( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 3:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:37:06.79 ID:y361l3On0
- 第八話 『此処とは異なる彼方の世界』
都市ニューソク。
中心街の数ブロック隣にある小さな地区。
そこは、人が住むような雰囲気ではなく、まるで地区全体が裏道といった様相だ。
古い家屋や、誰も利用していないであろう建物。
草が伸び放題になっている小さな公園。
窓ガラスが砕け散っている古いマンション。
その地区だけ世界の滅びが来たかのような光景が広がる。
そんな中、未だに活動を続ける店があった。
<_プー゚)フ「ふぅ、ここか……」
引き千切ったチラシを片手に、男が足を止める。
目の前には、真新しい小さなコンビニのような店。
ただし内部は曇りガラスによって伺うことが出来ないでいる。
- 5:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:38:42.75 ID:y361l3On0
- 自動ドアをくぐれば、白い壁と床が彼を出迎えた。
入ってすぐのカウンターには、一人の女性が座っている。
そして彼女はこう言った。
「――いらっしゃいませ、そしてお帰り下さい」
<_;プー゚)フ「は!?」
「直接いらっしゃった、ということはチラシを見ての御来店ですね?」
<_;プー゚)フ「あ、あぁ」
「我が社、『フィーデルト・コーポレーション』は
基本的に専用電話番号にて御連絡を下さった方の御依頼しか受け付けません」
<_;プー゚)フ「ちょっと待て……その電話番号なんてのはチラシには書いてないし
そもそも、だったらこの店は何なんだよ?」
「ダミー、ということになりますか」
<_;プー゚)フ「えぇぇぇぇぇ」
「説明は以上です、お帰り下さい」
有無を言わせぬ雰囲気を放つ女性。
完全に気圧され、男はトボトボと店を出ることとなった。
- 7:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:40:15.81 ID:y361l3On0
- 外はまだ肌寒い風が吹いている。
それを身に受けつつ
<_;プー゚)フ「マジかよ……どうなってんだ、この世界は?
もしかして全部こんな感じなのか!?」
爪゚ -゚)「いえ、違いますが」
<_;プー゚)フ「うぉ!?」
いつの間にか、真横に女性がいる。
紺色のスーツを着た、金髪ロングが美しい女性だ。
少し違和感があり、その根源は首に巻かれた鉄製の包帯のようなモノ。
爪゚ -゚)「どいて頂けませんか」
言葉に対して男は一瞬だけ考える。
女性の視線を追えば、自分が店のドアの前に立っていたことに気づいた。
<_;プー゚)フ「あ、あぁ、悪いな」
慌てて立ち位置を変えると、金髪の女性はすぐさま店の中へと入っていった。
<_プー゚)フ(……客?)
疑問に思うと同時、女性は来た時と同じ格好で颯爽と店を出る。
そのまま、まるで男が見えていないというように無視をして歩き出す。
- 9:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:41:59.84 ID:y361l3On0
- <_プー゚)フ「あ、おい」
爪゚ -゚)「…………」
<_;プー゚)フ「んだよー」
女性はそのまま直進し、しかし突然足を止めた。
携帯を取り出して耳に当てる。
爪゚ -゚)「はい――えぇ、構いませんが」
澄んだ、よく通る声が男の耳まで届いてくる。
聞く気はあまりなかったのだが、それは半ば強制的に鼓膜を振るわせた。
爪゚ -゚)「――はい、ではこちらから。
えぇ、構いません……そちらの恩威は社長もよく把握しておりますので」
少しの沈黙。
彼女は頷きながら
爪゚ -゚)「GDF、ですか……解りました」
<_;プー゚)フ「!?」
- 11:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:43:38.20 ID:y361l3On0
- GDF。
彼女は確かにそう言った。
携帯電話を懐にしまい、そのまま歩き出そうとする彼女に男は思わず声をかける。
<_;プー゚)フ「お、おい! アンタ今、GDFって言ったよな!?」
爪゚ -゚)「……盗み聞きは感心しませんが」
<_;プー゚)フ「いや、アンタの声が大き過ぎるだけだ。
ってか、GDFをどうするつもりだ!?」
爪゚ -゚)「部外者に口外することは出来ません」
<_プー゚)フ「頼む、教えてくれ!
俺はそれの奪還を頼むために、ここまで来たんだよ!」
その言葉に、一瞬だけ女性は眉をひそめる。
爪゚ -゚)「どういう意味でしょうか?」
<_プー゚)フ「そのままの意味だ。
俺はGDFがある場所を知っていて
でも人手が足りねぇからFCとやらに借りようと思ってたんだよ」
爪゚ -゚)「…………」
- 12:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:45:28.62 ID:y361l3On0
- <_プー゚)フ「アンタFCの関係者だろ?
客としてあの店に入ったんなら、出て来た時に落胆や憤りを見せなきゃおかしい。
何せ、店に入った時点で何も知らない素人って証拠だからな。
その様子を見せねぇってことは、カラクリを知ってたってことだ……違うか?」
爪゚ -゚)「…………」
ジッ、と無言でこちらを見つめる女の鋭い双眸。
見ているだけで射殺せそうな視線を、男は意地で受け続けた。
爪゚ -゚)「では、こうしましょう」
<_プー゚)フ「?」
爪゚ -゚)「私が独自に見つけた情報提供者、それが貴方。
FCが直接、貴方の御依頼を受けることが出来ませんが、関係することは可能です」
<_プー゚)フ「……つまり、アンタに来た方の依頼を優先しろってことだな?
GDF捜索はあくまでソイツの依頼であって、俺の依頼ではない。
奪還後、そのGDFは依頼主の手に渡る、と」
爪゚ -゚)「はい」
- 13:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:47:09.37 ID:y361l3On0
- 男は少しだけ考える。
向こうの依頼者とやらがGDFを知っているという事は、己と同じ世界の人間かもしれない。
むしろその可能性の方が高い。
GDFが依頼主に渡る点はどうにでもなる。
そもそも自分が得ても仕方のない代物だ。
今はとにかく、妙な連中の手に落ちないことを優先すべき。
少し引っかかるのは、依頼主とやらがGIFではなくGDFを求めるという点だが
<_プー゚)フ(このまま無駄に行動しても、GDFが運ばれちまったら意味がねぇ。
ここは意地を捨ててでも関係を持った方が正解だな……)
爪゚ -゚)「如何しますか」
<_プー゚)フ「OK、その案に乗るよ。
もちろん情報は知ってる限り全てを話す……その代わり――」
爪゚ -゚)「えぇ、この件への関与を認めます。
向こう側の依頼主が了承すれば、の話でしょうが」
- 15:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:48:46.53 ID:y361l3On0
- <_プー゚)フ「交渉成立だな……あ、ちなみに俺は『エクスト』って名前だ。
互いに呼び難いから、アンタの名も教えてくれ」
爪゚ -゚)「――ジェイルと申します」
<_プー゚)フ「OK、よろしくな、ジェイルさん」
爪゚ -゚)「では、こちらに待機させてある車両へどうぞ。
これから依頼主様が待つ場所まで移動します」
言葉が終わると同時、背を向けて歩き出す。
その華奢な背中を追いながら、エクストは思った疑問をぶつけた。
<_プー゚)フ「ところで何処なんだ、そこは?」
ジェイルは首だけ振り向かせ
爪゚ -゚)「――バーボンハウスです」
- 16:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:51:03.43 ID:y361l3On0
- 内藤家。
現在時刻は六時半。
少し早めの夕食が終わったリビング。
ソファの上で、ブーンとハインリッヒが携帯ゲーム機で遊んでいた。
『愛してるぜぇぇ! カァァァシィィィムゥゥゥ!!』
『やはりラムダドライバなどという不完全な……いや、俺の腕が及ばなかっただけか……』
ドカーン
低い不気味な音楽と共に、画面に『GAME OVER』の文字が浮き出る。
(;^ω^)「ガウルン強過ぎワロタ」
从;゚∀从「毎ターン集中+覚醒、ラムダドライバは無いですよね……」
(;^ω^)「序盤でこれはねぇお」
ガウルン? どうせ今回も防御馬鹿だろう?
そう思っていた時期が僕にもありました。
- 18:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:52:51.70 ID:y361l3On0
- J( 'ー`)し「はいはい、御飯を食べ終わったら食器を運びなさいねー」
川 ゚ -゚)「手伝います」
J( 'ー`)し「ありがとうね」
川 ゚ -゚)「お前達もちゃんと運ぶんだぞ」
从 ゚∀从「は、はい!」
( ^ω^)「はーい」
と、そこでブーンの携帯が軽快な着信音を奏で始めた。
画面には『ショボン』という表記。
( ^ω^)「お? ショボンからだお」
通話ボタンを押し、耳に当てれば
(´・ω・`)『やぁ、ブーン』
( ^ω^)「おっおっ、こんな時間にどうしたんだお?」
(´・ω・`)『いや、ちょっと聞きたいことがあってね』
- 19:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:54:14.38 ID:y361l3On0
- ( ^ω^)「お?」
(´・ω・`)『いきなりだけど、君は『世界交差』という言葉を聞いて何を想像した?』
確かに、いきなりだ。
しかしショボンは、意味も無くこんな質問をするために電話を掛ける奴じゃない。
それが解っているブーンは少しだけ考え
( ^ω^)「うーん……単純に世界が交わる感じかお?
言葉にしにくいけど、幾つかの世界がごっちゃ混ぜになるような」
(´・ω・`)『だとすれば、その証拠はどのように現われると思う?』
( ^ω^)「それは簡単だお。
異世界の人間や物が現われるはずだお」
(´・ω・`)『うん、正論だ』
( ^ω^)「で、それがどうかしたのかお?」
(´・ω・`)『前から思ってたけど、君ってかなり鈍いよね』
(;^ω^)「おっおっ」
(´・ω・`)『君がこの調子だと、クーさんも結構苦労してるかもしれない。
まぁそれは置いておいて』
個人的に一番気になる部分を置いていかれてしまった。
どうしようかと思考を巡らせている間にもショボンは話を続ける。
- 21:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:55:36.87 ID:y361l3On0
- (´・ω・`)「で、僕が言いたいのはね。
その異世界の人物が、こちら側で確保出来たってことなのさ」
( ^ω^)「おー、マジかおー」
(´・ω・`)『…………』
(;^ω^)「……マジで!?」
(´・ω・`)『それが天然なのか確信犯なのか、僕には判断つかないなぁ。
とにかく時間があるならバーボンハウスまで来てよ。
ちょっと君達にもやってもらいたい仕事が出来そうだし』
( ^ω^)「おk、把握したお」
通話を切り、携帯を折りたたむ。
从 ゚∀从「誰からだったんですかー?」
( ^ω^)「ショボンからだお。
それと、これからちょっとクーと一緒に出かけてくるお」
川 ゚ -゚)「む?」
台所にいるクーが振り返る。
その口にはスプーンが咥えられており、頬がモゴモゴと動いている。
- 22:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:57:06.56 ID:y361l3On0
- (;^ω^)「……おかわり? 相変わらずよく食べるお」
川;゚ -゚)「……いや、その……君の母が作る料理は美味しいからな、うん。
それで私が何だと?」
( ^ω^)「今からバーボンハウスに行くんだけど、一緒に来れるかお?」
川 ゚ -゚)「何かあったのか?」
( ^ω^)「多分、行けば解るお」
川 ゚ -゚)「ふむ、解った」
いつもの黒コートを引っ掴み、外出準備を整え始める。
とはいえ、そのコートを着るだけなのだが。
从 ゚∀从「僕も一緒に行ったら駄目ですか?」
( ^ω^)「うーん、どうするお?」
ハインリッヒに関して最高発言力を持つクーへ視線を向ける。
彼女はコートの襟を直しながら
川 ゚ -゚)「バーボンハウスなら危険も無いだろうし、別に良いと思うぞ」
从 ゚∀从「やった!」
J( 'ー`)し「外は寒いから、ちゃんと上着を着なさいよー」
从 ゚∀从「はい!」
- 23:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 15:58:34.50 ID:y361l3On0
- それから二十分後。
バーボンハウスの内部。
薄暗い店内に、幾つかの人影。
バーボンハウスまで辿り着いたブーン達が、ショボン達と話し合っている。
(´・ω・`)「まぁ、これこれこういうことがあって
異世界から来たっていうラミュタスさんを、ドクオが拾ったってわけだね」
( ^ω^)「おー」
('A`)「おいコラテメェ、あんまり信じてねぇな?」
( ^ω^)「そういうドクオはどうなんだお?」
('A`)「……五分五分ってトコか」
( ^ω^)「僕もそんな感じだお。
異世界なんていきなり言われても信じられるわけがないし
でも、状況が状況だけにまったく信じないわけにもいかないお」
川 ゚ -゚)「話の内容で判断するには、少し材料が足りない気もするが」
(´・ω・`)(比較的信憑性は高いと思うけどなぁ……クルト博士のことを知ってるみたいだし)
(`・д・')「…………」
- 24:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:00:23.84 ID:y361l3On0
- と、そこで車の走行音が近付いてくる。
それは店の前で停まり、続いてドアが開き閉められる音。
カランカラン、とバーボンハウスの扉が開かれた。
爪゚ -゚)「こんばんは」
(´・ω・`)「やぁ、来たね」
( ^ω^)「お? もう復活したんですかお?」
ブーンの記憶が間違っていなければ、ジェイルは数日前に首を引き千切られたはずだ。
今、彼らの目の前にいる彼女は、首に鉄を巻いている他は何ら変わりない姿で立っている。
爪゚ -゚)「いえ、応急処置中という状態です。
通常行動には支障ありませんが、戦闘行為などの激しい運動は不可能となっております。
なので御主人様の護衛が出来ない今、自分に出来ることをしている状況にあります」
(´・ω・`)「聞いた話によれば、各ダミー店のチェックに回ってるとか。
ついでに仲介人も買って出てるらしいね」
爪゚ -゚)「今の所、そのくらいしか出来ないでしょうから。
私や貴方達の所に来た、キチガイじみた客の相手……意外に大変だと痛感しました。
後で御主人様に仲介人の待遇改良提案をしてみるつもりです」
<_;プー゚)フ「何かものすげぇ失礼なこと聞いたような」
(´・ω・`)「そちらが情報提供者さん?」
爪゚ -゚)「はい」
- 25:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:02:07.48 ID:y361l3On0
- (`・д・')「――!」
<_;プー゚)フ「あ!?」
ラミュタスとエクストが目を合わせた途端、二人は驚愕に目を見開く。
( ^ω^)「?」
<_;プー゚)フ「……あ」
(`・д・')「…………」
どうするべきか。
知らぬフリをするべきか。
エクストの脳内にメリットとデメリットが駆け巡り、損得勘定するも――
しかし無駄だということを思い知らされる。
(`・д・')「……久しぶりだな、エクスト」
<_;プー゚)フ「あちゃー」
- 26:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:03:35.12 ID:y361l3On0
- (´・ω・`)「もしかして、互いに知ってる仲なのかな?」
(`・д・')「コイツはエクスト=プラズマン……俺の、元部下だ」
そう言う彼の目は、どう見ても気まずさが見てとれる。
その雰囲気を全身で受けつつ
<_プー゚)フ「その人はラミュタス。
俺の元上司で……『風鷲』って呼ばれてた凄腕パイロットだ」
从 ゚∀从「パイロットさんなんですか?」
(´・ω・`)「例えば、何の?」
エクストはチラリ、とラミュタスを見る。
彼は『我関せず』と言わんばかりに、腕を組んで目を瞑った。
仕方ないのでエクストが口を開く。
<_プー゚)フ「……GIFとGDF、だ」
('A`)「そもそもその『ジフ』と『ジーディーエフ』って何だ?
何か奪還するって話らしいが、何なのかが解らないとやりにくいぜ」
<_プー゚)フ「その説明もしなきゃならないな。
それに、俺達やGDFといった異世界のモノが来てるってことは
警戒すべき奴がいる……その説明も、な」
- 27:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:05:03.25 ID:y361l3On0
- 川 ゚ -゚)「だが時間はあるのか?
聞いた話だと、そのGDFは持ち去られそうなんだろう?」
<_プー゚)フ「正直、のんびりとしてる場合じゃない。
今日か明日にでも運ばれそうなほどに作業は進んでたし」
爪゚ -゚)「では、移動中に話を聞きましょう」
(´・ω・`)「その方が良いみたいだね」
と、そこでジェイルがブーン達を見ながら
爪゚ -゚)「エクスト様から聞いた話から判断した結果、戦力はFCで事足りると思われます。
しかし、異世界からの来訪者と来訪物……。
これに渡辺達が噛んでいる可能性は否定出来ません」
川 ゚ -゚)「要は奴らに対抗するための用心棒となれ、ということか」
爪゚ -゚)「はい」
クーは少し考える素振りを見せる。
そして
川 ゚ -゚)「……私達に出来ることは限られているかもしれない。
しかし、足止めくらいにはなるだろうか」
- 28:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:06:45.90 ID:y361l3On0
- ( ^ω^)「クー」
クーの肩を叩き
( ^ω^)「そんなネガティヴじゃ駄目だお。
次はアイツらを圧倒するくらいの気持ちで行かなきゃ、知りたい真実を得られない気がするお」
川 ゚ -゚)「……あぁ、そうだな」
('A`)「何やらよく解んねぇが……俺も手伝うぞ」
爪゚ -゚)「ですが、状況によっては危険かと」
('A`)「いやまぁ……そうなんだろうけどな。
だからといって友達を放っておくのもどうよ、って話じゃん。
この前は思い切り放って置かれたけどさ」
ドクオが言っているのは渡辺との接触のことだろう。
確かに危険だという判断から、事が終わるまで知らせもしなかった。
(;^ω^)「あれはすまんかったお」
('A`)「別に怒ってるわけじゃねぇよ。
でも、俺的な意見を言わせて貰えば……これは傲慢な考えかもしれねぇが
俺がいなかったことにより、誰かが怪我したり死ぬかもしれない。
だったら危険だろうが何だろうが手伝うぜ」
(´・ω・`)(自分が足手纏いになるってのは考えないのね。
まぁ、ドクオらしいといえばらしいけど)
- 30:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:08:26.59 ID:y361l3On0
- そこで便乗するようにハインリッヒが手を上げる。
从 ゚∀从「僕も行きます!」
川 ゚ -゚)「ハイン、悪いが今回は駄目だ」
从;゚∀从「何でですか!? 渡辺さん達が関わってるかもしれませんよ!」
川 ゚ -゚)「端的に言えば危険だからだ。
それに渡辺達が噛んでいるという話も、結局は可能性の範囲内。
確実でない、しかも危険だと思われる場所に連れて行けるわけがない」
クーの言っていることは正論である。
しかし、彼女の口には出さぬ心の内がブーンには解っていた。
足手纏いなのだ。
前回の渡辺接触時、彼女はまったく戦うことは無かった。
それはそれで幸いだったのだろう。
ただ、あの時は『戦う必要が無かった』と言い換えられる。
今回は乱闘になる可能性が高い。
更には異世界の人間と物が関わっているという点で、どのように状況が転ぶかも解らない。
しかも渡辺達にまで介入されるとなると、もはやカオスの領域だ。
- 32:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:09:44.08 ID:y361l3On0
- そんな状況において必要なのは『素早い判断力』と『鋭い洞察力』。
そしてその根底を支えるのは『行動力』だ。
ハインリッヒがいることにより、クーやブーンの判断が遅れる可能性がある。
最悪、もし人質にでも取られれば敗北は必至。
口では言わないが、クーはそれらを懸念しているのだろう。
川 ゚ -゚)「解ってくれ、ハイン」
从;゚∀从「……うぅ」
クーの怖さを知っているからこそ、彼女の言うことには逆らえないハインリッヒ。
ここにきて過去の教育の裏効果が出てしまっていた。
少しだけ可哀想に思いながらも心を鬼にし
( ^ω^)「ハイン、ここはクーの言う通りにするお」
从;゚∀从「う〜……解りました……」
半泣きになりながらも、首を縦に振った。
- 33:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:11:09.01 ID:y361l3On0
- 爪゚ -゚)「では行くのは、私とエクスト様、ラミュタス様、内藤一家様、ドクオ様ということで。
ちなみにショボン様はどうされますか?」
(´・ω・`)「僕は店があるからね。
それに連絡役としても残る人がいて良いはずだ。
ジョルジュは寝てるから、出来れば起きる前に出発して欲しいかな」
爪゚ -゚)「御心配なく。 今すぐ出ますので」
軽く手を広げ
爪゚ -゚)「では、異世界の話を聞きながらの楽しい楽しい奪還作戦と致しましょう」
言葉をきっかけに、順次バーボンハウスを出て行くブーン達。
『いってらっしゃい』と見送ったショボンは、コーヒーカップとクッキーを取り出しながら
(´・ω・`)「さて、ハインリッヒちゃん。
彼らが帰ってくるまでどうす――」
振り向く。
薄暗い景色の中、どう見ても人の気配がないことに気付いた。
- 34:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:12:32.47 ID:y361l3On0
- (;´・ω・`)「……ハインリッヒちゃん?」
返事は無い。
つまり、いない。
まさかとは思うが――というか、それしかないわけで――
携帯電話を取り出す。
操作し、ブーンの携帯番号を表示させて通話ボタンに指を乗せ
(´・ω・`)「…………」
そこで、ショボンは思い留まった。
通話ボタンに触れていた指を離して、携帯電話をポケットへと入れる。
そして溜息。
(´・ω・`)「……まぁ、彼女なりの考えもあるだろうし。
ここは知らない振りをするのが正解かもね」
- 35:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:13:47.79 ID:y361l3On0
- 暗闇が来る時間。
都市ニューソクから少しだけ離れた山中、鬱蒼と茂る木々の狭間に人影があった。
(`・ω・´)「…………」
シャキンだ。
野戦服のような服装で、懐中電灯のようなライトを片手に草木を掻き分けながら進む。
とはいえ、彼に目的地など存在しない。
己の翼を探しているだけだった。
(`・ω・´)「この付近じゃないのか……?」
手に持っているのは、エクストが持っていたそれと同じ形状を持つ機械。
ESSと呼ばれるシステムを搭載したレーダーだ。
赤い点滅が、方角で言う北で光を発している。
その方角へと歩き続けて半日以上。
まったく近付く様子がない。
木々の狭間から見えるのは、闇色に染まった空。
(`・ω・´)(そろそろ野宿の準備だな……)
こういうサバイバルは苦手である。
軍人であるエクストならば得意とするはずだろうが
生憎、自分は民間のテストパイロットに過ぎないので、その手の訓練は受けたことがない。
- 36:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:15:36.73 ID:y361l3On0
- 慣れない手付きで携帯食料の封を切り、口に入れる。
少し咀嚼し
(;`・ω・´)「……不味い」
「――文句を言うくらいなら、そろそろ山を降りても良いのではと思いますが」
(`・ω・´)「誰だ!?」
( <●><●>)「こんにちは」
低身、そして黒衣の男が付近の木の上にいた。
爛々と輝く黒色の瞳でこちらを見下ろしている。
あまりに不気味な光景に、シャキンは一筋の冷や汗が流れるのを感じながら
(;`・ω・´)「お、お前は……?」
( <●><●>)「とりあえず、これを」
何かを落とす。
慌ててキャッチしてみれば、それはコンビニで売っているオニギリだった。
( <●><●>)「美味しいですよ」
(;`・ω・´)「……ワケが解らない」
- 38:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:17:14.95 ID:y361l3On0
- ( <●><●>)「お腹が空いていると思いまして。
それと、別に貴方の命を取りに来たわけではないので……その証明として」
その言葉に、シャキンは更なる冷や汗を憶える。
――命を取りに来たわけではない。
つまり逆を言えば、取ろうと思えば取れるということだ。
(;`・ω・´)「…………」
( <●><●>)「そんなに警戒することも無いと思いますが。
そもそも私達側が貴方を殺したりするメリットがありません」
(;`・ω・´)(側? 何処かの組織に属してるわけか……?)
( <●><●>)「やれやれ、随分と警戒されているようで」
(`・ω・´)「当たり前だろう。
知らない奴から貰ったモノを、そう簡単に口にする馬鹿はいない」
- 40:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:19:13.89 ID:y361l3On0
- ( <●><●>)「私には、貴方のことが解ってます」
男は文字の羅列を口にした。
( <●><●>)「リフレクション内オーベウス軍ニクルス開発局の民間テストパイロット。
担当機はGIF『レイドール』で、エクストという男といつも競い合っていましたね?
兄弟がいて、その兄は二年前から行方不明。
貴方はその兄を追う形でパイロットとなった……違いますか?」
(;`・ω・´)「お前……」
完璧だった。
己の経歴をそこまで知っているという事は。
いや、兄を追うためにニクルス開発局に接触したことまで知っているのはおかしい。
アレは自分の独断で、エクストとガナー以外に話したことがないはずだ。
( <●><●>)「これで解りましたか? 私がどの程度の人物なのかを」
(;`・ω・´)「……つまり、俺など毒を仕込んで殺すまでもないということか」
( <●><●>)「何にせよ、私に敵意が無いと解ってもらえれば良いです」
この男には絶対に適わない。
シャキンはそう確信する。
取っ組み合いになれば勝てるのかもしれない。
経験は解らぬが、体格はこちらに分があるし武器だってある。
しかし、あの男からはそれ以前の力が発せられいるのが解った。
圧倒的な何かの差を感じ、シャキンは肩を軽く落とす。
- 41:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:20:36.78 ID:y361l3On0
- (`・ω・´)「……で、お前ほどの男が俺に何の用だ?」
( <●><●>)「貴方の求めるモノ、それに向かうための道標になりに来ました」
(`・ω・´)「?」
( <●><●>)「今、貴方が求めるモノ……すなわちGIF『レイドール』」
(`・ω・´)「! 在り処を知っているというのか?」
( <●><●>)「月面を北に三百km」
(;`・ω・´)「そんなに遠いのか!?」
( <●><●>)「……冗談が通じない人は、この先苦労しますよ。
そもそも月面の時点でおかしいと気付きなさい」
(;`・ω・´)「い、いや……その、すまない……」
上から溜息が聞こえる。
気を取り直したのか、黒衣の男は北を指差し
( <●><●>)「このまま進めば、いずれ小さな滝が見付かるでしょう。
その周囲をよく調べなさい……。
木々に隠れて見難いでしょうが、きっと望む物があるはずです」
- 42:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:22:10.51 ID:y361l3On0
- (`・ω・´)「…………」
( <●><●>)「疑っているのですか?」
(`・ω・´)「いや……どうして俺に教えるのか、と」
( <●><●>)「私が貴方を導く理由として、貴方に動く意味があるということですよ。
このまま森の中で燻ってもらっていては困る……そう思って下さい」
(`・ω・´)「お前は一体何者なんだ?
それに、俺が動く意味などあるようには思えない。
お前が知っている通り、そんなに俺は大きな力も存在力もないはずだ」
( <●><●>)「自分の価値観と他人の価値観には思っている以上の差異があります。
私には、その差異全てが解るだけ……たった、それだけです」
(`・ω・´)「どういう――」
瞬き。
その一瞬の間に、黒衣の男は視界から消えていた。
音さえもなく、風さえも起こさず。
沈黙が訪れた森内を見回し、シャキンは小さく呟く。
(;`・ω・´)「……どうやら、俺はとんでもない奴と会ってしまったらしいな」
- 43:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:23:27.63 ID:y361l3On0
- どの世界にも『強者』はいる。 絶対に、だ。
強者は総じて影響力が桁違いに強い。
むしろ、それだからこそ『強』者と呼ばれるのだろう。
たった数人、いや一人が動くだけで事が大きく様変わりすることだってある。
その中で安全に生きる条件は共通しており、それは『関わらないこと』。
なのだが――
(;`・ω・´)「…………」
思い切り、関わってしまった。
しかも向こうから。
強者が弱者に接触する場合、そのほとんどに理由がある。
言い換えるならば『メリット』があるから、己よりも格下の相手を目を向けるのだ。
ならば、自分が黒衣の男にとってのメリットとなり得るか?
答えはNOだ。
自分よりも強い者はいる。
自分よりも役立つ者はいる。
自分にしか出来ないことなど無い。
(`・ω・´)(ならば何故……?)
疑問が浮かぶも、しかし答えを出さぬまま消えていく。
(`・ω・´)「……考えていても仕方ない、か」
- 45:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:24:52.18 ID:y361l3On0
- 夕暮れに染まる山内。
鬱蒼と茂る木々の中、在り得ないモノが在った。
それは喫茶店と呼ばれる建物。
そのあり得ない光景に一つの黒い人影が接近する。
十メートルを切った瞬間、扉が開いた。
( <●><●>)「御迎えありがとうございます」
|(●), 、(●)、.:|「いえいえ、これくらいしか私には出来ませんから」
扉を開いたのはダディだ。
コーヒーの匂いを纏いながら、笑みで黒衣の男を迎える。
|(●), 、(●)、.:|「で、どうでした?」
( <●><●>)「場所は教えてあげましたよ。
おそらく数時間後には動き出すでしょうね……運が良ければ」
|(●), 、(●)、.:|「貴方さんから見て、彼の評価は?」
その言葉を聞いて、黒衣の男は少しだけ目を瞑り
( <●><●>)「彼は普通の人間でした。
私達が思っていたよりも、狂気に捉われていないです」
|(●), 、(●)、.:|「そうですか……それは残念ですね」
- 47:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:26:10.84 ID:y361l3On0
- ( <●><●>)「後は彼次第となりますか。
もっとも、もはや我々が知ったことではありませんが。
ところで――」
黒衣の男は背後へ視線を向け
( <●><●>)「盗み聞きとは感心しませんね」
視線の先。
闇色に等しい木々の狭間から、まるで縫って出てきたような影。
ル(i|゚ ー゚ノリ「ふふ……流石にここまで近付けばバレてしまうか」
それは青髪の女だった。
黒衣を纏い、右手には刀を一本だけ鞘に納めて握っている。
( <●><●>)「何か用でしょうか?」
ル(i|゚ ー゚ノリ「いや、別に。
こちら側としては、お前達の行動はとても興味深いのでな」
|(●), 、(●)、.:|「観察? むしろ監視ですかな?」
ル(i|゚ ー゚ノリ「そこまで大層なものじゃあない。
私達はただの『観測者』として、状況を見守っているに過ぎないさ」
- 49:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:27:39.74 ID:y361l3On0
- ( <●><●>)「秩序が完全に壊れるまでは観測者気取り? それが終われば食事ですか?
前者はともかく、後者は絶対に我々がさせません」
ル(i|゚ ー゚ノリ「ならば、今も刻一刻と進んでいる世界交差……これを止めれば良い」
表情は笑み。
己が絶対的な優位に立っていると解っている笑みだ。
その苛立ちさえ覚えそうな表情を見ながら
( <●><●>)「…………」
ル(i|゚ ー゚ノリ「そう睨むな……我々とて無駄な争いはしたくない」
何故なら、と続き
ル(i|゚ ー゚ノリ「お前達も料理の一つだからな。
特に強い力を持つお前達は、我々にとっては最高の食材だ」
その時だ。
ヒュ、という風切音が響き、青髪の女が消える。
直後、女がいた場所に黒の大刀が叩き込まれた。
ル(i|゚ ー゚ノリ「やれやれ、女性にその仕打ちはないだろう?」
一瞬で立ち位置を変えた女が、大刀の持ち主に微笑みかける。
- 51:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:28:52.46 ID:y361l3On0
- / ゚、。 /「残念だが私も女性だ。
男が女を、なら解るが……私にそれは通用しないぞ」
ダイオードだ。
突如現われた彼女は、黒の大刀を肩に乗せて青髪の女を睨む。
殺気の塊を身に受けつつも
ル(i|゚ ー゚ノリ「だが悪くない。
ふふ、やはりお前達は良い敵対者となれるだろう。
しかし――」
今度は黒衣の男を見る。
その爛々と光る目を、楽しそうに見つめながら彼女は言った。
ル(i|゚ ー゚ノリ「まぁ、私達が戦うことなどありえないのだがな。
我が王がこの世界の地を踏む時、それはお前達の失敗を意味するのだから」
( <●><●>)「その時は来ませんよ……私達が勝つのだから」
ル(i|゚ ー゚ノリ「楽しみにしているよ」
直後、女の身が闇に溶けて消えた。
まるで最初からいなかったのように。
それを黙って見送ったダイオードは溜息を吐く。
/ ゚、。 /「どうにも向こうは我々が気になるらしいな。
仕方ないと言えば、仕方ないが」
- 52:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:30:21.79 ID:y361l3On0
- |(●), 、(●)、.:|「手出ししないのが幸いですね。
お陰で、比較的我々も動き易いというものです」
( <●><●>)「それでダイオード……何かあったから戻ってきたのでしょう?」
/ ゚、。 /「あぁ、後継者達がGDFの奪還に動いた。
同時に渡辺達も動くだろうな」
( <●><●>)「やれることはやりました。
あとは彼ら次第ということになります」
|(●), 、(●)、.:|「しかし、そろそろ私達が直接動いても構わないのではとも思いますが……」
/ ゚、。 /「まだ早い。
ここで私達が介入すれば秩序が捻じ曲がってしまう。
だからこそ、ワカッテが各地の『誘導』を行っているはずだが?」
毅然とした態度のダイオードに、尚もダディは食い下がる。
|(●), 、(●)、.:|「ですが……あまり人を駒として扱うのもどうかと思うのですよ。
ヒートちゃんとミルナ君の件でさえ、私は心が痛みましたからねぇ」
( <●><●>)「言いたいことは解ります。
が、下手に私達が介入して取り返しのつかないことになるのは避けたいのですよ」
- 54:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:31:48.28 ID:y361l3On0
- |(●), 、(●)、.:|「ふぅむ……確かに手を出して本末転倒は駄目ですよねぇ」
/ ゚、。 /「『まだ』動けないのだ。
時が来れば我々が独自に動けば良い……その時を迎えたくは無いがな」
言葉に、黒衣の男は吐息。
そのまま闇に染まった夜空を見上げ
( <●><●>)「とりあえず今は彼らの動向を見守りましょう。
あのクルトの子達の――」
と、小さく呟いた。
- 55:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:33:20.74 ID:y361l3On0
- 道の途中で待機させてあったFC製の装甲車両に乗り換えたブーン一行。
彼らはひたすら西の方角へと走っていた。
エクストとジェイルの見解で
GDFを運び出そうとしている者は、西側に展開する『戦跡荒野』に敷かれたレールを用いて
FC本社が在る隣都市に運ぼうしていることが解っていた。
狙いは、おそらくその先にある飛行場だ。
そこから国外へ飛ばすつもりらしい。
少し緊張した車内。
皆はエクストが語る異世界の話に耳を傾けていた。
<_プー゚)フ「俺のいた世界は空が無かった。
いや、在ったんだが……それは偽りの空だった」
( ^ω^)「偽り、ですかお?」
<_プー゚)フ「俺達が空と思っていたモノの正体は機械の天井。
古い文献によれば
二百年ほど前に俺達の先祖が『リフレクション』に収容されたのが始まりらしい」
川 ゚ -゚)「リフレクションとは?」
<_プー゚)フ「簡単に言えば機械壁で構成された『巨大な檻』だ。
それが東西に位置する領地二つをまるごと包み込むように在ったんだ」
- 56:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:34:51.60 ID:y361l3On0
- それは非常に危険なモノだった。
機械の壁付近の一定範囲に近付くと、『機械の触手』といえる物体が伸び出し
人間だろうが何だろうが絡み付いて吸収する。
故に、ほとんどの人間が近付こうともしなかった。
それでも脱出しようという案もあったのだが
その機械壁のせいで二百年間、誰も外の世界を見たことが無かった。
<_プー゚)フ「諦めたのかは解らねぇ。
だが、俺達の先祖は自らの文化を形成することに専念を始めた」
独自の政府。
独自の軍。
そして、独自の兵器。
幸いにも機械技術が発達していたので、生活には困ることが無かったらしい。
余った時間と技術は全て軍備に使われた。
<_プー゚)フ「その過程で出来上がったのが『GIF』だ。
『Gravity Liberating Fighter』……直訳で『重力解放戦闘機』。
その名が示すとおり、重力からの解放をコンセプトとした機体だ。
んでもってGDFってのは上位機に当たるのかね……まぁ、似たようなモノだと思ってくれ」
- 58:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:36:07.11 ID:y361l3On0
- 川 ゚ -゚)「重力からの解放……」
<_プー゚)フ「理論的に難しいことじゃない。
【引】の魔力を用いれば可能とされていたからな。
ただ、実現するのはかなりの苦労が伴ったらしい」
( ^ω^)「お? 引の魔力って何だお?」
その言葉に、エクストは軽く驚く。
<_;プー゚)フ「おいおい、まさかこの世界って……魔力が存在してないのか?」
('A`)「そんなファンタジックな要素、そうそうあってたまるか」
<_プー゚)フ「ファンタジックじゃねぇよ。
俺のいた世界の機械技術も、魔力に支えられてる部分がほとんどだしな。
その魔力を用いる技術を『魔法』というんだが
もちろん、無から有を生み出したりするトンデモ技術じゃねぇぞ」
(;^ω^)(じゃあ、兄者さんのアレは何なんだお……)
<_プー゚)フ「魔法については、ちょっとややこしいから今回は割愛するぜ。
で、俺はリフレクションの東領地にあるオーベウス軍に所属していたんだ」
(`・д・')「……無論、俺もだが」
- 59:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:37:40.36 ID:y361l3On0
- <_プー゚)フ「ラミュタスさんは生まれながらの才能か知らねぇが
若干二十三歳にして、オーベウス空軍のエースパイロットとなっていた」
そこでエクストは声のトーンを落とす。
少しだけ暗い顔で
<_プー゚)フ「だが、二年前……ラミュタスさんは行方不明になった。
『空を見に行く』という言葉を残してな」
('A`)「目の前にいるじゃん」
<_;プー゚)フ「だから俺も驚いてんじゃねぇか」
( ^ω^)「ラミュタスさん、何で行方不明になっちゃったんだお?」
(`・д・')「…………」
川 ゚ -゚)(語る気は無い……それとも……?)
<_プー゚)フ「まぁ、色々とあったが、そこまでは普通に平和だったんだよ、俺にとっては。
半年後に馬鹿が現われるまではな」
その馬鹿とは
<_プー゚)フ「名は『シャキン』。
ラミュタスさんの弟にして、彼と同じく空を飛ぶ才能を持ち合わせている男。
奴は軍に入隊することなく、軍内のニクルス開発局の民間テストパイロットとして
俺の前に現われやがった」
- 60:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:39:06.49 ID:y361l3On0
- 言葉には表していないが、彼の驚きと怒りはかなりのモノだったのだろう。
それも当然だ。
厳しい訓練を積んで、やっとのことで戦闘機に触れたエクスト。
対して、才能という一言のみで戦闘機に乗れるシャキン。
当初、二人はかなり仲が悪かったらしい。
<_プー゚)フ「まぁ、それもアイツの気持ちが解るまでだったがな。
アイツは悩んでたんだよ。
兄という絶対に超えられない目標、面影に縛られてたんだから」
(`・д・')「……やはり、そうなのか」
<_プー゚)フ「知らねぇとは思うが解ってたんだろう? 弟の苦悩がよ。
それすら差し置いて、行方不明になった理由って何だよって思ったさ」
しかし
<_プー゚)フ「アイツ――シャキンは見つけちまったんだ。
試作型GIFの飛行テスト中に、『機械天井の亀裂』を。
リフレクションの外に出られる……本当の空を見られる希望の光を」
それは本当に偶然の発見だったらしい。
亀裂の報告を聞いたエクストは、すぐに直感する。
<_プー゚)フ「ラミュタスさんの言っていた『空を見に行く』という言葉。
そのことから、ラミュタスさんもこの亀裂を見つけたんだってな」
- 61:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:40:32.00 ID:y361l3On0
- エクストは少しだけ遠い目をする。
過去を思い出しているような目の色だ。
<_プー゚)フ「結局、俺もシャキンもラミュタスさんを追いたかったんだ。
行方不明後に連絡の一つも寄越さないし
外ってのは、よほど良い所なんだろうなとか言い合ってよ」
(`・д・')「……ッ」
その言葉に、ラミュタスは少し苦い顔をする。
<_プー゚)フ「で、軍の命令無視って亀裂から脱出したわけだ」
(;^ω^)「何か物凄い端折ってる気がするお」
<_プー゚)フ「まぁ、鉄仮面野郎との戦いとか、東西領地の一触即発とかあったけどな。
そりゃ俺やシャキンの個人的な思い出に等しいし、今は関係ねぇ。
とにかく知っておいてほしいのは、俺とシャキンはリフレクションから脱出したってことだ」
( ^ω^)「で、その外の世界というのはどうだったんですかお?」
<_;プー゚)フ「あー、まぁ、その……そんな良いもんじゃなかったぜ」
- 63:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:41:56.86 ID:y361l3On0
- ('A`)「どういうこった?」
<_プー゚)フ「空気は汚い、空は常に茶色、木なんて一本も生えちゃいねぇ。
おまけに二日間飛び続けて街はおろか、人っ子一人いねぇ。
何つか、天国だか地獄だか解らねぇ光景だったな」
川 ゚ -゚)「つまり『リフレクション』の内部と比べ、かなり環境が悪かったというわけか」
( ^ω^)「それっておかしくないかお?
何で檻の中が、外よりも居心地良くなってるんだお?」
<_プー゚)フ「俺とシャキンも同じことを思ったんだよ。
でも答えなんて出るわけがねぇし、とりあえず飛び続けることにした。
そうしたら――」
助手席に座っていたジェイルが声を上げる。
爪゚ -゚)「到着しました」
同時、装甲車が停止する。
慣性を身に受けながらも、ブーン達の顔に本格的な緊張の色が見え始めた。
運転席に座っていた男が扉を開いて外へ。
背後から付いて来ていたもう一台の装甲車両からも、幾人かの人影が走っていく。
- 64:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:43:20.77 ID:y361l3On0
- 爪゚ -゚)「状況把握が先決です。
とりあえず兵に向かわせ、それで済むなら良いのですが――」
川 ゚ -゚)「それはどうだろうか。
渡辺達が動くという可能性も高い」
( ^ω^)「お……そういえばエクストさん、警戒すべき人って誰なんだお?」
<_プー゚)フ「あぁ、忘れてた。
俺達の世界には物凄ぇ強い奴が数人いるらしい」
ラミュタスを見て
<_プー゚)フ「まず、言わずともラミュタスさん。
そして『軍神』って呼ばれてる女だ」
川 ゚ -゚)「軍神……」
爪゚ -゚)「身体的特徴をお願いします」
<_プー゚)フ「『らしい』って言ったろ? 悪いが知らねぇんだ。
さっきの続きになるが
リフレクションを出て数日飛んだ後、俺達は一つの小さな部隊と出会った」
- 67:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:44:52.81 ID:y361l3On0
- それは本当に小さな部隊だった。
数十人程度で構成された彼らが言うには
『アギルト連合軍の離遠戦隊』と呼ばれる、最も本陣から遠い地点で戦う部隊。
<_プー゚)フ「んで、まぁ色々と話を聞いた結果。
アギルト連合軍ってのは、ある生物と長年戦い続けていたらしい。
で、その中で最も有名かつ最強の力を持つ女が
『軍神』と呼ばれてるってのを聞いたってだけなんだよ」
(`・д・')「…………」
その時だ。
突如、ガシュンという機械音と共に銃声が響き始める。
(;'A`)「な、何だ!?」
すぐさま、ジェイルが無線機で状況を把握。
軽く指示を飛ばし
爪゚ -゚)「どうやら向こうは強行的に離脱するつもりのようです。
私達も急ぎましょう」
( ^ω^)「合点承知!」
ブーンがサイドドアのノブを掴むが
(;^ω^)「お?」
開かれる前にロックが掛かった。
- 68:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:46:05.55 ID:y361l3On0
- 爪゚ -゚)「今から足で追っても間に合いません。
こちらから、この装甲車で追いましょう」
言葉と共に、ジェイルが助手席から運転席へと移る。
サイドブレーキを解除してアクセルに足を乗せ
爪゚ -゚)「では、出発」
緊急発進。
無論、内部にいる者達は
(;^ω^)「のわぁぁぁ!?」
(;'A`)「いていていてぇ!? 足踏むなぁ!」
大混乱に陥ることとなった。
その中で、冷静に物事を考える者が二人。
(`・д・')(この一戦……GDFが絡んでいるとなれば、アイツも……)
クーが、そのラミュタスを軽く睨みつつ
川 ゚ -゚)(私達は、腹の中に猛毒を仕込まれているかもしれないな……)
- 69:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:47:49.73 ID:y361l3On0
- シナーが所有している装甲列車『RD−28』。
移動用というより、むしろ戦闘用に作られたそれは厚い装甲を持っている。
その運転室で、汗を流して慌てているのはシナー本人。
( ;`ハ´)「な、なんてこったいアル!
出発直前に襲撃なんて、なんてバッドタイミングアルか!」
既に起動していたそれを動かし始める。
ガタン、と硬質な音を立てながら装甲列車が移動を始めた。
倉庫から出て、そのままレールに身を乗せる。
その先は『戦跡荒野』だ。
第三次世界大戦の戦場だったそこは、未だに戦争の傷跡が生々しく残っている。
( ;`ハ´)「隣都市まで到着すれば、後はどうにでもなるアル!
とにかくここから三十分がワタシの正念場アルな!」
- 71:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:49:11.67 ID:y361l3On0
- GDF以外にも運搬物を積んでいる装甲列車は現在、十両編成だ。
その内、最後尾から三両は何も積んでいない状態。
( `ハ´)(こういう時のために用意しておいて良かったアル。
もし向こうも列車で追跡してきたら、連結外してぶつけてやるアルよ!)
メインウインドウ上部に取り付けられた小さな画面を見る。
それはバックカメラで送られてくる、装甲列車背後の映像だ。
もし相手の列車が来れば、このカメラでタイミングを計って連結を外し
大ダメージを与えるという寸法だ。
そういう寸法なのだが
( ;`ハ´)「ホ?」
おかしい。
レール上には何も見えないのだが、背後から何者かが追ってくる。
猛スピードで追跡してくるそれを見たとき、シナーは自分の顔が青ざめるのを自覚した。
( ;`ハ´)「そそそ、装甲車両ぉ!? しかもFC!?
なんであの野蛮な会社がワタシを狙うアルか!?」
警察? いや、ありえない。
都市ニューソクの警察には根回ししているはずだ。
ならば何故、依頼の無い限りは動かないはずのFCが――
( ;`ハ´)「文句言っても仕方ないアル! とにかく全速力で逃げるアルよ!」
燃料や時間配分など気にしている場合ではない。
思い切りアクセルレバーを倒し、シナーは決死の覚悟で逃げ始めた。
- 72:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:50:41.49 ID:y361l3On0
- [゚д゚]「お、始まったな」
逃亡を始めた装甲列車を見つめる人影が六つ。
双眼鏡で確認したデフラグが、口にくわえていた煙草を投げ捨てる。
从'ー'从「んじゃ、出発しようかな」
<ヽ`∀´>「こっちは準備OKニダよ」
装甲よりも速度を重視した設計の、ジープのような車両。
その周囲で、彼らは思い思いの格好でくつろいでいた。
*(‘‘)*「でも、全員で行くなんて大袈裟じゃないです?」
从'ー'从「ま、都市ニューソク外の活動なら、ある程度派手でもOKだしね。
獅子は兎を狩るのも全力で〜みたいな諺もあるし」
(#゚;;-゚)「んで、はよ追わんでもええんか?
あの速度やと三十分くらいが限度ちゃう?」
[゚д゚]「それに、後継者共も動いてやがる。
装甲列車を猛スピードで追いかけてるぜ」
从'ー'从「あーらら……もう関わるなって言ってあったのにねぇ。
まぁ、それだけ覚悟があると見てあげちゃおうかな」
- 74:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:52:00.86 ID:y361l3On0
- その言葉に、貞子が
川 -川「……手加減をするつもりでしょうか?」
从'ー'从「いやいや、まさかそんなわけないでしょ。
私達の目的はあくまでGDFの強奪……邪魔するんなら容赦はしないよ」
<ヽ`∀´>「流石は我らがリーダーニダ」
从'ー'从「んじゃあ、出遅れてもアレだし。
そろそろしゅっぱーつ!」
言葉と共に全員がジープに乗り込む。
運転席に座った貞子が、確認もせずにアクセルを踏み込んだ。
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