( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

38: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:37:56.13 ID:lv/dT/ug0
  
『バーボンハウス』内。
ドクオが「寒い寒い」と言いながら戻ってきたの同時。
ショボンは捕虜に食事を与えるべく、カウンター奥の隅に向かって歩いていた。
その隅の暗がりには――

(´・ω・`)「はい、どうぞ」

(;゚∀゚)「テメェ……手足縛られてんのに、どうやって食えってんだよ」

(´・ω・`)「知恵を使いなよ、知恵を」

柱に縛り付けられたジョルジュが唸るが無視。
まぁ、捕らえた当初に比べれば静かになったものだ。
今、彼は諦めているような様子で、時々こちらの話に耳を傾けているのが確認されている。

そんな彼の足元に食事を置いて、ギコ達の元へ戻っていった。

(´・ω・`)「……嬉しそうだね」

カウンター席で、仲良く喋るギコとしぃに向かって語りかける。



40: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:40:16.16 ID:lv/dT/ug0
  
それに気付いたギコが

( ,,゚Д゚)「あぁ、そうだな」

と、カウンター上のある場所に目を向ける。
そこには計十一個の指輪が無造作に、しかしまとめて置かれていた。

青色に輝く、1st−W『グラニード』
黒色に輝く、3rd−W『ウィレフェル』
桃色に輝く、4th−W『アーウィン』
紫色に輝く、5th−W『ミストラン』
赤色に輝く、6th−W『ギルミルキル』
茶色に輝く、7th−W『ガロン』
白色に輝く、8th−W『クレティウス』
灰色に輝く、9th−W『ユストーン』
橙色に輝く、10th−W『レードラーク』
金色に輝く、12th−W『ジゴミル』
緑色に輝く、13th−W『ラクハーツ』

それらが、まるで会合を喜んでいるかのようにそれぞれ輝きを放っている。
擬似精神同士が会話でもしているのだろうか。



42: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:43:24.18 ID:lv/dT/ug0
  
しぃが、その虹色に近い輝きを目に入れながら

(*゚ー゚)「足りないのは2nd−W『ロステック』と11th−W『ミシュガルト』……。
    そして、未だ誰も姿さえ見たことがない14th−Wね」

( ,,゚Д゚)「明日が勝負の日……足りない分は仕方ないだろう。
     ロステックはともかく、ミシュガルドは向こうの手にあるしな。
     そして今から14th−Wを探そうにも時間が足りない」

(´・ω・`)「だろうね……リトガーがシビレを切らして、こちらに攻めてくるかもしれないし。
      昨日に流石兄弟さんが調べてきたデータが本当ならば
      リトガーが作り上げたと思われる大量の黒衣の兵士が攻めてくるはずだからね」

もしそうなれば

( ,,゚Д゚)「……都市ニューソクはおそらく甚大な被害を被る。
     行動が遅いせいでそうなってしまったら、俺達はともかくアイツらは耐えられないだろう」

ふと背後に視線を向ける。
そこにはテーブルを囲んで座り、騒がしく会話をしている三人の姿。
ツン、フサギコ、そしてドクオ……そして今この場にはいないブーン。

( ,,゚Д゚)「彼らはまだ若く、そして心が弱い。
     明日の戦い、出来ればあまり参加してほしくないのだがな……」



45: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:45:38.71 ID:lv/dT/ug0
  
(´・ω・`)「随分と弱気……っていうか、過小評価してるね。
      でもさ、決めるのは彼らだから――」

( ,,゚Д゚)「解っている……もし、そうなれば俺は全力でアイツらを護る。
     誰も死者なんか出すものか」

( ゚∀゚)「ハッ、ツーを殺した野郎が何言ってんだか」

ジョルジュの軽口が耳に入る。

( ,,゚Д゚)「おい、ショボン……アイツも外に放り出しておけ」

(´・ω・`)「だね。 ついでに外にいる彼と、ちょっと話してくるよ」

(;゚∀゚)「え、ちょ、待てって……今のは俺様が悪いのか!?
     冗談じゃねぇぞ、おい――あぁぁぁぁ!」

叫び声を上げながら放り出される。
それを見届けたギコは、満足したかのように一気に酒を喉に流し込んだ。



48: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:47:48.53 ID:lv/dT/ug0
  
( ,,゚Д゚)「さて、と……」

(*゚ー゚)「?」

( ,,゚Д゚)「他に聞く奴がいなくなったから丁度良い。
     お前に聞いておきたいことがある」

(*゚ー゚)「何?」

( ,,゚Д゚)「明日……本当に戦うつもりか?」

ストレートな質問。
その言葉を受け止めたしぃは、少しの沈黙の後に

(*゚ー゚)「……うん」

と、力強く頷いた。

(*゚ー゚)「私は今までギコ君の足手まといだったけど……今はそうじゃないわ。
    10th−Wという立派な力がある」

10th−W『レードラーク』。
飛翔と羽片攻撃、そして防御を得意とし、主にかく乱や援護に使えそうな能力だ。
その戦闘能力は対ツー戦で立証されている。



51: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:50:20.67 ID:lv/dT/ug0
  
(*゚ー゚)「これで私はギコ君と同等の位置に立てる。
     だから……おそらく最後の指輪戦闘になる明日の戦いには、参加したい」

( ,,゚Д゚)「今までの清算をする、と言いたいわけか」

(*゚ー゚)「気持ち的にはそんな感じかも。
    でも、それ以上にギコ君を手伝いたいって気持ちが大きいと思う。
    それにほら、片腕無くしちゃったのも私のせいみたいなものだし……サポートしたいなって」

( ,,゚Д゚)「……そうか」

ギコはそれ以降言葉を発しない。
考えているのか、それとも諦めを自分に言い聞かせているのか。

それが数十秒続いた時。
今度はしぃが問いかけた。

(*゚ー゚)「ギコ君は……どうして戦うの?」

( ,,゚Д゚)「俺か? 俺は――」

(*゚ー゚)「私のせいで左手を失って……それでも、戦うの?」

辛辣な、そして自虐ともいえる試すような質問。
ギコは答えを吐き出すことが出来ない。

( ,,゚Д゚)「…………」



52: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:52:29.85 ID:lv/dT/ug0
  
(*゚ー゚)「ギコ君と私は、いつでも退ける立場なんだよ?
    それでも戦う理由って……何?」

( ,,゚Д゚)「……俺は」

俺は、何なのだろうか。

『VIP』という組織は、事実上もはや存在しない。
しぃの両親を奪った奴らは、事実上もはや存在しない。

仇討ちという本来の目的はアストクルフ家での戦闘で終わったはずだ。
なのだが、未だ自分は指輪を持ち、そして明日にはリトガーとの戦いに備えてバーボンハウスに居る。

何故だろう。

ここで降りても問題はない。
しかし何故、俺はここにいる?

( ,,゚Д゚)「俺は――」

少しの思考。
答えは意外と簡単に見つかった。

( ,,゚Д゚)「……ただ単に護りたいんだ、と思う」

(*゚ー゚)「護りたい?」



53: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:55:55.38 ID:lv/dT/ug0
  
( ,,゚Д゚)「考えてもみろ。
     内藤、ドクオ、流石兄弟、ショボン、そしておそらくフサギコ……どうだ?」

(;*゚ー゚)「……え、えーっと?」

彼の意図が解らず、首を傾げる。

( ,,゚Д゚)「今言ったメンバーが、『完成品』を破壊しに明日突撃するわけだ。
     何かこう、心配というか放っておけなくないか?」

(;*゚ー゚)「……皆には悪いけど、確かに」

何とも失礼な二人である。

( ,,゚Д゚)「……最後まで面倒を見ようと思う。
     それからのことは、明日が終わった後でゆっくりと……。
     それに、明日の戦いが終われば指輪のことも考えなくて良いしな」

(*゚ー゚)「……うん、それが良いかもね。
     でも、最初の時……あの時のギコ君は――」

そんなしぃの口を、ギコが手で塞いだ。

( ,,゚Д゚)「わざわざ過去を語る必要は無い……そんな話など、二人だけが知っていればそれでいい」

(*゚ー゚)「……そうだね」

二人の決意は固まったようだ。
さて、後の問題は――



56: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:58:45.77 ID:lv/dT/ug0
  
『バーボンハウス』の外。
未だ壁に身を預けているブーン。
その隣の扉が、突如として開かれる。

( ^ω^)「お?」

(;゚∀゚)「いってぇ!」

飛び出してきたのは、縄で縛られたジョルジュだった。
そのままゴロゴロと冷たい道路を転がり、向かい側の壁に激突する。

(;^ω^)「な、何だお……?」

(´・ω・`)「店の中に置いておくには、あまりにアレなんでね」

続いてショボンも出てくる。
ギャアギャアと喚くジョルジュを無視し、ショボンはブーンの隣で壁に背中を預ける。

(´・ω・`)「…………」

( ^ω^)「…………」

沈黙。
よくよく考えれば、あの一年前の一件以来まともに話すのは初めてだ。
アストクルフ家での時は、戦いに集中していて落ち着いている暇はなかった。
心を落ち着かせていざ向き合ってみると、やはり緊張する。



59: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:01:48.02 ID:lv/dT/ug0
  
ブーンが何か言おうと口を開きかけたとき――

(´・ω・`)「……ブーン」

(;^ω^)「お?」

(´・ω・`)「君は、僕と別れた後……何をしていたんだい?」

素朴な疑問。
しかし、互いの心の間にある壁を壊すには丁度良いのかもしれない。

( ^ω^)「僕は相変わらずだお。
      あれから、何も変わらず学校で色々とやってきたんだお」

(´・ω・`)「ふぅん……」

( ^ω^)「ショボンは? アレからどうなったんだお?」

(´・ω・`)「僕の方は、まぁ色々と。
      色々とあったけど……今は君の知ってる通りだよ。
      それに、『かつて』の僕はもういないから」

どうやら語る気はあまり無いらしい。
責任を感じている結果か、ただ単に言いたくないだけなのか。



60: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:04:35.67 ID:lv/dT/ug0
  
解らぬが、とりあえず質問を変える。

( ^ω^)「あの戦いの技術はどうして?」

(´・ω・`)「この御時勢、裏の仕事なんてやってると命を狙ったりする奴が現われるんだよ。
      最初は弟者さんに護ってもらってたけど……やっぱり、それじゃあ納得出来なくてね」

( ^ω^)「それで?」

(´・ω・`)「最初に出した結論は、情報の制限。
      途中から弟者さんが関心を持っていた指輪関係の情報のみに限ることで
      自然と命を狙われる確率は減ったんだ」

ちなみに

(´・ω・`)「弟者さんが持ってる12th−Wは、その制限された情報屋を始めたときに手に入れた。
      ガセだと思ってた情報が真実で……詳しいことは省くけど、偶然手に入れたようなものだよ」

( ^ω^)「じゃあ、君の5th−Wは?」

(´・ω・`)「モララーさんからもらったんだ。
      ギコさんの情報を頼まれて流したときに、そのお礼にって」

(;^ω^)「あの人が……?」

(´・ω・`)「自分はもう既に持ってるし、これ以外使うつもりはないって言って無理矢理渡されたよ。
      そりゃあ、僕だって拒否したけど……いや、あの人ホント押しが強いね」

(;^ω^)「まぁ、確かに……」



62: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:09:01.14 ID:lv/dT/ug0
  
当初、二つのウェポンは二人を主と認めなかった。
しかし諦めずに、いつも指にはめて生活していたところ、
段々と心を開いた……というか、こちらを理解してくれていったらしい。

それからショボンは、己の身を護れるよう訓練を開始した。
幸いにも弟者が重度の格闘技ヲタだったので、練習方法などには不便しなかったとか。

(´・ω・`)「ちなみに弟者さんが格闘技ヲタっていうのは秘密だよ。
      兄者さんさえ知らないことになってるから」

(;^ω^)「解ったお」

人は見かけに……よるのだろうか。
隠すほどでもないように思えるが、しかし言えば酷い目に遭うだろうとは容易に予想出来た。

(´・ω・`)「それを半年くらい続けて……まぁ、普通に戦えるくらいの実力はつけたつもりだよ。
      でもまぁ、ミストランが力を貸してくれているっていうのもあるかもしれないけどね」

( ^ω^)(まぁ、半年くらいで強くなれるわけないし……ショボンの言う通りだおね)



65: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:13:15.95 ID:lv/dT/ug0
  
(´・ω・`)「それでね、ブーン」

( ^ω^)「何だお?」

(´・ω・`)「あの時は……ごめん」

頭を下げながら放ったのは、対ジョルジュ戦の時と同じ台詞。
その姿を見て、慌てながら

(;^ω^)「あ、頭を下げることないお!
      僕だって君を殴ってしまって悪いと思ってるんだお! 僕こそ謝るべきだお!」

(´・ω・`)「その原因を作ったのは僕だよ。
      だから、僕が謝るべきだ……ケジメをつける意味でもね」

(;^ω^)「い、いや、そんなこと言われても――」

会話はグルグルと悪循環にはまっていく。
それがしばらく続いた、そんな時。

( ゚∀゚)「テメェら……馬鹿か?」

ジョルジュだ。
道路の端っこで全身を縄で縛られ横たわっているジョルジュが、こちらに向かって口を開いた。

( ゚∀゚)「どっちが悪いだの、悪くないだの……馬鹿かってんだよ」

(´・ω・`)「……どういう意味だい? 変なこと言ったら変態さん呼ぶよ?」

(;゚∀゚)「なんかスゲェ嫌な脅しだな、おい……」



68: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:16:39.67 ID:lv/dT/ug0
  
冷や汗を流しながら、ジョルジュは続ける。

( ゚∀゚)「テメェら、くだらねぇんだよ。
     どっちもどっちで、両方悪いってことにすりゃいいじゃねぇか。
     話を聞いた限りだと、どうせ喧嘩別れなんだろ?
     それなら、そもそもどっちが悪いとかじゃねぇだろーが」

続ける。

( ゚∀゚)「それに、もう互いに憎みあったりしてねぇんだろ?
     だったら難しい話なんて放ってよ、素直になりゃいいじゃねぇか」

(;^ω^)「ジョ、ジョルジュ……?」

その言葉に、ジョルジュはハッと慌てるような表情で

(;゚∀゚)「う、うるせぇ!
    暇だったからテメェらをちょっとからかっただけだ!」

(;^ω^)「ここに妙なツンデレを見たお……蟹沢きぬっぽいお」

(#゚∀゚)「馬鹿野郎! オススメは祈先生に決まってんだろ!
     あのボインボインのおっぱい嘗めんな!! ボインボインだぞ!?」

(;^ω^)「知ってるのかお……」

半ば呆れ気味にジョルジュを見つめるブーン。



73: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:19:09.10 ID:lv/dT/ug0
  
そんな彼を見つつ

(´・ω・`)「確かに彼の言う通り……少し過去に固執してたかもしれないね。
      喧嘩別れしてたかが一年、と考えるのが得策かな?」

( ^ω^)「でも、君とこうして友情を深められたのは、その喧嘩別れのお陰かもしれないお」

(´・ω・`)「何事も前向きに、か……それも良いかもしれない」

ショボンは納得したかのように、何度か頷く。

( ^ω^)「ところで、明日の戦いはどうするんだお?」

(´・ω・`)「僕も行くよ。
      君達を巡り合せたのは僕だし、クーさんにも謝りたいしね」

( ^ω^)「そうかお……」

(´・ω・`)「ところで聞き返すようで悪いけど、明日が無事に終わったらどうするんだい?」

( ^ω^)「うーん……特に変わることは無いと思うお。
      普通に学校へ行って――」



77: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:20:58.13 ID:lv/dT/ug0
  
あ、とブーンは気付いたように付け足した。

( ^ω^)「もちろん、ショボンにも戻ってきてほしいお」

(´・ω・`)「え……?」

( ^ω^)「昔みたいに、僕とドクオとショボン、ツン……そしてクーとで楽しくやっていきたいんだお」

その言葉に、ショボンはしばし呆然とする。
そして――

(´・ω・`)「……うん、そうだね」

コクリ、と確かに頷いた。

( ^ω^)「そうだお。 この御時勢、高校くらい卒業してないと困るお」

(´・ω・`)「それはそうだけど、君、随分と現実的だね……」

(;^ω^)「そ、そうかお?」

(´・ω・`)「まぁ、君らしくて良いと思うけど。
      じゃあ、僕は明日の用意があるから店に戻るよ」

壁から身を剥がし、扉を開けるショボン。



78: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:23:38.68 ID:lv/dT/ug0
  
そんな彼の耳に親友の声がかかる。

( ^ω^)「ショボン」

(´・ω・`)「ん? 何だい?」

( ^ω^)「明日からもよろしく……そして、ありがとうだお」

(´・ω・`)「……僕の方こそ、ありがとうだよ。
      こっちもずっと悩んでたことが吹き飛んだ……これでミストランも扱えるしね」

バタン、と扉が閉まる。
その様子を見届けたブーンは、改めて空を見上げた。
相変わらずの曇天。

しかし、だ。
己の心は晴れているような――否、晴れたような気がする。
自分には仲間がいて、大切な親友がいて……会いたいと焦がれる人もいる。
それはとても贅沢なことなのだろう。
だから

( ^ω^)(だから……僕は絶対にクーに会うんだお)

硬く握る拳。
明日。
明日、全てが決着する。
皆の思いも、自分の方向も、彼女の意思も、そして――



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