( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

349: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:01:52.77 ID:5pKUc8+20
  
第三話 『襲撃 Ver/Night』

自動ドアが開かれる。
今の彼にしてみれば、その動きは酷く鈍重だった。
開き切らぬそれを駆け足で潜り抜け、一直線に走る。

見える景色は、病院のロビーだ。
待ち合いのベンチに座る患者達や看護士達が目を丸くし、視線だけで彼を追う。

階段を駆け上がり、三階へ。
そのままの勢いで病室へと駆け込んだ。

(;^ω^)「モ、モララーさん達が怪我をしたって聞いたんですけど!!」

( ・∀・)「やぁ、元気だね内藤君。
     だが病室では静かにしたまえ」

(;^ω^)「えぇ!? 何か普通にスーツ着てベッドに座ってるお!」

( ・∀・)「はは、私は元々から頑丈なのだよ」



353: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:03:59.44 ID:5pKUc8+20
  
頭に『?』を乗せるブーン。
その背後から、急ぎ足で二人の女性が入ってきた。

从;゚∀从「内藤さーん、急ぎたい気持ちは解りますけど、少しくらい待って下さいよー」

川 ゚ -゚)「相変わらず走るのだけは速い」

( ・∀・)「おや、君達も御見舞いかね?」

川 ゚ -゚)「そのつもりだったが、どうやら必要ないらしいな」

と、菓子や果物が入った袋を見せるクー。

( ・∀・)「二時間ほど前に来たショボン君達も同じコトを言っていたよ。
     しかしまぁ、彼には必要かもしれないね」

隣のベッドへと視線を向ける。
そこには、頭や腕に包帯を巻いた兄者が布団を被っていた。

(;^ω^)「兄者さん……」

( ´_ゝ`)「よぉ、内藤にハインリッヒちゃん、んでもっていつも美しいクーさん。
      ……あ、もちろんハインリッヒちゃんもね」

川 ゚ -゚)「その様子だと問題なさそうだな」



356: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:05:44.72 ID:5pKUc8+20
  
从 ゚∀从「あれ? 弟者さんは?」

ハインリッヒの疑問の声。
その言葉に、一瞬だけ表情を暗くした兄者に気付いたのはモララーだけであった。

爪゚ -゚)「内藤様、クー様、ハインリッヒ様……少々御時間頂けますか」

ベッドに座るモララーの傍らに立っていたジェイルが声を発する。

( ^ω^)「大丈夫ですお」

爪゚ -゚)「ここでは難ですので、こちらへ」

歩き出す。
そのまま廊下へ出て、ブーン達を付近にあったベンチへ座らせた。

爪゚ -゚)「……弟者様のことなのですが」

(;^ω^)「ど、どうしたんですお?」

从;゚∀从「ま、まさか亡くなったとか――」

爪゚ -゚)「いえ、御存命です……が、非常に危険な状態でして」

川 ゚ -゚)「説明してもらおうか」

言葉に、ジェイルは素直に頷く。
その口から語られたのは先日の出来事。
渡辺、貞子という敵、そして研究所が崩壊した事実。



358: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:07:38.84 ID:5pKUc8+20
  
爪゚ -゚)「弟者様は、貞子と呼ばれる女性の攻撃……そして崩落時に更に怪我を負ったようでして」

意識さえも戻っていない状態らしい。
あの病室にいないのは

爪゚ -゚)「兄者がどうやら多大な責任を感じているらしく。
    そのため、弟者様は別の病室で治療を受けています」

川 ゚ -゚)「そうか……」

(;^ω^)(何で兄者さんには『様』付けないんだお……)

爪゚ -゚)「モララー様は今日で退院しますが、残る御二人はまだ無理でしょう。
     これからのサポートなどはショボン様に御願いしていますが……」

川 ゚ -゚)「あぁ、私達も出来るだけ手伝おう」

爪゚ -゚)「ありがとうございます。
    では、私はモララー様の退院準備の方を……」

頭を下げ、病室へと歩いていった。



359: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:09:25.06 ID:5pKUc8+20
  
(;^ω^)「兄者さんが責任を感じてるのかお……」

从;゚∀从「ありえない、とか思っちゃ駄目ですよ」

(;^ω^)「そ、そんなこと思ってないお!」

川 ゚ -゚)「お前達、ここは病院だ……静かにしろ」

ここで話していても無駄なので、とりあえず病室へ戻ることに。
兄者のベッドの隣で、既に荷物を片付け始めているジェイルとモララーがいた。

( ・∀・)「あぁ、一つ言い忘れていた。
     今日から外出は控えたまえ、特に夜の」

( ^ω^)「お?」

( ・∀・)「渡辺は私達に悪意を持っている。
     偶然、あの場所へ出かけた私達が襲われたということは
     君達も問答無用で襲われる可能性があるということだ」

川 ゚ -゚)「やはりクルト博士に関係がある、と?」

( ・∀・)「関係ありまくりだね。
     渡辺はクルト博士の日記に出てきた『彼女』なのだから」



362: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:11:06.42 ID:5pKUc8+20
  
川 ゚ -゚)「……そうか」

( ・∀・)「おや、あまり驚かないね」

川 ゚ -゚)「何となく予想はしていた。 ただし――」

伏せていた顔を上げる。
彼女の目に、冷たい怒気が含まれていた。

川 ゚ -゚)「仲間を傷付けられるとは思わなかったがな」

( ・∀・)「ふむ、平和的解決を望んでいたのかね?」

川 ゚ -゚)「それは無理にしても、話くらいは出来る相手だと思っていた」

( ・∀・)「残念、それは甘い考えだったというわけだ。
     彼女は私達に対して絶対的な悪意を持っている」

川 ゚ -゚)「それは今聞いた」

( ・∀・)「『聞いた』と『解った』は違うのだよ?
     君は彼女を前にして、本当に冷静でいられるのかね?」

川 ゚ -゚)「…………」

答えはない。
父親といえるクルト博士を、間接的にせよ死に追いやった渡辺。
それを前にして、果たして冷静に事を運べるのだろうか。



364: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:12:46.07 ID:5pKUc8+20
  
( ・∀・)「特に君は仲間の側を離れないで欲しいものだね。
     感情に任せて勝手に行動し、ただでさえ悪い現状を更に悪くされてはたまったものじゃない」

从;゚∀从「い、言い過ぎじゃないですか……?」

ハインリッヒが恐々と口を挟む。

( ・∀・)「事実を言っているだけだ。
     とにかく安全が確認されるまでは、迂闊に一人になるようなことはやめたまえ。
     これまで得た情報などは、後でまとめて送っておくから目を通しておくように」

荷物を持ち、ジェイルと共に部屋を出る。
頭に巻いてあった包帯を解き、投げ捨てるかと思えばポケットへ入れたのは流石である。

その間、クーはずっと黙ったままだった。



367: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:14:58.03 ID:5pKUc8+20
  
病院の出口。
自動ドアをくぐった後に、モララーは煙草のケースを取り出した。
内部から一本だけ手に取る。

( ・∀・)「やれやれ、まったく私らしくないね……」

口にくわえる直前。

( ・∀・)「……何年振りかな、悔しさを覚えるなど」

言い終わり、吐息した後で煙草をくわえた。

爪゚ -゚)「悔しい、ですか?」

( ・∀・)「ははは、私の口元を見たまえ。
     これ以上話すつもりなどないよ……残念だったね」

爪゚ -゚)「解りました」

( ・∀・)「さて、私達は私達に出来ることをしよう。
     とりあえず渡辺の動きを抑制出来るのが一番良いのだが――」

モララーは口元から笑みを消す。
迎えに来た黒い車に向かって、早足で歩き出した。



371: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:17:15.25 ID:5pKUc8+20
  
三階に位置する病室。
しばらくの沈黙後、兄者が口を開いた。

( ´_ゝ`)「……なぁ」

( ^ω^)「何ですお?」

( ´_ゝ`)「モララーさんには言ってないんだが、アンタらに一つ頼みがあるんだ」

从 ゚∀从「?」

( ´_ゝ`)「この紙を持っててほしい」

枕元からクシャクシャになった一枚の紙を取り出す。
それは資料室の隠し本棚にあった資料だった。

( ^ω^)「これは……?」

ほとんど読めない資料を一瞥し、ブーンは疑問を浮かべる。

( ´_ゝ`)「クルト博士が残した資料なんだが、その書いてあることが重要に思えてならない」

从;゚∀从「うーん、これはちょっと読めませんね……」

( ´_ゝ`)「研究所にある資料の多くは、俺達にとって大小あったが有益だった。
      隠し本棚にあった資料はそれだけ……だから、それは敢えて残されたんだと思う」



373: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:18:57.70 ID:5pKUc8+20
  
( ^ω^)「でも、読めなきゃ意味がないお」

( ´_ゝ`)「少しだけなら読めるだろう?
      俺が思うに、このフェ何とかが重要なんだと思う……それと上部分を見てくれ」

――――

【ハ■■リッヒ■対■■運用計画■】

――――

从;゚∀从「――!?」

(;^ω^)「う、運用計画……?」

( ´_ゝ`)「本人を目の前で言うのはアレだとは思うが、言っておく。
      ハインリッヒ、お前には何らかの役目が存在する」

从 ゚∀从「役目……」

( ´_ゝ`)「それが何なのかは解らない。
      けど、この一枚の紙が何かの手掛かりになるはずだと思うんだ」

掛け布団を引き寄せながら

( ´_ゝ`)「俺はこの通り動けない。
      だから、お前達が真実を見つけてくれ」

(;^ω^)「僕達が、かお……」



379: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:21:02.92 ID:5pKUc8+20
  
( ´_ゝ`)「モララーさんは別件で忙しいだろうし、ショボン達もバーボンハウスで手一杯。
      フサギコさんに頼むのも良いかもしれんが、出来ればあまり迷惑は掛けたくないし、ドクオは論外。
      というわけで、一番暇で行動力があるお前達に任せたい。
      それに当の本人であるハインリッヒだって、自分で自分の事を知りたいだろう?」

从;゚∀从「は、はい」

呆けていたハインリッヒが慌てて返事をする。

( ´_ゝ`)「渡辺がクルト博士の関係者ならば、確実に運用計画のことを知っているはず。
      とっ捕まえて吐かせるのも良いし、どうやってか解らんが自力で何とかするというのも良いと思う。
      渡辺が動いている今、行動するのは危険かもしれないが……早めに情報を得るのは重要だ」

あの兄者が妙に真面目に語っている。
以前の姿を知っているブーンは、内心非常に驚いていた。

( ^ω^)「兄者さんは、これからどうするんだお?」

( ´_ゝ`)「とりあえず退院するまでは何とも言えないな。
      一応PCを使って情報は集めるが、実際に動くお前達の方が良い情報を得られそうだ」

と、兄者はクーへ視線を向ける。

( ´_ゝ`)「アンタがこの中で一番冷静なんだ……頼んだぞ」

その場に突っ立っていた彼女は、目を伏せながら

川 ゚ -゚)「……あぁ」

小さく呟いた。



380: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:22:46.09 ID:5pKUc8+20
  
病院を出て、そのまま帰路へ着く。
外は既に夕日に照らされていた。

ブーンとハインリッヒが並び、少し後ろをクーが歩く。

( ^ω^)(クー……)

やはり気になる。

モララーに言われた言葉を気にしているのか。
それとも、一年前の病院で起きた事件を思い出しているのか。

どちらにせよ、クーの様子がおかしいことには気付いていた。



382: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:24:35.83 ID:5pKUc8+20
  
川 ゚ -゚)「ん……内藤」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「私は頼りないか?」

( ^ω^)「そんなことないお」

即答。
クーは、それを信頼の証と思いながらも続ける。

川 ゚ -゚)「私は……以前、感情というモノをあまり持っていなかった。
     しかしここ最近……特に君と出会ってから、色々な気持ちが新たに湧いてくるのが解るんだ」

( ^ω^)「それは良いことじゃないのかお?」

川 ゚ -゚)「最初はそう思っていたんだ。
     しかし私は、確かに渡辺を前にして冷静な行動を取れるか解らない……」

それはモララーの懸念でもあった。

川 ゚ -゚)「その点で言えば、私は失敗さk――ッ」

言葉は紡がれない。
ブーンが彼女の胸倉を掴んだからだ。



385: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:26:46.30 ID:5pKUc8+20
  
( ^ω^)「クー、君は失敗作なんかじゃないお。
      それは一年前にはっきりと解ってるはずだお」

乱暴な行為をしていながら、その表情はいつものまま。
逆にそれが、彼の内心で燃えている怒気を表現していた。

川 ゚ -゚)「しかし……それでも、私は君の足手纏いになるのが我慢ならない。
     君の足を引っ張りたくない。 君の手を煩わせたくない。」

( ^ω^)「僕らは、お互いに背中を預けて合ってるお。
      だから僕が君を頼りにするのは当たり前だし、君が僕を頼りにするのも当たり前だお」

川 ゚ -゚)「…………」

( ^ω^)「それに、まだ渡辺と会ってないのに、冷静になれないなんて決めるのはよくないと思うんだお」

川 ゚ -゚)「……怖いんだ」

黒コートを掴んでいるブーンの手を、包み込むように握る。

川 ゚ -゚)「私が作られていた時には、既に渡辺が研究に関与していた。
     もし私が意思とは無関係に操られるような、そんな措置が施されていたとしたら……。
     いや、もしかしたらスイッチ一つで心臓が破裂するかもしれない」



386: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:28:47.99 ID:5pKUc8+20
  
それは単なる想像だった。
しかし、彼女はそれを何よりも恐れていた。

死ぬという可能性も確かに恐ろしい。
だがそれよりもブーンを、仲間を傷付けるようなことになってしまったら。

川 ゚ -゚)「私は、それが怖いんだ」

未だクーの身体は謎が多い。
内臓などは人間のそれに近いが、実際は何を材料にしているのか不明なのだ。
人間の死体を元に作っているという説が有力であるが
安易に存在を明るみに出せないため、あまり詳しく調べようがないのも事実。

その事に関して、一番不安を抱えているのは本人であるクーだった。

何が原因で支障をきたすか解らない。
何が原因で死んでしまうか解らない。
支障が出た場合、どうやれば治るのか解らない。

あの戦いから一年。
自分の事を考え始めた彼女は、ようやくその事実に辿り着く。



389: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:30:16.13 ID:5pKUc8+20
  
彼女は以前から、基本的に一人で生きてきた。
だから悩み事など自分で解決するのが普通だったし、他人に頼るなんてことは考えもしなかった。

しかし今はそうもいかない。
大切な人がいて、大切な仲間がいて、大切な自分がいる。
一時期は自暴自棄になっていたクーに、失いたくないモノが出来てしまった。

川 ゚ -゚)「……すまない。 少し疲れているようだ」

ブーンの手を外す。
その動作はゆっくりだったが、力は強かった。

( ^ω^)「……僕も、ちょっと感情的になりすぎたお」

川 ゚ -゚)「ん……帰ろうか」

( ^ω^)「把握したお」

从;゚∀从(うわー、普通に蚊帳の外ですよ……この場合、どうしたらいいんでしょうか……)

二人のやり取りをハラハラしながら見ていた彼女も、また可愛い悩みを抱いていた。



392: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:34:04.97 ID:5pKUc8+20
  
夜闇。
ほぼ光を失った空。
人々は、それでも活動するために街灯を作った。
それに照らされている自動販売機。

( ,,゚Д゚)「……これでいいか」

小銭を入れ、ボタンを押す。
すぐさまガタンという音と共に目的の缶が落ちてくる。
手に取り、熱さを感じる前に素早くポケットへ。

( ,,゚Д゚)(ったく、しぃの奴もワガママになったものだ……)

吐息。
とはいえ、悪いのは自分だった。
今日は一緒に寝る予定だったのだが、飼っているウサギをついつい愛でてしまい
完全に時間というものを忘れてしまっていたのだ。

結局、シャワーを浴びた後で待ち続けた彼女は湯冷めをしてしまう。
罰として、自分が暖かい飲み物を買いに出たというわけだが

(*,,゚Д゚)(いや、だって可愛いんだぞ……こう、モシャモシャと餌をだな……)



396: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:35:24.20 ID:5pKUc8+20
  
夜道で悶える男一人。
これほど危険な人物はなかなかいないだろう。

しかし彼を超える危険人物が、ゆっくりと近付いてきていた。

( ,,゚Д゚)「……ん?」

視線の先。
自分の帰るべきアパートとは逆方向の道。

そこに、二人の女性が立っていた。

从'ー'从「こんばんはー」

川 -川「…………」



400: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:37:06.30 ID:5pKUc8+20
  
ギコが帰るべきアパートの一室。
そこで、ベッドに腰掛けて頬を膨らませる女性が一人座っていた。

(*゚ー゚)「ギコ君め……」

女性を一人ベッドに待たせて、なかなか来ない理由を問い出せば『ウサギが可愛かったから』。

(*゚ー゚)「じゃあ、私は可愛くないって……っくしゅ!」

寒気がする。
どうやら完全に湯冷めしてしまったようだ。
服を着て、まだ暖房の熱が残っているはずのリビングへ行く。

廊下の途中には動物用ケージがあり、内部には

(*゚ー゚)「もう、『ししょー』ったら……何でギコ君を誘惑するの?」

白いミニウサギがこちらを見上げている。
その無垢な表情に、一瞬だけ口元が緩みかけるが我慢。



403: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:38:49.51 ID:5pKUc8+20
  
――そうだ、この子はギコ君を取ろうとしている敵だ。

(*゚ー゚)「むぅ、もう水が無くなりかけてるじゃない……ギコ君、ちゃんと世話しなきゃー」

水の容器を外し、流し台へ。
中をよく洗って新鮮な水を流し込む。
溜まっていく透明色の液体を眺めながら

(*゚ー゚)「……あれ? そういえば遅いなぁ」

ギコが飲み物を買いに出かけて、既に十分が経過しようとしている。
ここから自販機まで歩いて三分程度。
どんなに鈍足でも、そろそろ帰ってこなければおかしい。

(*゚ー゚)「もう、何処で油売ってるんだろ……」

容器をケージに接続。
またもやこちらを見上げる『ししょー』に微笑みかけ
暖房のスイッチを入れるために、リビングへと入っていった。



407: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:40:23.30 ID:5pKUc8+20
  
街灯に照らされた夜道。
そこでは、二人の女性を睨む男が一人。

从'ー'从「ねぇ、これが何だか解る?」

白衣のポケットから取り出したのは、白い銃だ。
直線的で、ギコの記憶の中には無い形状。
まるでSF映画にでも出てきそうな、そんなイメージを受ける銃だった。

( ,,゚Д゚)「……その玩具の銃で俺を脅すつもりか」

从'ー'从「はは、そう言って死んだ人っているんだよね」

音を立てながら銃口を向ける。

( ,,゚Д゚)「…………」

対してギコは身動き一つとらなかった。
その右手には青い指輪が微かに光っている。



408: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:41:58.94 ID:5pKUc8+20
  
从'ー'从「指輪――ウェポン発動の最速タイムは0.2秒」

( ,,゚Д゚)「何……?」

从'ー'从「これで解ったでしょ?
      私が一体何者なのか……私が一体何に関与していたのか」

( ,,゚Д゚)「敵か?」

从'ー'从「だとしたら?」

( ,,゚Д゚)「容赦はしない」

直後、ギコの右手から光が発せられる。
渡辺の言う通り、それは0.2秒で形を成り立たせようとするが

その直前に異音が響く。

バシュ、とも、パシュ、とも聞こえる奇妙な音。
発生と同時にギコの右肩が爆ぜた。

(;,,゚Д゚)「ぐッ……!?」

血が噴き出始めた傷口。
左腕が無いために押さえることが出来ず、ギコはそのままの体勢で渡辺を睨む。



411: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:43:33.75 ID:5pKUc8+20
  
从'ー'从「この銃は、その0.2秒を軽く凌駕する速度で標的を穿つんだよ。
      表現曖昧だけどメチャクチャ速い弾を撃てるってことね。
      だから実質、私を前にしてのウェポン発動は不可能」

(;,,゚Д゚)「何なんだ、貴様は……!」

从'ー'从「何でしょう?」

異常だ。
この女の思考や行動。
そして手に持っている白い銃の性能。

从'ー'从「さて、と」

(;,,゚Д゚)「…………」

痛みに耐えるギコへ向かって、悠々と歩き始める。
当初は二十メートルあった距離が段々と縮まり、遂には目の前へ。

まるで聖母のような笑みで、彼女は告げた。

从'ー'从「ねぇ、私と一緒に来ない?」



413: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:45:18.92 ID:5pKUc8+20
  
問いかけの意味が解らなかった。
攻撃して怪我をさせておいて『一緒に来ない?』。

(;,,゚Д゚)「何を、考えている……?」

思わず口から出た言葉だった。

从'ー'从「んーとね、第一の理由としては
      貴方ってそんなにクルトに深く関与しているわけじゃないでしょ?」

( ,,゚Д゚)「…………」

从'ー'从「だから、別にこっちに移っても問題ないかなーって思ったんだよ。
      それに私達からしてみても貴方みたいな戦力が欲しかったし。
      指輪使いが一人いるだけで違うからね」

そして

从'ー'从「貴方達は知らないことが多過ぎるの。
      クルトとリトガーのそれぞれの目的、ハインリッヒ本来の使用方法。
      それに加えて、これから起ころうとしている巨大な『侵食』……」



417: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:46:57.65 ID:5pKUc8+20
  
確かに言う通りだった。
リトガーとは一戦交えたが、結局のところ何も解らずじまいで終わっている。
しかし、彼女のはその全てを知っていると言う。
ならば

( ,,゚Д゚)「ならば、何故こんな回りくどいやり方をする……!」

从'ー'从「いきなり言っても信じられないでしょ?
      私達は、貴方達の側から見れば完全に不審者なんだから」

( ,,゚Д゚)「…………」

从'ー'从「それでも言うけど、一緒に来なよ。
      そうしたら全て教えてあげるし、その証拠だって見せることが出来る。
      貴方達が如何に無知で愚かだったって痛感出来ると思うんだ。
      あのしぃって人も連れてきて構わないよ?」

軽く両腕を広げ

从'ー'从「どうする?」



418: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:48:16.99 ID:5pKUc8+20
  
( ,,゚Д゚)「……俺は」

从'ー'从「ん?」

ギコは一瞬だけ目を伏せる。
そして次に顔を上げたときには、その瞳にしっかりと意思が宿っていた。

( ,,゚Д゚)「俺には、興味ないな」

声と共に動作。
膝を立ち上げ、身体が上へと伸びる反動を利用して

( ,,゚Д゚)「ッ!」

腕を振るった。
目標は渡辺の持っている銃。
右手に装着している指輪を用いての破壊を狙ったのだ。

金属音。

从'ー'从「うーん、頑固だなぁ」

確かに音は響いた。
が、まるで見えない壁に阻まれているかのように、その拳が止まっている。



420: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:49:23.56 ID:5pKUc8+20
  
(;,,゚Д゚)「これ、は――」

从'ー'从「私について来れば、これの正体も知れたのにね」

( ,,゚Д゚)「その代わり監禁紛いのことをして、貴様から逃れられなくなるのだろう?」

从'ー'从「そんな物騒なことしないよー。
      しなくても、きっと貴方は私の側から離れたくなくなるはずだから」

ギコはその言葉を聞いて、更に疑問を浮かばせた。

――何だ、この自信は?

まるで自分が絶対に正しいと思い込んでいるかのような態度。

いや、おそらくは確信している。
己が正しいのだ、と。



422: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:50:40.45 ID:5pKUc8+20
  
( ,,゚Д゚)「何だ……何が、自信を持たせる?」

从'ー'从「真実が」

( ,,゚Д゚)「……真実とは何だ? 貴様の自信を冗長する都合の良いものか?」

从'ー'从「真実は真実。
      貴方達が一年前に掴み損ねた、世界の真実……それだけだよ」

( ,,゚Д゚)「貴様について行けば、それを知れると言うのだな?」

从'ー'从「そう」

( ,,゚Д゚)「そうか……」

溜息。
深く空気を吸い、そして吐く。
それを数度繰り返して

( ,,゚Д゚)「――やはり、興味ないな」

後方へ向かって、全力で身を飛ばした。
渡辺から距離を取りながら1st−Wを解放させる。
青い発光の後に、右腕に重さが出現。

追うように渡辺の射撃が来る。
それは鉛の銃弾ではなく、白い光だ。
音速超過の速度を以って飛来するが、ギコは身を捻って回避を試みる。



424: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:52:10.16 ID:5pKUc8+20
  
( ,,゚Д゚)「ッ……!」

幾つかがコートを突き破ったが、身体への損傷は避けられた。
そのまま着地し、前方へグラニードを突き出して盾代わりとする。

从'ー'从「何で抵抗するのー?」

少し離れた場所から彼女の声が響いた。

从'ー'从「私がせっかく教えてあげようって言ってるのにー。
      素直に聞けば良いと思うんだけどなー」

( ,,゚Д゚)「悪いが……聞かされる真実を求める奴など、俺の仲間にはいない」

从'ー'从「……どういうことかな?」

( ,,゚Д゚)「俺達は俺達の足で真実へと向かい、その目で真実を見るつもりだ」

从'ー'从「その苦労に如何ほどの価値があるっていうの?」

( ,,゚Д゚)「教えられた真実に如何ほどの価値があるという?」

訪れたのは沈黙。
互いが放った問いかけは、互いとも答えることはなく。
二人はしばらく、動かずに相手の言葉を吟味する。



428: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:53:30.58 ID:5pKUc8+20
  
从'ー'从「……難しいね、人間って」

( ,,゚Д゚)「貴様が無駄に難しく考えているだけだ」

从'ー'从「そうでもないんだなー。
      いつだってそう……私が正しいのに、認めてくれない人達ばかり」

( ,,゚Д゚)「だからといって、こういう手段をとるのが正しいのか?」

从'ー'从「正しいのは私だから、私がすることは全て正しい」

( ,,゚Д゚)「…………」

異常だ。
ギコは直感的に思う。

己を正しいなどと言える人間は、大概が頭のおかしい人間だ。
何故なら自分を是と認識しているから。
それは他人を排除し、己の考えを崇拝するという一方向の思考ベクトルの持ち主。

上記の考え方を持っている代表として挙げられるのはモララー。
かつて近い位置にいたギコは、それが嫌というほど解っていた。

从'ー'从「私は正しい。
      だから、その正しさを証明しなくちゃ駄目なの。
      だから――」



429: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:55:10.45 ID:5pKUc8+20
  
彼女は、意外なことを口走る。

从'ー'从「だから、私はその正しさを以って世界を救うの」

(;,,゚Д゚)「世界を……救う、だと?」

何を言い出すかと思えば。

世界を救う?
何から?
どうやって?
何時?
何処で?

様々な疑問が連鎖して生まれる。
口走る前に、ギコは無理矢理にそれらを飲み込んだ。

从'ー'从「まぁ、そういうわけで……貞子、もういいよ」

川 -川「イェス」

(;,,゚Д゚)「!?」

いきなり聞こえた声に、慌てて背後を振り返る。
長身の女性がすぐ後ろに立っていた。

こちらを一瞥し、人間とは思えない跳躍で渡辺の下へと飛ぶ。



433: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:56:30.25 ID:5pKUc8+20
  
(;,,゚Д゚)(何だと……!?)

まったく気付かなかった。
こちらが渡辺に集中していたこともあったが、それを差し引いてもおかしい。
戦いという日常から離れて一年。
ブランクは否定出来ないが、この距離まで接近されて気付けないのは絶対におかしい。

違和感がある。
それは、いつかも感じたことがあった。
そう、確かアレは――

从'ー'从「ふぅ……なかなか理解されないね」

川 -川「これはプラスの件ですから。
     マイナスになりえないだけ、マシと言えるでしょう」

从'ー'从「ま、そういうことにしておきますか」

川 -川「この男、どうしますか」

从'ー'从「んー……後に障害になることは無いだろうけど……」

殺る気か。
ギコは漂い始めた空気を敏感に感じ取る。
グラニードを構え、いつでも跳躍出来るように腰を落とした。



436: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 21:58:25.01 ID:5pKUc8+20
  
从'ー'从「うーん、今は見張られてるみたいだからやめておこうかな?」

視線を向ける。
ギコではなく、その背後の空間だ。

「……バレていましたか」

声と共に現れたのは

ミ,,"Д゚彡「……こんばんは」

フサギコだ。
執事服に黒いコートを羽織っている。
その手には、漆黒の大鎌『ウィレフェル』が握られていた。
暗闇という空間から、まるで幽霊のように姿を現す。

ギコが感じていた殺気という雰囲気は、どうやら彼から発せられていたらしい。
己の力量の落下具合を痛感しながら

( ,,゚Д゚)「フサギコ、お前……」

ミ,,"Д゚彡「モララーさんに頼まれまして。
      彼が言うには『次に狙われるのはギコ君か内藤君達だろう』と。
      というわけで、私が貴方の護衛として動いていたんですが……」

視線を渡辺へ向ける。

ミ,,"Д゚彡「まさか初日で釣れるとは思いませんでしたよ」

从'ー'从「んんー、ちょっと急ぎ過ぎちゃったかなー」



438: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 22:01:13.87 ID:5pKUc8+20
  
ミ,,"Д゚彡「とりあえずモララーさんから『捕まえろ』との命令を受けておりますので……参ります」

足を広げ、構える。
鋭くなった左目を渡辺へと向け、威嚇するように腰を落とした。

ミ,,"Д゚彡「『殺すな』とは言われていますが『怪我をさせるな』とは言われておりません。
      あまり抵抗なされると痛い目に遭いますが……そこは選択の自由という事で」

言葉が終わると同時に地を蹴る。
一足飛びの要領で、一気に距離を詰めにかかった。

速度は高速。
以前よりも洗練されているようにも見える。

例え右目と右耳が潰されていても、彼の戦闘に対する勘は衰えていない。
むしろ失われていることにより、他の感覚が鋭敏化しているのかもしれない。
そう思わせる迫力があった。

从'ー'从「貞子、御願いね」

声と共に、二人の線上に割り込む影。
貞子だ。
前髪によって表情は見えないが、確実にフサギコを見ている。



440: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 22:02:51.47 ID:5pKUc8+20
  
ミ,,"Д゚彡「ふっ!」

気合一閃。
全てを両断せんという勢いで、ウィレフェルが風を切りながら走った。
それは暗闇でもはっきりと解る黒い線として表現される。

鳴り響く甲高い音。

ミ,,"Д゚彡「なっ……」

刃は確かに貞子の首を捉えていた。
が、切り裂けない。

川 -川「……この程度、ですか」

衝撃で少しだけ傾いた首を元に戻す。
次の動作は右腕から発生した。

振りかぶり、そのまま突き出す。
それは殴打と呼ばれる、おそらくは最も原始的な攻撃方法だった。

ミ;,,"Д゚彡「くっ」

バックステップ。
襲い来る拳から逃れるように回避。

相手は得体が知れない。
安易に身を用いて防御するのは愚者がすることだ。
この状況下において、ただの殴打で済まされるわけがない。



443: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 22:04:22.92 ID:5pKUc8+20
  
( ,,゚Д゚)「あれは……」

ミ,,"Д゚彡「パイルバンカー、ですか……?」

思ったとおり。
貞子の突き出した右拳から、何か鋭利な何かが出現している。
カシュ、という金属が擦れる音と共に腕の中へ消えていった。

川 -川「マスター、そろそろ撤退を……現時点で、あまり装備を見られるのは得策ではありません」

从'ー'从「仕方ない、か……祭はまだ先だしね」

おそらく逃げるつもりだろう。
それに気付いたギコが声を上げる。

( ,,゚Д゚)「フサギコ、逃がすな!」

ミ,,"Д゚彡「解っています!」



446: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 22:05:46.55 ID:5pKUc8+20
  
フサギコが駆け込もうとした時。
渡辺がバックステップで地を蹴り後退。
その動作中に、白い銃をこちらへと向けた。

从'ー'从(フサギコ君、か。
      彼はちょっと邪魔臭い……いずれは御退場願おうかな――)

次の瞬間、閃光。

ミ;,,"Д゚彡「うぁ!?」

高速の光弾はウェレフェルの刃に当たる。
無理矢理に軌道変更させられたそれは、持ち主であるフサギコの身体も引っ張った。
バランスを崩し、跳躍は止められてしまい

( ,,゚Д゚)「チッ……」

ギコの舌打ちに顔を上げれば、既に二人の姿は無かった。

ミ;,,"Д゚彡「速い……それに狙いも完璧でした……やはり只者ではないですね」

( ,,゚Д゚)「己の正義を謳って押し付けるくらいだからな……」



448: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 22:07:54.08 ID:5pKUc8+20
  
ミ,,"Д゚彡「一応、周囲に部下も配置していますが無駄でしょうね。
      まずはギコさんの傷の手当てから――」

( ,,゚Д゚)「ん……悪いが、頼む」

素直な言葉に、フサギコは少し目を丸くした。

ミ,,"Д゚彡「あれ、てっきり彼女さんに手当てしてもらうと思ってたんですが?」

( ,,゚Д゚)「いや、今夜のことはしぃに知られたくないからな」

ミ,,"Д゚彡「ですが、結構時間が経ってますよ? どう弁解を?」

( ,,゚Д゚)「何、お前がいるじゃないか。 適当に口裏を合わせておいてくれ」

ミ,,"Д゚彡「はぁ……それは別に構いませんが……」

救急箱を持ってきたフサギコを一瞥する。
少し皮膚が抉れた右肩を差し出し、そのまま夜空を見上げた。

( ,,゚Д゚)(正しい、か……)

思い出すは先ほどの言葉。
本当に彼女が正しいとしたのならば

( ,,゚Д゚)(俺達は間違っている、のか……?)

ミ,,"Д゚彡「はい、ちょっと沁みますよー」

(;,,゚Д゚)「……ぐぉぁ」



450: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 22:09:14.85 ID:5pKUc8+20
  
暗闇がある。
そこは都市ニューソク内でも高い部類に入るビルの屋上だ。
もはや地上の光が届かない位置にあるそこは、星空の明かりだけを浴びている。

変化は突然。

眩い光が展開される。
それは一瞬だけ膨らむように見え、しかしそのまま消滅した。

しかし、先ほどとは景色が異なっている。
光が発せられた地点に、三つの人影が現れたのだ。

( <●><●>)「……跳躍完了です」

一人は黒いローブを頭から被った小柄な人間。

/ ゚、。 /「暗いな」

一人は漆黒の甲冑を着込んだ、身長二メートルを超える巨躯の女性。

|(●),  、(●)、.:|「夜ですからね」

最後の一人は、顔が巨大な男だ。
三人は顔を合わせて話を続ける。



451: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 22:10:31.05 ID:5pKUc8+20
  
/ ゚、。 /「さて……早速だが行動を開始しようか。
      私達に観光など似合わない」

( <●><●>)「では、私は各地の『誘導』を始めます。
        ダイオードは彼女を追って下さい。
        ダディは、まず情報を集めるための床の設置を」

/ ゚、。 /「場合によっては殺すぞ?」

( <●><●>)「最終的にそうなるでしょうから構いません」

|(●),  、(●)、.:|「この世界には良いコーヒー豆があるでしょうか……」

本気で悩む様子を見せるダディに、ダイオードが少し笑みを漏らす。

/ ゚、。 /「お前は本当にのん気な奴だ……だが、それが良い」

( <●><●>)「ダディ、貴方が私達の今夜からの寝心地の鍵を握っているんですからね。
        おそらく長期滞在することになるでしょうから、それなりのものを御願いします」

|(●),  、(●)、.:|「はは、解ってますよ」

三人が笑みを含んだ表情で見合う。



455: ◆BYUt189CYA :2007/03/02(金) 22:11:30.02 ID:5pKUc8+20
  
直後、一陣の突風が吹いた。
あまり整備されていない屋上に溜まっていた砂埃が舞い、一時的に視界を塞ぐ。

次に視界が開けた時。
既に三人の姿は無かった。
まるで最初からいなかったかの如く。



二〇五八年三月中旬、午前二時十二分。


現状にて最も『力』を持つであろう第三勢力が、この世界の誰にも悟られずに侵入を成功させた。



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