( ・∀・)モララーのクリスマスはとんでもないようです
- 3: ◆BYUt189CYA :2006/12/25(月) 20:53:40.31 ID:rBNb9hRU0
- ある都市がある。
高層ビルが立ち並び、都会というイメージがぴったりな都市。
その高く並ぶビルの中に一際大きな建物があった。
看板にはこう書かれている。
武力会社
『フィーデルト・コーポレーション』
個人の正義は我々が代弁します。
社長室。
簡素な作りであるが高級感を同時に醸し出す空間。
その最奥。
机にしては巨大な物体。
傍らにある社長椅子に、ある人物が座っていた。
( ・∀・)「…………」
モララー。
フィーデルト・コーポレーション(=FC社)の若き社長だ。
- 5: ◆BYUt189CYA :2006/12/25(月) 20:54:58.20 ID:rBNb9hRU0
- 彼は今、とにかく暇であった。
午前中は
『ダンボールに隠れて一階から最上階まで社員に見付からずに移動する』ゲーム
に熱中して退屈は忘れられたものの
午後は何も思いつかず、ただただ座ってテレビを見ていた。
( ・∀・)「暇だね、これは」
今日何度目の台詞だろうか。
モララーの傍らに静かに立っているジェイル(修理中なので上半身だけ)は思う。
爪゚ -゚)「御主人様、暇なのなら御仕事をすれば良いかと」
( ・∀・)「今日はクリスマスだよ、ジェイル君?
皆が幸せな時に、何故に私が仕事をしなければならないのだね?」
爪゚ -゚)「社長ですから」
( ・∀・)「ははは、冗談を」
爪゚ -゚)(……冗談なのか)
会話が途切れる。
またもや暇になったのか、モララーはチャンネルを適当に変えていった。
- 6: ◆BYUt189CYA :2006/12/25(月) 20:56:07.95 ID:rBNb9hRU0
- と、その時だ。
( ・∀・)「ん?」
あるチャンネルでリモコンを持つ手が止まる。
(V) ∧_∧(V)
ヽ(^ヮ^)ノ 『はい、こちら『都市ニューソク』の中央通りです』
女性(?)リポーターが映っている。
その背景には、少々の見覚えがある『都市ニューソク』。
蟹型のリポーターは更に言葉を続けた。
(V) ∧_∧(V)
ヽ(^ヮ^)ノ 『えぇ、こちらもクリスマス一色ですね!
何処も彼処もクリスマス一色ですね!』
( ・∀・)「ふむ……」
(V) ∧_∧(V)
ヽ(^ヮ^)ノ 『あ、見て下さい! サンタクロースです!』
声と共にカメラが動く。
その視点の先には、赤い衣装を身につけ大きな白い袋を背に負う男。
紛れも無くサンタクロースだ。
突如として現われたその男は、いやらしい笑みと共に子供達の方向へ歩き出した。
それに気付いた子供達が嬉しそうに走り寄る。
対して赤い男は、やはりいやらしい笑みと共に袋の中のプレゼントを配っていく。
そんなクリスマス以外に例え様のない光景。
- 7: ◆BYUt189CYA :2006/12/25(月) 20:57:17.96 ID:rBNb9hRU0
- ( ・∀・)「成程……夢を配る、ね」
モララーがテレビを見つつ、顎に手をやった。
( ・∀・)「ジェイル君、私の会社の基本営業内容は何かね?」
爪゚ -゚)「軍隊・警察などからの要請に対して武力・兵力を貸し出すことかと。
それに加えて最近は、新たな武器・防具・兵器を開発しております」
( ・∀・)「うむ、そうだね」
椅子を回す。
背後のジェイルの方へと向いた彼の目は輝いていた。
( ・∀・)「ならば、今日くらいは人に銃弾ではなく夢を与えるのも良いとは思わないかね?」
爪゚ -゚)「いえ、ですから御仕事は――」
( ・∀・)「夢を与えるのが今日の私の仕事だよ」
何ともぶっ飛んだ理論である。
あまり主に強く言えないジェイルは、諦めて沈黙に入った。
それを見て満足したのか、モララーは側にある社内用電話に手を掛ける。
- 8: ◆BYUt189CYA :2006/12/25(月) 20:58:22.77 ID:rBNb9hRU0
- ( ・∀・)「私だ、私。 詐欺ではないよ、はははははは。
仕事? あぁ、私は今から重要な仕事をするのでね。
ちょっと衣装を準備してもらいたい」
爪゚ -゚)(……衣装?)
( ・∀・)「クリスマスに着る、あの赤い衣装だ。 髭があると嬉しいね。
あとプレゼントを準備したまえ……あぁ、適当で構わん。
十分後に取りに行くから任せたよ」
受話器を置く。
そのまま勢いよく立ち上がったモララーの表情は、紛れも無く輝いていた。
( ・∀・)「今日の私はサンタクロースだ!」
- 9: ◆BYUt189CYA :2006/12/25(月) 20:59:31.77 ID:rBNb9hRU0
- 夜天。
星が輝く空。
天気予報では雪が降るらしいが、未だその気配は無い。
都市ニューソク。
それがこの土地の名だ。
FC社の在る都市の隣に位置している。
( ・∀・)「到着だ」
赤い衣装に身を包んだ彼は、人気の無い道路のど真ん中で満足そうに頷いた。
頼んだ髭は残念ながら無かったらしい。
傍らにはソリ。
そしてその先には――
爪゚ -゚)「何故、私まで……」
上半身だけジェイルだ。
その下半身は見事な四本足。
つまりトナカイ……型の機械である。
- 11: ◆BYUt189CYA :2006/12/25(月) 21:00:46.23 ID:rBNb9hRU0
- ( ・∀・)「やはりサンタクロースと言えばトナカイ&ソリだろう?
本物を用意しても良かったのだが
あまり個人の行動に会社の金を使うなと社員に怒られていてね」
爪゚ -゚)「そうですか」
(このトナカイ型の脚部に、金は掛からなかったのだろうか……?)
( ・∀・)「さて、行こうか……皆に夢を配るために!」
ソリに飛び乗る。
その後部には大きな白い袋。
夢が詰まった、言うなれば夢袋だ。
それに視線を向け、満足そうに頷いた彼は手綱を握る。
( ・∀・)「出発!」
爪゚ -゚)「把握」
シャンシャン、ズルズル
ズルズル、シャンシャン
言うまでもないが飛ぶわけが無い。
実にのんびりと地面を削りながら、若きサンタクロースは移動を始めた。
- 12: ◆BYUt189CYA :2006/12/25(月) 21:01:59.27 ID:rBNb9hRU0
- ある小さなアパート。
まずサンタクロースが向かった場所はそこだ。
情報によれば、ターゲットは三階部分にいるはず。
( ・∀・)「っ!」
鉤爪付きのロープを投げる。
金属音が響き、三階のベランダへと引っかかった。
( ・∀・)「ではすぐに帰ってくるからね」
爪゚ -゚)「警察に見付かる前にお願いします」
ははは、と軽快な笑いを残して登り始めるサンタクロース。
( ・∀・)「ふ、ふふ……こういう遊びは小学生以来かね……っ!」
自らの体重と夢が詰まった袋を支えながら、順調に登って行く。
その姿は間違ってもサンタクロースを髣髴とはさせなかった。
何とか三階へ辿り着く泥棒、もしくはサンタ。
明かりがついてた。
気配を消して部屋の内部を伺う。
- 13: ◆BYUt189CYA :2006/12/25(月) 21:03:36.59 ID:rBNb9hRU0
- ('A`)「あー、やっぱクリスマス特番っつっても微妙だな」
ドクオ。
風呂上りなのか、タンクトップ一枚でリビングに座っている。
手にはジュースとスナック菓子。
どうやら彼は彼なりにクリスマスを楽しんでいる様子である。
寝ていない。
それがモララーを悩ませた。
サンタクロースとは、寝ている子供の枕元にプレゼントを置くものだ。
朝になってそれに気付いた時の感動は子供の頃にしか味わえない。
少なくともモララーと作者は、その理論を絶対だと思っている。
( ・∀・)(まったく……子供は早く寝ないと駄目だろう?)
高校生相手にそれを言っても無駄である。
とりあえず勝手に侵入して、彼の寝床にプレゼントを置いておこうかと考えた時。
('A`)「あーあ……ツンは誘いに乗ってくれなかったし……。
今年も一人ですかー、つーまーんーねー」
( ・∀・)(…………)
('A`)「サンタクロースはいねぇのかぁ?
もしいるんだったら、俺に女という幸せを下さいー」
気だるそうに呟くドクオ。
むしろ家でそんな独り言を呟いている光景は、ある意味危険なのだが
モララーにはそんなことどうでもよかった。
- 15: ◆BYUt189CYA :2006/12/25(月) 21:05:06.34 ID:rBNb9hRU0
- ( ・∀・)(女という幸せ、かね……)
深い問いだ、と思う。
そもそも女とは統一されているわけではない。
性格の良いのもいれば、悪いのもいる。
外見だって人それぞれで、しかも年齢によっても変動するだろう。
( ・∀・)(ドクオ君……君は意外と哲学者なのだね)
うんうん、と頷くモララー。
そして背後の袋からゴソゴソとプレゼントと取り出した。
『つよきす』
パッケージにはそう表示されていた。
( ・∀・)(哲学者である君は頭が硬いのだろう。
だからこういう軟派なゲームをやってみるのも一興。
それに女の子がたくさん出てくるから一石二鳥だと思うよ?)
さて、問題はどうやって渡すか。
このまま侵入して置いておくのもサンタらしいとは思うが
相手はあのドクオだ。
彼が普通の置き方で満足するだろうか?
( ・∀・)(否……ッ!!)
彼は望んでいるはずだ。
非凡という現象を。
- 16: ◆BYUt189CYA :2006/12/25(月) 21:06:34.58 ID:rBNb9hRU0
- 思うや否や行動。
つよきすを袋に直して
引っ掛けてあるロープを掴み、一直線に地面へと降りる。
爪゚ -゚)「終わりましたか?」
( ・∀・)「これからが始まりだよ」
先ほどのつよきすを取り出す。
一枚の紙を用意し、『めりーくりすます』と適当に書いた。
それを張ったプレゼントを手に持ち、思い切り振りかぶる。
( ・∀・)「ふっ!!」
短い気合の声と共に投擲。
それは軽い放物線を描きながら三階部へと飛んで行き――
がっしゃーん
「おぉわ!? な、何だ!?」
ガラスをぶち破る音。
そしてドクオと思われる男の悲鳴。
- 20: ◆BYUt189CYA :2006/12/25(月) 21:08:02.37 ID:rBNb9hRU0
- それを聞いたモララーは満足そうに
( ・∀・)「ミッション完了……さっさと逃げよう」
爪゚ -゚)「……了解」
シャンシャン、ズリズリ
ズリズリ、シャンシャン
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