( ^ω^)“ブーン”が閉じ込められたようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 22:35:35.12 ID:AdJh788hP
     



 バタン――



 響く扉の開閉音。







( ^ω^)「.........」
 


 ワカッテマスが部屋から消えたと同時に
 彼はまるで夢から醒めたように、急に意識がはっきりとしてくるのを覚えた。




 ひどい寒気が体中に押し寄せてくる。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 22:39:02.43 ID:AdJh788hP


 急にAAと成り、ブーン小説を書くことを強要されるという,
 ある種物語の主人公となったような状況に興奮を覚え、
 沸き立つ奇妙な浮揚感と高揚感で頭がマヒしていたが、冷静になって考えると、これはとんでもないことだ。


( ^ω^)「俺の居なくなった世界は、どうなったのだろう」



 俺の記憶が正しければ電車に乗っていて、
 ケータイでオムライスを開いた瞬間意識が途絶え、此処にきたはずだ。


 だとすれば、だとすればである。
 俺という存在は元いた世界では一体どうなってしまったというのか。


 俺という存在丸ごと消滅してしまったのか
 それとも‘俺’という意識だけがこのAAの世界にきて、体は元ある世界にそのまま残っているのだろうか


 丁度、植物人間のように、魂亡き抜け殻として


 いや、‘俺’という意識が世界を越えこのブーンの体に居つき、操っているように 
 ブーンの意識が抜け殻と化した‘俺’の体に乗り移り、ブーンが現実世界で俺の体を操っているのはないだろうか



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 22:41:57.30 ID:AdJh788hP
   

( ^ω^)「俺がお前で、お前が俺で」

( ^ω^)「みたいな、感じか」

( ^ω^)「それはそれでちょっと面白いかもな」


 誰に言うでもなく、呟く。


 AAという世界から現実世界に飛び出したブーンが、
 右往左往してなんとか元の世界に戻ろうとする物語。


( ^ω^)「アッ、でもブーンがjojo世界に〜と若干設定が被るか?」


( ^ω^)「いや、あれもそういう設定だったけれども
      メインはあくまでスタンドを用いたバトルであってAA界から現実世界に飛び出したというのは主題ではない」


( ^ω^)「いやいや、でも待てよ
      ブーン系はそういう些細な被りにもうるさい世界ではないか」


( ^ω^)「なら、もろ被りを割ける為にここをああして〜」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 22:45:28.70 ID:AdJh788hP
  
( ^ω^)「……」

( ^ω^)「おれは、この状況で何を考えているのだ」

( ^ω^)「この題材なら、面白いのが書けそう?いけそう?」

( ^ω^)「ブーン小説は、もう止めたのではないのか、俺は」

( ^ω^)「ブーン系関連のサイトはお気に入りから消し、janeもアンインストールし、
      多少他作者と繋がりがあったスカイプやメッセンジャーも消した」

( ^ω^)「なのに、こうだ」


( ^ω^)「少しアイディアが沸くと妄想が止まらなくなって、それで、それで――」

( ^ω^)「.........」

( ^ω^)「ブーン小説は、おれにとって、何なのだ?」


 一拍。


( ^ω^)「麻薬か」

 
 ワカッテマスは、そう言った。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 22:46:58.28 ID:AdJh788hP

( ^ω^)「たしかに、そうかもしれない」

( ^ω^)「麻薬か......今になってそういわれると、どうにもしっくりくるね」

( ^ω^)「同級生は、女の子とよろしくズッコンバッコンしている間に
      俺はなあんの実利もない妄想AA小説モドキにせっせと打ち込んでいるんだものな...ハハハ...」


( ^ω^)「だが、そこでしか得られない楽しさは、たしかにあったのだ」

( ^ω^)「書き溜めをし、投下しようとスレを立てる時のドキドキ感」

( ^ω^)「投下をはじめ、リアルタイムでつく読者からの反応」


( ^ω^)「自分の脳力を振り絞り時間をかけた傑作が、読者のレスと交じり合い1つのスレ、
      作品として完成いくさまを投下しながら画面の前でニヤニヤ見守ったものだ」
                                       

( ^ω^)「そこには、なにもなかったが、他では得られない何かがたしかにあった」

( ^ω^)「だが」

( ^ω^)「だが、それがどうしたというのだ」

( ^ω^)「それが一体、なんだというのだ」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 22:48:00.25 ID:AdJh788hP
   


( ^ω^)「俺はもうブーン系を卒業したのだ」

( ^ω^)「卒業、引退、忘却なんでもよい」

( ^ω^)「おれはもうブーン系を書いてはいけないのだ」



( ^ω^)「いけないのだ、いけないのだから、いけないのだ」


( ^ω^)「だって、俺は、俺は」



 彼は混乱する思考を何とか整えようと、頭を押さえて首をぶんぶんと振った。



( ^ω^)「いや......そんな事いまはドウデモいい、現状を整理しよう」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 22:49:22.64 ID:AdJh788hP
   

( ^ω^)「ワカッテマスっは言った」


 此処はAAの世界である


 と。



( ^ω^)「ワカッテマスは言った」


 そのAAの世界に作者である君を連れてきた



 と。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 22:50:31.72 ID:AdJh788hP
  

( ^ω^)「何の為に?」


 己にブーン小説を書かせる為に




( ^ω^)「何故だ?」


 しかし、ワカッテマスは答えなかった
 ただ、お前はブーン小説を書けばよいのだ、と言った。


( ^ω^)「いったい何故」


( ^ω^)「何の為に」


( ^ω^)「そして」

( ^ω^)「何故、おれが」


 天井に向かって、声を放つ。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 22:58:17.97 ID:AdJh788hP


( <●><●>)「おや、お書きになられていなかったのですか」


 思考を遮るかのように、声が一つ。

 面を擡げ辺りを見回すと目に入ったのはワカッテマスの大きな黒い目。
 手に大きなトレイのような物を持ち、いつの間にか部屋の中に居た。


( <●><●>)「お書きなさいと仰ったのに、まったく貴方は...」


( ^ω^)「また君か」



( ^ω^)「.........これは?」

( <●><●>)「差し入れですよ、差し入れ、みてわかりませんか?」

( <●><●>)「オムライスにコーラにメロンに......ホラ、たくさんあります、
        すきっ腹では名作は書けないでしょう、ささっ食べてください」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 23:27:49.62 ID:AdJh788hP

( ^ω^)「ふうん、AAの体でもお腹は減るんだね」

 差し出された食べ物を前に、
 思い出したかのようにグウと鳴ったお腹をさすりながら一言。


( <●><●>)「基本的に」

( <●><●>)「此処では、食べ物を無償支給致しません」


( ^ω^)「ほう?僕に死ねと?」

( <●><●>)「いえ、条件があるのです」

( <●><●>)「昔の人は言いました」

( <●><●>)「働かざるもの食うべからず」


( <●><●>)「つまり、そういう事です」

( <●><●>)「私たちは、貴方に作品を書いてもらう為にこの世界に呼びました」

( <●><●>)「貴方が書いた作品に応じて、食べ物を支給させていただきます」


( ^ω^)「作品に応じて......何か詳しい条件でもあるのか?」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 23:29:19.99 ID:AdJh788hP
  
( <●><●>)「貴方もご存知の通りブーン系のまとめサイト・ブログさんは、
      食べ物の名前が、多いのですよ」

( <●><●>)「ここでは、総合まとめは省かせて頂きますが......」

( <●><●>)「まとめられた際まとめられたまとめから連想される食べ物を配布いたします」

( ^ω^)「ナスビの懸賞生活みたいなノリだね」

     
( <●><●>)「オムライスは、いうまでもなく」

( ^ω^)「マアネ」


( <●><●>)「ブーン・ゲイは性的な意味で」

( ^ω^)「掘られるぞ、お前」


( <●><●>)「内藤エスカルゴは、エスカルゴ」

( ^ω^)「高級だときくけど、蝸牛は食べる気しないなあ」


( <●><●>)「花束 は花束」

( ^ω^)「たしかに食べれるかもしれないケド…」
      「それって食べ物と云うのかい?」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 23:30:35.88 ID:AdJh788hP
   

( <●><●>)「ブーン速。はまとめ人がくだもの」

( ^ω^)「無駄に高級だ」


( <●><●>)「蛇屋は、蛇」

( ^ω^)「毒があるとやだなあ」


( <●><●>)「7xは秘匿されているコーラの香料7Xからコーラ」

( ^ω^)「炭酸はあまり好かないんだけどね」


( <●><●>)「別府さんは別府温泉から温泉卵」

( ^ω^)「半熟って感じ」


( <●><●>)「フェスティバロスさんはその祭りのイメージから夜店によくでるタコ焼きにします」

( ^ω^)「安易だなあ」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 23:34:05.49 ID:AdJh788hP
   
( ^ω^)「まあ.......食べ物の話はそれくらいでいいよ、俺はそこまで食いしん坊じゃないしね
      丁度、考えてたところなのだ、一つだけ聞いてもいいかい?」

( <●><●>)「……なんでしょう」



( ^ω^)「キミはAAであるワカッテマスをこの世界とは別にあると
       認知したような言い方を、先程していたね」

( <●><●>)「そうですね」

( ^ω^)「此処は、キミ達、AAの世界なのはわかった」
      「それとは別に、もう一つ疑問がある」



( ^ω^)「僕ら作者が書いた“物語”を演じなくてもいい」
     「キミらが自由によろしくやってる」「世界なのかい?」

( <●><●>)「そうですね」「無数にある、次元の一つ」
      「その中の、少し特異な一つ」
     
      「貴方方から見た、我々AAの世界だと思っていただければ」
       「それで差しさわりないかと思います」



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 23:36:12.65 ID:AdJh788hP
   
( ^ω^)「と、いう事はここの君はAAではあるが
      作者に操られている訳ではないと?」

( <●><●>)「………」

( ^ω^)「チェッ、沈黙かい」
      「答えに詰まるとすぐそれだよ」
      「ずるいなあ」「ずるいよ、きみはまったく」


( <●><●>)「質問は、一つと仰ったじゃありませんか」


( ^ω^)「たしかにそうだけどさあ、そうだけどさあ」

( <●><●>)「貴方はたしかにひとつと言いました」
       「私には」「わかってます」「わかってます」

( ^ω^)「チェッ、難点を殊更言い立てるやうなキミは、今に顰蹙を買うぞ?」


( <●><●>)「別によいですよ」「貴方に、なら」


( ^ω^)「……」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 23:36:56.07 ID:AdJh788hP
    
( ^ω^)「じゃ、もうひとつだけ」「こたえておくれよ」
     「なあいいだろう」「キミの云うとおりブーン小説を書くからさ」
     「とびっきりのを、さ」


( <●><●>)「……なんでしょう」

( ^ω^)「ブーン小説に、自分たちが出ているという自覚があると云うのなら」
      「今、目の前にいるきみ」
      「ワカッテマス」「は」
   
      「僕が以前作品で使った事のある」
      「ワカッテマス」「や」
 
      「他作者さんの書いた…」「例えば、そうだな」
      「抗い護るに出ていた、秩序なんとか者のキミだったり、アルファの若き天才だったり」
      「したキミ」「と」
      「同一人物なのかな」「ちょっと、変な質問だけどさ」

( <●><●>)「フウム」「フウム」
        「成程」
        「ブーン小説作者らしい質問ですね」

        「いいでしょう」
        「端的に云えば 同一人物であると同時に、それらの私とは、別人です」

( ^ω^)「……云ってる意味がよくわからないなあ」
      「噛み砕いて、教えておくれよ」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 23:38:00.99 ID:AdJh788hP

( <●><●>)「夢のようなものだと思って下さい」
       「夢で見る、あなた自身は」「あなた自身であって、あなた自身ではないでしょう?」

       「夢から覚めた後は、夢の内容を思い出そうとしても、鮮明に思い出せない」
       「そこに、確かに貴方はいた」

       「が」

       「醒めた後には」「ふわふわとした現実味のない」「記憶だけがのこり」
       「本当に体験したかどうか定かではなくなってしまう」

       「夢とは、そういうものでしょう?」


( ^ω^)「フム」


( <●><●>)「それと同じですよ」
      「私も抗護に秩序守護者として活躍していた記憶もありますし」
      「アルファベットでベルベットとして、生きた記憶もあります」
      「陽炎といってもいいほど」「朧げであいまいでか弱いですが、ね」

      「この世界の私からは、それらが物語の中の私だと確信を以て言えますが」
      「それぞれの物語に居た時は、
       作者に定められた役を演じてるなどおもいもしませんでしたでしょう」「きっとそうです」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 23:40:59.82 ID:AdJh788hP

( <●><●>)「そして私は先程、この世界は」
       

( <●><●>)「わたしのようなAAでも、他の物語に身を投じる自分をある程度客観的に見れ」
        「さらに」「この世界では、自由意志の元動いているといいました」

( <●><●>)「いいました、が」

( <●><●>)「わたしは、この世界も、このお話も」

( <●><●>)「“そういう風にデザインされた”お話だと思っているのです」

( ^ω^)「そういう風に......どういう事だ?」


( <●><●>)「作者の台本から解放され、演じさせられていたのに気付き、自我を持つに至った」


( <●><●>)「という設定のお話を演じている最中なのです」「きっと」


( <●><●>)「所詮、わたしたちはAAです、AAなんです」

( <●><●>)「誰かの妄想を、演じ」「形にするだけの為に生まれたのです」

( <●><●>)「きっと、こういう事を思い、今話しているのも」「台本に準じているのです」

( <●><●>)「私は、そう思います」



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 23:47:05.88 ID:AdJh788hP

( ^ω^)「......」


( ^ω^)「きみは、君たちAAは」
 
( ^ω^)「それでいいのかい?」

( ^ω^)「くやしくは」「ないのかい?」

( ^ω^)「僕たち作者の手によって生まれ、生まれた後も僕たち作者の都合で好きに動かされ」

( ^ω^)「一切の自由もなく、ただ演じさせられ、見世物にされ」

( ^ω^)「それでも尚、それをすべて受け入れている、と?」

( ^ω^)「悔しいとは、思わないのか?」

( <●><●>)「思わないですね」

( <●><●>)「台本を与えられ」

( <●><●>)「未来が決まっているからこその」「自由もあるのです」

( <●><●>)「私は、そう思います」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 23:50:17.37 ID:AdJh788hP


( <●><●>)「それに」

( <●><●>)「私達AAから見れば、確かに貴方達作者は神に等しき存在ですが、
        貴方方、作者、人間にも、いるじゃあないですか」

        「貴方達の、神がね」


( ^ω^)「其れが、どうしたんだい?」


( <●><●>)「貴方達作者だって、我らAAと同様に」
        「貴方達の神に運命という台本に操られてるにすぎないんじゃないですか?」

        

( ^ω^)「僕たち作者、人間も、そうだというのか?」

( <●><●>)「ええ、そう思います」

( <●><●>)「私から言わせれば、何をもって自由とするのかがワカリマセン」

( <●><●>)「貴方が、実際一切何の関与も受けず、操られてなく
        自由意思の元生きていると証明できますか?」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/30(木) 23:54:46.58 ID:AdJh788hP
( ^ω^)「それは...」

( <●><●>)「結局は、同じ事なんです」

( <●><●>)「きっとそうなんです、私には」「ワカッテマスワカッテマス」

( ^ω^)「……正直、君のいう事がよく理解できないね」

( <●><●>)「理解できなくてもいいのです」

( <●><●>)「もし、理解したいのであれば」

( <●><●>)「お書きなさい」
       「もっともっと」「お書きなさい」

( <●><●>)「ブーン小説をお書きなさい」

( <●><●>)「“世界”を創り上げるのです」

( <●><●>)「こうして、話をすることは私でもできます」

( <●><●>)「が」

( <●><●>)「私がブーン小説を書いたとしても」「それは、なんにもなりません」

( <●><●>)「そこに“世界”なんぞ、生まれません」

( <●><●>)「貴方達作者の妄想をもってして、初めてAAの世界は生まれるのです」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/01(金) 00:02:00.76 ID:ue8+9oZpP
  
( ^ω^)「世界を…創る?」

( ^ω^)「それが……僕を呼んだ…理由なのかい…?」

( <●><●>)「……」

( ^ω^)「チョットまてよ…“世界”を創れ?」

( ^ω^)「意味がわからない」「ぼくはただ」「書きたい話があって」
     「そして、聞きたい人もいて、それでそれで……」

( ^ω^)「でも、叩かれて俺は嫌々......」


( <●><●>)「叩かれて、じゃないでしょう?」

( ^ω^)「え?」

( <●><●>)「貴方がやめたホントウの理由、私知っているんですよ?」

( ^ω^)「ホントウの理由……それは一体…」


( <●><●>)「……」

( <●><●>)「見込んだとおりです」

( <●><●>)「あなた、ここに呼ぶまでもなく、閉じ込められていたのですよ、ブーン小説に」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/01(金) 00:08:37.36 ID:ue8+9oZpP
  

「ホントウの理由………ホントウの理由って…?」


 呟きながら天井を見上げると、先ほど露消えた月がまた姿を現していた。
 雲一つかからずに、こちらに月光を投げかけている。

 暗闇の中、彼が居る場所にだけスポットライトを浴びたかのように集う青白い燐光。

 その禍々しく、やわらかい光の粒子一粒一粒に魔が潜み
 怪しげな月光に身を晒すたびに血球のひとつ血漿の一滴にいたるまで魔に犯され

 狂気に犯されてしまうのではないか、と幼い頃は怯えていたものだ。


 だが、今はどうだろう。


 何もかも以前居た世界とは異なるこの世界。
 然し、‘アレ’は元居た世界と変わらずに
 怪しさと柔らかさを持って、この世界でも己を睨みつけているではないか。



 唯、不変

 然し、不変。



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/01(金) 00:12:32.52 ID:ue8+9oZpP
   

 思考の揺らぎとあわせるように

 ゆらゆらとゆらめく月光を浴びて、
 荒れ果てている部屋にある記号の壁に、魔物を思わすような自分の黒い影が伸びたり縮んだりする。

 そんな様を彼は横目で追いながら


 彼はボンヤリと考えた。

 このスレが

 ホントウに現実世界から俺がブーン小説に書かされにここまできたのかもしれない可能性

 どこぞの誰かがブーン小説作家がブーンに成ったという設定でこの物語を書いているかもしれない可能性

 ずうっとどちらか考えていたのだが、結局どちらでも同じなのだ。
 前者の場合脚本を書いているのが神であって、後者の場合ブーン系作者である。

 ただ、それだけの事
 いや、こう考えることすら台本にあるのではないか

 俺があんな事をしたのも、どこぞの誰かが台本に書いたからではないか

 そうだとしたら、これはもう仕方ない、
 矢張り、俺は被害者であったのだ。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/01(金) 00:15:00.98 ID:ue8+9oZpP
     

「運命か、いや台本かもしれない」


「どちらでも、いっしょだ」「同じ事だ」


「運命と云う奴はいつでも罠を仕掛けて待ってやがるんだ、それが人生だ」


「それで」

 月の様子を審かりながら云った。


「その罠にかかる人が、つまり不幸と云う訳なのだな」

 そうして、深い溜息をついた。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/01(金) 00:19:44.79 ID:ue8+9oZpP
 

 そこまで考えを進めたと同時に
 唐突に恍惚が押し寄せた。射精の快感に、少し似ている。

 しかし、逆だ。


 何かを吐き出す悦びではない。
 これは、この快感は、全く真逆の、被虐の悦び。


 どこに、はあまり関係ない。
 だれに、もあまり関係ない。

 閉じ込められている。


( ^ω^)「人は誰でも、閉じ込められているんだ」


 台本にあるセリフなのか、自分の意思で言ったセリフだったのか。
 彼本人すら知りえない言葉を吐いたあと



 彼は、筆をとった。
 

                                  〜終〜



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