( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

2: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:19:55.01 ID:O+X6LG5W0
  
活動グループ別現状一覧

( ・∀・) 爪゚ -゚)
所属:??世界
位置:FC十四階・社長室
状況:不明

( ゚д゚ ) ( ゚∀゚) ('A`)
所属:??世界・Aチーム@
位置:隣都市
状況:僕達は餌

川 ゚ -゚) 从 ゚∀从
所属:??世界・AチームA
位置:FC五階・会議室
状況:私達は釣り人

(´・ω・`)
所属:??世界・Bチーム
位置:FC九階・情報管理課
状況:情報収集



4: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:21:37.58 ID:O+X6LG5W0
  
( ^ω^) ('、`*川
所属:??世界・Cチーム@
位置:FC七階・訓練室
状況:暴打フォン

( ,,゚Д゚) (#゚;;-゚) <_プー゚)フ (`・ω・´)
所属:??世界・CチームA
位置:FC四階・総合兵軍課
状況:警備の日々

从'ー'从 ( ´_ゝ`) [゚д゚] (-@ハ@)
所属:??世界・Dチーム
位置:FC地下二階・資料室
状況:アレレー?魔力足リナイヨー?

( ФωФ) (´・_ゝ・`) ( ・ω・)=つ  <ヽ`∀´> *(‘‘)*
川 -川 ξ゚听)ξ (,,^Д^) (゜3゜)
所属:機械世界・アギルト連合軍
位置:連合軍アジト
状況:不明

ミ,,"Д゚彡
所属:??世界・アストクフル家執事
位置:FC別棟・病室
状況:意識不明

ノハ#゚  ゚) ┗(^o^ )┓
所属:英雄世界
位置:不明
状況:不明



8: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:24:28.72 ID:O+X6LG5W0
  
第十八話 『闘争への布石』

午後五時。
FCが存在する街中の小さなファミレス。
まだあまり人がいない店内にて、疲労の溜息が聞こえた。

(;'A`)「くはぁー……疲れたぜー」

ドカ、と勢い良く椅子に座るのはドクオだ。
それに倣うように

(;゚∀゚)「オレンジジュースくれー」

( ゚д゚ )「アイスコーヒー」

ジョルジュとミルナが口々に言いながら座る。
適当に飲み物を注文してから、三人は同時に溜息を吐いた。

( ゚д゚ )「今日も進展がなかったな」

(;'A`)「もう慣れっこッスけどね」



9: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:26:06.10 ID:O+X6LG5W0
  
現在、四チームが行動を開始して一週間が経過している。
その中で最も役に立っていないのは、このAチームだった。

毎日のように外へ出て、ほとんど情報を得ずに帰ってくる。
そんな調子で七日という時間が経過してしまっていた。

最初は『頑張ろう』などと励まし合っていた彼らだが
もはやこのような状況になってくると、出てくるのは諦めの言葉ばかりである。

(;゚∀゚)「最近さ、FCに帰るのが嫌なんだけど。
    たまにはデカい顔して帰ってみてぇなぁー」

('A`)「お前も空気くらいは読めたのか……意外だ」

( ゚д゚ )「二人とも考え過ぎだ。
     流石に『役立たず』などと思う奴など……仲間の中に、いないだろう?」

(;'A`)「頼むから疑問系はやめて下さい、泣きたくなるから」



10: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:27:59.84 ID:O+X6LG5W0
  
再度、三人が溜息を吐く。

( ゚∀゚)「ってか、何で街中でしか動かねぇわけ?
     もっと山の中とか人気のねぇ場所の方が、囮になるだろー?」

('A`)「調査・情報収集という名目で人気のない山の中へ行く。
    どう見ても囮です、本当にありがとうございました」

( ゚∀゚)「お? どういたしまして?」

(#'A`)「…………」

( ゚д゚ )「俺達はあくまでも『外部調査班』。
     調査という姿勢を崩すのは、怪しまれるから駄目だ」

(;゚∀゚)「めんどくせぇー」

ウエイトレスが注文の品を運んできた。
一日中歩き回り、疲労困憊の表情を浮かべる三人を訝しげに見ながら
ジュースやコーヒーをテーブルの上に置いていく。

( ゚д゚ )「さて、そろそろ定時連絡の時間だな」

コーヒーを一口飲み、ミルナは携帯電話を取り出した。
情報を統括するモララーと、Aチームのリーダーであるクーに報告をするためだ。



12: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:29:42.01 ID:O+X6LG5W0
  
その姿を横目に、ドクオはコーヒーにミルクを入れる。
ブラックも嫌いではないが、やはりコーヒーにはミルクが必須だ。

( ゚∀゚)「そういやさ」

('A`)「あん?」

オレンジジュースを飲んでいたジョルジュが話しかけてきた。

( ゚∀゚)「お前、何でこの件に関わってんだ?
     ぶっちゃけ知らん顔してても構わねぇわけだろ?」

どうやら本来の意味が解っているらしい。
あのホワイトボードの一件は
己の手で関わるかどうかを見定めるための、いわば儀式的な側面を持っているのだ。

( ゚∀゚)「前の時みたいに『友達のため』とか、そんな感じなのか?」

('A`)「誰から聞いたんだよ、そんな恥ずい話……。
   っつか、自分の世界がピンチかもしれねぇってのに黙ってシカト出来るか?」

( ゚∀゚)「俺ならするね」

('A`)「は? 言葉と行動が矛盾してるだろ……常識的に考えて」



13: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:31:15.36 ID:O+X6LG5W0
  
( ゚∀゚)「退けない理由みてぇなのがあるわけよ。
     本当は俺だって、こんな面倒なことに関わりたくねぇさ」

('A`)「お前に理由があったのか……これまた意外だ。
   とりあえず興味本位で聞いてやるよ」

表面ではクールぶっているドクオであるが、心中は穏やかではない。

自分の行動理由が安定していないのは事実。
それを意外な人物に指摘されたこともだが、ジョルジュ本人に戦う理由があるという事実を
ドクオ自身、どこかで信じられなかったのだ。

(;'A`)(くっそぉ……流される者同士だと思ってたのに)

戦う理由がないわけではない。
しかし、それが戦う理由なのかと問われれば……。

思い悩むドクオを知ってか知らずか、ジョルジュは語り始める。

( ゚∀゚)「俺さー、バーボンハウスが好きなんだ」

('A`)「……は?」



14: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:33:05.27 ID:O+X6LG5W0
  
意外だった。
ショボンが言うのなら解るが、よりによってジョルジュの口から出たのだ。

(;'A`)「え? だ、だって……お前、ショボンに嫌われてんじゃん?」

( ゚∀゚)「いや、俺だってショボンは嫌いだぜ?
     でも何つーか……居心地がいいんだよ」

これも意外だった。
自由奔放な彼が、束縛され得る場所を選んでいるのだ。
更にはあの変態もいるというのに。

( ゚∀゚)「ぶっちゃけ楽しいんだよな。
     早起きして、接客して、飯食って、寝て、たまに買い物行ってさ」

('A`)「ただの住み込みアルバイトじゃん」

( ゚∀゚)「んー……俺、ちゃんとした人間じゃねぇのは知ってるよな?」

('A`)「……知ってる」

ジョルジュは人造人間だ。
しかも役目を与えられたクーやハインリッヒとは異なる、実験作のような存在。
今更だが、もしかすれば仲間の中で一番存在が危ういかもしれない。



16: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:34:48.28 ID:O+X6LG5W0
  
( ゚∀゚)「んでもって馬鹿だろ?
     だから、昔から利用されっぱなしだったんだ」

決して過去を語ることをしなかった現状主義の男が
何故か、少しだけ過去を明かし始める。

( ゚∀゚)「それでも運動神経やらそこら辺は他の奴よりも良くて……そういう誇れるモンがあった。
     ま、それがあったから利用されてたんだけどな」

('A`)「利用って……例えば?」

( ゚∀゚)「お前らから見ての『裏仕事』ってヤツだ。
     下手に運動出来たから窃盗や殺しとか……あんまり良いもんじゃねぇ。
     結局、荒巻の野郎も俺を駒と見なして接触したみたいだしな」

('A`)「…………」

( ゚∀゚)「俺とお前らが戦ってた頃……よく『殺したい』とか言ってたじゃん?」

('A`)「何か薬でもやってんのかと思ってた」

(;゚∀゚)「うるせぇやるかボケ」

悪態を吐きながらストローを口へ。
そのまま音を立てながら中身を吸い込み、笑みを浮かべ

( ゚∀゚)「俺、馬鹿だったからさー……殺したりすれば構ってもらえるとか思ってたんだよな」



17: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:36:32.14 ID:O+X6LG5W0
  
( ゚∀゚)「笑えるだろ?
     あん時の俺は、殺すか殴るか盗むくらいしか考え付かなかったんだぜ?」

心底おかしそうに笑い始めるジョルジュ。
しかしその下品な声の中に、少しだけ負の色が見え隠れてしていたのを
ドクオは見逃せなかった。

(;'A`)(笑えるかアホ……)

その彼がバーボンハウスを気に入っている。
理由はひどく簡単なものだった。

( ゚∀゚)「いや、何つーか……居てもいいっていう雰囲気が好きなんだ。
     必要とはされてねぇかもしんねぇけどさ」

('A`)「そういうネガティヴな思考はやめとけ」

( ゚∀゚)「んぁ、まったくだなー」

('A`)「ってことは、お前はバーボンハウスのために……?」

( ゚∀゚)「そういうことになるわな。
     俺は俺の生きたい場所を取り返すために戦ってるみてぇなモンさ」



19: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:38:18.40 ID:O+X6LG5W0
  
肩を竦めつつ軽い笑いを見せ

( ゚∀゚)「くだらねぇだろ?」

('A`)「……くだらなくねぇよ」

( ゚∀゚)「ま、俺はそんな感じで戦ってるってこった、今はな。
     こういう下らねぇ理由で命張ってるアホもいるんだぜ」

――あぁ、そういうことか。

昔の彼が見せていた残虐性は、以前から利用されていた事による反動のようなもの。
『それ』しか知らない彼の、無意識でのSOSだったのかもしれない。
しかし、今のジョルジュは『それ』から解放されている。

('A`)(最近、際立って馬鹿になってきたとか思ってたけど……)

もしかしたら、単に本来の性格が出てきただけなのかもしれない。
目の前にいるのが本当のジョルジュであって、昔の彼は仮面を被っていたようなものだ。

('A`)「なるほどなぁ……」

ドクオは、ジョルジュに対する見方を改め始めた。
後でショボンにも話しておこうと思う。



20: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:40:10.76 ID:O+X6LG5W0
  
( ゚∀゚)「あ、何か頼んでいい? 腹減った」

答えを聞く前に注文を始める。
その姿に呆れつつ、しかし納得しながら

('A`)「ジョルジュ」

(;゚∀゚)「あ? やっぱ勝手に注文したらマズかった?」

(;'A`)「いや、代金はミルナさんのサイフから出るから別にいいんだけど。
    じゃなくてだな……えーっと」

頭を少し掻き

('A`)「ありがとな」



( ゚∀゚)「……は?」



21: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:41:13.35 ID:O+X6LG5W0
  
心底不思議そうなに首を傾げるジョルジュ。
その間抜けな表情から察するに

……こいつ、何も考えてねぇ。

馬鹿馬鹿しくなったドクオは、意地の悪い笑みを浮かべながら

('∀`)「何かその軽い動機を聞いたら安心したぜwwwwww
    下には下がいるんだなってよwwwwwwww」

( ゚∀゚)「てめぇwwwwwwwww」

( ゚д゚ )「何だ? 何かあったのか?」

連絡を終えたミルナが、不思議そうにこちらを見る。

('A`)「いやいや、別に何もねぇッスよ。
    ちょっと戦う理由みたいな、ありがちなことについて話してただけッス」



23: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:42:39.09 ID:O+X6LG5W0
  
( ゚∀゚)「そういやミルナも何か理由があるっつってたな。
     ロマネスクって奴じゃなくて、フェンリルの方に」

( ゚д゚ )「……まぁ、な」

声のトーンが明らかに落ちる。
触れてはマズい話題だったらしい。
ドクオが慌てて他の話題を出そうとした瞬間

( ゚∀゚)「おーっしゃ、俺様に聞かせてみろよ!」

空気の読めない男二号が胸を張って言ってしまった。
ちなみに一号は兄者である。

(;'A`)「馬鹿! 空気嫁って!」

( ゚д゚ )「いや、別に隠していたいわけでもない。
     時間も余っているようだから軽く話しておこう。
     俺のことも少しは知っておいてほしいしな」

ミルナが姿勢を変える。
両肘をテーブルの上に乗せ、少し俯いた状態だ。
明らかに雰囲気が変わったのを感じ取り、ドクオとジョルジュも背筋を伸ばした。

(;゚∀゚)(やっべ、こんな空気になるんなら言わなきゃよかった……)

(;'A`)(最悪だな、お前)



24: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:44:45.46 ID:O+X6LG5W0
  
聞こえぬ声でヒソヒソと話す二人。
知ってか知らずか、ミルナはポツリと語り始めた。

( ゚д゚ )「いつか説明した通り、俺は今から二年ほど前……『業名の儀式』という試練を受けた。
     そして英雄神に合格をもらって、英雄となった」

『騎士王』という業名を授かったらしい。
守護の天才とまで謳われるほどの才能を持っていたミルナ。
しかし

( ゚д゚ )「その試練は俺一人だったら絶対に受からなかっただろうと、今でも思っている」

('A`)「ミルナさんほどの人でも難しい試練だったんスか?」

( ゚д゚ )「確かに難しかった。
     だがそれ以上に、支えてくれる人がいたから俺は試練に打ち勝てたんだ」



27: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:46:37.12 ID:O+X6LG5W0
  
ヒート。
それがミルナを支えてくれた彼女の名だった。
赤茶色の美しい長髪を持ち、明るく気高い性格の太陽のような女性。

業名は『蜘蛛姫』。
激流といえる攻撃性を示した業名。

『騎士王』と『蜘蛛姫』の名は、わずか半年ほどで世界に知れ渡ることとなる。
それだけの才能と気概を持っていたのだ。

( ゚∀゚)「恋人?」

( ゚д゚ )「別にそういう関係ではなかった。
     アイツは、恋沙汰なんかよりも強さを純粋に求めていたからな」

しかし、と言い

( ゚д゚ )「俺は確かに彼女が好きだった……多分、今も」

( ゚∀゚)「そんな熱の篭った目でこっち見んな」

(;゚д゚ )「む……すまん」



31: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:48:20.69 ID:O+X6LG5W0
  
少し落ち込んだ様子のミルナを、ドクオは半ば感心しながら見ていた。

一週間一緒にいて解ったのだが、この男はいつも真っ直ぐなのだ。
街を歩き回る時も、何も得られないでFCに帰還する時、定時連絡の時も、話し合いの時も。

常に目は前を見て、物怖じせずに誰とも話す。

その会話の中にはジョークや世間話のような類はなく
ただ事実を、言うべきことしか言わない。

今の好意の言葉も、本当にそう思っているからこそ言えるのだろう。
彼の心には『恥』や『照』などといった要素がないのだ。

('A`)(すげぇ……)

フラフラと迷っている自分とは大違いである。
気概も、立場も、己の歴史も。



32: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:49:49.40 ID:O+X6LG5W0
  
( ゚∀゚)「で、有名になってどうなったんだ?」

( ゚д゚ )「俺達はその後、イリミリルという傭兵軍隊へ入った。
     平和に暮らす人々に害為す、ヴァラシャ島に現われた異形生物を倒すために」

それは狼型の化け物だった。
群れを成し、鋭利な爪跡、鉄さえ貫く牙を持つ。
証明するように、ヴァラシャ島にあった村が一晩で消えてしまった。

危険と判断した英雄達は、討伐するためにイリミリル軍を差し向ける。

己の力を人のために、と思っていたミルナとヒートが
イリミリル軍へ入隊したのは当然のことであった。

(;'A`)「ってか、異形生物って……まさか……」

( ゚д゚ )「あぁ、『フェンリル』だ。
    当時の俺らは知らなかったのだがな」

渡辺が言っていた言葉を思い出す。
機械世界に居座っている本隊とは別の分隊が、英雄世界に現われたのだ、と。



34: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:51:33.44 ID:O+X6LG5W0
  
既にミルナはフェンリルと関係を持っていたのだ。
しかも言葉からするに、戦闘さえも経験している。

( ゚д゚ )「俺が思うに決して弱くはない。
     獣特有の俊敏な動き、気配察知、攻撃力……どれも人間を超えている」

(;'A`)「それで群れてるんスか……」

大量の狼が津波のように襲ってくる様子を想像する。
真正面からでは、どうにも勝てない気がした。

( ゚д゚ )「まぁ、対策の方はDチーム辺りが立ててくれるだろう」

フェンリルを知っている渡辺や、長年戦い続けていた軍神がこちらにいる。
もし戦うことになった場合でも何とかなるのだろうか。

('A`)(…………)

なると思いたい。

( ゚∀゚)「じゃあ、そのフェンリルと戦ってたのが理由なのか?」

ジョルジュの問いにミルナが首を振る。

( ゚д゚ )「イリミリルに入ってから数ヶ月、俺達はフェンリルと散発的に戦い続けた。
     そしてあれは半年後くらいか……」



37: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:53:08.81 ID:O+X6LG5W0
  
溜め込むように息を吸い込む。
少しだけ過去を思い出すような表情をした後

( ゚д゚ )「……ある冬の日、ヒートが俺の隣からいなくなった」

(;'A`)「え?」

あの時に限ってミルナは、ヒートとは別の戦場で戦っていた。
早朝に戦闘を開始し、彼女が行方不明となった知らせを聞いたのは夕方。

戦場を信頼する部下に任せ、ミルナはヒートが戦っていた場所へ急いだ。

既に捜索は始まっていた。
居ても立ってもいられなかったミルナは、捜索隊に混じって延々と捜し歩いた。
最終的に彼は、体力が切れて気絶していたところを部下達に発見されることとなる。

( ゚д゚ )「結局、俺はヒートを見つけることが出来なかった。
     あれから一年近く経っている今もな」

('A`)「そんな……」

( ゚д゚ )「そして一つの結論に辿り着いた」

(;゚∀゚)「まさかそれって――」

( ゚д゚ )「あぁ……アイツは、フェンリルに連れ去れたのだ、とな」



38: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:55:01.03 ID:O+X6LG5W0
  
FC最上階に存在する社長室。
いつもの景色の中、いつもの社長が茶を飲み、いつもの秘書が報告を開始していた。

爪゚ -゚)「それぞれのチームからの総合報告です。
     それと茶菓子です」

( ・∀・)「いつもすまないね」

爪゚ -゚)「それは言わない約束です」

( ・∀・)b「『御約束モード:病弱な老人と健気な娘編』……流石、高性能だ」

妙な行動で性能を確かめる男はさておき
幾枚かの紙束を持ったジェイルが、機械的に報告を始める。

爪゚ -゚)「まず四チームからの報告をまとめました。
     Aチームからはいつものように、これといった有効な情報はありません」

( ・∀・)「ふむ」



39: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:56:43.97 ID:O+X6LG5W0
  
外部調査の名を冠してはいるが、あのチームはクーが言う通り『囮役』である。
そのチームから何も成果が出ないということは
そして周囲に張らせておいたFC兵にも、怪しい人物を見つけられなかったことを考慮すれば

( ・∀・)(この都市内に連合軍等の者が混じっている可能性は低い、か……)

秩序守護者などの超越者はともかく
何故か連合軍は、こちらの行動を読んでいる節があるのだが。

何かが引っかかる。
しかし解らない。

( ・∀・)「とりあえず都市内に危険は少ないと見て良いかもしれないね。
     油断は禁物だが……そろそろ外へ手を出してみるか。
     では、次を頼むよ」

爪゚ -゚)「Bチームからの報告は――」

紙を一枚めくり

爪゚ -゚)「敵勢力である連合軍に属する都市ニューソク以外の拠点探査の件ですが……特に存在しないようですね。
    つまり連合軍は、まとまって都市ニューソクに潜伏しているかと」

( ・∀・)「攻撃に転じた場合、他方向からの強襲を受けることはないわけだね。
     もし仮に受けたとしても……おそらくは対処出来る数だろう、ということか」



40: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:58:26.60 ID:O+X6LG5W0
  
爪゚ -゚)「他の英雄についてですが、曖昧な情報ばかりで選別が難しいそうです」

( ・∀・)「ふむ……英雄は諦めた方が良いかもしれないな」

爪゚ -゚)「どういう意味ですか?」

( ・∀・)「こちらには既に二人の英雄がいる。
     上手く使えるかは指揮官である私の腕に掛かっているわけだが
     あまり強者が多過ぎても、それはそれでどうかと思うわけだよ」

使い勝手が良いユニットを持つ場合、一つ気をつけなければならないことがある。
そればかりに頼りがちとなるという点だ。
真正面からの攻防には強くなるが、側面からの攻撃に脆くなってしまう。

( ・∀・)「負け惜しみに聞こえるかもしれないが、二人くらいが丁度良いかもしれない。
     あとは彼らや彼女らが補ってくれるはずだ」

爪゚ -゚)「私も微力ながら力添えいたします」

( ・∀・)「おや、自ら戦おうとするとは珍しい」

爪゚ -゚)「戦闘用秘書の使命であります」

( ・∀・)「相反した属性が織り成すファンタジーだね?
     さて、次を頼むよ」



41: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 14:59:57.88 ID:O+X6LG5W0
  
無表情で頷いたジェイルは、

爪゚ -゚)「Cチームは色々と防衛策を考えているようですね。
    戦力的に考えても最強かと判断出来ます」

( ・∀・)「それは良いことだ。
     彼らには後で色々と頑張ってもらう予定だからね」

爪゚ -゚)「なお、内藤様とペニサス様の訓練も順調かと。
     日に日に内藤様の傷が少なくなっています」

あれから一週間。
ブーンは相変わらずペニサスに殴られ続けているが
その成果は少しずつ出てきているようだ。

( ・∀・)「しかしながら……思っていたよりも彼の成長は早いようだ。
     もしかすると大化けしてくれるかもしれない」

爪゚ -゚)「ですが彼には決定的な欠点が存在します」

( ・∀・)「それは?」

爪゚ -゚)「メンタル面の脆さ……そして限界突破の相性です」

( ・∀・)「流石だ、解っているね」



42: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:01:47.38 ID:O+X6LG5W0
  
( ・∀・)「内藤君は性格的に一撃必殺というタイプではない。
     それだけの隙を見出す技術も、回転の速い脳も持ち合わせてはいないからね。
     動体視力はそれなりに高いようだが……素材を活かしきれていないという印象だ」

爪゚ -゚)「では逆に問いましょう。
     どうすれば良いのでしょうか、と」

( ・∀・)「解っているくせに問うなど、私を試しているつもりかな?
     別に私が答えを出しても彼の耳には届くまい。
     それに彼自身が気付かねば意味がないだろうし……ペニサス君辺りがきっと導いてくれるよ」

爪゚ -゚)「今現在も殴られ続けていることにより、多少はメンタル面の改善も期待出来ます。
     それらが完璧に終了した場合、彼は――」

( ・∀・)「かなりの戦力になってくれると思っているよ、私は。
     彼の心次第かもしれないがね」



43: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:03:17.21 ID:O+X6LG5W0
  
モララーが右手に持った茶をすする。

こういった動作を話の途中で行うのは、次へ進めという無意識での合図だった。
モララーを世界で一番熟知しているジェイルは、その意図を読み取り

爪゚ -゚)「では、Dチームの報告を」

白く細い指が紙をめくる。

爪゚ -゚)「魔法――『魔粒子制御法』を用いた、対魔力防護技術の件ですが
    どうやらそれなりの装備が完成したようで……あとは量産するだけだそうです」

( ・∀・)「確か魔力が足りないなどと言っていたようだが?」

爪゚ -゚)「えぇ、ですから捻出したようです」

( ・∀・)「予想は大体出来ているが、どこから?」

爪゚ -゚)「はい、それは――」



44: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:04:50.80 ID:O+X6LG5W0
  
FC地下二階。
広めの室中で、いくつかの人影が忙しなく作業していた。

[゚д゚]「でもよぉ、本当によかったのか?」

( ´_ゝ`)「何が?」

巨大な機械を前に作業している兄者。
一心不乱にコンソールを叩く彼の背中に、デフラグの声が掛かった。

[゚д゚]「何がって……それだ、それ」

指差す先には指輪。
しかし、それは既に4th−W『アーウィン』とはいえなかった。

桃の色を放っていた指輪は、今や黒や白の汚れが混じっている。
かつてのような神秘さは消え失せ、ただの古ぼけた指輪に見えた。

[゚д゚]「実験用や防護用装備のために魔力を吸い出したわけだが
    多分、もう使えねぇんだろ?」

( ´_ゝ`)「内容魔力を全て吐き出してるからな。
      多分じゃなくて、絶対に力の行使など出来んだろう」



46: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:06:32.47 ID:O+X6LG5W0
  
仕方なかったのだ。

まさか他の者の指輪を勝手にイジるわけにもいかないし
余っている13th−Wや6th−Wには所持者がいない。

擬似的にとはいえ、指輪は生きている。
所持者の許可無しにでも魔力の吸い出しは可能であるが
それは兄者の感情が許さなかった。

というわけで、己の指輪である4th−Wと言葉を交わし、協力の了承を得たのだ。

[゚д゚]「まぁ、俺らは非常に助かったわけだが」

( ´_ゝ`)「無駄になるならともかく、役立ったらなら本望だろうさ」



49: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:08:02.93 ID:O+X6LG5W0
  
兄者は少し離れた台の上に視線を向ける。
そこには、灰色の何かが山積みにされていた。

[゚д゚]「実験したとおりだな。
    これが量産されれば、ある程度の魔力攻撃は防ぐことが出来る」

( ´_ゝ`)「魔力には魔力、ね」

結局、それが答えだった。

魔力を防げるのは魔力。
同じ力同士、ぶつかれば相殺し合う。
強い方が弱い方を差し引いて残ることから、『軽減』といった方が正しい。

つまり、魔力を持たない物質に魔力を塗りこむことにより
他の魔力攻撃を軽減する盾となるのだ。

[゚д゚]「でも定期的に整備しなくちゃならんから、そこらへんは気をつけろよ」

( ´_ゝ`)「それに関して渡辺に聞きたいトコがあるんだが……彼女は何処行った?」

『あ?』とデフラグが首をかしげた。
後頭部を掻きつつ

[゚д゚]「……そういや上から呼び出されて出て行ったなぁ」



50: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:09:36.15 ID:O+X6LG5W0
  
从'ー'从「というわけで、呼び出されてきたわけだけど」

( ・∀・)「あぁ、適当に座りたまえ」

社長室に入ってきた白衣姿の渡辺。
ところどころが黒い何かで汚れ、目の下には小さな隈が出来ている。
少し危なっかしい歩き方で、来客用のソファに腰掛けた。

と、そこで正面に座っていた二つの人影に気付く。
渡辺が珍しく、軽く目を見開いた。

从'ー'从「……あ」

( ・∀・)「身構える必要はない……事情は既に話してあるからね」

モララーの言葉に、二人は頷いた。

( ・∀・)「さて渡辺君、寝不足のところすまない。
     少し話しておきたいことがあるのだ」

从'ー'从「何? この二人のことかな?」

( ・∀・)「いや、少し私の考えを聞いておいてほしくてね。
     そんなに時間をとることはしないから安心したまえ」

ジェイルが湯飲みを置いて茶を注いだ。
それなりに高級なモノらしく、良い匂いが渡辺の鼻を刺激する。



51: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:11:07.32 ID:O+X6LG5W0
  
( ・∀・)「この一週間、君はどう見る?」

从'ー'从「それは連合軍側のこと?
      それとも私達側のこと?」

( ・∀・)「そこまで解っているならば、単刀直入に言おう」

笑みを浮かべ

( ・∀・)「来る頃だろうと思っているのだが……君はどう思うかな?」

从'ー'从「微妙だねぇ」

( ・∀・)「この一週間、様々な面から連合軍を突いてみたわけだが
     私の予想ではそろそろだろうと思っている」

爪゚ -゚)「攻め込むタイミングでしょうか?」

( ・∀・)「逆だよ、逆。
     連合軍側が業を煮やして攻めてこないか、という話だ。
     ま、簡単に言えば……
     この四チームでの行動自体が、連合軍側を誘き出す『餌』ということになる。
     もちろん各チームの皆は知るわけもないが」

爪゚ -゚)「なるほど」



52: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:12:34.90 ID:O+X6LG5W0
  
一回の説明で全てを理解した彼女は、『しかし』と言い

爪゚ -゚)「その場合、相当に不利な戦況になると予想します。
    我々の立場上、FCの外で戦うことは出来ないので
    どうしても小規模かつ高密度な防衛戦を強いられることになるかと」

乱戦になる確率が高い、とジェイルは予想している。
密度の高い攻防戦となれば、必然的に同士討ちも多くなるだろう。

数や戦力では同等かそれ以上であるが、攻める方が強いのは道理だ。
しかも周囲からの助けを求めることが出来ない。
世界政府は少なくとも味方ではないのだ。

( ・∀・)「その通り……そして向こうも同じようなことを予想しているはず。
     だからこそ我々は、その裏を掻く」

爪゚ -゚)「まさか――」

( ・∀・)「一年以上前からの仕込み……ようやく役立つ時が来たようだ。
     まぁ、ロマネスクが攻め込む判断をするかによるが」

从'ー'从「するんじゃないかなぁ」

( ・∀・)「ほぅ?」



53: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:15:27.78 ID:O+X6LG5W0
  
从'ー'从「十年、向こうから見れば五年間……それだけ離れてたから無責任な発言だけど
      彼の性格上、重要なことを行う場合は邪魔を全て排除するからね。
      会議前の資料作りの時とか、よく部屋に篭ってたっけ」

( ・∀・)「何やら真偽は微妙なところだが、引き篭もり理論としては上出来だね。
     あとは情報チームが動きを察知すれば作戦開始だ」

おおよその戦力配置も頭の中で組み上がっている。
というか、おそらく仲間達は勝手に行動するだろうから、それを踏まえての布陣だった。

( ・∀・)「問題はイレギュラーの存在だね」

人生経験が浅いか、予想外の出来事に弱い連中が多いのだ。

( ・∀・)「秩序守護者や世界政府の邪魔は入ってもおかしくはないとして
     その他の新しい勢力に介入されたりでもしたら……」

从'ー'从「主導権は向こうにあるからねぇ。
      予想は出来るかもしれないけど、対応は無理でしょ」

( ・∀・)「だろうね……もはや仲間の奮闘に期待するしかないようだ」

肩を竦める。
そして渡辺の前に座っている人物らに視線を向け

( ・∀・)「ま、そのためにも君達に動いてもらうわけだが……期待しているよ?」

言葉を聞き、二人はしっかりと頷いた。



56: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:17:19.22 ID:O+X6LG5W0
  
異変には気付いていた。
自身が、異なる世界へと飛ばされたことも含めて。

だからこそ外界からの接触を遮断した。
自分の持っている力が、どれほど強力なものであるか理解しているからだ。

悪用すれば生死のバランスを崩せるだろう。
善用すれば何万人もの人々を救えるだろう。

あらゆるパワーバランスを覆すほどの力を持っているにも関わらず
彼らは、そんな自分に接触を図ってきた。

それだけであったならば、興味本位で話を聞くこともしただろう。
実際、彼らの話を聞いている最中である。

しかし機嫌が良いとは決して言えなかった。


( ФωФ)「へぇ、こんなちっちゃいのが神――『英雄神』なのかよ」

,(・)(・),「……人を見かけで判断するのは良くないナリだす」



57: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:19:15.32 ID:O+X6LG5W0
  
睨むようにロマネスクを見上げる。
このタマネギのような格好をした小人が、英雄神その人であった。

ただ、強制的なコンタクトを図られたせいなのか
その機嫌はかなり悪いように見える。

(´・_ゝ・`)「しかし、我々の出した茶菓子を頬張っていては
      その説得力も薄れるというものですな」

言葉通り。
椅子に座った英雄神は、目の前にある茶菓子を掻き込むように食していた。
まさに『見た目は子供(ry』である。

( ФωФ)「アレだなぁ……もちっと威厳があると思ってたんだが」

,(・)(・),「だから人を見かけで判断するのは良くないナリだす」

( ФωФ)「いや、見た目くらいしか判断材料ねぇし」

,(・)(・),「見る?」

( ФωФ)「h――」

言葉を発そうと口を開いた時に気付く。
菓子を包んでいたゴミが、己の頭に乗っかっていることに。

ざわ、と周囲の兵士達がざわめいた。



58: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:21:15.16 ID:O+X6LG5W0
  
ロマネスクは黙ってそれを手にとり、眺めるように見つめる。

( ФωФ)「…………」

,(・)(・),「百聞は一見にしかず、ということナリだすー」

(;´・_ゝ・`)(これは予想GUYですなぁ……)

周囲の兵士達は例外なく、全員が目を丸くしている。
どうやらあの速度を捉えた者は、この中に誰一人としていないらしい。

,(・)(・),「というわけで、おいどんに何用ナリだす?」

自信満々で問いかける英雄神。
ロマネスクは少し黙った後、ゆっくりと口を開いた。

( ФωФ)「……ぶっちゃけると力を貸して欲しいわけだ。
        小規模だが、世界の行く末を決める闘争を勝ち抜くためにな」



59: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:23:15.35 ID:O+X6LG5W0
  
適当に現状を説明する。
彼は既に異獣を知っているので、比較的短時間で終了した。

,(・)(・),「異世界から警告を送ってきてたのは、アンタらだったわけか。
     いやぁ、おかげで少しだけでも対策を練ることが出来たナリだすよ。
     ありがたやーありがたやー」

( ФωФ)「つっても、当時の連合軍最高司令官の命令だったんだがな。
        礼ならソイツに言ってくれや……ここにはいねぇけど」

,(・)(・),「で、おいどんにも異獣ってヤツを倒す手伝いをしろ、と?」

( ФωФ)「アンタの力なら、この世界に散ってる英雄を集めることも可能だろ?
        そういう意味も籠めての『力を貸してくれ』だ」

,(・)(・),「出来ないこともないナリだす。
     でも、断った場合はどうするナリだすか?」

( ФωФ)「あ? もし断るってんなら……出て行ってもらうかぁ」

ロマネスクの言葉に、周囲の兵やデミタスが驚きの表情を見せる。
英雄神も似たような表情を作った。

,(・)(・),「はて、聞いた話と違うような?
     『戦力になりえる要素は強引に引き込む』ってのが君らのやり方じゃないのかい?」

( ФωФ)「誰がアンタを『強引』に引き込むってんだ?
        俺らが束になって掛かっても、アンタなら突破できんだろが」

,(・)(・),「正論ナリだすなー」



61: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:25:19.80 ID:O+X6LG5W0
  
ポリポリとちょんまげを掻き毟る。
タマネギは少しだけ考える素振りを見せ

,(・)(・),「ふぅむ……で、主導権はこっちにあるナリだすな?」

( ФωФ)「アンタの住処としている純正ルイルを使わせてもらえば
        その優位性は更に上がることになるがな」

,(・)(・),「ってことは最終的に、おいどん消えてなくなるナリだすかー」

( ФωФ)「あぁ、アンタの本体ってあの純正ルイルだもんな。
        ん? じゃあ、今のアンタは何なんだよ?」

,(・)(・),「立体映像みたいなもんナリだすよ。
     もちろん実像を伴ったヤツ」

( ФωФ)「やりたい放題だな……で、自分が消えるから協力は無しか?」

,(・)(・),「いや、別に協力することに抵抗はないけども……」

言葉に、タマネギは首(身体?)を振る。
そして指を立て、こう言った。

,(・)(・),「ちょっと条件があるナリだす」

(´・_ゝ・`)「条件……?」



62: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:27:44.79 ID:O+X6LG5W0
  
訓練室では、相変わらずの打撃音が響いていた。

('、`*川「オラオラオラオラオラオラ!!」

(メ;^ω^)「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃ――へぶぁ!?」

神速の打撃群を迎え撃つも、途中で追いつかずに顔面直撃を受けるブーン。
そのまま背後へと吹き飛ぶ。

('、`*川「防御回数二十回突破……よし、最高新記録だね」

(メ;^ω^)「やったお……」

頭上に星を瞬かせながらのガッツポーズ。
ペニサスは、それを見ながら軽く笑った。

今ではマシに見えるが、初日こそ防御の回避も出来ずに殴られ放題であったブーン。
しかし一週間という時を経て確実に、そして少しずつであるが成長しているようだ。

女性とはいえ、英雄を名乗る彼女の拳に対して、ある程度であるが対応し始めている。
必然的に受ける傷も減っていた。



63: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:29:29.99 ID:O+X6LG5W0
  
<_;プー゚)フ「ひぇ〜、慣れっつーのは怖いもんだなぁ」

(´・ω・`)「見ていてこっちが痛くなるのにね」

特訓の様子を見ている人影がいくつか。
エクスト、クー、ショボン、ギコだ。

川 ゚ -゚)「彼は元より努力家で集中力も少しはある。
     一度火が点けば、ああいう風に突き進んでくれると思っていた」

( ,,゚Д゚)「というか、お前ら何でここにいる?」

視線の先にはクーとショボンだ。
A、Bチームのリーダーが、Cチームの管轄内に入っていることを言っているらしい。

(´・ω・`)「僕はポリフェノールさんの情報待ち。
      暇になったから、ブーンの様子でも見てみようかと」

川 ゚ -゚)「私もミルナ達が帰ってくるまで暇なのでな。
     ちなみに雑務の方は、ハインリッヒに任せてあるから大丈夫だ」

(;,,゚Д゚)「いいのか、それ」

川 ゚ -゚)「あの子が言ったんだ。
     『内藤さんの様子でも見てきたらどうですか』と」

<_;プー゚)フ(クーさんよりハインリッヒって子のが大人だな、こりゃ)



64: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:30:58.91 ID:O+X6LG5W0
  
隣に座る男が失礼なことを思っているとは露知らず。
クーはブーンの様子をじっと見つめている。

(´・ω・`)「ところで……最近のクーさんってブーンと一緒にいないこと多いよね」

川 ゚ -゚)「ん……」

( ,,゚Д゚)「珍しいな。
     以前は離れている方がおかしかったのだが」

川 ゚ -゚)「……別に、何でもないさ」

<_;プー゚)フ(解り易すぎて逆に判断しづらい件……)

四人が傍観している間にも特訓は続いている。
再度の攻防を終えたブーンが、打たれた腹を押さえつつ

(メ^ω^)「ハァ、ハァ……フヒヒ」

('、`*川「いや、キモいから」

(メ;^ω^)「すまんかった……。
       何か自分で手応え感じるから、つい嬉しくて」



65: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:32:34.57 ID:O+X6LG5W0
  
('、`*川「嬉しがる気持ちも解るけど、そこで満足しちゃダメだよー。
     人は向上心を失った時から死んだも同然だからね」

(メ^ω^)ノシ「はーい」

('、`*川「解ってんなら、そのヘラヘラした笑みを消しときなさいな。
     ってか、今日辺りで防御訓練は終わった方がよろしいみたいね」

(メ;^ω^)「な、なんだってー!
       じゃあ、ついに次からは攻撃訓練かお!?」

期待を籠めた眼差しを受け、ペニサスは

('、`*川「え? 私が殴られ役ってこと? 勘弁してよー。
     私ゃ殴るのは好きだけど殴られるのは……状況によるわー」

(メ;^ω^)「なんですとー!?」

あっさりと拒否する。
ブーンをサンドバッグ代わりにしていたという噂は本当だったらしい。



67: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:34:17.69 ID:O+X6LG5W0
  
(メ;^ω^)「じゃあ、僕はどうすりゃいいんですかお!?
       防御ばかり出来ても仕方ないお!」

('、`*川「攻撃訓練はミルナ君に頼んでみよっか。
     あの子、ドMだし……たぶん喜んで殴られてくれると思うよ」

(メ;^ω^)(衝撃の真実ktkr)

('、`*川「ま、今日はここまでにしましょ。
     今までの経験を復習する時間があってもいいしね。
     それにあんまり痛めつけてもアレだし」

(メ;^ω^)「初日は、たんこぶで目も見えませんでしたお」

('、`*川「そりゃ避けなかったアンタが悪い」

コツン、と額を軽く叩かれた。
ペニサスの顔に笑みが浮んでいるのを見ながら

(メ^ω^)「ありがとうございましたですお」

('、`*川「はははー、別に言ってくれりゃいつでも殴ってあげるからねー」

(メ^ω^)「うん、素直に勘弁願いたいですお」



68: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:36:11.71 ID:O+X6LG5W0
  
意思無しの表示として
拳にはめていた8th−W『クレティウス』を解除させようとする。
しかし

(メ;^ω^)「あ、あれ……?」

('、`*川「どしたの?」

(メ;^ω^)「おかしいお……指輪に戻らないですお」

気合を入れながら拳を握る。
やはり戻らない。
微かな白光を発しつつ、クレティウスはグローブのままに形を残している。

(メ;^ω^)「どうな『――応えよ』って――!?」

自分の声に被さる声。
それは一年半前にも聞いた声だ。

(メ;^ω^)(まさか……)

(  )『聞こえるか、内藤ホライゾン』

(メ;^ω^)(……クレティウスさんですかお?)

(  )『別に「さん」付けで呼ばれるような関係でもない気がするが、その通りだ』



69: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:37:44.48 ID:O+X6LG5W0
  
(メ;^ω^)(お久しぶりですお……ってか、どうしたんですかお?)

ブーンの疑問も無理はない。
クレティウスがこちらにコンタクトを図ってきたのは、一年半も前の話だ。
何故、今になって――


('、`*川「……おーい、内藤くーん」

ひらひらと眼前で手を振る。
しかしブーンは気付かない。
虚ろな目で、何処を見るでもなく突っ立っている。

('、`*川「ねぇねぇー、内藤君が壊れちゃったー」

(;,,゚Д゚)「勝手に壊すな」

(´・ω・`)「クーさん、あれって……」

川 ゚ -゚)「あぁ……ペニサス、そっとしておいてやってくれ」

('、`*川「ん? 解った」

川 ゚ -゚)(何かヒントを掴んだのか……それとも……?)



71: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:38:58.94 ID:O+X6LG5W0
  
(  )『私が望むのは二度目の対話だ、内藤ホライゾン』

(メ;^ω^)(お?)

(  )『君は擬似的であるが己の限界を知ったはず。
    ならば、超えるべきラインも明確に見えてきているはずだ』

つまり

(  )『想像せよ、次なる限界突破の形を』

(メ^ω^)(…………)

(  )『考えろ、活かせ、進め、突き破れ――君にはそれが出来るはずだ』

(メ^ω^)(僕は――)



――出すべき、答えは。



72: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:40:35.98 ID:O+X6LG5W0
  
様々な思惑が交錯する都市ニューソク、及び周辺都市。
そこから離れた山中に一つの喫茶店があった。
本来ありえない位置に建てられたそれの中には、数少ない常連客がいる。

蝋燭の明かりが照らす薄暗い店内。
コーヒーの匂いが充満した中で、三つの人影が言葉を交わしている。

( <●><●>)「本格始動といったところですか。
        連合軍、FC、異獣、そして我々……バラけていた要素が固まったようです」

/ ゚、。 /「燻っていた分、彼らの動きは速く、そして力強いものとなるだろうな」

|(●),  、(●)、.:|「対して、我々のやることは地味ですけどね」

ダディが苦笑する。

簡単に言えば漁夫の利を狙うのだ。

現状は膠着状態であるが、いずれ確実にFCと連合軍は争うこととなる。
そこに切り込んでいけば確実にどちらも混乱することになる。

更に疲弊していることを考えれば、自分ら三人での制圧も不可能ではないだろう。



74: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:41:55.82 ID:O+X6LG5W0
  
/ ゚、。 /「要はタイミングと役割だな」

( <●><●>)「軍神や英雄神レベルに対抗するのはダイオードさん。
        魔力を使った武器に対抗するのはダディさん。
        そして何の能力も持たない普通の人間を相手するのは私です」

|(●),  、(●)、.:|「そう考えるとダイオードさんが一番危険ですねぇ」

/ ゚、。 /「ふン、例え神と呼ばれていようが所詮は人造神だ」

( <●><●>)「力の過信は油断を生みますよ」

/ ゚、。 /「実際に強ければ、それ相応の力を出すまでさ」

背負った黒の巨剣に目を向ける。
その瞳には絶対の自信が備わっていた。

|(●),  、(●)、.:|「ただ、異獣の動きが気になりますなぁ」

( <●><●>)「今はほぼ単独で行動していますが……」

/ ゚、。 /「何を考えているのか解らん」

積極的に攻撃してくるでなし
策を朗じて混乱させてくるでもなし

ただ、状況を観察をしているのみだと思われた。



75: うどん屋(大分県) :2007/04/23(月) 15:43:41.55 ID:O+X6LG5W0
  
( <●><●>)「まぁ、能動的に動かないのならば都合が良いかもしれません。
        とりあえずは二勢力の無力化を、少ない被害で達成しましょう。
        世界交差という……世界の秩序を破壊する大悪事を止めるために」

言葉を聞いたダディが、コーヒーカップを持った手を止め

|(●),  、(●)、.:|「……誰が正義なのですかねぇ」

/ ゚、。 /「誰もが正義だろう。
      奴らも私達も、善だろうが悪だろうが心に正義を持っている」

( <●><●>)「…………」

/ ゚、。 /「だからこそ、これまで生き延びれた。
      誰もが本当の正義を持っているからこそ強いんだ」

|(●),  、(●)、.:|「正義の種類が重要ってことでしょうか……」

感慨深げに呟く。
そんなダディを横目に、ワカッテマスはコーヒーを飲みつつ

( <●><●>)(秩序が壊れつつある今、我々の絶対勝利が薄らいでいます。
        今の内に何とかしないといけないかもしれませんね……)



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