( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

154: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 15:54:31.16 ID:dP04uHTD0
  
第十話 『軍神と風鷲』

轟風が吹き荒ぶ中、クーは驚愕に目を見開く。
視線の先には軍神。
その右手の皮膚が、剥けているのだ。

川;゚ -゚)「な、何だそれは……!?」

その表情には、珍しく『驚愕』と『恐怖』が張り付いていた。

(#゚;;-゚)「見たまんまや」

彼女の左手には、右手首から先の皮膚が握られている。
そして皮膚を失った右手は

川;゚ -゚)「機械……!?」

(#゚;;-゚)「あぁ、そやね。
    でもウチはサイボーグとか機械人形とか、そんな類やあらへんよ」



156: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 15:56:01.04 ID:dP04uHTD0
  
川;゚ -゚)「どういう――」

(#゚;;-゚)「軍神」

川;゚ -゚)「?」

(#゚;;-゚)「軍神……これは渾名なんやけどな。
    何でウチがこういう名で呼ばれとるか……知らんよな?」

川;゚ -゚)「貴様と戦うのは今日が初めてだ。
     知るわけがない」

だが、と続け

川 ゚ -゚)「その強さから、そういう名が付いたと言うのならば……納得は出来る」

彼女自身が得た感覚からの言葉だった。
あれほどの動体視力を持ち合わせているというのならば
『軍神』という名を授かっても、別に不思議ではない。
むしろ納得だ。



158: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 15:57:36.98 ID:dP04uHTD0
  
(#゚;;-゚)「なら、教えといたる」

しかし、軍神は別の答えを出した。

(#゚;;-゚)「ウチはな、元々こういう力を持ってなかったんや」

川 ゚ -゚)「……生まれもった能力ではない、と?」

(#゚;;-゚)「そや」

ふと目を伏せ

(#゚;;-゚)「ウチのいた世界はな……二百年ほど前に世界の90%以上が滅んでしもうたんや」

川 ゚ -゚)「滅んで……?」

(#゚;;-゚)「残った10%は世界の果てともいえる小さな島国に逃げた。
    しかし、いずれ滅ぼされることは明白やった」

川 ゚ -゚)「……言葉からすると『滅ぼした勢力』がいるわけか」

(#゚;;-゚)「ウチらは『異獣』と呼んどるけどな。
    で、その10%は最後まで抵抗することにしたんよ」



160: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 15:59:27.01 ID:dP04uHTD0
  
その決断は、まさに苦渋の決断といえるものであった。
当時の民間人と軍人の割合は丁度五割同士。

軍人は『抵抗する』と叫び、民間人は『滅びを待とう』と言い返した。

結局のところ、力の関係で言えば軍人が圧倒的に強かった。
しかしそのまま強行的に抵抗を続けようとしても、民間人の邪魔が入ることは明白である。

(#゚;;-゚)「そこで軍人達は一つの選択を選んだ。
    それは、軍人と民間人のどちらの願いも叶えるという夢のような手やった」

川 ゚ -゚)「……ありえるのか?
     抵抗と滅びを同時にこなすなど――」

(#゚;;-゚)「その方法とは、『民間人を安全な檻に閉じ込める』いうことやった」

その『檻』という言葉に聞き覚えがあった。

川;゚ -゚)「檻、だと?
     まさかそれが『リフレクション』……!?」

(#゚;;-゚)「ラミュタス辺りが言うたんか? まぁええわ。
    それから軍人共は、三ヶ月ほどで『リフレクション』を作り上げた」



161: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:01:20.27 ID:dP04uHTD0
  
川;゚ -゚)「たった三ヶ月で……?
     聞いた話によれば、『リフレクション』は二つほどの都市を
     丸ごと包み込むような超大型の箱庭だと聞いたが……」

(#゚;;-゚)「こっちの技術とウチらの技術には天と地ほどの差があんねや。
    ウチらの世界は『機械世界』言われててな。
    その名の通り、機械技術に関しては何処の世界にも負けんかった」

誇らしげな表情ではなく自虐の色を見せる。
その表情を見て、クーは一つの疑問を浮かべた。

川 ゚ -゚)「ちょっと待て……『リフレクション』の話は確かに聞いたが
     その彼もまたリフレクションの住人だったぞ。
     二百年も前に作られた檻に、まだ入っているということは――」

(#゚;;-゚)「そう、まだ軍人と異獣の戦いは続いとるいうわけやな」

川;゚ -゚)「なっ……」

(#゚;;-゚)「そしてウチらのメンバー全員、その軍人達の子孫なんや。
    抵抗を続けるために、檻の外の世界で生まれた人間は全員が軍人になることに決められててな。
    ウチや渡辺も、望まずの異獣抵抗に狩り出される結果になった」

川 ゚ -゚)「渡辺も……」

やはり、彼女は異世界の人間だった。
流石兄弟やモララーの考えていた推論は正しかったのだ。



163: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:02:42.74 ID:dP04uHTD0
  
(#゚;;-゚)「で、ウチが何故『軍神』呼ばれるか……」

目を瞑り

(#゚;;-゚)「ウチはな、五年ほど前に異獣に捕まったことがあるんよ」

当時のでぃは、それほどの力を持っているわけではなかった。
むしろ女性ということもあってか一般男性よりも弱い部類であった。
では、何故彼女が捕まったのかといえば

(#゚;;-゚)「異獣の興味は、結局のところウチらの世界の人間にあった。
    これがどういう意味か……解るか?」

川 ゚ -゚)「…………」

(#゚;;-゚)「人体実験、とでも言うんかな。
    ウチは生きたまま、首から下の皮膚を全て剥がされた」

川;゚ -゚)「……ッ」

言葉からは想像出来ないほどの地獄を味わったのだろう。
その証拠に、彼女の目には感情が宿っていない。
思い出すことにおいての『悲しみ』や『苦しさ』を蘇らせないようにしているのだろうか。



165: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:04:24.62 ID:dP04uHTD0
  
(#゚;;-゚)「一体、人体の何が知りたかったのかは今になっても解らん。
    調査が終わったのか知らんが、ウチはそのまま軍人達――つまり連合軍へと帰された」

そのまま放っておけば確実に死に至ったはず。
しかし、今の彼女に生命があるということは

(#゚;;-゚)「連合軍に回収されたウチは、試験的に作り上げていた機械皮膚を装着させられた。
    それは強化服の効果を持った――本来は皮膚の上から着る薄型タイプやってんけどな」

その結果

(#゚;;-゚)「ウチは、二度と元には戻れない身体となってしもうた。
    まぁ、それだけなら命があるだけマシやった……死ぬよりはマシやからね。
    とはいえ、生身のままである首から上は傷だらけになってもうたけども」

川 ゚ -゚)「その口調からして、まだ何かあるようだな」

言葉に、軍神は軽く頷く。
少しだけ遠い目をしつつ

(#゚;;-゚)「……連合軍は何を思ったのか、ウチを勝手に英雄扱いし始めた。
    『異獣に捕らえられ、しかし自力で帰還した勇者』として」

川 ゚ -゚)「…………」



166: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:06:06.39 ID:dP04uHTD0
  
(#゚;;-゚)「解るか? もう戦いたくないと思った矢先に、その戦いを強制されられたんや。
    強化服のお陰で、首から下はほとんど怪我しなくなった。
    だからウチは前線から退くことはほとんど無くなってもうた」

川 ゚ -゚)「何処かに逃げるなどの選択肢はあったはずだ。
     それを選ばなかったのは何故だ……?」

(#゚;;-゚)「『軍神』は、兵の士気を上げるためだけに作られた偶像や。
    もしそれを失えば連合軍の敗北も考えられるやろ」

川;゚ -゚)「己を戦いに向かわせた軍を守るために、お前は嫌々戦場に立つというのか……!?」

(#゚;;-゚)「『軍神』の名は、もう一人の名やない」

双眸が鋭くなる。
全身から殺気――それ以上の何かが発せられる。

(#゚;;-゚)「『軍神』の名を信じて死んだ仲間が十万人以上。
    『軍神』の名を恐れて死んだ敵が二十万以上。
    ……合計して三十万以上の死霊を背負ってんのや、ウチは」

川#゚ -゚)「人を……人の死を数で計算するな!
     重さで計るものなんかじゃない!」

(#゚;;-゚)「怒るのも無理は無い。
    けどな、ウチはそういう無駄な問答するために軍神の説明をしたのとちゃうよ。
    長々と話した理由は二つある」

川;゚ -゚)「何!?」



167: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:07:48.87 ID:dP04uHTD0
  
(#゚;;-゚)「一つは単純な時間稼ぎ。
    そして二つ目は――」

伏せられていた目が上がる。
その口元には笑み。

(#゚;;-゚)「アンタをボコすのは、僅かな時間があれば足りるってことや」

突如、軍神が突進する。
両腕を軽く広げた姿勢だ。
すぐさま反応したクーは、透明色の刀を構えるが

川;゚ -゚)「ぐぁ!?」

(#゚;;-゚)「身体も!!」

刀身を弾き飛ばしたのは右手。
そして応じるように左手が動く。

(#゚;;-゚)「精神も!!」

川;゚ -゚)(フェイント――!?)

思うが同時、クーの顎に衝撃が走る。



169: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:09:12.97 ID:dP04uHTD0
  
(#゚;;-゚)「その、全てが!」

川;゚ -゚)「うっ……!」

叩き上げられた顔。
結果的に腹部のガードが疎かになる。

(#゚;;-゚)「背負ってるモンが違う!!」

川;゚ -゚)「がはッ!?」

強烈な蹴りが、クーの腹部に直撃した。
弾けるように身体が背後へと吹き飛ばされる。

川;゚ -゚)「げほっ……くそっ……!」

速い。
経験の差もあるのだろうが、その底を支えているのがあの速度だ。
人間のモノとは思えないそれに対抗するには

川 ゚ -゚)「6th−W『ギルミルキル』――!」

応じるように刀が消え、透明色のブーツが現われる。
それはクーの足を包み込むように展開された。



170: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:10:31.01 ID:dP04uHTD0
  
川 ゚ -゚)「これなら!」

立ち上がり、轟音と共に地を蹴る。
一瞬で音速を超え、景色が一瞬で吹き飛び、でぃの横を掠め、その無防備な背後へと――

川;゚ -゚)(え?)

不意打ちを仕掛ける直前、クーは違和感を得る。

(#゚;;-゚)「…………」

川;゚ -゚)(私を見ている!? この速度を捉えたのか!?)

(#゚;;-゚)「その程度でウチを翻弄出来ると思うな――!」

回し蹴りが来る。
速度も、威圧も段違いのレベルだ。

川;゚ -゚)(これが軍神……!)

一足飛びでバックステップ。
直後に風を、空間を切り裂くような蹴りが横薙ぎに払われる。

川;゚ -゚)「ギルミルキルでも駄目か……!」

考えろ。
相手は無敵ではなく、ただ強いというだけだ。
自分は十三もの能力を持っている。
それらを組み合わせて戦えば、勝つ事は出来なくとも太刀打ちくらいは出来るはず――



173: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:11:46.96 ID:dP04uHTD0
  
(#゚;;-゚)「甘いなぁ」

川;゚ -゚)「!?」

(#゚;;-゚)「戦闘中に思考するのは構わんが、それを見せるのはあかん。
    油断を呼び、集中力を浪費し、焦りを相手に悟られてまう」

川 ゚ -゚)「相手が相手だからな……少しは慎重にいってもバチは当たるまい」

(#゚;;-゚)「まさか勝てるとは思っとらんよな?
    良くて太刀打ち出きるか程度?」

でぃは更に笑みを見せる。

(#゚;;-゚)「甘い、甘いなぁ。
    ウチは不敗を命じられた軍の神。
    人であるアンタが、万が一にも勝つなんてこと無いよ」



174: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:13:10.03 ID:dP04uHTD0
  
川 ゚ -゚)「――私は、人ではない」

(#゚;;-゚)「何?」

川 ゚ -゚)「私は人ではない……人によって作られた、しかし人ではない生物だ」

(#゚;;-゚)(まさか……)

でぃの脳内に一人の男の名が浮かぶ。
彼の言動を思い出し、でぃの疑念は確証へと変わった。

(#゚;;-゚)「そか、アンタも人やないか」

拳を構え

(#゚;;-゚)「なら手加減するのも御門違いやな。
    人外同士、人という範疇を超えた殺し合いをしようやないか」

轟、と大気が叫ぶ音が響く。
人造神と人造人がぶつかり合ったのは、次の瞬間だった。



176: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:14:35.21 ID:dP04uHTD0
  
高速で走る列車の脇。
そこでは銃撃戦が繰り広げられていた。

爪゚ -゚)「四時方向、来ます」

言葉と共にジェイルがハンドルを切る。
射線から退避した後に、ドクオの6th−W『ガロン』が光弾を吐き出していく。

連続で飛ぶ光。
風を切り裂くそれは、なかなか右背後を走るジープを捉えない。

<_プー゚)フ「下手クソ!」

(;'A`)「うるせっ! アンタだって当ててないだろ!」

<_プー゚)フ「言ったな!? 見てろ!」

小型の銃を突き出して射撃。
ガロンから発せられる光弾よりも小さな光が鋭く飛翔する。

しかし当たらない。

('A`)「…………」

<_;プー゚)フ「んだよ、その『やれやれ』みてぇな顔!?」

爪゚ -゚)(射撃専門だというのに射撃下手とは……役に立ちませんね)



177: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:16:05.55 ID:dP04uHTD0
  
まともな戦闘になっていない。
渡辺側からはミサイルやバズーカなどの攻撃が迫るのに対し
こちらは当たらない光弾を延々と撃ち続けるのみ。

ジェイルの運転技術に、全員の命運が掛かっていると言っても過言ではない状況であった。

<_;プー゚)フ(くそっ、俺IFがあれば何とか出来るかもしれねぇのに――)

無いモノをねだっても仕方ない。
とりあえず撃ち続けるしか――

そこで、音が聞こえた。

<_;プー゚)フ「――!?」

キ、という大気を強引に切り裂く音。
覚えがある。
いや、ありすぎた。

それは空を自由に飛翔する鉄翼の鳴き声。

未だ攻撃が続く中で、エクストは弾かれるように見上げた。

<_プー゚)フ「――来やがったか!!」



180: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:17:22.94 ID:dP04uHTD0
  
その音は、ジープに乗っていた渡辺達にも聞こえていた。

[゚д゚]「この音は――」

从'ー'从「来たね……旧式の鉄翼が」

川 -川「どうされますか?」

从'ー'从「あとは軍神さんと彼氏さんに任せようかな。
      とはいえ、攻撃の手を休めるつもりはないけど」

[゚д゚]「何だ、結局は何も変わらねぇわけか」

新たな連装ミサイルを担いでデフラグが笑う。
その声を耳に入れつつ、渡辺は彼には聞こえない声で

从'ー'从「変わるよ……誰がどう転ぶか解らないけど、ね」

と呟いた。



182: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:19:06.50 ID:dP04uHTD0
  
まともな戦闘になっていない。
渡辺側からはミサイルやレーザーなどの攻撃が迫るのに対し
こちらは当たらない光弾を延々と撃ち続けるのみ。

ジェイルの運転技術に、全員の命運が掛かっていると言っても過言ではない状況であった。

<_;プー゚)フ(くそっ、GIFがあれば何とか出来るかもしれねぇのに――)

無いモノをねだっても仕方ない。
とりあえず撃ち続けるしか――

そこで、音が聞こえた。

<_;プー゚)フ「――!?」

キ、という大気を強引に切り裂く音。
覚えがある。
いや、ありすぎる。

それは空を自由に飛翔する鉄翼の鳴き声。

未だ攻撃が続く中で、エクストは弾かれるように見上げた。

<_プー゚)フ「――来やがったか!!」



183: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:20:48.73 ID:dP04uHTD0
  
比較的狭い部類に入るコックピット。
風防から見える景色は、星が輝く夜空だ。

(`・ω・´)「良い世界だな、ここは」

一人で呟く。

彼はGIF『レイドール』のシートに座っていた。
左右のスロットルレバーを握り、左右のペダルに足を乗せて。

眼下。

装甲列車が高速で滑走し、その周囲を装甲車両とジープが走り回っている。
たまに瞬く光は攻撃の証だろうか。

何にせよ、状況が解らない。
あの装甲列車の中にGDFがあるのは解っているのだが――

(`・ω・´)(さて、どうするか……)

少し考え、ふと空を見上げる。

(`・ω・´)(……何か動きがあるまでは、空でも見ておこう)



186: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:22:10.29 ID:dP04uHTD0
  
新たに現われた戦闘機。
見慣れぬそれを、クー達も視認していた。

川;゚ -゚)「何だ、あれは……」

FCのモノではない。
そもそもあんなに空をゆっくりと飛ぶ戦闘機など、見たことがない。

(#゚;;-゚)「来たか」

呟き

(#゚;;-゚)「もう遊んどる暇は無いなぁ。
    悪いけど、そこどいてもらえる?」

川 ゚ -゚)「私は、言われてどくような素直な女じゃない」

(#゚;;-゚)「痛い目――」

声が途切れる。
いや、途切れたのではない。
直後、腹部に鈍痛が走る。

川;゚ -゚)「がっ……!?」

鳩尾に、下部から思い切り拳がめり込んでいた。

(#゚;;-゚)「――見たなぁ」



188: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:23:34.22 ID:dP04uHTD0
  
ギルミルキルに匹敵するレベルの速度。
その高速を用いて接近し、目にも止まらぬ拳を放ったのだ。

膝を折り、その場に崩れながらクーは痛感する。

今までのは全て手加減していたのだ、と。
遊ばれていたのだ、と。

川;゚ -゚)「き、貴様は――ッ!」

衝撃によって四肢が麻痺し、呼吸さえも困難となる。

(#゚;;-゚)「ほな」

動けぬクーを傍目に軍神は足を進めた。
手をヒラヒラと振り、装甲列車の先頭を目指して歩き始める。

もはや追いつけぬ背に、クーは震えた声で問いかける。

川;゚ -゚)「一つ、ッ聞かせろ……お前達の、目的は何なんだ……!?」

(#゚;;-゚)「ここまで来て解らんか?
    世界が変われど、ウチらの生まれた時から刻まれた目的は変わらん」

息を吸い込み

(#゚;;-゚)「――『異獣』の滅び、や」



193: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:25:20.49 ID:dP04uHTD0
  
目の前で展開された光は直前で逸らされた。
いや、逸らされたのではなく、己が動かされたのだと気付いたのは直後。

(;^ω^)「え……?」

ふと気付けば、頭にラミュタスの腕が乗っている。
どうやら彼が無理矢理に姿勢を動かしてくれたらしい。

(;`・д・')「くっ……」

苦悶の声。
そして鼻につく血の匂いが、ブーンの止まっていた脳を動かした。

(;^ω^)「ラミュタスさん!?」

見れば、彼の右肩から出血しているのが見える。
ニダーの放った光弾が貫通したのだ。

<ヽ`∀´>「馬鹿なことを……何でこのガキを助けたニカ?
      戦力的に考えてアンタが怪我する必要はないニダよ」

(;`・д・')「人の死を目の前で受け入れられるほど、俺はまだ壊れていない……!」

<ヽ`∀´>「なら、壊れる前に死ね」

(#^ω^)「おっ――!!」

ニダーの構える銃を殴り飛ばす。
耳障りな音が響いたと同時、銃身がへの字に折れ曲がった。



195: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:26:42.67 ID:dP04uHTD0
  
<ヽ;`∀´>「何つー馬鹿力ニダ!」

しかしまだ一丁残っている。
拳を突き出した姿勢のブーン目掛けて、トリガーを引いた。

一拍の空白。

その間にブーンは拳を動かしていた。
銃口と自分の身体の間に、まるで盾とするように手を置いたのだ。

<ヽ`∀´>「馬鹿が!」

声と共に光弾が放たれる。
直後、何かが弾けるような音が響いた。

(;^ω^)「……お?」

痛みはない。
衝撃で少し痺れた手を見れば、白い煙を上げながらも無事であることが確認出来た。

<ヽ;`∀´>「な、何で貫かないニダ!?」



197: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:28:02.16 ID:dP04uHTD0
  
(`・д・')「そのグローブ……」

( ^ω^)「お? ウェポンっていう特殊な武器だお?」

(`・д・')「そうか……グローブには魔力が満ちて……。
      それをコーティングするから……そういうことか……」

<ヽ;`∀´>「ウェポン……これが渡辺の言っていた『唯一の見所』ニダか!」

よく解らないが、どうやらクレティウスで光弾を防ぐことが出来るらしい。
それを理解したブーンは笑みを浮かべる。

( ^ω^)「苦節十話……ここにきてようやく主人公らしい活躍が出来そうですお、カーチャン」

構え

(#^ω^)「うりゃー!!」

ニダーの顔面目掛けて、その握った拳を――

<ヽ`∀´>「ニダッ!」

( ゚ω゚)「ふぉぉぉぉぉ!!?」

ニダーが咄嗟に蹴り上げた足が、ブーンの股間を見事に捉えた。



205: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:30:13.63 ID:dP04uHTD0
  
爪先を吊り上げ、内股になりながら

( ゚ω゚)「こ、れが……僕の、か、つやく……オワタ」

細かいジャンプをした後に耐え切れなくなったのか、その場に倒れた。
意識はあるようだが、股間を押さえて悶えている姿を見ると戦える状態にないのが解る。

<ヽ;`∀´>「コイツ馬鹿ニダ……接近こそが一番隙を突かれ易いというのに」

(`・д・')「……格闘に自信を持っていた証拠だな。
      あまり敗北の経験が無いのだろう」

あまりに哀れな主人公その1を眺め、二人はそれぞれコメントを残す。
次の瞬間、弾けるように距離をとった。

<ヽ`∀´>「さぁ、後はお前だけニダ」

(`・д・')「だがそれも終わりだ!」

ラミュタスの持つ武器。
その手元に付属していたトリガーを引き込む。
キィン、という甲高い音が響き、柄尻から乾電池のような筒が叩き出された。



210: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:31:39.95 ID:dP04uHTD0
  
(`・д・')「……あまり人に用いる武器ではないのは承知。
      だが降参しないと言うのならば……俺はきっと斬るのを躊躇わないだろう」

<ヽ;`∀´>「ぐっ……」

銃を構えるが、この距離ではかわされてしまう。
一発一発の間隔が広いため、一度潜り込まれれば退くしかない。
が、己の背には貨物室のドアがあるのみ。

(`・д・')「どうする」

問いかけの後、ニダーはある事に気付いた。
それは上からの気配。
笑みを浮かべ

<ヽ`∀´>「――逃げるのも降参するのも断るニダ!」

言葉と共に貨物室の天井がぶち破られる。
ラミュタスとニダーの間、破片の雨と共に舞い降りてきた影は

(#゚;;-゚)「…………」

軍神だった。



212: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:33:03.20 ID:dP04uHTD0
  
(;`・д・')「なっ――」

(#゚;;-゚)「……あぁ、ラミュタスかい」

呟き

(#゚;;-゚)「何しとん? さっさとこっちに帰ってこんかい」

(`・д・')「いくらお前の言葉でも、それは出来ない」

(#゚;;-゚)「はぁ……何? 後継者達に何か吹き込まれた?」

(`・д・')「これはこの世界に来る前から決めていたことだ。
     俺は世界交差を認めない」

(#゚;;-゚)「……もう終わったことをgdgd言うたって仕方ないやろ?」

(`・д・')「まだ終わってはいないはずだ」

((( ゚ω゚)))(お?)

(`・д・')「本来の世界交差とは複数の世界を交わらせる、言わば『世界合成』と言うべき所業。
     今の状態は『住人』のみが一つの世界に集っているだけの状態」

つまり、と続け

(`・д・')「まだ世界交差は完了していないんだろう?
     人だけが集まっても、それはただの異世界跳躍に過ぎない。
     本当の世界交差はまだ終わってないんだ」



215: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:34:28.86 ID:dP04uHTD0
  
(#゚;;-゚)「……へぇ」

(`・д・')「渡辺が世界交差を完了させない……いや、出来ない理由があるはず。
     これは俺の推論だが、相応の『力』が無いからだと思っている」

( ゚ω゚)(力……)

(`・д・')「世界の合成。
     そんな神がするような事を、一人の人間が出来るわけがない。
     だから強大な力を得る必要がある……そして――」

彼は言った。

(`・д・')「この世界に、その『強大な力』とやらがあるのだろう?」

ブーンは、ようやく痛みが引いてきた股間を撫でながら

(;^ω^)(……この世界に、渡辺が望む大きな力があるのかお?)

足りない頭で考えるが該当するようなモノは見付からない。
そもそもこの世界に、渡辺が求めそうな強大な力を持つ物質など無いはずだ。
他世界には『ルイル』という物質があるらしいのだが――

と、そこで疑問が浮かぶ。

(;^ω^)(あれ? 何で無いんだお……?)

それは逆転の発想ともいえた。
しかし今の彼の頭で、これ以上の考察は不可能だった。



219: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:36:03.51 ID:dP04uHTD0
  
?マークを浮かべる彼を余所に

(#゚;;-゚)「……だとすれば?」

軍神が問いかけ

(`・д・')「……目的は解るが、他世界を巻き込むな」

風鷲が答える。
その言葉に噛み付いたのはニダーだ。

<ヽ`∀´>「馬鹿言うなニダ!
      もうウリ達の力だけでは、どうにもならないのは解ってるはずニダよ!」

(`・д・')「だから他世界を巻き込むのか!?
     何も知らぬ彼らの命を、俺達が勝手に使っても良いのか!?」

(#゚;;-゚)「落ち着きぃ、ラミュタス。
    知らんのはこの世界だけや……それに、ここの住人は巻き込む予定は無いよ」

ラミュタスは、倒れているブーンを指差し

(`・д・')「現に巻き込んでいるではないか!」

(#゚;;-゚)「どんな物事にも例外はある。
    もっとも、この子達は巻き込まれるべきして巻き込まれたと思うけどもな」



221: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:37:25.48 ID:dP04uHTD0
  
<ヽ`∀´>「そりゃそうニダ。
      何せ、あのクルトの関係者らしいニダ」

(;^ω^)「お!?」

ニダーの口から出た名前に目を見開いて驚く。
問い出そうとするも、しかし未だ残る股間の痛みがそれをさせない。
『うー』という呻き声を連呼しながら蠢く姿は、どう見てもイモ虫です本当に(ry

そんな哀れな姿を余所に、やはり三人は勝手に話を進めていく。

(#゚;;-゚)「とりあえず時間無いみたいやし……GDF回収せなな」

<ヽ`∀´>「デフラグの情報によれば、ちゃんと二機あるみたいニダよ」

(`・д・')「回収は勝手にしろ。
     だが、俺のGDFは俺が持っていく」

(#゚;;-゚)「あくまで、ウチらのトコに来る気は無いと?」

(`・д・')「悪いがな……それに、付けなくてはならない決着がある」

空いた天井から見える夜空を見上げ

(`・д・')「何処かの馬鹿が俺を待っているようだ。
     だから俺は、その馬鹿を馬鹿から解放してやらなきゃならん」



226: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:39:33.50 ID:dP04uHTD0
  
その空虚な目は、ある種の威圧を生み出していた。
右肩を抑えながら歩き始める。
ニダーが一瞬だけ険しい視線を向けるも、尚進もうとするラミュタスに気圧されてか道を譲った。

車両から出る直前。

(`・д・')「……でぃ」

(#゚;;-゚)「何?」

(`・д・')「お前は生きるのか」

(#゚;;-゚)「……ま、納得するまで精一杯?
    邪魔する者は叩き砕いて我が道行かせてもらいますよ、と」

(`・д・')「何故に疑問系なのかは解らんが……お前らしいな」

(#゚;;-゚)「アンタはどうなん?」

(`・д・')「……俺は」

(#゚;;-゚)「ここでリタイアする?」

(`・д・')「俺は、俺の意思を継ぐ者を見つけた。
     そいつに背負ってるモノを渡してくる……リタイアはそれから決めるさ」

言い残し、ラミュタスはGDFを収納している車両へと向かった。



229: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:42:01.78 ID:dP04uHTD0
  
(#゚;;-゚)「…………」

主人公が悶えている空間。
タタン、という列車の鼓動と溜息が響く。

<ヽ`∀´>「……とりあえず決着とやらが済むまでは、手出ししない方が良いニダね。
      今のラミュタスは頭に血が昇ってる状態ニダ」

(#゚;;-゚)「はン、まぁええわ。
    今日はウチらじゃなく、ラミュタス達の決着がつく日やってんね」

身を翻し

(#゚;;-゚)「大事の前の小事や……今日は鉄鳥の決闘でも見ながら酒飲みましょ、と」

<ヽ`∀´>「ところで、このガキはどうするニカ?」

ニダーの視線は、哀れなブーンへと向けられる。
同じように目を向けた軍神は

(#゚;;-゚)「今回のウチらの目的は、あくまでGDFの回収。
    一機はラミュタスが持っていくみたいやけど、残ったウチのは回収出来るやろうね。
    この可哀想な子は放っといてええやろ。
    それに、ちょっと渡辺に聞きたいことが出来てな……まぁそういうことで」

片手をヒラヒラさせながら歩き出す。

(#゚;;-゚)「とりあえず列車止めてくるわ。
    愛する風鷲の飛び立ちを、二度と戻らぬ飛翔を支援するためになぁ」



232: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:43:21.79 ID:dP04uHTD0
  
車両の扉を開く。
冷たい空気と同時、鉄の香りが鼻をくすぐった。
それは彼にとって懐かしい匂い。

(`・д・')「……また、乗ることになるか」

呟きの先。
灰色の鉄翼が、その身を列車の鼓動に委ねていた。
薄暗い中での存在は、しかしハッキリと浮かぶように感じられる。

ラミュタスは、そんな雰囲気を放つGDFに近付き

(`・д・')「…………」

腰からブレードを引き抜く。
そしてもう片方の手で、機体を柔らかく撫でた。

辿り着いた先は開閉スイッチ。
軽く押し込むと、空気が抜ける音と共に風防が軽く開いた。



233: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:44:34.94 ID:dP04uHTD0
  
滑り込むようにシートへ。
内部で身を預け、少しだけ目を瞑った。

(`・д・')「……行くか」

目を開き、ブレードを正面足元の窪みに差し込んだ。
高い電子音が響き、メインコンソールウインドウに光が灯る。

『Gravity Disregard Fighter 【Ecid】』

その文字列から始まり、数々の処理が自動的かつ高速に為されていった。
篭った機会音が響いて機体に命が吹き込まれる。

グォ、という音に始まり、キ、という音が続き

(`・д・')「――待ってろよ、愚弟」

言葉と共に状況が動いた。
鋭い音と同時に翼が開き、引力操作によって機体が浮遊を始める。
右ペダルを思い切り踏み込んだ瞬間

「――!」

天井部を突き破り、灰色の鉄鳥が夜空へと舞い上がった。



235: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:45:55.48 ID:dP04uHTD0
  
そのまま加速。
前方へ直進し、すぐさま半円を描くように上昇を始める。

その先に見えるのは、もう一機の黒い機体。

通信が入る。

『――久しぶりだな』

無感情といえる弟の声。
それに対し、ラミュタスは微かな懐かしみを以って答える。

(`・д・')「二年振りか」

『探したよ』

(`・д・')「逃げ続けたさ……追いつかれないように」



238: 序二段(大分県) :2007/03/29(木) 16:47:26.97 ID:dP04uHTD0
  
『とりあえず何も聞かないし、何も言わない。
 俺はアンタを超えに来た』

(`・д・')「今は何も聞く必要は無く、何も言う必要は無い。
      俺はお前の壁となるためにいる」

『それも今日で終わりにしよう。
 俺がアンタを超えることによって』

(`・д・')「あぁ、終わらせよう……俺がお前を墜とすことによって」

二機は旋回するように飛び続ける。
かつてを懐かしむように、これからを期待するように。

『……行くぞ』

(`・д・')「来い」

言葉と共に、二機は同時に加速した。
互いを突き放すようにして、更には撃墜するために。



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