( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

83: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:27:48.04 ID:lv/dT/ug0
  
決意を新たにしたブーンが店の中に入ってから数分。

道路の向こう岸にうち捨てられたような格好のジョルジュは

(;゚∀゚)「なぁなぁ……俺、凍死しちゃうよ? なぁ?」

答える声はない。
しかし、視線を感じた。

見る。

『バーボンハウス』の物陰……そこから、逞しい身体の男がこちらをチラチラ見ているのが見えた。
何だか頬が赤いようにも見えるが――

(;゚∀゚)「……いや、何でこっち見るんだよ。
     ショボンの野郎は呼んでねぇぞ? な? な?」

言葉が聞こえたのかは解らないが、男は寂しそうな表情で去っていった。

(;゚∀゚)「……何か今、人生の大事な分岐点を見事突破したような気がするぜ」

冷たい道路に身を置きながら、ジョルジュがため息を吐くのが聞こえた。



88: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:29:52.84 ID:lv/dT/ug0
  
『バーボンハウス』内のカウンター席。
その奥の方で、兄弟がそれぞれのPCを操っていた。

(´<_` )「どうだ、兄者……他に何か解ったことは?」

( ´_ゝ`)「ふぅむ……いや、これは難しい」

(´<_` )「どうした兄者、助けが必要ならばいつでも俺が力を――」

言いつつ、兄者のPCを覗き込む。
画面には某有名掲示板。
そこにはアドレスが張られた書き込みが――

( ´_ゝ`)「いや、最近目覚めたんで魔法少女系の画像集めてるんだけどさ。
      このアドは本当に信用出来るのか、と……」

(´<_` )「そんなもん」

カチリと、マウスを引っ手繰ってクリックする。
途端、ガガガと音を立てながらPCが振動を始める。

( ´_ゝ`)「OK、ブラクラGET」

(´<_` )「流石だな、兄者――ところで」



92: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:32:06.11 ID:lv/dT/ug0
  
言いつつ弟者がハリセンを背後から取り出す。

(´<_`#)「人が真剣にやっている隣で何を遊んでいる!」

( ´_ゝ`)「落ち着くんだ、弟者。
      というかハリセンでは迫力がないとマジレスしてみる」

(´<_` )「俺達は皆が有利になるよう、更なる情報を得ないといけないのだぞ」

( ´_ゝ`)「いらんだろ、そんなもの」

(´<_`;)「何と! 兄者、アンタは本当に俺の尊敬する兄者か!?」

まぁまぁ、と兄者が嗜める。

( ´_ゝ`)「いくら敵が多かろうが、どんなトラップがあろうが――
      俺達はそれを突破する必要があり、そしてする突破する力もある。
      敵戦力の情報が得れただけでも良しとしろ……おそらくアレはわざと寄越されたはずだ。
      そして次のハッキングは通用しないはず」

(´<_`;)「しかし前情報くらいは――」

( ´_ゝ`)「無理して偽情報つかまされてかく乱されるよりも、ぶっつけ本番で行ったほうが良いときもあるさ。
      それに敵のやりそうなことくらい予想がつくしな。
      俺達はその『やりそうなこと』を予想し、全てに対応出来るようにしておくのが仕事だろう」



94: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:34:26.54 ID:lv/dT/ug0
  
兄者のその意外と真剣な表情に、弟者はつい気圧される。
顎に手をやりながら真剣に考え込み――

(´<_`;)「ふむ……一理あるかもしれん」

( ´_ゝ`)(まぁ、ぶっちゃけ面倒ってのが九割なんだけど)

(´<_` )「兄者、何か言ったか?」

( ´_ゝ`)「いや、何も?
      さぁ、魔法少女捜索の旅に出るぞ!
      俺の戦いはこれからだぜ! 兄者の来世にご期待下さい」

(´<_` )「何か綺麗に収めようと……否、魔法少女の時点で綺麗ではないな」

何か妙に納得したようで弟者はPCに向き直る。
そして、口を開いた。

(´<_` )「そうなると俺も暇だな……そうだ、どちらが魔法少女画像を多くGET出来るか勝負しないか?」

( ´_ゝ`)「ふはは、俺に適うと思ったら――結構適っちゃうんだぜ?」

(´<_`;)「そこは自信持とうな、兄者?」

二人の兄弟は、昔からやっていた遊びのような勝負を始める。
もはや明日の戦いは見えていないのか。
ただの通過点としてしか見ていないのか。
解らぬがしかし、この兄弟愛は何事にも屈しない、という説得力がそこに在った。



95: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:37:48.20 ID:lv/dT/ug0
  
バーの割と広い空間。
そこにはテーブルと椅子が存在し、そこに三人の人影が座っている。
左からツン、フサギコ、ドクオの三人だ。

ξ゚听)ξ「だーから、アンタは別に行く必要ないでしょ?
      どうせこの人達が情報集めて帰ってくるわよ」

ミ,,"Д゚彡「いえ、確かにそうかもしれませんが……」

('A`)(…………)

先ほどからこの繰り返しだ。
ツンが行くなと説得し、しかしフサギコが反論する。

何故、ツンがフサギコをこうも執拗に引き止めるのか。
何故、フサギコはそれに反抗してまで戦いたいのか。

実はドクオにもよく解っていない。
二人には二人なりの考えがあるのだろう、と思いながら菓子を頬張る。



96: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:41:15.60 ID:lv/dT/ug0
  
そんな時だ。

ミ,,"Д゚彡「そういえば――」

思い出したように、フサギコがドクオに話しかける。
どうやらツンの説得から逃げるための策らしい。

ミ,,"Д゚彡「ドクオさんは、指輪をどうやって?」

どうやって手に入れたのか、という質問だろうか。

('A`)「えーっと……言いにくいんスけど……」

頭を掻きながら続ける。

('A`)「あれ……実は買ったんスよ」

ミ;,,"Д゚彡「か、買った……?」

('A`)「俺、アクセサリー類を集めるのが趣味で……中学の頃だったかな。
    ちょっと怪しい露店でこの指輪を見つけたんスよ」

妙で見たことも無いアクセサリーが売ってあって、当時のドクオは驚いた。
これがアクセサリー収集という趣味に加速を掛けたと言っても過言ではないだろう。
その露店で、ふと手に取ったのが――あの指輪だ。

('A`)「普段ならもっと格好良いのが欲しいって思うはずなんスけど……。
   どうも、何か惹き付けられたっていうか……」



98: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:43:46.72 ID:lv/dT/ug0
  
どうやら自分にもよく解らないらしい。

果たして指輪が彼を呼んだのか。
それとも彼が指輪に惹き付けられたのか。
解らぬが、しかし運命じみたモノを感じる、とドクオは一人思う。

それを聞いたフサギコが、少し焦ったような表情で

ミ,,"Д゚彡「重い宿命みたいなものがあると思ったんですが……人それぞれなんですね」

('A`)「そうッスね……それにもしかしたら、俺が一番戦う理由が弱いかもしれねぇッス」

ミ,,"Д゚彡「そうなんですか?」

('A`)「何せ、戦う理由は『ブーンのため』ッスからね」

ミ,,"Д゚彡「己のためではない、と?」

('A`)「俺はブーンみたいに会うべき人もいないし
   ギコさん達みたいな使命感っていうか、そんなものもないし
   流石兄弟みたいに指輪やクルト博士に興味があるわけでもない。
   ……ただ、ブーンが行くっていうなら、俺はそれの手伝いをしたいんス」

ドクオは素直に自分の思いを綴っていく。

ミ,,"Д゚彡「死ぬという可能性もあるんですよ?
      それで死んだり怪我しても、納得出来るんですか?」

('A`)「俺はブーンとクーに命を助けてもらったんスよ。
    だから……借りを返したいっていうか、見捨てて逃げるわけにはいかないっていうか」



101: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:45:36.41 ID:lv/dT/ug0
  
使命感とは違い、しかし使命感に似たような感情だ。
逃げ出したいがやらねばならぬという切迫感……それがドクオを動かしている。

ξ゚听)ξ「そんなの結局自分の都合でしょ?
      嫌ならやめればいいじゃない……誰も文句は言わないわよ、きっと」

('A`)「まぁなぁ……でも、親友を放って自分だけのうのうと生きるつもりはねぇってことだよ」

今のブーンは、精神的に少し危うい状態にある。
それはドクオにも理解出来ていた。
だからこそ支えたい。
心が折れてしまわないよう、邪魔な火の粉は自分が払う。
ブーンには己のすべきことに集中してほしい。

それが、今のドクオの戦いの原動力であった。
弱いけど、頼りないけど……それでも力になりたい。
命を救ってくれた恩人が悩み、そしてなお戦おうという姿勢を見せているのだ。
何の不自由も無い自分がそれを放って逃げて……それでは納得が出来ない。

自分勝手な理由だと思う。
しかし、自分の感情は抑えきれない。
それだけだ。

('A`)「ただ俺は、自分のしたいことをしたいだけ……ッスよ」



108: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:47:41.00 ID:lv/dT/ug0
  
ミ,,"Д゚彡「……しかし、それはとても立派なことだと思いますよ」

('A`)「ハハ、褒めても何も出ねぇッスよ」

ミ,,"Д゚彡「いえ、本気でそう思います。
      私もこの仕事に従事しているので多少理解できますが
      人のために尽くすという行為は、並大抵の覚悟では出来ません」

彼は真剣な表情で語っていく。

ミ,,"Д゚彡「はっきり言いましょう……私は貴方を尊敬します。
      契約された主人のためでもなく、金や名誉のためでもなく……
      ただ友のために、と言い切るのは凄いと思います」

(*'A`)「いや、だから、そんな褒めても――」

と言いつつ、彼の顔は真っ赤だ。
頭を忙しなくポリポリと掻きながら、ひたすら赤面。

ξ゚听)ξ「っていうか、私の話はどうなったわけ?」

ミ,,"Д゚彡「お嬢様」

言葉と同時に、フサギコがマジメな表情でツンに向き直る。
そのいつもとは少し違う、強気な態度に少しツンはたじろいだ。

ξ;゚听)ξ「え、な、何?」



111: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:49:56.47 ID:lv/dT/ug0
  
ミ,,"Д゚彡「戦う理由がもう一つ出来ました。
      私はドクオさんを、そして内藤さんを支え、彼らが進むべき道を作るために戦いたい」

そう語る目は真剣そのものだ。
主のツンでさえ、滅多に見たことが無い表情。

ミ,,"Д゚彡「明日、私は行きます……命令違反で解雇するならば、ご自由に。
      やるべきことを見つけました。
      男として、ここは引き下がれません」

戸惑うツンを見ながら、しかしとフサギコが付け加える。

ミ,,"Д゚彡「しかしもし……明日の戦いで無事に戻ってこれたならば
      もし、その時に貴女の側にいても良いのなら……それ以降はもうワガママを言いません。
      貴女を一生賭けて護り通すことを誓います」

ξ゚听)ξ「フサギコ……」

呆然と見つめる。
まさか自分の部下が、あの彼が、こんな熱い部分を持っていたとは。
これはツンにとって新発見であった。

ξ゚听)ξ「…………」

これは、彼にしか解らぬ覚悟なのだろうか。
自分の立ち入れる世界ではないのだろうか。
そうだとすれば、自分のしていることは焼け石に水なのだろうか。
他に言うべき言葉があるのではないか。

様々な思惑が頭を駆け巡り、そして遂に結論が――



116: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:52:37.31 ID:lv/dT/ug0
  
ξ゚听)ξ「フサギコ」

ミ,,"Д゚彡「はい、お嬢様」

二人は真剣な目つきで相対する。
その様子を、半ばハラハラしつつ見つめるドクオ。
立ち込め始めた緊張の雰囲気を吹き飛ばすように、ツンは口を開いた。

ξ゚听)ξ「もう、私から言える言葉は一つよ」

ミ,,"Д゚彡「……はい」

ツンは一息吸う。
そして、力強く彼に言い放った。

ξ゚听)ξ「生きて帰ること。 それが私からの願いであり……約束よ」

ミ,,"Д゚彡「お嬢――」

ξ゚听)ξ「返事は!?」

ミ;,,"Д゚彡「は、はい! 絶対に生きて戻ることを誓います!」

慌てて敬礼をするフサギコ。

('A`)(執事って敬礼もするんだ……)

その姿を見つつ、何か妙な納得をしたドクオだった。



125: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:55:34.25 ID:lv/dT/ug0
  
日付が変わり、更に朝日が差し込む時間。

もはや『バーボンハウス』に人影は存在しなかった。

空虚な空間。
ただ、カチコチと時計の音が響くのみの空間だ。

内藤ホライゾン、ドクオ、ショボン、ギコ、しぃ、兄者、弟者、フサギコ――

グラニード、ウィレフェル、アーウィン、ミストラン、ギルミルキル、ガロン、クレティウス
ユストーン、レードラーク、ジゴミル、ラクハーツ――

計八名、十一個の指輪が、全ての決着をつけに行った結果だ。
もはやこの空間には後悔など残されてはいない。



126: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:57:56.44 ID:lv/dT/ug0
  
いや――

(;゚∀゚)「…………」

残されている人物がいた。

(;゚∀゚)「なんかフツーに無視されてったけど……今日の食事とか抜きだったりする?」

全身を縛られているのはジョルジュだ。
もはや『VIP』は存在せず、しかしブーン達に味方もしない彼は結局ここへ置いていかれた。
彼の処分は帰ってきてから決めるらしい。

(;゚∀゚)「……腹減った」

呟く。
が、その言葉を聞く人間はここにはいない。

そんな時だ。
突如、バーの扉が開かれる。



133: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:59:49.22 ID:lv/dT/ug0
  
( ゚∀゚)「あ?」

外からの光、つまり逆光で姿はよく見えないが……おそらく男であろう人物が入り口に立っていた。

「おや……誰もいないのかね?」

( ゚∀゚)「だーれもいねぇぜ」

「君は?」

( ゚∀゚)「テメェに名乗る名はねぇんだな、これが」

「ふむ、そうか……で、ここにいたはずの彼らは?」

( ゚∀゚)「あー、何か無謀な戦いに行ったみたいだぜ?」

「それはそれは……少し到着が遅れてしまったようだ。
 私も急がねばならんね」

踵を返し、店から出て行こうとする。
しかしその身を止め、首から上だけを振り返りつつ問う。

「ところで君は……何をしているのかね?」

(;゚∀゚)「見りゃ解るだろ……捕らえられてんだよ」



144: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 23:01:45.80 ID:lv/dT/ug0
  
「結構……では、君はそのままの状態を望むかね?」

(;゚∀゚)「は?」

「行くかね? 私と共に全ての終わりを見届けるために。
 そして優秀作君……君は全ての真実を知る必要があると思うのだが、どうかね?」

( ゚∀゚)「テメェ……何者だ?」

「その問いに答える気はないよ。
 ただ私が得たいのは一つの答え。
 一緒に来るかね?
 それとも皆が帰るまで腹を空かしたまま待ち続けるかね?」

( ゚∀゚)「…………」

「自らここに閉じこもって、真実を得る機会を永遠に失うか……。
 それとも私の力を借り、そして己の目で真実を見るか……選びたまえ」

声は凛とした問いかけとなり、ジョルジュの耳に入る。
彼は思考した。
己のこと、己の対となる失敗作のこと、そして完成品のこと――

( ゚∀゚)「俺は――」

答えは、果たして――



戻る第十八話