( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

183: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:03:57.62 ID:QKJP9sTH0
  
エピローグ 『「かつて」と「これから」』



あれから数ヶ月の時が過ぎ去った。

――二月某日。

(;^ω^)「さ、さ、寒ぅぅ!?」

(;'A`)「これはアウトだろ、常識的に考えて……」

地は白一色の雪景色。
空を見上げれば、様々な色を浮かべる幻想的なオーロラ。

――ここは最果ての地「シベリア」。

かつて共に戦った戦士達+αは、この場に再度集っていた。



192: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:05:53.36 ID:QKJP9sTH0
  
( ・∀・)「ふむ、時期も丁度良かったようだね……一番綺麗な時に来れた。
     私の企画した『寒いよ! だからオーロラ見に行こう!』旅行はどうかな?」

そう、この団体旅行を企画したのはモララー。

ある日突然、彼から手紙が届いたことにブーン達は驚かされた。
長々と文章が書いてあったが、その内容を要約すると

「どうせ巡り合った運命だ。
 これ以降も、定期的に親睦を深めようではないかね」

要は皆でワイワイと騒ぎたいらしい。
事が事だけに断る人はいなかった。
つまり、ハインリッヒとの戦いに関わった全員がこの場にいることになる。

ここで一つ疑問が浮かぶ。

――ウェポンはどうしたのか、と。



202: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:08:09.75 ID:QKJP9sTH0
  
あの戦いの直後。
指輪はどうしようかという話にはなったが、結局は皆同じ意見だった。

各々で管理しろ。
だが、極力その力は使用するな。
依存はただの停滞なのだから。

特にジョルジュには、これを書いた手紙を皆が順番に数日に一度送っている。
いつだったか、ブーンの元に唯一の返事がきたことがあった。

『テメェらUZEEEEEEE!! 解ったからその嫌がらせはやめろ!!』

と、乱暴な字で書かれていた。
これを通達したところ、意外にも全員が信用した。

が、未だに手紙を送り続けているツワモノもいるらしい。
おそらくはギコ(厳格な正確故に)か兄者(イタズラ目的)かモララー(左に同じ)辺りだろう。

ちなみに、ブーンが指輪の力に屈しかけたこともあった。
ある平日の朝、遅刻寸前で慌てている時に閃いた彼の奇策。

(;^ω^)「限界突破の脚部強化を使って一気に走るお!!」

言うまでもなくクーに取り押さえられ、遅刻という結果に終わったが。
とりあえず、指輪はパートナーと共に平和にやっているということだ。

さて、そんなこんなで過ぎ去った数ヶ月。
果たして彼らに何か変化はあったのだろうか?



207: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:10:12.30 ID:QKJP9sTH0
  
(;,,゚Д゚)「本当に寒い、本当にそれだけだ……!」

(;*゚ー゚)「ギ、ギコ君、震えすぎ……」

分厚い防寒具を着込んでガクガクと震えているのはギコだ。
そしてしっかりと彼に寄り添っているしぃ。

あの
戦いが終わって数週間後。
事後処理に追われていた皆の暮らしが一段落した頃、二人は唐突に籍を入れた。

ブーン達だけ呼ばれた、小さな結婚式。
明確に憶えているのは
終始顔を真っ赤に染めていたギコと、幸せそうに微笑んでいたしぃ。
そして呼ばれていなかったはずのモララーの乱入。

「ははは! この私を呼ばないなど――それ何て照れ屋なのだね!?」

派手な衣装と豪華な料理を持ってきて、そんなことを言っていた。
ただ、彼なりにギコとしぃを祝福したかったのだろうな、と後になって思える。



216: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:11:45.52 ID:QKJP9sTH0
  
(´・ω・`)「いや、でもタダ同然でこんな旅行は嬉しいものだね」

極寒の中、何気にオーロラを見て楽しんでいるのはショボン。

結局、彼はブーン達の高校へ来ることは無かった。

どうやら踏ん切りがついていないらしく、今も細々と『バーボンハウス』を経営している。
ただ、以前のような情報屋はやっていないらしい。

今、あのバーは悩み疲れた人達の憩いの場になっているとか。



221: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:13:48.40 ID:QKJP9sTH0
  
(´<_` )「うむ、やはりPCの画像と本物は違うな」

(*´_ゝ`)「オーロラたん……ハァハァ」

真面目に感想を述べる弟者と、一歩間違えて変態を超越している兄者。

戦いの後、帰るべき家が無いという事実が判明したこの二人は
住み込みでショボンのバーを手伝うこととなった。

ちなみに、あの戦いでは解らなかったリトガーの狙いを調べるために
よく二人でクルト博士の元・研究所に通っているとか。

未だ詳しいことは解っていないが、断片的な情報をまとめると
どうやらリトガーの目的のベクトルはブーン達と戦った後に向けられていたらしい。

その『後』とやらの正体を知るために、日夜PCを操って情報収集しているのが弟者。
対して『魔法少女』というジャンルに取り憑かれた兄者は、日夜PCを操って画像収集している。



229: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:16:17.19 ID:QKJP9sTH0
  
(;゚∀゚)「さささみーよ! さみーからさっさとホテルに帰ろうぜ!?」

ギコと同じく身を震わせているのはジョルジュだ。

彼も帰る家が無いため、ショボンの世話になっている。
ちなみにショボンは彼を毛嫌いしているため、毎日のように重労働を強いられているとか。


これからの彼の未来は暗い……のかもしれない。



237: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:18:19.02 ID:QKJP9sTH0
  
ξ゚听)ξ「あ、何かある! あっちに行ってみましょう!」

(*'A`)「お、おう」

ミ,,"Д゚彡「お嬢様、あまり遠くには行かないで下さいよー」

ドクオの手をとって走り出すのはツン。
顔を赤くしてついて行くのはドクオ。
そんな様子をのんびりと見つめているのはフサギコ。

屋敷へと帰っていったフサギコは、少しの療養の後に戦う執事として見事復活した。
右耳の聴力と右目の視力は失ってしまったが、右腕はだいぶ動くようになっているらしい。
以前と変わらず、ツンと屋敷を護るために働いている。

今回ゲストとして呼ばれたツンは、結局あの戦いの詳細を知らされてはいない。
フサギコの付き添いという名目でこの旅行を楽しんでいる。

そんな彼女に、最近アタックしているのはドクオだ。
戦いを通じて多少の度胸はついたらしい。
とはいえ、皆が想像するような行動は一切とっていない。
根がヘタレな彼はツンに引っ張りまわされながらも、しかし確実にその親交を深めつつある。



252: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:20:42.02 ID:QKJP9sTH0
  
( ・∀・)「どうかね、初めて見るオーロラの感想は?」

爪゚ -゚)「よく解らないが……これが綺麗、というモノか」

モララーの側を離れず護衛しているのはジェイル。

彼女はモララーに回収された後、一ヶ月掛かりで完璧に修復される。
思考回路を少々イジっているらしく、今はモララーの専属ボディガードとして役目を果たしていた。

元々モララーが強いので、まさに鬼に金棒状態である。
というか社員でさえ近付けないらしく、FC社での最優先問題として秘密裏に会議が進んでいるとか。



262: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:22:29.45 ID:QKJP9sTH0
  
( ^ω^)「おー、寒いけど慣れたらそうでもないお」

川 ゚ -゚)「うむ、心頭滅却すれば云々だな。
     しかし本当に綺麗だ……」

そしてブーンとクー。
二人で並んで夜空に舞うオーロラを見上げる。

ブーンはあの後、ドクオと共に普通の学生生活に戻った。
ただ少々、刺激の無い学校という空間に飽き飽きしているという感情が見え隠れはしているが
元気に高校生活を楽しんでいる。

隣にはクー。
今現在、彼女はブーンの家に世話になっていた。
が、タダで居候をするのは納得出来ないようで
社会勉強と称して毎日のようにアルバイトに励んでいる。



269: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:24:21.36 ID:QKJP9sTH0
  
そして――

从 ゚∀从「…………」

クーの手の先には、車椅子に腰掛けているハインリッヒ。

あの煙と、溶解するような音の後に残されたのが彼女――どうやら意識は女性らしい――だった。

原理や理由は、はっきりと解ってはいない。
ただ、それを見た兄者やモララーは

クーの血液に含まれていたというワクチンは
ハインリッヒの『強さ』を司っていた細胞のみを死滅させただけなのかもしれない。

と口を揃えて推測していた。
つまり、もう身体硬化も腕を伸ばしたりも出来ない、普通の人間になったわけだ。

もしかしたら、とブーンは言う。

クルト博士はこれを見越して、完全に死滅するワクチンを使わなかったのかもしれない、と。
最強生物としての役割を終えたハインリッヒに
今度は人間としての人生を歩ませてやりたかったのかもしれない、と。

都合の良い考えだが、肯定も否定も出来る材料・証拠は今となっては皆無だ。
しかし、ならば良い方向で考えた方が楽だろう、と結論付けた。



280: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:26:31.26 ID:QKJP9sTH0
  
だが、あの戦いで負った怪我は確実にハインリッヒを蝕んでおり
更には言葉も発せない上、自分で動くことも出来ない状態であった。
そんな彼女に対して、クーは見捨てるという選択はしなかった。

自分が全責任を以って彼女の世話をする。

言葉は現実となる。
当初、なかなか上手くいかなかった意思疎通も、今ではほぼ完璧だ(クーとブーンに限るが)。
一人で、とまではいかないが、それなりに人間らしい生活も送れるようになった。

ハインリッヒに、巨塔での戦いやそれ以前の事の記憶は無いらしい。
だからこそ、クーとブーンは彼女を救おうと思った。

来世を待たずとも、彼女には人としての人生を歩むことを許されたのだから。

その彼女が、今オーロラを見て目を輝かせている。

( ^ω^)「…………」

川 ゚ー゚)「…………」

そんなハインリッヒの表情を見て、目を弓にする二人。
まるで自分の子供の成長を喜んでいる夫婦のようだ。



289: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:27:56.40 ID:QKJP9sTH0
  
互いの手はしっかりと繋がれている。

二度と離さない。
そんな意思の表れだというように。

ブーンがふと、揺れるオーロラを見上げながら呟いた。
それは、クルト博士の日記――最後のページに書かれていた言葉。

( ^ω^)「『理想は高く果てしなく――私達の足はいつもそれを追い求めるため
       ゆっくり前へと一歩を刻む』」

その、何度も反芻して憶えてしまった言葉をクーが紡ぐ。

川 ゚ -゚)「『どんなに険しい土地だろうと……何度も踏み締めれば道になる』、か」



293: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:29:12.21 ID:QKJP9sTH0
  
『かつて』は終わった。

そして来るのは『これから』だ。

『かつて』をしっかりと胸に刻み、『これから』という道をしっかりと歩く。

簡単なようで、意外と難しいこと。

だがしかし――


( ^ω^)「だからこそ、僕達は進むんだお」



303: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:30:54.76 ID:QKJP9sTH0
  
――戦おう、君のために―――――――――――

――――――護ろう、貴方のために――――――

――――謳おう――――――――――――――

――――――――――――己の正義を――――

――叫ぼう――――――――――――――――

―――――抵抗の証を拳に籠めて――――――




――『これから』への一歩を、皆で踏み締めるために




( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです  - 終 -



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