( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

2: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 13:32:05.85 ID:iUSENDqq0
活動グループ別現状一覧

( ・∀・) (,,^Д^)
所属:??世界
位置:FC十四階・社長室
状況:過去の因縁

( ゚д゚ ) (`・ω・´) <_プー゚)フ |  ^o^ |
所属:??世界&英雄世界
位置:FC一階・エントランスホール
状況:戦闘中

(#゚;;-゚) / ゚、。 /
所属:機械世界&秩序守護者
位置:FC三階
状況:戦闘中

┗(^o^ )┓ \(^o^)/
所属:英雄世界
位置:FC内部
状況:突破中

( ,,゚Д゚) ( ´_ゝ`) (ミ,,"Д゚彡 (*゚ー゚) (´<_` ))
所属:??世界
位置:FC
状況:防衛中



3: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 13:33:35.01 ID:iUSENDqq0
( ^ω^) 川 ゚ -゚) 从 ゚∀从 ('A`) (´・ω・`) 从'ー'从
所属:??世界
位置:不明
状況:不明

( ФωФ) (´・_ゝ・`) ( ・ω・)=つ  <ヽ`∀´> *(‘‘)*
川 -川 ξ゚听)ξ (,,^Д^) (゜3゜) ,(・)(・),
所属:機械世界・アギルト連合軍
位置:連合軍アジト
状況:不明

メ(リ゚ ー゚ノリ ル(i|゚ ー゚ノリ
所属:不明
位置:不明
状況:FCへ接近中



4: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 13:35:15.63 ID:iUSENDqq0
第二十一話 『空と陸 赤と緑』

<_プー゚)フ「さて、と……」

横にいるエクストが言葉を発した。
銃器を構え直し、先にいる敵へ鋭い視線を向ける。

|  ^o^ |「来ますか」

巨弓を持つブームが構える。
彼の背後には二階へ通じる階段があり、先ほどオワタとジュカイが侵入したばかりだ。
追わねばならないが、目の前のブームに足止めされている状況。

先ほどまで一緒にいたミルナは外へ出ている。
何者からかは知らないが、名指しで呼ばれたからだ。

つまり現状、英雄相手に常人二人で戦わなければならない。
ただし力で圧倒的に負けているため、勝つとすれば――

(`・ω・´)「何か作戦はあるのか?」

<_プー゚)フ「ねぇよ」



8: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 13:37:07.94 ID:iUSENDqq0
心の中で溜息を吐き

(`・ω・´)「……だが、切り札ならある」

<_プー゚)フ「ここで使っていいもんか迷うところだがな」

(`・ω・´)「ここで使わなくていつ使うと言う。
      それに使うのはいきなりじゃなく、相手の油断を突いた時だ」

経験豊富な相手に対して有効なのは、『初めての状況』を突きつけること。
相手が慣れていない武具で攻めれば、或いは。

しかし、相手は英雄だ。

切り札が如何に強力であろうと、おそらくは適応するはず。
つまり切り札を用いるのは良いが、長期戦は圧倒的に不利というわけだ。
おそらくは一瞬の勝負になるだろう。



10: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 13:38:54.75 ID:iUSENDqq0
|  ^o^ |「来るのか来ないのかハッキリして下さい。
      どちらにしろ、攻撃しますが」

ギン、という空間を震わせる音が響き、ブームが持つ弓が引かれる。
そこから発射されるのは高速の光矢だ。

来る。
思った瞬間、光が放たれた。
それは二人の下へ一直線に向かってくる。

<_プー゚)フ「はン! いい加減、もう目が慣れたぜ!」

横っ飛びで回避。
そのまま柱の影に隠れつつ、ブーム目掛けて射撃した。

ブームもやはり、その巨体を柱の影に隠す。
英雄とはいえど身体は人間だ。
流石に音速超過の鉛弾を無効化することは出来ないらしい。

(`・ω・´)(だからこそ勝機がある)

シャキンが物陰から飛び出す。
ブームが反応する前に、何とか別の位置へと移動することが出来た。



11: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 13:40:38.14 ID:iUSENDqq0
切り札を使うにしても、とにかく距離を縮めなければならない。
距離があれば、それだけ相手に与える時間も増えるからだ。

勝負は一瞬。
可能な限り接近し、切り札を叩き込む。

成功すれば勝利、失敗すれば敗北。
単純な式である。

(`・ω・´)(博打はあまり好かんのだがな……!)

しかし勝つためにはそれしかない。
圧倒的な実力差を持つ相手を出し抜くには、初手で決めなければならない。
その隙を作れるのならば、何だろうとやってみせる。

<_プー゚)フ「テメェらは、何で秩序守護者につきやがった?」

エクストが声を発した。

<_プー゚)フ「英雄ってのは勇猛果敢だって聞いたぜ。
        それなのに、何で異獣と戦うことを選ばねぇんだ?」



13: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 13:42:32.83 ID:iUSENDqq0
|  ^o^ |「勇猛とは無謀の意ではありません。
      勝ち目がない相手に立ち向かうなど、それは無駄で無価値なのですよ」

(`・ω・´)「異獣とは、勝ち目がない相手なのか……?」

|  ^o^ |「あれは『世界の天敵』です。
      数や力……そういうもので量れる連中ではありません」

<_プー゚)フ「テメェも異獣が何なのかってのを知ってるみてぇだな。
        で、戦わずにどうするつもりなんだよ?」

|  ^o^ |「秩序を守れば、全てが解決します」

(`・ω・´)「何……?」

<_プー゚)フ「頑なに秩序ってのを守ろうとしてやがるが……そりゃ何でだ?」

いつの間にか攻撃の手が止んでいる。
物陰に隠れているので相手は見えないが、その代わりとして声が飛んできた。

|  ^o^ |「説明があったとは思いますが、異獣の主な目的は『純正ルイル』を食すことです。
      各世界に一つだけあるそれを求めて、世界から世界へと渡り歩くのです」

(`・ω・´)「純正ルイル……魔力の元、だとか言っていたな」



16: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 13:44:29.01 ID:iUSENDqq0
魔力。
純正ルイルから漏れ出る魔粒子を加工した力。
それは条件さえ揃えれば、物理法則さえも捻じ曲げる効果を発揮する。

この世界に、そんな力が存在しないのは
元となる『純正ルイル』が地表へ出現していないためらしい。
そしてその原因は、秩序が『発見されない』という設定を為しているからだ。

(`・ω・´)「……世界交差によって秩序が破壊されるらしいな。
      秩序が壊れるということは、課していたルールが消えるということ。
      つまりこの世界の純正ルイルが発見されてしまう……」

<_プー゚)フ「んで、それを求めて異獣が侵攻してくるわけか。
        だからテメェらは秩序を頑なに守ろうとするってこったな?」

|  ^o^ |「それもありますが、実はもう一つの理由が存在するのですよ」

(`・ω・´)「まだ何かあるのか?」

|  ^o^ |「この世界の秩序は非常に稀なタイプでしてね。
      幾重にも張られたルートの中に、『滅び』の未来が存在しないのです」

<_プー゚)フ「……?」



22: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 13:50:50.27 ID:iUSENDqq0
|  ^o^ |「どの世界の秩序にも、必ず『滅び』が存在します。
      それは天変地異であったり、存在そのものが消滅したり、異獣によって滅ぼされたり。
      進み方次第では世界が滅んでしまうことがあるのです」

彼の言わんとしていることが解った。
この世界の秩序に『滅び』が無いということは

(`・ω・´)「……秩序がある限り、この世界は絶対に不滅だと?」

|  ^o^ |「理由は定かではありませんがね。
      そういう意味で、この世界は非常に貴重な存在なのですよ。
      だから我々はこの世界のことを、『不滅世界』と呼んでいるのです」

<_;プー゚)フ「何とも安直なネーミングだな、おい……」

(`・ω・´)「だからお前達は守ろうとするわけか。
      この貴重な世界があれば、『世界』という種類が滅ぶことがないから」

|  ^o^ |「滅びが無いという世界に、何故滅びを呼ぶ必要があるのでしょうか?
      何も知らずに生を全う出来ることが、どれだけ幸せなのか知っていますか?」



23: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 13:53:02.11 ID:iUSENDqq0
頷けない話ではない。
このまま現状を維持し続ければ
異獣に侵攻されることもなく、何かの拍子に世界が滅ぶことがなくなる。
しかし

(`・ω・´)「……俺達の世界はどうなる?」

<_プー゚)フ「だよな……この世界に滅びはねぇかもしれねぇが
        他の世界にはちゃんと存在するんだろ?」

|  ^o^ |「それが普通ですからね。
      もちろん不滅世界の解放を阻止すれば、付近の三世界が真っ先に狙われるでしょう」

現に、三世界の一つである機械世界はギリギリの状態らしい。
異獣が純正ルイルの無い世界に留まっているのは
この世界に攻め込むための態勢を整えているに過ぎないのだ。

獲物に飛び掛かるため、地に伏せているようなもの。

秩序の崩壊――つまり『滅びの許可』を得た瞬間、異獣の軍勢はこの世界に雪崩れ込むだろう。
もちろん足場としていた機械世界の崩壊は確実だ。

(`・ω・´)「秩序を壊しても壊さなくても、機械世界の消滅は絶対なのか……」

|  ^o^ |「既に消滅していてもおかしくないですからね。
      機械世界の隣に不滅世界が無ければ、とっくの昔に滅ぼされていたでしょう」



25: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 13:55:42.41 ID:iUSENDqq0
渡辺が世界交差を狙っていたのは、目的が既に『異獣殲滅』に移っていたからなのだろう。
どちらにせよ滅ぶのならば、滅ぼし手も道連れにしてやる、という気持ちは理解出来ないわけではない。

<_プー゚)フ「しかし解せねぇな。
        何で異獣は、この世界の純正ルイルに拘るんだよ?」

|  ^o^ |「滅びを知らない、という特別な秩序に守られていますからね。
      私達も詳しくは知りませんが、おそらくは異獣にとって栄養満点なのでしょう」

この三兄弟も詳細は知らないらしい。
ただ、引っ掛かる部分はあった。

(`・ω・´)「もしお前達の目論見が成就したとして。
      そうしたら、異獣は英雄世界や魔法世界に攻め込むんだろう?
      自分の世界が危機だというのに、放っておくのか?」

|  ^o^ |「さほど興味ありませんので」

<_プー゚)フ「んだと……?」

|  ^o^ |「私達は、あの世界の住人だから英雄なのではありません。
      英雄だから英雄なのです。
      たとえ私達のいた世界が滅びようとも、英雄という名には何の関係もありません」



28: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 13:57:29.49 ID:iUSENDqq0
<_#プー゚)フ「おい、ちょっと待てよ!
         その世界に住んでる奴らはどうなってもいいのかよ!?」

声はホールに響いた。
数秒ほど、エクストの声が木霊する。
それが完全に収まったのを見計らったかのように、ブームは口を開いた。

|  ^o^ |「はい」

と。

(;`・ω・´)「……っ」

<_プー゚)フ「…………」



31: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 13:59:07.60 ID:iUSENDqq0
沈黙が来る。
三人の内、誰一人とも動かない。
言葉が出ないのか、それとも威圧感で動けないだけなのか。

<_プー゚)フ「……おい、馬鹿」

(`・ω・´)「それは俺のことか、馬鹿」

<_プー゚)フ「俺達は互いに馬鹿だな。
        何たって……未だ答えを出すことが出来ない、愚鈍なんだから」

(`・ω・´)「同意する」

<_プー゚)フ「でもよぉ」

ギリ、と拳を握りこむ。

<_#プー゚)フ「アイツみてぇな御利口さんだけにはなりたくねぇな……。
         利口だからってテメェの世界を消すようなことは、絶対にしたくねぇよな……!」

(`・ω・´)「……あぁ」



33: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:00:38.17 ID:iUSENDqq0
<_#プー゚)フ「悪ィ、何か頭に来たわ。
         理由とか解んねぇけど……すっげぇムカつく」

(`・ω・´)「だったらどうする?
      俺も概ねお前と同じ意見だが、何かするつもりなら俺も手伝おう」

<_#プー゚)フ「殺しはしねぇし、考え方の強制もしねぇ。
         何が正しくて何が間違っているのかも解らねぇからな。
         だからアイツに説教するなんてこたぁ出来ねぇ」

二人同時に低く構える。
互いの姿は見えていないが、長年の付き合いだ。
その気配くらいは感じとれる。

いつでも走り出せるような姿勢のまま

<_#プー゚)フ「でも他人に死ねと言ったんだ。
         ちょっとくらい殴っても文句は出ねぇよな――!」

それが合図となった。
ブームから見てエクストは左へ、シャキンは右へ飛び出す。
一方向にしか撃てないブームを挟撃する形だ。



34: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:02:43.08 ID:iUSENDqq0
ブームは弓を構えて冷静に判断を下す。

|  ^o^ |「猪突猛進……嫌いではありませんがね」

そして同時に、ナンセンスだ、と思う。
必勝の策があるのなら解るが、勝算も無しに猛進するのは素人がすることだ。

<_プー゚)フ「シャキン! やっちまえ!」

エクストが歩幅を緩め、シャキンの速度が上がる。
ブームはすぐさま対応した。
矢先を右方向へ向けて

|  ^o^ |「――――」

そこで気付く。
彼らは素人ではなかった、と。
空戦という限られた分野だが、二人とも戦闘のプロだ。
そんな彼らが何の策も無しに突っ込んでくるのか。

答えはすぐに出る。

(`・ω・´)「おぉ――!」

左手に持った銃器を投げ捨てた。
もはや武器はいらない。

武器よりも大切なモノがあり、それを行使することが出来るから。



36: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:04:05.97 ID:iUSENDqq0
そして思う。

やはり陸は苦手だ、と。
身体は重力に縛られ、その行動の方向は制限される。
制限されるということは束縛に等しく、自分の身体を窮屈に感じてしまう。



続いて思う。

やはり空が好きだ、と。
身体は重力から解放され、その行動の方向は自在だ。
無制限ということは究極の自由であり、精神と身体の束縛も消え失せる。



37: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:05:46.29 ID:iUSENDqq0
ただ、嫌いな陸の中に一つだけ好む要素がある。
それは空の中にも存在し、むしろその要素こそが飛翔に必要だった。

速度。

一瞬で景色を背後へ吹き飛ばし、我が身を移動させる要素だ。
シャキンにとって風を切り裂く快感とは、人生においての最上の喜びである。
大気の壁を貫いた時など、歓喜のあまりに叫びたくなる。
視界が追いつかないと感じた時は、その襲い来る快楽によって神経が焼き切れそうになった。

普段は冷静な風を装ってはいるが、彼の本性はスピード狂に近いものがある。

今、シャキンの手の中には願望を叶える武装が一つ。
それは叶えると同時に、自身の心を闇へと引きずり込む危険性があった。

しかしシャキンは迷わない。
望むモノを手に入れるのに躊躇などしない。
それが目前の敵を倒せるというのならば尚更だ。

視界の先。
ブームの構える弓の先端に光が集う。

――来る。

見るよりも早く肌で感じ取ったシャキンは言葉を発する。

(`・ω・´)「――6th−W『ギルミルキル』」

その音を合図として、音速の世界が展開された。



39: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:07:37.31 ID:iUSENDqq0
同時に光の矢が弾けるように放たれる。
初速から全開だ。
大気を貫き、白い尾を微かに引きながら、シャキンの身体を貫くために走る。

しかし、完璧だったはずの狙いは外れた。

|  ^o^ |(いや……外された!?)

捉えたはずの視線の先。
そこにいるはずのシャキンの姿が無い。

轟、と風が唸る。
それは右方向から、つまりシャキンのいた位置から発せられ
そのままブームの身体にぶち当たった。
大した圧があるわけではなく、問題は別の部分にある。

風が来たということは

|  ^o^ |(既に通過した後……!)

明確な不安を覚えたブームは、首ではなく身体ごと背後へ向ける。



40: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:09:14.27 ID:iUSENDqq0
(;`・ω・´)「ぐぅぅ!」

そこにあったのは、低く構えたシャキンの姿。
両足には、血のように赤黒い色をしたブーツ。
その姿勢は片膝をつき、何かに耐えるような表情をしている。

弓を向けつつ、ブームは直感した。

――まだ慣れていない。

それは速度になのか、それとも禍々しいブーツになのか。
解らないが、とにかくシャキンの動きがぎこちない。

仕留めるなら今。
あのレベルの速度となれば光矢でも追えない。
反応くらいは出来るだろうが、身体が追いついてこないだろう。

そこまで考えた時には、既に弓を引き絞っていた。

距離三メートル。
一瞬で終わる距離だ。

しかしブームの認識は甘く、そして知らなかった。
シャキンの足に纏われた赤い靴は、その一瞬すら超える速度を持っていることに。



42: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:10:41.79 ID:iUSENDqq0
放った瞬間、確かにブームは見た。
矢が届く前にシャキンの身体が消えたのを。
その視界の隅、己の背後上空へ飛ぶように何かが掠めていった。

|; ^o^ |「くっ……」

相対したことのない速度に動揺しつつ、ブームは慌てて背後へ弓を向ける。
空中にいたシャキンの姿勢はバラバラだった。
最初から着地のことなど考えていない、というか考えに至らなかったのだろう。

無防備な姿へ殺気を向ける。
流石に、この状態ならば外しようがない。
そこでふと思う。

――彼は何をしようとしていたのか。

爆発的な速度で地を走り、自分を追い抜き、そして空中へ身を飛ばした。

たったそれだけ。
何処に攻撃の要素があるのだ。
そもそも攻撃の意思はあったのか。

そこでようやく思い出した。
敵はシャキン一人ではない。

<_#プー゚)フ「――もらったぁ!」



44: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:12:09.21 ID:iUSENDqq0
八時方向からエクストが迫る。
シャキンと同じく、持っていた銃器を手放している。
それを確認したブームは

|  ^o^ |「行きなさい!」

予め空中に設置していた光矢に命令。
彼の声を聞いた光矢は忠実に、そして高速でエクストの下へと飛翔した。
直に放つよりも威力や速度が劣ってしまうが、足止めには充分だ。
しかしエクストは、それらに見向きもせずに前へと足を出し続ける。

四方八方から向かってくる光の矢は高速。
しかも初速からして、目で追えるギリギリの速さなのだ。
半分近くは勘でかわしているようなもの。

当然、無傷でいられるわけがない。

既に左腕は血にまみれている。
その肩の後部には一本の矢が突き刺さったままだ。

左腕はどうなってもいい。
右腕で『攻撃』の動きができ、そして足さえ動けば後は何とかなる。



46: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:13:40.38 ID:iUSENDqq0
こんな苦痛よりも、音速超過のGIFに乗っている時の方が辛い。

陸は自由だ。
身体や肺や血管を締め付けるGが存在しない。
一瞬の判断ミスが死に繋がる、という緊張感からくる異常な吐き気もない。
自分の手足で、自分の思い描いた通りに動くことが出来る。

そんな中で戦えることを幸運に思え、とエクストは心の底から思った。
空では、こんな風に上手くいくことなど滅多にないのだから。

襲い来る光の矢を掻い潜り、いよいよブームに近付いてきた。

エクストの手の中には『破壊』を司る武装が一つ。
この一週間で何とか同調し、一応は扱えるレベルにまで持ってこれた。
これこそが、陸で戦う自分の切り札。

その恩威を受けるために、エクストは頭の中をカラにした。

<_#プー゚)フ(平常心平常心平常心平常心平常心平常心!
         雑念排除雑念排除雑念排除雑念排除雑念排除!!)

本当にカラなのか、というツッコミは無粋だろう。
これが彼の一生懸命な無心なのだから。

奇跡的に、その不器用な『無心』に応える意思が一つだけあった。

<_#プー゚)フ「13th−W『ラクハーツ』!!」



49: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:15:50.39 ID:iUSENDqq0
緑色の発光。
右手指に装着されていた指輪が光の中へ溶け消える。

次に現われたのは、全てを破壊する両刃の大斧。
叩きつけるというよりも、投げてぶつけるという用途が主な武器だ。

|; ^o^ |「まさか、これが――」

<_#プー゚)フ「最初で最後の初撃だぁぁぁぁ!!」

振りかぶると同時に、頭に思い描くは『目盛』。
爆発の規模を調整するため、その目盛をイジろうとする。

無論、敵を倒すのだから手加減をするわけにはいかない。
表示された中でも最大級の――

……『Nuclear』と表記されているのは、見間違えだろうか。

何だか怖くなったエクストは、設定威力を四分の三ほどに設定した。

限界まで上げた腕を振り下ろす。
ブームの視線こそこちらへ向けているが、対処出来るような姿勢ではなかった。
エクストが恐れずに前進した結果でもある。



51: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:17:27.48 ID:iUSENDqq0
刃はブームの左腕に直撃した。
胴体を狙ったつもりなのだが、どうやら姿勢をわざと崩して回避したらしい。
咄嗟の判断にしては流石だ。

しかし、ラクハーツにそんな小策は通用しない。

刃と腕がぶつかった部分を起点として爆発が起きる。
まず光、炎、熱が三連し、五感を奪った。
続いて来るのは圧倒的な衝撃。

重力でもなく、圧力でもなく。
ただ漠然とした、しかし抗えない威力の壁が円状に展開される。

<_;プー゚)フ「うぐっ……!?」

持ち主にさえも牙を剥く。
着弾点の周囲にあるものを全て突き放つような爆発だ。

閃光と轟音が響く。

FC全体が揺れているような、それほどまでに強力な爆撃だった。



52: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:18:50.16 ID:iUSENDqq0
(;`・ω・´)「ど、どうなった……!?」

壁を背にした逆さまの姿勢でシャキンが言う。
ギルミルキルの制御が出来ないまま、頭から地面に落ちた結果だった。
慌てて姿勢を戻し、煙の中へ視線を向ける。

出てきたのは

<_メプー゚)フ「……けほっ」

服の所々が焼け焦げた、みすぼらしいエクスト。
右手にはラクハーツが握られている。

(`・ω・´)「大丈夫か?」

<_メプー゚)フ「いや、まさかここまでの威力だとは……設定ミスった」

ドサ、と音を立てて倒れる。
そのまま仰向けになり、大きな息を吐いた。

<_メプー゚)フ「……で、アイツは?」

ブームがいた位置には誰もいなかった。



55: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:20:09.87 ID:iUSENDqq0
(`・ω・´)「原型をなくすほど砕けたか、逃げたか。
      それとも隠れてチャンスを狙っているのか?」

<_メプー゚)フ「だったら今にも仕掛けてるだろうが……多分、逃げたんじゃねぇかな」

(`・ω・´)「あの爆撃は有効だったらしい」

<_メプー゚)フ「いくら英雄っつっても身体は人間。
         こりゃ良いこと発見したぜ……対処次第では勝てないわけじゃねぇ。
         数で囲んでフルボッコすることも出来るはずだ」

ギルミルキルとラクハーツを指輪に戻す。
頭の中にあった、自分の意思以外の何かが消え去った。

<_メプー゚)フ「しかしまぁ、嘗めてたぜ。
         ウェポンってのがここまで強力だったとは」

(`・ω・´)「人外の力を行使するのに、弾薬や燃料制限がないからな……」



58: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:21:45.94 ID:iUSENDqq0
この二人が、たった一週間で指輪と同調出来たのには理由があった。

指輪は誰でも扱えるものではない。
内在している擬似精神が認めた者でないと力を貸さないわけだが
この擬似精神には二つの種類が存在した。

使い手を見るタイプと、波長を見るタイプだ。

前者は
2nd『ロステック』、3rd『ウィレフェル』、4th『アーウィン』、5th『ミストラン』、7th『ガロン』
8th『クレティウス』、9th『ユストーン』、14th『ハンレ』が挙げられる。

このタイプは波長も当然だが、術者の性格や信念を特に重視する。
故に使い手は一人で、よほどの事がない限りは他人に力を与えたりしない。


後者は
1st『グラニード』、6th『ギルミルキル』、10th『レードラーク』、11th『ミシュガルド』
12th『ジゴミル』、13th『ラクハーツ』が挙げられる。

このタイプは使い手の波長を重視する。
例えばグラニードならば、『誇り』を持っているか否かを基準とする。
擬似精神の望む波長を持っていれば、それだけである程度の力を貸すことをするのだ。

シャキンとエクストが持っているのは、どちらも後者のタイプだ。
つまり、その指輪が望む波長を持っていることを証明出来れば
(指輪の性格にもよるが)ある程度の力を行使することが可能なのである。



60: ◆BYUt189CYA :2007/05/19(土) 14:23:48.78 ID:iUSENDqq0
エクストが、あー、と疲労の息を吐いた。

<_メプー゚)フ「疲れたぞ! 俺ァもう動けねぇ動きたくねぇ!」

(`・ω・´)「少し休むか」

仰向けに寝転がったエクストの隣にシャキンが腰掛ける。
同時に、大きな溜息を吐いた。

ウェポンの力で、何とか英雄一人に勝利した二人。
たとえ英雄だろうと、決して勝てない相手ではないと証明したのだ。
大きな一歩といえる戦果である。

<_メプー゚)フ「っつーか、ラクハーツの爆撃調整の度合いがよく解んねぇな……。
         もうちっと訓練重ねる必要があるか」

最後の一撃である爆撃。
建物全てを揺るがしたような莫大な衝撃は、他の戦場にも多大な影響を与えたのだが
二人とも、今はまだ知る由もなかった。



戻る第二十二話