( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

153: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 13:56:12.76 ID:9kIeQKni0
  
活動グループ別現状一覧

( ^ω^) 川 ゚ -゚) 从 ゚∀从
所属:??世界・後継者
位置:都市ニューソク・内藤家
状況:平和な午後

从'ー'从 (#゚;;-゚) 川 -川 [゚д゚] <ヽ`∀´> *(‘‘)*
所属:機械世界・連合軍
位置:連合軍アジト
状況:不明

( ФωФ) (´・_ゝ・`) ( ・ω・)=つ
所属:機械世界・連合軍
位置:都市ニューソク
状況:ハインリッヒを拉致するために活動開始

(,,^Д^)
所属:世界運営政府・特殊部隊『ラウンジ』
位置:オーストラリア→JAPAN
状況:都市ニューソクへ移動

ノハ#゚  ゚) ┗(^o^ )┓
所属:英雄世界
位置:不明
状況:不明



155: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 13:57:46.14 ID:9kIeQKni0
  
第十三話 『狙われた最強』

(,,^Д^)「……こりゃ酷いな」

嫌でも目に入る惨状を見て、男は苦々しげに言う。
そこはまさに死屍累々と言った様相であった。

ここは世界運営政府が、都市ニューソクを監視するために作られた機密軍事施設。
存在すら知られてはならないこの場所では、血の匂いが充満していた。

警護していた兵士はおろか、非戦闘員のはずの情報部の者達でさえも殺されている。
灰色を基調としていたはずの床は、今や何処も彼処も真っ赤であった。

(゜3゜)「生存者はいません」

部下である田中が報告をする。

(,,^Д^)「何者だ……世界政府に喧嘩でも売っているつもりか?
     そもそもこの施設の位置をどうやって知った?」



156: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 13:59:53.42 ID:9kIeQKni0
  
不自然な点はまだあった。

(,,^Д^)「何だ、これは……?」

足元に死体。
額に綺麗な穴を開けられているのだが

(゜3゜)「……弾が見当たりませんね」

死体を調査していた部下が言う。

状況を見る限り、敵と思われる集団は銃器を主に使用していた可能性が高い。
しかし、それを証明するための弾が一つも見付からないのだ。

(,,^Д^)「壁にも天井にも穴が開いているが、あれは――」

(゜3゜)「ラウンジが使用する専用の銃弾のみが発見されました。
     それ以外の弾が見付かりません。
     敵の銃はラウンジが使用するモノと同じ……というのも考え難いです」

どういうことだろうか。
銃を使用しているくせに、弾を使わないのだろうか。

空気銃などの一種ではないかという意見もあったが
今の技術では大掛かりな装置を使わねば、殺傷レベルの威力を出すなど不可能である。



157: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:01:20.62 ID:9kIeQKni0
  
(,,^Д^)「槍や矢のような武器を使った可能性は?」

(゜3゜)「あり得ませんね」

死体を見下ろし

(゜3゜)「刺突のような攻撃で殺傷した場合、どうしても皮膚が内部に抉りこまれますし
     貫通した際に肉がブチ撒けられるはずです」

田中の言葉に、足元の死体を見る。

(゜3゜)「しかし、死体を見てもそのような痕がないでしょう?
     床を汚している血は、死亡後の流血によって発生したものです。
     そもそも、そんな原始的な武装でこの施設を制圧するなど、自分には考えられませんよ」

(,,^Д^)「だろうな……」

イクヨリが懸念していたのは、この事なのだろうか。
何にせよ、何か得体の知れない武器を持っている可能性があった。

腰に下げている剣へ視線を向ける。
もしかしたら、意外にも早くコイツの出番が来たのかもしれない。



159: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:02:49.85 ID:9kIeQKni0
  
(,,^Д^)「ところで、この施設から救援連絡はなかったのか?」

(゜3゜)「いえ、襲撃時と思われる時間に救援を呼んでいるらしいのですが……。
     ワケの解らないことを叫ぶばかりで」

(,,^Д^)「ワケの解らないこと?」

(゜3゜)「『奴らは化け物だ』とか『両目傷の男が』などと喚くばかりですよ。
     両目傷ってのは……まぁ、尻尾を掴みやすくなるでしょうが
     僕的には使っていた武装の詳細を教えて欲しいものです」

肩を竦めて言う。
その態度に少しばかり苛立ちが募るも、しかし正論であった。

大きな組織になればなるほど連携は重要視される。
もちろん巨大な組織ほど味方同士の綻びは多くなるのだが、だからこそ互いの連携は重要である。

如何に己の命が危険に晒されようとも
有効な情報は生きている仲間に伝えるべきなのだ。

(,,^Д^)「まぁ、そういうケースもある」

諦め、顎に手をやる。

ここを襲撃した者達は既に消えていた。
つまり、この施設を制圧することが目的でないと言えるだろう。



160: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:04:32.87 ID:9kIeQKni0
  
(,,^Д^)「この施設には、特に重要な情報などはないはず。
      ならば何故、襲撃した……?」

(゜3゜)「ただの享楽?」

(,,^Д^)「馬鹿言え。 リスクが高過ぎる」

この襲撃は、解釈次第では世界を敵に回すようなものだ。
はっきりとした理由は解らぬが

(,,^Д^)「……どうやら、都市ニューソクに何か関係があるのだろうな」

(゜3゜)「そもそもここってニューソク監視用の施設ですしね。
     ってか、何であそこは妙な連中が多いんでしょうか?」

(,,^Д^)「知るか。
     とりあえず施設の復旧作業を始めるぞ。
     我々『ラウンジ』は、ここを拠点に活動を開始する」

(゜3゜)「了解です」

軽い敬礼をして駆け出す田中。

(,,^Д^)(……妙な胸騒ぎがするな。
      あの男も一枚噛んでいるのか……?)



161: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:06:04.45 ID:9kIeQKni0
  
闇に染まり始めた道路。
あまり人が住んでいない閑静な新築住宅街に、三つの人影。

ブーン、ハインリッヒ、クーだった。
彼らは買い物袋を手に下げ、談笑しながら歩いていく。

从 ゚∀从「いやぁ、『マジカル・ユン』の主題歌『一族郎党晒し首☆』が手に入って良かったです」

川 ゚ -゚)「私も『月刊:死体の上手い隠し方』を買えた。
     お使いも良いものだな」

(;^ω^)(何か色々とんでもない物品だお……)

ブーンの肩にはバッグが一つ。
中には、汗にまみれた道着が入っている。

週に三度ある少林寺拳法の練習に行っていたのだ。
その帰りにお使いを頼まれたクー達と合流したのである。

あれから一日が経っていたが、未だに心のモヤは取れていない。
師に心の内を話そうかとも思ったが
あのオッサンは、きっと自分を殴り飛ばすに違いなかったので口にはしなかった。



162: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:07:28.73 ID:9kIeQKni0
  
練習の時に、何も考えずひたすら打ち込むのが好きだった。
しかし今日は色々な考えが浮かんでくるため、とてもじゃないが楽しめなかった。

( ^ω^)(何か悪循環だお……)

どうすれば良いのか。
結局のところ、関わらないのが一番なのだろうが。

思考した時間は一日だけだ。
しかしその短い期間の中で、ブーンの心境は確実に変化していた。

事なかれ主義とでも言うのだろうか。
様々な自信を失った彼は、今や完全にネガティヴな思考へと切り替わっていた。

と、そこで何かが背中を刺しt。

静電気のようなものが背筋を走る感覚。
視線だけで隣を見れば、クーの顔に緊張が走っているのが見える。

川 ゚ -゚)「……振り向くな」

从 ゚∀从「え?」

川 ゚ -゚)「尾行されているようだ……よくは解らんが」

クーが言うのだ。
間違いはないのだろう。
先ほどの静電気のようなものは、視線の一種だと今更ながらに理解する。



164: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:08:51.31 ID:9kIeQKni0
  
(;^ω^)「どうするお?」

川 ゚ -゚)「出来れば捕らえて吐かせたいな。
     関わるなと言った渡辺達とは思えないが、関連性があると見る」

まただ。
また自ら首を突っ込もうとする。

改めてその姿勢を見て異常だと思い、しかし否定する気持ちが湧く。

(;^ω^)(僕の方が異常なのかお……?)

川 ゚ -゚)「確か近くに公園があったな。
     今の時間なら人もいなくなる頃だろう……誘き出すぞ」

彼女の目は真剣そのものだ。
何も意見を持っていないブーンが、文句を言えるわけがなかった。
聞こえないように溜息を吐いて歩く。

やがて見えてきた公園の中へ入り、その中心部で足を止めた。

川 ゚ -゚)「……やはり私達に何か用があるのか」

周囲から刺すような視線を感じる。
以前の自分なら気付くことさえ出来ないであろう気配を、今は確実に感じ取れるのだ。
いつの間にか鍛えられているのだ、と心の中で苦笑する。



165: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:10:13.54 ID:9kIeQKni0
  
川 ゚ -゚)「!」

動きがあった。
それは公園の入り口からだ。

( ФωФ)「よぉ」

クーと同じような黒コートの男。
両手はポケットへ突っ込まれており、隙だらけに見える。
しかし周囲に彼の仲間が潜んでいるのは明白だった。

川 ゚ -゚)「私達を何者か知っての尾行か」

( ФωФ)「尾行っつーか、襲撃っつーか。
        とりあえずそこの女に用があるんだぜ」

その視線はハインリッヒへと向けられていた。

川 ゚ -゚)「……渡辺の関係者か」

( ФωФ)「あぁ? まぁそんな感じだな。
        んなことどうでも良いから、そこの女よこせ」

川 ゚ -゚)「断る」

( ФωФ)「即答かよ。
        んじゃあ、力尽くで貰って行くけど良いな?」



167: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:11:34.36 ID:9kIeQKni0
  
周囲の殺気が鋭くなる。
クーが隠し刀を取り出して構えた。

( ФωФ)「クハハ、そうブルブルと身構えるな。
        囲ってリンチすんのは好きじゃねぇんだ。
        部下は使わないでおいてやるよ」

男が軽く手を上げる。
途端、周囲の気配が一斉に消えた。

( ФωФ)「何つーの? やっぱり手に入れたいブツは自分の力で手に入れたいじゃん?
        っつーわけで俺とタイマン張れよ」

川 ゚ -゚)「……信用出来ないな」

( ФωФ)「敵同士、信用するのもどうかと思うぜ?
        んなもん映画の中だけにしておけよ」

今度は視線をブーンへ向けた。

( ФωФ)「おい、そこでビクビク女の陰に隠れてる小僧。
        男を自負してんだったら俺と戦ってくれよ。
        女殴るのは好きじゃねぇんだ」



168: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:12:41.06 ID:9kIeQKni0
  
その言葉に、ブーンは頭の中で何かが切れたような音を聞く。
錯覚であろうが、行動の理由としては充分であった。

( ^ω^)「……解ったお」

川 ゚ -゚)「ブーン、誘いに乗るな。
     罠の可能性が――」

(#^ω^)「うるさい!!」

川;゚ -゚)「……!?」

8th−Wを発動。
白色の光からグローブが現われる。

(#^ω^)「いきなり怒鳴って悪かったお。
      でも、ここはちょっと僕に行かせてほしいんだお」

返事も聞かずに歩き出す。

( ФωФ)「おうおう、男らしいねぇ」

(#^ω^)「黙れお……」

苛立ちは最高潮まで達していた。
このムカつく野郎をぶん殴って、それでこの嫌な気持ちを発散しよう。
それが終われば、きっと自分は元に戻れているはずだ。



170: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:14:11.09 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「はっは! じゃあ行くぜ!」

男が両手をポケットから出して構える。
素手。
コートを見ても、重そうなモノ――例えば銃器などを隠している様子は無い。

ブーンも構えた。
両手にはクレティウス。
生身の敵を相手にするのは、少し反則気味だ。

しかし、そのようなことを考慮する慈悲の心など要らない。

(#^ω^)(ちょっとサンドバッグになってもらうお!)

駆け出す。
一歩目から全力。
敵目掛けて身を飛ばし、そのままの勢いで

( ФωФ)「ッ!?」

腹部に一撃。
それだけで終わらない。
相手の身体が浮いたことを確認し、更に一歩踏み出す。

衝撃。

アッパー気味に構えられた拳が男の顎を穿つ。
まるでバク転するような格好で吹っ飛んだ。



171: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:15:25.01 ID:9kIeQKni0
  
从;゚∀从「おぉ! 凄いです!」

ハインリッヒの声。
いつもなら、その声に応えることも出来ただろう。
しかし今はとてもそんな気分になれなかった。

とにかく殴りたい。
とにかく蹴り飛ばしたい。
このイライラを、腕の一本でも折って発散させたい。

何かドス黒いモヤが、ブーンの心にまとわり憑き始めた。

( ФωФ)「……クハハ」

仰向けに倒れていた男が起き上がる。
口の端から血を流し

( ФωФ)「いいねいいね、その稚拙な殺気」

(#^ω^)「そのムカつく口を潰してやるお!」



175: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:16:59.07 ID:9kIeQKni0
  
尚も突進。
接近の合間に、男はポケットへ手を突っ込んだ。

(#^ω^)「!?」

( ФωФ)「来いよ、馬鹿!
       仕留められる時に仕留めないのは、大馬鹿がすることだぜ!」

(#^ω^)「嘗めんなッ!!」

拳が頬を直撃。
男の体勢が崩れた。
続けざまに足払い。
そして防御さえも出来ない状態の男に連打を叩き込む。

( ФωФ)「クハァ……たまんねぇなぁ!」

(#^ω^)「なっ――」

男の手に何かが握られている。
それは、先ほど取り出したのであろうブレスレッド。
光沢が一切無い黒色を発しており、綺麗というよりも先に不気味さが滲み出ていた。

それを軽い手付きで装着する。



177: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:18:14.79 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「その目に刻み込めよ! テメェを負かす相手の姿をな!」

黒光。
闇に溶け込むようなそれは

(;^ω^)「ウェポンの……!?」

色からしてみればフサギコの持つ3rd−Wだ。
しかし、何かが決定的に異なる。
光であって、しかし光でないのだ。

川;゚ -゚)「闇……!」

それは黒のカーテンとも言えた。
そのまま収束し、男の両腕に吸い込まれるように消えていく。
現われたのは

(;^ω^)「なっ……!?」

( ФωФ)「いいねいいね、その驚いた表情! クハハハハ!!」

漆黒のグローブを装着している男の姿だった。



179: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:19:29.26 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「驚いたぁ!? やっぱり驚くよなぁ!?
        自分達だけが所有していると思ってたんだもんなぁ!」

激情の声は一瞬で氷点下まで下がる。

( ФωФ)「なら死ね」

衝撃。
鈍痛。
吐気。

三連続の刺激がブーンを襲った。
呆けていて隙を見せた鳩尾に相手の腕がめり込んだのだ。

(;^ω^)「うげぁ……!?」

思わず膝を折る。
まったく予想し得なかった攻撃は、見事に鳩尾深くまで突き込まれている。

痛みに悶える暇など無い。
すぐさま右鎖骨に痛みが走り、蹴られたのだと気付いた時には空が見えていた。



181: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:20:49.47 ID:9kIeQKni0
  
川;゚ -゚)「内藤!?」

(メ^ω^)「……来るなお!」

( ФωФ)「うるせぇんだよ馬鹿!」

(メ^ω^)「ごはっ!?」

蹴られ、地を転がる。
強化を受けているはずの身体が、いとも容易く吹き飛ばされるとは

(メ^ω^)「そのグローブは何だお……!?」

( ФωФ)「あぁ? テメェが持ってるのと似たようなもんさ」

(メ;^ω^)(ってことは、純粋に向こうのウェポンの力が強いってこと――)

( ФωФ)「勘違いすんじゃねぇぞ。
        別に強化が、お前のよりも格段に強いってわけじゃねぇ」

(メ;^ω^)「え……?」

( ФωФ)「技術の差だよ、決定的なのは。
        お前よりも俺の方が、純粋な身体の強さにおいて勝ってるってことだ。
        知識も経験も――なぁ!」

(メ;^ω^)「うぐっ……!」



184: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:22:15.24 ID:9kIeQKni0
  
理解は出来る。
この状況の理由は、単に自分が弱いからだ。

如何に強力な力を持っていても、扱う人間が弱ければ話にならない。
例えば『一斬りで命を絶つ刀』を素人が持ったとしても
普通の刀を持った剣術の達人に勝てはしないだろう。

それと同じ状況なのである。

実のところ、感じる力はそれほどでもない。
モララーやギコを目の前にした時よりも、幾分か弱く感じられるほどだ。
しかし

( ФωФ)「おらよっ!」

脇腹を狙った回し蹴り。
速く、そして重い。
防御が出来たとしても、その衝撃によって強制的に隙を生み出されるだろう。

だから退く。

(メ;^ω^)「っ――!」

そのブーンを追うように拳が迫った。



186: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:23:40.24 ID:9kIeQKni0
  
読まれているのだ。
どの程度の力で、どの程度押した時に、相手はどのような選択をとるのか。
それが男の脳内で組み立てられているのである。
ほぼ瞬間・自動的に。

対して、その意図さえも読み取ることが出来ないブーンは
男の想像した通りに動いてしまう。

圧倒的な技術・経験の差。

よく漫画や映画などで敵の『裏を掻く』などとする場面があるが
アレは相手を読み切ってから初めて実践出来る行為だ。


見えぬ裏を知るには表を理解する必要がある。


表を知らぬブーンは、男の裏の意図を読み取ることなど出来ない。
表を知る男は、ブーンの裏の意図を容易く読み取ることが出来る。

その結果は明白だ。



187: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:24:58.11 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「ほらよ!」

(メ;^ω^)「くっ!」

右フック。
慌てて腕を曲げてガード。
しかし

(メ;^ω^)「あっ!?」

疎かになっていた足を引っ掛けられる。
そのまま顔面を鷲掴みにされ

( ФωФ)「寝てろォ!!」

思い切り地面へと叩き付けられた。

川;゚ -゚)「内藤!?」

(メ;^ω^)「う……ぁ……」

後頭部が焼け付くように痛む。
心臓の鼓動と同じリズムで、頭痛が感覚を支配していく。

霞む視界。
耳鳴り。
息を吸おうとするも、横隔膜が思うように動いてくれない。



189: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:26:17.54 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「教えてやるよ……今のお前の状態も、一種の経験不足から来る症状だ」

ここまでの緊張状態に彼の身体が慣れていないのだ。
神経が強張り、無意識の伝達さえも狂わされる。
一般人である彼にしてみれば当然なのだが、今の状況で言い訳など通用しない。

弱い、と強者から唾を吐きかけられるのみ。

(メ;^ω^)「くそっ……くそぉ……!」

鷲掴みにしている腕を掴み、引き剥がそうとする。
そのまま足を蹴立てて起き上がろうともする。

( ФωФ)「クハハ!! 武道やってんなら、こういう時の対処法くらい心得ておけよ!」

川#゚ -゚)「貴様!」

( ФωФ)「おぉっとぉ、動くなよ!
        男同士のタイマンに女が水差しちゃダメダメだぜ?
        それにアンタが離れれば、俺の部下がその女捕らえても良いんだが!?」

川;゚ -゚)「くっ……!」

先ほどの男の言では、周囲の部下を使わないというような事を言っていた。
ただ言っていただけであって、事実になるとは限らない。

ここでブーンを嬲り、クーを誘い出すことが目的なのかもしれない。
だとすれば離れるわけにもいかなくなる。



191: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:27:42.97 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「クハハハハ! 残念だったなぁ、坊主!
        あの黒髪女にとっちゃ、お前よりもあの女の方が大事だとよぉ!」

川;゚ -゚)「ち、違う!」

( ФωФ)「あぁ!? 言葉と動作が矛盾してんじゃねぇかぁ!?」

(メ;^ω^)「うるさいお……!!」

白色のグローブが光る。

( ФωФ)「おっおっ!?」

何かの気配を感じ取ったのか、男はブーンを離して距離をとった。

(メ#^ω^)「OVER ZENITH――!!」

( ФωФ)「クハハ! それが噂の限界突破ってヤツか!」

次に現われたのは手甲。
強靭かつ強固なイメージを発するクレティウスは、すぐさま戦闘機動へ移る。



192: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:29:00.90 ID:9kIeQKni0
  
(メ#^ω^)「強化符『腕部』『脚部』! 展開!!」

白い符が散り、まず足に集う。

激音。

共に白い符がたわみ、その身を引き千切られる。
土煙と符を巻き上げながらの突進を開始。

( ФωФ)「――!」

(メ#^ω^)「おぉぉぉ!!」

続いて右腕に符が集う。
強烈な発光後、音速超過の打撃が――

( ФωФ)「ほい」

(メ;^ω^)「ッ!?」

対する男の行動は奇抜だった。
身を少しだけズラして足を出し、突撃してきたブーンの足を引っ掛けたのだ。

(メ;^ω^)「うわっ!?」

無論、踏ん張りなど利かない。
その勢いのまま、ブーンは数メートルの距離を吹き飛んだ。



195: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:30:19.46 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「簡単な理屈だわなぁ。
        いくら音速超過で高威力だとしても、その力は一点に集中される。
        他の弱い部分を突けばお仕舞いだなぁ?」

(メ;^ω^)「くそぉ……!」

倒れた身体を起き上がらせようとするが

(メ;^ω^)「……!?」

力が入らない。
蓄積したダメージと限界突破による削られた体力。
二つの要素が不運にも今、絡み合ったのだ。

「――!」

同時に甲高い音を立て、クレティウスが指輪に戻る。

(メ;^ω^)「くそっ、駄目なのかお……!」

指輪発動には、ある程度の体力と精神力が必要だ。
詳しい理由は定かではないが、どちらか片方が足りないだけでも具現を困難とする。



196: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:31:43.38 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「はン、指輪無しじゃ何も出来ないってか。
        頼り過ぎてませんかコノヤロー?」

(メ;^ω^)「ぼ、僕は一般人だお……仕方ないんだお……」

( ФωФ)「あぁ? 指輪に認められても尚、一般人気取りかよ?
        そりゃちょっと頭おかしーんでねぇか?」

(メ;^ω^)「なっ……」

( ФωФ)「お前はもうとっくの昔に一般人超えてんだ。
        一般人が、俺と戦えるか?
        一般人が、ウェポンなんていう物騒な武器を使うか?」

(メ;^ω^)「で、でも僕は――」

( ФωФ)「言い訳が通用する世界じゃねぇぞ。
        まだ解ってねぇみてぇだから俺が言ってやるよ」

拳を構える。
ブーンの顔面を狙い

( ФωФ)「お前は、もう、逃げられねぇ」

激音が響いた。



198: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:33:23.93 ID:9kIeQKni0
  
从;゚∀从「!?」

川;゚ -゚)「あれは……?」

音と共に人が舞っていた。
黒い戦闘服に身を包んだ男が、公園の端から舞い上がったのだ。
きりもみし、そのまま地面へと叩き付けられる。

( ФωФ)「何だぁ?」

男の拳は寸前で止められていた。
その視線の先は、ブーンでもなく叩き落とされた兵士でもない。
公園の出入り口。
そこに人影があるのだ。

('、`*川「さぁてさて、こりゃどうしましょ?」

長身の女性。
中国風な衣装に身を包んだ彼女は、誰に言うでもなく問いかける。
対応する声が反対側――兵士が舞い上がった地点から響いた。

「多勢に無勢は気に入らんな。
 理由はどうあれ、俺は無勢に加勢することにしよう」

現われたのは筋肉質な男。
ジャケットを羽織ってはいるが、その巨体は隠しきれていない。
無骨な拳を構え

( ゚д゚ )「その方が、バランス良いだろう?」



201: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:34:34.17 ID:9kIeQKni0
  
('、`*川「私ゃどっちでも構わないんだけどね。
     とにかく御飯食べられるようになれば、何処にでも加勢しちゃうよ」

( ФωФ)「何だテメェら?
        周囲に部下置いといたはずだぞ」

('、`*川「え? いたっけ?」

( ゚д゚ )「よく解らんが、襲い掛かってきた黒尽くめの男を何人か気絶させた記憶がある。
     ペニサスはどうだ?」

('、`*川「あ、そういえば私もー」

( ФωФ)(張らせて置いた兵がやられた……何者だ、コイツら?)

と、そこで周囲から黒服の兵士達が現われる。
女が面倒臭そうに周囲を見渡し

('、`*川「ったく、こっちはお腹空いてるんだから動かさないでほしいわねぇ。
     あ、そこの御嬢ちゃん」

川;゚ -゚)「む?」

('、`*川「食事を奢ってくれるなら、助けてあげちゃうよ!
     しかも今なら御代わり五杯までで我慢してあげる!」

川;゚ -゚)「え、あ、あぁ……食事くらいなら構わんが」



204: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:35:51.60 ID:9kIeQKni0
  
('、`*川「聞いた、ミルナ君?」

( ゚д゚ )「一日振りにマトモな飯が食えそうだな」

コキリ、と指・首を鳴らす。

( ФωФ)「テメェら、普通に会話してっけどよぉ。
        この人数相手に無傷でいれるって言うのかよ、おい?」

公園の中心付近にいるクーが周囲を見渡す。
ざっと数えて二十以上。
雰囲気からして、戦闘訓練を積んでいる無能ではない兵士だろう。

川;゚ -゚)(これは、私でさえ逃げ切れるか……)

有能な兵士と相対した場合、実力もそうだが最も懸念すべきは数を用いた連携。
ウェポンという特殊な武器を持って戦っても、切り抜けられる自信はあまりない。
しかし、対して二人の答える声は

('、`*川「んじゃ、多く倒した方がデザート注文権利を得るってことで」

( ゚д゚ )「構わん」

川;゚ -゚)(奢る側のことは考えんのか……)



205: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:37:03.71 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「嫌だねぇ、スルーされるってーのは。
        おい、このムカつく馬鹿共を――」

言葉が終わる前に風が動いた。

「うげぁっ!?」

苦痛というよりも驚きに近い悲鳴。
慌てて視線で追えば、ペニサスと呼ばれた女性が一人目の兵士に蹴りを御見舞いしていた。

「なっ――どはっ!?」

反対側からも同じような悲鳴、
巨躯の男が、地を這うように突撃してタックルを繰り出している。

('、`*川「一匹ィ!」

( ゚д゚ )「二人だ」

('、`*川「な、何ぃ?」

パンッ、という衝撃音と共に掌底で打ち抜く。
吹き飛んだ兵士は、二人ほどを巻き込んで地に伏せた。



207: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:38:18.39 ID:9kIeQKni0
  
('、`*川「これで三!」

( ゚д゚ )「五人!」

('、`*川「ぬがぁ! 私のデザートが!」

( ФωФ)「何なんだコイツら……!?」

怒涛の勢いとは、このことを言うのだろう。
二十名近くの兵士がたった二人の、しかも素手の男女に圧倒されている。

千切っては投げ、千切っては投げ。

まさに言葉通り、黒尽くめの兵士達が吹き飛ばされていく。

「くそっ! そっち行った――ぐはぁ!?」

('、`*川「あらん、レディに背中見せるなんて失礼じゃなくて?」

( ゚д゚ )「この世の何処に竜を殺せるレディがいる?」

('、`*川「ミルナ君忘れた?
     つい先月、そんなレディが現われましたよ――と!」

激音。
二人同時に突き飛ばす。



209: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:39:26.59 ID:9kIeQKni0
  
( ゚д゚ )「そちらに送るぞ!」

('、`*川「あいよ!」

ミルナと呼ばれた大男が、敵の襟首を掴んで投げ飛ばす。
落下点に走りこんだペニサスが軽く足を掲げ

('、`*川「見よ! この見事な脚線美!
     新必殺――」

大気が渦巻き

('、`*川「あ、あれ……何だっけ!?」

もはや爆発としか表現出来ぬほどの足蹴が炸裂。
ベキリ、という嫌な音を立てながら、くの字になって男が吹き飛ぶ。

('、`*川「うわ、やっべ……」

( ゚д゚ )「何がだ?」

('、`*川「新必殺技の名前を忘れちゃったい。 てへっ☆」

( ゚д゚ )「年齢に見合った行為をしてほしいものだが」

('、`*川「アンタ後で憶えときなさいよ」

( ゚д゚ )「こちらの台詞だ」



212: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:40:52.75 ID:9kIeQKni0
  
のん気な会話の中にも打撃が響いていた。
ある者は銃器を、ある者はナイフを構えて迎撃するも、呆気なく空を舞う。

( ФωФ)「クハハ……こりゃ面白ぇ……!」

笑みを浮かべる。
が、制止する声があった。

(´・_ゝ・`)「ロマネスクさん、軍神が近付いて来てますよ」

( ФωФ)「あぁ? ちっ、やっぱ嗅ぎ付けられたか」

(´・_ゝ・`)「ここは後退を薦めます。
      あの男女は普通ではありません……おそらく英雄ではないかと」

( ФωФ)「あーくそっ、やっぱな!
        おいテメェら! 退くぞ!」

言葉と共に、兵士達が後退を始めた。

やはり動きは鋭い。
ミルナとペニサスが追撃を行おうとするも隙を見つけられず、それを出来ずにいた。
その内、公園内から敵の姿が見えなくなる。



214: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:42:27.00 ID:9kIeQKni0
  
気配の有無を確認したミルナは、軽く溜息を吐き

( ゚д゚ )「今回は奇襲だったから楽であったが……」

('、`*川「うん、ちゃんと準備されると厄介かもね。
     まぁ、『厄介』程度なんだけど」

肩を竦める。
少し息が荒くなっているものの、疲労などは感じさせない。

川;゚ -゚)「…………」

从;゚∀从「…………」

見事、としか言い様がなかった。
呆然としている二人に、ペニサスが視線を向ける。

('、`*川「んじゃ、約束通り御飯六杯ね!」

川;゚ -゚)「え……」

( ゚д゚ )「……何か増えてないか?」



216: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:43:41.03 ID:9kIeQKni0
  
(#゚;;-゚)「アンタらなぁ……あまり面倒事を起こさんといてぇな」

闇の中。
薄暗い通路を、コツコツ、と高い音を響かせ歩く軍神。
その背後には

( ФωФ)「わーってるよ、ちゃんと反省してるぜ。
        合流に遅れた詫びとして『最強』を手土産にしようと思っただけなんだってば」

(#゚;;-゚)「それが面倒事なんや。
    もうちょっと軌道に乗るまで我慢出来んのか、と」

(´・_ゝ・`)「まぁまぁ、お互いに落ち着きましょう。
      既に済んだことです」

( ФωФ)「そういうこった」

(#゚;;-゚)「はぁ……ホントに解っとんのかい」



217: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:44:44.91 ID:9kIeQKni0
  
足を止める。
正面には巨大な鉄扉。

(#゚;;-゚)「会議とかする時は、大体この部屋を使うことになってる。
    特に渡辺や貞子は常にココにいると思ってえぇよ」

(´・_ゝ・`)「解りました……ボッコス、憶えましたか?」

( ・ω・)=つ「ボッコボコにしてやんよ」

(#゚;;-゚)(また何か妙なメンツが増えたなぁ……)

シュシュ、と拳を放つボッコスを見つめて肩を竦める。
気を取り直して鉄扉を開いた。
ギ、という軋みの音が大きく響く。

内部は相変わらず広い。
しかしいつもの薄暗さが無かった。

从'ー'从「あ、お帰りー」

(#゚;;-゚)「ただいま。
    何処かの阿呆共の回収終わりましたよ、と」

( ФωФ)「阿呆はねぇだろ」



218: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:45:49.52 ID:9kIeQKni0
  
从'ー'从「ありがとう、軍神さん。
      久しぶりだね……ロマネスク君、デミタス君」

( ФωФ)「おう、アンタも久々だな……かれこれ五年くらいか?」

从'ー'从「私からしてみれば十年だけどね。
      ところで、その子は?」

彼女の視線はボッコスへ向けられている。
他の者達も同じく視線を向けるが、彼は動揺することなくシャドーボクシングを続ける。

(´・_ゝ・`)「あぁ、彼のことはあまり気にせずに。
      私が趣味で作った機械人形ですから」

从'ー'从「へぇ、デミタス君も進歩してるんだー」

(´・_ゝ・`)「それはそうと、その背後の巨大な宝石は何ですか?」

視線の先。
渡辺の背後に、高さ三メートルを超えそうな巨大岩が鎮座されていた。
青緑に近い光を発しており、まさに宝石といえる。

从'ー'从「うふふ、次の世界に繋いだ直後に回収出来て僥倖だったよ。
      これは英雄世界の『ルイル』……英雄神が魂を注ぎ込んだ生きている魔法石だね」

( ФωФ)「へぇー、それが噂の……」



220: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:46:47.59 ID:9kIeQKni0
  
周囲では、デフラグや貞子が作業をしている。

(´・_ゝ・`)「反応は無いのですか?」

从'ー'从「残念ながらね。
      多分、こっちのことを信用出来ないからだろうけど……。
      とりあえず物理的コンタクトをとるために、デフラグさん達が頑張ってくれてる」

( ФωФ)「ふぅん……」

ロマネスクは周囲を見る。
皆、それぞれの作業に没頭していた。
この中では軍神が厄介であるが、数秒もあればカタはつく。

( ФωФ)「おい、あれは使えねぇのか?」

巨大ルイルの一角を指差す。
渡辺や軍神がその方向を見た。

( ФωФ)「何つって」

从'ー'从「え?」

彼女の後頭部に銃口が突きつけられたのは、直後だった。



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