( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

4: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:24:18.14 ID:SvPFe6Eb0
活動グループ別現状一覧

( ・∀・) 爪゚ -゚)
所属:??世界
位置:FC十四階・社長室
状況:指揮

( ,,゚Д゚) ( ゚д゚ ) (`・ω・´) ('、`*川
所属:??世界・Bチーム
位置:FC一階・エントランスホール
状況:対英雄戦

┗(^o^ )┓ \(^o^)/ |  ^o^ |
所属:英雄世界
位置:FC一階・エントランスホール
状況:FC殲滅戦

( ^ω^) 川 ゚ -゚) 从 ゚∀从 ('A`) (´・ω・`) ( ´_ゝ`) <_プー゚)フ
(#゚;;-゚) 从'ー'从 [゚д゚]  (ミ,,"Д゚彡 (*゚ー゚) (´<_` ))
所属:??世界
位置:FC
状況:不明



6: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:26:43.97 ID:SvPFe6Eb0

( ФωФ) (´・_ゝ・`) ( ・ω・)=つ  <ヽ`∀´> *(‘‘)*
川 -川 ξ゚听)ξ (゜3゜) ,(・)(・),
所属:機械世界・アギルト連合軍
位置:連合軍アジト
状況:不明

/ ゚、。 /
所属:秩序守護者
位置:戦跡荒野
状況:処理中

(,,^Д^)
所属:世界運営政府
位置:不明
状況:FCへ接近

メ(リ゚ ー゚ノリ ル(i|゚ ー゚ノリ
所属:不明
位置:不明
状況:FCへ接近



10: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:29:43.68 ID:SvPFe6Eb0
第二十話 『戦線散開』

夜闇が照らす社長室。
その中でモララーは珍しく、その頭脳をフル稼働させていた。
手に持つのは通信機と各資料だ。

続々と来る報告の嵐に対応しつつ、先を読んだ対策を立てていく。

各階の守りに割く戦力の計算。
非戦闘員の脱出指揮。
地下研究施設の情報や機材の持ち出し。
動かないと言い張る『老人共』への説得。

刻々と変化する戦況に対応しつつ、モララーは的確な指示を部下へ発す。
自然と流れる汗も拭わず、冷静に判断していく。

先ほどまでに比べれば報告の嵐は大人しいものだ。
一階で暴れる英雄を、何とか抑えている仲間がいるからである。



11: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:31:21.04 ID:SvPFe6Eb0
( ・∀・)「ふぅ……ジェイル君、熱い御茶を頼むよ」

爪゚ -゚)「了解です」

通信機を切り、軽い疲労の息を吐く。
大体の損害報告や対策提案を受け終わったようだ。
後は一階の状況が動くまで、少しばかりの時間が残る。

( ・∀・)「さて」

しかし休んでいる暇など無い。
手元の資料をデスクの上に放り出し、また異なる資料を取り出す。
それはブーン達の、ここ最近の訓練結果を記したものだ。

違和感がある。

漠然としたそれを感じ始めたのは、つい最近のことだった。



13: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:33:10.27 ID:SvPFe6Eb0
研究所の一件から始まり、ギコへの夜襲、渡辺との戦闘、戦跡荒野での迫撃戦、
ロマネスクの襲撃、アストクルフ家襲撃、そして今起きているFCへの襲撃。

これまでの大きな戦闘や事件を思い、そして結論を出す。

――負け過ぎている、と。

今挙げた戦闘のほとんどが、こちら側の敗北で終わっている。

相手が強過ぎるのかもしれない。
運が悪かっただけなのかもしれない。

ただ、それだけでは説明出来ない何かをモララーは感じていた。

その違和感を示すように、三兄弟によって一階に設置していたFC部隊が全滅した。
彼らは、かつて機械型クックルという大軍相手に奮闘したはず。
代わってミルナ達が応戦しているも、やはり押され気味だと言う。

( ・∀・)「この違和感は何だ……?」

言葉にするが解らない。
ただ解っているのは、前回の戦いに比べて明らかに何かが異なるということだけだ。
それを言葉にするならば

( ・∀・)「感情を理性が抑えてしまっている、とでも言うのか……」



14: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:35:07.43 ID:SvPFe6Eb0
衝動的な行動が少なくなっている。
言うなれば、脇目も振らずに突き進む、という行為が出来なくなっている。

あの最後の戦い。
あれはもはや勢いで攻め込み、勢いで勝ったようなものだ。
理由として弱いが、勝利の条件としては納得出来る。

あの全てを叩き伏せる勢いが、今の自分達に見られないのだ。

( ・∀・)「皆も私も大人になった、か?
     馬鹿な……私などは既に大人だろうし、まだまだ子供の考えを持つ者もいる。
     考えを改めるような出来事が、全員の身に起こったとでも?」

ありえない。
そもそもモララー自身、そんな経験をこの一年半でしていない。
あの時から自分の考えを改めた憶えはない。



16: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:36:28.71 ID:SvPFe6Eb0
( ・∀・)「何とも歯痒いものだね、知っているのに解らないというのは。
     このままでは何とも不安だ……秩序や世界が壊れつつあるという大事な状況なのだが」

わざとらしく溜息を吐く。
と、そこでモララーの目が軽く見開かれた。

( ・∀・)「……今、私は何と言った?」

――秩序や世界が壊れつつあるという――

( ・∀・)「秩序が、壊れつつある……」

秩序とは未来への道筋。
決まった結果へと導くためのレール。

( ・∀・)「……そうか」

そういうことか。

相手が強過ぎるのもあるだろう。
後手に回ざるを得ない状況というのもあるだろう。

しかし、根本的な理由はもっと根深い部分にあったのだ。



22: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:38:24.64 ID:SvPFe6Eb0
( ・∀・)「皮肉なものだ……この考えは過去を全否定するようなもの」

そして結論として出たのは

( ・∀・)「この戦いも我々が負ける、ということだね」

仮定の域を出ない推測だが、おそらくはこの考え方で合っているはずだ。
こちら側が劣勢になっているのではない。
『在るべき』本当の姿に戻っただけなのだ。

考え、思考を切り替える。
切り開くための戦いではなく、逃げ延びるための戦いへと。

思うが同時、通信機を手に取る。

( ・∀・)「こうしている場合ではないな。
     今現在にて一番危険なのは――」



26: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:39:53.61 ID:SvPFe6Eb0
一階エントランスホール。
天井が比較的高く、高音はとことんまで響く空間だ。
その中で、甲高い音が連鎖する。

それは剣撃の音。
それは踏込の音。
それは穿貫の音。

一つ目の音源はペニサスとジュカイ。
足VS剣という、世にも奇妙な攻防が展開されていた。
轟風唸らせる美脚が舞い、風斬る刀剣が閃く。

('、`*川「やるじゃん『剣帝』!」

┗(^o^ )┓「そちらも流石ですよ『二極』」

その叫びは闘気でなく歓喜。
互いに活きの良い獲物を狩るかの如く、戦場を駆け回る。

飛び跳ねるようなフットワークで攻めるのはペニサスだ。
一瞬の隙が懐へ潜り込ませる好機となるため、対応するジュカイの防御は慎重。

その刀身を砕かんと足が迫る。
ぶつかり合った次の瞬間に衝撃波が広がり、周囲の塵や埃を吹き飛ばした。



29: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:41:50.37 ID:SvPFe6Eb0
二つ目の音源はミルナとオワタ。
相変わらずの高速刺突が嵐のように攻め入るが
その速度に慣れたミルナが、反撃を試み始めていた。

\(^o^)/「その順応速度……やりますね『騎士王』」

(;゚д゚ )「悪いがこっちは必死でな……返答の変わりに拳を御見舞いするぞ『槍王』!」

穂先が来る。
点という攻撃に対しては防御も回避も容易いのだが、線の攻撃に比べて圧倒的に速度が速い。
欠点を補うような攻撃の嵐。

しかし、その一度に放つ最大攻撃回数は六度。

六度目の攻撃後、必ずオワタに隙が出来る。
それは本当に一瞬ではあるが、英雄にとってはその一瞬こそが貴重な好機。

その六が来る。
もはや形を持った風が吹きぬけた。
右手をゴッソリと持っていかれたような錯覚に陥るが、その恐怖を振り払って反撃に出る。

しかし相手も伊達に英雄を名乗ってはいない。
反撃が来るのは承知済みだったらしく、向かい来る拳へ視線を向ける。
タイミング良く足を下げて距離をとる。

\(^o^)/「馬鹿正直過ぎますよ」

( ゚д゚ )「それが取り柄だ……!」



31: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:43:35.60 ID:SvPFe6Eb0
三つ目の音源はシャキン達とブームだ。
四方八方から襲い来る光の矢を、その恵まれた運動神経でかわしていく。

(`・ω・´)「これほどまでの戦力差とは……甘く見ていた」

|  ^o^ |「その油断が死に直結する世界なのですよ、現状」

言葉は現実になろうとする。
空中に設置されていた光の矢が迫り、シャキンの身体を貫こうとするが

( ,,゚Д゚)(対処出来ない速度ではない……!)

ギコが巨剣を巧みに操り叩き落とす。
防御するモノを持っていないシャキンを庇いつつ、攻撃のチャンスを見出そうとする。
しかし放たれる光矢は絶え間なく、ブーム本人にも隙が無い。

(`・ω・´)「ギコ、こっちだ!」

物陰に飛び込んだシャキンが呼ぶ。
周囲に光矢が無いことを確認し、ギコは何とか逃げおおせた。



32: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:45:21.76 ID:SvPFe6Eb0
(;,,゚Д゚)「近付かん限りは打破出来んな。
     それでもこちらの攻撃が通るかどうか……」

(`・ω・´)「銃弾を避けるということは、当たればダメージになるということだ。
      そもそも避ける、という行為自体があり得んのだが……突き入る隙がないわけじゃない」

と、そこでシャキンの腰部から甲高い音が鳴った。
通信機だ。
手に取り、聞こえてきた声に耳を傾ける。

( ・∀・)『生きているかね?』

(`・ω・´)「社長か……何とか全員無事だ」

( ・∀・)『ならば良い。
     だが残念ながら、別に安否を聞くためだけに連絡をしたわけじゃない。
     今から重要なことを言うから、従ってくれ』

いいか、と続け

( ・∀・)『ギコ君を今すぐに下がらせろ。
     殴っても気絶させてもいいから、絶対にだ』



37: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:47:09.42 ID:SvPFe6Eb0
( ,,゚Д゚)「どういうことだ……?」

(`・ω・´)「今彼がいなくなると、こちらとしても少し厳しいのだが」

( ・∀・)『地下で身体の調整を終えたでぃ君、装備を整えたエクスト君が向かっている。
     ギコ君退避の理由は時間が無いので後で話すよ』

それを聞いたシャキンが僅かに安堵の息を漏らした。
隣のギコも、自分が離れることによる戦力低下を気にしていたのか
納得したように頷く。

(`・ω・´)「了解した。
      すぐにギコを戦線から離脱させる」

( ・∀・)『ギコ君は四階の別棟入り口へ向かってくれ。
     兄者君が待っているから、そこの守備を任せる』

( ,,゚Д゚)「解ったが……問題はここからの退避だな」

妙な静けさを感じ取る。
攻撃の前に来る独特の沈黙だ。

そしてそれを証明するかのように、光の矢が走る。



38: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:49:31.11 ID:SvPFe6Eb0
(`・ω・´)「行け、ギコ!」

二人同時に物陰から飛び出し、シャキンが前へと走る。
階段へ駆け出したギコが

( ,,゚Д゚)「死ぬなよ。
     あまり互いを知らんが、それでも知り合いが死ぬのは後味が悪い」

(`・ω・´)「こちらの台詞だ」

|  ^o^ |「逃がしは――」

<_プー゚)フ「ハッハー! 好きにはさせねぇってんだよ!!」

シャキンから見て右方から弾丸がバラ撒かれる。
不意の攻撃に、弓を構えていたブームが一足飛びで退避した。
その隙にギコは階段を上り、シャキンとエクストが合流する。
ブームから見付からない位置に隠れつつ

(`・ω・´)「意外と早かったな」

<_プー゚)フ「パートナーチェンジは御早めにってな。
        軍神はもう少し掛かるってよ」



43: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:51:49.85 ID:SvPFe6Eb0
<_プー゚)フ「とりあえず色々武器持ってきたが、どうよ!?」」

腰に下げたいくつかの銃器を床に置く。
他にも手榴弾やナイフなど、基本的な戦闘装備が揃っていたが

(`・ω・´)「並の武器じゃ駄目だ。
      そもそも使い手の差が大きい」

<_;プー゚)フ「だろうと思ったぜ。
         空なら勝ち目があるんだけどなぁ……っつーか勝つのに」

(`・ω・´)「無い場所ねだりをしても仕方ない。
      今はとにかく死なないように、そして突破させないように戦おう」

<_プー゚)フ「もしかしたらアレを使うかもしれねぇな」

(`・ω・´)「あまり使いたくはないのだが……心を持っていかれないようにするのが、意外と大変でな」

<_プー゚)フ「俺のは無愛想だが扱いやすいぜ。
         いざとなったら、俺が突撃してやんよ」



46: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:53:40.59 ID:SvPFe6Eb0
シャキンとの通信を終えたモララーは、室内に入ってきたブーン達を迎えていた。
クー、ハインリッヒ、そしてドクオやジョルジュ、ショボンも一緒だ。
途中で合流した渡辺もいる。

( ^ω^)「何ですかお?」

川 ゚ -゚)「一階に敵がいるというのに……のんびり集まっている場合ではないと思うが」

( ・∀・)「君達は、彼らに勝てると思うかな?」

(´・ω・`)「無理です」

即答する。
ジョルジュが何かを言いたそうであったが、概ね全員の意見は同じだった。

監視カメラに映ったエントランスロビーの光景。
目にも止まらぬ速さで攻める三兄弟と、それに立ち向かう味方勢。
あのギコでさえ圧倒されているのを見て
『勝てる』や『太刀打ち出来る』などと思える者はいなかった。

( ゚∀゚)「だから俺らを集めたのかよ? バラけると速攻で昇天すっから?」

( ・∀・)「それもあるが、少し話があってね」

川 ゚ -゚)「こんな時にか……」

呆れるようにクーが溜息を吐く。



47: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:55:10.40 ID:SvPFe6Eb0
( ・∀・)「重要だから聞いておきたまえ。
     まず前提なのだが……渡辺君との接触以来、君達は違和感を持ったことがないかな?」

('A`)「違和感……?」

(;^ω^)「いきなりそんなこと言われても……」

( ・∀・)「聞いた私が馬鹿だったようだ。
     つまり『我々にしては負け過ぎてはいないか』ということを言いたい」

彼が言うには
この一ヶ月ほど、団体戦・個人戦において負け越しているのが気になるらしい。
負けている本人らに自覚はないようだが。

(;^ω^)「でもでも、軍神さんや渡辺さんとか見ていて納得だお。
      あんな強さじゃ僕らが負けるのは当然だと思うお」

( ・∀・)「生憎私が思うのは強さではなく、我々の過去の戦績を考慮しての話だ。
     どうにも負けるべくして負けているような気がする」

頭に『?』を浮かべる面々。
いまいちモララーが言いたいことに対して理解出来ないのだ。
概念的な話をしているのは、辛うじて解るのだが。



52: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:56:49.74 ID:SvPFe6Eb0
「――そこからは私が説明してあげましょう」

爪゚ -゚)「!」

社長室の奥隅。
その暗がりから、黒衣を纏った男が出現した。
いや、最初から居たかのように立っている、と言った方が正しいか。

(;´・ω・`)「貴方は……」

( <●><●>)「御久しぶりですね」

渡辺が研究所跡にいる、という情報を与えてくれた低身の男。
得体の知れない人間の一人。
そして秩序守護者という人知を超えた存在。

現状で最も警戒すべき存在が、FCの中枢であるこの場所に出現したのだ。
すぐさまジェイルが戦闘体勢をとり、モララーを背後へ隠す。

川;゚ -゚)「どうやってここへ……!?」

( <●><●>)「力の行使は計画的に、そして効果的に」

右手を前方へ。
何も握られてはいないが、何か得体の知れない気配が漂う。



54: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 15:58:23.02 ID:SvPFe6Eb0
(;^ω^)「や、やっぱり敵なのかお……!」

( <●><●>)「貴方達の選択次第、と言いたいのですが
        そこまで待つほど暇でもありませんので」

从'ー'从「敵になる可能性があるのなら、その芽を早めに摘んでおく……かな?」

(;゚∀゚)「ちっ、下にも敵がいるってのによ……!」

全員が構える。
その様子を黒衣の男が平然と見つめ

( <●><●>)「これで確証が持てましたよ」

川;゚ -゚)「何がだ」

( <●><●>)「私には解っています。
        貴方達の心中に『戦いに対する迷い』が生じていることを。
        その迷いが無ければ、すぐにでも襲い掛かるはずでしょうしね」

( ・∀・)(……やはりか)



57: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:00:01.31 ID:SvPFe6Eb0
爛々と輝いた目が光った。
その目から視線を外せなくなってしまう。

( <●><●>)「そして私には解っています。
        迷いの正体と違和感の元を。
        あの時、確かに発揮していたはずの力を、何故か発することが出来ない理由を」

川;゚ -゚)「何を――」

( <●><●>)「――あの時」

クーの声を遮り、黒衣の男が言葉を被せた。

( <●><●>)「あの時……十年前から始まり、リトガー死亡までの一連の戦い。
        貴方達は違和感を感じることがなかったのでしょうが、アレこそが違和感の元凶なのです」

(;'A`)「元凶……?」

( <●><●>)「一つ問いましょうか。
        貴方達は何故、リトガーと戦ったのですか?」

漠然とした質問。
そして決着がついたはずの疑問。



60: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:01:42.67 ID:SvPFe6Eb0
(:^ω^)「知ってしまった僕らがやらなくちゃ……いけなかったんだお」

ただし、当時の思いと今の思いは異なる。
本当の真実を、渡辺の口から知ってしまったから。
リトガーが世界を護ろうとして立ち塞がったことを。

それでもあの時に感じた感情を、ブーンは丁寧に吐き出した。
対して黒衣の男が疑問を投げる。

( <●><●>)「本当にそうだと言えますか? 本当にそうだったと言えますか?」

(´・ω・`)「何が言いたいの?」

( <●><●>)「秩序については説明を受けてますね?」

从;゚∀从「……予め決められた未来への道筋、ですよね」

川;゚ -゚)「まさか……」

( <●><●>)「そう、一年半前の貴方達は操り人形だったのですよ。
        秩序という筋道に従っただけの、決められた未来へ歩んだだけの」

( ・∀・)「…………」

( ゚∀゚)「気に入らねぇな。 
     っつーことは、あの時の戦いで頑張った俺らは何なんだ?」

( <●><●>)「その点に関して気にする必要はありません。
        世界全ての人々が、秩序の操り人形のようなものですから……それが当然なのですよ」



61: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:03:14.15 ID:SvPFe6Eb0
( <●><●>)「貴方達が最近に感じている違和感の正体。
        それは、進むべき先を見失ったことによる無意識下での戸惑い、です」

言うことが解らないわけではない。

前回の戦いなど、決められた未来へ進んだだけであって
秩序が壊れつつある現状、ブーン達は進むべき先を見失いつつあるということだ。

( <●><●>)「マリオネットは糸が切れてしまえば、機能を果たすことなど出来ません。
        つまり今まで背中を押してくれていた存在を無くしつつある、ということにになります。
        機械世界と通じた瞬間から、貴方達は行動に不安を覚えていたはずです。
        『止めなければ』『戦わなければ』……そう漠然と思えるも、その理由に確信を持てない」

川;゚ -゚)「だが何故、我々だけが違和感を持つ……?
     全世界の人々も秩序によって動かされているのならば、彼らも違和感を感じるはずだろう?」

( <●><●>)「秩序を知らぬ人間に感じられるわけがありません。
        貴方達は知り過ぎた故に、その弊害を間近で受けているに過ぎないのです」



63: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:04:56.71 ID:SvPFe6Eb0
漠然と理解出来てしまった。
前回の戦いの勢いは、結局は秩序による補正を受けているに過ぎなかったのだ。

土壇場で出た底力。
全員が力を合わせて突き破った黒の壁。
最強生物への限界突破攻撃。

全ては秩序の加護だった。
倒すべきブーン達が倒すための、都合の良い修正だったのだ。

しかし今現在、秩序が消えつつあるらしい。
彼の言うことが事実ならば、消えれば消えるほど自分達の力が弱体化していることになる。
いや、弱体化ではなく本当の力に戻っていく、と言った方が正しいか。

( <●><●>)「安心しなさい。
        別に秩序の存在は悪いことでも、特別なことでもありません。
        どの世界でも日常的に行われている所業でありますし、ね」

(;^ω^)「そんな……」



66: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:06:32.36 ID:SvPFe6Eb0
あの戦いが。
むしろ過去の全てが否定されたような感覚。

その過去の勝利を支えていた秩序が機能を失いつつある。
それはつまり、絶対無敵の加護を受けることが出来なくなるということだ。
ここ最近、こちら側が圧倒的に押されていた理由が解った気がした。

渡辺に、軍神に、ロマネスクに、そして今の状況に。

秩序の加護を失った、ただ自分達だけの力で立ち向かって負けただけの話。
加護を無くせば、これほどまでに自分達は弱かったのだ。

从'ー'从「で、それを言いに来た……ってだけじゃないよね」

( <●><●>)「私は秩序守護者。
        秩序と交信し、未来を先読みする『未来視』の能力を持ちます。
        故に――」

右手を握り込む。
ゴ、と地震が起きたかのように足元が揺れ始めた。



68: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:07:56.04 ID:SvPFe6Eb0
川;゚ -゚)「これは、空間が……!?」

( <●><●>)「貴方達が一階に到達されると困るのですよ。
        秩序の加護を失った貴方達の戦力は目に見えていますが、その数と能力が厄介ですので。
        我々の目論見を達成させるためにも、貴方達には消えてもらいます」

轟、と空間に穴が開いた。
それは闇色で、ブーンの知る言葉の中では『ブラックホール』が一番合うだろう。

(;'A`)「お、おわっ!?」

(;´・ω・`)「吸い込まれる……!?」

( <●><●>)「この穴自体に殺傷力は無いので御安心を。
        ただし、向こうの空間にて消えてもらいますが」

川;゚ -゚)「そう簡単に……やられてたまるか!」

クーが14th−Wを発動させる。
そのまま黒衣の男に攻撃を仕掛けようとするが

川;゚ -゚)「!?」

(;^ω^)「うわっぷ……!?」

吸引力が上がる。
もはや耐えられるような力ではなかった。
目の前に開いた黒い空間の中に引き摺り込まれていく。



70: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:09:30.41 ID:SvPFe6Eb0
( <●><●>)「抵抗は無駄ですよ。
        これは『修正』と言う所業。
        秩序の人形である貴方達が抗えるような力ではありません」

川;゚ -゚)「くそっ!」

既にドクオ、ショボン、ジョルジュの姿が無い。
そして渡辺も、半身以上が黒色の穴の中に収まっていた。
悲鳴も音も聞こえない。
ただ黒衣の男の囁きが、まるで耳元で鳴っているかのように聞こえる。

( <●><●>)「過去……貴方達は戦い、そして自分の中の何かを護った。
        しかし今回は訳も状況も、かつてはあったはずの最強の後ろ盾もありません。
        貴方達に抗える道理はなく……そして護れるものなど無い」

川;゚ -゚)「……ッ」

言い返せない。
まったくの正論に対して、反論など出るわけがない。

気付けば残っているのは自分だけだった。
クーの下半身も、既に闇色に紛れて確認出来なくなっている。



71: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:11:18.02 ID:SvPFe6Eb0
抗いの力も虚しく、そしてそのまま引き摺り込まれた。
モララーとジェイルを除いて。
どうやら穴の力は、彼らに及ぶ設定が為されていないようだ。

( ・∀・)「ジェイル君、君も行きたまえ」

爪゚ -゚)「しかし」

( ・∀・)「命令だよ」

爪゚ -゚)「……かしこまりました……御武運を」

白いリュックサックを掴み、一足飛びで、ブーン達が引き摺り込まれた空間へと飛び込んだ。
黒衣の男は邪魔をするでもなく、ただその動作を眺めている。
モララーはある種の確信を心に秘めつつ

( ・∀・)「何故、私だけ仲間外れなのかね?」

( <●><●>)「貴方には貴方の相手がいますので」

そうか、と笑みを浮かべて頷くモララー。
その『相手』が誰なのかを、既に理解しているようだ。



72: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:12:43.93 ID:SvPFe6Eb0
( <●><●>)「それが解っていて聞いているのなら、私も知っていて問い返しましょう。
        何故、今の間に彼らと一緒に飛び込まなかったのか、と」

( ・∀・)「来る未来から逃げて何処へ逃げるのだと?
     過去? 現在? それとも別の何処かへ?
     少なくとも私は来るべき未来からは逃げないよ……他に行く場所もないしね」

彼の視線は黒衣を見ていなかった。
その先にある、社長室の入り口へと向けられている。

( ・∀・)「さて、君は何処へ逃げていたのかな?」

(,,^Д^)「…………」

プギャーが、そこに居た。
抜き身の剣を片手に、そして身動きせずにただ立っている。



74: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:14:15.33 ID:SvPFe6Eb0
( <●><●>)「思った以上に早かったですね……。
        やはり秩序が壊れていては、正確な未来を掴み辛い」

( ・∀・)「成程……君の力も、ある程度は落ちているというわけか」

( <●><●>)「最近になって、完全な未来を読めなくなりました。
        内藤ホライゾン達を送ったのも、『向こうに送るのが良い』という曖昧な未来によるものです。
        その先に何があり、そして何が起こるのか……そういった具体的な未来は見えません」

( ・∀・)「そんな事をベラベラと喋るということは――」

( <●><●>)「伝えても問題ない内容、ということですよ。
        そしてもう一つの大きな理由としては」

そこで言葉を切った。
ゆっくりとした動きで背後のプギャーへ視線を送る。
そしてまた、ゆっくりとモララーの方へ身を動かし

( <●><●>)「貴方はその情報を、近々の内に伝えることが出来なくなりますから」

( ・∀・)「……その未来、塗り替えて見せよう」

( <●><●>)「別にどちらでも構いませんがね。
        では、私はもう一つの『修正』へ向かいますので、貴方達は勝手にやって下さい」

我関せずとでも言うように呟き、黒衣の男は闇に溶けるように消えていった。



76: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:15:40.63 ID:SvPFe6Eb0
残された二人の内、モララーがわざとらしく溜息を吐く。

( ・∀・)「まったく……好き勝手に場を荒らしておいて謝罪も無しに出て行くとは。
     これが噂のYUTORIというヤツか」

さて、と気を取り直す。
ようやくプギャーの目を見て

( ・∀・)「久しぶりだね、プギャー君」

まるで友人に対するような、楽しげな色の言葉を発する。
対して人形のような不気味な笑みを浮かべる男は、モララーの言葉を吟味するように沈黙した後、静かに口を開いた。

(,,^Д^)「……約十年振りか」

( ・∀・)「このふざけた手紙は何のつもりかな?」

懐から取り出したのは、先日モララー宛に届いた手紙だ。

(,,^Д^)「俺が突然現われたことに動揺して、そのせいで負けたと言い訳にされたくないからな」

( ・∀・)「見くびってもらっては困るよ。
     私の心を揺るがしたいのならば、『彼女』を今ここに呼び出すくらいのことをしてもらわねば」

『彼女』という言葉にプギャーが明確な反応を示した。
笑みは相変わらずなのだが、何処か憎悪の色を混じらせる。



77: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:17:46.92 ID:SvPFe6Eb0
(,,^Д^)「まだ憶えていたか」

( ・∀・)「顔は思い出せないが……私と君の人生の転機だったからね」

(,,^Д^)「転機、だと?」

一歩踏み出す。

(,,^Д^)「お前は、あの瞬間を『転機』だと言い表すのか?」

( ・∀・)「君は何だと?」

二歩目。

(,,^Д^)「歯車が狂った日、とでも言おう」

( ・∀・)「詩人のつもりかな?」

三歩目。

(,,^Д^)「実を言えば、言葉さえも交わしたくなかった。
     だが貴様の顔を見たら、ここは敢えて言葉を投げかけようと心変わりした。
     そのふざけた顔を、後悔の色に染め上げて地獄に落ちてもらう、とな」

( ・∀・)「引き摺って引き摺って擦り切れた君に、私の高尚な命を奪うことなど出来はしない。
     そもそも後悔など在りはしない」



80: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:19:04.39 ID:SvPFe6Eb0
四歩目。
同時、モララーが懐に手を突っ込む。
取り出したのは、拳銃と呼ばれる飛び道具だった。

( ・∀・)「生憎、過去のことでgdgd言い合いたくはない。
     数少ない友人を、自分の手で殺すのは心が痛むが……」

(,,^Д^)「痛むが?」

五歩目。
モララーの拳銃の先は、明らかにプギャーの頭部を狙っていた。
距離的に考えて、当たる確率は非常に高い。

しかし尚も突き進んでくるプギャー。
対応は、モララーは宣言するように言い放った言葉だった。

( ・∀・)「ただ、それだけなんだよ」

直後、銃声が響いた。



82: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:20:46.37 ID:SvPFe6Eb0
エントランスロビーでは、相変わらずの攻防が続けられていた。

拳と槍、足と剣、銃と弓。

用途も射程も異なる武装が、相手をただ打ち砕くために交差している。

(;゚д゚ )(この調子では、終わるものも終わらんな)

一拍の隙を用いて距離をとる。
オワタは追ってこない。
英雄とは言え、ミルナと同じく体力には限界がある。

周囲も、当初に比べて音が小さくなっていた。
感情のままにぶつかる『動の戦闘』から、僅かな隙を穿つ『静の戦闘』に移行しているようだ。
この状態になれば、交わされるのは攻撃ではなく言葉になるケースが多い。
身体を揺さぶるのではなく、精神を揺さぶるのだ。

('、`*川「あーんもう、楽しいけど疲れるー!」

<_;プー゚)フ「楽しい!? こっちは必死なんだけどな! どうよ!?」

('、`*川「そりゃ弱いのが悪い」

<_#フ;ー;)フ「テメェそりゃアレだ切実だよなぁ……!」

(`・ω・´)「落ち着け」

(;゚д゚ )「味方同士で挑発し合ってどうする……」



83: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:22:09.55 ID:SvPFe6Eb0
いつ攻撃されるかも解らない状況において、この会話。
肝が据わっているというか、何というか。

('、`*川「しかしまぁ、妙よねぇ」

背後からペニサスの声。

('、`*川「始まってからかれこれ十分らいだけど、どういうこと?
     何であの三馬鹿はまだ私達と戦ってるわけ?」

( ゚д゚ )「確かにあの三人ならば、やり方次第では突破出来るだろうしな……今の状況は不自然、か」

『足止め』という言葉が浮かぶも否定する。
彼らは襲撃者であり、突破や壊滅を目的としているはずだ。
ここで足を止める意味があるのか。

( ゚д゚ )「……待てよ」

ある。
彼らがわざわざ足を止める理由がある。



86: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:23:16.93 ID:SvPFe6Eb0
答えを頭に浮かべた途端、それは現実となった。
まるでミルナのひらめきを待っていたかのように。

('、`*;川「うわっ!?」

それは驚きの声。
瞬間的に全員が反応し、その方向へ視線を向ける。

(;`・ω・´)「なっ……」

<_;プー゚)フ「何だぁ!? 何してんだよ!?」

('、`*;川「そりゃこっちが聞きたいわー!!」

ペニサスの身体が傾いていた。
それは膝を折るなどの動作ではなく、証拠として彼女の足はしっかりと伸びている。
しかしその右足が、地面に開いた穴の中へと引きずり込まれていた。

(;゚д゚ )「トラップか……!?
     おい、早く抜け出せ!」

('、`*;川「ちょ、何これ!? 抜けないんだけど!」

(;゚д゚ )「何を馬鹿やっている!」



87: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:24:27.13 ID:SvPFe6Eb0
駆け寄り、ペニサスを引っ張るために手を出そうとした時。

(`・ω・´)「迂闊に動くな!」

(;゚д゚ )「――がはっ!?」

真横からの強烈な衝撃。
まともに受けたミルナの身体は、弾け飛ぶように浮いた。

\(^o^)/「邪魔はさせません」

オワタの一撃だ。
いつの間にかミルナに忍び寄り、その脇腹へ石突を叩き込んだのだ。
その間にも

('、`*;川「のぅうぇわっひゃ――ひゃひゃひゃひゃ! くすぐったいくすぐったいィィィヒヒヒヒヒ!!」

胸部辺りまで穴に沈み込むと共に、女性のものとは思えない声を発するペニサス。
あまりに奇怪な声に対して、エクストとシャキンが足を止める。

<_;プー゚)フ「ど、どうするよ」

(;`・ω・´)「……助けるべきだ」

<_;プー゚)フ「じゃあ何で足止めてんだよ」

(;`・ω・´)「……お前こそ」



90: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:25:58.57 ID:SvPFe6Eb0
そうこうしている間に消えていくペニサス。
豪快な笑い声と共に消えていくペニサス。

結局、意を決した二人の手が届く前に、彼女の身は闇の中へと呑まれていった。

<_;プー゚)フ「お、俺達が悪いわけじゃねぇぞ!
         そもそもあんな妙な穴を掘った奴が悪いんだ!」

(;`・ω・´)「誰がやったんだ?」

「――私です」

鋭い声が響く。
それはシャキン達と三兄弟の丁度中間からだ。
空間が裂かれ、内部から黒衣の男が出てくる。

( <●><●>)「クン三兄弟さん、御苦労様でした」

┗(^o^ )┓「いえ、私達も楽しませてもらいました」

(;゚д゚ )「ア、アンタは……」

ミルナが目を見開く。
あの男が秩序守護者の一人だとは話に聞いていたが、何処か信じられない部分があった。

しかし言動から、彼は確実にクン三兄弟と組んでいる。
そして自分達の敵となり得る存在だという事実に、ミルナは動揺を隠せない。



92: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:27:35.14 ID:SvPFe6Eb0
( <●><●>)「別に騙すつもりはありませんでしたが……申し訳ありません、ミルナ君。
        そして貴方がFCへついたのは非常に残念です」

(;゚д゚ )「何でアンタが……アンタ英雄じゃなかったのか!?
     昔から俺達と接してくれていたのは、何だったんだ!?」

( <●><●>)「本当の英雄はダイオード一人です。
        そして私とダディは、ある目的のために英雄世界に潜り込んだだけのこと。
        貴方達と接したのは気まぐれなんですよ……ダディの人の好さもありましたけどね」

(;゚д゚ )「…………」

( <●><●>)「ですが、決して悪くない時間でした。
        その点においては礼を言いたいくらいなんですが――」

軽く目を瞑り

( <●><●>)「だからこそ残念なのです。
        今、貴方が私達の敵となっていることが」

次の瞬間、立ち竦んでいた三兄弟が動いた。
それぞれが三方に散り、壁や天井を蹴って一つの場所へ戻る。
着地点は二階への階段前。



93: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:29:18.60 ID:SvPFe6Eb0
<_;プー゚)フ「やっべ……!?」

(`・ω・´)「くそっ、やはり手加減されていたか!」

動けないミルナを放り、二人が後を追おうとする。

直後、激音が響いた。
何事かと目を見開く先、FC東口の自動ドアが粉砕される。
畳み掛けるように不可解な出来事が連鎖し、ミルナ達は対処の方向性を見失った。

粉砕されたドアの外から声が届く。

「ミールーナーくーん! あーそーぼー!」

それは男の声で、しかも名指しだった。

(;゚д゚ )「お、俺……?」

<_;プー゚)フ「何かやばそうだからテメェに任せたぞ!
         俺らはあの三兄弟を追う!」

(;`・ω・´)「馬鹿エクスト! 伏せろ!」

鋭い声に、エクストが反射的に身を落とした。
その真上を一筋の光が貫いていく。



97: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:30:55.98 ID:SvPFe6Eb0
(`・ω・´)「門番のつもりか……」

|  ^o^ |「狭い空間での戦闘は味方を巻き込む可能性があるので、苦手です。
      というわけで、また私と遊んでもらいましょうか」

ジュカイとオワタが上っていった階段の前に巨躯。
銀色の巨弓を構えたブームが、二人の行く手を阻むかのように立っていた。
それを確認したワカッテマスは

( <●><●>)「これで大体の『修正』は完了です」

(;゚д゚ )「修正……」

( <●><●>)「断片化した秩序から読み取った未来の欠片。
        その情報から、理想の未来を作り上げる作業……それを私達は『修正』と呼んでいるだけです」

(;゚д゚ )「さっきのペニサスを引き摺り込んだのも修正なのか?」

( <●><●>)「先ほど送った戦力的に考えて、もう少し増強した方が良いかと思いまして。
        では、貴方達も現戦力で何とか頑張って下さいね」

(;゚д゚ )「待――」

ジュル、という水音を立てながら、黒衣の男は闇の中へと消えていった。
ミルナは足を一歩出し、それが無駄だと気付いてから

(;゚д゚ )「……何が、どうなっているんだ……」

呆けるように呟いた。



99: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:32:50.81 ID:SvPFe6Eb0
FC三階。
人がいない廊下を走る影があった。
羽織ったマントのような灰色の布を揺らし、そして軽い駆け足で。

でぃ――軍神だ。

しきりに周囲を見渡しながら

(#゚;;-゚)「もう大体は離脱しとるみたいやね」

と、呟く。
FC兵の身の安全を案じているのだが、それは別に襲撃から来る被害などではない。
自分が暴れた場合による損害を気にしているだけなのだ。

(#゚;;-゚)「ったく、何で地下の出口が三階に設けられとるんや……」

地下研究施設への出入り口は二つある。
この街の何処かにある、廃ビルに偽装した敷地内の入り口。
そして外敵からの侵入を遅らせるため、という案からFC三階に設置された入り口。
その内の一つである後者を利用したのだが、やはり面倒なものは面倒である。

(#゚;;-゚)「まぁええか……この会社は社長を筆頭に全員狂っとるからな。
    ええっと、確かエントランスホールで戦ってるって話やったっけ」

相手は英雄三人。
全快状態で挑むには丁度良い運動相手だ。
何やら状況が混乱しているらしいが、倒すべき敵がハッキリしていればそれで良い。



101: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:34:35.06 ID:SvPFe6Eb0
(#゚;;-゚)(FCの味方、か……)

どうなのだ、と思う。
まだ結論を出していない連中の味方をして何になるのだろう、と。

渡辺の考えていることがイマイチ解らない。
こんな弱い連中の味方をして、一体誰が何を得するのだろう。

確かにFCは組織力、財力、情報力などのサポート的な面が充実している。
渡辺は、自分達に足りないそれらを補うために接触したはず。

だが、それだけでは異獣には対抗出来ない。
アレは『世界の天敵』だ。
ただ軍力・戦力があれば勝てる、という相手ではない。

こちら側にも、そして連合軍側にも決定的に欠けている要素があるのだ。
それを求めて渡辺は世界を繋げた。
そしてその要素こそが、異獣に対抗し得る『最高の切り札』となるのだが――

(#゚;;-゚)(どうにも手に入りそうにないんよなぁ。
    皆、悪い意味で良い子ちゃんやし――)



104: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:35:46.92 ID:SvPFe6Eb0
その時。
猛烈な殺気が、でぃから見て右方向の先から突きつけられた。

(#゚;;-゚)「!?」

考える間もなく脊髄反射で身を飛ばす。
一瞬遅れて、でぃのいた位置に衝撃が圧し掛かった。

それは爆発という現象。

(#゚;;-゚)「何や……」

遅れてくるのは突風。
共に流れる、灰色とも茶色ともいえる色の煙が立ち込め始めた。
それは短時間で視界と嗅覚を塞いでいく。

エントランスホールが抑えられているおかげか、FC内に侵入者の報告は無い。
しかし今の攻撃は、明らかに同高度からの攻撃だった。
つまり

――今まさに、侵入してきた者がいる。



105: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:37:05.00 ID:SvPFe6Eb0
(#゚;;-゚)「ん?」

濛々と舞う煙を見て、でぃは小さな違和感を得る。

それは動作の気配。
断じて自然による煙の流れではない風だ。
意志を持った動きによって掻き回されている煙の違和感を、でぃは敏感に感じ取ったのだ。

(#゚;;-゚)(姿が見えん、か……さぁて、何処から来る?)

独特な緊張感がでぃの身を包み始めた。
身を刺すような感触に、ついつい口端が緩み掛ける。

その緩みを油断と取ったのか、周囲の空間から見えない圧力が襲い掛かってきた。

全身に刃を当てられているような錯覚。
もはや是非もない。
相手はこのまま奇襲じみた攻撃で仕留める気だ。



110: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:38:36.72 ID:SvPFe6Eb0
(#゚;;-゚)(でも、な)

この程度の奇襲でやられるほど、でぃの経験は浅くない。
敏感に煙の流れを読み取り

(#゚;;-゚)「そこ」

右へ跳ぶ。
直後、向かうである煙の中から黒の縦線が浮かんだ。
それは瞬時に上から下へ、振り下ろすような軌道で迫る。

予想通りの攻撃に対し、軍神は身を僅かに捻らせた。
かするように黒線が落ちる。
それは横から見れば巨大であり、軍神が知る範囲内での名称を『巨剣』と言った。

(#゚;;-゚)(黒い巨剣……まさか――)

捻らせた反動で床を蹴り、巨剣の根元を目指して跳ぶ。
唾が見え、柄が半分以上視認出来た時に、ようやく軍神は気付いた。

いない。

柄を握っているはずの手が見えない。
今の一撃を放った後に、剣だけ残して移動したのだ。



112: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:39:56.90 ID:SvPFe6Eb0
(#゚;;-゚)(フェイント……!)

気付くまでに時間を掛け過ぎた。
相手は既に攻撃体勢に入っている。

煙が裂かれた。

四時方向から、下から上へ切り上げるような鋭い軌道の蹴りが来る。

激突。
咄嗟に右腕で庇うが、踏ん張れずにそのまま弾き飛ばされた。
煙を突き破り、十メートルほど先の壁に身体を打ち付ける。

(#゚;;-゚)「……やるやないか」

ダメージは見られない。
しかし、安易なフェイントに引っかかったという悔しさの証明として、口元に笑みが浮かべられた。

――この自分に一撃を入れるとは、と。



114: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:41:38.15 ID:SvPFe6Eb0
そんな芸当が出来る人物は限られる。
異獣か、英雄か、そして

/ ゚、。 /「流石だな、軍神」

秩序守護者。
その中でも最も戦闘力が高いと思われる、ダイオード。
長身を黒色の甲冑で包み込み、その長身以上の大きさを誇る巨剣を片手で振り回す。

煙が流され、埃の臭いが消えていく。
それと同時にダイオードの周囲から、ある臭いが漂ってきた。

(#゚;;-゚)「血の……」

/ ゚、。 /「ここへ来る前に一仕事終わらせてきたからな。
      簡単でつまらんかったが、次の仕事は楽しめそうだ」

(#゚;;-゚)「何でアンタがウチを狙う?」

/ ゚、。 /「さぁ、私には何とも。
      ただワカッテマスが読み取った未来の断片から判断し
      こうやって『修正』の手伝いを行っているだけのこと」

(#゚;;-゚)「はン……そりゃ御苦労様」



116: ◆BYUt189CYA :2007/05/16(水) 16:43:01.02 ID:SvPFe6Eb0
/ ゚、。 /「それにお前個人としては異獣との戦争を望んでいるのだろう?
      秩序の破壊を望んでいる、と言い換えても良い。
      つまり私達の敵となるには充分な理由だと思うが」

(#゚;;-゚)「ま、別にどう解釈されてもええけどな」

壁から背を剥がし、数歩前へ。
巨剣を肩に乗せたダイオードを見据え、その締まった足を軽く開く。
拳を軽く突き出し

(#゚;;-゚)「とりあえず、邪魔する言うんなら潰れてもらうよ」

/ ゚、。 /「潰れんさ」

軍神の構えを見て、ダイオードも巨剣を地に下ろす。

/ ゚、。 /「この剣には敗北者の怨念が詰まっている。
      いわば『敗北の代弁者』というわけだ。
      私にとって、常勝無敗のお前は砕くべき相手なのだよ」

(#゚;;-゚)「敗北した雑魚が集まっても、結局はただの雑魚。
    やれるもんなら、やってみぃ」

両者、同時に踏み出す。
凶悪とも言える大きな力と力が、互いを粉砕するためにぶつかった。



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