( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

472: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:50:41.01 ID:9/BxHOlA0
  
( ゚∀゚)「テメェ……何気に馬鹿にしてんじゃねぇよ!」

( ^ω^)「…………」

声と共に、ブーンがジョルジュの方を向く。

( ゚∀゚)「テメェとはこれで三度目だな……今度こそグシャグシャにして殺してやんぜ」

( ^ω^)「……ジョルジュ」

( ゚∀゚)「あん? 命乞いなら聞いてやんねぇぞ?」

( ^ω^)「降伏して欲しいお」

(;゚∀゚)「はぁ!? お前、馬鹿か!?
     どんだけ脳みそ腐ってんだよ!」

ジョルジュは指輪をはめた拳を向けながら

( ゚∀゚)「この指輪がある限り!
     テメェと俺様は、テメェと俺様と他の奴らは!
     絶対に避けることの出来ない戦いを強要されるんだよ!」

( ^ω^)「解ってるお……だからお願いしたんだお」

静かにブーンは言葉を紡ぐ。

( ^ω^)「出来れば戦いたくないんだお……だって――」



478: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:53:36.67 ID:9/BxHOlA0
  
目の色が変わる。

( ^ω^)「手加減出来そうにないから」

瞬間、発光。
ブーンの両手、白いグローブ、8th−W『クレティウス』から光が発せられる。

(;゚∀゚)「なっ――!?」

( ^ω^)「『OVER ZENITH』――!!」

更に光が増加。
キィィン、という甲高い音が辺りに響く。

『拳』を象徴するウェポンが、遂に吠えた。

まるで自分の出番を待っていたかのように。
まるで己の力をようやく発揮出来ると言いたげに。
まるで対等者と共に戦おうという意思を発しているかのように。

発光、発光、そして更に発光。

光は限界を超え、更に己の存在を示すかのように輝く。
もはやブーンの周囲は無に等しい。
白という色と、そして甲高い音がその全てを支配して――



485: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:55:58.55 ID:9/BxHOlA0
  
(  )「そう……私が君達が呼ぶ、『8th−W・クレティウス』だ」

( ^ω^)「本当の名前は無いのかお?」

(  )「私は私だが、しかし私ではない。
    製作者はクルト=リルロンド……そして私は彼によって作られた存在」

( ^ω^)「…………」

(  )「彼は私にこう命じた。
    『己の心が信じられる者に力を貸し、その未来を見据えろ』と。
    『その者が本当に信じられるに値するならば、言葉を交わし意思を通じ合わせろ』と」

( ^ω^)「だから……だから安易には力を貸してくれなかったんだおね?」

(  )「そうだ……そして今、私は君を信頼出来ると判断した」

( ^ω^)「嬉しいお」

(  )「その感情についてはよく解らないが、しかし……良いことではあるな?」

( ^ω^)「言う通りだお。
      だって、君と僕が信頼し合える仲になったってことだから」

(  )「君も私を信頼し、そして私も君を信頼する。
    それはとても素晴らしいことであると判断する」

( ^ω^)「僕もそう思うお!」



489: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:58:13.51 ID:9/BxHOlA0
  
(  )「ならば超えよう……互いの、己の限界を」

( ^ω^)「お?」

(  )「『限られた界を突き破れ』。
    それがクルト=リルロンドが組み込んだ、私への最後の命令だ。
    己と、己が決めた人間と共に、己の限界を越えろ、と。」

( ^ω^)「それは、つまり――」

(  )「さぁ、内藤ホライゾン……しばし再び語り合おう。
    そして君は――」

声は、ブーンに問いかけた。

(  )「何を、どう超えたい?」



493: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:02:32.52 ID:9/BxHOlA0
  
光が、止んだ。
徐々に消えていく、そして元に戻っていく景色の中……ブーンは立っていた。

( ^ω^)「…………」

もはや今までの彼は、そこにいない。

その両手に装着されたものは、グローブではなく手甲。
手の先から肘までを包んだ、長く白い、そして太い手甲だ。
見るからに頑丈そうなそれは、ブーンの両手を保護するかのように纏われている。

もはや今までの彼は、そこにいなかった。

( ^ω^)「…………」

その静かに立つブーンを、ジョルジュが嬉しそうに眺めながら

( ゚∀゚)「はっ、やっと来やがったかクソガキ。
     で……それがお前の限界突破ってヤツか?」

( ^ω^)「クレティウスは僕を理解してくれたんだお。
      そして僕もクレティウスを理解したんだお」

( ゚∀゚)「へぇ、おめでてぇな……事も頭も精神も」



497: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:04:52.27 ID:9/BxHOlA0
  
( ^ω^)「行くお」

瞬間、地を蹴る。
疾走。
しかしその速度は、通常の身体強化の速度と変わりはない。

――能力は何だ?

( ゚∀゚)(おそらくは打撃力強化ってところだろうな……ならば――)

鎖を振るう。

( ゚∀゚)「近付かせなけりゃいいんだよ、ボケがぁ!!」

もはやジョルジュの一部と化したともいえる鎖を、ブーンの頭部目掛けて投げる。
速度は高速。
それは一直線にブーンの元へと這った。

対しブーンは――



499: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:08:02.21 ID:9/BxHOlA0
  
( ^ω^)「……『強化符・脚部』展開」

走りながら呟く。
変化は直後。
ブーンの手甲の手首から肘にかけての部分から、空気の抜けるような音がしつつ、更に各部が展開していく。
内部からは、文字が書かれた紙状の何かが吹き出した。

( ゚∀゚)「なんだ……?」

紙が舞い、しかしブーンの足元へ集う。
瞬間。
発光、そして撃音と共に、一瞬でブーンの姿が消える。

(;゚∀゚)「な――」

しかし次の瞬間には目の前に――

(;゚∀゚)「――んだとぉ!?」

まるでコマ送りを見せ付けられたような光景。

慌てて鎖を引き戻すが、間に合わない。

ブーンがいた場所に残るは紙。
疾駆の衝撃を受け止めたかのように紙状の何かは広がり、遂には破れ千切れた。



508: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:11:08.54 ID:9/BxHOlA0
  
( ^ω^)「『強化符・腕部』展開」

言葉と共に、先ほどと同じように手甲から紙が舞う。
しかし今度は腕に集中。
途端、ブーンの腕があまりの速度に掻き消え――

( ^ω^)「ッ!!」

神速打撃。
それがジョルジュの鳩尾に直撃する。

(;゚∀゚)「ゴハァ!?」

内臓、骨、身体全てを砕かれたかのような衝撃。
ジョルジュは我慢出来ずに、その場で嘔吐した。

(;゚∀゚)「ゲハッ、ゲホッ……な、何が……!?」

( ^ω^)「これが僕なりの限界突破だお」

(;゚∀゚)「何……!?」

( ^ω^)「巨大な力はいらないから、破壊の力はいらないから
      その代わり、一瞬だけ全ての限界を超えられるようにしたんだお。
      そしてそれを……この符がやってくれるんだお」

(;゚∀゚)「符!? 全ての限界、だと!?」



511: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:14:28.92 ID:9/BxHOlA0
  
――限界の限界を、一瞬だけ超える。

それがブーンとクレティウスが導き出した『限界突破』だった。

限界の限界――つまり人の手が本来届かないはずの限界を進み、そしてその限界を更に超える。
それはもはや物理法則や人の意思を介さず行われる、ある意味での『未領域への一瞬』。

ブーンとクレティウスは、その一瞬を得ることを望んだ。
そこから引き出されるは人知を超えた力。

( ^ω^)「まだまだいくお!」

両手を地面と水平に上げる。
手甲から符が出現し、そして定められた位置へと舞う。
それは未領域へ干渉するための片道切符。

( ^ω^)「うぁぁぁぁぁぁぁ!!」

それらは両手に纏われるように舞った。
瞬間、発光。
そして神速の打撃。
目視すら出来ぬ一撃が、ジョルジュを襲った。

(;゚∀゚)「ぐぉぉぉ!?」

打撃は右肩を穿ち、左腕を貫いた。
あまりの衝撃に吹き飛ぶ。
砂煙を上げながら、ジョルジュが地を滑った。



517: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:17:23.14 ID:9/BxHOlA0
  
(;´・ω・`)「ブ、ブーン……その力は……!」

( ^ω^)「これで――これで僕は戦うんだお」

(;´・ω・`)「そんなこと言ってる場合じゃないよ!
       何て危険な方法を選んだんだ、君は……! 完全に予想GUYだよ!」

( ^ω^)「いいんだお……僕が望んだんだから」

ショボンは見た。
ブーンの右肩から一筋の血が流れているのを。

『未領域への一瞬』は、もはや人が触れて良いものではない。
一度その領域へ手を入れれば、その手が無事で帰ってくる保証はないのだから。
その証拠がブーンの右腕に現われたのだ。

(;´・ω・`)「いくら身体強化されてるからって……!」

( ^ω^)「でも、一番被害が少なくなるのは僕だお。
      これはドクオでもギコさんでも君でも無理な方法なんだお」

(´・ω・`)「何故だい……?
      君は、何故そんなにまでして、そんな力を……!」

( ^ω^)「別に力を手にした憶えは無いんだお」

(´・ω・`)「え……?」



523: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:20:24.87 ID:9/BxHOlA0
  
( ^ω^)「僕が手にしたのは『可能性』だお。
      クレティウスが僕に託した……大事な力なんだお」

矛盾――力を得ていないと言いながら、力を託されていると言うブーン。
ショボンは思う。

これはきっと、他人に理解出来ないのだろう、と。
これはきっと、ブーンと8th−Wの望みだろう、と。
これはきっと、彼にとって必要な力なのだろう、と。

ならば、自分はどうするべきか。
決まっている。

(´・ω・`)(己の道を進む友を支えるのが、僕の役目……)

痛む身体を無理矢理起こす。

(;^ω^)「ショボン、まだ無理は――」

(´・ω・`)「いや、いいんだ……大丈夫」

そう言うショボンの足取りは危なっかしい。
槍――5th−W『ミストラン』――で己の身体を支えながら、ゆっくりと身を上げる。

(;´・ω・`)「あの鎖の男は……?」

(;^ω^)「解らないお……でも、かなり本気でやっちゃったから……」

死には至らないが、おそらく重傷レベルまではいっているだろう、とブーンは思う。
まだ使い始めたばかりの慣れない攻撃方法なので、加減が解らないのだ。



528: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:22:50.84 ID:9/BxHOlA0
  
濛濛と立ち込める砂煙を見据える。

(#゚∀゚)「痛ぇ……痛ぇんだよ……!」

中から現われたのは、フラフラとこちらに向かって歩いてくるジョルジュ。
その右肩と左腕からは血が流れている。

(´・ω・`)「どうやら、まだ続きそうだね……」

(;^ω^)「何て精神力だお……普通なら激痛で――」

(#゚∀゚)「俺様を嘗めるのも大概にしとけよ、クソガキ……!
     俺様は優秀作……俺様は絶対に負けることはねぇ!」

右手を高々と上げる。
その動作のたびに出血が酷くなるが、しかしジョルジュは気にしない。

(#゚∀゚)「9th−W『ユストーン』……『OVER ZENITH』!!」

(;^ω^)「ま、まだやる気かお!?」

(#゚∀゚)「俺様が勝つまで終わりなんざねぇんだよ!!」

再びジョルジュの頭上に巨大な鎖龍が出現する。



532: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:25:12.03 ID:9/BxHOlA0
  
(;^ω^)「くっ……」

(´・ω・`)「慌てないで、ブーン。 狙うとすればジョルジュ本体だ」

(;^ω^)「……でも、殺したくはないんだお」

(´・ω・`)「そこまでの一撃はいらない。
      ジョルジュの精神が揺れるくらいの攻撃で充分だよ。
      そうすれば、あの鎖の龍は指輪に戻るはずだから」

(;^ω^)「わ、解ったお」

(´・ω・`)「悪いけど、僕はもう動けそうにない……一人で大丈夫かい?」

( ^ω^)「……任せるお!」

言い残し、地を蹴る。
一直線にジョルジュの立つ場所へ走る。
が、その前に鎖龍が立ち塞がった。

(#゚∀゚)「死ねッ!」

轟、と音を立てて突撃してくる鎖の塊。
対するブーンは左腕を地面と水平に上げた。

( ^ω^)「『強化符・脚部』展開――」

声と共に符が舞う。
足に集い、そして光の爆発。
次の瞬間には彼は消えており、ボロボロになった符が散らばる。



534: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:28:19.21 ID:9/BxHOlA0
  
(#゚∀゚)「!」

見る。
上空だ。
空高く飛んだブーンは、両手を左右に上げた格好で風を身に受けている。

(;^ω^)「ッ……」

足がジンジンと、そしてジクジクと痛む。
符で限界突破した反動だ。
しかし、そんなことを気にしている場合ではない。
狙うはジョルジュ。

( ^ω^)「『強化符・腕部』展開!」

バシュという空気の抜ける音と共に符が舞う。
それらはブーンの右手に集中した。
落下。
下方からは鎖龍がブーンを吹き飛ばそうと突撃してくるのが見える。
しかしブーンは躊躇わない。

(#^ω^)「おぉぉぉぉぉ!!」

振りかぶり、そして右手を突き出す。
鎖龍の頭部に直撃するのは同時。
強烈な発光と共に、甲高い金属音が鳴り響く。

(#゚∀゚)「!」

(;´・ω・`)「ブ、ブーン!? 僕の忠告聞いてた!?」



535: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:31:10.10 ID:9/BxHOlA0
  
動きが止まったと思われたその時。

ガコン、と金属が割れる音が響いた。
そしてガコン、とまたもや割れる音。
更にガコン、ガコン、と音が連鎖していく。

(;゚∀゚)「まさか――」

見る。
鎖龍の頭部から、鎖が次々と割れていく光景を。

(#^ω^)「おぉぉぉぉ!!」

右腕を突き出しながら、鎖龍の連鎖を叩き割っていくブーン。
もはやその腕は血だらけだ。
しかし彼は退くことをしない。

(#^ω^)「お――――!!」

割れる金属と共に少年の声が響く。
それはもはや獣の咆哮に近い。

(;゚∀゚)「なっ……なっ……!?」

ジョルジュが焦った声を漏らす。
それも当然だ。
己の最高の攻撃力を誇る限界突破状態のユストーンの身体が、次々と割られていくのだから。



540: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:33:49.09 ID:9/BxHOlA0
  
(;゚∀゚)「馬鹿な……!」

言葉と同時。
耳をつんざく破壊音と共に、鎖龍ユストーンの全ての鎖が叩き割られた。
後に残るは撒くように飛び散る銀色の破片。
そして――

(;^ω^)「ハァ……ハァ……!」

破片の山に降り立つブーンの姿。

(;゚∀゚)「じょ、冗談だろ……ありえねぇ……!」

力と力のぶつかり合いにおいて、もはや速度も巨大さも頑丈さも何もかも関係無い。
強い方が勝つ。
それが真実であり、事実だ。

(;^ω^)「ジョルジュ……!!」

(;゚∀゚)「……!」

声と共にブーンが駆け出す。
その先には、もはや戦意喪失したジョルジュが突っ立っている。



547: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:39:11.42 ID:9/BxHOlA0
  
(#^ω^)「うぁぁぁぁぁぁ!!」

未だ動く左手を振りかぶり――

(;゚∀゚)「う、うわぁぁぁ!?」

腰を捻り――

(#^ω^)「ッ!!」

拳を突き出した。
それは一直線にジョルジュの下顎を捉え――

(;゚∀゚)「ッッ!?」

更に吹き飛ばす。
地面を削りながら仰向けの姿勢で滑るジョルジュ。

滑走が止まる。
しかし、彼が動くことは無かった。



554: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 22:42:18.19 ID:9/BxHOlA0
  
(;^ω^)「ハァ、ハァ……!」

(´・ω・`)「ブーン……よくやったよ」

(;^ω^)「あ、ありがとうだお……」

言葉と共にブーンの身体がフラつく。

(;´・ω・`)「あ――」

ショボンが慌てて手を差し伸べるが、しかしそれは届かない。
ブーンは半ば意識を失ったまま、地にその身体を預けるように倒れた。
慌てて駈け寄る。

(;´・ω・`)「ブーン……」

意識を途絶えさせたブーンのその顔には、『満足』という表情が張り付いていた。

(´・ω・`)「良かった……本当に良かった……」

そう呟くショボン。

この瞬間、アストクルフ家で展開されていた戦闘は全てを幕を閉じる。

夜空には満天の星。
勝利者を祝福するように輝いていた。



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