( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

3: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:32:30.86 ID:e5u5I1QA0
  
第四話 『赤い靴の女』

『牙猫』ギコとの戦闘から一日。
あの後ブーンは、怪我を負ったクーを自宅へ運び、休ませた。
その折に母親に生暖かい目で見られ続けたというのは言うまでもない。

J( 'ー`)し「ブーンったら……こんなに大人になって」

(;^ω^)「かーちゃん、最近のアンタのキャラが解んないお……」

クーは昼に目を覚ました。
思ったよりも軽傷だったようで、先ほどまでモリモリ食事を摂っていた。
外見に似合わずよく食べる人だ、とブーンは思う。

食事が終わると、彼女は話があると言い、ブーンの部屋に上がっていった。
着いて行くにあたって、母親に生暖かい目で(ry



4: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:35:04.43 ID:e5u5I1QA0
  
ブーンの部屋。
ゲーム機が放置されており、ベッド脇には週刊少年ジャンポウの山。
本棚には漫画よりも小説類の方が少し多く、意外と読書家のようだ。
その頂上には、幾つかのトロフィーと盾、そして賞状。
今までのブーンの努力の結果が飾られている。

その普通の少年の部屋とも言える空間に二人の男女。
クーはベッドに腰掛けており、ブーンは己の机の椅子に座っている。

( ^ω^)「話って何だお?」

川 ゚ -゚)「昨日の続きだ」

( ^ω^)「お、そういえばギコさんに邪魔されて途切れてたお。
      どこまで話したお?」

川 ゚ -゚)「……昨日と違って、随分と聞く気があるようだな」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「いや、昨日は仕方なく、といった様子で聞いていた君が
     今や自分から話を聞く姿勢をとっているが……何か昨日あったようだな?」

( ^ω^)「そんな大層なことじゃないお」



5: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:37:14.84 ID:e5u5I1QA0
  
本人は気付いていないが、実は大層なことだった。
あれほど命を賭した戦いに恐怖していた彼が、今やその世界に自ら足を踏み入れようとしている。
その心境の変化に、自分が気付いていない。

それは恐ろしいことだ。
戦いを享楽とする戦闘狂の領域に、知らずに踏み入る可能性があるからだ。

中途半端な力は己の身を滅ぼす。
今のブーンは、その滅ぼされるか生き残れるかの狭間を彷徨っている状態だった。

無論、本人は気付いていない。
そして、クーもその変化を気にしていない。
その結果がどのように転ぶか、それは時が経つまで解らなかった。

川 ゚ -゚)「さて、今回は敵組織のことでも話そうか」

( ^ω^)「そうしてほしいお。
      敵の正体が解らないと、戦い辛いお」

そうだな、とクーは言いつつ、用意されたクッキーを一口食べる。



6: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:39:57.73 ID:e5u5I1QA0
  
川 ゚ -゚)「14のウェポン、クルト博士の遺産とも言えるそれを悪用しようとしている組織」

( ^ω^)「…………」

川 ゚ -゚)「名は『VIP』。
     その由来は解らんが、クルト博士と関係がある者が作り出した組織らしい」

( ^ω^)「クルト博士の関係者……たとえば、子供とかかお?」

川 ゚ -゚)「彼に子供はいない――というか、結婚すらしていない」

( ^ω^)「じゃあ、誰が……」

川 ゚ -゚)「それは解らないし、解る必要はあまり無いだろう。
     が、その目的は知る必要がある」

( ^ω^)「クーは、それを知らないのかお?」

川 ゚ -゚)「14のウェポンを集めようとしていること以外は、な。
     とりあえず危険だと判断している」

( ^ω^)「そうかお……」

ブーンも自分の手元にあるクッキーに手を伸ばす。



8: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:42:32.25 ID:e5u5I1QA0
  
( ^ω^)「ところで……」

川 ゚ -゚)「ん?」

( ^ω^)「何で、あのジョルジュはクーを追跡出来たんだお?
      何で、学校に隠れていたクーを見つけることが出来たんだお?」

川 ゚ -゚)「答えは簡単だ。
     隣合うウェポンの『共鳴反応』によって場所が割れたのだろう」

妙な単語に、ブーンは戸惑う。

( ^ω^)「おっおっお?」

川 ゚ -゚)「14のウェポンには『共鳴反応』という特殊な事象が存在する。
     たとえば、君が今持っている8th−Wは
     7th−Wと9th−Wが付近にいると『共鳴反応』を起こすんだ。
     無論、指輪の意思によって起こさなかったりもするが」

( ^ω^)「じゃあ、あの時の保健室での甲高い音が……」

川 ゚ -゚)「そう、8th−Wとジョルジュの9th−Wが共鳴反応を起こした結果だ」

(;^ω^)「そ、それじゃあ……何処に隠れても見付かってしまうお!」



9: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:45:33.76 ID:e5u5I1QA0
  
川 ゚ -゚)「確かにそうだ。
     だが、逆を言えばそれは捜索に使える」

( ^ω^)「捜索、かお?」

川 ゚ -゚)「9th−Wは既にジョルジュが持っているから難しいとして……。
     7th−Wを手に入れることが出来れば、6th−Wの所在も探せるということだ」

( ^ω^)「おー、なるほどー……芋づる式ってヤツだお」

川 ゚ -゚)「昨日の『牙猫』も、おそらく1st−Wを使ってウェポンを探していくつもりだろう。
     上手くいけば、1st−Wから8th−Wまでがこちらの手に入るかもしれん」

( ^ω^)「それは良いことだお!」

川 ゚ -゚)「だが問題が残る」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「9th−Wをジョルジュが押さえていることにより
     10th−W以降を手に入れられる確率が、我々はVIPよりも低いんだ」

(;^ω^)「確かにそうだお……どうすればいいんだお?」



10: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:48:02.07 ID:e5u5I1QA0
  
川 ゚ -゚)「まぁ、奪うしかないだろうな」

(;^ω^)「奪う、かお……。
      でも奪っても指輪は使えないんじゃ?」

川 ゚ -゚)「契約を切ればいい」

(;^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「術者が指輪での戦闘時に死亡、または気絶した場合
      その間に指輪を抜けば、その術者と指輪の契約がリセットされる。
      言うなれば、指輪が主を見放すということだ」

( ^ω^)「ほほぅ」

川 ゚ -゚)「奪った指輪に認められれば、それを使うことも可能だ」

( ^ω^)「なんと!
      なんかロックマンみたいだお!」

川 ゚ -゚)「ロック……?
     何やらよく解らんが、理解出来たなら良い」



11: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:50:27.59 ID:e5u5I1QA0
  
( ^ω^)「ロックマンっていうのは青い正義のロボットのことで――」

川 ゚ -゚)「つまり、今の私達に出来ることは2つ。
     7th−Wを探すか、ジョルジュを倒すか……そのどちらかだ」

(;^ω^)「華麗にスルーされたお……」

彼女は更にスルー。
うな垂れるブーンに向かって

川 ゚ -゚)「どちらを、選択する?」

問いかける。
本来なら、彼よりも詳しい彼女が方針を決めるべきなのだが
パートナーの意見も聞いておいた方が良いと判断したのだろう。

( ^ω^)「うーん……今の僕達でジョルジュを倒せるかお?」

川 ゚ -゚)「正直……難しい。
     だが、それを放置すれば、VIP側のウェポンが増える可能性がある」

(;^ω^)「そうだおね……」

ブーンは少し考える素振りをする。



14: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:54:23.46 ID:e5u5I1QA0
  
数秒、黙考した後、ふと顔を上げる。
結論は――

( ^ω^)「ホントは逃げ出したいお……。
      でも、そうすることは許されないんだお……」

だから

( ^ω^)「どっちもやるんだお!」

川 ゚ー゚)「いいだろう。
     私もちょうど同じ意見だった」

方針は決まった。
あとは行動だ。
クーが立ち上がり、ブーンに向かって手を差し出す。

川 ゚ -゚)「行こう、内藤」

( ^ω^)「解ったお、クー!」

がっちりとその手を掴む。

こうなってしまったからには仕方無い。
とことんまでやってやろう、とブーンは思うのだった。



15: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:56:09.20 ID:e5u5I1QA0
  
「〜♪」

女性の歌声。
もの悲しそうな歌だが、声の主の声は明るい。

響く場所はビルの屋上だ。
もはや使われることは無くなった廃墟ともいえる屋上に、歌声が鳴る。

(*゚∀゚)「〜♪」

女性がいた。
屋上の端、その淵に危なっかしく立っている。
彼女は都市ニューソクを見渡すように目を細め、歌っていた。
黒髪のショートカットに、黒い女性用のスーツ。
しかしその足にはスポーツシューズという、妙な格好だ。
その左手の人差し指には、赤色に光る指輪。

ふと、その指輪が震え出す。
キィィンという甲高く、しかし小さな音を発するそれを見て、女性は微笑んだ。

(*゚∀゚)「見ぃつけた……♪」

途端、女性が飛んだ。
10階以上はありそうな高いビルの屋上から、身を投げたのだ。
後には風が残るのみ。
静寂が戻る。



16: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:59:08.27 ID:e5u5I1QA0
  
('A`)「よいしょっと……」

ドクオはその場に、重いマットのようなものを置く。

ドクオは陸上部所属だ。
部長ではないものの、その実力はトップクラス。
事実、部活の皆はドクオに期待を寄せている。
彼はそれが内心とても嬉しかった。

昔から、キモい・怖い・変人の三拍子で嫌われ続けたドクオ。
高校に入ってからも、それは変わることはないと思っていた。

しかし、それは間違いだった。
ブーン、ツンという親友が出来、しかも今部活では期待のエースだ。
何故か未だにモテないが。

自分の足がそんなに速いとは、入学当時はまったく思ってもみなかった。
だが足に自信があるブーン(自称)と競争してみたところ、実は自分の速さは相当なものだと解った。

人生の転機とは突然に訪れる。
ドクオは当時、実感したものだ。



19: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:01:53.10 ID:e5u5I1QA0
  
今、彼は消えかかる夕日が照らすグラウンドの隅、体育倉庫で部活の後片付けをしている。
いくら期待のエースだからとて、そういう雑用を他の皆だけに任せるわけにはいかない。
そういう慢心は、ドクオが一番嫌うものだった。
しかも几帳面な部分もあるので無駄に綺麗に作業をする。

気付けば周囲には誰もおらず、皆帰ってしまったようだ。

('A`)「ふぅ……こんくらいで充分だろ」

常人から見れば完璧すぎるほどの片付け具合。
光すら輝いて見えるほどの綺麗さに、彼はようやく満足した。
額の汗を拭う。

('A`)「もうこんな時間か……早く帰ってゲームでもするかな」

体育倉庫を出る。
夕日は既に沈みかけており、辺りは闇に閉ざされようとしていた。

グラウンドの中央を歩き、着替えるために部室へ向かう。



20: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:04:24.14 ID:e5u5I1QA0
  
途中、異変に気付いた。

('A`)「?」

指輪が、震えている。
昨日と同じだ。
左手の中指にはめた茶色の指輪が振動を繰り返している。

('A`)「なんか昨日より激しいな……ってか、なんだ、この超常現象」

昨日はしばらくしたら振動は失せたので、今日もそんな感じだろうと思い
さほど気にすることなく部室へ向かった。
部室の扉に手を掛けた時だ。

「ねぇ」

背後から声。
しかも女性だ。
ドクオは一瞬、期待に胸を膨らませる。

('A`)(まさか……愛の告白……ッ!!)

心の中でガッツポーズ。
こういう無駄に早い勘違いが彼のモテない所以だとツッコむ人間は、残念ながら周囲にはいない。
ニヤけを押さえきれない表情で、背後に振り向く。



22: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:06:37.57 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)ノ「やっ」

片手を上げ、挨拶する女性がそこにいた。
年齢は20代か。
女性用のスーツを着込んだ、割と美人な女性。

('A`)(見覚えない顔だな……ってか、スーツってことは生徒じゃねぇよな?
    どっかの先公か?)

頭に疑問符が浮かぶ。
そんな彼に、女性は口を開いた。

(*゚∀゚)「ねぇねぇ、これ見てよ」

女が後ろに隠していた右手を上げる。

('A`)「?」

その手には、光があった。
柄があり、短いが光る刀身があり、刃があり――
どう見てもナイフだ。

(;'A`)「えっと……あの……?」

身の危険をジワジワと感じながら、正面の女性に問う。



23: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:10:39.34 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「これってねぇ、よく切れるんだよ」

女性は嬉々とした様子で語り始める。

(*゚∀゚)「皮膚をね、スパって切ると、血がプシュって出てくるんだよ」

自分の手首を切るような動作。
その異常ともいえる動作と言動に、ドクオは困惑した。

(;'A`)「あ、あの……それが……?」

問いかけに対し、女性は歯を見せ笑った。

(*゚∀゚)「ごーとぅーへる♪」



25: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:12:49.02 ID:e5u5I1QA0
  
キィンっと、甲高い音がブーンの耳に響いた。

(;^ω^)「う、うわ!? なななんだお!?」

今、ブーン達は夕方の公園にいた。
8th−Wの発動方法や使い方の訓練をしていたのだ。

川 ゚ -゚)「これは……!」

クーがブーンの腕を取り、指輪を見つめる。
予想外に冷ややかできめ細かい感触に、ブーンは顔を赤くした。
しかしそれどころではない。

(;^ω^)「いきなり鳴り響き始めたお……これはどういうことだお?」

川 ゚ -゚)「7th−Wか、9th−Wの持ち主が危機に陥っているんだと思う。
     隣合うウェポン、つまりブーンの8th−Wに助けを求めているんだ。
     ただ、ジョルジュとは考えにくい……」

(;^ω^)「じゃ、じゃあ……7th−Wの人が……?」

川 ゚ -゚)「敵か味方か解らんが、行ってみる価値はあるな」



26: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:15:01.42 ID:e5u5I1QA0
  
(;^ω^)「わ、解ったお……」

拳を握り、深く念じる。
頭の中に情報が流れ込んできた。

( - ω-)(これは……走って……?
       そして、砂地……いや、グラウンド……)

気付き、顔を上げる。

(;^ω^)「学校だお!」

川 ゚ -゚)「よし、急ぐぞ!」

二人は駆け出した。
この公園から学校まで10分程度。
果たして、間に合うか。



28: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:17:19.17 ID:e5u5I1QA0
  
学校の中庭。
ドクオは校門目指して走っていた。
学校には既に誰も残っておらず、助けは得られそうにない。
足は恐怖でもつれ、頻繁に倒れそうになる。
背後には、その恐怖の元凶がいた。

(*゚∀゚)「あははは! ほらほらぁ、もっと早く逃げなくちゃ!」

(;'A`)「はぁ、はぁ……!」

あのナイフの女が、背後から迫ってくる。

いきなり指輪を赤く光らせたと思ったら、女性の足に赤いロングブーツが装着されていた。
一斉に背筋を這い登る殺意。
ドクオは一目散に逃げ出した。
しかし――

ドクオは足に人並み以上の自信があった。
が、あの女は桁外れだ。
何しろ、走ってさえいない。
歩くような動作で、ドクオとほぼ同じ速度で移動している。

(;'A`)「な、何だよ!? 何なんだよ!?」

走りながら叫ぶ。



30: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:19:22.25 ID:e5u5I1QA0
  
返事は横から来た。

(*゚∀゚)「君の死神って言うと格好いい?
     とりあえず、死んでもらうよー」

女がいつの間にか真横を走って――否、歩いている。
その手にはナイフだ。
来る。

(;'A`)「う、うわぁ……!?」

足がもつれ、遂に転んでしまう。
が、それが幸運だった。
ドクオの頭があった空間を、銀光放つナイフが突き抜ける。

(*゚∀゚)「ありゃりゃ、ナイス幸運!」

ビッと親指を上げながら、ブレーキをかけるかのようにドクオの前方で立ち止まる女。

(;'A`)
「い、い、一体、俺に何の恨みがあるんだ!?」

(*゚∀゚)「恨みなんてあるわけないっしょー。
     君がウェポン持ってるのが悪いわけで、それは仕方ないことなんだなー」

愉快そうで、しかし意味不明な回答。



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