( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

12: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:19:52.63 ID:70z8ebax0
  
第二十四話 『夜空攻防戦 前編』

白い巨塔の屋上部。
そこでは一対九の激戦が繰り広げられている。

片方は、白いロングコートの人間だ。
白髪で長髪、そして真っ白な皮膚。
その目は爛々と赤く輝き、獲物を狩らんと鋭い視線を放っている。

対するは九人の戦士達。
各々の武器を構えて白い人間に向かっていくが、容易く弾かれていく。

白い人間――ハインリッヒの動きは異常だ。
関節を無視したかのような軌道で襲い掛かる腕。
その先から発せられる指という十本の細槍は、様々な空間を穿つ。
跳べば空まで舞い、走れば一瞬で距離を縮める強靭な脚力。
頑丈というレベルでは片付けられないほどの防御力。
そして人間の範疇を超えた反応速度と判断力。

戦況としては
素手である白い生物が、武器を持った九の人間を蹴散らすような状況。

当初のハインリッヒは、ただただ力に任せて攻撃してきていたのに対し
今現在はフェイントを織り交ぜたり、11th−W『ミシュガルド』の力を使ったりと
知能的な攻撃が見え隠れし始めている。

経験による進化だ。



16: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:23:45.00 ID:70z8ebax0
  
先頭で戦っていた二人の内の一人――ギコが忌々しそうに呟く。

( ,,゚Д゚)「ちっ……長引けば長引くほど強くなる、か」

( ・∀・)「厄介なことこの上ないね」

かつては敵同士だったこの二人。
しかし今は、互いが互いを支えあうように戦っている。
相手がどう動き、どこに走り、どうやって攻撃するか大体解っているのだ。
その即席コンビネーションは素人目に見ても完璧に近い。

彼らの傍らから援護をするのは

(´・ω・`)「腕二本に対して武器が九つ……これで隙がないってどういうこと?」

ミ,,"Д゚彡「正直言いますが、常識を当てはめたら負けかと」

ショボン、フサギコの二人だ。
ギコやモララーに比べて戦闘力が無い彼らは、二人の援護に集中していた。
リーチが長めな武器を持つので支障はない。
フサギコはウィレフェルの柄を状況によって伸縮させながら、ハインリッヒの動きを妨害する。
ショボンは――

(´・ω・`)「ほいっ」

声と共に、遠くにいるはずのハインリッヒの右足に衝撃。
何事も無かったかのように戦闘に戻る。



18: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:27:29.07 ID:70z8ebax0
  
ミ,,"Д゚彡「あ、あの……ショボンさんのウェポンの能力って何なんですか?
      さっきから手品じみた攻撃をなさってるようですが……」

(´・ω・`)「あれ、そういえば説明してなかったね」

悪びれた様子も無く淡々と攻撃しながら続ける。

(´・ω・`)「5th−W『ミストラン』の能力は『刺突の予約』。
      指定した座標に向かって、先に刺突を仕掛けることが出来るんだ」

ミ,,"Д゚彡「それってメチャクチャ便利じゃないですか……?」

(´・ω・`)「その分ルールがあるんだけどね。
      能力使った後、一定時間内に刺突した空間を突かなきゃいけないんだ。
      当然と言えば当然だけど」

ミ,,"Д゚彡「つまり『攻撃』と『命中』を入れ替える、と」

(´・ω・`)「うん、そんな感じ。
      一定時間内にルール守らなかったら返しが痛いけど、便利だよ」

言いつつ、攻撃を再開するショボン。
その行動をよく見てみれば、通常攻撃の中に絶妙なタイミングで
『刺突の予約』を繰り出しているのが解る。
そして、さり気なく予約回収も行っていた。



20: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:30:08.56 ID:70z8ebax0
  
よくよく考えると、彼のような元一般人がギコ達と同等に戦える方がおかしい。
そういえば、あの黒い兵士を突破するときも同じようなことをしていたような気がする。

ミ,,"Д゚彡(だから彼は刺突しか使わないんですか……)

半分納得、半分出し抜かれた気分でフサギコは戦闘を再開した。

近接攻撃を仕掛ける四人の背後。
そこでは遠距離攻撃で援護するドクオと兄者――

( ゚∀゚)「喰らえやぁぁぁ!」

そして、鎖を振り回すジョルジュ。

(;'A`)「ってか、アンタの武器って完全に中距離向けじゃないのか?
    ショボンやフサギコさんに混ざって攻撃してろよ……」

(;゚∀゚)「あの急降下攻撃くらってみろ……。
    鎖で絡めとるとかもうヤダヤダ! って言いたくなるくらいトラウマになるぞ」

臆病者が二人と

(;´_ゝ`)「あ、もうページがない……さっき貫かれたんだった」

真面目なのか阿呆なのか解らぬ男が一人。
この三人で構成される後方援護は――

('A`)「……こちら後方戦線、もう駄目っぽい」

gdgdだった。



25: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:33:54.42 ID:70z8ebax0
  
从 ゚∀从「ヒャヒヒヒ! オモシロイ!」

ハインリッヒが心底嬉しそうに言葉を発した。
それは片言に近い稚拙な発音だが

(;,,゚Д゚)「おい、とうとう喋り始めたぞ……!」

( ・∀・)「ふむ、知能がだいぶ育ってきているようだね」

从 ゚∀从「アー……」

ふと、ハインリッヒが空を見上げた。
三日月が不気味に浮かぶ、満天の星空。

( ,,゚Д゚)「何を見ている……?」

その目線の先には夜空を飛翔する影。
橙色の翼を羽ばたかせるしぃだ。

从 ゚∀从「オソラ……ハネ……」

( ・∀・)「ははは、日本語の勉強をしている時間は無いよ?」

言いながら鉄槌を振りかぶって接近するモララー。
踏み込み、その鉄の塊を腹部目掛けて――

( ・∀・)「!?」

振り抜く。
それはつまり、対象に当たらなかったということで――



27: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:36:19.06 ID:70z8ebax0
  
(;´・ω・`)「消えた? まさかミシュガルド……!?」

ミ,,"Д゚彡「上です!!」

フサギコの鋭い声に、全員が空を見る。

从 ゚∀从「オソラ! カゼ! キモチイイ!」

(;,,゚Д゚)「なっ――!?」

翼。
白い両翼がハインリッヒの背から生えている。
しかし羽は散らない。
翼だと思われたのは、翼の形をした肉の塊だ。

しかし飛翔したのは事実。

モララーの一撃をかわしたまま、その速度を保ちつつ上昇する。
その先にはしぃがいるはずだ。

(;,,゚Д゚)「しぃ!!」

彼女の名を叫びつつ、グラニードを構えるギコ。
それを押される動きがあった。

( ・∀・)「限界突破はやめたまえよ、ギコ君。
     一時の感情に囚われチャンスを失うのは愚者がすることだ」

(;,,゚Д゚)「だが……だが、あの化け物が!」



29: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:39:44.63 ID:70z8ebax0
  
二人の元に、翼を羽ばたかせる音が近付いてくる。
光翼を背に生やしたしぃだ。
彼女は地上ギリギリへ降下すると、ギコの元へ近付いていく。

(*゚ー゚)「ギコ君」

( ,,゚Д゚)「しぃ、お前は地上にいろ!」

(*゚ー゚)「ううん、駄目だよ。 あのまま放っておけば、私達は上空からの攻撃にさらされちゃう。
    だから誰かが、あの翼を奪わなきゃいけない。
    『空はアナタのモノではない』と教えなきゃいけないの」

( ,,゚Д゚)「だが、お前がしなくても――」

(*゚ー゚)「ううん、それも駄目。
    これは私にしか出来なくて、そして逃げるわけにもいかないから」

( ,,゚Д゚)「しぃ……」

(*゚ー゚)「……お願いがあるんだけど、いいかな?
    それを叶えてくれたら、絶対に私は負けないよ」

( ,,゚Д゚)「願い……それは……?」

(*゚ー゚)「私の名前を呼んで」

(;,,゚Д゚)「ず、随分と変な願いだな……」

(*゚ー゚)「それは自分でも解ってるよ。 解ってはいるけど……お願いさせて、ギコ君」



33: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:42:53.48 ID:70z8ebax0
  
少しの沈黙。
顔を赤くして悩んだギコは、途切れ途切れにその名を口にした。

(*,,゚Д゚)「……し、ぃ」

(*゚ー゚)「うん」

( ,,゚Д゚)「……しぃ」

(*゚ー゚)「うん」

( ,,゚Д゚)「しぃ……!」

(*゚ー゚)「うん!」

( ,,゚Д゚)「……これで、いいか?」

(*゚ー゚)「大丈夫……二回も余計に呼んでもらったから」

羽ばたき。
身を再び上空へと送り始める。

(*゚ー゚)「――いってくるね」

飛翔。
しぃの姿がみるみるうちに夜空へと同化していく。
高速――その速度を以って、白い化け物と相対するために。

彼女の戦いが始まる。



37: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:44:49.40 ID:70z8ebax0
  
巨大床式エレベーター内。

( ^ω^)「おっ、あと少しで屋上だお」

川 ゚ -゚)「そうだな……」

二人で見上げる。
重々しい音と共に天井が左右に割れていくのが見えた。

あの先に果たして何があるのか――

川 ゚ -゚)「……行こう、内藤」

( ^ω^)「把握!」

自然と二人は手を繋ぐ。
まるで意思を連結させるかのように。

互いの指にはまった指輪を絡ませるかのように、その手は硬く握られていた。



42: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:46:51.42 ID:70z8ebax0
  
風。
闇。
そして、微かな光。

それが場を支配していた。

戦場の名は夜空。

風が舞い、重力が支配し、そして『一部の者』が自由を得られる場だ。

『一部の者』に入る条件は一つ。

翼を持つこと。

(*゚ー゚)「…………」

彼女は無言で飛翔していた。
風をその身に受け、背に生やした橙色の光翼を羽ばたかせながら。
その視線の先には白の色。

肉の翼――偽物の翼を得た、白き化け物。

アレは空を得て良い者ではない。
墜とせ。
奴に空を自由にさせるな。

背中と同化した翼の意思が彼女の頭に響く。
だから彼女は答えた。

(*゚ー゚)「解ってる……空は自由だけど、決して勝手にして良いわけがない」



49: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:49:02.12 ID:70z8ebax0
  
轟、という音が耳を刺激する。
風の中を切り裂くように飛翔。
速度は高速だ。

从 ゚∀从「――!」

ハインリッヒがこちらに気付いた。

だが、遅い。

意思と同時、鉄鋼の骨格が展開しつつ橙色に輝く光の翼が開いていく。

(*゚ー゚)「ッ!」

すれ違い様に、羽片を大量に叩き込んだ。
連続した打撃音に似た音が背後から響くが、すぐに遠のいて聞こえなくなる。



51: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:51:41.06 ID:70z8ebax0
  
(*゚ー゚)「流石に今のでは――」

振り返る。
数百メートル先の空で濛濛と煙が満ちているが

从 ゚∀从「ヒャヒヒヒヒヒ!」

突き破りながら現われるのはほぼ無傷のハインリッヒ。

(*゚ー゚)「やっぱり無理よね……」

それを確認したしぃは、ハインリッヒから逃れるような軌道で飛翔を始めた。

追うハインリッヒ。
逃げるしぃ。

高速の攻防が始まった。



57: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:53:26.14 ID:70z8ebax0
  
( ^ω^)「皆、大丈夫かお!? 僕達が加勢するお!」

エレベーターが屋上へ着いた途端発した言葉はそれだ。
しかし彼の声は、隣にいるクー以外の耳に届くことはなかった。

(;^ω^)「あ、あれ? 妙に静かなのは何でだお?」

川 ゚ -゚)「何やらよく解らんが、あそこに集まっているぞ」

クーの細く綺麗な指が指す先には、八人の人影が集まっている。
それも巨塔の淵部分だ。
ブーン達に背を向けるように、つまり塔の外側を向いて座っていたり立っていたりしている。

( ^ω^)「何か、随分と余裕っぽいお」

川 ゚ -゚)「まさか倒したのか……?」

疑問を憶えつつ、その人影の方向へ歩いていく。

( ^ω^)「おいすー」

('A`)「おぉ、ブーン! もう歩いたりして平気なのか?」

( ^ω^)「元気百倍だお!」

(´・ω・`)「彼女が隣にいるから、かな?」

(*^ω^)「おっおっ」

川 ゚ -゚)「?」



62: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:55:07.53 ID:70z8ebax0
  
( ・∀・)「さて、再会の挨拶はそこまでにしよう。
     内藤君、クー君……君達に現状を説明する」

やけに重々しく口を開いたモララー。
その雰囲気を読み取ったのかブーンは笑顔を止め、クーは真っ直ぐとモララーの目を見た。

先ほどまで戦って得た情報や事象を伝えていく。

( ・∀・)「結論から言えば、未だ『ハインリッヒ』は存命だ」

川 ゚ -゚)「それにしては姿が見えないようだが」

( ・∀・)「ここにはいないからね」

( ^ω^)「ここ、には? じゃあ何処にいるんだお?」

( ・∀・)「あの方角の空を見たまえ」

モララーが身体をその場から退けながら、夜空のある方向を指差した。

( ^ω^)「お?」

屋上の淵に近付きながら見る。



70: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:56:57.75 ID:70z8ebax0
  
月下。
見えるのは色の移動。
黒い背景の上を、橙色と白色が動いている。
一見すれば夜空の星が勝手に動き出したような光景。

川 ゚ -゚)「あれは――」

気付く。

(;^ω^)「しぃさん、かお……? しかも戦ってる!?」

ミ,,"Д゚彡「空を飛び始めた敵の飛行手段を奪うために、彼女一人で。
      今さっき、モララーさんが地上にいる兵隊達に援護を要請してましたが……」

(;'A`)「こっちからも一応撃ってるけど、速すぎて当たらねぇ」

ドクオが、ガロンを伏せた状態で構えたまま言う。

(;^ω^)「ギ、ギコさん……」

見ればギコは一人、夜空で展開される戦闘を鋭い目つきで睨んでいた。
己の愛する人が危機だというのに、何も出来ない自分のことを許せないのだろうか。

(´・ω・`)「今、彼に話しかけたら殴られるよ。
      それより何とかハインリッヒの翼を奪う手段を考えなきゃ……」



76: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 21:59:07.73 ID:70z8ebax0
  
その言葉に、それまで黙っていたクーが口を開いた。

川 ゚ -゚)「私で良ければ行こうか」

ミ,,"Д゚彡「え?」

( ^ω^)「あ、そうだお!
      クーの14th−W『ハンレ』は全てのウェポンの能力を保有してるんだお!
      だからしぃさんの翼だって使えるはずだお!」

( ・∀・)「何だねそのハッピーな反則ウェポンは……。
     まぁいい、行けると言うのならば行動で示してもらおうか」

川 ゚ -゚)「お前が内藤の言っていた変人か……見て驚け」

( ・∀・)「内藤君、後で話がある。 楽しみにしていたまえ」

(;^ω^)「……ナンテコッタイ」

クーが指輪を掲げる。
まず光と共に現われたのはクリアカラーの刀だ。
そして二度目の変化。
強烈な光の後に現われたのは――

( ^ω^)「おぉ……」

クリアカラーの翼を背負ったクーだ。
元々スリムな身体に、美人といえる顔を持つ彼女が翼を持った光景は
黒いロングコートと相成り墜天使を想像させる。



81: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 22:02:25.84 ID:70z8ebax0
  
川 ゚ -゚)「では、行ってくる」

鈴を打ち鳴らすような美しい音と共に、彼女の身が浮き始め

川 ゚ -゚)「ッ!」

飛翔。
羽ばたき一つで長距離を一瞬の内に無にする。
速度は、しぃとまではいかないが高速だ。

( ,,゚Д゚)「……頼むぞ」

ギコが小さく呟く。
それを耳に入れたのは、モララーだけだった。

( ・∀・)(やれやれ……素直に言えば良いものを)

(;^ω^)「おっ、そういえば僕もすることが無くなったお……」

(´・ω・`)「とりあえず、この時間は怪我の治療と体力、ウェポンの回復にあてよう。
      きっと彼女達はハインリッヒをここまで連れ戻してくれるはずだよ」

( ゚∀゚)「あ〜腹減ったなぁ、誰か食い物持ってねぇか?」

ユストーンを指輪に戻しながらのん気に発言したジョルジュ。
その彼をぶん殴ろうとして暴れるギコを取り押さえるのは、その直後であった。



89: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 22:04:38.46 ID:70z8ebax0
  
下方の戦場。
いや、もはや戦場ではない。
敵がいない場所を、戦いが起こっていない場所を戦場とは呼ばない。
そんな場所で、モララーの通信を受けた兵士達がざわめいていた。

「おー、あれか……でも、どうやって援護しろってんだ?」

「とりあえず撃ちまくるとか?」

「しぃさんに当たったらどうすんだよ、ボケ」

「おい、馬鹿部下共! ヘリとか戦闘機とか考えは色々あんだろうよ!
 さっさと準備しろ!」

「じゃ、とりあえず俺は応援係で」

「あー、じゃあ俺は祈る係」

「てめぇら死ね!」

「おわぁぁぁ、それ実弾! 実弾ッスよ! アッー!!」



93: ◆BYUt189CYA :2006/12/02(土) 22:06:41.03 ID:70z8ebax0
  
夜空。
冬特有の冷たい空気が身を裂くような感覚。
その中で二つの色が飛翔している。

橙色の翼と、白色の翼だ。

(*゚ー゚)「速い……」

チラリを背後を伺う。

从 ゚∀从「ヒヒヒヒヒ!!」

奇声を上げながら近付いてくるのはハインリッヒだ。
先ほどから追われるばかりで攻撃される気配は無い。

(*゚ー゚)(接近戦しか出来ないの……?)

飛翔しながら考える。
とりあえず、翼を奪うにはどうすればよいか。
単純に力で?ぎ取るのが一番早いだろう。
しかし、それだけでは駄目だ。

(*゚ー゚)(ハインリッヒに空の恐怖を与えないと――)

二度と空を舞いたくはないと思わせない限りは、翼を奪ってもまた飛翔手段を考えるだろう。
特に今のハインリッヒは思考が幼い。
ここで恐怖を叩き込めば、それは後の思考に多大な影響を与えるということだ。
逆を言えば叩き込まない限り、ハインリッヒは飛翔に固執し続けるだろう。



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