( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです
- 733: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:10:12.28 ID:/Qnd2oRj0
- 第二十五話 『夜空攻防戦 後編』
『神の裁き』発動命令から八分。
白い巨塔の真上では、高速の攻防が展開されている。
橙色の翼を持つしぃ。
クリアカラーの翼を持つクー。
白い肉の禍々しい翼を持つハインリッヒ。
そして少し離れた場所で援護射撃を行っている戦闘ヘリ。
地上からは援護砲撃が発せられていた。
しぃのタイミングを計った声と共に、空飛ぶ二対の女神が一瞬でハインリッヒから距離を開ける。
そのハインリッヒのみの空間に向けて、地上からの援護一斉射撃が牙を剥くのだ。
大小様々な弾丸。
火薬を詰めた砲弾。
更には対空ミサイル。
それらが連続してハインリッヒに直撃する。
- 739: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:12:42.22 ID:/Qnd2oRj0
- ハインリッヒから見れば小さな、本当に小さ過ぎる攻撃。
しかし『塵も積もれば山となる』という言葉が在る。
少しずつだが、押されていた。
当初は巨塔から離れていたハインリッヒが、今はその真上で戦闘を行っている。
その巨塔の屋上ではドクオと兄者の援護が音と威力を発していた。
('A`)「真上なら当たる! どんどん撃つぜ!」
( ´_ゝ`)「そぉい! そぉぉい!!」
今まで手出し出来なかった鬱憤を晴らすかのように、二人は手加減無しで撃ちまくる。
周囲、そして下方からの波状攻撃に晒され、ハインリッヒは少しの焦りを感じていた。
あの小さな力の存在である人間共に押されている。
圧倒的優位だったはずが、その位置を少しずつ引き摺り降ろされていく感覚。
そして遂に――
『おっしゃ!!』
ヘリから聞こえた声と共に、ハインリッヒが指定座標範囲内に入った。
- 741: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:15:29.11 ID:/Qnd2oRj0
- (;*゚ー゚)「これで、後は待つだけ……」
額から流れる汗を拭いもせず、しぃは呟いた。
川 ゚ -゚)「油断はするな。
攻撃を止めずに当て続けるんだ」
羽片を撒き散らす。
もはや接近戦は必要ない。
後は周囲・下方から襲い掛かる大量の射撃。
場を支配するのは轟音、激音、火炎、そして爆発だ。
その、人であれば一瞬たりとも存在出来ないであろう空間内で、ハインリッヒはとうとう反撃の手を潜めた。
翼を身体に纏うように展開し、防御体勢に入ったのだ。
川 ゚ -゚)「いけるぞ……あの状態でアレとやらをぶつければ翼を奪うことも可能かもしれない」
『あと一分を切った!
これより「援護野郎」は、『神の裁き』効果範囲から撤退する!
後は頼んだぞ!』
(*゚ー゚)「はい!」
- 742: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:17:44.31 ID:/Qnd2oRj0
- 川 ゚ -゚)「私達はどうするんだ?」
(*゚ー゚)「モララーさんの話によると何か防護策があるみたい。
残り十秒を切ったら、あの白い巨塔の屋上に降りてこいって」
川 ゚ -゚)「何をしようとしているかは、大体想像がつくな。
残り四十秒……押さえるぞ」
(*゚ー゚)「はい!」
とはいえ、やる事は変わらない。
ただただハインリッヒへ向けて羽片を発射し続けるだけだ。
戦闘ヘリと地上の一部の兵士が撤退するため、攻撃の圧が下がったが――
(#'A`)「このヤロォォ!!」
(#´_ゝ`)「そそそそそぉぉぉい!!」
何故かキレ気味の二人の怒涛ともいえる攻撃が、それを補う。
川 ゚ -゚)「残り三十秒!」
二色の羽片、光弾、炎と水、様々な弾丸。
構成する物質も速度も威力も何もかもが異なる威力の線が、一つの化け物を倒すために集中する。
- 746: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:20:41.26 ID:/Qnd2oRj0
- ミ,,"Д゚彡「!?」
一部の者が気付いた。
東の空から接近してくる明点。
(´・ω・`)「あれは――?」
疑問の声が戦場から発せられる。
それも当然だ。
飛んで来る物体が、皆の想像とは明らかに違うのだ。
鏡の立方体。
大きさは縦横五メートルほどだろうか。
それ以外に説明が出来ないほど、ある種の完璧さを誇る物質が飛来してくる。
( ・∀・)「あーあ、とうとう来てしまったね」
溜息を吐きながら、モララーが呟く。
しかしその覇気の無い姿は一瞬で也を潜めた。
すぐに、背後にいる人物に向けて鋭い信頼の言葉を発する。
( ・∀・)「弟者君、頼むよ」
(´<_` )「任せろ
では、皆……先に限界突破してくる」
- 748: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:23:14.82 ID:/Qnd2oRj0
- ( ´_ゝ`)「頑張れよ、弟者」
(´<_` )「兄者の激励があるならば、俺は常に成功を起こすさ」
ジゴミルを構える。
(´<_` )「成功の二文字を以って皆の命――俺が護る」
その口から発せられるのは
(´<_` )「『OVER ZENITH』――!!」
瞬間。
弟者が持つ黄金の盾から金色の発光。
それはみるみる範囲を広げていき――
(;^ω^)「こ、これは――」
完成したのは黄金のドームだ。
半透明黄金色の壁が半円を描いて屋上を覆う。
(´<_` )「盾が象徴するは『守護』――俺はその力を、皆を護るために使う!」
言葉通り『盾』となる。
それは本来、己の身を守護するための道具だ。
その力は全てを穿たせず
その力は全てを弾き返し
その力は全てを不貫とする。
- 751: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:25:22.19 ID:/Qnd2oRj0
- しかし弟者は、それを提案した12th−W『ジゴミル』の意見を突っ撥ねた。
俺だけ生き残ってどうする。
皆と一緒に生き残らねば、意味も何も無い。
そう彼は言った。
無論、範囲を広げたために、その分の頑丈さは失われる。
が、弟者は己の守護ではなく皆の守護を選んだ。
彼に後悔の色は無い。
弟者の意思を信頼したのか、ジゴミルも全ての力を彼に託す。
そこから生まれる力は『強大な守護力』だ。
黄金のドームが巨塔の屋上全てを包み込む。
残るは天井部分に空いている小さな穴だ。
閉じられれば、弟者の意思が途切れない限りその空間内に入れるモノは存在しない。
その穴に飛び込むように急降下をしてくるのは二つの人影。
川 ゚ -゚)「残り十秒を切った! このまま一気に――!!」
(;*゚ー゚)「!!」
しぃが気付く。
急降下中の背後――つまり真上から、白い化け物の赤い視線がこちらを捉えたことに。
- 754: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:27:11.89 ID:/Qnd2oRj0
- ――残り七秒。
从 ゚∀从「――ヒッ!!」
意図を読み取ったのか。
攻撃が止んだのを見計らい、クーとしぃに向かって腕を突き出しながら降下を開始する。
クーもその気配に気付いた。
川;゚ -゚)「ここまできて……しぃ、先に行け! 私が抑える!」
- 756: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:29:18.96 ID:/Qnd2oRj0
- ――残り六秒。
(;*゚ー゚)「そ、そんな!?」
クーが方向転換しながらクリアカラーの翼を、その背から消滅させる。
次の瞬間に現われたのは巨大な盾だ。
川;゚ -゚)「斥力で一気に座標点まで吹き飛ば――ッ!?」
声が終わる前に事は起きた。
ハインリッヒが、クーの構えた偽ジゴミル表面に爪を立てたのだ。
川;゚ -゚)「くッ……!!」
慌てて斥力を発するが、白い化け物は思い通りに吹き飛ばない。
- 760: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:31:19.75 ID:/Qnd2oRj0
- ――残り五秒。
川;゚ -゚)「ちぃ……!!」
(;*゚ー゚)「クーさん!」
从 ゚∀从「ヒヒヒヒヒヒ!!」
このまま降下すれば、黄金のドーム内にハインリッヒを迎え入れることになる。
かと言って時間を掛ければ、『神の裁き』効果範囲に入ってしまい、ハインリッヒ諸共クーは死んでしまう。
- 761: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:33:08.48 ID:/Qnd2oRj0
- ――残り四秒。
しぃの決断は早かった。
翼を動かし、反転する。
その時の慣性動作で腰へと手を伸ばし、そこから取り出したのは――
(*゚ー゚)「ッ!」
投擲。
銀光を発する小さなそれは、瞬速という速さを以って一気に天へと昇る。
- 767: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:35:21.83 ID:/Qnd2oRj0
- ――残り三秒。
直後、クーの真横を銀閃が掠っていった。
从 ゚∀从「ヒッ!?」
驚きに近い声が上がる。
その先に視線を向ければ
川;゚ -゚)「ナイフ……?」
ハインリッヒの右目に小さな、そして華奢なナイフが突き刺さっていた。
- 772: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:37:32.07 ID:/Qnd2oRj0
- ――残り二秒。
川;゚ -゚)(目は硬化されていないのか――?)
小さな、そして不確かな情報を得たクーは、しかしすぐに思考を切り替える。
盾を持つ手に力を籠め――
从 ゚∀从「――ッ!?」
グン、と一気にハインリッヒの身体が真上へと飛んだ。
ナイフが刺さった衝撃か、それとも驚愕によってか
いつの間にか爪が抜けていたのだ。
- 774: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:39:46.32 ID:/Qnd2oRj0
- ――残り一秒。
クーとしぃはそのまま黄金のドーム内に突入する。
そして――残り時間はゼロを迎える。
上空へと打ち上げられたハイリッヒに鏡の立法体が直撃するのと
弟者が発した限界突破のドームが閉じられたのは同時だった。
- 777: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:41:40.88 ID:/Qnd2oRj0
- 強烈な光。
直撃した立方体から、まずそれが発せられた。
そして変化は二段階目に移行する。
(;^ω^)「おっ――!?」
立方体が甲高い音を立てて割れる。
計六枚の鏡へと分離したそれは、まるでハインリッヒを囲うように展開された。
内部から出てきたのは妙な物体。
宝石のようであり、しかし完全な灰色の美しい球体だ。
その形状からは、自然が作るのは無理であろうが、自然の中に在るのが当然という妙なイメージを受ける。
突如、その球体から色が滲み出た。
色の名は紫。
発せられた色は、まるで蛇のように球体に絡みつき、しかしその数は増え続け――
紫電。
言葉にするならば、この単語が一番相応しいだろう。
その紫の蛇ともいえる稲妻の線が、灰色の球体を覆うように数を増やす。
- 779: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:43:57.05 ID:/Qnd2oRj0
- もはや灰の色が確認出来なくなった時。
ガン、という硬質な音を立てながら紫電が散った。
それらは周囲に浮遊する鏡のような五メートル四方の板に直撃し、しかし跳ね返される。
返された紫電は球体に戻らず、他の鏡の板に向かって身を走らせた。
まるでハインリッヒと球体を閉じ込めるかのような動き。
紫電の檻、ともいえようか。
流石にここまで展開された妙な物体に危機感を感じたのか、ハインリッヒは防御の構えを見せる。
それを見たモララーは口の端を吊り上げた。
( ・∀・)「無駄なことを――」
声と同時。
ズン、という衝撃音と威力が空間を激震させた。
それは黄金の防護ドーム内にまで響く。
(;^ω^)「うわわわっ!?」
屋上に倒れこんだクーを抱き寄せながら、紫電が暴れ狂い始めた空を見上げる。
隣では、しぃの元へ逸早く駆けつけたギコが同じく空を仰いでいる。
(;,,゚Д゚)「何だ、この兵器は――!?」
知る限りでは見たことも無いタイプだ。
爆発するわけでもなく、ビームやレーザー類が降ってくるわけでもない。
ただ紫電が荒れ狂い、それを六つの鏡と一つの球体が制御している状況。
- 783: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:46:06.29 ID:/Qnd2oRj0
- 更なる変化は疑問の直後だった。
硬質かつ甲高い金属音が響いたと思った瞬間、六枚の鏡が一瞬で球体から遠ざかる。
それは『助走』だったのだ、と後になって思えた。
遠ざかった六枚の鏡が、一旦宙に静止したかと思った途端。
音速を超えそうな速度を以って一気に球体に向かって集合したのだ。
まさに『一瞬』で、元の立方体に戻る鏡の群。
球体とハインリッヒを閉じ込めた鏡の立方体は――
消滅した。
爆発するように見えたそれは、しかし爆炎を撒き散らさず、一瞬の光のみを発してその身を消したのだ。
- 787: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:48:59.87 ID:/Qnd2oRj0
- あまりに呆気無い終わり方。
それを呆気にとられて見つめる指輪の戦士達。
ミ;,,"Д゚彡「な、何だったんですか……?」
( ・∀・)「詳しい話をしても構わない。
ただ、その代わり君はしばらく家に帰れなくなるが……それでも聞きたいかね?」
ミ;,,"Д゚彡「いえ、勘弁して下さい……」
( ´_ゝ`)「それ聞いたら雇って――「却下」(・∀・ )
( ´_ゝ`)「……チッ」
それぞれの思惑が交差する中、膝をつく姿もあった。
(´<_`;)「ハァ、ハァ……思った以上に範囲が広かった……」
(´・ω・`)「大丈夫かい? ほら、肩を貸すよ」
(´<_`;)「すまんな……役目を終えた途端、役立たずになってしまったようだ……」
(´・ω・`)「君は僕らを護ってくれた。
その事実がある限り、君の事を役立たず呼ばわりする人はいないよ」
( ゚∀゚)「何だ、もうダウンか? ったく……役立たずだなぁ、おい」
その隙だらけの顔面に兄者の鉄拳が飛んだのは言うまでもない。
ピクピクと身を震わせて悶絶するジョルジュを捨て置き、話を進める各人。
- 792: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:51:19.00 ID:/Qnd2oRj0
- ( ^ω^)「クーにしぃさん、大丈夫かお……?」
川 ゚ -゚)「あぁ、問題ない」
(;^ω^)「鼻血を流しながら言っても説得力無いお」
川;゚ -゚)「む……突入した勢いでそのまま地面に墜落してしまった」
(*゚ー゚)「はい、クーさん、このハンカチ使って」
川;゚ -゚)「ん……わ、悪いな」
( ,,゚Д゚)「クー」
それまで傍観するような態度だったギコが、クーに話しかける。
川 ゚ -゚)「?」
(;,,゚Д゚)「その……礼を言う。
しぃを助けてくれて、護ってくれて――」
- 795: ◆BYUt189CYA :2006/12/04(月) 21:53:14.15 ID:/Qnd2oRj0
- あまりに無骨だが、実にギコらしい礼の仕方だ。
そんなぎこちない礼にクーは微笑で答えた。
川 ゚ー゚)「私だって、彼女にたくさん助けてもらったさ。
礼なんて言わなくていいから、貴方はしぃの側に居てやってくれ」
( ^ω^)(クー……何か変わったお?)
見ていて実に清々しいクーの笑顔。
彼女なりに何か心境の変化でもあったのだろうか。
いずれにせよ、良い方向へ向いているのは理解出来た。
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