( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

6: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:20:11.31 ID:nxWBhSLN0
  
第二十一話 『戦う者、護る者』

白い空間。
冷えた空気が充満する中、二人の人影が対峙している。
両者の間には十メートルほどの距離。

沈黙が流れるが、しかし口を割ったのは男の方だった。

( ^ω^)「クー……」

川 ゚ -゚)「…………」

無言の返答。
とりあえず会話は拒否されているわけではないらしいので、ブーンは言葉を紡ぐ。

( ^ω^)「君は、何故……ここに残ったんだお?」

当初から思っていた事を問いかける。
しかし彼女は

川 ゚ -゚)「君は、何故……ここへ来たんだ?」

と、問い返す。

( ^ω^)「僕は、君と会いに来たんだお」

川 ゚ -゚)「何故?」



9: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:22:26.13 ID:nxWBhSLN0
  
(;^ω^)「何故って……」

川 ゚ -゚)「そこまで、私に固執する理由がないように思えるが」

何だ?

今、目の前にいる彼女が冷たく見える。
むしろ敵意を感じるほどだ。

しかしブーンはそれに怯むことなく、自分の心の内を真摯に語る。

( ^ω^)「僕は……僕は君を連れて帰りたいんだお。
       一緒に楽しくやっていきたいんだお」

川 ゚ -゚)「私がそれを望んでいないのに、か?」

やはりだ。
確実に彼女は自分に向けて敵意を放っている。

何故?



14: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:25:31.33 ID:nxWBhSLN0
  
疑問を問おうとした瞬間。

川 ゚ -゚)「君は……いや、君達は私以外の目的があるのだろう?」

( ^ω^)「『完成品』の破壊……」

川 ゚ -゚)「やはり、そうか」

彼女は自然な動きで右腕を動かす。
その先には刀の柄。

(;^ω^)「ク、クー? 一体どうしたんだお?
      何か様子が――」

川 ゚ -゚)「悪いが――」

彼女は突き放つように宣言した。

川 ゚ -゚)「君は『敵』だ」

(;^ω^)「……!?」

突如、クーの身体から殺気が溢れ出るのを感じる。
今までのクーからは感じたこともない強烈な殺気。



17: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:29:14.09 ID:nxWBhSLN0
  
(;^ω^)「な、何だお!? どういうことだお!?」

川 ゚ -゚)「――さよならだ」

途端、地を蹴る。
フワリとした、あまりにも自然な跳躍にブーンは一瞬の隙を許してしまった。
何より信じられなかった。
彼女が自分に刃を向けるなんて――

(;^ω^)「ッ!」

右肩に一閃。
少量の血が流れ出るが、しかし戦闘挙動に問題は無い。
背後に跳んだクーを振り向きながら目で追う。

川 ゚ -゚)「……これで、解ったか?」

血が付着した刃を振りながら、淡々と喋る彼女。
もはやその目はブーンを見ていない。
いや、ブーンという存在を認識していないかのような――

(;^ω^)「ど、どういうことだお!? 何で君が僕を――」

川 ゚ -゚)「解らないのか」

(;^ω^)「当たり前だお!」

川 ゚ -゚)「ならば、その身体に解らせてやろう」



18: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:32:02.83 ID:nxWBhSLN0
  
来る。
しかし、どうすれば。

まさか戦えというのか。
あの彼女と?
馬鹿な。
自分の目的は何だ? 彼女を連れ戻すことだろう?
なのに戦うなんて――

(;^ω^)「くっ!」

横薙ぎに迫る刃を何とか回避。
彼女はどう見ても本気だ。

やるしか――ないのか?

川 ゚ -゚)「ッ!」

刃が今度は左下方から迫る。
駄目だ、回避出来ない。

(;^ω^)「――クレティウス!!」

瞬間、発光とグローブが現われる。

刃が振り上げられるのと、両手で防御するのは同時だ。
手のひらに刃が触れるのを感じるが、しかし痛みは無い。



21: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:34:44.28 ID:nxWBhSLN0
  
そのまま後退。
彼女と一旦距離をとる。

(;^ω^)「き、君は――」

川 ゚ -゚)「まだ言うか……」

(;^ω^)「あ、当たり前だお! いきなり刀向ける方がどうかしてるお!」

川 ゚ -゚)「君は『完成品』を壊す。 私は壊してほしくない。
     たったそれだけの関係だろう?」

(;^ω^)「そんな……!?」

川 ゚ -゚)「故に私と君は敵同士だ」

(;^ω^)「む、無茶苦茶だお!」

川 ゚ -゚)「どちらが、だ……さっさと指輪を渡せばそれで済んだはずだろう。
     挙句の果てに攻め込むような真似をして……」

刀を構えながら、クーは続ける。

川 ゚ -゚)「『敵』は排除する」



23: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:36:55.58 ID:nxWBhSLN0
  
途端、クーが走りこんできた。
敢えて反撃は選択せず、防御に徹するという判断をとる。

(;^ω^)「くっ!」

鋭い銀閃、刺突が繰り出されるが、それを何とか往なしつつ防御していく。

川 ゚ -゚)「私はな――」

剣撃は止むことなく、しかし声は連なって――

川 ゚ -゚)「私は、思い出したんだ」

(;^ω^)「何をだお!?」

川 ゚ -゚)「失敗作と言われる前の自分を――」

声と共に発せられた刺突がブーンの脇腹を掠った

(;^ω^)「うあっ!」

焼け付くような痛みが広がるが、しかしよろけている場合ではない。
尚も繰り出される斬撃。
戸惑いながらも、ブーンはそれをかわしていく。



24: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:39:51.46 ID:nxWBhSLN0
  
距離をとり、懐から日記帳を取り出す。

(;^ω^)「クー! 君はこれを読むべきなんだお!」

川 ゚ -゚)「……何だ、それは」

( ^ω^)「クルト博士が書いた日記だお! これに彼の真意が記されてるんだお!
      そして君の――」

川 ゚ -゚)「……くだらない」

(;^ω^)「え?」

川 ゚ -゚)「そんなもので私の思い出を汚すつもりか」

(;^ω^)「ちょ、そんなつもりじゃ――」

声が終わる前に、彼女が刀を構えたまま駆け出す。



27: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:42:01.16 ID:nxWBhSLN0
  
川 ゚ -゚)「君は――」

鋭い斬撃。

川 ゚ -゚)「私の――」

空気を穿つような刺突。

川 ゚ -゚)「この右手に残る暖かみを否定すると言うのか!?」

(;^ω^)「!?」

川 ゚ -゚)「そんな資格が君にあるとでも言うのか!」

(;^ω^)「うぐっ――!」

強烈な一撃。
両腕で刃を防御しつつ、やはり距離をとるブーン。
未だ彼の心に戦いの火は灯ってはいない。

(;^ω^)「ど、どうして思い出に拘るんだお!?
      この日記にだってクルト博士の――」

川 ゚ -゚)「黙れッ! 私はこの思い出だけで充分だ!」

何だ?
何が彼女をあれ程までに依存させる?
思い出と日記に何か違いでもあるというのか?



28: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:44:58.31 ID:nxWBhSLN0
  
そしてあの彼女の言葉。
見たことが無い彼女の感情。
己の感情を全て剥き出しにしたような、獣のような――

(;^ω^)「…………」

いくら考えても解らない。
しかし、きっとこの日記を見せれば――

( ^ω^)「やるっきゃ……ないお」

決意。
とりあえず彼女を黙らせるのが先決らしい。
殺したり怪我をさせる必要は無い。
ただ戦闘意識を剥奪出来れば、それで良いはずだ。

覚悟を決め、構える。
こう言っては難だがクーの戦闘能力は高くない。
クレティウスの身体強化があれば、限界突破を使わずとも抑えることが可能なはずだ。

( ^ω^)(とりあえず、武器を失くせば――)

川 ゚ -゚)「ッ!」

銀閃が襲い掛かる。



30: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:47:49.99 ID:nxWBhSLN0
  
( ^ω^)「はっ!!」

気合の声と共に繰り出されるは、身体強化を受けた右拳だ。
それが向かってくる刃に――

甲高い金属音。

(;^ω^)「くっ……」

砕けない。
その銀の光を放つ刀はウェポンの攻撃を受けて尚、そこに形を保ち続けていた。

川 ゚ -゚)「忘れたか、内藤」

刀をぶつけた姿勢のまま、クーが口を開く。

川 ゚ -゚)「ジョルジュのユストーン、ギコのグラニード――それらを防いだのはこの刀だ」

(;^ω^)「やっぱり――」

川 ゚ -゚)「対ウェポン用の処理が施されているんだよ……それも作られた当初から」

(;^ω^)「……!」

日記にあった通りだ。
アレはクルト博士の捻じ曲がった愛情が作り出した産物。
彼はウェポン開発時から、既に対ウェポン用処理技術も同時に作っていたのだ。
その試作型――特に力の強いタイプが、あの刀を守護しているはず。



31: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:51:40.89 ID:nxWBhSLN0
  
それを砕くには――

( ^ω^)「こうだお!!」

突き出していた右腕を引き、その反動で左腕を叩き込む。
当たれば、逆の動作だ。
その動作の連鎖を『連撃』という。

右、左、右、左、右、左――

刀に、高速でぶつけていく。
それによって起こる事象は『衝撃の積み重ね』だ。
抵抗力を衝撃力で打ち消し、更に衝撃力を重ねる。
いくら抵抗力が幾重にも重なっていようとも、それに対応する数の衝撃力をぶつければ――

( ^ω^)「砕くことが出来るんだお!!」

最後の一撃を叩き込んだ。

川 ゚ -゚)「!」

文字通り、破砕。
銀色の破片を撒き散らしながら、刀はその形を失った。
余った衝撃を腕に受けながらクーは数歩退く。



34: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:54:06.11 ID:nxWBhSLN0
  
川 ゚ -゚)「…………」

( ^ω^)「話を聞いてほしいお」

川 ゚ -゚)「君は――」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「愚かだ」

瞬間。
クーの姿が掻き消えた。

(;^ω^)「えぁ――!?」

声を発したと同時。
背中からの強烈な一撃がブーンを襲った。

(;^ω^)「ッ!?」

軽く吹き飛びながらも振り返る。
自分が元いた位置の背後部分に、拳を突き出したクーが居た。
その両拳には――

(;^ω^)「グローブ……!」

いや、ただのグローブではない。
クリアカラーの、透明色のグローブだ。



36: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 20:57:58.94 ID:nxWBhSLN0
  
白い床に着地し、しかし流せない慣性に身を任せながら後転する。
立ち上がりつつ彼女を見据えながら

(;^ω^)「まさかそれが――!」

川 ゚ -゚)「そう……これこそ14th−W『ハンレ』。
     どうやらその日記とやらには、何処に隠されていたか記されていないようだな」

最後のウェポンである14th−W。
日記によれば、クー専用に作られた強力なウェポンのはずだ。

川 ゚ -゚)「次だ」

言葉と同時に変化。
両拳に装着されていたグローブが消え、次の瞬間には――

(;^ω^)「グラニード……!」

クリアカラーの巨剣。
それがクーの右腕に握られている。
そう、14th−Wの能力とは――

川 ゚ -゚)「全てのウェポン能力を保有した万能型ウェポン。
     それが14th−W『ハンレ』だ。
     限界突破が無い代わりに、他の十三のウェポン能力が使用出来る」



40: ◆BYUt189CYA :2006/11/29(水) 21:00:06.49 ID:nxWBhSLN0
  
(;^ω^)「反則……と言いたいけど、それは絶対に言えないんだお」

川 ゚ -゚)「何故だ?」

( ^ω^)「この日記を読めば解るお」

川 ゚ -゚)「まだ私を惑わそうとするわけか……」

(;^ω^)「違うお!」

川 ゚ -゚)「戯言はもういい」

巨剣を地につけたまま、彼女は言葉を紡ぎ始める。

川 ゚ -゚)「もはや私達の間に言葉は要らないようだな。
     だから……最後に宣言しておくよ」

彼女は、言った。

川 ゚ -゚)「私は、この思い出を絶対に『護る』と……!」

対し

( ^ω^)「なら、僕も君に宣言するお」

彼も、言った。

( ^ω^)「僕は、真実に抗うために『戦う』と……!」



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