( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです
- 163: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:39:44.18 ID:tleOweXb0
- そして、彼はこう続けた。
( ・∀・)「我々は限界を突破しているというのに、君ときたら……」
爪゚ -゚)「ほぅ……」
ジェイルが反応を見せた。
爪゚ -゚)「我の限界と、貴様らの限界を超えた力……果たしてどちらが強いのか」
( ,,゚Д゚)「それを先ほどから比べているだろう」
爪゚ -゚)「その程度なのか、貴様らの限界を超えた力とは」
( ・∀・)「だろうね。 残念ながら私達は君に勝てる方法を持ち合わせていないらしい」
爪゚ -゚)「残念だ……ならば、終わらせよう」
( ・∀・)「そうだね、終わらせようか」
爪゚ -゚)「貴様の命運を」(・∀・ )
- 166: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:42:13.88 ID:tleOweXb0
- 動きは同時だ。
動作の名は疾駆。
片方は鉄槌を構え、走り
片方は四種の武器を構え、走る。
互いの向かう先は互いの敵。
疾駆の途中でモララーが口を開いた。
( ・∀・)「悪いが――人の力は弱くはない」
爪゚ -゚)「ならば言おう―ー人形の力も弱くはない、と」
距離が――
( ・∀・)「感情と――」
爪゚ -゚)「無感と――」
縮まり――
( ・∀・)「どちらが虚しいのだと――!」
爪゚ -゚)「どちらが無駄だのだと――!」
瞬間。
二人の中心点から金属音が鳴り響いた。
- 175: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:44:08.82 ID:tleOweXb0
- 薄暗い廃墟。
その中でブーンは日記帳を読み終えた。
クルト博士の遺した日記。
それは最後まで書かれることの無かったモノ。
( -ω-)「…………」
目を瞑り、天井を仰ぐ。
そして思う。
そうだったんだ。
クーは――彼女の存在の意味って――
だから彼女は――
そこまで思い、目を開ける。
目の前には深い闇が支配する隠し通路。
この先に、おそらくは――
日記帳を懐にしまいながら、足を踏み出す。
もはや迷いは消えた。
( ^ω^)「クー……君はこれを知らなきゃいけないんだお」
そう言い残し、彼は深き闇へと身を歩かせていった。
- 179: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:46:16.21 ID:tleOweXb0
- 目を覚ませば、夜空に三日月が浮いていた。
(*゚ー゚)「う……うぅん……?」
ここは?
自分はどうなった?
そうだ、あの女騎士によって地面に叩きつけられて――
(*´_ゝ`)「大丈夫? お嬢さん?」
(;*゚ー゚)「きゃぁぁぁああぁぁ!?」
(#)_ゝ`)「ごふょ!?」
見事な鉄拳が兄者の頬を捉えた。
鼻血を噴き出しながら、文字通り吹っ飛ぶ兄者。
(;'A`)「し、しぃさん!?」
(;*゚ー゚)「ハァ、ハァ……ご、ごめんなさい……でも、その顔のアップはもはや凶器だと思うの」
(#)_ゝ`)「失礼な……私、これでも顔に自信あるのに」
('A`)(あるんだ……)
鼻血をダラダラと流しながら、ゾンビのようにこちらに歩いてくる兄者。
どう見ても化け物です、本当に(ry
- 187: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:48:35.72 ID:tleOweXb0
- (*゚ー゚)「えっと……今はどうなってるの?」
しぃが周囲を見渡しながら言う。
(;'A`)「あー……あんまり良い状況じゃないッスよ」
指を指す。
その先には――
爪゚ -゚)「…………」
無言で立っているジェイルと
( -∀-)「…………」
その足元にうつ伏せで倒れているモララーの姿。
彼の脇腹からは出血。
それが小さい血溜まりを作っている。
ロステックの姿は指輪に戻っており、傍らに転がっていた。
(;*゚ー゚)「そんな……!」
状況を理解したしぃが絶句する。
(;'A`)「正直、負けるとは思わなかったんスけど……」
ドクオもしぃと同じ気持ちだった。
まさか、あのギコを圧倒した男が一騎討ちとはいえ敗北してしまうとは。
- 193: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:50:47.40 ID:tleOweXb0
- ギコ達に動きは無い。
モララーがやられたことによってショックを受けているのか
はたまた、ただ恐怖しているだけのか。
(;゚∀゚)「おいおい……マジですかよ? ねぇ、マジ?」
(;´・ω・`)「そんな……」
(´<_`;)「俺達の戦力の中では最強を誇ったあの男が……」
口々に言う。
ギコは黙ったまま、ジェイルを睨んでいるだけだ。
そこでドクオは気付く。
ジョルジュ達――特に弟者の口調や台詞に違和感を。
('A`)(何で説明口調なんだ……? これなんて斬?)
爪゚ -゚)「この男が最強だったのか。
なるほど……もはや貴様らに我を倒すことなど出来ぬな」
言葉通りに受け取るジェイル。
倒れたモララーを一瞥。
地を蹴り、巨塔の入り口に陣取るように再び仁王立ちの姿勢に入った。
爪゚ -゚)「これで我の勝ちは決まっ――」
ミ,,"Д゚彡「まだです」
- 206: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:53:31.07 ID:tleOweXb0
- フサギコ。
彼がいつの間にかギコ達の隣に立っている。
その彼に、ギコが前方を睨みつつも
( ,,゚Д゚)「――準備は出来たか」
ミ,,"Д゚彡「はい」
即答。
(´・ω・`)「こっちも仕込みはOKだよ。 後は君の力次第だ」
ミ,,"Д゚彡「任せて下さい……何とかやってみせます」
大鎌――ウィレフェルを構えながら、走り出すフサギコ。
お世辞にも迫力があるとは言えないが――
爪゚ -゚)「右腕、右耳、右目が機能不全――無駄なことを」
対しジェイル構えず、ただただ走ってくるフサギコを見つめるのみだ。
こんな人として不良品の人間が、己に向かってきている。
そういう程度の認識。
その慢心がジェイルの思考を支配していた。
もはやそこにあるのは絶対の自信。
最強と言われていたモララーを倒したことにより、その慢心は更なる上昇を続けていた。
- 215: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:55:41.71 ID:tleOweXb0
- フサギコが迫る。
しかしジェイルは微動だにしない。
彼が持つ大鎌は左手に収められ、そして振りかぶられている。
左――つまりジェイルから見て右側からの斬撃。
彼女の右手には銀光を放つ剣。
先ほどグラニードの一撃を押さえた剣だ。
警戒するまでも無い。
斬撃軌道を予測。
その軌道上に刀身を向け、軽く腕に力を入れる。
これで終わりだ。
押さえた後は、左手に持つ槍で串刺しでいい。
それで残った敵は更なる恐怖を植え付けられるだろう。
恐怖が積まれれば、それはテンションの低下と攻撃意思の剥奪に繋がる。
戦闘とは身体の削り合いでもあるが、しかし精神の削り合いでもある。
それをジェイルは一番理解していた――戦闘人形故に。
ミ,,"Д゚彡「『OVER ZENITH』――!!」
それは限界を突破するための命令。
大鎌から黒い光が発せられ、しかし形も大きさも色も変わらない。
先ほどと変わらぬ姿でジェイルに襲い掛かる刃。
- 223: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:58:04.46 ID:tleOweXb0
- 爪゚ -゚)「限界突破――その力、見せてもらおうか!」
――戦闘人形故に
ミ,,"Д゚彡「ああぁぁぁ!!」
――彼女は解っていなかった。
黒い刃が銀色の刀身に接触し
爪゚ -゚)「!?」
音が無い。
その超高速処理される視界で見る。
大鎌の刃が剣の刀身を紙のように裂いていくのを。
これ、は――
判断が遅れる。
刀身に何も手応えを与えず、遂に黒い刃は刀身を真っ二つに切り裂いた。
次に黒い刃が向かうのは、己の甲冑に包まれた横腹だ。
この甲冑は対ウェポン用の処理が施してある。
よほどのことが無い限りは――しかし――
判断は一瞬だ。
黒き刃が触れる前にその場の離脱を試みる。
- 230: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:00:13.08 ID:tleOweXb0
- 足に力を込めるが――
爪゚ -゚)(しまっ――)
よもや離脱などするわけがないと思っていた故に、脚部への力的操作が行われていなかったのだ。
人間で言うならば、完全に足腰に力を入れていなかった状態。
フサギコ如きが自分に一撃を入れられるわけがないと思っていて慢心故の結果。
この状態からの回避をするには、ほんの一瞬だが隙が出来る。
その隙を、漆黒の鎌『ウィレフェル』は逃さなかった。
ミ,,"Д゚彡「人の力は――決して弱くは無いッ!」
黒い斬撃が――
一閃。
爪゚ -゚)「ッ――!?」
――ジェイルの胴体を両断した。
- 238: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:02:18.08 ID:tleOweXb0
- 上半身が空中を舞い――ドサリと重々しい音を立てて地面に落ちる。
下半身は少しの間立っていたが、主を失った故にバランスを崩してその場に倒れた。
( ゚∀゚)「おっしゃぁ! やりやがった!」
味方勢の一部がワイワイと喜びの声を上げながら近寄ってくる。
(´・ω・`)「今の能力って……?」
ミ,,"Д゚彡「私とウィレフェルが出した結論です。
『切断力の最適化』――
つまり、刃を当てた部分の成分に対して最も的確な――」
( ゚∀゚)「OKOK、何でも斬っちゃうってことだろ?」
ミ;,,"Д゚彡「最悪の言い方をすればそうなりますね……。
ただしウェレフェルや私が知らない物質を斬ることは不可能ですが」
「おや、倒したのかね」
背後から声。
振り向けば
( ・∀・)「いや、わざと油断した甲斐があったよ」
脇腹を押さえたモララーが立ち上がっていた。
フラリとよろめきながらも、こちらに近付いてくる。
- 248: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:04:28.72 ID:tleOweXb0
- (;'A`)「無事だったんスか!?」
( ・∀・)「ははは、私はこれでも演技の達人でね?
会社にただの社員に変装して出社し
『あれれ〜? 社長がいないよ?』ゲームなどよくやったものだよ」
(´<_`;)「もはや何が目的のゲームなのか解らんが、無事ならよかった」
爪゚ -゚)「油断……? 演技、だと……?」
ジェイルの声。
モララー達が集まっている場所から少し離れた所に、彼女の上半身が落ちていた。
そこから途切れ途切れに声が発せられる。
爪゚ -゚)「どういう……ことだ」
胴体を両断されながらも未だに声を発する彼女に、モララーが近寄っていく。
( ・∀・)「君は機械なのだろう?
ならば『予測』は出来ても『想像』は出来ないだろうと思ってね」
爪゚ -゚)「想像……?」
( ・∀・)「私がこの者の中で『最強』……ということにして
そしてその私を倒した君はさぞかし自信を持っただろうね。
戦闘用人形ならば尚更だ。
それが君の生きる意味であり、存在の意味なのだから」
爪゚ -゚)「…………」
- 258: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:06:55.37 ID:tleOweXb0
- ( ・∀・)「私達の目的は、君をあの場から動かさないことだ。
何故ならフサギコ君が何とかしてくれる、と言ってくれたからね」
そして
( ・∀・)「見事に君は、慢心故にあの場から動かなくなってしまった。
この私という最強戦力を下手に倒してしまったからね。
もはや絶対な自信と慢心を擬似精神に得てしまったから君は
故にフサギコ君の限界突破にも危機感を持たなかった……だから回避運動が遅れたのだ」
続ける。
( ・∀・)「要は君の圧倒的な速度を無効化したかったのだよ。
アレがあるおかげで、フサギコ君の攻撃を回避されるかもしれないからね」
爪゚ -゚)「し、しかし――」
( ・∀・)「テンションを削るという作戦は見事だった。 正直やられたよ。
だが、それを逆手に取るという方法もあるということを憶えておきたまえ」
爪゚ -゚)「つまり……私は……」
( ・∀・)「己の慢心故に負けた、ということだろうね。
せっかくの高機能な装備も、それがあるがために力を発揮することは出来なかった」
- 264: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:09:01.01 ID:tleOweXb0
- 爪゚ -゚)「そ――うか――」
( ・∀・)「一時の間、眠りたまえ。
そして君が起きたとき――戦いは終わっているだろう」
爪- -)「――――」
ジェイルの目が瞑られる。
どうやらフサギコの一撃は動力系統も断ち切ったらしい。
それを見届けたモララーは懐から黒い携帯電話を取り出す。
( ,,゚Д゚)「回収するつもりか?」
( ・∀・)「あぁ、もちろんだ。
これ以上興味をそそられる機械人形も、そうそうあるまい」
部下に連絡を取り、人形の回収と修理を依頼する。
一通りの指示が終わった彼は周囲を見回し
( ・∀・)「さて、怪我人はいないかね?」
(#)_ゝ`)ノ「はいはーい」
(*゚ー゚)「私は大丈夫。 ドクオ君が治療してくれたから」
(*'A`)「いや、まぁ……当然のことをしたまでッスよ」
( ・∀・)「他の者も問題ないね?」
- 269: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:11:31.03 ID:tleOweXb0
- ( ゚∀゚)「もちろんだぜ」
(´・ω・`)「耳が切れちゃったけど……これくらい怪我に入らないよ」
(´<_` )「俺も大丈夫だ……ん?」
そこで気付く。
フサギコが膝をついて荒い息を吐いているのを。
(´<_` )「大丈夫か、フサギコさん」
ミ;,,"Д゚彡「ちょっと体力配分を間違えたかもしれません……。
しかし戦えないという状態ではないので大丈夫かと」
( ,,゚Д゚)「苦戦した割には被害は少ないようだな……」
( ・∀・)「皆が等しく努力した結果だよ、ギコ君。
というか、君……今の戦闘で何かしたかね?」
(;,,゚Д゚)「うるさい……次はするさ」
さて、と結論付けたモララーはある方向を向く。
その視線の先には白い巨塔の入り口だ。
( ・∀・)「これで門番はいなくなった。 あとは何も考えずに突き進むのみだね」
- 276: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:13:21.01 ID:tleOweXb0
- ( ,,゚Д゚)「覚悟はいいな?」
(´・ω・`)「ここにいる時点で、覚悟してない人なんていないよ」
('A`)「も、もちろんだぜ」
(*゚ー゚)「行きましょう」
( ・∀・)「先に入った内藤君も心配だしね。
皆、駆け足で行こう」
言葉と同時に九人は駆け出した。
向かう先は『矛盾を世界に発する塔』。
矛盾を止めるために、『かつて』に抗うために、『これから』を彩るために――
- 281: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:15:27.73 ID:tleOweXb0
- 塔内。
本棚の隠し扉を潜ったブーン。
その彼は、延々と続く階段を上っていた。
(;´ω`)(何か無闇に長いお……っていうか、地下に続いてるんじゃないのかお?)
兄者の情報では、そこから地下研究所に行けたらしい。
しかし今、自分はどう見ても上へ上へと上っている。
少し曲がっていることから、どうやら螺旋階段らしいが……。
(;´ω`)(兄者さんいい加減だお……もうあの人のこと、信じられないお)
上り続けてはや数十分。
流石のブーンも、そろそろ体力の限界を感じ始める。
と、ちょっと諦めかけた時だ。
(;´ω`)「いてっ」
疲労で頭を垂れていたため、目の前に現われたドアにぶつかってしまった。
( ^ω^)「おっおっ、とうとう着いたお」
やっと階段地獄から抜け出せる。
意気揚々と扉を開いた。
- 288: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:17:59.28 ID:tleOweXb0
- その先には――
(;^ω^)「おぉ……」
白一色。
床も壁も天井も――全てが白で彩られている。
これが兄者の言っていた『白い通路』なのだろうか。
( ^ω^)「だとすれば、この先にリトガーがいるはずだお」
仲間を待つことも考えられたが、敵がわざわざ自分一人を呼んだことを考えると――
( ^ω^)「行くっきゃないお」
もし一人でリトガーや完成品を倒せたら、それこそ英雄だ。
そんな厨っぽい妄想をしながら通路を歩く。
白。
白白。
白白白。
頭がおかしなりそうな、目が回りそうな光景だ。
自分がしっかりと真っ直ぐ歩いているのか解らない。
背後を振り返る。
先ほどの階段の出口である黒い点が見えることから、どうやら先には進んでいるらしい。
- 298: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:19:47.90 ID:tleOweXb0
- ( ^ω^)「このまま真っ直ぐ――」
前を向いた時。
( ^ω^)「?」
背後を振り返る前には無かったモノが、前方に存在した。
黒い点だ。
いや、あれは――
(;^ω^)「まさか――」
心当たりがあった。
あの黒い点――いや、黒い人影は――
思うと同時、自然と駆け足になる。
黒い人影がみるみる近付いていき――
(;^ω^)「――!!」
遂に、その正体がはっきりと視認出来た。
- 304: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:21:41.12 ID:tleOweXb0
- 黒いロングコート。
腰に差した日本刀。
美しい黒髪。
見間違えるはずが無い。
彼女は――
彼は彼女の名を口にした。
( ^ω^)「……クー」
川 ゚ -゚)「……内藤」
対する彼女も、彼の名を口にした。
白い空間。
遂に二人は出会い、そして――
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