( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 83 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:09:20.80 ID:5yr5SZ550
- 第二話 『襲撃 Ver/Dusk』
五時三十四分。
そろそろバーボンハウス『昼バージョン』が終わりになろうという時間。
カランカラン、と音を立てて喫茶店の扉が開かれた。
(´・ω・`)「ようこs――あ、お帰り」
(´<_` )「ただいま」
入ってきたのは客ではなく、黒いショルダーバッグを持った双子の兄弟だった。
( ゚∀゚)「おいおい、時間ギリギリじゃねぇか。
何処で油売ってたんだ?」
(*´_ゝ`)「うふふ、それは秘密」
( ゚∀゚)「キメェwwwww」
帰ってきた弟者は、すぐに店の奥にある専用のテーブルを陣取る。
ノートPCを開き、ケーブルを接続。
そのまま作業に没頭し始める。
対して兄者は、手を離せないであろう弟のために
バーボンハウス『夜バージョン』のための準備を始めた。
- 86 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:10:11.51 ID:5yr5SZ550
- (´・ω・`)「何か作業があるんなら、今日は休んでもいいんじゃない?」
( ´_ゝ`)「そういうわけにもなぁ……店をフル活動させても四人分の生活費ギリギリだし」
( ゚∀゚)「テメェが人一倍食うからじゃねぇか?」
(´・ω・`)「それは君だよ」
蝶ネクタイを緩めながら
(´・ω・`)「さて、後は流石兄弟さんに任せて……僕は寝るとするよ」
( ゚∀゚)「メシはどうすんだ?」
(´・ω・`)「とにかく眠い。 食事は朝にするよ」
欠伸を一つしながら、ショボンは店の奥へと消えていった。
- 89 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:11:03.23 ID:5yr5SZ550
- 欠伸を一つしながら、ショボンは店の奥へと消えていった。
( ´_ゝ`)「随分疲れてそうだな……お前、ちゃんと手伝ってる?」
( ゚∀゚)「確かにアイツはいけ好かねぇが、メシのためなんだからシッカリ働いてるぞ」
( ´_ゝ`)「お前のシッカリってのはどの程度だ」
( ゚∀゚)「適当に」
( ´_ゝ`)「お前最悪だな」
( ゚∀゚)「テメェに言われたかねぇよ」
(´<_` )「どっちもどっちだろ」
( ´_ゝ`)「「…………」」(゚∀゚ )
ガシリ、と肩を抱き合う二人。
こうしてバーボンハウスは、その表情を変えていく。
昼の喫茶店から、夜のバーへ。
- 91 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:12:14.54 ID:5yr5SZ550
- 「あ、社長」
『都市観察課』という札が掛かった大きな部屋。
デスクが並び、様々な服装の人間が忙しそうに仕事をしていた。
モララーがその部屋に入って丁度五秒。
やはり忙しそうに資料を持って歩いてきた部下に、ようやく気付かれた。
( ・∀・)「やぁ、頑張っているかね?」
「え、えぇ……見ての通りですが」
( ・∀・)「それは良かった。
良かったついでに、一つ頼まれ事を受けて欲しいのだが……」
「解りました。 では総括長を呼んできます」
慌しく駆けていく社員。
その後姿を見るモララーが『転べ転べ』などと思っているとは露知らず。
- 92 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:13:30.21 ID:5yr5SZ550
- しばらくして、髭を生やした総括長がやってきた。
|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「おや社長、騒がしい部屋ですがどうぞどうぞ」
( ・∀・)「やぁ、ポリフェノール。
相変わらず顔が大きいね」
|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「ほほほ、社長こそ相変わらず偉そうですな」
二人は起業当初からの仲であった。
他の者ならば恐れて言えぬことを、お互いに言い合えるほど。
部下の働き振りを目に入れながら応接エリアへと先導される。
|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「さて、社長自らの頼みとなると……相当に大きな仕事ですかな?」
( ・∀・)「いや、別に。
これはまだ確証を得ていない――というか、得てもらうための仕事だ」
|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「成程。 まだ部下達には知らせられない情報、と」
( ・∀・)「物分りが良くて助かるよ。
では、適当にコレを探してきて欲しい」
懐から一枚の紙。
そこには渡辺の顔が写っていた。
- 93 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:14:35.30 ID:5yr5SZ550
- |;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「ふむ……社長の好みでは無さそうですが?」
( ・∀・)「ははは、それも問題だね。
いや、別に好みじゃなくて面倒だから君に頼むわけじゃないよ?」
|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「ほほ、解ってますって」
渡辺の顔部分をモララーの方へ向けながら
|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「では、この女性の居所を探すということでよろしいですね?」
( ・∀・)「出来れば行動パターンや何をしているのか、も解れば尚良い。
だが決して無茶はしないでほしい。
この会社の業務に見合うような人材をスカウトするのも大変なのでね」
|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「では慎重に、かつ確実な調査を」
( ・∀・)「方法などはそちらに任せるよ。
だが憶えておきたまえ。
私は良い報告しか待っていないことを、ね」
|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「了解しました」
- 94 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:16:05.64 ID:5yr5SZ550
- 写真を渡して部屋を出たモララー。
その出入り口の傍らで待機していたのは
爪゚ -゚)「御主人様、今日の御仕事です」
女性用スーツを着ているジェイルだ。
その華奢な両手に抱えているのは大量の紙束。
モララーはそれを一瞥し
( ・∀・)「ふむ、私は忙しいのでジェイル君に任せる」
爪゚ -゚)「解りました」
言葉と共に胸部が展開。
開いた暗闇の中に紙束を詰め込んだ。
明らかに容量オーバーに見えるも、紙束は闇へと流れるように消えていった。
( ・∀・)「……中は空洞なのかね? それとも四次元?」
爪゚ -゚)「秘密です」
( ・∀・)「ふふふ、いつか胸部をじっくりと見てみたいものだね。
胸部だよ胸部……ついでにサイズも……ふふふふふ」
ジェイルは無視をした。
( ・∀・)「いつの間にスルーなどという高等テクニックを……出来れば夜の方のテクも――」
ジェイルは更に無視をして、更には主人を置いて歩いて行ってしまった。
- 95 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:17:40.45 ID:5yr5SZ550
- 「兄者さーん、こーんばーんはー」
( ´_ゝ`)「おーう、らっしゃーい」
ここはバーボンハウス『夜バージョン』だ。
昼に比べ明かりを削っており(ただ単に電気代節約のため)
怪しい雰囲気を醸し出している。
来る客のほとんどは兄者目当てだ。
何故なら実はこの間抜けに見える兄者、意外と頭の回転が速い。
カウンターに居座り、愚痴や相談を持ちかける相手を
なんと三人ほどまで同時に相手をすることが可能なのだ!
(´<_` )(まぁ、元々が俺より頭良いしなぁ)
「聞いてくれよ兄者さん。 俺の上司ったらさー」
( ´_ゝ`)「辞めたらよくね?」
「鬼才現る!」
(´<_`;)(むしろ客が馬鹿過ぎて兄者の頭が良く見えるだけか……?)
- 96 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:18:45.74 ID:5yr5SZ550
- いつもなら、そのとんでも発言に突っ込むのが弟者の仕事だ。
兄者の奇抜な案と、弟者の普通な案。
それらを聞いた客は自分が構ってもらえたと思い、満足そうに帰っていくわけだ。
しかし今日の弟者は、いつものテーブル席を陣取ってPCを操っている。
クルト博士の情報を探るために。
(´<_` )「ふーむ……」
顎に手をやり考える。
ネットを駆使して出てくる情報は、やはり外面的なものばかりだ。
今知りたいのは内面情報。
彼がブログなどをやっていればヒントくらいは得られただろうが
残念ながら、それは存在しない(当たり前だが)。
(´<_` )「やはり研究所をちゃんと調査しないと駄目、か」
前回の戦いの後、あの白い巨塔は取り壊されていた。
銃弾などで傷だらけの上、『神の裁き』による衝撃、そして対ハインリッヒ戦での傷跡。
内部こそは無事なものの、いつ倒壊してもおかしくなかったらしい。
今、あの塔付近は立ち入り禁止になっているはずだ。
研究所部分はそのまま残っているらしいが――
- 97 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:20:03.34 ID:5yr5SZ550
- そこで、テーブルにコーヒーのカップが置かれた。
( ´_ゝ`)「あんまり煮詰めるとアレになるぞ、アレ」
(´<_` )「どれだよ」
( ´_ゝ`)「……飴?」
(´<_` )「真面目に問い返したのが馬鹿だった」
( ´_ゝ`)「まぁまぁ……で、何をしているんだ?」
問いかけに、弟者はPCの画面を見せる。
(´<_` )「見ての通り、やはりネットじゃ限界がある」
( ´_ゝ`)「んじゃ、やっぱり研究所?」
兄者も同じ考えを持っていたようだ。
というか、こちらの思考さえも読んでいたような。
(´<_` )「んー……明日にでもモララーさんに許可もらって行ってみよう」
( ´_ゝ`)「おk、把握した」
- 98 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:20:56.84 ID:5yr5SZ550
- だがな、と兄者は付け加える。
( ´_ゝ`)「善は急げって言葉知ってる?」
懐から取り出したのは携帯電話だ。
何故かストラップとして人参が付いているが、弟者は敢えて無視を決め込む。
( ´_ゝ`)「ぽちっとな」
耳に当てる。
そのまま数秒。
( ´_ゝ`)「…………」
彼は一言も話すことなく通話を切った。
折りたたみ、出した時と同じように懐へ入れる。
(´<_` )「どうした?」
( ´_ゝ`)「そういえば通話料払ってない」
(´<_` )「……流石だな」
彼を一瞬でも尊敬しかけた弟者は自分を恥じた。
- 99 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:22:17.19 ID:5yr5SZ550
- ( ´_ゝ`)「あ、そうだ。
バーボンハウスの電話を使えばいいじゃん」
(´<_` )「確か一ヶ月前から止められてなかったか?」
( ´_ゝ`)「あー……ショボンが『どうせ使わないし』とか言ってたっけ。
最悪だな、あの野郎は」
(´<_` )「その台詞を吐くアンタが最悪だろ」
「兄者さーん」
( ´_ゝ`)「おk、把握した。 悩みなら俺に全部ぶちまけやがれ」
カウンターに戻る兄者の後姿を見ながら、弟者は溜息を吐く。
この一年と半年。
随分と見違えた。
ただの迷惑男だった彼が、今では比較的真面目に業務をこなしている。
責任感も垣間見えるし、先ほどのように鋭い思考も見せる。
(´<_` )「ただ問題なのは……クルト博士絡みの時だけなんだよなぁ」
他の話。
例えば政治や天気の話などの世間話になると、彼の人格は今とはまったく違ったものとなる。
魔法少女や珍妙などと呼ばれるアレだ。
- 100 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:23:12.56 ID:5yr5SZ550
- (´<_` )(…………)
弟者は兄者の過去をあまり知らない。
生まれてからしばらくし、離れ離れになり、自分は良い育て親と巡り合えた。
だから礼儀と言うモノを多少なりとも知っているし、常識も得ている。
だが兄者は、聞いた話によると孤児院にいたらしい。
そこで何を思い、何を得たのかは解らない。
もしかしたらその時点であの性格だったかもしれないし、違うかもしれない。
ただ一つ言えるのは、彼がクルト博士を心底尊敬しているという点だ。
PCの知識なども博士から得たのだろう。
だからこそ兄者は博士に感謝しているし、博士のことになると本気で取り組もうとする。
思い、弟者は苦笑した。
(´<_` )(俺は兄者と違ってのうのうと平和に暮らしてきた……。
だからせめて、本気の兄者を支えるくらいはしないとな)
- 101 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:24:15.30 ID:5yr5SZ550
- 新たな決心。
背伸びをし、気分を入れ替えるために兄者が淹れてくれたコーヒーを一口。
(´<_`;)「ぶはっ!?」
( ´_ゝ`)「御覧下さい、アレが砂糖たっぷりコーヒーを飲んだ弟の反応です」
(´<_`#)「…………」
(;´_ゝ`)「……ごめんなさい」
(´<_` )「……はは、せっかく人が色々と考えてたのに、この兄は」
(;´_ゝ`)「?」
(´<_` )「いや、これくらいの悪戯ならいいさ……俺もそろそろ店の方を手伝うよ」
( ´_ゝ`)「情報捜索の方はいいのか?」
(´<_` )「とりあえず研究所に行くまではPCも役立ちそうにない」
( ´_ゝ`)「ふーん……把握した」
カウンターに入り、飲み物などの準備をする弟者。
椅子に座り、客の愚痴を聞く兄者。
こうしてバーボンハウスの夜は更けていった。
- 103 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:25:33.65 ID:5yr5SZ550
- 翌日。
朝日が昇り、人々が活動を開始しようかという時間。
FC社の最上階に位置する社長室の扉が開かれた。
入ってきたのは二人。
( ・∀・)「ふぅ、会議というのも存外つまらないものだね。
ジェイル君、御茶を頼むよ」
爪゚ -゚)「解りました」
( ・∀・)「さて、次の予定は……と」
懐からメモ帳を取り出す。
黒いカバーのそれは、一目見ただけで使い込んでいることが解った。
( ・∀・)「ん?」
携帯を見る。
画面には『着信あり』の表記。
会議中に掛かってきたものだった。
見れば、それはショボンの携帯番号。
( ・∀・)「これは珍しい……彼が私に何の用なのだろう?」
- 104 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:26:35.84 ID:5yr5SZ550
- ボタンをプッシュし、耳へと当てる。
プルル、という音がしばらく鳴り続けた。
(´・ω・`)『あ、モララーさん?』
( ・∀・)「やぁ、ショボン君、久しぶりだね。
去年行ったスキー旅行以来ではないかね?」
(´・ω・`)『えぇ、そうですね……御久しぶりです』
( ・∀・)「さて、先ほど電話を掛けてきたようだが私に何か用かな?」
(´・ω・`)『あ、僕じゃなくて流石兄弟さんが貴方に用があるらしくて。
ちなみに僕の携帯を使ったのは、兄者さんの携帯使えないからです』
( ・∀・)「どうせ通話料不払いとかだろう?」
(´・ω・`)『当たりです。 では代わりますね』
- 105 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:27:40.14 ID:5yr5SZ550
- 少しの沈黙。
( ´_ゝ`)『やっほー、モララー? 俺俺、俺だよ』
( ・∀・)「むむ、その声は……タケシかな?」
( ´_ゝ`)『そそ、息子のタケシだよー。
突然なんだけど今から言う口座にお金振り込んで――』
直後、打撃音が響いた。
続いて床に誰かが倒れる音と、『馬鹿じゃねぇの?』というジョルジュの声。
( ・∀・)「おぉ、ナイスパンチ」
(´<_` )『いや、キックだ』
弟者の声。
どうやら兄者は強制退去させられたらしい。
(´<_` )『で、突然で悪いんだが……研究所へ入るための許可が欲しい』
( ・∀・)「何か手掛かりでも?」
(´<_` )『それを見つけに行くんだ』
- 118 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:41:52.42 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「成程……解った、許可を出そう。
その代わり、私も一緒に行って良いかね?」
(´<_` )『アンタも来るのか? ってか、社長が自分の城である会社を簡単に空けても――』
( ・∀・)「はははははは」
(´<_` )『……OK、把握した。
じゃあ、現地集合で良いか?』
( ・∀・)「何、遠慮する必要は無い。
私が車を出すから、一緒に行こうではないかね」
(´<_` )『太っ腹だな。 解ったよ』
通話を切る。
片手で携帯を折りたたんで懐へ。
一連の流れるような動作の後、彼はジェイルの方を向きながら
( ・∀・)「ジェイル君、急用が出来た。 もうお茶は――」
爪゚ -゚)「…………」
視線の先には、湯気が立ち上る湯飲みを盆に乗せたジェイルの姿。
その目はモララーの方をじっと見ている。
- 120 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:43:47.91 ID:5yr5SZ550
( ・∀・)「…………」
爪゚ -゚)「…………」
( ・∀・)「……頂こうか」
爪゚ -゚)「美味しさには自信があります」
手渡された湯飲みを持ち
( ・∀・)「私は良い秘書を持って幸せだよ」
と頷くのであった。
- 121 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:45:33.41 ID:5yr5SZ550
- 都市ニューソクから離れた地域。
人里離れた山の中。
この一角にクルト博士の研究所があった。
真一文字に切り裂かれた黒いゲートの前に、幾つかの車両が止まる。
扉が開き、数人の人影が出てきた。
星と橙色が重なっている空が見える。
(´<_` )「いつかの時と、あまり変わってないな」
( ・∀・)「状況を保存しておきたかった、というのが大きいね。
ここは存在自体が大きな資料だよ」
( ´_ゝ`)「よくワカンネ。 とりあえず研究所に行こう」
歩き出す兄弟。
追いながら、モララーは背後の部下達に待機命令を出した。
その傍らにはリュックを背負ったジェイル。
- 122 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:46:54.58 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「……その中身は?」
爪゚ -゚)「お弁当です。
私には空腹という概念を理解することは出来ませんが、必要かと思いまして」
( ・∀・)b「流石ジェイル君だ。 これで作業中にお腹が空いても安心だね」
爪゚ -゚)「冗談ですが何か」
ジェイルが身を動かす。
背後のリュックから、何故か金属が動き擦れる音が響いた。
( ・∀・)「……最近、私は君に嫌われているような気がするのは何故かと問おう」
爪゚ -゚)「それは思い過ごしでしょう。
私、様々な媒介を通じてより人間らしくなれるよう情報を常に収集しておりますので。
おそらくはそれから来る勘違いではないかと思いますが」
( ・∀・)「うーむ……」
爪゚ -゚)「さて、行きましょうか。
弟者様と兄者は既に先へ行っていますよ」
( ´_ゝ`)「今、呼び捨てにしなかった?」
爪゚ -゚)「いえ、別に」
- 123 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:48:04.93 ID:5yr5SZ550
- 一キロメートルほどの滑走路のような道を歩く。
かつてここには、機械の兵士がひしめいていた。
残骸は全て撤去されているも、その地には戦闘の傷跡が残されていた。
( ・∀・)「約一年半、か……懐かしいね」
(´<_` )「あぁ、そうだな」
( ・∀・)「ここでジェイル君と運命的な出会いを果たしたのだよ?」
爪゚ -゚)「あまり記憶にありませんが……酷く屈辱的な敗北をした、と記憶素子に残されております」
( ・∀・)「その敗北の味を覚えておきたまえ」
言いながら懐を探る。
内ポケットから取り出したのは、タバコの箱だった。
(´<_` )「ん? タバコなんて吸ってたか?」
( ・∀・)「昔は吸っていたが、今はまったくだよ」
一本だけ取り出す。
口にくわえ、そのまま火をつけずに歩き出す。
( ´_ゝ`)「?」
- 126 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:49:30.56 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「感傷的になった時は、こういう風にくわえていないと……ちょっとね」
(´<_` )「感傷的?」
( ・∀・)「私は直接、クルト博士との面識はない。
が、その心情や決意などは資料からある程度は解っている。
人間、必要以上に踏み込むと感情移入してしまうものなのだよ」
(´<_` )「アンタが感情移入? そりゃ想像出来ないな」
( ・∀・)「はは、私だって人だよ……そして彼も、ね」
足を止める。
彼らの目の前にあるのは、廃屋と化した研究所。
おそらくは全ての始まりとなった場所。
過去に一度、兄者とクーが精査しているが
今の知識と照らし合わせれば、きっと何か手掛かりが見付かるだろう。
それを期待しての行動だった。
(´<_` )「ま、今回は内部のコンピュータにも触れられそうだしな。
色々と情報を得られると良いんだが……」
脇にノートPCを抱えた弟者が、廃材の欠片を踏み潰しながら内部へと身を進める。
内部は外の暗さも相まって深い暗闇。
モララーがスイッチを入れると、研究所内部に明かりが付いた。
目の前に広がった景色は、研究所というよりも美術館を髣髴とさせる。
127 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:50:43.61 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「こういう時もあるかと思い、研究所にあった発電装置を修理しておいた」
( ´_ゝ`)「流石社長さん」
明かりが照らす内部を歩いていく。
そこは、十年前の残滓が残る空間だった。
破れ汚れた紙が散らばり、用途不明の小さな機械
ペンや、壊れ歪な形をした机、ファイルや割れたカップなども落ちている。
( ・∀・)「約五十の人間が、この研究所で活動していたらしい」
(´<_` )「それらは今何処に?」
( ・∀・)「不明だ。 その分の資料も処理されているらしく、何も残されていない」
(´<_` )「ん? おかしくないか?
処理出来る時間があったんなら、何でこの研究所にまだ資料が残ってるんだ?」
( ・∀・)「人事資料の処理時間しかなかったか、もしくはその他の資料は処理不要だった。
あと考えられるのは――」
( ´_ゝ`)「わざと残した、か」
( ・∀・)「そういうことだよ。
それを指示したのがクルト博士か、リトガーかは解らぬがね」
- 129 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:52:15.19 ID:5yr5SZ550
- 研究所内の作りは簡単なものだった。
正面玄関から長く広い廊下が真っ直ぐに伸び、各部屋が枝状に広がっている。
二階建てで、一階が食料庫や資料室、二階は作業室や研究室だ。
縦よりも横に広いところを判断するに、おそらくは木々に隠れるように設計しているらしかった。
( ・∀・)「まぁ、当たり前と言えば当たり前だ。
研究内容が道徳に反しているが故に、発見を恐れていたのだろうから」
しかし疑問は尽きない。
これほどの施設を、果たして何処の誰がどうやって作ったのか。
(´<_` )「まず普通の建設会社ってのはありえないな。
だが、これほどまでにシッカリと作られていることを考えれば――」
( ・∀・)「何か証拠でもあれば良いのだがね」
そこで兄者が手を上げた。
( ´_ゝ`)「研究資金提供者の、ミーディ=アストクルフじゃないかと俺は思ってるんだが」
( ・∀・)「あのツン君の父親かね? 確かに彼の名前も日記に出てはいるが……」
(´<_` )「確かに、あの財力と人手があれば……命じれば外へ情報が漏れる、ということも考えにくい。
あの家は特に結束力が固そうだしな」
思い浮かべるのは、フサギコの顔だ。
彼ほどの男が尊敬しているミーディという、ツンの父親。
人望が高いことは想像に難しくない。
- 130 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:53:50.51 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「まぁ、まずは手掛かりを見つけなければね」
(´<_` )「とりあえずメインコンピュータか、それに値する機械にアクセスしたい」
( ´_ゝ`)「じゃあ二階にあるメイン研究エリアに行こう」
( ・∀・)「私は一階にいるよ。 まともに探索するのは初めてなので色々と見て回りたい」
(´<_` )「ん、解った」
双子の兄弟は二階を目指して去っていった。
静寂が場を支配し始める。
( ・∀・)「ふーむ……」
そのまま資料室へ足を伸ばそうとした瞬間。
爪゚ -゚)「――御主人様」
ジェイルが呼び止める。
その視線はモララーではなく、天井へと向けられていた。
爪゚ -゚)「私達と流石兄弟様以外に、人の気配があります」
( ・∀・)「私の部下は外に待機させてある……となると、招かざる客人というわけだね」
爪゚ -゚)「おそらくは屋上にいるかと思われますが」
( ・∀・)「行こうか。 こんな場所にいるということは、博士に関係している人物の可能性が高い」
- 132 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:55:17.02 ID:5yr5SZ550
- 二階部分。
研究エリアなどが中心になっているここは、様々な機械が点在していた。
( ´_ゝ`)「メインはこれだっけか」
(´<_` )「把握した。 とりあえず接続してみる」
ノートPCからコードを伸ばし、大きな機械に接続。
しばらくすると、画面上に様々な情報が出現し始める。
( ´_ゝ`)「やっぱり膨大な量だな……それにダミーや壊れたデータが多い」
(´<_` )「うむ……選別して持ち帰るとなると、結構な時間が必要かもしれん」
( ´_ゝ`)「とりあえずやるしかないぞ。 俺は他に持って帰れそうな資料とか見てくる」
(´<_` )「任せた、兄者」
兄者が部屋を出る。
PCの稼動音のみが響く空間で、弟者は作業を始めた。
(´<_` )(ダミーがあるということは、調べられる前提だったというわけか……。
やはり何か重要なデータが隠されているらしいな)
その背後に、人がいるとも知らずに。
- 137 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:03:42.07 ID:5yr5SZ550
- 屋上は比較的広かった。
周囲は木々に覆われているものの、見える空は突き抜けるような広さを持つ。
夕日が落ちかけていた。
段々と暗くなっていく景色の中、鉄製の扉が開く音がする。
( ・∀・)「……ふむ」
二人の視線の先。
屋上の最奥で、こちらに背を向けている人影。
白衣、茶のセミロング……それは女性だった。
確認したモララーは、懐から指輪を取り出す。
続いてジェイルもナイフとハンドガンを手に持った。
爪゚ -゚)「もしもの場合は、私ごと破壊して下さい」
( ・∀・)「言われなくともそのつもりだ」
堂々と、しかし慎重に距離を削っていき、それが二十メートルを切った時。
( ・∀・)「君は、誰かね?」
問いかける。
その声を耳に入れた女性は、こちらを振り向きながら
从'ー'从「――初めまして」
と、丁寧に頭を下げた。
- 141 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:06:19.66 ID:5yr5SZ550
- 兄者が、鼻歌を鳴らしながら資料室の扉を開く。
ここは既にFCによって調べ尽くされている場所だった。
本棚の一角。
分厚い書物が列を成しているはずなのだが
( ´_ゝ`)「……無い?」
本来あるべき場所に、一冊だけ本が抜き取られていた。
( ´_ゝ`)「おかしいな……あの場所は確か……」
覗き込む。
本が一冊無いことにより、奥の壁が見えた。
兄者が下部分を押し込むと、上部分が相反するように開く。
内部からコンソールが出現した。
( ´_ゝ`)「5692648173421187、と……」
素早い動作で数字を打ち込む。
決定キーを押した直後、カタンという小さな音が響いた。
( ´_ゝ`)「十年前の記憶、まだ衰えてなかった俺の脳って凄くない?」
ちなみに番号は、ここで博士の世話になっていた当時
資料室でかくれんぼをしていた時に盗み見たものだった。
振り返る。
そこには本棚があったはずなのだが、今は一つの黒い柱が伸びていた。
- 145 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:08:12.36 ID:5yr5SZ550
- ( ´_ゝ`)「変わりはない、よな……?」
この黒い柱は、クルト博士専用の隠し本棚。
前回、クーと共に調べた時にもココはチェックしていた。
しかし何も入っていなかったはずなのだが――
( ´_ゝ`)「?」
内部は、ほとんど空洞に近い。
資料用ケースが新たに追加されていた。
取り出だす。
( ´_ゝ`)(前には無かったはずなのだが……誰かが追加した?)
適当にめくる。
だが、目ぼしい情報は残っていなかった。
( ´_ゝ`)(妙だな……一体、誰がこんなことを――ん?)
最後の紙。
一旦、クシャクシャに丸められた跡があるそれに、興味深い文章が載っているのを発見した。
( ´_ゝ`)(読み辛いな……何だ?)
――――
『■世■の■■ある『フェ■■■』。
私は機■世■から■■■で■在■■り、戦■■ての完■■■■り、■■こと■■た』
- 146 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:09:30.70 ID:5yr5SZ550
- 千切れていたり、焼け焦げていたりと読めない部分が多い。
( ´_ゝ`)「フェ……?」
呟いた直後。
(;´_ゝ`)「!?」
爆音。
何か金属的な物がひしゃげる音と共に、大きな音が響いてきた。
この資料室からではない。
(;´_ゝ`)(まさか弟者――!?)
資料を懐に入れ、駆け出す。
この音が事故にせよ、故意に為されたものにせよ
(;´_ゝ`)(くそっ!)
嫌な予感が拭えない。
クルト博士の研究所で、情報収集していた弟者が襲われる。
あまりにも最悪の方向へ向かわせる材料が多く、兄者の頭の中では様々なマイナスの憶測が流れた。
- 150 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:10:59.91 ID:5yr5SZ550
- (;´_ゝ`)「弟者!!」
扉を開き、先ほどまでいた部屋へ飛び込む。
そこにいたのは
川 -川「…………」
不気味なほど長く伸ばした前髪を持つ女。
そして、壁に背を預けながら力無く倒れている弟者。
(;´_ゝ`)「お、お前は誰だ!」
ポケットから指輪を取り出しながら問いかける。
声を背中に受けた彼女は、不気味に首だけをこちらに向けながら
川 -川「――ターゲットβ確認」
と呟いた。
- 151 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:12:39.32 ID:5yr5SZ550
- 屋上。
夕日が落ちかけ、夜の闇が目の前まで迫っている。
自然に流れる風を身に受けながら
( ・∀・)「今の音は……?」
爪゚ -゚)「階下から発生した模様です。
おそらくB3地区……メイン研究エリアでしょう」
从'ー'从「大丈夫だよ、殺さないように言ってるから」
楽しそうに言う女性。
( ・∀・)「そういうことを望んでいるのではないよ。
貴様は誰か、と私は聞いている……まぁ、大体解るがね」
それは
( ・∀・)「――『渡辺』。
クルト博士の元助手にして、裏切った女……違うかな?」
从'ー'从「うん、そっち側の認識としては間違ってないね」
( ・∀・)「そっち側? つまり別の認識があるということかね?」
从'ー'从「まだ気にしなくていいよ。
どうせ今日は顔合わせみたいなものなんだし」
- 153 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:14:12.02 ID:5yr5SZ550
- そこでジェイルが一歩踏み出す。
キリキリと微かな音を立てながら、いつでも跳びかかれるような姿勢を作った。
爪゚ -゚)「逃がすと思っているのですか」
从'ー'从「えぇ〜……あまり乱暴なことはしてほしくないなぁ」
( ・∀・)「では大人しく捕まったらどうかね? 今なら優しい拷問で済ませてあげるよ」
从'ー'从「うーん、それも困るなぁ」
言いながら懐へ手を入れる。
白衣の中から取り出したのは、一つの銃。
( ・∀・)「選んだのは抵抗か……愚かな女だよ、君は」
爪゚ -゚)「お気をつけ下さい、御主人様。
あの銃は私のデータベースに無く、しかも従来のモノとは大きく異なります」
从'ー'从「優秀だね」
( ・∀・)「私の部下だから当然だ」
彼女の持つ銃は白を基調としていた。
銃、というよりも大型ナイフを髣髴とさせる形だ。
- 154 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:16:03.07 ID:5yr5SZ550
- 爪゚ -゚)「危険と判断。 兵装の変更を希望します」
( ・∀・)「構わん」
爪゚ -゚)「了解です」
声と共に、背負ったリュックを下ろした。
想像以上に重い音が響き、金属が擦れ合う音が響く。
内部から出てきたのは、数枚の金属片・銀の長い槍身・甲冑を構成するパーツだった。
それらは一瞬で組み上がる。
瞬間という時を以って、ジェイルの各部に装着された。
从'ー'从「へぇ……」
爪゚ -゚)「FC製機械人形専用・接近戦型特殊兵装『BF(ブラストフォース)−ナイト』」
それは銀の甲冑に似た兵装だった。
身体前面は装甲で覆われ、背中からは銀の細長いアンテナのようなモノが八本展開されている。
右腕には長身極太の巨槍。
左腕には大型の盾。
どれも銀の色を放っており、過去のジェイルを思い出させる格好だった。
しかしその重厚さや迫力は段違いである。
- 156 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:17:40.52 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「開発主任のゼンラン君が勝手に作っていた
最新試作品のEF(エターナルフォース)じゃないのかね?」
爪゚ -゚)「まだ実用出来る段階ではないそうです。
ちなみに相手は死ぬようですが」
( ・∀・)「おや、それは困るね」
从'ー'从「あはは、私一人に大袈裟な装備だと思うんだけど」
( ・∀・)「ならば焦ったらどうなのかね?
先ほどから、我々は隙だらけだというのに何もしないとは」
从'ー'从「フェアじゃないでしょ?」
( ・∀・)「ふぅむ……確かに」
だが、と続ける。
( ・∀・)「フェアをとって負けたりしても、それはそれで損だと思わないかね?」
声と共にジェイルが飛び出す。
走るのではなく、一足飛びの挙動だ。
片腕で巨槍を構えながら振りかぶり
从'ー'从「んふ♪」
渡辺の笑みに激突した。
場に金属音が響き渡る。
- 160 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:19:12.35 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「金属、音……?」
視線の先、渡辺が先ほどの銃を構えて巨槍を防いでいた。
从'ー'从「凄いでしょ、コレ。
レシーバー(機関部)下部が刃になってるんだ。
ストック上部を持って剣のように扱う事も出来るってわけ」
爪゚ -゚)「それだけでは説明がつきません」
縦に構えられた渡辺の銃を睨みながら
爪゚ -゚)「私の一撃は身体ごと吹き飛ばしてもおかしくない威力のはずです。
それが何故、貴女は未だこの場に存在しているのですか」
从'ー'从「当ててみて?」
爪゚ -゚)「貴女の周囲空間が異常歪曲していると推測します。
つまり私の攻撃のベクトルが歪められ、威力が半分以下になった、と」
从'ー'从「では、それに対して貴女はどうする?」
爪゚ -゚)「歪曲を吹き飛ばす一撃を。
または歪曲しない攻撃をぶつければ良いかと」
- 161 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:20:41.09 ID:5yr5SZ550
- 从'ー'从「出来るの?」
爪゚ -゚)「私には出来ませんが――」
渡辺の目を無表情に見つめながら
爪゚ -゚)「――御主人様なら可能かと」
ジェイルとは逆方向から気配。
直後、激震という衝撃が渡辺を襲った。
( ・∀・)「おや、やってみれば出来るものなのだね」
モララーが、高速接近後に2nd−W『ロステック』の一撃を叩き込んでいた。
しかしその鉄頭は渡辺には触れずに空中で停止している。
まるで見えない壁に阻まれているかのようだ。
从'ー'从「これは……」
言葉と同時にピシ、という音が発生する。
それは渡辺の周囲からだ。
その音を合図としたかのように、ひび割れの音色が連鎖を始めた。
破砕。
渡辺の周囲に展開されていた見えぬ壁が、粉々に割れ爆ぜた。
- 163 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:22:13.61 ID:5yr5SZ550
- 从'ー'从「あちゃ〜、やられちゃった」
( ・∀・)「私の粉砕力が上回ったようだね。
いや、まさか歪曲空間自体を叩けるとは思っていなかったのだが……」
爪゚ -゚)「流石は御主人様。
私の現在の兵装である『BF−ナイト』の槍に、超震動装置を付けるのを忘れていたために
活躍を取られてしまいました」
( ・∀・)「その説明口調は私に対する嫌味かね?
ちなみに超震動があっても、実存しない空間を砕けるとは思えないよ」
从'ー'从「モララーさん正解! 10P!」
( ・∀・)「ははは、これで私のリードだよジェイル君」
爪゚ -゚)「まだまだこれからです」
从'ー'从(誰も突っ込んでくれないのは寂しいね……)
一人心の中で呟く。
その間に、渡辺から距離をとる二人。
未だに正体が知れない相手を前に足を止めるなど愚の骨頂だ。
捕らえるのが目的といえど、それに執着してやられてしまっては本末転倒。
- 170 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:27:33.29 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「さて、次は何を見せてくれるのかね?」
言葉通り、相手の手の内を知ることから始める。
从'ー'从「言ったでしょ? 今日はただの顔合わせだって。
続きはまた今度ーってことでよろしいかな?」
( ・∀・)「あまりよろしくないね」
从'ー'从「言うと思ったよ……んじゃ、捕まらない内に逃げちゃおう」
ポケットから素早く取り出したのはトランシーバーのような通信機だ。
ジェイルが逸早く反応し、構えた直後に
从'ー'从「貞子、もういいよ」
声と同時。
渡辺とモララーとの間の床が、下部から突き破られた。
轟音と共にコンクリートの破片が宙を舞う。
川 -川「…………」
現われたのは先ほどの女性だった。
黒髪によって表情は見えないが、おそらくは無表情なのだろう。
そしてその腕に抱えられているのは
(;´_ゝ`)「弟者!」
屋上への扉が開かれる。
額から血を流している兄者が、慌てて飛び込んできた。
- 171 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:29:21.64 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「どうなっているのだね?」
(;´_ゝ`)「い、いきなりソイツが弟者を!
んでもって俺も襲われて……突然逃げやがった!」
川 -川「任務途中ですが」
从'ー'从「うん、もう帰るからいいよ。
その人も離してあげて」
黒髪の女性が無言で、脇に抱えた弟者を投げ捨てる。
地面に身体を打ちつけた彼に反応は無い。
ただ額と鼻から血を流しながらぐったりとしていた。
(#´_ゝ`)「お前――!」
怒りに任せて、解放した4th−W『アーウィン』を持つ。
それを見た渡辺は
从'ー'从「怖い怖い……貞子、御願いね」
川 -川「イェス、マスター」
声と共に轟音。
巨大な地震のような感覚が全員を襲った。
あまりの震動に、モララーやジェイルが膝をつく。
- 175 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:31:05.97 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「これ、は……!」
从'ー'从「早く逃げないと大変なことになるよー。
じゃ、ばいばーい」
震動している床を蹴り飛ばし、空中へと身を投げる。
爪゚ -゚)「……っ」
それを追おうとするも、足元からの震動がそれを許さない。
( ・∀・)「ジェイル君、私はいいから流石兄弟を――」
言葉は途切れる。
床が全壊し、上にあったものが全て落下を始めたからだ。
落ちる視界で見る。
もはや安全な場所へ退避している渡辺が、こちらを見つつ笑みを浮かべていることに。
距離から考えて、そう判断出来ることはありえないはずなのだが。
モララーは全身で感じたことを元に推測し、判断した。
彼女は最大の悪意を持ってこちらに接触してきたのだ、と。
あの笑みの裏には、何が隠されているのか。
あの笑みの影には、一体何があったのか。
解らぬが、確実に言えることがあった。
それは
――奴は、我々にとっての、『敵』だ。
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