ。
      あとそのつまらないギャグ、もう言えないようにしてあげるね」

高速の刺突を放ちながらショボンが踏み込んでくる。
途端、石突でジョルジュの顎をかちあげた。

(;゚∀゚)「ごがっ!?」

(´・ω・`)「余所見は禁物だよ」

余所見をさせたショボンが、シラっと言いつつ連撃を開始する。



40: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:10:54.25 ID:gGzEicxW0
  
( ゚∀゚)「ちっくしょっ……!」

対するジョルジュは鎖を纏い、防御体勢に入った。
次々を襲い掛かる穂先を防ぐ。

(´・ω・`)「今だよ、ブーン」

呟いた瞬間、ジョルジュの右頬に死角からのブーンの一撃がめり込んだ。

(#)∀゚)「て、てめぇらぁ……!」

( ^ω^)「おっおっ」

一旦、距離をとる。
二人で並んで各々の武器を構えながら

( ^ω^)「ショボン……僕は嬉しいお」

(´・ω・`)「何がだい?」

( ^ω^)「君と共に戦えることが、だお」

(´・ω・`)「それは期待されていると判断していいのかな?」

( ^ω^)「もちろんだお!
      ショボンは昔から頼りになるんだお!」

(´・ω・`)「……ありがとう」

少し照れながらうつむくショボンを、本当に嬉しそうな顔で見るブーン。



41: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:15:08.74 ID:gGzEicxW0
  
それに対し、ジョルジュは牙を剥いて唸る。

(#゚∀゚)「ちーっとキレちまったぜ……!」

(´・ω・`)「最近の若者はすぐにキレるね。
      カルシウム不足? 牛乳飲めないタイプ?」

(#゚∀゚)「殺すッ!」

鎖を手に持ち、彼はかつても叫んだ言葉を口にした。

(#゚∀゚)「『OVER ZENITH』!!」

(;^ω^)「!」

瞬間、大気が震え光が発せられた。
風が、空気が、大気が、ショボンとブーンの立つ位置にまで吹き込んでくる。
腕で風を防ぎながら

(´・ω・`)「ブーン、これからが本番だよ」

( ^ω^)「解ってるお!」

二人で油断無く構え、相手を見据える。
未だジョルジュは光の中だ。
発光時間が長い。
それはつまり、強力なモノが出てくるという事だろうか。
ブーンは少し緊張した面持ちでそれを待ち受ける。
果たして、鬼が出るか蛇が出るか――



43: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:17:15.32 ID:gGzEicxW0
  
屋敷内。
3階に存在する大広間の最奥にドクオはいた。

正面にはクックル。
追いかけてくるクックルから逃げ続け、辿り着いた部屋がここだった。

('A`)「やべぇな……」

周りを見ながらつぶやく。
出口がなく、そして窓もない。
唯一の出入り口はクックルの巨体が阻んでいる。
部屋の広さは20メートル四方。
数台の長机と椅子があるだけで、障害物はほぼ無いといってもいいだろう。
こんな状況で銃を用い、あの巨体をしとめるのは難しい。

(゜∈゜)「…………」

そんなことを考えている内にも、奴はドスドスと近付いてくる。
射撃。
しかし効いているように見えない。

(;'A`)「おいおい……これってマジやばくね?」

ミ,,゚Д゚彡「ドクオさん!」

大広間の入り口からフサギコが姿を現した。
その手には大型のナイフと、黒い光を鈍く放つマシンガンらしき銃器だ。



45: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:19:44.08 ID:gGzEicxW0
  
ミ,,゚Д゚彡「とりあえず挟み撃ちしましょう!
      いくら防御力が高くとも、攻撃を重ねれば――」

('A`)「解った!」

二人同時に得物を構える。

('A`),,゚Д゚彡「おぉぉぉぉぉ!!」

そして同時に攻撃を開始した。

クックルの前方からは高速の光弾。
クックルの後方からは銃弾の嵐。
それらがクックルの巨体に襲い掛かる。

(゜∈゜)「……!」

動きがあった。
クックルが両腕を上げ、防御にまわしたのだ。
それはつまり――

('A`)「少しは効いてるってことだよな……ってことは無敵じゃねぇ!」

ミ,,゚Д゚彡「私が接近戦を仕掛けます! ドクオさんは援護を!」

('A`)b「把握した!」



46: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:22:28.51 ID:gGzEicxW0
  
フサギコがナイフを片手に走り出す。
クックルが気付いた。

しかし方向転換をする前に、ドクオの射撃が頭部を捉える。
その隙にフサギコのナイフがクックルの巨体を切り裂いた。
脇腹から、少量の血が噴き出す。

('A`)「おっしゃ!」

初めて与えたダメージらしきものに、ついドクオはガッツポーズをとる。

ミ,,゚Д゚彡「しかし何て防御力なんでしょうか……普通なら致命傷モノですよ、今のは」

('A`)「今はそんなこと考えてる場合じゃねぇだろ。
    とにかく動きを止めるぞ!」

ミ,,゚Д゚彡「はい、いきます!」

再度、フサギコが接近を試みる。

それを見つつ、大した度胸だ、とドクオは思う。
あんな怪物じみた大男にひるみもせず立ち向かっていく。
もしかしたら、そういう類の訓練でも受けているのかもしれない……というか受けているのだろう。



49: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:24:29.97 ID:gGzEicxW0
  
('A`)(俺とは大違いだ……)

しかし、自分だって負けてはいない。
ついこの前まで高校生をしていた自分が、今やあんな怪物としっかり戦えている。

ジョルジュ戦ではあまりに情けない事態に陥りかけたが
フサギコという男のおかげで何とかなりそうに思える。

やはり自分はサポート役だな、と改めてドクオは思う。
ガロンは前線に突撃して敵を一掃するタイプではなく、味方を背後から援護する武器だ、とも思う。

('A`)(まさに俺向き、だな)

少し諦めたような、しかし納得した吐息。
自分はブーンやギコのようには戦えない。

怖いから。
恐ろしいから。
度胸が無いから。

しかし、代わりに援護という彼らに出来ないことが可能なのだ。

それは誇れることだろう。
それは誇っても良いことだろう。

ならばやることは一つ。



51: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:27:21.24 ID:gGzEicxW0
  
('A`)「行くぜ、ガロン!」

フサギコの動きを阻害しないよう、慎重に狙いを付けて撃つ。
それにより、クックルの動きが鈍る。
そして出来た隙をフサギコが的確に突いていく。
ドクオの素人目から見ても、それは割と良いコンビネーションに見えた。

(゜∈゜)「……!」

次々と傷が増えていくクックル。
その鈍い動きでは、フサギコを捉えることが出来ない。

ミ,,゚Д゚彡「いけます!」

('A`)「やっちまえ!」

その時だ。
クックルが懐を探る動作をとる。
取り出したのは――

ミ,,゚Д゚彡「……指輪?」

(;'A`)「ま、まずい!」

しかし遅い。
ドクオが叫んだと同時に、クックルはウェポンを発動した。
緑色の発光が周囲を包む。



52: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:29:59.98 ID:gGzEicxW0
  
ミ;,,゚Д゚彡「これは……?」

(;'A`)「離れろ! 何の武器が来るか解らねぇぞ!?」

ミ;,,゚Д゚彡「は、はい!」

バックステップで距離をとる。
戦闘経験などはフサギコが上だが、指輪戦闘ではドクオの方が詳しい。
それを察してか、フサギコはドクオの忠告を素直に聞き入れた。

発光が止む。
その中から出てきたのは――

('A`)「斧……!?」

クックルの右手に握られていたのは斧。
緑色の巨大な両刃があり、しかし柄は短い。
巨大なトマホーク、と表現した方が早いか。

ミ;,,゚Д゚彡「な、何なんですか、アレ!」

('A`)「説明は後でする!
   とりあえず普通の斧じゃねぇのは確かだ!」



54: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:33:11.88 ID:gGzEicxW0
  
ミ,,゚Д゚彡「わ、解りまし――」

言いかけたその時。

「フサギコ……?」

声。
女性の声だ。
二人は一斉に声のした方向――大広間の入り口――を向いた。

ξ゚听)ξ「……どうなってるの、これ?」

ツンだ。
彼女が入り口のドアに隠れるようにして、こちらの様子を伺っていた。
どうやら静かになったのを不審に思い階下に降りてきたのだろう。

ミ;,,゚Д゚彡「お、お嬢様!? こちらに来ては駄目です!」

ξ゚听)ξ「え? え?」

(゜∈゜)「…………」

その声にクックルが気付いた。
ツンの方を向く。
まずい。

(;'A`)「やめろ!!」

ガロンから光弾が放たれる。
が、クックルは意に介さない。



58: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:36:08.80 ID:gGzEicxW0
  
ξ;゚听)ξ「え? え? え?」

ミ,,゚Д゚彡「お嬢様!」

フサギコが走り出す。
しかし間に合うか。
そのためにも、ガロンで動きを――

(;'A`)「くそっ! 止まれ! 止まれよ!」

しかし止まらない。
光弾は当たるものの、それがクックルの気を引きつけるどころか止めることさえ出来ない。

ξ゚听)ξ「きゃ!?」

ようやくクックルの接近に気付いたのか、ツンが小さな悲鳴を上げる。
その間にもクックルは右腕を振り上げ、緑色の斧を――

ミ,,゚Д゚彡「おぉぉぉ!!」

間一髪、フサギコが早かった。
振り下ろされる斧に対し、大型ナイフで防御するかのように振り上げた。
接触。
そして――

ミ;,,゚Д゚彡「ば――」

(;'A`)「爆発ッ!?」

見ればフサギコの持つナイフが、爆撃によって完全に砕け散っていた。



61: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:39:18.20 ID:gGzEicxW0
  
その衝撃はナイフを持つ手にも及ぶ。

ミ;,,゚Д゚彡「う……!」

血が流れる右手を痛そうに押さえるフサギコ。
至近距離で爆風を食らった結果、その右手の各部が裂けたのだ。

ξ;゚听)ξ「フ、フサギコ!?」

慌てて駈け寄るツン。

ミ,,゚Д゚彡「お、お嬢様! 早くお逃げ下さい!」

ξ゚听)ξ「で、でも――」

途端、衝撃。
クックルの横殴り気味の殴打が、フサギコの頭部を捉えた。

ミ;,,゚Д゚彡「ッ!?」

吹っ飛び、壁に激突し――そのままグッタリと動かなくなった。

ξ;゚听)ξ「フサギコ!!」

(゜∈゜)「…………」

ξ;゚听)ξ「ひっ……」

大男が彼女の目の前にいた。
あの怪力ならば、ツンの華奢な身体はさほど苦労も無くバラバラにされるだろう。



65: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:41:29.30 ID:gGzEicxW0
  
(;'A`)「やめろっ!!」

ドクオが思わず走り出す。
もはやトリガーは引かず、しかし構えたまま走った。
光弾が駄目ならば銃身で殴るまでだ。
接近。
しかし――

(゜∈゜)「…………」

(;'A`)「!?」

首がこちらを向いた。
まさか――

(;'A`)(待ち構えられて――!?)

思う間もなく衝撃。
クックルの背面蹴りがドクオの腹に直撃していた。

(;'A`)「ぐほっ――!!」

身を折り吹き飛ぶ。

ξ;゚听)ξ「ド、ドクオ!?」

ツンの声が、少し遠くで聞こえた。



67: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:44:02.20 ID:gGzEicxW0
  
(;'A`)(情けねぇ……)

壁に身を預けながら、ズキズキと痛む頭で思う。

情けないな、と。
根性無しだ、と。
弱者だ、と。

自分は弱い。
ブーンのように戦う勇気も無く、ギコのように愛する者を命懸けで護るような度胸もない。
更に言えばジョルジュのように戦闘に執着することは出来ないし
フサギコのように一途に護り続けることも出来ないだろう。


('A`)(何なんだよ、俺……)

解らない。
ただ、悔しさが心を満たしている。

('A`)(何が……悔しいんだろうか)

思う。
諦めかけている自分が悔しいのか?
不甲斐ない自分が悔しいのか?
戦力にならない自分が悔しいのか?

全てだ。
己の全てが許せなかった。
理想とはかけ離れた自分の姿に落胆していた。



72: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:46:31.11 ID:gGzEicxW0
  
('A`)(でも……)

それでも。
そうだとしても。
たとえそうなんだとしても。

('A`)(それで諦めて、何になるってんだよ……!?)

足腰に力を入れる。
しかし起き上がれない。
そうしている間にも、ツンが危ないというのに。

('A`)(俺は――)

強く思う。

('A`)(俺は、ツンを護りたい……!!)

その瞬間だ。
意思と思える何かがドクオに介入してくる。



74: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:48:41.85 ID:gGzEicxW0
  
ドクオもそれに気付き、そして戸惑いながらも言葉を交わす。

数分とも一時間とも感じられた時間。
しかしそれは一瞬の出来事。

はっ、と顔を上げるドクオ。

('A`)(今のは――)

解らない。

しかし解った。
己のやるべきことが。

('A`)(やってやる……!)

震える足に鞭を打って立ち上がる。
クックルを見れば、ツンに向かって歩いているところだった。

これでは間に合わない。
誰か、誰か時間稼ぎをしてくれなければ――



77: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:50:54.92 ID:gGzEicxW0
  
フサギコもドクオと同じく、壁に身を預けていた。
そして彼と同じく、己の無力に歯噛みしていた。

ミ;,,゚Д゚彡「お、お嬢様……」

全身に力を入れ、立ち上がる。
しかし右腕は痛むだけで、もはや自由には動かない。
左手に予備のナイフを持ち歩き出そうとする。

ミ,,゚Д゚彡「くっ……」

頭がクラクラする。
眼前で爆撃を喰らったことにより、脳が揺さぶられたのだろうか。
しかし足を止めている場合ではない。
ツンを護れねば。
フサギコはその一心で足を動かす。

ミ,,゚Д゚彡「ミーディ様から頼まれたんです……!
      お嬢様は私が護らねば……!」

元々はツンの父親であるミーディの、執事兼ボディガードだったフサギコ。
彼が病死する寸前の自分への遺言が『娘はお前が護れ』だった。
あれから五年。
何事も無くいっていたはずなのに、その安全はたった一人の男によって揺るがされた。

やらせてたまるか。
殺されたまるか。
護れずに死んでたまるか。



80: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:53:03.69 ID:gGzEicxW0
  
ミ,,゚Д゚彡「私が……護る……!!」

言葉と同時に事が動いた。
キィィン、という甲高い音と共に、胸の内ポケットが振動を始める。

ミ,,゚Д゚彡「これ、は……」

内ポケットから取り出したのは黒い指輪だ。
ギコ達が回収したいと言っていた危険な指輪。
それが今、音を発し振動している。

ミ,,゚Д゚彡「ミーディ様がかつて付けていた指輪……これが、私の意志に反応した?」

何という奇跡だろうか。
死してなお、彼は自分を、ツンを見守っていたのだ。
これは呪われた危険な指輪などではない。
これは――

指輪を咄嗟に左手指にはめながら、走り出す。
彼が、ミーディが、ツンの父親が自分に力を貸そうとしているのだ。
ツンを……娘を護れ、と。
フサギコはそう思い、そして願ってやまなかった。

ミ,,゚Д゚彡「ならばその期待に応えるのが我が務め!」

もはや右手の痛みなど感じない。
脳の揺さぶりも、身体のだるさも全て吹き飛んだ。

ミ,,゚Д゚彡「おぉぉぉぉ!!」



82: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:55:39.92 ID:gGzEicxW0
  
ドクオは見た。
彼が、フサギコがクックルへ向かって走っているのを。
それを見た彼は自然と叫ぶ。

('A`)「おい! 何でもいいから奴の動きを止めろ!」

ミ,,゚Д゚彡「解りました!」

もはや二人に痛みも疲れも無い。
ツンを護る、という共通の目的が全てを忘れさせた。

(゜∈゜)「……!」

向かってくるフサギコに気付いたのか、クックルがその巨体を方向転換させる。
右手を振りかぶり、フサギコに狙いを――

ミ,,゚Д゚彡「っ!!」

交差は一瞬。
次の瞬間には、クックルの右腕が宙に浮いていた。

(゜∈゜)「……!?」

ξ;゚听)ξ「フサギコ……それは……?」



88: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 22:58:04.33 ID:gGzEicxW0
  
着地したフサギコは、交差する前のフサギコとは違った。
左手に――

ξ;゚听)ξ「鎌……!?」

ミ,,゚Д゚彡「これは……貴女の父君が私に託した力なのでしょう」

巨大な漆黒の、死神が持っていそうな鎌。
それがフサギコの左手に握られていた。
鋭利な刃には、先ほどクックルの右手を切り落とした時の血が付着している。
フサギコはそれを薙ぎ払うかのように振りつつ

ミ,,゚Д゚彡「形勢逆転、ですね」

少し荒い息をつきながら、背後の大男に宣言する。
対するクックルは

(゜∈゜)「…………」

無言。
痛がりもせず、そして傷口も飛んだ右腕さえも見ない。
何かしたか、とでも言いたげな表情をしている。

ミ;,,゚Д゚彡「ど、どういう――」

言いかけて気付く。
クックルの切断された右腕からの出血がほとんど無いことに。
すぐに傷口が塞がったとでもいうのだろうか。
ありえない。
ならば、何故――



93: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 23:00:32.26 ID:gGzEicxW0
  
(゜∈゜)「…………」

疑問に思うが、時間は止まってはくれない。
左腕に持った斧を振りかぶりながらクックルが迫ってきた。

ミ,,゚Д゚彡「くっ……!」

バックステップ。
あの斧に触れては駄目だ。
理屈は解らないが、触れたもの全てを爆破するらしい。
防御は出来ない。
しかし

ミ,,゚Д゚彡「回避なら容易い……!」

だが、それでは全ての解決には繋がらない。
先ほどのドクオの言葉。
彼は『動きを止めろ』と言った。
何か策があるのだろう。
しかしそれは回避運動だけでは不可能で、どうしても接近する必要がある。

ミ,,゚Д゚彡「どうするか……」

向かい来る斧を回避しながら思考する。
ドクオの案を放棄し、己の鎌のみで倒すか。
しかし、先ほどの一撃は奇襲じみた攻撃なので上手くいったが、次はどうなるか解らない。
どちらにせよ、あまり良い状況ではないようだ。



98: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 23:03:00.81 ID:gGzEicxW0
  
ドクオは壁から身を剥がし、クックルに狙いを付けていた。
しかし定まらない。

('A`)「くそっ……」

痛む身体を無視し様子を見る。
クックルが斧を振り、それをフサギコが回避する。
その繰り返しだ。

せっかく奴を倒す方法を得たというのに使えないとは。
これほどもどかしいことはない。
しかし待つしかないのも事実。

('A`)「早く、早く動きを止めろよ……!」

照準を忙しなく動かしながら、ドクオは呟いた。
その思いが届いたのか

ミ,,゚Д゚彡「一か八か、行くしか――!」

フサギコが大鎌を構え、走る。
対しクックルも斧をフサギコ目掛けて振り下ろした。
二人の中間地点で二つの武器がぶつかり合う。

衝撃、そして金属音。
少し遅れて爆発。



102: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 23:06:22.60 ID:gGzEicxW0
  
ミ,,゚Д゚彡「くぅ……!」

いくらウェポン同士のぶつかり合いは無意味だとしても、やはり爆発の衝撃は受け流せない。
仰け反るように後退するフサギコ。
それを追うクックル。
身を後ろに流しながらも、鎌を振る。
それはクックルの左肩に食い込むが、しかし切り裂くことは出来なかった。
瞬間。

ミ;,,゚Д゚彡「がっ!?」

クックルの鋼鉄のような頭部が、フサギコの額に直撃した。
今度こそ身を後ろへ倒してしまう。

ミ,,゚Д゚彡「!?」

視線を上げれば、トドメを刺すための一撃を振り上げたクックル。
慌てて横転。
一瞬後に、己がいた空間を斧と爆発が直撃。
フサギコは身を爆風に焼かれ、吹き飛ばされながら転がった。
うつ伏せの状態で回転が止まる。
起き上がろうと手をついたときに、己の額から決して少なくない量の血が流れているのが解った。

ミ,,゚Д゚彡「っ……」

起き上がる。
身体中が痛みと軋みに悲鳴を上げるが全て無視。
左手を見れば、未だ武器を持っている。
その事実にフサギコは安堵の吐息を漏らした。



105: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 23:08:30.83 ID:gGzEicxW0
  
ミ,,゚Д゚彡「こうなったら――」

もはや体力も限界だと判断。
爆風や緊張、そして衝撃のせいでジリジリと削られている結果だ。
全力で、あと数分戦えるかどうか。

(゜∈゜)「…………」

奴が向かってくる。
もはや考えている時間は無い。
あとはあのドクオという少年に任せよう。

そう決意したフサギコは、鎌を両手で構えながら地を蹴った。

ミ,,゚Д゚彡「おぉぉぉぉ!!」

右手は柄を、左手は刃の頭を握りつつ迫る。
狙うは奴の腹。
そしてその向こうにある壁だ。
身を捻り、全体重をかけながら上半身を振った。
刃の先端がクックルの胸部に刺さり――

(゜∈゜)「……!」

しかし相手は同時に斧を振りかぶる。
間に合うか。
いや、間に合え。



107: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 23:11:09.96 ID:gGzEicxW0
  
ミ,,゚Д゚彡「おぁぁぁぁぁ!!」

ズブズブと刃がクックルの胸部に差し込まれていく。
ただの筋肉の壁ではないのか、抵抗が思ったより強い。
全力で刃を押すが、しかしそれは何か軟質なモノによって阻まれる。
見れば斧が振り下ろされる瞬間。
間に合わない――

ミ,,゚Д゚彡「くそおぉぉぉ!!」

押せ。
押すんだ。
押し込め。

己の身体がたとえ砕かれようとも破壊されようとも、間に合わせろ。

それが己の望む心。
それだけが己が願う事象。

全ては護るために――!

(゜∈゜)「!」

抵抗が無くなった。
刃がクックルの背中を突き抜けたのだ。
あとは背後の壁に突き刺すだけ――



109: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 23:13:39.32 ID:gGzEicxW0
  
ミ;,,゚Д゚彡「ッ!?」

右肩に衝撃。
見るまでもなく解ってしまった。
緑色の斧がフサギコの右肩に突き立っている。
その後にやってくるのは

ミ;,,゚Д゚彡「ぐぁぁぁぁ!?」

衝撃と爆風。
それが右肩を蹂躙し、更にはフサギコの右顔面に襲い掛かった。
首が折れそうな衝撃。

しかしフサギコの腕はまだ諦めてはいなかった。
ガン、と硬質な音が響く。
背中を突き抜けた大鎌の刃が、壁を貫通したのだ。
それを確認したフサギコは

ミ;,,"Д゚彡「くっ……」

よろめきながらも後退する。
もはや右腕は動かず、右耳は聞こえず、右目は見えない。

しかしやることはやった。
満足するように微笑んだフサギコは
壁に張り付けにされて動けないクックルから少し離れた場所で遂に倒れた。



113: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 23:16:02.16 ID:gGzEicxW0
  
ξ;゚听)ξ「フ、フサギコ!?」

慌ててツンが駈け寄る。

ミ,,"Д゚彡「お、お嬢様……」

ξ;゚听)ξ「そんな……フサギコ……」

右肩が裂け、右顔面が血だらけな状態を見てツンは絶句する。
そんなショックを受けたような顔を見ながら、フサギコの意識は途絶えた。

ドクオはその様子を少し遠くで見届ける。

('A`)「よくやってくれたぜ……!」

改めてガロンを構える。
狙うは、壁に張り付けにされもがいているクックル。
照準を合わせ、ドクオは一言。

('A`)「『OVER ZENITH』……グランドバレルオープン!」



117: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 23:19:34.75 ID:gGzEicxW0
  
途端、ガロンに眩い光を発し――

だが、それだけに留まらない。
銃口が開き、ガコンという音と共に中から新たな銃身が伸び出てくる。
それは伸びきった後で更なる巨大な銃口を作り出した。

続いて後部が展開。
内部から四つのミラーのような細長い板が出現する。
それは四方向に展開し、十字架のような形を作り出した。

更に銃身の中間部分が開く。
そこから出てきたのは三つの球状の物体だ。
それがフワフワと浮いたかと思えば、銃口の周りで輪を描くように回転を始める。
速度は高速。

もはや一つ一つの球が判別出来なくなるほどの速度に達した時――

ガロンの銃身の各部から光が漏れ出してくる。
続いて高音。
何かを充電するような、力を蓄えていくような音が響き始める。
音はどんどん高くなっていき――共に銃身がガタガタと振るえ、ドクオはそれを全身で押さえつけた。



122: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 23:21:41.30 ID:gGzEicxW0
  
もはや照準は動かない……というか動かしようがない。
フサギコに動きを止めろ、と言ったのはこれが原因だ。

('A`)「いくぜ……!」

未だもがいているクックルに最終的な狙いを付ける。

高音が響き、そして一定の音階へ達した。
全ての準備が整った証拠。

トリガーに指を当て――

('A`)「くたばれッ!!」

思い切り引いた。



126: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 23:24:05.62 ID:gGzEicxW0
  
外で戦っていたギコ達は、その衝撃と光と轟音に一瞬意識を奪われた。

(´<_`;)「な、なんだ!?」

見上げれば、屋敷の三階部分の壁を吹き飛ばしながら
幅数メートルはありそうな極太のレーザーが光の筋を作り上げていた。
それは高音と共に、夜空に一筋の光を描く。

(;´_ゝ`)「あわわわわ……」

(´<_`;)「兄者、その驚き方は流石に無いだろ……」

( ,,゚Д゚)「この光……まさか、ドクオか?」

だとすれば、おそらく限界突破を――
ふと口に笑みが浮かぶ。

( ,,゚Д゚)「どうやら、アイツも『答え』を出したようだな」

夜空に光る一筋の線を見ながら、ギコは呟いた。



130: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 23:26:08.77 ID:gGzEicxW0
  
空気が流れる音。
そしてパラパラと何かの破片が落ちていく音。
それらがしばらくの間、屋敷の三階大広間を支配していた。

(;'A`)「ハァ、ハァ……」

ガロンを指輪に戻す。
疲労。

(;'A`)(何だか、体力を全て吸い尽くされた気分だ……)

とりあえず足は動くので、クックルの元へ歩き出す。
前方は砂煙で何も見えない。
が、それらはすぐに晴れていく。

(;'A`)「うわ……なんじゃこりゃ」

壁に穴が空いていた。
直径三メートルほどの巨大な穴だ。
その先に見えるのは外と夜空。

('A`)「あの野郎は――」

いた。
穴の淵に、手足の先だけが残っている。
他は全てあのレーザーに抉り取られたのだろうか。
その不気味な光景に、ドクオは顔をしかめる。



135: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 23:28:11.78 ID:gGzEicxW0
  
(;'A`)「ちょっと威力が強すぎたか……。
    とは言え、加減なんて解るわけねぇし……」

ふと、足元に何か硬質な物が当たる。
緑色に輝く指輪と、漆黒の色をした指輪。

('A`)「お、ラッキー。
   レーザーに巻き込まれなくてよかったぜ」

拾い上げる。
それの輝きを目に入れながら

('A`)「しかしまぁ……俺もとうとう人殺しちまったなぁ」

呟く。
案外、あっけないものだった。
もっと頭が混乱して発狂でもするのかと思っていたが、そうでもない。
意外にスッキリしている。
それは相手があの大男だったからだろうか。
よく解らない。



139: ◆BYUt189CYA :2006/11/19(日) 23:29:57.72 ID:gGzEicxW0
  
('A`)「ツン……」

とりあえずあの二人に目を向ける。
フサギコはグッタリとして倒れており、その傍らでツンが泣きじゃくっていた。

ξ;凵G)ξ「フサギコ……起きてよ、ねぇ!」

('A`)「ツン、とりあえず医療室みてぇな所に運ぶぞ」

ξ;凵G)ξ「ドクオ……フサギコが!」

('A`)「解ってるよ、死なすつもりはねぇ」

残り僅かな体力を振り絞り、フサギコを肩に担ぐ。

死なせてたまるか。
フサギコは
俺の戦友だ。
ツンを護るという共通目的を以って戦ったんだ。
死なせてたまるかよ。

その気持ちのみで、ドクオは重い身体を運んでいった。



戻る第十五話第十五話(携帯用1ページ目)【現時点でのウェポン表】