( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

4:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:30:26.04 ID:y0CRY5Wo0
  
第七話 『軍神と呼ばれた女』

都市ニューソクから少し離れた山中。
坂はほとんど無い。
散漫的に樹木が生え、視界を狭くしている。

そんなほとんど人の手が入っていないであろう森の中に、一つの人影。

(#゚;;-゚)「…………」

顔に幾つもの傷を持つ女が歩いていた。
その瞳には輝きなどなく、ただただ黒い色が支配している。

身は、薄汚い茶色のマントによって包まれていた。

都市ニューソクの郊外に現れた彼女であったが
人ごみを極端に嫌うため、こんな場所へ自らの意思で来ている。
自然の息吹を身に受けながら、淡々と何処へ行くでもなく歩き続けていた。

(#゚;;-゚)(初めて見るなぁ……こんな自然は)

彼女のいた世界は、数百年前から荒廃していた。
生まれてからまともに樹木など見たことがなかったし、こんな澄んだ空気も嗅いだことがなかった。



5:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:31:54.94 ID:y0CRY5Wo0
  
ふと足を止め、目を瞑る。
木々のざわめきや、鳥の鳴き声が耳に入った。

どれもこれも初めての経験。

こんな柔らかい土も初めて踏み、周囲の緑の色の量など当初は驚いたものだ。
空気の中には充分な水分も含まれており、呼吸は快適である。

(#゚;;-゚)「楽園言うても過言じゃない、か……」

己がいた世界と雲泥の差を感じる。
もし、自分がこんな世界に生まれていれば――

そこまで考え、甘い思考を振り払った。

(#゚;;-゚)(何考えてんのや。
    こんな甘い誘惑で、ウチの目的……いや、役割を忘れたらあかん)

軽く首を振って苦笑。
一人ぼっちだというのに、何を考えているのか。

(#゚;;-゚)(何にしても、まずはウチ以外の人間を見つけな……)

自分一人だけがこの世界に飛ばされたとは考え難い。
そして、その考えに至るだけの理由を五年前に知っていた。



6:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:33:20.78 ID:y0CRY5Wo0
  
(#゚;;-゚)(『秩序崩壊論』、か。
    確か名前は……渡辺、言うたかな)

護国院のトップである四部門の長。
その一つである科部長だった若い女性、それが渡辺だった。

若いながらに知識・発想が冴え渡っており
連合軍入隊から一年で科部長にまで登りつめたと聞いていた。

もっとも、直接の面識はない。
五年前の事件さえ無ければ、渡辺のことを憶えることさえ無かっただろう。

(#゚;;-゚)(まぁ、事件言うより……下らないプライドが起こした隠蔽――)

音が響いた。
風を切り裂く音。
ブースターが火を噴き、その勢いで飛ぶ音。

段々と近くなり、でぃが軽くその方角を見上げた時。

機械の塊といえるそれが、彼女の視線の先に降り立とうとしていた。



7:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:35:02.56 ID:y0CRY5Wo0
  
(#゚;;-゚)「これは……」

轟音を響かせながら着地。
地面が揺れ、木々が暴れ、枯葉が舞い上がる。

それは人型の機械だった。

全長七メートルほどで、銀と黒の色を基調とした鋭角的な機体。
メインカメラとしての『眼』が頭部で不気味に赤光を発している。

各部のモーターが低音を響かせ、足腰の関節を動かした。
軽く重心を落とすような姿勢はどう見ても突撃体勢。

(#゚;;-゚)「『鉄機人』、アンタもこっち来とったんかい。
    護国院の地下でパートナー待っとったん違うんか?」

答える声はない。

(#゚;;-゚)「ま、当然か……アンタは機械やからな」

声は無いが、答える動作はあった。

疾走だ。
その巨躯は、一歩で数メートルの距離を無にし、更に一歩で同じ距離を消す。
動作は機械とは思えぬほどの機敏さ。
二十メートルはあったはずの彼我距離が、たった四歩で存在を無いものとされた。



11:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:36:23.00 ID:y0CRY5Wo0
  
さて、重量が無い者に対して重量がある者が発するべき、最も効率的な攻撃は何だろうか。

答えは簡単だ。
その重量を全力でぶつければ良い。

『鉄機人』と呼ばれた機体も同じことをした。
足元にいるでぃを、その勢いと体重で踏み潰すかのような動作。

彼女の真上から影が差し、それは一瞬で濃さを増す。
鋼鉄の脚部は地面を打ち抜くかのような踏み付けを繰り出した。

彼女の数百倍もの重量が降りかかる。

激音と共に地が揺れ、空間が響いた。



12:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:37:58.79 ID:y0CRY5Wo0
  
渡辺達が潜んでいる、いわばアジト。
広域な空間を持っており、未だ使用されていない部屋も多い。

その一室。
武器保管庫と書かれた薄暗い部屋の中。
そこにニダーが、やはり軍服を着込んで立っていた。

<ヽ`∀´>「……全然駄目ニダ」

周囲の銃器・武器を見るが、ニダーの納得出来る量・質ではないらしい。
隣にいる渡辺が苦笑しつつ

从'ー'从「この世界の武器は、ちょっと素材効率が悪いからね。
      あまりお金を掛けずに集めてみたんだけど」

<ヽ`∀´>「懸命ニダ。
      やっぱり武器としてはEWが一番ニダね」

从'ー'从「EWかぁ……でも魔粒子を選別する職人さんが必要だよ?」

<ヽ`∀´>「それはデフラグに任せても良いと思うニダ。
      あのオッサンなら、技術さえ教えればモノにするはずニダ」

从'ー'从「信用してるんだね」



13:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:39:31.83 ID:y0CRY5Wo0
  
彼女が敢えて『信用』という言葉を使った理由を、ニダーは理解していた。
つまり、自分達はそういう関係なのだ、と。

『信頼』ではなく『信用』。

信じて用いる――それが『信用』。
互いが互いを、違和感なく利用するための便利な言葉だ。

<ヽ`∀´>「そういえば、軍神もこっちに来てるニカ?」

从'ー'从「もちろん。
      彼女は単体戦力で見れば、間違いなく最強だからね。
      私達と目的は一緒のようなものだから、きっと仲間になってくれると思うけど……」

<ヽ`∀´>「彼女のことだから、勝手に突撃して死ぬ事だって考えられるニダよ」

从'ー'从「はは、そこまで馬鹿じゃないでしょ。
      それにヘリカルちゃんから聞いた話だと、死ねない理由が出来たんだっけ?」

<ヽ`∀´>「あぁ、二年くらい前に男が出来たって噂になってたニダ」

从'ー'从「よっぽど屈強な人なんだろうね。
      何せあの人を相手にするくらいなんだから」

<ヽ`∀´>「それがそうでも無いニダよ。
      あの『リフレクション』から出てきた奴らしいニダ」

从'ー'从「リフレクションから……?」



14:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:41:03.78 ID:y0CRY5Wo0
  
<ヽ`∀´>「随分と無愛想な男で、ウリはあまり好きじゃなかったニダ。
      でもGDFの腕ならエース級……軍神もそこに惚れたらしいニダよ」

从'ー'从「へぇ……」

笑みを深くする渡辺。
祝福や驚愕の類というよりも、新しい玩具を見つけたかのような笑顔だ。
その微妙な表情を見ながらも、ニダーは平静を崩さずに語る。

<ヽ`∀´>「とりあえず最優先回収目標はGDFと軍神ニダ。
      前者はどうにでもなるが、軍神は生きて移動もしているから早めの接触を勧めるニダ」

从'ー'从「うん、今デフラグさんが探して――」

[゚д゚]「呼んだか?」

从'ー'从「噂をすれば何とやら、ってね」

<ヽ`∀´>「?」

从'ー'从「噂をしていると、その時に限って本人がやってくる。
      そんな感じの諺だよ」

[゚д゚]「はっ、んなもん確率の話だろうが……下らねぇ」



15:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:42:39.75 ID:y0CRY5Wo0
  
携帯灰皿に、煙草の吸殻を突っ込む。
ポケットから新たな煙草を取り出しながら

[゚д゚]「軍神さんの位置、判明したぜ」

从'ー'从「流石だね、ありがとう」

[゚д゚]「礼を言うのはこっちだよ、嬢ちゃん。
    よくもまぁ、この都市中にネットワーク張ったもんだ。
    おかげで手に取るように状況が掴める」

从'ー'从「時間だけはあったしね。
      貞子の協力もあってか、駄目元でやったのが成功してラッキーラッキー」

<ヽ`∀´>「で、彼女は何処ニダ?」

[゚д゚]「都市から少し離れた山中だ。
    そこに、この世界じゃ在り得ない反応がある。
    少し気になるのが、そのすぐ側に大型のルイル反応があるってことなんだが……」



17:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:44:22.78 ID:y0CRY5Wo0
  
その言葉に、二人は眉をひそめる。

<ヽ`∀´>「ルイル反応……EMAかGDFニダ?」

从'ー'从「ありえないよ。
      EMAがこの世界にあるわけないし、GDFが勝手に動くなんて考えられない」

[゚д゚]「お前ら、自分の世界のことも解ってねぇのか?
    クルトの野郎との約束を忘れたとは言わせねぇぞ」

从'ー'从「鉄機人……?」

[゚д゚]「俺達の世界に在る自動稼動の機動兵器なんていやぁ、それしかねぇだろ。
    護国院に封印されてんのが、世界交差に紛れて漂着してしまったんだろうよ。
    しかも運が悪いことに起動してやがる……。
    パートナーも異獣もいない今の状況じゃあ、中途半端に暴走状態だぜ」

从'ー'从「そんなのが付近にいるってことは――」

<ヽ`∀´>「……まずくないニダ?
      あの女のことだから破壊してしまいそうニダよ」

从'ー'从「えぇ〜、それは困るなぁ」

[゚д゚]「だろうと思って、一応ヘリカルを向かわせておいた。
    間に合うか解んねぇが……ここは居もしない神に祈るしかねぇよ」



18:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:46:22.93 ID:y0CRY5Wo0
  
彼女の名は『でぃ』と言った。
しかし、その可愛らしい響きと表記が気に入らず、他の者には『D』と呼ばせていた。

なかなかその名で呼ばれず、どうでも良くなったのはいつからだっただろうか。

彼女は、自身が異世界へ飛ばされていることを理解している。
そんな状況下にありながらも、混乱などせずにいられるのには幾つかの理由があった。

一つは、世界が異なろうと己の目的は変わらないから。
一つは、心に決めた愛する人がいるから。

そして、最後の一つは彼女の異名にあった。

(#゚;;-゚)「……下らんなぁ」

その声に、鉄機人が少しだけうろたえる様な動作を見せる。
動きを足裏の下で感じ取りながら

(#゚;;-゚)「ウチの渾名を忘れたとは、言わせんよ」

そう、彼女のもう一つの名とは

(#゚;;-゚)「『軍神』……人やなくて『神』言われる所以、知りたい?」

彼女の身は潰されていなかった。
その華奢な右腕を掲げ、それが土が付着している足裏を支えている。

数トンの重量が掛かっているにも関わらず、だ。
腕に震えは無く、その表情にも余裕しか見受けられない。



20:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:48:18.75 ID:y0CRY5Wo0
  
(#゚;;-゚)「……理由は解る。
    ターゲットである異獣がいない今、最も強い力を放つのはウチやもんな。
    闘争本能の塊言えるアンタがウチ襲うのも納得や」

でもな、と付け加え

(#゚;;-゚)「喧嘩売る相手くらい、ちゃんと見極めなあかんよ」

言葉と共に動作。
軽く鉄機人の足を押し返し、出来た隙に高速で移動。
土煙を巻き上げながら巨人の背後を取る。

しかし鉄機人の反応も早かった。
力任せに腰部を回し、その勢いのままに鋼鉄の拳を突き出す。

激音。

圧倒的な重量差があるにも関わらず、その拳は片手で止められた。

(#゚;;-゚)「あかん、ウチの力を差し引いても弱い……やっぱりパートナーがおらな本気出せんか?」

言葉が聞こえたのかは解らない。
しかし鉄機人の目といえる赤光が、僅かに鈍ったのをでぃは見逃さなかった。

(#゚;;-゚)「安心しぃ……アンタのパートナーはこの世界におる。
    誰かは解らんが、きっと誰かが見つけてきてくれるはずや。
    それまで暴れるな言うのは酷やけど、出来るだけ静かにしてほしいなぁ」

まるで赤子を相手にしているような態度と口調。
対して、鉄機人が少しだけ力を緩めた。



22:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:51:05.77 ID:y0CRY5Wo0
  
(#゚;;-゚)「えぇ子や」

受け止めていた手を少しだけ離す。
すっかり大人しくなった鉄機人は、でぃを見下げながら棒立ちし

(#゚;;-゚)「お」

背部ブースターから火を噴かせる。
その推進力と、脚部のバネで天高く跳躍した。

巻き起こった突風から目を守りつつ、轟音が遠ざかっていくのを耳で確認。
風が収まったのを感じて視界を上げれば、もう鉄機人の姿は何処にも無かった。

(#゚;;-゚)「やれやれ、元気やなぁ」

吐息し、身を翻す。
そのまま静寂が戻った森を数歩歩いて

(#゚;;-゚)「……出てこんかい、そこの誰かさん」

(  )「…………」

声を発した途端、薄かった気配が濃密になる。

鉄機人が来る前から感じていた。
この世界の人間が自分を知るわけがないことから考えて、己を知る者だと見当はつけていた。



23:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:52:51.45 ID:y0CRY5Wo0
  
しかし、出てきた人物は

(`・ω・´)「…………」

(#゚;;-゚)「……誰?」

見覚えが無かった。

(`・ω・´)「その肩の紋章……連合軍か」

(#゚;;-゚)「だから何や?
    それ知ってて、ウチ知らん言うことは……軍関係者やないってことか?」

自分で言っておきながら『ありえない』と思う。
あの世界では、国民全員が軍人だ。
軍内で最も有名といえる自分を知らなくて、連合軍の存在を知っているという事は

(#゚;;-゚)「『リフレクション』の人間? しかもそこから出た……」

そこで改めて気付く。
目の前の男に、少しだけ見覚えがあるのを。
しかも、己にとって一番大事な人だ。

(#゚;;-゚)「……アンタ、兄弟おる?」

(`・ω・´)「あぁ」

(#゚;;-゚)「その名前は?」

男は少し黙り、そして警戒する様子もなく口を開いた。



24:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:54:38.31 ID:y0CRY5Wo0
  
('A`)「ラミュタス?」

(`・д・')「あぁ、それが俺の名だ。
     別に世話になる気はないが、助けてもらった者に名乗らないわけにもいくまい」

ドクオの住むアパート。
その狭い一室、小さなテーブルにて、向かい合わせに座っている男二人。

互いの中間にはカップメン。

('A`)「あとはお湯を注いで、っと……あ、俺の名前はドクオッス」

(`・д・')「そうか、ならば改めて礼を言おう。
      助けてくれてありがとう、ドクオ……それとすまなかったな」

謝罪の理由は解っていた。
最初の出会いにて、刃を首に突きつけたことを詫びているのだろう。

あれから一時間が経過していた。

とりあえずラミュタスを運んで布団に寝かせたドクオは、飯を適当に炒めて昼食を食べていた。
匂いにつられたのだろうか。
数十分後に、涎を垂らしそうな表情で起きてきたのだ。

というわけで、彼に食べさせるためのカップメンを引っ張り出してきたわけである。



26:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:56:30.19 ID:y0CRY5Wo0
  
(`・д・')「しかし面白いものだな……湯を入れるだけで完成するのか」

('A`)「カップメン見たことないんスか?」

(`・д・')「いや、携帯食料なら似たようなモノがあったが
     こんなにも美味しそうな匂いを発するタイプは初めてだ」

物珍しそうにカップメンを見ているラミュタス。
その様子を見て、ドクオは笑みが浮かぶのを止められなかった。

(`・д・')「……どうした?」

('A`)「いや、まさかカップメンを知らない人がいるなんて思わなかったッス。
   もしかして異世界の人だったり?」

冗談交じりで言った言葉。
それを耳に入れたラミュタスの表情が変わった。

(`・д・')「……そうか、そういうことか」

('A`)「え?」

(`・д・')「あ、いや、何でもない……で、これは食べても良いのか?」

('A`)「そろそろ三分だから良いッスよ」



30:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 17:58:09.63 ID:y0CRY5Wo0
  
ペリペリとフタを剥がす。
何とも食欲をそそる匂いが、ラミュタスの鼻を刺激した。

(`・д・')「……おぉ」

そして箸を手に取り

(`・д・')「む、これはどうやって使うのだ?」

(;'A`)「えぇ〜……じゃあ、これ使って下さい」

プラスチック製のフォークを差し出す。

(`・д・')「これなら解るぞ」

お食事開始。
初めはその熱さに戸惑っていたものの、次第に慣れていったのか貪るように口に入れ始める。
その様子を眺めながら、ドクオは一つの疑問を口にした。

('A`)「ところで、あの剣みたいなのは何なんスか?」

視線はラミュタスの足元へ向けられる。
銀の色を放つ剣のような金属が置かれていた。

(`・д・')「ん……悪いが聞かないで欲しい。 そして触れてはいけない」

('A`)「……はぁ」

気圧すというよりも、興味をもたれたことに恐怖を感じているかのような口調。
それを不思議に思いながらも、ドクオは一応引き下がった。



32:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:00:00.48 ID:y0CRY5Wo0
  
食事が終わり、一息つく。

ラミュタスが立ち上がったのは、数十分後だった。

('A`)「トイレッスか?」

(`・д・')「いや、あまり長居するわけにもいかないだろう……俺はもう行こうと思う」

('A`)「何処に行くんスか」

ラミュタスの口から沈黙が発せられる。
答えない、というよりも、答えられない、という様子の沈黙だった。

(;'A`)「……もしかして行く当てがない? 記憶喪失?」

(`・д・')「確かに、記憶は無い」

嘘は言っていない。
彼の記憶に、この世界のことは一切無いからだ。

('A`)「なら、はいそうですかって見送ることは出来ないッスね」

少し考え

('A`)「あ、そうだ……どうせ外に出るつもりなら、ちょっと行こうと思ってトコがあるんスよ。
   そこにはちょっとした情報通もいるし、一緒に行きません?」

(`・д・')「それは何処だ?」

('A`)「バーボンハウスッスよ」



34:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:01:28.40 ID:y0CRY5Wo0
  
森の中。
静寂が支配する中で、二人の男女は会話を続けていた。

(#゚;;-゚)「そうか、アンタも解らんか……」

(`・ω・´)「『リフレクション』を脱出したのは良いが、連合軍本隊まで辿り着けなかったからな。
      途中で離遠戦中の連合小隊を会った程度で、その時に連合軍の存在を知った。
      それと、エクストという友人と一緒に行動していたのだが
      突然の異世界跳躍で離れてしまっているのが現状だ」

(#゚;;-゚)「で、アンタは何でここにおるん?」

(`・ω・´)「……人ごみは嫌いなんだ」

まるで叱られた子供のように、少し拗ねた口調で言う。
むしろ言うことが恥だと思っているようだった。
でぃは笑みを浮かべる。

(#゚;;-゚)「安心しぃ、ウチもや」

(`・ω・´)「似た者同士か」



36:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:03:06.82 ID:y0CRY5Wo0
  
(#゚;;-゚)「アンタもウチも似たような境遇かも解らんなぁ。
    人からの注目を嫌うようになってもうた、って感じやろ?」

(`・ω・´)「まぁ、な……兄が下手に有名だったから
      その弟である俺も注目されるのは当然だったのだが」

(#゚;;-゚)「ウチは自分の力のみに注目されとるからなぁ……まぁ、今更何言うても変わらん変わらん」

(`・ω・´)「……そうだな。
      それと『アンタ』じゃなくて、『シャキン』という名がある」

硬い表情が少しだけ和らぐ。
それを見ながら

(#゚;;-゚)「アンタ、ホンマにラミュタスに似とるな。
    ちょっと優しくされたら簡単に心を開く……今まで友達とかおらんかったタイプやろ?」

(;`・ω・´)「…………」

(#゚;;-゚)「あぁあぁ、落ち込む必要ないよ」

ラミュタスも同じような反応をしていた。
かつてを思い出し、でぃは少しだけ感傷に浸る。



37:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:05:25.20 ID:y0CRY5Wo0
  
しかし、それは一瞬で中断された。

「あれれー? そっちは誰ですかー?」

(`・ω・´)「!?」

(#゚;;-゚)「……ヘリカルか」

*(‘‘)*「おっひさー、軍神ちゃん」

ヘリカルだ。
相変わらずのゴスロリ衣装で、背景となっている森とまったく合っていない。
コロコロと軽い笑いを漏らしながら近付いてくる。

*(‘‘)*「渡辺ちゃんが呼んでるんです。
     是非とも軍神ちゃんの力を貸して欲しいって」

(#゚;;-゚)「やっぱりこの件は渡辺やったんか。
    まぁ、そうなるとウチとアンタらの目的は一緒いうことやね……」

*(‘‘)*「話が早くて助かるです。
    既にデフラグおじちゃんがGDFの所在を探してますよ」

(#゚;;-゚)「なぁるほど……ウチが誘いに乗る乗らん関わらずに回収するつもりかい。
    ウチが断っても、GDFはアンタらの手に落ちる。
    ウチがおれば、GDFを与えて戦力増強……選択肢云々の問題以前やな」

*(‘‘)*「私は何も知りませんですよ?」

(#゚;;-゚)「はン、女狐が」



38:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:07:09.80 ID:y0CRY5Wo0
  
心底嫌そうな溜息を吐き、シャキンの方へ振り返る。

(#゚;;-゚)「アンタはどうする?
    ウチはこのお嬢ちゃんについていくんやけど。
    一緒来る言うなら、仲間入れるために紹介してあげても構わんよ」

(`・ω・´)「いや……別に目的があるからやめておく」

(#゚;;-゚)「目的?」

(`・ω・´)「兄に会うという、な」

(#゚;;-゚)「それやったらついて来ればええやないか。
    最終的に、ラミュタスはウチらのトコに来るよ」

(`・ω・´)「それじゃあ駄目なんだ」

その瞳を見たでぃは理由は問わなかった。
確固たる意思が宿るそれに気圧されたわけではない。

ラミュタスの恋人とはいえ、でぃは所詮他人だ。
この兄弟の間に割って入ることなど出来ない。

(#゚;;-゚)「そか……まぁ、せいぜい頑張りぃ」

(`・ω・´)「兄に会う前に貴女に会えてよかった。 ありがとう」

(#゚;;-゚)「礼を言われる筋合ないよ……別にウチは何もしとらん」

(`・ω・´)「俺が勝手に感謝の念を覚えているだけだ。 気にするな」



39:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:08:45.46 ID:y0CRY5Wo0
  
言い残し、シャキンは背を向けて去っていった。
その後姿を眺めるでぃに声が掛かる。

*(‘‘)*「浮気?」

(#゚;;-゚)「阿呆」

苦笑し

(#゚;;-゚)「で、GDFの回収はいつ頃になる?」

*(‘‘)*今週中には回収出来るだろうって言ってましたです」

(#゚;;-゚)「そか。 アレはウチの翼やからな……早目の回収頼むよ」

歩き出す。
シャキンとは逆方向だ。
慌ててヘリカルが追いつくも、歩く速度は緩めない。

軍神の黒い瞳には、暗く燃える炎が宿っていた。
それは復讐か、使命か、それとも別の何かなのだろうか。

いずれにせよ、


それが、現時点で最強の力を持つ女が渡辺側についた瞬間だった。



40:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:09:54.74 ID:y0CRY5Wo0
  
カラン、と扉に備え付けたベルが鳴る。
それは入店と出店の合図だ。

(´・ω・`)「いらっしゃい」

声の先。
そこには二人の男が立っていた。

('A`)「うぃっす」

( ゚∀゚)「んだよ、テメェか……」

明らかに落胆の色を見せているのはジョルジュ。
しかし今の彼に犬の尾があれば、パタパタと振っていることだろう。

(´・ω・`)「お隣の人は誰かな?」

(`・д・')「俺は――」

('A`)「あぁ、ちょっとした友達だ……ちょっと悩み事を聞いて欲しくてな」

(´・ω・`)「ん、別に構わないよ」

言いながら、コーヒーメーカーのスイッチを入れる。
それを見つつ、ドクオとラミュタスはカウンター席に座った。



41:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:11:20.53 ID:y0CRY5Wo0
  
(`・д・')「……客はいないのか?」

(´・ω・`)「痛いところ突いてくるね」

(`・д・')「あぁ、失礼だったな……すまなかった」

(´・ω・`)「別にいいんだけどね。 もう慣れたし。
      でも、こういう風に悩み事を相談するには良い環境だと思わないかい?」

と、クッキーの入った皿を出す。

(´・ω・`)「これはサービスだよ。
      で、どんな悩み事なのかな?」

ドクオはラミュタスの顔を見る。
どうやら彼本人も悩み事の内容を知らないらしい。

少しの沈黙後、ラミュタスは口を開いた。

(`・д・')「俺は、異世界の人間だ」

(´・ω・`)「…………」

('A`)「…………」

( ゚∀゚)「…………」

しばらくの沈黙が流れる。
誰も動かず、誰も喋らず。
ただただ、息を吸って吐く音だけが木霊した。



42:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:12:48.44 ID:y0CRY5Wo0
  
溜め込まれた静寂という雰囲気は、時を以って爆発する。

( ゚∀゚)「異世界だぁ!? 寝言は寝て言えよプギャーwwwwwwwwwwww」

('A`)「ちょwwwwww俺の立場考えてwwwwwwwwww」

(`・д・')「…………」

(´・ω・`)「いや、そこまで馬鹿にするのもどうなの?
      それに異世界という単語、僕は正直言って寝言の類だとは思えない」

( ゚∀゚)「何でよ?」

(´・ω・`)「忘れたのかい? クルト博士の日記に、それらしい言葉があったじゃないか」

('A`)「あぁ、『向こう側』だとか何とかだっけ?」

(`・д・')「クルト……?」

ラミュタスが顔を上げた。
表情には『疑問』と『驚愕』が張り付いている。
そしてその驚愕は、他の三人にも同じように張り付いた。



45:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:14:08.80 ID:y0CRY5Wo0
  
(´・ω・`)「……知ってるのかい?」

(`・д・')「直接の面識は無い……が、五年ほど前の資料に関係者として名があったのを憶えている」

('A`)「五年前……おかしくねぇか?
   確かクルト博士が死んだのって十年くらい前だろ?」

(;゚∀゚)「ゆ、ゆゆゆ幽霊か!?」

(´・ω・`)「その資料の年代は確かなのかな?」

(`・д・')「あぁ、これは絶対だ。
     今は言うことが出来ないが、俺のいた世界で重要な『ある事』をまとめた資料だからな」

(´・ω・`)(ある事……?)

('A`)「でも、五年前ってのはおかしいだろ……誰かがクルトの名を騙ったとか?」

(`・д・')「こちら側の認識としては科学者だったが、そちらは?」

(´・ω・`)「僕らの方も科学者、だね。
      最強生物を自らの手で作り出そうとしたくらいだから」



47:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:15:53.68 ID:y0CRY5Wo0
  
(`・д・')「最強、生物……」

('A`)「知ってるんスか?」

(`・д・')「あ、いや……悪いが知らないな。
     だが、共通点から考えるに同一人物だと思った方が良いかもしれない」

(´・ω・`)(何か怪しいね……騙している? いや、言うことが出来ないのかな……?)

(`・д・')(やはりこちらでは、そういう認識だったか……)

湯気が立つコーヒーカップを手に取り、ラミュタスは思考する。
その様子を見ていたショボンが

(´・ω・`)「で、悩み事って具体的に何なのさ?」

( ゚∀゚)「異世界やら何やらで忘れてたぜ」

(`・д・')「悩み事というか、むしろ頼み事に近いかもしれない。
      今から言うモノを探し出して欲しいんだ」

(´・ω・`)「今はそういう仕事はしていないんだけど……とりあえず聞こうか」

(`・д・')「――『GDF』だ」



49:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:17:29.71 ID:y0CRY5Wo0
  
从'ー'从「というわけで、GDFを最優先で探し出しまーす。
      デフラグさんは現状を報告して下さい」

渡辺達が潜むアジト。
その広い空間にて、少人数での会議が行われていた。
会議といえど、ただ倉庫のような空間にて、各々好きな体勢で話し合っているに過ぎないが。

煙草を口にくわえたデフラグが

[゚д゚]「どうにも情報が出てこなくなった。
    俺が思うに、既に誰かの手に渡ってると見て間違いねぇと思う」

<ヽ`∀´>「誰かの手に? 一体誰が?」

[゚д゚]「それが解んねぇから言ってんだろうが、ニダ坊」

(#゚;;-゚)「GDFの価値が解っとらん奴が持っとるんやろうなぁ……でないと、隠す理由に繋がらん」

[;゚д゚]「うぉ!? いきなり後ろから声出すんじゃねぇよ!
     ってかテメェは軍――」

(#゚;;-゚)「あぁ、さっきこのグループに入った『でぃ』言います。
    本当はDって呼んで欲しいところなんやけど、今は『軍神』で名が通ってますよ、と」



50:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:19:13.71 ID:y0CRY5Wo0
  
<ヽ`∀´>「軍神……久しぶりニダね」

(#゚;;-゚)「お、ニダー。
    アンタは軍長なってから前線に出ることなくなったからなぁ。
    常に最前線に出てたウチとは、一年ぶりくらいちゃう?」

そこで手を叩く音が響く。

从'ー'从「はいはい、過去を振り返るのは後にしてね」

*(‘‘)*「どうにもこのメンバーは御喋りが多いです」

(#゚;;-゚)「アンタも負けとらんよ」

从'ー'从「デフラグさん、それでGDFを今持ってる人ってのは解んないんでしょ?
      それは大体の位置も解らないってこと?」

[゚д゚]「いや、幾つか見当はつけてるぜ。
    コソ泥は普通の戦闘機と間違えてるはず……運ぶなら陸路か海路だろうよ。
    見当つけてんのは三ヶ所で、あとは絞り込むだけだ」

<ヽ`∀´>「虱潰しに散るのは出来ないニダ?」

从'ー'从「人手少ないし、あまり人目がある場所に出るのも良くないなぁ」

[゚д゚]「心配すんな……あと二日あれば特定してやる」

(#゚;;-゚)「頼もしいねぇ」



51:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:20:57.40 ID:y0CRY5Wo0
  
ヘラヘラと笑う軍神を、半目で睨むデフラグ。
その瞳は『嫌悪』の類ではなく、むしろ『好奇』の色で染まっている。

[゚д゚]「俺はこれしか出来ねぇからな。
    それと軍神、お前は後で俺の部屋に来い」

*(‘‘)*「わぉ! 大胆です!」

[゚д゚]「ちげぇよ馬鹿タレ。
    渡辺、お前は気付かねぇのか? 軍神の身体に」

(#゚;;-゚)「あぁ、もうガタが来てたんかい」

[゚д゚]「どっかで無茶しやがったな?
    まぁいい、この機会に俺が新品同様にしてやんよ」

(#゚;;-゚)「おおきに」
    (鉄機人のが効いたんかなぁ)

そういえば、最近は戦闘ばかりでロクな調整をしていなかった。
思い出し、でぃは心の中で苦笑する。

自分は生きたいのか、それとも逝きたいのか、と。



52:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:23:11.88 ID:y0CRY5Wo0
  
都市ニューソクの郊外。
『戦跡荒野』に最も近い倉庫であるここに、怪しい人影があった。

(  `ハ´)「フホホ、大体の準備は出来たアルね」

中国風の服を着ている彼はシナーという名を持っていた。
いわゆる『裏』に精通している人間であり、武器商人でもある。

都市ニューソクのスラム街を拠点に活動し
同じような『裏』に潜むテロリスト、国外の武装ゲリラなどに武器・兵器を売るのが主な仕事だ。
その何処の組織にも加担しない姿勢から、『無属のシナー』と呼ばれている。

今、彼は新たな商品を手に入れて喜んでいた。

彼の目の前には、全長十五メートルほどの巨大な機体。
灰色を基調としたそれは『戦闘機』と呼ばれる形状を持っていた。

(  `ハ´)「ラッキーだったアル。
       まさか朝の散歩中に、戦闘機を拾うとは思わなかったアルよ」

精査した結果、この戦闘機は既存のモノと性能が大きく異なることが解っていた。
ちなみに『異なる』ということが解っているが、それが何なのかは不明であったりする。

どうやら、自分達の技術では到底理解出来ない代物らしい。
しかも鍵が無いのか、起動させることすら出来ない状態である。



54:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:25:03.84 ID:y0CRY5Wo0
  
(  `ハ´)(でも関係ないアル。
       ワタシはとにかく売れれば良いアルからな)

今回、この戦闘機を売る相手は久々に大物だった。
何せ『世界政府』なのだから。

世界政府。
正式名称は『世界運営政府』だ。
その名が示すとおり、世界を統一する巨大政府機関のことである。

この世界は、東西の巨大大陸と南大陸、そして西側寄りの島国から成っている。
過去には様々な国があったのだが、今はほとんどが七大国に吸収されている状況。

第三次世界大戦後、世界は七つに分けられていた。
アメリカ、イギリス、ロシア、中国、オーストラリア、アフリカ、そしてJAPAN(日本と呼ぶのは日本人だけ)。

しかし巨国が集えば、利益のいざこざは避けられない。
そこで七大国を統一する機関がオーストラリアで生まれた。

それは、『イクヨリ=エイチ』という男を筆頭に生まれた組織。
圧倒的なカリスマ性を持ったこの男が、七大国のトップ達を説き伏せたのが始まりだ。



55:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:26:39.62 ID:y0CRY5Wo0
  
利益に捉われず、ただ世界平和維持のために黙々と仕事をこなすことから『世界運営政府』と呼ばれた。

表向きは綺麗な仕事しかしていないように見える。
むしろ世間の認識はそうだ。
しかし、そういうイメージが定着しているのも
汚い仕事――つまり裏を担う『ラウンジ』という特殊部隊が在るからだ、という噂があった。

(  `ハ´)(そんな組織が、武力の塊である『戦闘機』を欲しがるということは
       やはりラウンジの戦闘力強化に使われるアルかなぁ)

思うが、口にはしない。
誰が聞いているのか解らないからだ。

相手は慈善行為をしている組織といえど、その力は強大。
敵に回すには相手が悪過ぎる。

(  `ハ´)(まぁ良いアル。
       こちらとしては金が入れば文句無いアルよー)

視線を移せば、そこには連結された装甲列車の姿。
距離的に五十キロメートルはあるであろう『戦跡荒野』を越えるために必要な『足』だ。
これに商品を載せて、国外へ飛ばすための飛行場を目指す。

今回は極秘を心掛けなければならないので、連れて行く人数は少数となるが

(  `ハ´)(多分、大丈夫アルよ……誰も知られずに運べばすぐ終わるアル)



56:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:28:24.37 ID:y0CRY5Wo0
  
それを、陰から見つめる姿があった。

<_プー゚)フ(おいおい、何かヤベェんじゃねぇのか……?)

彼の手にある小さなレーダー。
ある反応を追跡するそれは、シナーの目の前にある機体から反応が発せられていた。

<_プー゚)フ(もう積み込みしそうな雰囲気だな。
         ったく、価値も知らずに勝手に自分の物にすんなよ)

軽く舌打ちするが、それで現状を何とか出来るわけではない。
武器と言えば、腰に銃を一丁差してあるだけ。

今は一人でいるようだが、暴れれば待機している部下達が襲い掛かってくるだろう。
この武器だけでGDFを奪って逃走など出来るわけがない。
というか、そもそもキーが無ければ起動さえしないのだ。

<_プー゚)フ(さて、どうしたもんかね……)

目的のモノでなかったのが悔やまれるが、だからといって放ってはおけない。
何処に運ばれるのかは知らないが、アレを扱えるのは一人だけだ。

<_プー゚)フ(何がどうあれ、持ち主のモノは持ち主のモノだしな……んあ?)

ふと、近くの壁にチラシが張ってあるのが目に入る。
シンプルなデザインの中央に、大きくこう書かれていた。

『個人の正義は、我々が代弁します!
 〜フィーデルト・コーポレーション〜 』



58:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:29:55.78 ID:y0CRY5Wo0
  
暗い部屋。
一つの古い電灯が、室内を薄暗く照らしている。

その中に二人の人間がいた。

一人は、ベッドの上でうつ伏せになっている。
一人は、その寝ている人間の背中を触っていた。

[゚д゚]「ったく、何でこうなるまで放っておいたんだ?」

声は、うつ伏せで寝ているでぃに掛けられていた。
彼女は衣類を全て脱ぎ去って寝ている状態。
その背中を、デフラグは細長い機器を用いて作業していた。

(#゚;;-゚)「常に最前線で気張っとったからなぁ。
    本陣で出来るようなメンテナンス機器なんて無かったし、そもそもイジれる人間がおらんかったわ」

[゚д゚]「何やってんだよ、護国院は。
    兵達の心の支柱になっている軍神の扱いを、ちったぁ考えやがれってんだ。
    そもそも前提が人間だろうが……」

(#゚;;-゚)「嬉しいこと言うてくれるなぁ。
    でも現実はそうもいかんのよ、これが」

その言葉に、デフラグは手を止める。

[゚д゚]「どういうこった?」



60:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:31:52.69 ID:y0CRY5Wo0
  
(#゚;;-゚)「『軍神』……認識の違いはあれど、結局は渾名。
    言うなれば都合の良い『偶像』言うことやね……これの意味、解る?」

デフラグは沈黙で答える。
その静寂を否定と受け取ったでぃは、少し声のトーンを落とし

(#゚;;-゚)「代わりはいくらでも利く言うことや。
    ウチが死んでも、代役を立てようと思えばいくらでも可能なんよ。
    おそらく、次の軍神はラミュタスかニダーやったんやろうね」

[゚д゚]「はン、御上様が考えそうなこって」

溜息を吐きつつ彼は作業に戻る。
機械をイジる音が再開するが、すぐに止んだ。
二度目の溜息を吐いた彼は、だが、と続け

[゚д゚]「断言するが『軍神』はアンタしかなれねぇよ。
    言葉通り、人じゃなくて神だからな」

(#゚;;-゚)「そりゃ微妙なモノ言いやなぁ……」

[゚д゚]「アンタの過去は知っているつもりだ。
    だからこそ、軍神と呼ばれるってことも解ってるつもりだ。
    解っているからこそ、こうやって完璧なメンテナンスをしている」

(#゚;;-゚)「それが?」

[゚д゚]「今ので解れよ……俺達は『軍神』という偶像じゃなくて、アンタ自身の力を必要としてんだってことさ」

沈黙が訪れ、しばらく作業音が続く。



61:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:33:25.68 ID:y0CRY5Wo0
  
(#゚;;-゚)「……ふっ」

でぃの口元に笑みが浮かぶ。
可笑しいような嬉しいような、そんな意味の篭った息が噴き出たのは直後。

[;゚д゚]「な、何が可笑しいんだ」

(#゚;;-゚)「いや、別に何も」

笑みを残したまま

(#゚;;-゚)「なぁ……ちょっと眠くなったから、寝てええかな?」

[゚д゚]「あ? 構わねぇよ。
    あと一時間くらい掛かるから、終わったら起こしてやる」

(#゚;;-゚)「おおきに……ふあぁ」

小さい欠伸。
そのまま目を瞑って眠りの世界へと落ちていった。
意識が闇に染まる寸前、彼女は思う。



63:お世話係(大分県) :2007/03/20(火) 18:34:22.92 ID:y0CRY5Wo0
  

色々と酷い、目も当てられない人生。

今も尚、己はその醜い人生を恨んでいるはずだ。



しかし

だが、しかし



この祭り上げられた偽りの力ではなく


自身が得た、忌まわしき力を必要とされるのならば――





――それもまた、悪くないことなのかもしれない。






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