( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです
- 72: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:33:00.87 ID:QKJP9sTH0
- (´・ω・`)「……人は変わる。
己を省みず、そして他人さえも見ようとしなかった僕でも
護るべき何かを見出す事が出来るんだ!」
構える。
先端をハインリッヒへ向け
(´・ω・`)「人が強いのは、修行の練度や武器の強さなんかじゃない!
その身に背負う重荷の価値によって決まるんだ!!」
声と共にそれが発射された。
元々も一つだった穂先から、一瞬で数百とも言える槍が伸びたのだ。
(´・ω・`)「僕はこれから戦い続ける!
この一撃の向こうに、ほんの僅かな輝きでも良い
敬愛する親友や弱い人達の安息が待っているというのならッ!!」
発射された多量の小さな刃は、様々な方向からハインリッヒへと向かい――
連続した刺突音。
身体の各部を刺されたハインリッヒが小さな悲鳴を上げた。
それを見届けたショボンは、目を逸らしながら攻撃の手を収める。
ミ,,"Д゚彡「『OVER ZENITH』!!」
黒い発光。
それはフサギコが持つ大鎌が、彼の叫びに呼応した証拠だ。
- 77: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:34:53.09 ID:QKJP9sTH0
- ミ,,"Д゚彡「『最強』とは強さではありません!
命を捨ててでも、誰かを護る覚悟です!」
ほとんどその姿を変えない3rd−W『ウィレフェル』を構え、最強へと向かって疾走する。
ミ,,"Д゚彡「他人と寄り添い、信頼・敬愛・愛情へと意思を昇華する事が出来るのなら
誰もが『最強』に成りえる……!!」
振りかぶり
ミ,,"Д゚彡「貴方は『最強』ではない……力のみという『強さ』を持った、ただの怪物です!」
一閃。
その一撃は、しかしハインリッヒを切り裂くことなく吹き飛ばした。
ミ,,"Д゚彡(やはり、私とウィレフェルの知らない物質で構成されている……!)
本来ならば、ジェイルと同じく胴体を両断出来たはずだ。
だがそれは叶わない。
フサギコの限界突破は『知る物質を切り裂く』だからだ。
ハインリッヒを構成する『ある細胞』は、ハインリッヒという『最強』のみが持っている物質なのか。
从 ゚∀从「ッオォォアァァァ!!」
強烈な一撃を喰らったが、そのまま着地。
切断された足で地を滑走する。
- 81: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:36:41.37 ID:QKJP9sTH0
- その背後から走りこんでくる人影があった。
( ゚ω゚)「おぉぉぉぉ!!」
彼の腕には白きグローブ。
しかし、それは右拳にだけ装着されていた。
( ゚ω゚)「『OVER ZENITH』!!」
白い発光と共に変化。
その拳を包んでいたグローブは、一瞬の後に手甲へと姿を変えた。
( ゚ω゚)「『強化符・腕部』――全展開ッ!!」
瞬間、手甲の各部が一気に開かれる。
その多量に開いた穴から噴き出るのは、やはり多量の符だ。
- 89: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:38:36.31 ID:QKJP9sTH0
- 今までの、どの場面よりも多く出現した符は
( ゚ω゚)「ハインリッヒィィィィ!!!」
どの時よりも多く、その右腕に纏い
( ゚ω゚)「誰も望まない『最強』なんて要らない!
もう、誰もそんなモノは望まないお!!」
それはどの時よりも多くの光を発し
( ゚ω゚)「喰らえぇぇぇぇぇぇ!!!」
振られた拳は音速を超える勢いで突き出される。
从 ゚∀从「!!」
しかし、それは残った左腕で阻まれた。
ギリ、という絞られる音。
( ゚ω゚)「まだ抵抗する意思が……ッ!?」
- 98: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:41:29.39 ID:QKJP9sTH0
- ( ゚ω゚)「うぉぉぉぉ!!」
咄嗟に繰り出した右回し蹴りが、ハインリッヒの脇腹を捉える。
ゴキリ、という骨が粉砕する音が断続的に響いた。
( ゚ω゚)(皆の攻撃で確実に力が弱ってる……!
これならクーの刀も通じるお!!)
思ったが直後。
無理矢理、力任せに掴まれていた右拳を引き抜く。
( ゚ω゚)「ッ!!」
空気を切り裂き、空間さえも穿つそれは、ハインリッヒの横顔を捉えた。
从 ゚∀(#从「ッ!!?」
もはや音は無い。
一瞬だけ首がありえない方向へ向けられ、そのまま弾き飛ばされる。
内藤ホライゾン、人生最大の一撃が炸裂した。
衝撃に耐える間も無くハインリッヒは宙を飛び、慣性に身を任せるままに地を滑った。
砂煙が舞い、そのまま動かなくなる。
- 103: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:43:20.87 ID:QKJP9sTH0
- ( ゚ω゚)「クー……!
ハインリッヒはもう動けないし、身体硬化も出来てない!
これで君の血と刀も通用するはずだお!」
戦いを終わらせる人の名を呼ぶ。
その彼の横を、14th−W『ハンレ』を持って歩いていくのは
川 ゚ -゚)「あぁ……任せてくれ」
『失敗策』クー。
クルト博士によって仕込まれた、ハインリッヒ暴走時の後始末を任された人造人間。
その血はハインリッヒの『ある細胞』を死滅させるらしいが――
从 ゚∀从「グッ……ウゥゥゥ……」
もはや立つ力も無いのか、ブーンの一撃が脳を揺さぶったか。
いずれにせよ、ハインリッヒも生物の範疇を逃れられなかった。
その姿をクーは静かに見つめる。
- 107: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:45:14.51 ID:QKJP9sTH0
- 川 ゚ -゚)「…………」
今まで、随分と間違ってきた。
今まで、随分と遠回りをしてきた。
今まで、随分と皆に迷惑を掛けてきた。
だがしかし――ここで全てを清算しよう。
許されないかもしれない。
甘いと、情けないと、勝手だと言われるかもしれない。
川 ゚ -゚)(でも――)
信じてくれる人もいる。
支えてくれる人もいる。
更には己を好んでくれる人だっている。
川 ゚ -゚)(私には、それだけで充分過ぎる……)
从 ゚∀从「ア、アァ……ウォォ……ォ……」
川 ゚ -゚)(ハインリッヒ……お前にはそんな人さえ存在しないのだな)
クーは思う。
完成品とは、果たしてそれで良いのだろうか、と。
- 112: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:47:06.39 ID:QKJP9sTH0
- 川 ゚ -゚)「今、終わらせてやる」
手に持ったクリアカラーの刀を、己の腕に当て
引く。
淀み無い綺麗な白い腕に一筋の赤い線が入った。
そこから少量だが、真っ赤な血液が流れ出て――
川 ゚ -゚)「…………」
落ちる先に刀を持ってくる。
ポタポタと音を立てながら、己の血が刀身を塗らしていった。
川 ゚ -゚)「……さよなら、だ」
構える。
相手は、曲がりなりにも己の分身とも言える関係。
しかし彼女はそれを断ち切るかのように――
从 ゚∀从「ッ――!!」
胸部に一突き。
軟質な抵抗を感じるが、すぐにそれを貫通した。
- 123: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:48:50.07 ID:QKJP9sTH0
- 从 ゚∀从「ガッ……ア、アァ……」
苦しみながらも残った左腕を、クーの顔に向けた。
川 ゚ -゚)「…………」
冷たい目が見つめる。
从 ゚∀从「――ァ――ウォ――ゥ――」
その左手が彼女の頬に触れる寸前に
从 ∀从「――――」
ドサリ、と崩れ落ちるようにハインリッヒが身を倒した。
…………
………
……
…
- 128: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:50:31.96 ID:QKJP9sTH0
- 場を、長い間沈黙が支配する。
(;'A`)「……お、終わった、のか?」
耐え切れなくなったか、ドクオが沈黙を破るように問いかけた。
(;゚∀゚)「もう復活ってこたぁ……ねぇよな?」
それに便乗するようにジョルジュも問いを発する。
( ´_ゝ`)「あぁ、十中八九間違いない……そして復活することも無いだろう」
(´・ω・`)「兄者さんが言うと復活しそうで怖いけど――」
ミ,,"Д゚彡「言葉は真実、のようですね……」
再度、確認するように皆の視線がハインリッヒに集まる。
不動。
崩れ落ちた身体は微動だにすることはなく
その口からは酸素の入れ替えが行われることもない。
( ・∀・)「と、いう事は、つまり……?」
口元に笑みを浮かべたモララーが、皆を見る。
まるで『さぁ、喜ぼう』とでも言いたげな表情だ。
- 134: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:52:56.96 ID:QKJP9sTH0
- ( ゚∀゚)「ッしゃああぁッ!!」
(;'A`)「ほ、本当か? 本当に俺達が勝ったのか!?
本当に、本当に勝ったんだよな!?」
( ,,゚Д゚)「念入りに聞かなくとも、この状況で下衆な冗談を言う奴はいないだろう。
一切の嘘は無く、全てが事実だ」
(´<_`;)「おぉ、おぉぉ! 兄者、遂にやったぞ!!」
(;´_ゝ`)「メチャクチャ疲れる戦いだったけどな……」
ミ,,"Д゚彡「この疲れも、努力した結果の証ですね」
(*゚ー゚)「……こんな充実した安堵感は久しぶりだわ」
皆が歓喜と安堵の声を上げる。
そんな中、ブーンは一人佇む彼女の元へと近付いていった。
( ^ω^)「クー……」
川 ゚ -゚)「……ん」
返答は来たものの、その視線は未だハインリッヒから離さない。
- 144: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:54:51.56 ID:QKJP9sTH0
- 川 ゚ -゚)「妙な気分だ……役目を果たしたのに素直に喜べない」
( ^ω^)「喜ぶ必要はないお。
ただ、クーは自分の役目を果たした……それだけ解ってれば良いんだお」
川 ゚ -゚)「ん……そう、だな」
小さな頷きと同時。
倒れたハインリッヒの身体から変化が。
(;^ω^)「お……?」
煙。
それがハインリッヒの身体の各部から染み出し始める。
同時にジュ、という肉が焼けるような音も発する。
(;^ω^)「溶けてる、のかお?」
川 ゚ -゚)「私の血がハインリッヒの細胞を消滅させているのか……?」
音は一定の音階で鳴り続け、そして何時しか消えていった。
同時に纏うように発生していた煙も薄らいでいく。
後に残ったのは――
(;^ω^)「!」
川 ゚ -゚)「これ、は――」
- 151: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:56:28.34 ID:QKJP9sTH0
- 暗い部屋がある。
それは小さな部屋だ。
微かな光が内部を照らしている。
光の名はディスプレイ。
周囲には用途不明なコードや機械類が、狭い部屋を更に狭くしている。
そんな中に、二つの人影。
片方は椅子に座り、ディスプレイに映し出された映像を見ている。
片方はその隣に立ち、同じくディスプレイに視線を向けている。
その画面が映し出す映像は、先ほどの巨塔での決戦だ。
「あ〜あ……ハインリッヒ負けちゃったね」
「イェス、マスター」
二つの声が響く。
片方は女性の声だ。
そしてもう片方も女性の声。
のんびりした口調と、硬質な口調が会話を紡いでいく。
- 158: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:58:18.72 ID:QKJP9sTH0
- 「クルトとリトガーの合作っていうのが面白そうだったんだけどなぁ。
まぁ、目的はまったくの逆方向だったけど」
「しかし、マスターはハインリッヒに期待していたのでは?
過去の記録を見るに、当初の貴女はアレを使おうと画策していたようですが」
「ふふ、もう貴女がいるから関係ないよ〜」
「嬉しい限りです、マスター」
「感情って素晴らしいよね?
ハインリッヒにも、そういう心が無いと駄目だと思うよ」
「ですが、アレは世界交差に備えてのリトガーの策です。
感情などというモノは不要かと」
「うんうん、それも解るんだけどね〜……」
- 168: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:00:11.24 ID:QKJP9sTH0
- キィ、と、椅子からか細い音を立てながら片方の女が立ち上がった。
「やっぱり、クルトもリトガーも駄目駄目だよ。
特にリトガーは、私に対抗するためにハインリッヒを起こしたんだと思うけど
そのために必要な生贄に逆にやられるなんて……情けないよねぇ」
「仰る通りです、マスター」
立ち上がった女が部屋から出ようと、扉を開く。
差し込む光によって暗い部屋にいる二人の表情が明らかになった。
从'ー'从「『世界交差』まで残り一年半……楽しみだね、お祭」
川 -川「イェス、マスター」
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